本明細書において、第8実施形態を本実施形態と読み替え、第1〜第7実施形態を参考例と読み替える。
本発明の燃料加熱システムの第1実施形態を図面に基づき説明する。
図1には、車両10の内部構成が示されている。車両10は、燃料Lが貯留された燃料タンク12と、燃料Lを消費して作動するエンジン20とを有している。
燃料タンク12は、内部にガソリン又はエタノール等のアルコールを含む燃料Lが貯留されており、燃料Lをエンジン20へ供給するための供給パイプ14の一端が接続されている。また、供給パイプ14の他端は、燃料Lを高圧状態で蓄えることが可能なフューエルデリバリーパイプ18に接続されている。
ここで、供給パイプ14の燃料タンク12側にはポンプ16が設けられている。このポンプ16が駆動されることで、燃料タンク12内の燃料Lが汲み上げられ、加圧された状態でフューエルデリバリーパイプ18に供給されるようになっている。一例として、ポンプ16は、300〜400kPaの加圧力となるように設定されている。
フューエルデリバリーパイプ18は、中空直方体状に形成されている。フューエルデリバリーパイプ18の天井壁には、貫通穴22が形成されており、この貫通穴22の周縁に供給パイプ14が接続されている。また、フューエルデリバリーパイプ18の底壁には、エンジン20の気筒数に準じた4つの貫通穴23が形成されており、4つの貫通穴23それぞれにインジェクタ24が接続されている。この4つのインジェクタ24によって、フューエルデリバリーパイプ18内の高圧状態の燃料Lが霧化され、燃焼室へ噴射されるようになっている。
図1及び図2に示すように、フューエルデリバリーパイプ18の一方の側壁には貫通穴26が形成されており、貫通穴26からフューエルデリバリーパイプ18の内部へヒーター28が挿入されている。ヒーター28は、通電によって発熱するシースヒーター(金属パイプの内側に発熱体を配置し熱伝導の良い絶縁粉末で充填したもの)であり、端部にフランジ32が設けられている。また、ヒーター28は、フランジ32から外側へ通電用の配線34が延出されている。なお、ヒーター28は、フランジ32がフューエルデリバリーパイプ18の側壁に固定されることで、フューエルデリバリーパイプ18内に取付けられている。ここで、フューエルデリバリーパイプ18の内側のヒーター28で、燃料加熱装置30が構成されている。
一方、図1に示すように、車両10には、バッテリー36と、バッテリー36からの電源供給で動作し車両10の各部の動作を制御する制御ユニット38とが設けられ、電気的に接続されている。バッテリー36の出力側は、制御ユニット38によるON、OFF制御で通電又は通電遮断が切り替えられるスイッチ42に接続されている。
また、図1に示すように、スイッチ42の出力側には必要に応じて昇圧回路40が接続され、バッテリー36の出力が予め設定された電圧まで増幅されるようになっている。ヒーター28の配線34は、昇圧回路40(又はスイッチ42)の出力部に接続される。
図3には、昇圧回路40の一例が示されている。昇圧回路40は、コイル37と、トランジスタ39と、ダイオード41と、コンデンサ43とを有している。ここで、トランジスタ39をON−OFF(ベースへの通電をON−OFF)させることにより、トランジスタ39がONのときには、コイル37に磁気エネルギーを蓄え、トランジスタ39がOFFのときには、コイル37とバッテリー36が直列になり、バッテリー36の電圧+コイル37のエネルギー分の電圧をVoutから出力する。これにより、バッテリー36の入力電圧よりも高い電圧(Vout)を出力させることが可能となっている。なお、トランジスタ39がONのときは、コンデンサ43からの供給となる。これにより、ON−OFF時の出力の飛びを埋めている。
また、図1に示すように、昇圧回路40の出力側は、制御ユニット38によるON、OFF制御で通電又は通電遮断が切り換えられるスイッチ42に接続されており、スイッチ42の出力部(図示省略)には、ヒーター28の配線34が接続されている。これにより、制御ユニット38がスイッチ42をONとしたとき、昇圧回路40で増幅された出力がヒーター28に入力される。
一方、フューエルデリバリーパイプ18内には、温度センサ44が配設されている。温度センサ44には出力配線46が設けられており、出力配線46は、フューエルデリバリーパイプ18外へ引き出され制御ユニット38に接続されている。これにより、温度センサ44で測定されたフューエルデリバリーパイプ18内の燃料Lの温度に相当する出力は、制御ユニット38に伝達され、温度データとして処理される。
なお、加熱開始の信号が制御ユニット38に入力されると、温度センサ44から出力された温度と、予め設定された下限温度(例えば5℃)とを比較して、5℃以上のときは、燃料Lの加熱が不要であると判断して、スイッチ42をOFF状態のままとし、ヒーター28への通電を行わないようになっている。
次に、ヒーター28で必要とされる出力密度M(単位:ワット/平方センチメートル)の決定方法の一例について説明する。
図4には、ヒーター28で必要とされる出力密度Mを決めるための試験装置50が示されている。試験装置50は、箱状の液槽52内にエタノールEが80ml(ミリリットル)貯留されており、エタノールEにヒーター54(ヒーター28と同様の構成)の発熱部54Aが浸漬されている。ヒーター54の発熱部54Aは、直径6mm、長さ24mmであり、表面積は4.5cm2となっている。また、ヒーター54の発熱部54Aの表面には、温度測定用の熱電対56が固定されている。熱電対56の出力は温度測定ユニット(図示省略)に入力され、温度データに変換される。
一方、ヒーター54は、12V(ボルト)の電源58と制御ユニット60とに電気的に接続されている。制御ユニット60は、PWM(Pulse Width Modulation)制御を行うものであり、周期は一定で、入力信号の大きさに応じてパルス幅のデュ−ティ・サイクルを変えて制御を行う。また、制御ユニット60は、ヒーター54への出力が可変となっていると共に、ヒーター54への出力電圧(V:ボルト)及び出力電流(A:アンペア)が測定されるようになっている。
ここで、制御ユニット60で出力を変更しながらヒーター54に20秒間通電してエタノールEを加熱したところ、図5(a)、(b)、(c)、図6(d)、(e)の結果が得られた。いずれの図も横軸がヒーター54への通電時間(秒)であり、グラフAがヒーター54の温度(℃)、グラフBが出力電圧(V)、グラフCが出力電流(A)を表している。また、破線KがエタノールEの沸点78℃を表している。
図5(a)、(b)、(c)、及び図6(d)に示すように、ヒーター54の出力密度Mが27.1W/cm2以下の範囲では、開始から2〜3秒後に沸点まで上昇後、温度上昇は見られず安定している。一方、図6(e)に示すように、ヒーター54の出力密度Mが39.8W/cm2では、開始から2〜3秒後に沸点まで上昇後、さらに温度上昇が見られる。
このように、ヒーター54の出力密度が27W/cm2を超えると、ヒーター54の温度がエタノールEの沸点78℃以上に上昇し、熱が周囲へ伝達せず過熱が起こる膜沸騰状態となるため、エタノールEを含む燃料を加熱する場合は、ヒーター54の出力密度を27W/cm2以下とすることが好ましい。
ここで、図1において、例えば、フューエルデリバリーパイプ18の内容積を40ccとしたとき、エンジン20の始動前に燃料Lの加熱を終了するためには、ヒーター28の出力が0.6kW以上であることが好ましい。仮に、ヒーター28が、直径1.3mm、長さ6800mm、印加電圧100V、出力1.2kWのシースヒーターであるとき、出力密度4.1W/cm2となるため、エタノールを含む燃料Lを膜沸騰を起こさずに短時間(10秒以内)で昇温可能となる。
一方、図7には、図1の燃料加熱装置30における冷間始動時のヒーター28の加熱時間と燃料Lの温度の関係が示されている。グラフDは、温度センサ44(図1参照)で測定される燃料Lの温度を表しており、グラフEは、フューエルデリバリーパイプ18の外部に設けた温度センサ(図示省略)で測定される温度を表している。なお、実験条件として、燃料Lはエタノール40mlとし、フューエルデリバリーパイプ18の外部環境温度は0℃としている。また、ヒーター28には出力300Wのシースヒーターを4本用いており、電源100Vを用いてヒーター28の出力密度が4.1W/cm2となるように設定している。
図7に示すように、ヒーター28の出力密度が4.1W/cm2の条件において、10秒程度で燃料L(エタノール)の沸点まで昇温することが確認できた。
次に、本発明の第1実施形態の作用について説明する。なお、ヒーター28の出力密度Mは、M≦27W/cm2となるように予め設定されているものとする。
図1の車両10において、加熱開始の信号が制御ユニット38に入力されると、制御ユニット38が温度センサ44の温度を測定する。測定温度が予め設定した温度(例えば5℃)よりも低いとき、制御ユニット38はスイッチ42をONにする。これにより、バッテリー36からスイッチ42、昇圧回路40、及び配線34を介してヒーター28に通電され、ヒーター28がフューエルデリバリーパイプ18内の燃料Lを加熱する。
ここで、車両10では、ヒーター28の出力密度MがM≦27W/cm2となっているため、フューエルデリバリーパイプ18の内部で燃料Lの膜沸騰が発生せず、ヒーター28から燃料Lへの熱伝達効率を低下させずに燃料Lを加熱することができる。また、フューエルデリバリーパイプ18の内側で燃料Lを加熱するので、ヒーター28から燃料Lへの伝熱経路が最短となり、燃料L以外への伝熱ロスが最小となる。これにより、クランキング前にエンジン20始動に必用な量の燃料Lを、始動に必要な温度まで短時間で加熱できる。
さらに、車両10では、必要に応じてバッテリー36の電圧を増幅してヒーター28へ出力する昇圧回路40が設けられているので、車両10に搭載されたバッテリー36の電圧が低いものであっても、昇圧回路40によって増幅して高電圧を得ることができる。
続いて、制御ユニット38は、温度センサ44で測定される温度が設定温度よりも高いとき、スイッチ42をOFFにしてヒーター28への通電を遮断する。なお、温度センサ44で測定される温度が設定温度よりも低いときに、再度ヒーター28への通電を再開するようにしてもよい。
次に、特許文献1のような従来の燃料加熱システムと本発明の燃料加熱システムの差異について説明する。
本発明の燃料加熱システム(燃料加熱装置30)では、エンジン20の始動に必要な量の燃料Lをクランキング前に始動可能温度まで加熱するものである。ここで、燃料Lの加熱時に燃料Lは流動していないため、燃料Lの温度制御が容易となっており、エンジン20の気筒毎の加熱(後述する第5実施形態参照)を行う場合も燃料Lの温度を均一に加熱することができる。
さらに、本発明の燃料加熱システムでは、燃焼熱利用(後述する第4実施形態参照)の場合、バッテリー36を用いるのは燃焼装置130(図13(b)参照)の燃焼開始までであるため、クランキングと同時加熱が可能となる。
ここで、従来の燃料加熱システムである燃料噴射同時加熱方式に必要な出力と、本発明の燃料加熱システムである始動前加熱方式に必要な出力とを比較する。なお、前提条件として、始動時の燃料Lの噴射量3.3ml/(s・気筒)、クランキング時間3s、本発明の始動前の加熱時間を10s、燃料Lとしてのエタノール比熱1.95J/ml・K、目標昇温温度80Kとする。
燃料Lの加熱に必要な出力は、従来をQ1、本発明をQ2とすると、Q1=3.3ml/(s・気筒)×1.95J/ml・K×80K=515W/気筒となり、Q2=3.3ml/(s・気筒)×3s×1.95J/ml・K×80K/10s=154W/気筒と求められる。
さらに、4気筒のフューエルデリバリーパイプ内で加熱する場合は、燃料Lの加熱を除いて必要な出力を約600Wとすると、Q1=515W/気筒×4+600W=2660W、Q2=154W/気筒×4+600W=1216Wと求められる。このように、燃料Lの加熱に必要な出力はQ1>Q2であるから、本発明の方が従来よりも必要出力が低くて済む。
また、12Vバッテリーからの取出し電流を比較すると、従来は約220Aとなるのに対し、本発明では約100Aとなる。ここでクランキング時の12Vバッテリーからの取出し電流を100Aとすると、クランキング、燃料噴射、燃料加熱を同時に行うことは現実的ではないことが分かる。
次に、本発明の燃料加熱システムの第1実施形態の他の第1実施例(変形例)について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部品には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
図8には、本発明の第1実施形態の他の第1実施例としての燃料加熱装置70が示されている。燃料加熱装置70は、前述の燃料加熱装置30(図1参照)のヒーター28に換えて、ヒーター72が設けられている。ヒーター72はシースヒーターであり、2本のヒーター72A、72Bが、フューエルデリバリーパイプ18の長手方向(矢印X方向)と直交する幅方向(矢印Y方向)に間隔を空けて並列配置されている。
燃料加熱装置70では、2本のヒーター72A、72Bを用いていることから、1本のヒーターを用いる場合に較べて燃料Lの加熱のための伝熱面積が増加している。これにより、短時間で燃料Lを加熱することができる。
図9(a)には、本発明の燃料加熱システムの第1実施形態の他の第2実施例としての燃料加熱装置80が示されている。燃料加熱装置80は、フューエルデリバリーパイプ76内にヒーター78とパルセーションダンパ82が設けられている。
フューエルデリバリーパイプ76は、図1のフューエルデリバリーパイプ18に近い構成となっており、インジェクタ24が設けられているが、ヒーター78の取付け部が無く、燃料L供給用の貫通穴77が側壁に形成されている点が異なる。また、ヒーター78は、ヒーター28(図1参照)と同様のシースヒーターであり、パルセーションダンパ82の上面に接着等により取付けられている。
図9(b)に示すように、パルセーションダンパ82は、弾性を有する金属製の箱体であり内部が中空となっている。パルセーションダンパ82の両端部は、フューエルデリバリーパイプ76(図9(a)参照)の内壁に位置決め機構により固定されている。
図9(a)、(b)に示すように、燃料加熱装置80では、燃料Lの供給(移動)時にパルセーションダンパ82が一旦内側に凹んでから元に戻る変形を繰り返すことで脈動を低減することができる。さらに、燃料加熱装置80では、パルセーションダンパ82にヒーター78を取付けることで、パルセーションダンパ82とヒーター78を別体で設けるものに比べて省スペース化が可能となっている。
ここで、パルセーションダンパ82へのヒーターの取付け例として、図10(a)に示すように可撓性を有するヒーター83をパルセーションダンパ82の外周に巻き付けてもよく、あるいは、図10(b)に示すようにパルセーションダンパ82の上面又は下面に複数のヒーター84(84A、84B、84C)を並列に取付けてもよい。
次に、本発明の燃料加熱システムの第2実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部品には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
図11(a)には、燃料加熱装置90が示されている。燃料加熱装置90は、燃料タンク12(図1参照)から燃料Lが供給されるフューエルデリバリーパイプ92を有している。フューエルデリバリーパイプ92は、非磁性体であるオーステナイト系SUSが中空直方体状に形成されたものである。フューエルデリバリーパイプ92の側壁には貫通穴94が形成されており、この貫通穴94の周縁に供給パイプ14(図1参照)が接続されている。
また、フューエルデリバリーパイプ92の底壁には、エンジン20(図1参照)の燃料室(図示省略)に対応した4つの貫通穴96が形成されており、4つの貫通穴96それぞれにインジェクタ24が接続されている。この4つのインジェクタ24によって、フューエルデリバリーパイプ92内の高圧状態の燃料Lが霧化され、燃焼室へ噴射されるようになっている。また、フューエルデリバリーパイプ92内には、磁性体であるフェライト系SUSが棒状に形成された発熱部材95と、温度センサ44とが設けられている。発熱部材95は、一部がフューエルデリバリーパイプ92に固定され支持されている。
一方、フューエルデリバリーパイプ92の外周上面には、昇圧回路40(図1参照)に接続され通電により磁界Hを発生するコイル部材97が設けられている。図11(b)に示すように、コイル部材97は、フューエルデリバリーパイプ92の上面にインジェクタ24(図11(a)参照)の配列方向に沿って設けられた板状の芯材98に巻き回されている。
次に、本発明の第2実施形態の作用について説明する。なお、発熱部材95の出力密度Mは、M≦27W/cm2となるように予め設定されているものとする。
図11(b)に示すように、燃料加熱装置90では、バッテリー36(図1参照)からの通電によってコイル部材97が磁界Hを発生する。ここで、フューエルデリバリーパイプ92は非磁性体であり、フューエルデリバリーパイプ92の内側の発熱部材95は磁性体であるため、コイル部材97と発熱部材95の間で閉磁路が形成される。
続いて、磁界Hの電磁誘導作用によって発熱部材95の表面(表層)に渦電流が発生し、発熱部材95が発熱する。ここで、発熱部材95の出力密度MがM≦27W/cm2となっており、燃料Lの膜沸騰が発生しないので、発熱部材95から燃料Lへの熱伝達効率を低下させずに燃料Lを加熱することができる。また、フューエルデリバリーパイプ92の内側で燃料Lを加熱するので、発熱部材95から燃料Lへの伝熱経路が最短となり、燃料L以外への伝熱ロスが最小となる。これにより、クランキング前にエンジン20始動に必用な量の燃料Lを、始動に必要な温度まで短時間で加熱できる。
また、発熱部材95が電磁誘導作用により発熱するため、発熱部材95にエネルギー供給する部材をフューエルデリバリーパイプ92の外側から接続する必要が無くなり、フューエルデリバリーパイプ92における発熱部材95の装着口が不要となる。
なお、図11(c)に示すように、発熱部材95として、外周面に凸部としての複数の板状のフィン99を突設させたものを用いてもよい。複数のフィン99は、一例として、予め設定した間隔を空けてほぼ平行に配置され、面内方向が発熱部材95の軸方向と交差する斜め方向となっている。このように、複数のフィン99を用いることで発熱部材95の表面積が増加し、燃料Lに短時間で高出力の熱エネルギーを付与して加熱することができる。
次に、本発明の燃料加熱システムの第3実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部品には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
図12には、燃料加熱装置100が示されている。燃料加熱装置100は、燃料タンク12(図1参照)から燃料Lが供給されるフューエルデリバリーパイプ102を有している。フューエルデリバリーパイプ102は、中空直方体状に形成されている。フューエルデリバリーパイプ102の側壁には貫通穴104が形成されており、この貫通穴104の周縁に供給パイプ14(図1参照)が接続されている。
また、フューエルデリバリーパイプ102の底壁には、エンジン20(図1参照)の燃料室(図示省略)に対応した4つの貫通穴106が形成されており、4つの貫通穴106それぞれにインジェクタ24が接続されている。この4つのインジェクタ24によって、フューエルデリバリーパイプ102内の高圧状態の燃料Lが霧化され、燃焼室へ噴射されるようになっている。さらに、フューエルデリバリーパイプ102内には、ヒートパイプ108と、温度センサ44とが設けられている。
ヒートパイプ108は、フューエルデリバリーパイプ102の側壁に形成された貫通穴110に挿通され、一方の端部がフューエルデリバリーパイプ102の内側に配置されている。また、ヒートパイプ108の他方の端部は、フューエルデリバリーパイプ102の外側に配置されており、車両10内のバッテリー36(図1参照)を電源とするヒーター等が用いられる発熱部112に接している。なお、ヒートパイプ108は、密閉ケース内に少量の作動液が真空封入され、ケースの内壁に毛細管構造(ウィック)が設けられた構成となっているが、図示を省略する。
次に、本発明の第3実施形態の作用について説明する。なお、ヒートパイプ108の出力密度MがM≦27W/cm2となるように、発熱部112及びヒートパイプ108が予め設定されているものとする。
図12に示すように、燃料加熱装置100では、発熱部112の発熱によってヒートパイプ108の一方の端部が加熱されると、ヒートパイプ108では、加熱された部位で作動液が蒸発し、発熱部112よりも低温のフューエルデリバリーパイプ102内にある他方の端部へ蒸気が移動する。そして、他方の端部へ移動した蒸気が凝縮して液が生成され、この液が毛細管現象で発熱部112側の端部に環流することで、連続的に熱が移動し、燃料Lが加熱される。
ここで、ヒートパイプ108の出力密度MがM≦27W/cm2となっており、燃料Lの膜沸騰が発生しないので、ヒートパイプ108から燃料Lへの熱伝達効率を低下させずに燃料Lを加熱することができる。また、フューエルデリバリーパイプ102の内側で燃料Lを加熱するので、ヒートパイプ108から燃料Lへの伝熱経路が最短となり、燃料L以外への伝熱ロスが最小となる。これにより、クランキング前にエンジン20始動に必用な量の燃料Lを、始動に必要な温度まで短時間で加熱できる。
さらに、発熱部112をフューエルデリバリーパイプ102から離れた場所に設置することになっても、ヒートパイプ108によって発熱部112の熱を燃料Lに伝達させることができる。なお、直径13mm、発熱領域の長さが100mmのヒートパイプ108を水平方向に3本設置することにより、1kWの熱輸送量が得られる。
次に、本発明の燃料加熱システムの第4実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部品には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
図13(a)には、燃料加熱装置120が示されている。燃料加熱装置120は、燃料タンク12(図1参照)から燃料Lが供給されるフューエルデリバリーパイプ122と、燃焼装置130とを有している。
フューエルデリバリーパイプ122は、中空直方体状に形成されている。フューエルデリバリーパイプ122の左右両側壁には貫通穴124、126が形成されており、左右両側壁と異なる側壁には貫通穴128が形成されている。貫通穴128の周縁には、供給パイプ14(図1参照)が接続されている。
また、フューエルデリバリーパイプ122の底壁には、エンジン20(図1参照)の燃料室(図示省略)に対応した4つの貫通穴132が形成されており、4つの貫通穴132それぞれにインジェクタ24が接続されている。この4つのインジェクタ24によって、フューエルデリバリーパイプ122内の高圧状態の燃料Lが霧化され、燃焼室へ噴射されるようになっている。なお、フューエルデリバリーパイプ122内には、温度センサ44が設けられている。
一方、燃焼装置130は、内部で燃焼が行われる燃焼室134と、燃焼室134で燃焼が行われたときの火炎が伝達される火炎伝達パイプ136とを有している。燃焼室134と火炎伝達パイプ136は内部が連通されており、火炎伝達パイプ136の燃焼室134と反対側にある排気口138(図11(b)参照)から、燃焼による排気Gが排出されるようになっている。また、火炎伝達パイプ136は、フューエルデリバリーパイプ122の貫通穴124、126に挿通され固定されている。
図13(b)に示すように、燃焼室134は、上壁及び底壁に貫通穴142、144が形成されており、貫通穴142、144を通して燃焼室134内に空気(矢印A)が流入可能となっている。また、燃焼室134の側壁には、貫通穴146が形成されており、貫通穴146を通して燃焼室134の外側から内側へ燃料流入パイプ148が導入されている。
燃料流入パイプ148の一方の端部は、燃焼用の燃料Lが貯留された燃料タンク(図示省略)に接続されており、この燃料タンクから燃料Lが圧送されるようになっている。また、燃料流入パイプ148の他方の端部には、燃焼室134内に燃料Lを噴射させるためのノズル150が取付けられている。さらに、燃焼室134の外側にある燃料流入パイプ148の一部には、外周を覆って面状発熱体154が取付けられている。
面状発熱体154は、制御ユニット38(図1参照)によって通電のON/OFFが行われる通電手段(図示省略)の通電によって発熱し、燃焼室134内に供給される燃料Lを加熱するようになっている。また、燃焼室134内でノズル150の近傍には、ノズル150から噴射された燃料Lに点火を行うための点火線152が設けられている。
次に、本発明の第4実施形態の作用について説明する。なお、燃焼室134での燃焼エネルギーによる火炎伝達パイプ136の表面の単位面積(平方センチメートル)あたりの発熱量は、出力密度M換算でM≦27W/cm2となるように予め設定されているものとする。
図13(a)、(b)に示すように、燃料加熱装置120では、面状発熱体154で燃料流入パイプ148内の燃料Lを少量加熱する。そして、面状発熱体154で加熱された燃料Lがノズル150から噴射されると共に空気と混合され、点火線152で点火されて燃焼室134内で燃焼が行われる。点火及び燃焼開始後は、面状発熱体154の通電が停止され、燃料流入パイプ148内へ流入する燃料Lは燃焼熱により引火点以上の温度に加熱される。
一方、フューエルデリバリーパイプ122内では、この燃焼で発生した火炎が火炎伝達パイプ136内を移動し、火炎伝達パイプ136が発熱することで燃料Lが加熱される。そして、加熱された燃料Lがインジェクタ24から噴射されエンジン20が始動する。エンジン20の始動後は、燃焼室134の燃焼を停止する。
ここで、火炎伝達パイプ136の発熱量が、出力密度M換算でM≦27W/cm2となっており、フューエルデリバリーパイプ122内の燃料Lの膜沸騰が発生しないので、火炎伝達パイプ136から燃料Lへの熱伝達効率を低下させずに燃料Lを加熱することができる。また、フューエルデリバリーパイプ122の内側で燃料Lを加熱するので、火炎伝達パイプ136から燃料Lへの伝熱経路が最短となり、燃料L以外への伝熱ロスが最小となる。これにより、クランキング前にエンジン20始動に必用な量の燃料Lを、始動に必要な温度まで短時間で加熱できる。
さらに、燃焼室134内で燃焼開始後は、燃料流入パイプ148内の燃料Lが燃焼熱により加熱されるため、面状発熱体154の動作(通電)を停止しても、燃料流入パイプ148の内部の燃料Lが加熱され、燃焼を続けることができる。このように、自己燃焼熱を用いて燃料Lの加熱が行えるので、燃料加熱のためのエネルギー利用効率が上がる。
また、初期点火時以外にバッテリー36(図1参照)の電力を用いないので、クランキングと同時の燃料加熱が可能となる。さらに、燃料Lの加熱のための熱源をほぼ燃焼熱とするため、バッテリー36の負担が小さくて済む。
次に、本発明の燃料加熱システムの第5実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部品には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
図14には、燃料加熱装置160が示されている。燃料加熱装置160は、フューエルデリバリーパイプ162を有している。フューエルデリバリーパイプ162は、中空直方体状に形成されている。また、フューエルデリバリーパイプ162の側壁には、貫通穴163が形成されており、この貫通穴163の周縁に供給パイプ14(図1参照)が接続されている。
また、フューエルデリバリーパイプ162の底壁には、エンジン20(図1参照)の気筒数に準じた4つの貫通穴164が形成されており、4つの貫通穴164それぞれに所定の長さの分岐パイプ166の一端が接続されている。4本の分岐パイプ166の他端には、それぞれにインジェクタ24が接続されている。この4つのインジェクタ24によって、フューエルデリバリーパイプ162内の高圧状態の燃料Lが霧化され、燃焼室へ噴射されるようになっている。
各分岐パイプ166の内側には、フランジ(図示省略)等を介してヒーター168が固定されている。ヒーター168は、通電によって発熱するシースヒーターであり、分岐パイプ166の外側へ通電用の配線(図示省略)が延出され、温度センサ44の出力に基づいて制御ユニット38及び昇圧回路40(図1参照)から通電され発熱するようになっている。なお、ヒーター168は、コイル状に巻いた形状とすることで、表面積を拡大させることができる。
次に、本発明の第5実施形態の作用について説明する。なお、ヒーター168の表面の単位面積(平方センチメートル)あたりの発熱量は、出力密度M換算でM≦27W/cm2となるように予め設定されているものとする。
燃料加熱装置160では、フューエルデリバリーパイプ162から各分岐パイプ166へ低温の燃料Lが流入しており、各分岐パイプ166内ではヒーター168によって燃料Lの加熱が独立して行われる。各分岐パイプ166内で加熱された高温の燃料Lは、フューエルデリバリーパイプ162から供給される低温の燃料Lに押し出されるようにしてインジェクタ24から噴射されるため、分岐パイプ166内で高温と低温の燃料Lが混合されにくく、温度低下しにくくなっている。
これにより、クランキング時に燃料Lの加熱を停止しても、エンジン20の始動まで分岐パイプ166内の燃料Lの温度を始動可能温度に維持することができる。さらに、各分岐パイプ166のそれぞれで燃料Lの加熱が独立して行われるため、各分岐パイプ166内の燃料Lの温度を同程度とすることができる。これにより、フューエルデリバリーパイプ162の貫通穴163がどの位置に設けられていても、各分岐パイプ166からエンジン20内へ噴射されるそれぞれの燃料Lの温度差を低減することができる。
次に、本発明の燃料加熱システムの第6実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部品には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
図15(a)には、燃料加熱装置170が示されている。燃料加熱装置170は、フューエルデリバリーパイプ172と、フューエルデリバリーパイプ172の奥行き方向に4本に分岐されたS字形状の分岐パイプ174とを有している。なお、4本の分岐パイプ174は同じ構成であるため、1本の分岐パイプ174を図示して残りの3本の図示を省略する。
フューエルデリバリーパイプ172は、中空直方体状に形成されている。また、フューエルデリバリーパイプ172の側壁には、貫通穴173が形成されており、この貫通穴173の周縁に供給パイプ14が接続されている。フューエルデリバリーパイプ172の底壁には、エンジン20(図1参照)の気筒数に準じた4つの貫通穴175が形成されており、4つの貫通穴175それぞれに分岐パイプ174の一端が接続されている。
分岐パイプ174は、フューエルデリバリーパイプ172の貫通穴175に接続され鉛直下方に延設された上流端部174Aと、上流端部174Aの下端から斜め上方に向けて延設された中央部174Bと、中央部174Bの上方の端部から鉛直下方に延設された下流端部174Cとで構成され、全体がS字形状となっている。
また、分岐パイプ174は、上流端部174Aと中央部174Bの接続部位を上流部Aとし、中央部174Bと下流端部174Cの接続部位を下流部Bとして、下流部Bが上流部Aよりも上方に位置している。分岐パイプ174の下流端部174Cには、インジェクタ24が接続されており、フューエルデリバリーパイプ172内の高圧状態の燃料Lが霧化され、燃焼室へ噴射されるようになっている。
さらに、分岐パイプ174の中央部174Bの内側には、フランジ(図示省略)等を介してヒーター176が固定されている。ヒーター176は、通電によって発熱するシースヒーターであり、分岐パイプ174の外側へ通電用の配線(図示省略)が延出され、下流端部174Cに設けられた温度センサ44の出力に基づいて制御ユニット38及び昇圧回路40(図1参照)から通電され発熱するようになっている。
次に、本発明の第6実施形態の作用について説明する。なお、ヒーター176の表面の単位面積(平方センチメートル)あたりの発熱量は、出力密度M換算でM≦27W/cm2となるように予め設定されているものとする。
燃料加熱装置170では、フューエルデリバリーパイプ172から各分岐パイプ174へ低温の燃料Lが流入しており、各分岐パイプ174内ではヒーター176によって燃料Lの加熱が独立して行われる。そして、各分岐パイプ174内で加熱された高温の燃料Lは、インジェクタ24から噴射される。これにより、クランキング時に燃料Lの加熱を停止しても、エンジン20の始動まで分岐パイプ174内の燃料Lの温度を始動可能温度に維持することができる。
なお、高温の燃料Lは上方に向けて対流する性質を有している。このため、各分岐パイプ174では、低温の燃料Lが低い位置にある上流部Aに留まり、高温の燃料Lが高い位置にある下流部Bに留まる。これにより、低温の燃料Lと加熱された高温の燃料Lとが混合されにくくなり、エンジン20の始動まで燃料Lの温度を始動可能温度に維持することができる。
次に、本発明の燃料加熱システムの第6実施形態の他の実施例について説明する。
図15(b)には、燃料加熱装置180が示されている。燃料加熱装置180は、フューエルデリバリーパイプ182と、フューエルデリバリーパイプ182の奥行き方向に4本に分岐されたS字形状の分岐パイプ184とを有している。なお、4本の分岐パイプ184は同じ構成であるため、1本の分岐パイプ184を図示して残りの3本の図示を省略する。
フューエルデリバリーパイプ182は、中空直方体状に形成されており、フューエルデリバリーパイプ182の両側壁には、貫通穴181、183が形成されている。貫通穴181の周縁には供給パイプ14が接続されており、貫通穴183の周縁には分岐パイプ184の直径よりも小さい直径のパイプからなる連通路186の一端が接続されている。
また、フューエルデリバリーパイプ182の底壁には、エンジン20(図1参照)の気筒数に準じた4つの貫通穴185が形成されており、4つの貫通穴185それぞれに分岐パイプ184の一端が接続されている。
分岐パイプ184は、フューエルデリバリーパイプ182の貫通穴185に接続され鉛直下方に延設された上流端部184Aと、上流端部184Aの下端から斜め上方に向けて延設された中央部184Bと、中央部184Bの上方の端部から鉛直下方に延設された下流端部184Cとで構成され、全体がS字形状となっている。
また、分岐パイプ184は、上流端部184Aと中央部184Bの接続部位を上流部Aとし、中央部184Bと下流端部184Cの接続部位を下流部Bとして、下流部Bが上流部Aよりも上方に位置している。分岐パイプ184の下流端部184Cには、インジェクタ24が接続されており、フューエルデリバリーパイプ182内の高圧状態の燃料Lが霧化され、燃焼室へ噴射されるようになっている。
また、分岐パイプ184の下流部Bの壁には、貫通穴187が形成されており、この貫通穴187の周縁に連通路186の他端が接続されている。さらに、分岐パイプ184の中央部184Bの内側には、フランジ(図示省略)等を介してヒーター176が固定され、下流端部184Cに設けられた温度センサ44の出力に基づいて制御ユニット38及び昇圧回路40(図1参照)から通電され発熱するようになっている。
次に、燃料加熱装置180の作用について説明する。なお、ヒーター176の表面の単位面積(平方センチメートル)あたりの発熱量は、出力密度M換算でM≦27W/cm2となるように予め設定されているものとする。
燃料加熱装置180では、フューエルデリバリーパイプ182から各分岐パイプ184へ低温の燃料Lが流入しており、各分岐パイプ184内ではヒーター176によって燃料Lの加熱が独立して行われる。そして、各分岐パイプ184内で加熱された高温の燃料Lは、インジェクタ24から噴射される。これにより、クランキング時に燃料Lの加熱を停止しても、エンジン20の始動まで分岐パイプ184内の燃料Lの温度を始動可能温度に維持することができる。
なお、高温の燃料Lは上方に向けて対流する性質を有している。このため、各分岐パイプ184では、低温の燃料Lが低い位置にある上流部Aに留まり、高温の燃料Lが高い位置にある下流部Bに留まる。これにより、低温の燃料Lと加熱された高温の燃料Lとが混合されにくくなり、エンジン20の始動まで燃料Lの温度を始動可能温度に維持することができる。
また、燃料加熱装置180では、連通路186が分岐パイプ184よりも細く(小径で)圧力損失が高いため、中央部184Bを流れた燃料Lは大半が下流端部184Cへ流れる。このとき、燃料Lの一部が連通路186内を往来することで、分岐パイプ184での脈動を低減することができる。
さらに、燃料加熱装置180では、燃料Lの加熱により発生したガスが、分岐パイプ184の下流部Bに移動し、連通路186を通ってフューエルデリバリーパイプ182に送り込まれる。これにより、分岐パイプ184内のヒーター176が常に燃料Lに浸漬した状態となるので、空焚きによるヒーター176の過剰な加熱を防ぐことができる。
次に、本発明の燃料加熱システムの第7実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部品には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。
図16(a)には、燃料加熱装置190が示されている。燃料加熱装置190は、フューエルデリバリーパイプ192を有している。フューエルデリバリーパイプ192は、中空直方体状に形成されており、一方の端部の上壁には貫通穴194が形成されている。この貫通穴194の周縁に供給パイプ14が接続されている。また、フューエルデリバリーパイプ192の底壁には、エンジン20(図1参照)の気筒数に準じた4つの貫通穴195が形成されており、貫通穴195それぞれにインジェクタ24が接続されている。
図16(a)、(b)に示すように、フューエルデリバリーパイプ192の内側には、貫通穴194から貫通穴195へ向けて燃料Lが移動するのを邪魔する邪魔板196が設けられている。邪魔板196は、貫通穴194から貫通穴195へ向かう方向と交差する方向に平面が配置されており、端部がフランジ(図示省略)等を介してフューエルデリバリーパイプ192に固定されている。なお、邪魔板196とフューエルデリバリーパイプ192の内壁との間には隙間が形成されている。
また、邪魔板196の上面及び下面には、発熱体からなるヒーター198が固定されている。ヒーター198は、フューエルデリバリーパイプ192の外側へ通電用の配線(図示省略)が延出され、フューエルデリバリーパイプ192内に設けられた温度センサ44の出力に基づいて制御ユニット38及び昇圧回路40(図1参照)から通電され発熱するようになっている。
次に、本発明の第7実施形態の作用について説明する。なお、ヒーター198の表面の単位面積(平方センチメートル)あたりの発熱量は、出力密度M換算でM≦27W/cm2となるように予め設定されているものとする。
燃料加熱装置190では、フューエルデリバリーパイプ192へ低温の燃料Lが流入しており、ヒーター198によって燃料Lが加熱される。そして、加熱された高温の燃料Lは、インジェクタ24から噴射される。ここで、フューエルデリバリーパイプ192に供給された低温の燃料Lは、邪魔板196によって流れが乱され邪魔板196の外周を回り込むようにして移動することになる。これにより、フューエルデリバリーパイプ192の上流側(貫通穴194側)から下流側(貫通穴195側)へ低温の燃料Lが直接流れ込まないので、クランキング時に燃料の加熱を停止しても、エンジン始動まで、下流側の高温の燃料Lの温度を始動可能温度に維持することができる。
次に、本発明の燃料加熱システムの第7実施形態の他の実施例について説明する。
図17(a)、(b)には、燃料加熱装置200が示されている。燃料加熱装置200は、フューエルデリバリーパイプ202を有している。フューエルデリバリーパイプ202は、中空直方体状に形成されており、側壁の1つの下側に貫通穴204が形成されている。この貫通穴204の周縁には供給パイプ14が接続されている。なお、温度センサ44による温度検知の過程は他の実施形態と同様であるので、温度センサ44の図示及び説明を省略する。
また、フューエルデリバリーパイプ202の貫通穴204が形成された側壁と対向する側壁の上側には、エンジン20(図1参照)の気筒数に準じた4つの貫通穴205が形成されており、貫通穴205それぞれにL字型のパイプ206を介してインジェクタ24が接続されている。ここで、貫通穴205の形成位置は、貫通穴204よりも上方となっており、フューエルデリバリーパイプ202の下部へ貫通穴204を通って流入した燃料Lは、上部の貫通穴205からインジェクタ24へ供給されるようになっている。
さらに、フューエルデリバリーパイプ202の内側には、貫通穴204から貫通穴205へ向けて燃料Lが移動するのを邪魔する邪魔板196が設けられている。邪魔板196は、貫通穴204から貫通穴205へ向かう方向と交差する方向に平面が配置されており、端部がフランジ(図示省略)等を介してフューエルデリバリーパイプ202に固定されている。また、邪魔板196の上面及び下面には、面状発熱体からなるヒーター198が固定されている。なお、邪魔板196とフューエルデリバリーパイプ202の内壁との間には隙間が形成されている。
次に、燃料加熱装置200の作用について説明する。なお、ヒーター198の表面の単位面積(平方センチメートル)あたりの発熱量は、出力密度M換算でM≦27W/cm2となるように予め設定されているものとする。
燃料加熱装置200では、フューエルデリバリーパイプ202へ低温の燃料Lが流入しており、ヒーター198によって燃料Lが加熱される。そして、加熱された高温の燃料Lは、インジェクタ24から噴射される。ここで、フューエルデリバリーパイプ192に供給された低温の燃料Lは、邪魔板196によって流れが乱され邪魔板196の外周を回り込むようにして移動することになる。
さらに、邪魔板196の下側である上流側(貫通穴204側)には低温の燃料Lが留まり、邪魔板196の上側である下流側(貫通穴205側)には高温の燃料Lが留まる。これにより、フューエルデリバリーパイプ202の上流側から下流側へ低温の燃料Lが直接流れ込まず、混合されにくくなるので、クランキング時に燃料Lの加熱を停止しても、エンジン始動まで、下流側の高温の燃料Lの温度を始動可能温度に維持することができる。
上記説明した本発明の燃料加熱システムの各実施形態は組合せて用いることができる。
図18(a)には、燃料加熱装置210が示されている。燃料加熱装置210は、前述の燃料加熱装置180(図5(b)参照)において、分岐パイプ184内にヒーター176に換えて複数のヒーター72(72A、72B)を設けた構成となっている。
図18(b)には、燃料加熱装置220が示されている。燃料加熱装置210は、前述の燃料加熱装置180(図5(b)参照)において、分岐パイプ184内にヒーター176に換えてフィン99付きの発熱部材95を設け、分岐パイプ184の外側にコイル部材97を設けた構成となっている。
図18(c)には、燃料加熱装置230が示されている。燃料加熱装置230は、前述の燃料加熱装置180(図5(b)参照)において、分岐パイプ184内にヒーター176に換えてヒートパイプ108を設けた構成となっている。
図18(d)には、燃料加熱装置240が示されている。燃料加熱装置240は、前述の燃料加熱装置180(図5(b)参照)において、分岐パイプ184内にヒーター176に換えて燃焼室134と火炎伝達パイプ136を設けた構成となっている。
図19(a)には、燃料加熱装置250が示されている。燃料加熱装置250は、前述の燃料加熱装置200(図17(b)参照)において、邪魔板196を中空金属製のパルセーションダンパで構成しており、さらにヒーター198に換えて複数のヒーター72(72A、72B、72C)を設けた構成となっている。各ヒーター72は、邪魔板196に固定されている。
図19(b)には、燃料加熱装置260が示されている。燃料加熱装置260は、前述の燃料加熱装置200(図17(b)参照)において、邪魔板196を中空金属製のパルセーションダンパで構成しており、さらにヒーター198に換えてフィン99付きの発熱部材95を設け、フューエルデリバリーパイプ202の外側にコイル部材97を設けた構成となっている。発熱部材95は、邪魔板196に固定されている。
図19(c)には、燃料加熱装置270が示されている。燃料加熱装置270は、前述の燃料加熱装置200(図17(b)参照)において、邪魔板196を中空金属製のパルセーションダンパで構成しており、さらにヒーター198に換えてヒートパイプ108を設けた構成となっている。ヒートパイプ108は、邪魔板196に固定されている。
図19(d)には、燃料加熱装置280が示されている。燃料加熱装置280は、前述の燃料加熱装置200(図17(b)参照)において、邪魔板196を中空金属製のパルセーションダンパで構成しており、さらにヒーター198に換えて火炎伝達パイプ136(燃焼室134含む)を設けた構成となっている。火炎伝達パイプ136は、邪魔板196に固定されている。
上記の燃料加熱装置210、220、230、240、250、260、270、及び280では、各構成の効果が得られると共に、各部材を集約して配置することで燃料加熱システムとしての省スペース化が可能となる。
次に、本発明の燃料加熱システムの第8実施形態について説明する。なお、前述した第1実施形態と基本的に同一の部品には、前記第1実施形態と同一の符号を付与してその説明を省略する。また、温度センサ44(図1参照)による温度検知の過程は他の実施形態と同様であるので、温度センサ44の図示及び説明を省略する。
図20(a)、(b)には、燃料加熱装置300が示されている。燃料加熱装置300は、フューエルデリバリーパイプ302を有している。フューエルデリバリーパイプ302は、断面L字状の中空体となっており、鉛直方向に延びる上流部302Aと、上流部302Aよりも上側で水平方向に広がる下流部302Bとが内部を連通させた構成となっている。上流部302Aの内部底面上には、フューエルデリバリーパイプ302の上流部302A内に燃料Lを供給するフィードパイプ304が設けられている。
図20(c)に示すように、フィードパイプ304は、周壁に複数の燃料噴出孔305が形成されており、フィードパイプ304の内部に供給された燃料Lが、燃料噴出孔305から噴出するようになっている。
図20(a)、(b)に示すように、フィードパイプ304の一端は上流部302A内に配置され、他端はフューエルデリバリーパイプ302の側壁に形成された貫通穴(図示省略)を通ってフューエルデリバリーパイプ302の外側へ突出している。フィードパイプ304の他端には供給パイプ14(図1参照)が接続され、燃料Lが供給される。
一方、フューエルデリバリーパイプ302の下流部302B内には、発熱体からなる板状のヒーター306がフランジ(図示省略)等により固定されている。また、下流部302Bの底壁には、エンジン20(図1参照)の気筒数に準じた4つの貫通穴308が形成されており、4つの貫通穴308それぞれにインジェクタ24が接続されている。
また、フィードパイプ304は、4つのイジェクタ24に沿って延設されており、燃料噴出孔305が4つのイジェクタ24と対応する部位にそれぞれ形成されている。さらに、フィードパイプ304は、燃料Lの流れる方向でヒーター306よりも上流側に配置されている。
ここで、フューエルデリバリーパイプ302の下流部302Bにおける4つの貫通穴308の形成位置は、フィードパイプ304よりも鉛直方向上側となっており、フューエルデリバリーパイプ302の上流部302Aへ流入した燃料Lは、上流部302Aから下流部302Bへ向かい、下流部302Bを流れて各貫通穴308からインジェクタ24へ供給されるようになっている。
次に、本発明の第8実施形態の作用について説明する。なお、ヒーター306の表面の単位面積(平方センチメートル)あたりの発熱量は、出力密度M換算でM≦27W/cm2となるように予め設定されているものとする。
燃料加熱装置300では、フィードパイプ304の燃料噴出孔305から燃料Lが噴出して、フューエルデリバリーパイプ302の上流部302Aに燃料Lが供給される。ここで、フィードパイプ304が4つのイジェクタ24に沿って延設されているため、各イジェクタ24と対応するフューエルデリバリーパイプ302の上流部302Aの各部位では、フィードパイプ304の燃料噴出孔305から同程度の温度の燃料Lが供給される。
フューエルデリバリーパイプ302の上流部302Aに供給された燃料Lは、フィードパイプ304から続けて供給される燃料Lによって押し出されるように下流部302Bへ移動する。そして、温度センサ44(図示省略)の検知温度に基づきヒーター306が発熱することで、下流部302B内の燃料Lが加熱される。加熱された燃料Lは、イジェクタ24から噴射される。
ここで、フューエルデリバリーパイプ302の上流部302A及びフィードパイプ304が、下流部302Bよりも鉛直方向下側にあるため、上流部302Aには低温の燃料Lが留まり、下流部302Bには高温の燃料Lが留まる。これにより、上流部302Aの低温の燃料Lと下流部302Bの高温の燃料Lとが混合されにくくなるので、クランキング時に燃料Lの加熱を停止しても、エンジン始動まで、下流部302Bの高温の燃料Lの温度を始動可能温度に維持することができる。
さらに、各イジェクタ24と対応するフューエルデリバリーパイプ302の上流部302Aの各部位には同程度の温度の燃料Lが供給されており、さらに、ヒーター306により同程度の温度で加熱されるため、各イジェクタ24(及び気筒)へ供給される燃料Lの噴射温度を均一化させることができる。
上記説明した本発明の燃料加熱システムの各実施形態は組合せて用いることができる。
図21(a)には、燃料加熱装置310が示されている。燃料加熱装置310は、前述の燃料加熱装置300(図20(b)参照)において、ヒーター306の設置位置に中空金属製のパルセーションダンパ312を配置し、さらにヒーター306に換えて複数のヒーター72(72A、72B、72C)を設けた構成となっている。各ヒーター72は、パルセーションダンパ312に固定されている。
図21(b)には、燃料加熱装置320が示されている。燃料加熱装置320は、前述の燃料加熱装置300(図20(b)参照)において、ヒーター306の設置位置に中空金属製のパルセーションダンパ312を配置し、さらにヒーター306に換えてフィン99付きの発熱部材95を設け、フューエルデリバリーパイプ302の外側にコイル部材97を設けた構成となっている。発熱部材95は、パルセーションダンパ312に固定されている。
図21(c)には、燃料加熱装置330が示されている。燃料加熱装置330は、前述の燃料加熱装置300(図20(b)参照)において、ヒーター306の設置位置に中空金属製のパルセーションダンパ312を配置し、さらにヒーター306に換えてヒートパイプ108を設けた構成となっている。ヒートパイプ108は、パルセーションダンパ312に固定されている。
図21(d)には、燃料加熱装置340が示されている。燃料加熱装置340は、前述の燃料加熱装置300(図20(b)参照)において、ヒーター306の設置位置に中空金属製のパルセーションダンパ312を配置し、さらにヒーター306に換えて火炎伝達パイプ136(燃焼室134含む)を設けた構成となっている。火炎伝達パイプ136は、パルセーションダンパ312に固定されている。
上記の燃料加熱装置310、320、330、340では、各構成の効果が得られると共に、各部材を集約して配置することで燃料加熱システムとしての省スペース化が可能となる。
なお、本発明は上記の実施形態に限定されない。
燃料加熱装置30において、温度センサ44の配置位置は、フューエルデリバリーパイプ18内のどの位置であってもよい。また、ヒーター28は、片側(一方端)固定だけでなく、両側固定であってもよい。
燃料加熱装置70において、ヒーター72の本数は2本だけでなく、3本以上であってもよい。なお、ヒーター72の本数設定は、出力密度MがM≦27W/cm2となる範囲内で本数変更可能である。また、燃料加熱装置90において、フィン99の形状は板状に限らず、湾曲壁状や突起状であってもよい。
燃料加熱装置90において、フューエルデリバリーパイプ92を断面円形状に形成し、コイル部材97を断面円弧状に配置して、発熱部材95からコイル部材97までの距離を同等となるようにしてもよい。また、燃料加熱装置120において、点火線152に換えて、ノズル150の直後にグロープラグを設けて点火を行ってもよい。
燃料加熱装置160、170において、分岐パイプ166、174をフューエルデリバリーパイプ162、172を介さず直接供給パイプ14に接続してもよい。
燃料加熱装置300において、各イジェクタ24へ供給する燃料Lの温度を同程度にするだけでよい場合は、フィードパイプ304をフューエルデリバリーパイプ302の下流部302B(貫通穴308)よりも鉛直方向上側に配置してもよい。