JP2011027007A - 内燃機関の燃料加熱装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】 アルコール含有燃料を使用する内燃機関において、低温始動時に燃料を加熱する装置を、構造やシステムの複雑化を伴わずに実現する。
【解決手段】 燃料タンクTに貯留されるアルコール含有燃料の供給経路となるデリバリパイプ1と、燃料噴射用のインジェクタIとを、デリバリパイプ1の外周を螺旋状に取り巻くように配設された、磁性材料よりなる燃料加熱パイプ2a、2bを介して接続する。燃料加熱パイプ2a、2bの内周および外周には、絶縁層41、42を介して螺旋状に誘導加熱コイル5を巻き付けて、内周コイル51および外周コイル52が形成され、高周波電源6から高周波電流を供給して、誘導加熱により、燃料加熱パイプ2a、2b内部の燃料を加熱する。
【選択図】 図1
【解決手段】 燃料タンクTに貯留されるアルコール含有燃料の供給経路となるデリバリパイプ1と、燃料噴射用のインジェクタIとを、デリバリパイプ1の外周を螺旋状に取り巻くように配設された、磁性材料よりなる燃料加熱パイプ2a、2bを介して接続する。燃料加熱パイプ2a、2bの内周および外周には、絶縁層41、42を介して螺旋状に誘導加熱コイル5を巻き付けて、内周コイル51および外周コイル52が形成され、高周波電源6から高周波電流を供給して、誘導加熱により、燃料加熱パイプ2a、2b内部の燃料を加熱する。
【選択図】 図1
Description
本発明は、アルコール含有燃料を使用する内燃機関に用いられ、特にアルコール含有量の多い燃料を加熱して噴射装置に供給し、低温始動させる低温時始動システムに有効な燃料加熱装置に関するものである。
石油代替燃料として、近年、アルコール含有燃料が注目されている。エタノール等のアルコールは、ガソリンとは燃料としての特性が大きく異なることから、アルコール燃料とガソリンとを混合した混合燃料、特にアルコールを主体とする燃料を使用する場合には、燃料性状に適した制御を実施してエンジンの運転効率を高める必要がある。
アルコール含有燃料を用いたエンジンの課題の1つに、低温環境下での始動性の改善が挙げられる。アルコール燃料はガソリンより低沸点成分が少ないために、エンジンが暖機されていない状態では霧化しにくい。このため極寒地での使用に際して、始動に時間がかかる不具合があった。始動性を確保するには、始動時におけるプラグ周りの混合気濃度を理論空燃比に近づける必要がある。例えば、雰囲気温度が−5℃の時、機関温度が低いため、噴射された燃料の気化が進まず、燃焼室壁面への付着量が増加する。ピストンで圧縮され点火時期になると燃焼室内の温度は370℃程度になるものの、気化する燃料量が少なく理論空燃比にならないと、着火に至らず、始動が困難になるおそれがある。
そこで、特許文献1には、アルコール含有燃料を供給する経路に燃料加熱手段を設けて、エンジンの状況に応じて加熱手段を作動させ、アルコール濃度が高いほど作動頻度を増加させる制御を行うことが開示されている。加熱手段は、例えば、インジェクタの先端に嵌め込まれた筒状のPTCヒータであり、電源から供給される電力は、通電量調節手段によりアルコール濃度に応じた所定の電流値に制御され、作動制御手段からの指示信号でPTCヒータに通電すると、インジェクタから噴射される燃料が加熱される。
また、特許文献2には、燃料性状が一定しない機関の始動性を改善する目的で、軽質燃料または重質燃料が充填される燃料タンクからインジェクタまでの燃料通路にヒータを配設し、燃料通路内の燃圧として検出される燃料性状に応じて、ヒータをオンオフするヒータ付燃料噴射装置が開示されている。ヒータは、電熱線、ニクロム線、リボンヒータ等よりなる電気ヒータであり、デリバリパイプへ至る燃料通路を囲繞するように配設されて、燃料通路内を流れる燃料を加熱するようになっている。
特許文献1の装置は、インジェクタにPTCヒータを組み込む構造であるため、多気筒機関では、インジェクタ毎にヒータを設置してそれぞれ電源に接続し、各ヒータの作動や通電量を制御することになる。また、燃料がインジェクタを通過するわずかな間に所定温度まで昇温させるには、大電力を投入しPTC表面温度を高温に保つ必要がある。PTC表面温度を高温に保つと局所的に核沸騰が生じ伝熱効率が大幅に低下する。これを解決するため、燃料噴射以前にヒータを予熱し、あるいは燃料が通過しない噴射間もヒータを一定温度に保持する必要があるため効率が悪い。
一方、特許文献2の装置は、ヒータがデリバリパイプ上流に設置されるので、加熱された燃料がインジェクタに到達するまでに噴射されるまでに時間がかかるため、始動時間が長くなる。また、ヒータで加熱された燃料は、デリバリパイプを経てインジェクタに供給される間に冷却されるため、冷却分を考慮した高電力のヒータが必要となる。高電力でヒータを作動させ燃料を加熱した場合は、燃料が炭化してインジェクタのシール不良が発生するおそれがある。
また、始動時にヒータより下流の燃料通路内にある燃料は、加熱されず噴射されることになり、始動できた場合に、未燃のまま燃焼室内に留まっていた燃料が大気中に排出される。さらに、未燃のまま燃焼室内に留まっていた燃料が燃焼室温度の上昇とともに蒸発するため始動後の空燃比制御ができず、排気エミッションの増大、始動不良を招くおそれがある。
そこで、本願発明の目的は、アルコール含有燃料を使用する内燃機関において、低温始動時に燃料を加熱する装置を、構造やシステムの複雑化を伴わずに実現し、温度の高い燃料を多量に噴射可能として、燃焼室内の気化燃料を増加させ、理論空燃比に近い状態として点火を容易にすることにある。そして、比較的小型かつ低電力な装置にて、始動時間を短縮することができ、排気エミッションを低減できる、経済性および信頼性の高い内燃機関の燃料加熱装置を提供することにある。
本願請求項1の発明は、内燃機関の燃料噴射装置に付設される燃料加熱装置であって、燃料タンクに貯留されるアルコール含有燃料の供給経路となるデリバリパイプと、燃料噴射用のインジェクタとを、上記デリバリパイプの外周を螺旋状に取り巻くように配設された磁性材料よりなる燃料加熱パイプを介して接続し、該燃料加熱パイプの内周および外周の少なくとも一方に、絶縁層を介して螺旋状に誘導加熱コイルを巻き付けて、該誘導加熱コイルに高周波電源を接続したことを特徴とする。
本願請求項2の発明では、上記燃料加熱パイプの一端は、上記デリバリパイプの外周面に開口する燃料導出口に接続され、他端は、上記インジェクタの燃料導入口に接続されている。
本願請求項3の発明では、上記燃料加熱パイプの内周および外周に上記誘導加熱コイルを配設し、これら内外周の誘導加熱コイルを、連続する一続きのコイルとするとともに、磁束が燃料加熱パイプに集中して流れるように構成している。
本願請求項4の発明では、上記燃料加熱パイプおよび上記誘導加熱コイルを、これらパイプの外周側に配置した保護パイプ内に収容し、該保護パイプと上記デリバリパイプとの間には、断熱材を充填している。
本願請求項5の発明では、上記燃料加熱パイプに導入される燃料温度を直接または間接的に検出する温度検出手段と、該温度検出手段の検出結果に基づいて上記高周波電源から上記誘導加熱コイルへ供給される高周波電流を制御する制御手段を設けている。
本願請求項6の発明では、上記デリバリパイプには、上記燃料加熱パイプが接続される上記燃料導出口の形成位置より上流に、上記制御手段により開閉される流路開閉弁を設けている。
本願請求項7の発明では、上記制御手段は、低温始動時に上記誘導加熱コイルへ高周波電流を供給して、上記燃料加熱パイプ内のアルコール含有燃料を加熱するとともに、上記流路開閉弁を閉じて、上記燃料加熱パイプから上記インジェクタへ供給される加熱燃料の圧力を上昇させる。
本願請求項8の発明では、上記燃料加熱パイプおよび上記誘導加熱コイルを、角形断面形状としている。
本願請求項9の発明では、上記燃料加熱パイプおよび上記誘導加熱コイルを、丸形断面形状としている。
本願請求項10の発明では、上記デリバリパイプの外周に、隣合う2つの上記インジェクタに接続する2本の上記燃料加熱パイプを平行かつ密接させて巻き回し、2つの上記インジェクタのうち一方のインジェクタに接続する上記燃料加熱パイプを、他方のインジェクタの近傍位置にて、上記デリバリパイプ外周に開口する燃料導出口に接続し、上記他方のインジェクタに接続する上記燃料加熱パイプを、上記一方のインジェクタの近傍位置にて、上記デリバリパイプ外周に開口する燃料導出口に接続して、上記2本の燃料加熱パイプ内の燃料の流れ方向を逆方向としている。
本願請求項1の発明において、燃料加熱パイプを取り巻く誘導加熱コイルに高周波電源から高周波電流を供給すると、磁界が発生して燃料加熱パイプ全体が発熱する。この熱で内部を流通するアルコール含有燃料が加熱され、インジェクタへ流入する燃料を効果的に加熱することができる。燃料加熱パイプは、インジェクタと近接しているので、加熱燃料の温度が大きく低下することがなく、噴射燃料を微粒化して、燃焼室内での気化を促進する。また、燃料加熱パイプは、始動に必要な少量の燃料が収容可能であればよく、始動直前に加熱することで十分温度の高い燃料を必要量確保して、速やかな始動を可能にする。
したがって、低温始動時にアルコール含有燃料を効率よく加熱して、燃焼室内の気化燃料量を増加させ、プラグ周りの混合気濃度を理論空燃比に近づけることができる。これにより、比較的小型、低電力で、始動性に優れた燃料加熱装置を実現できる。
本願請求項2の発明によれば、燃料加熱パイプの一端をデリバリパイプの外周面に直接接続して、燃料を導入し、加熱した燃料を、他端に直接接続したインジェクタ内へ供給するので、インジェクタの直上流にて、効率よく燃料を加熱することができる。
本願請求項3の発明によれば、誘導加熱コイルを一続きのコイルとして設置することで、高周波電流を効率よく供給することができる。また、磁束が燃料加熱パイプに集中して流れるので、加熱効率が向上する。
本願請求項4の発明によれば、保護パイプが内部の燃料加熱パイプおよび誘導加熱コイルを保護するとともに、断熱材により、外気への放熱を防止して、燃料の加熱効率を高めることができる。
本願請求項5の発明によれば、温度検出手段により検出した燃料加熱パイプ内の燃料温度を基に、高周波電源を制御することで、低温始動時に誘導加熱コイルへ高周波電流を流して、燃料を所定温度まで加熱し、始動性を確保することができる。
本願請求項6の発明によれば、流路開閉弁を閉じて、デリバリパイプ上流と燃料加熱パイプの間を遮断すると、加熱により膨張する燃料が、デリバリパイプ上流へ逆流するのを防止できる。よって、加熱燃料の圧力が高く維持されるので、噴射圧力を高めることができる。
本願請求項7の発明によれば、制御手段が、低温始動時に流路開閉弁を閉じて、デリバリパイプ上流と燃料加熱パイプの間を遮断すると、燃料加熱パイプ内部の圧力が上昇する。これにより、加熱燃料は圧力が高い状態を維持し、インジェクタから噴射された燃料が微粒化するとともに、微粒化した燃料が速やかに気化するために、気化燃料量が増加する。よって、点火時にプラグ周りの混合気濃度を理論空燃比に近づけて、始動性を向上させる効果が得られる。
本願請求項8の発明によれば、燃料加熱パイプおよび誘導加熱コイルを、角型とすることで、互いに密接させて隙間なく配置することができ、磁束密度が高まるので、加熱電力を低減させる効果が得られる。
本願請求項9の発明によれば、燃料加熱パイプを一般的な丸型とした場合には、誘導加熱コイルも丸型とすることで、より隙間なく配置することができ、磁束密度を高めて、加熱電力を低減させる効果が得られる。
本願請求項10の発明によれば、隣合う2つのインジェクタを一対として、対応する2本の燃料加熱パイプを平行にデリバリパイプの外周に巻き付けることで、燃料加熱パイプを密に配置し、小型で効率よく燃料加熱を行なうことができる。また、デリバリパイプとの接続位置を他方のインジェクタ位置とすることで、流れ方向が逆となり、燃料加熱パイプ間の熱伝達により、燃料をより均等に加熱できる。
(第1実施形態)
図面に基づいて本発明を自動車内燃機関に適用した第1実施形態を説明する。図1(a)、(b)は、燃料加熱装置の主要部構成を示す断面図であり、図2は内燃機関の燃料噴射装置に付設された燃料加熱装置の全体構成を示す概略図である。図2において、図示しない内燃機関は、燃料にアルコール含有燃料を使用する多気筒エンジン(ここでは4気筒)であり、各気筒に対応するインジェクタIa〜Idから燃焼室内へ燃料を噴射する。並列配設された4つのインジェクタIa〜Idの直上には、燃料タンクTに連通するメインデリバリパイプ1が位置し、その外周に加熱パイプ2a〜2dを備える燃料加熱部2が配設されている。メインデリバリパイプ1のアルコール含有燃料は、これら燃料加熱パイプ2a〜2dを介して、インジェクタIa〜Idにそれぞれ供給されるようになっている。
図面に基づいて本発明を自動車内燃機関に適用した第1実施形態を説明する。図1(a)、(b)は、燃料加熱装置の主要部構成を示す断面図であり、図2は内燃機関の燃料噴射装置に付設された燃料加熱装置の全体構成を示す概略図である。図2において、図示しない内燃機関は、燃料にアルコール含有燃料を使用する多気筒エンジン(ここでは4気筒)であり、各気筒に対応するインジェクタIa〜Idから燃焼室内へ燃料を噴射する。並列配設された4つのインジェクタIa〜Idの直上には、燃料タンクTに連通するメインデリバリパイプ1が位置し、その外周に加熱パイプ2a〜2dを備える燃料加熱部2が配設されている。メインデリバリパイプ1のアルコール含有燃料は、これら燃料加熱パイプ2a〜2dを介して、インジェクタIa〜Idにそれぞれ供給されるようになっている。
燃料タンクTに貯留されるアルコール含有燃料は、メタノールやエタノール等のアルコールを主体とする燃料であり、アルコール100%燃料の他、ガソリンとアルコールを混合した混合燃料が使用される。混合燃料中のアルコール含有量は任意であるが、好適にはアルコールを85%以上の高濃度で含有する燃料に対して、本願発明を適用すると、特に効果的である。アルコール含有燃料は、石油代替燃料として需要増が見込まれ、従来のガソリン燃料より低沸点成分が少ないことと、気化潜熱が大きい、といった物性の違いに留意した取り扱いが要求される。
メインデリバリパイプ1は一端(図の右端)が閉鎖する円筒体形状で、開放端(図の左端)が燃料タンクTに至る通路に接続して、内部にアルコール含有燃料を導入するようになっている。4つのインジェクタIa、Ib、Ic、Idは、メインデリバリパイプ1の開放端側(図の左端側)から、この順に概略等間隔で並び、メインデリバリパイプ1の外周面には、4つのインジェクタIa、Ib、Ic、Idと対向するように、概略等間隔で並ぶ4つの開口が設けられている。4つの開口は、開放端側(図の左端側)から順に、燃料加熱部2への燃料導出口1b、1a、1d、1cとなっており、それぞれインジェクタIb、Ia、Id、Icに対応している。
燃料加熱部2の燃料加熱パイプ2a〜2dは、4つのインジェクタIのうち、開放端側(図の左端側)の2つのインジェクタIa、Ibに対応する燃料加熱パイプ2a、2bと、閉鎖端側(図の右端側)の2つのインジェクタIc、Idに対応する燃料加熱パイプ2c、2dとが、それぞれ一対をなしている。開放端側の一対の燃料加熱パイプ2a、2bは、互いに平行かつ密接して位置しつつ、メインデリバリパイプ1の外周を螺旋状に隙間なく取り巻いており、全体がメインデリバリパイプ1の外周面と所定間隔をおいて対向する略円筒状となっている。同様に、閉鎖端側の一対の燃料加熱パイプ2c、2dは、互いに平行かつ密接して位置しつつ、メインデリバリパイプ1の外周を螺旋状に隙間なく取り巻いて、全体がメインデリバリパイプ1の外周面と所定間隔をおいて対向する略円筒状となっている。
この時、図3に拡大して示すように、閉鎖端側の一対の燃料加熱パイプ2c、2dは、メインデリバリパイプ1の周りを交互に取り巻いており、燃料加熱パイプ2と燃料加熱パイプ2dが、メインデリバリパイプ1の軸方向に交互に配置されて、隣り合うパイプと密接することで、管壁を介して熱伝導が可能な構成となっている。図示されない開放端側の一対の燃料加熱パイプ2a、2bについても、同様の構成となっている。
図2において、燃料加熱パイプ2a〜2dの一端は、それぞれ対応するインジェクタIa〜Idに向けて径方向外方(図の下方)へ直管状に延出し、インジェクタ取り付けパイプ21a〜21dを形成している。インジェクタ取り付けパイプ21a〜21dの先端は、インジェクタIa〜Idの頂面に開口する燃料導入口に接続され、シール機構が内蔵されたインジェクタ取り付けコネクタ22a〜22dにより締結されている。
一方、燃料加熱パイプ2a〜2dの他端は、それぞれ対応する燃料導出口1a〜1dに接続される。この時、一対の燃料加熱パイプ2a、2bにおいて、燃料加熱パイプ2aへの燃料導出口1aは、インジェクタIbの直上位置にあり、燃料加熱パイプ2bへの燃料導出口1bは、インジェクタIaの直上位置にあるため、アルコール含有燃料は、燃料加熱パイプ2a内をメインデリバリパイプ1の下流側から上流側へ向けて、燃料加熱パイプ2b内をメインデリバリパイプ1の上流側から下流側へ向けて、逆向きに流れることになる。
同様に、一対の燃料加熱パイプ2c、2dにおいて、アルコール含有燃料は、燃料加熱パイプ2c内をメインデリバリパイプ1の下流側にある燃料導出口1cから上流側へ向けて、燃料加熱パイプ2d内をメインデリバリパイプ1の上流側にある燃料導出口1dから下流側へ向けて、逆向きに流れる。このようにインジェクタIa、Ibに連結される一対の燃料加熱パイプ2a、2b(およびインジェクタIc、Idに連結される一対の燃料加熱パイプ2c、2d)を交互に巻きつけ、かつ流れ方向を逆にして、一方の出口側に他方の入口を配置すると、隣接するパイプ間で熱伝導が行われる。これにより、入口側のアルコール含有燃料を効率よく加熱し、出口側の局所的な過熱が抑制されて、供給される燃料温度が均一になる。よって、各インジェクタから均一に加熱された燃料を噴射することができるので気筒間の温度差が減少し、スムーズな始動、回転変動の低減が実現できる。
燃料加熱部2は、これら一対の燃料加熱パイプ2a、2bと一対の燃料加熱パイプ2c、2dの内外周に、誘導加熱コイル5を配設し、さらに燃料加熱パイプ2a〜2dと誘導加熱コイル5の全体を、その外周側に配設した保護パイプ23内に収容してなる。インジェクタ取り付けパイプ21a〜21dは、保護パイプ23から突出して各インジェクタに接続される。保護パイプ23を用いることで、例えば水滴が侵入して誘導加熱コイル5に付着するのを容易に防止できるとともに、外気への熱の放出を防止できる。
燃料加熱パイプ2a〜2dは、例えば、板厚0.2〜0.3mm程度の透磁率の高い材料、例えば鋼材にて構成されており、誘導加熱コイル5への通電によって、パイプ自体を発熱可能となっている。保護パイプ23内に位置するメインデリバリパイプ1には、外周表面を覆って絶縁体層4が形成される。絶縁体層4は、通常、厚さ0.2mm以上とし、誘導加熱コイル5により発生する磁界の影響を受けない厚さに設定している。保護パイプ23は透磁率の低い導電性の材料かまたは、導電性の高い樹脂を使用することで、熱効率が高まるとともに、静電気を逃がすことができる。
燃料加熱部2の詳細構成を、図1により説明する。図1(b)に示すように、メインデリバリパイプ1は外周表面に絶縁体層4を有し、その外側に所定間隔をおいて、燃料加熱パイプ2a、2bが同心状に位置している。燃料加熱パイプ2a、2bの内周側および外周側には、誘導加熱コイル5となる内周コイル51および外周コイル52がそれぞれ同心状に配設されている。燃料加熱パイプ2a、2bの内外周には、内周コイル51および外周コイル52との間に、それぞれ絶縁層41、62が形成されている。また、外周コイル52の外周には、絶縁層43が形成されている。絶縁層41〜43は、厚さ0.1mm程度の絶縁性樹脂膜、例えば、ポリイミド製フィルムにて構成される。
図1(a)に示すように、燃料加熱パイプ2aおよび燃料加熱パイプ2bは、メインデリバリパイプ1の流れ方向に、交互に密接して位置しており、メインデリバリパイプ1の周囲を隙間なく取り巻く筒状体を形成している。このようにすると、アルコール含有燃料が流通する燃料加熱パイプ2a、2bの流路を長くし、必要量の燃料を効率よく加熱することができる。この筒状体の内周面および外周面全体を絶縁性樹脂膜で覆うことで、筒状の絶縁層41、42が形成され、さらに、その内周面および外周面に沿って誘導加熱コイル5を隙間なく巻き付けることにより、筒状の内周コイル51および外周コイル52が形成される。このように誘導加熱コイル5を密に配置し巻数を多くすると発生する磁界を強くすることができる。
絶縁層41、42は、燃料加熱パイプ2a、2bと内外周コイル51、52のクリアランスを一定に保ち、誘導電流が流れやすくするとともに、パイプの熱が誘導加熱コイル5に伝導するのを防止する役割を有する。なお、図1(a)、(b)には、便宜上、燃料加熱部2の燃料加熱パイプ2a、2bのみを示しているが、図3に示すように、燃料加熱パイプ2c、2d側の構成も同様となっている。
この際、図2に示すように、燃料加熱パイプ2a、2b側の誘導加熱コイル5と、燃料加熱パイプ2c、2d側の誘導加熱コイル5とを、一続きのコイルとして一体的に形成するとよい。例えば、燃料加熱パイプ2a、2b側の内周コイル51と、燃料加熱パイプ2c、2d側の内周コイル51を連続的に巻き回し、次いで、燃料加熱パイプ2c、2d側の外周コイル52と、燃料加熱パイプ2a、2b側の外周コイル52とを、連続的に巻き回して、その両端をコネクタ53に接続する。この時、内周コイル51と外周コイル52には磁束が燃料加熱パイプに向かって流れるように巻きつけることで、発生する磁界が強まり加熱効率が向上する。
図4は、好ましい電流の向きを示す図であり、図中、誘導加熱コイル5の内外周コイル51、52は、図中○を付記した断面には電流が紙面に対して上側に流れ、図中×を付記した断面には電流が紙面に対して下側に流れるように、巻きつけられる。例えば、内周コイル51は、インジェクタIc、Id側の断面において電流が紙面上側へ流れるように、外周コイル52は、同じ側の断面において電流が紙面下側へ流れるようにすると、磁束の向きが図示のようになる。このようにすることで、燃料加熱パイプ2c、2dに磁界を集中することができる。燃料加熱パイプ2c、2dを通過した磁束の一部はメインデリバリ1側に流れ、メインデリバリ1を加熱する。
図1、図2において、燃料加熱部2内には、保護パイプ23と外周コイル52、メインデリバリパイプ1との間の空隙に、断熱材8が充填されている。断熱材8は、保護パイプ23内に、燃料加熱パイプ2a〜2dと誘導加熱コイル5を保持固定するとともに、燃料加熱パイプ2a、2bの熱が外気に放出されるのを防止している。必要により、燃料加熱部2外に露出するインジェクタ取り付けパイプ21a〜21d外周を樹脂製の断熱材で覆い、外気への熱伝導を防止するようにしてもよい。
図1(a)において、誘導加熱コイル5は、コネクタ53を介して高周波電源6に接続されている。燃料加熱部2直上流のメインデリバリパイプ1には、流路開閉弁となる電磁弁Sが配設されている。電磁弁Sは、ソレノイドが弁体を吸引駆動して流路を開閉する公知の構造を有しており、制御手段となるECU7によって駆動されて、燃料加熱部2内のメインデリバリパイプ1への燃料の流通を制御するようになっている。電磁弁Sは、後述するように、高周波誘導加熱初期に、燃料加熱部2内への燃料の流入を制限するために使用されるので、通常状態では弁体が流路を開放し、通電により弁体が流路を遮断する構成とするのがよい。
また、電磁弁Sの下流には、メインデリバリパイプ1の表面に接触して、温度センサ3が取付けられている。温度センサ3は、パイプ表面温度からその内部を流通するアルコール含有燃料の温度を間接的に検出するようになっている。温度センサ3、さらには図示しない自動車のドアスイッチ、キースイッチ、エンジン水温センサからの信号は、ECU7に入力される。ECU7は、これら信号に基づいて、高周波電源6から誘導加熱コイル5への電力供給を制御する。
図3に拡大して示すように、燃料加熱パイプ2c、2d(および燃料加熱パイプ2a、2b)は、本実施形態では、角型(正方形または長方形)の断面形状を有する細パイプにて構成している。また、燃料加熱パイプ2a〜2dの内外周に配設される内周コイル51および外周コイル52も、同様の角型(正方形または長方形)断面形状とする。このようにすると、隣接する燃料加熱パイプ2c、2d(および燃料加熱パイプ2a、2b)、燃料加熱パイプ2a〜2dと内外周コイル51、52とを密に配置することができる。さらに、メインデリバリパイプ1からの燃料導出口1a〜1dが燃料加熱パイプ2a〜2dの外側に設けられることで、隙間をほぼなくすことができるので、磁束密度が高くなり、加熱効率が高くなって加熱電力が低減できる。
なお、本実施形態のように、メインデリバリパイプ1と燃料加熱パイプ2a〜2dを接続する燃料導出口1a〜1dが全て外側にある構成とすると、メインデリバリパイプと接合しやすい利点がある。
本実施形態の燃料加熱部2は、誘導加熱コイル5となる内外周コイル51、52に高周波電流を供給して磁界を発生させ、絶縁層41、42を介して近接配置した燃料加熱パイプ2a〜2dを発熱させる。燃料加熱パイプ2a〜2dは、内外周コイル51、52間に配置されるため、燃料加熱パイプ2a〜2d全体を効率よく加熱して、内部を流れるアルコール含有燃料を均等に加熱することができる。燃料加熱パイプ2a、2bの内外周コイル51、52、燃料加熱パイプ2c、2dの内外周コイル51、52は、燃料加熱パイプ2a〜2d内の燃料を所定の加熱温度(例えば50℃)まで昇温可能な磁界を発生できるように設定され、ECU7により通電が制御される。
また、始動時に電磁弁Sにより、燃料加熱部2への流路を閉じておくことにより、燃料圧力を高く維持することができる。電磁弁Sが開いている場合には、誘導加熱によりアルコール含有燃料の温度が上昇して熱膨張すると、メインデリバリパイプ1から燃料タンクT方向への逆流が生じてしまう。そこで、燃料圧力が所定以下となるまで、電磁弁Sを閉じて逆流を阻止することで、電磁弁S下流のメインデリバリパイプ1、燃料加熱パイプ2a〜2d内の燃料圧力が高い状態で噴射することができる。したがって、アルコール含有燃料の微粒化を促進し、燃焼室内で気化した燃料量が増加するので、少量の噴射量で始動できる利点がある。
ここで、燃料加熱パイプ2a〜2dの容積は、始動時に必要な燃料量を収容可能な所定容積に設定される。この所定容積は、エンジンの大きさや燃料のアルコール含有量、設定加熱温度その他の仕様によっても異なるが、通常は、燃料加熱パイプ2a〜2dの合計容積が10ml前後ないしそれ以上とする。この量は、通常の4気筒エンジンが始動を開始し所定回転数に到達するまでに噴射される燃料量に相当する。容積が小さいほど、装置が小型化し加熱電力を低減できるが、低温の燃料が燃料加熱パイプ2a〜2dに流入してパイプの温度が低下し、インジェクタIa〜Idに供給される燃料温度が低下して、始動性が悪くなるおそれがある。一方、容積が大きいと、装置が大型化し加熱電力が大きくなるので、経済的ではない。
そこで、容積が異なる燃料加熱パイプ2a〜2dを用意し、燃料温度を変えて、加熱エネルギが最小になる量を、実験的に求めた。実験条件は、以下の通りとし、一般的な4気筒エンジンに適用して、エンジン回転数が1500rpmを超える、容積、温度を求めた。
・燃料 エタノール100%
・雰囲気温度 −5℃
・加熱時間 クランキングを開始する前に5秒間加熱
その結果、加熱エネルギが最小になる燃料加熱パイプ2a〜2dの合計容積は13ml(4気筒分)であった。噴射タイミングを適合させることにより、燃焼室内の気化燃料を増加できることから、燃料加熱パイプ容積は低減可能である。また、この値はエンジン諸元により変化し、大排気量のエンジンでは燃料加熱パイプ容積を大きくする必要がある。したがって、通常は、燃料加熱パイプ2a〜2dの容積が16ml(4気筒分)程度であれば、十分な加熱効率が得られると推定される。この場合、各燃料加熱パイプ2a〜2d、すなわち一気筒当たりの容積は、4mlに設定されることになる。
・燃料 エタノール100%
・雰囲気温度 −5℃
・加熱時間 クランキングを開始する前に5秒間加熱
その結果、加熱エネルギが最小になる燃料加熱パイプ2a〜2dの合計容積は13ml(4気筒分)であった。噴射タイミングを適合させることにより、燃焼室内の気化燃料を増加できることから、燃料加熱パイプ容積は低減可能である。また、この値はエンジン諸元により変化し、大排気量のエンジンでは燃料加熱パイプ容積を大きくする必要がある。したがって、通常は、燃料加熱パイプ2a〜2dの容積が16ml(4気筒分)程度であれば、十分な加熱効率が得られると推定される。この場合、各燃料加熱パイプ2a〜2d、すなわち一気筒当たりの容積は、4mlに設定されることになる。
燃料加熱パイプ2a〜2dの長さ、断面積については、断面積を小さくし長くした方が、伝熱面積が増加するので有利となる。ただし、燃料加熱パイプ2a〜2dが長くなると、メインデリバリパイプ1の周りに燃料加熱パイプ2a〜2d、誘導加熱コイル5を巻く工程が煩雑となる。また、誘導加熱コイル5は、燃料加熱パイプ2a〜2d上に一層しか巻けないので、長いとメインデリバリパイプ1を長くする必要があり、小型化できない、誘導加熱コイル5が長くなり、コイル抵抗が増加して大電流が流れないので、加熱効率が低下する、管路抵抗が増加するといった、不利な点も生じる。したがって、これらの点を考慮して、断面積、長さの最適値を決定するのがよい。
(第2実施形態)
あるいは、図5に第2実施形態として示すように、燃料加熱パイプ2c、2d(および燃料加熱パイプ2a、2b)を、断面が丸型(円形または楕円形状)を有する細パイプにて構成することも、もちろんできる。この場合は、燃料加熱パイプ2a〜2dの内外周に配設される内周コイル51および外周コイル52を、同様の丸型(円形または楕円形)の断面形状とするとよい。燃料加熱パイプ2a〜2dが円形断面の場合は、内外周コイル51、52が円形または楕円形断面の方が、隙間を少なくして密に配置することができるので、磁束密度が高くなり、加熱電力が低減できる。
あるいは、図5に第2実施形態として示すように、燃料加熱パイプ2c、2d(および燃料加熱パイプ2a、2b)を、断面が丸型(円形または楕円形状)を有する細パイプにて構成することも、もちろんできる。この場合は、燃料加熱パイプ2a〜2dの内外周に配設される内周コイル51および外周コイル52を、同様の丸型(円形または楕円形)の断面形状とするとよい。燃料加熱パイプ2a〜2dが円形断面の場合は、内外周コイル51、52が円形または楕円形断面の方が、隙間を少なくして密に配置することができるので、磁束密度が高くなり、加熱電力が低減できる。
(第3実施形態)
なお、燃料加熱パイプ2a、2b、および燃料加熱パイプ2c、2dは必ずしも交互に配置する必要はなく、図6に第3実施形態として示すように、燃料加熱パイプ2a、2b、および燃料加熱パイプ2c、2dのメインデリバリパイプ1への巻きつけ方を変更することもできる。本実施形態では、燃料加熱パイプ2a、2b、および燃料加熱パイプ2c、2dを交互に配置せず、内外周コイル51、52の一端側半部あるいは他端側半部にそれぞれ巻きつけている。メインデリバリパイプ1と燃料加熱パイプ2a〜2dを接続する燃料導出口1a〜1dは、内外周コイル51、52の中央部付近において、略対向位置に取り付ける。
なお、燃料加熱パイプ2a、2b、および燃料加熱パイプ2c、2dは必ずしも交互に配置する必要はなく、図6に第3実施形態として示すように、燃料加熱パイプ2a、2b、および燃料加熱パイプ2c、2dのメインデリバリパイプ1への巻きつけ方を変更することもできる。本実施形態では、燃料加熱パイプ2a、2b、および燃料加熱パイプ2c、2dを交互に配置せず、内外周コイル51、52の一端側半部あるいは他端側半部にそれぞれ巻きつけている。メインデリバリパイプ1と燃料加熱パイプ2a〜2dを接続する燃料導出口1a〜1dは、内外周コイル51、52の中央部付近において、略対向位置に取り付ける。
具体的には、メインデリバリパイプ1の上流側に位置するインジェクタIa、Icに一端が接続する燃料加熱パイプ2a、2cを、内外周コイル51、52の上流側半部に、下流側に位置するインジェクタIb、Idに接続する燃料加熱パイプ2b、2dを、内外周コイル51、52の下流側半部に、それぞれ巻きつける。燃料加熱パイプ2a〜2dの他端は、内外周コイル51、52の中央部付近にて、対応する燃料導出口1a〜1dに接続される。この時、燃料加熱パイプ2a、2c内には、燃料導出口1a、1cからメインデリバリパイプ1の燃料が流入して、燃料の流れ方向と逆向きに流れ、上流側に位置するインジェクタIa、Icへ供給される。また、燃料加熱パイプ2b、2d内には、燃料導出口1b、1dからメインデリバリパイプ1の燃料が流入して、燃料の流れ方向に流れ、下流側に位置するインジェクタIb、Idへ供給される。
このような構成としても、内外周コイル51、52による誘導加熱によって、燃料加熱パイプ2a〜2dに導入される燃料を、ほぼ均等に加熱することができる。なお、本実施形態の構成では、メインデリバリパイプ1から燃料を取り出す燃料導出口1a〜1dの溶接部が隣の配管に当たらないように、隙間を空けることが望ましい。
(本発明の燃料加熱装置の作動)
次に図7のフローチャートにより、本発明の燃料加熱装置の作動を説明する。上記図1〜6の第1〜第2実施形態の装置構成において、制御手段であるECU7には、温度センサ3およびエンジン水温センサの検出信号が入力しており、また、ドアスイッチ、キースイッチからの信号が入力している。ECU7は、図7のステップ1において、ドアスイッチが作動し、運転席側のドアが開いたという信号が入力すると、ステップ2において、燃料加熱パイプ2a、2bの表面温度すなわち燃料温度が所定温度T1以下か否かを判定する。燃料温度が所定温度T1以下であれば、始動時加熱が必要と判断し、ステップ2へ進む。燃料温度が所定温度T1より高い場合には、そのまま終了する。
次に図7のフローチャートにより、本発明の燃料加熱装置の作動を説明する。上記図1〜6の第1〜第2実施形態の装置構成において、制御手段であるECU7には、温度センサ3およびエンジン水温センサの検出信号が入力しており、また、ドアスイッチ、キースイッチからの信号が入力している。ECU7は、図7のステップ1において、ドアスイッチが作動し、運転席側のドアが開いたという信号が入力すると、ステップ2において、燃料加熱パイプ2a、2bの表面温度すなわち燃料温度が所定温度T1以下か否かを判定する。燃料温度が所定温度T1以下であれば、始動時加熱が必要と判断し、ステップ2へ進む。燃料温度が所定温度T1より高い場合には、そのまま終了する。
ステップ2が肯定判定された場合には、ステップ3へ進んで、エンジン水温センサからの信号に基づき、エンジン冷却水温度が所定温度T2以下か否かを判定する。例えばエンジン停止直後は、エンジンが温まっており、燃料が低温であっても加熱を必要としないことから、冷却水温度が所定温度T2より高い場合には、そのまま終了する。
ステップ3が肯定判定された場合には、ステップ4へ進んで、電磁弁3を閉弁駆動して燃料加熱部2への燃料の流通を遮断する。その後、ステップ5へ進んで、燃料加熱部2を作動させ、高周波誘導加熱を開始する。ここでは、まず、高周波電源5から誘導加熱コイル5に高周波電流(たとえば、約17kHzで35V、30A)を流し、燃料加熱パイプ2a〜2dの燃料を加熱する。このメカニズムを、図1、2を用いて説明する。
図1、2において、燃料タンクTのアルコール含有燃料は、図示しない燃料ポンプにより圧送され、メインデリバリパイプ1から電磁弁Sを経て燃料加熱部2内に流入している。メインデリバリパイプ1の流入端部は閉鎖されているため、流入した燃料は、メインデリバリパイプ1外周の燃料導出口1a〜1dから、さらに燃料加熱パイプ2a〜2dへ流入する。ここで、ECU7により電磁弁Sを閉じると、燃料加熱部2内外の燃料の流通は遮断される。
一方、燃料加熱パイプ2a〜2dの内周側および外周側には、誘導加熱コイル5が巻き付けられて内周コイル51および外周コイル52を形成しており、これらコイル51、52に高周波電流が流れると、近接する燃料加熱パイプ2a〜2dに磁界が発生する。この磁界により燃料加熱パイプ2a〜2dに誘導電流が流れてパイプ全体が発熱し、その熱で内部を流通する燃料が加熱される。さらに、温度上昇に伴い燃料が膨張し、電磁弁Sが閉弁しているために逆流が阻止されて、燃料の圧力が上昇する。これにより、インジェクタIa〜Idへ流入する燃料を効果的に加熱し、かつ圧力が高い状態で噴射することができるので、燃焼室内での微粒化を促進し、気化燃料量を増加させて、始動時間を短縮する効果がある。
インジェクタIa〜Idから燃料が噴射されると、燃料圧力が低下するので、続くステップ6において、電磁弁Sを開弁駆動する。開弁タイミングは、適宜設定することができる。例えば、燃料加熱部2内外の燃料圧力が同等となり、メインデリバリパイプ1から燃料タンクT方向への逆流が生じなくなるまでの噴射回数を、予め試験等を行なって求めておき、所定の噴射回数または時間が経過したら、電磁弁Sへの通電を停止すればよい。これにより、燃料加熱部2のメインデリバリパイプ1への燃料供給が再開され、燃料加熱パイプ2a〜2dに流入する燃料を速やかに加熱してインジェクタIa〜Idから継続して噴射することができる。
ECU7は、温度センサ3からの入力信号に基づいて、例えば、検出温度が所定温度(約50℃)となるまで燃料を加熱する。ドアが開いてから始動までに時間がかかる場合は、その後も、キースイッチがオンとなるまでは、所定温度(約50℃)を維持するために、電流を断続的に流しておくとよい。ステップ5では、キースイッチがオンとなったか否かを判定し、否定判定された場合は、オン信号が入力するまで、このステップを繰り返す。ステップ5で、キースイッチからオン信号が入力したら、高周波電源5からの通電を停止し、加熱処理を終了する。
あるいは、図8のフローチャートに示すように、キースイッチがオンとなった後も、燃料加熱装置の作動を継続させる制御を行うこともできる。例えばドアの開閉から始動までが短時間であり、キースイッチがオンとなった時点で、十分温度が上昇していない場合に有効である。図8は、図7のフローチャートにステップ8を加えたもので、ステップ1からステップ7までは同じである。なお、この場合は、クランキングが開始されるとスタータに大電流を流す必要があるため、燃料加熱部2への電流供給を一時停止する。エンジンが始動したら、電流を断続的に流して所定温度(約50℃)を維持されるようにし、ステップ8において、エンジン回転数が所定の回転数Nを超えたか否か判定する。ステップ8が肯定判定され、所定のエンジン回転数Nまで上昇したら、作動を停止する。ステップ8が否定判定された場合は、所定の回転数Nを超えるまで、このステップを繰り返す。また、燃料が噴射され燃料が加熱パイプに入ることにより燃料温度が下がり始めた場合は、再度加熱を開始することもできる。
以上のように、本発明の加熱装置は、誘導加熱を利用した比較的簡易な構成で、効率よくアルコール含有燃料を加熱することができる。よって、始動時に温度の高い燃料を多量に噴射して、燃焼室内での気化を容易にし、プラグ周りを理論空燃比に近い状態とすることができるので、低温環境下での始動性を大きく向上させ、また、加熱に必要な電力を低減できるので、小型で高性能であり、実用性に優れた燃料加熱装置を実現できる。
Ia〜1d インジェクタ
S 電磁弁(流路開閉弁)
T 燃料タンク
1 メインデリバリパイプ(デリバリパイプ)
1a〜1d 燃料導出口
2 燃料加熱部
2a〜2d 燃料加熱パイプ
21a〜21d インジェクタ取り付けパイプ
22a〜22d インジェクタ取り付けコネクタ
23 保護パイプ
3 温度センサ
4 絶縁体層
41、42、43、 絶縁層
5 誘導加熱コイル
51 内周コイル
52 外周コイル
6高周波電源
7 ECU(制御手段)
8 断熱材
S 電磁弁(流路開閉弁)
T 燃料タンク
1 メインデリバリパイプ(デリバリパイプ)
1a〜1d 燃料導出口
2 燃料加熱部
2a〜2d 燃料加熱パイプ
21a〜21d インジェクタ取り付けパイプ
22a〜22d インジェクタ取り付けコネクタ
23 保護パイプ
3 温度センサ
4 絶縁体層
41、42、43、 絶縁層
5 誘導加熱コイル
51 内周コイル
52 外周コイル
6高周波電源
7 ECU(制御手段)
8 断熱材
Claims (10)
- 内燃機関の燃料噴射装置に付設される燃料加熱装置であって、燃料タンクに貯留されるアルコール含有燃料の供給経路となるデリバリパイプと、燃料噴射用のインジェクタとを、上記デリバリパイプの外周を螺旋状に取り巻くように配設された磁性材料よりなる燃料加熱パイプを介して接続し、該燃料加熱パイプの内周および外周の少なくとも一方に、絶縁層を介して螺旋状に誘導加熱コイルを巻き付けて、該誘導加熱コイルに高周波電源を接続したことを特徴とする内燃機関の燃料加熱装置。
- 上記燃料加熱パイプは、一端が、上記デリバリパイプの外周面に開口する燃料導出口に接続され、他端が、上記インジェクタの燃料導入口に接続されることを特徴とする請求項1記載の内燃機関の燃料加熱装置。
- 上記燃料加熱パイプの内周および外周に上記誘導加熱コイルを配設し、これら内外周の誘導加熱コイルを、連続する一続きのコイルとするとともに、磁束が燃料加熱パイプに集中して流れるように構成したことを特徴とする請求項1または2記載の内燃機関の燃料加熱装置。
- 上記燃料加熱パイプおよび上記誘導加熱コイルを、これらパイプの外周側に配置した保護パイプ内に収容し、該保護パイプと上記デリバリパイプとの間に断熱材を充填したことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の内燃機関の燃料加熱装置。
- 上記燃料加熱パイプに導入される燃料温度を直接または間接的に検出する温度検出手段と、該温度検出手段の検出結果に基づいて上記高周波電源から上記誘導加熱コイルへ供給される高周波電流を制御する制御手段を設けたことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の内燃機関の燃料加熱装置。
- 上記デリバリパイプには、上記燃料加熱パイプが接続される上記燃料導出口の形成位置より上流に、上記制御手段により開閉される流路開閉弁を設けたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の内燃機関の燃料加熱装置。
- 上記制御手段は、低温始動時に上記誘導加熱コイルへ高周波電流を供給して、上記燃料加熱パイプ内のアルコール含有燃料を加熱するとともに、上記流路開閉弁を閉じて、上記燃料加熱パイプから上記インジェクタへ供給される加熱燃料の圧力を上昇させることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の内燃機関の燃料加熱装置。
- 上記燃料加熱パイプおよび上記誘導加熱コイルを、角型断面形状としたことを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の内燃機関の燃料加熱装置。
- 上記燃料加熱パイプおよび上記誘導加熱コイルを、丸型断面形状としたことを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の内燃機関の燃料加熱装置。
- 上記デリバリパイプの外周に、隣合う2つの上記インジェクタに接続する2本の上記燃料加熱パイプを平行かつ密接させて巻き回し、2つの上記インジェクタのうち一方のインジェクタに接続する上記燃料加熱パイプを、他方のインジェクタの近傍位置にて、上記デリバリパイプ外周に開口する燃料導出口に接続し、上記他方のインジェクタに接続する上記燃料加熱パイプを、上記一方のインジェクタの近傍位置にて、上記デリバリパイプ外周に開口する燃料導出口に接続して、上記2本の燃料加熱パイプ内の燃料の流れ方向を逆方向としたことを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の内燃機関の燃料加熱装置。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009172236A JP2011027007A (ja) | 2009-07-23 | 2009-07-23 | 内燃機関の燃料加熱装置 |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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-
2009
- 2009-07-23 JP JP2009172236A patent/JP2011027007A/ja not_active Withdrawn
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