JP5612444B2 - 熱伝導性エラストマー組成物 - Google Patents
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Description
上記発熱体に対する放熱対策としては、現在上記発熱体から放熱性ハウジング等の冷却部品への熱伝導率を向上せしめるため、上記発熱体と上記冷却部品との間にスペーサーとして放熱用部材が使用されている。上記放熱用部材は上記発熱体から上記冷却部品への伝熱効率を高めるために、上記発熱体と上記冷却部品の双方に対して密着性が良好な材料を使用しなければならない。
一方熱伝導性フィラーとしては、導電系と絶縁系とがあり、導電系としては銅、ニッケル等の金属系フィラーやグラファイト等の炭素系フィラー等が知られており、絶縁系としては、酸化マグネシウム、アルミナ等の金属酸化物やシリカが知られている。上記放熱用部材の熱伝導性フィラーとしては、特に絶縁系フィラーが使用されている。
上記特許文献2においては、熱伝導性フィラーとしてアルミナが使用されているが、アルミナは硬度が高いため、材料の混合、成形に使用されるスクリューや金型を激しく摩耗させるという問題がある。
上記特許文献3においては、充填材(フィラー)としてタングステン粉末を使用しているが、タングステンは遷移金属であるため電気伝導性が高い。電気、電子部品に設置される放熱用部材としては、電気絶縁性が要求されるためにタングステン等の金属系充填材は使用できないという問題がある。
上記特許文献4においては、難燃剤として金属水酸化物である水酸化アルミニウムが使用されているが、高い難燃性を得るためには金属水酸化物を多量に添加する必要があり、そのために組成物が硬くなってしまい、また成形性が悪化するという問題がある。
上記特許文献5においては、難燃剤としてリン系難燃剤を使用しているが、リン系難燃剤は湿度に弱く、高湿度下では加水分解を起こしてしまい組成物が変色したり、難燃剤がブリードアウトしたりする等の問題がある。
上記特許文献6においては、熱可塑性エラストマー組成物からなる吸音用及び/又は制振用成形体が開示されているが、制振性および熱伝導性ともに不充分であるという問題がある。
上記有機系カップリング剤で表面被覆された水酸化アルミニウムおよび/またはマグネシアクリンカーを無機物および/または有機物で表面被覆した酸化マグネシウムの耐湿試験による吸水率が1.5質量%未満であり、上記表面被覆材料の新モース硬度が10未満であることが望ましい。
更に、上記水添石油樹脂の融点が100℃以上であることが望ましい。
上記水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)は熱可塑性であり、スチレン系単量体の含有割合が20〜50質量%であるからリサイクルが可能であり、かつ柔軟であるから放熱要素と高温物体の双方に良好に密着する。そして重量平均分子量が15万以上であるから良好な耐熱性を有するが、重量平均分子量を50万以下として組成物が良好な成形性を有するように図っている。
本発明では、耐熱性に優れ、熱伝導性が良好であり、かつ柔軟性があり発熱体や冷却部品のような対象物と密着性が良く、更に電気絶縁性があり、耐湿性も良好で劣化しにくく、かつ成形に使用されるスクリューや金型を摩耗させず、射出成形性に優れ、さらに制振性にも優れた熱可塑性エラストマー組成物が提供される。
〔水添熱可塑性スチレン系エラストマー〕
本発明に使用する水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)とは、スチレン系単量体からなる重合体のブロック単位(S)(以下単に重合体ブロック単位(S)ともいう)と、共役ジエン化合物からなる重合体のブロック単位(B)(以下単に重合体ブロック単位(B)ともいう)とからなるブロック共重合体であって、上記ブロック共重合体(E)中の共役ジエン化合物を主体とする重合体のブロック単位(B)は、一部または全部が水素添加されている。
上記スチレン系単量体からなる重合体のブロック単位(S)とは、例えばスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t(ターシャリー)−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等のスチレン系単量体からなる重合体のブロックである。
上記共役ジエン化合物からなる重合体のブロック単位(B)とは、ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン等の共役ジエン系化合物を主体とする重合体のブロックである。
本発明が使用する上記水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)としては、例えばスチレン−エチレンーブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)等が例示される。
本発明において特に有用な水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)は、上記重合体ブロック単位(S)を2個以上、および上記重合体ブロック単位(B)を1個以上有するブロック共重合体(Z)の水素添加物であり、その中でも1個の重合体ブロック単位(B)の両端に各1個(合計2個)の重合体ブロック単位(S)が結合したブロック共重合体(Z)に水素添加することによって重合体ブロック単位(B)の構成単位であるブタジエンをエチレンおよびブチレンに転化せしめたSEBSは耐熱性の点からみて望ましい水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)である。
上記水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)には、本発明の目的を逸脱しない限り、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、ピリジン−ブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム(SIR)、スチレン−エチレン共重合体、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(SBS)、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン(SIS)、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)(α−MeSBα−MeS)、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリイソプレン−ポリ(α−メチルスチレン)、エチレン−プロピレン共重合体(EP)、スチレン−クロロプレンゴム(SCR)、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)共重合体等の他のエラストマーまたは合成ゴムの若干量が添加されてもよい。
更にスチレン系単量体の含有量は20〜50質量%のものを使用する。スチレン系単量体の含有量が20質量%に満たないものでは耐熱性が悪くなり長期耐熱試験を行なうと変形を生じる。しかしスチレン系単量体の含有量が50質量%を超えるとエラストマーのゴム弾性が低下し、発熱体や冷却部品等への密着性が悪くなる。
上記水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)を構成する共役ジエン化合物からなるブロック単位(B)に含まれる1,2−ビニル結合割合は50質量%未満であることが好ましい。1,2−ビニル結合割合が50質量%未満の場合には、組成物にべたつきが出にくくなる。
〔GPC(ゲル浸透クロマトグラフ)法によるポリスチレン換算分子量測定〕
・測定条件
a)測定機器:SIC Autosampler Model 09
Sugai U−620 COLUMN HEATER
Uniflows UF−3005S2B2
b)検出器 :MILLIPORE Waters 410
Differential Refractometer
c)カラム :Shodex KF806M×2本
d)オーブン温度:40℃
e)溶離液 :テトラヒドロフラン(THF) 1.0ml/min
f)標準試料:ポリスチレン
g)注入量 :100μl
h)濃度 :0.020g/10ml
i)試料調整:2,6−ジ−t−ブチル−p−フェノール(BHT)が0.2重量%添加されたTHFを溶媒として、室温で攪拌して溶解させた。
j)補正 :検量線測定時と試料測定時とのBHTのピークのずれを補正して、分子量計算を行った。
上記水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)は、1種のみを用いてもよく、重量平均分子量や1,2−ビニル結合量等が異なる2種以上を併用することも可能である。
本発明において使用されるゴム用軟化剤としては、非芳香族系のオイルが使用され、例えばパラフィン系オイル、ナフテン系オイルが使用されるが、本発明の水添熱可塑性スチレン系エラストマーと良好な相溶性を示すパラフィン系オイルは望ましいゴム用軟化剤である。
上記ゴム用軟化剤としては、動粘度が40℃で50センチストークス(cSt)以上であるものを使用する。動粘度が40℃で50cStに満たない場合には、組成物を成形する際にガスの発生が著しくなり、ブリードが発生しやすくなる。また動粘度が40℃で500cStを超えると、成形品のべたつきが激しくなり、作業性が低下する。
本発明に使用するオレフィン系樹脂として代表的なものは、ポリプロピレンである。上記ポリプロピレンとしては、プロピレン単独重合体、プロピレン−エチレン共重合体、ポリプロピレンにポリエチレンやエチレン−プロピレン共重合体を添加した変性ポリプロピレン等が含有される。
上記オレフィン系樹脂は、組成物を混練して調製する際につなぎの役割を果たし、更に組成物に耐熱性と適度な剛性および成形時の溶融物の流動性を付与する材料であるが、JIS K 6921−2に準拠して測定した荷重たわみ温度が80℃〜140℃の範囲のものを用いると、耐熱性の点でより好ましい。荷重たわみ温度が80℃未満のものでは、成形品に変形が生じるおそれがある。
本発明に使用する水添石油樹脂は、本発明の組成物の損失正接(損失係数)tanδを高めて制振エネルギーの損失を増大させ、制振性を向上させる役割を果たす。
ここに、周期適応力が組成物に与えられた場合の複素弾性率E*は、
E*=E1+iE2
(E1:貯蔵弾性率、E2:損失弾性率)
とし、
tanδ=E2/E1
である。
なお、一周期あたりのエネルギー損失ΔEは、E2に比例する。
また、上記水添石油樹脂は、融点が100℃未満であると、充分な耐熱性が得られず、長期耐熱試験を行なうと変形を生じるおそれがある。
上記水添石油樹脂としては、一部または全部が水素添加された芳香族共重合系樹脂が挙げられ、具体例としてジシクロペンタジエン(DCPD)が挙げられる。
本発明のエラストマー組成物に配合する熱伝導性充填材としては、有機系カップリング剤で表面被覆された水酸化アルミニウムおよび/または1600℃以上で死焼することによって不活性化させたマグネシアクリンカーを無機物および/または有機物で表面被覆した酸化マグネシウムが使用される。
(1) 海水、苦汁等マグネシウム含有原料にカセイソーダ等のアルカリ物質を投入して水酸化マグネシウムスラリーを調製する。
(2) 上記マグネシウムスラリーをろ過し、例えば120℃×10時間の条件で乾燥する。
(3) 乾燥物(水酸化マグネシウム)を600〜1000℃で仮焼して軽焼マグネシア(酸化マグネシウム)を得る。
(4) 上記軽焼マグネシアをロータリーキルン等によって1600℃以上、望ましくは1800〜2100℃で死焼してマグネシアクリンカーを得る。
上記酸化マグネシウムを1600℃以上で焼成して表面不活性のマグネシアクリンカーを得ることを死焼という。ここにマグネシアクリンカーとは上記死焼によってマグネシア成分が溶融して塊状になったものをいう。
上記仮焼において、焼成温度が1200℃を超えると、得られる酸化マグネシウムの活性が大幅に低下する。更に上記死焼において、焼成温度が1600℃以上で酸化マグネシウムが不活性化し、即ち酸や水蒸気との反応性がなくなり、かつ大結晶化する。
上記のようにマグネシアクリンカーは死焼によって不活性化、大結晶化しているから優れた耐湿性と熱伝導性を有する。
上記マグネシアクリンカーの表面被覆に使用される有機物としては、上記水酸化アルミニウム被覆に使用した有機カップリング剤、シランカップリング材、有機合成樹脂等が例示される。上記有機物は2種以上混合使用されてもよい。
上記マグネシアクリンカーは上記無機物および/または有機物の表面被覆によって耐湿性、分散性が向上する。
上記吸水率は下記の耐湿試験によって測定される。
熱伝導性充填材10gをシャーレに入れ、90℃×90%RHの条件下の恒温槽内に静置、48時間後の質量変化を電子天秤によって測定し、下記の式で質量変化率(吸水率)を計算する。
質量変化率(質量%)=試験後の熱伝導性充填材の質量/試験前の熱伝導性充填材の質量×100
ここに新モース硬度とは、硬さの異なる15種類の標準鉱物で固体表面を順次ひっかき、そのときの傷の有無により1〜15の数値で表した硬さである。新モース硬度10未満とは、ざくろ石でひっかくと傷がつくことを示す。
上記成分以外にも所望により、本発明の特徴を損なわない範囲において、必要に応じて他の配合成分を配合することができる。望ましい第3成分としては、本発明の組成物を押出成形、射出成形等によって成形する際、溶融物の張力が向上して延展性を向上させる加工助剤がある。更に該加工助剤は組成物の難燃性を向上させるという点でも望ましい第3成分である。上記加工助剤として代表的なものは、アクリル変性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、高分子量特殊アクリル樹脂等のポリオレフィン用改質剤である。上記加工助剤を添加すると、本発明の組成物の溶融物の延展性や張力が向上して伸び易くなるから、該溶融物に引張り力を及ぼしても切れにくくなる。その結果、例えば押出成形によってシートやフィルムを成形する際、形状が維持されるので成形不良が起こりにくくなる。
その他の第3成分としては、例えばタルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、硫酸カルシウム、亜硫酸カルシウム、燐酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、アルミナ、シリカ、珪藻土、ドロマイト、石膏、焼成クレー、アスベスト、マイカ、ケイ酸カルシウム、ベントナイト、ホワイトカーボン、カーボンブラック、鉄粉、アルミニウム粉、石粉、高炉スラグ、フライアッシュ、セメント、ジルコニア粉等の無機充填材や、リンター、リネン、サイザル、木粉、ヤシ粉、クルミ粉、でん粉、小麦粉、米粉等の有機充填材や、木綿、麻、羊毛等の天然繊維、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アクリル繊維、ビスコース繊維、アセテート繊維等の有機合成繊維や、アスベスト繊維、ガラス繊維、炭素繊維、セラミック繊維、金属繊維、ウィスカー繊維等の繊維充填材や、色素、顔料、カーボンブラックなどの着色剤や、あるいは、帯電防止剤、導電性付与剤、老化防止剤、難燃剤、防炎剤、撥水剤、撥油剤、防虫剤、防腐剤、ワックス類、界面活性剤、滑剤、紫外線吸収剤、DBP、DOP、熱安定剤、キレート剤、分散剤等の各種添加剤を添加してもよい。特に分散剤を添加した場合には、本発明に使用する樹脂等と熱伝導性充填材等との相溶性がよくなり、分散が良くなり柔軟性に優れた成形体を得ることができる。該分散剤としては、金属石鹸を用いることができ、該金属石鹸は、高級脂肪酸の金属塩であり、高級脂肪酸として、ステアリン酸、1,2−ヒドロキシステアリン酸、ベヘン酸、ラウリン酸等が例示され、金属としてマグネシウム、カルシウム、リチウム、バリウム、ナトリウム、亜鉛等が例示される。これら金属石鹸の中でも、流動性が極めて良好であり、融点が160℃以下であるため混練時に分散しやすいステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムを使用することが特に望ましい。
また、本発明の組成物は、本発明の特徴を損なわない範囲であれば、他のポリマーをブレンドして使用することも可能である。
本発明の組成物は、上記水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)100質量部と、上記ゴム用軟化剤100〜600質量部と、上記オレフィン系樹脂1〜100質量部と、上記水添石油樹脂50〜300質量部と、上記の混合物100体積部に対して、有機系カップリング剤で表面被覆された水酸化アルミニウムおよび/または1600℃以上で死焼することによって不活性化させたマグネシアクリンカーを無機物および/または有機物で表面被覆した酸化マグネシウムを40〜400体積部配合したものである。
上記水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)(以下エラストマーと云う)100質量部に対して、上記ゴム用軟化剤の添加量が600質量部を超えた組成物を使用して成形することによって得られた成形物では、該成形物の表面に該軟化剤がブリードしてきて顕著にべたつきが発生する。一方該軟化剤の添加量が100質量部以下の組成物の場合には、成形時の溶融物の流動性が殆んどなく、成形が不可能となる。
上記エラストマー100質量部に対して、上記オレフィン系樹脂の添加量が1質量部に満たない組成物では、オレフィン系樹脂のつなぎの作用が不充分となり、混練中に混練物がまとまりにくくなりくずれやすくなるので成形が不可能となる。一方該オレフィン樹脂の添加量が100質量部を超えた組成物では、ゴム弾性がなくなって対象物に対する密着性が悪くなる。
上記エラストマー100質量部に対して、上記水添石油樹脂の添加量が50質量部に満たない組成物では、振動エネルギーが好適に熱エネルギーに変換されず、緩衝材として要求される制振性が不充分となる。一方300質量部を超えた組成物は、混練物がまとまりにくくくずれやすくなるので成形性が悪くなると共に、得られる成形品のべたつきが激しくなり、成形時の作業性が悪化する。
上記エラストマー、ゴム用軟化剤、オレフィン系樹脂、および水添石油樹脂の混合物100体積部に対して、上記熱伝導性充填材の配合量が40体積部に満たない場合には、組成物の熱伝導率が低くなり、一方上記熱伝導性充填材の配合量が400体積部を超えると、成形物が硬くなり、ゴム弾性が低くなる。
(実施例1〜16、比較例1〜15)
〔材料〕
下記の材料を使用した。
1.水添熱可塑性スチレン系エラストマー(SEBS)
(1)G1651H〔商品名、クレイトンポリマージャパン(株)製〕、スチレン系単量体の含有量:33%、Mw:29万、1,2−ビニル結合量37質量%
(2)MD1633〔商品名、クレイトンポリマージャパン(株)製〕、スチレン系単量体の含有量:30%、Mw:45万、1,2−ビニル結合量37質量%
(3)G1650〔商品名、クレイトンポリマージャパン(株)製〕、スチレン系単量体の含有量:29%、Mw:11万、1,2−ビニル結合量37質量%
2.ゴム用軟化剤
(1)PW90〔商品名、出光石油化学(株)製〕、動粘度(40℃):84.0cSt
(2)PW380〔商品名、出光石油化学(株)製〕、動粘度(40℃):383.4cSt
3.オレフィン系樹脂
(1)PB222A〔商品名、サンアロマー(株)製〕、ポリプロピレン(ブロックタイプ)、曲げ弾性率:1000MPa、MFR(230℃):0.8g/10min、荷重たわみ温度:80℃
(2)ノティオPN2060〔商品名、三井化学(株)製〕、ポリプロピレン系エラストマー、ショアーA硬さ(ASTM D2240):82、MFR(230℃):6g/10min、TMA(荷重2Kg/cm2における針(1mmφ)進入軟化温度):120℃
4.水添石油樹脂
アイマーブP−140〔商品名、出光興産(株)製〕、DPCD(ジシクロペンタジエン)、融点140℃
5.水添テルペン樹脂
クリアロンP85〔商品名、ヤスハラケミカル(株)製〕、水添テルペン樹脂、融点85℃
6.熱伝導性充填材(フィラー)
(1)RF−50−HR〔商品名、宇部マテリアルズ(株)製〕、マグネシアクリンカー(死焼温度1800℃以上)、平均粒径50μm、シリカによる表面被覆、吸水率0.2%、被覆層の新モース硬度7
(2)BF083T〔商品名、日本軽金属(株)製〕、水酸化アルミニウム、平均粒径10μm、有機チタネート系化合物による表面被覆、吸水率0.2%、ソーダ成分0.08%
(3)パイロキスマ5301K(5301K)〔商品名、協和化学工業(株)製〕、酸化マグネシウム、平均粒径2μm、シランカップリング剤による表面被覆、吸水率0.4%
(4)U99NC〔商品名、宇部マテリアルズ(株)製〕、表面焼成マグネシアクリンカー(高温処理酸化マグネシウム粉末)、平均粒径7μm、吸水率2%以上
(5)パイロライザーHG(HG)〔商品名、旭硝子(株)製〕、水酸化アルミニウム、平均粒径1.2μm、硝酸アンモニウムによる表面被覆、吸水率2%以上
(6)アルナビーズCB−A30S(CB−A30S)〔商品名、昭和電工(株)製〕、アルミナ、平均粒径28μm、新モース硬度12、吸水率0.1%以上
(7)UC−95H〔商品名、宇部マテリアルズ(株)製〕、酸化マグネシウム、平均粒径3.3μm、吸水率2%以上
7.加工助剤
メタブレンA−3000〔商品名、三菱レイヨン(株)製〕、アクリル変性ポリテトラフルオロエチレン(アクリル変性PTFE)
8.分散剤(金属石鹸)
SM−1000〔商品名、堺化学工業株式会社製〕、ステアリン酸マグネシウム
ゴム用軟化剤、フィラー以外の材料をドライブレンドし、これにゴム用軟化剤を含浸させて混合物を作製する。その後、混合物を下記の条件で押出機で溶融混練して、エラストマー組成物のベース材を製造する。
押出機・・・KZW32TW−60MG−NH(商品名、(株)テクノベル製)
シリンダー温度・・・180〜220℃
スクリュー回転数・・・300rpm
上記のようにして製造した上記エラストマー組成物のベース材をブラベンダープラストグラフに投入し、加熱溶融した後上記フィラーを投入し混練を行ない、熱伝導性エラストマー組成物を製造する。
Brabender Plastograph(ブラベンダープラストグラフ、商品名、Brabender社製)
槽温度・・・160℃
ローター回転数・・・100rpm
混練時間・・・11min
射出成形機・・・100MSIII−10E(商品名、三菱重工業(株)製)
射出成形温度・・・170℃
射出圧力・・・30%
射出時間・・・10sec
金型温度・・・40℃
上記条件で厚さ2mm、幅125mm、長さ125mmのプレート、厚さ6mm、幅25mm、長さ125mmのバーを作製した。
プレス機・・・40ton電動油圧成形機
加熱温度・・・上型:195℃、下型:200℃
加熱時間・・・2分
プレス圧・・・5MPa
冷却時間・・・2分
上記条件で厚さ0.5mmおよび1.0mm、幅200mm、長さ200mmのプレートを打ち抜いて熱伝導率、接触熱抵抗の測定用試料を作製した。
実施例1〜16、比較例1〜15のそれぞれについて下記の評価を行った。なお、各物性の評価結果は、実施例1〜7は表1に、実施例8〜16は表2に、比較例1〜10は表3に、比較例11〜15は表4に示した。
硬さ測定・・・厚さ6mmの試験片を用いJIS K 6253Aに準拠して行った。
熱伝導率・・・レーザーフラッシュ法により熱拡散率を測定(温度19〜30℃)(JIS R 1611)
DSCにより比熱を測定(JIS K 7123に準拠)
水中置換法により比重を測定(JIS K 7112に準拠)
上記測定結果を基に、次の通りに熱伝導率を算出した。
熱伝導率=熱拡散率×比熱×比重
試料:直径10mm、厚さ1.0mmの円盤
耐湿性・・・試料(射出成形機にて作製した80.0mm×80.0mm×1.0mmのプレート)を80℃×85%RHの恒温槽内に静置、500時間後の体積抵抗率、変形を次の通り評価した。
体積抵抗率 ○:1.0×1010Ω・cm以上、×:1.0×1010Ω・cm未満
変形 ◎:変形なし、○:わずかに変形、△:変形、×:激しく変形
難燃性(UL規格)・・・UL規格に準拠して行なった。
制振性(tanδ)・・・測定機:ARES−RDS(ティー・エイ・インスツルメント社製)
振動周波数:30Hz
昇温速度:5℃/min
試験温度:−50℃から100℃まで上記昇温速度で測定を行い、25℃の値を算出
試験片:トーションプレート(肉厚2mm、長さ40mm、幅10mm)
スクリュー摩耗性・・・ブラベンダープラストグラフによる混練後に目視で判断
○:摩耗していない、△:若干摩耗している、×:摩耗が激しい
べたつき・・・上記条件にて作製したプレスシートを触感にて判断
◎:べたついていない、△:若干べたつく、×:べたつきが激しい
硬さ・・・HsA98未満(硬すぎると発熱体との密着性が悪くなる)。
熱伝導率・・・1.0W/m・K以上(熱伝導率が低いと、熱伝達効率が低下し、充分な放熱効果を得ることができない。)
耐湿性・・・耐湿試験後に体積抵抗率1.0×1010Ω・cm以上、および変形なきこと(体積抵抗率が低いと絶縁性を有しているとはいえない)。
難燃性・・・UL規格でHB(試料厚さ1.0mm)以上であること(HB未満であると、燃焼速度が速いため充分な難燃性を有しているとはいえない)。
スクリュー摩耗性・・・射出成形、押出成形等でスクリューが摩耗しないこと。
制振性(tanδ)・・・0.5以上(0.5未満であると充分な制振性を有しているとはいえない)。
べたつき・・・べたつきが激しくないこと(べたつきが激しいと成形加工時に作業性が悪くなる)。
一方、1600℃以上で死焼されていない酸化マグネシウムをシランカップリング剤で表面被覆したパイロキスマ5301Kを使用した比較例1、表面被覆のないマグネシアクリンカーであるU99NCを使用した比較例2、無機物(硝酸アンモニウム)により表面被覆された水酸化アルミニウムであるパイロライザーHGを使用した比較例3、表面処理のない酸化マグネシウムであるUC−95Hを使用した比較例5は、いずれも耐湿試験において試料にひび割れが生じ、体積抵抗率の測定が不可能であった。
また表面被覆処理がされていないアルミナであるアルナビーズCB−A30S(新モース硬度が10以上(12))を使用した比較例4、およびフィラーの配合量が400体積部を超えた比較例6、7は、スクリューに著しい摩耗が見られ、更に摩耗によって削られた機器表面の金属粉が組成物に混入したのが原因と思われる該組成物の着色が確認された。
そしてフィラーの配合量が40体積部に満たない比較例8、9では、熱伝導率が1.0W/m・Kに満たず、難燃性も悪い。また、フィラーの配合量が400体積部を超える比較例10では、ゴム弾性が低くなって制振性が0.5未満となった。
そして、水添石油樹脂の添加量が50質量部に満たない比較例11では、制振性が0.5に満たなかった。また、水添石油樹脂の添加量が300質量部を超えた比較例12では、べたつきが著しく激しかった。さらに、水添石油樹脂が添加されていない比較例13では、制振性が0.5未満となった。
そして、エラストマーとして重量平均分子量11万(<15万)のG1650を使用した比較例14では、耐湿試験において激しい変形が見られた。
そして、水添石油樹脂に対する比較樹脂として水添テルペン樹脂を添加した比較例15では、耐湿試験において激しい変形が見られ、また若干べたつきが生じた。
Claims (3)
- スチレン系単量体からなる重合体のブロック単位(S)と、
共役ジエン化合物からなる重合体のブロック単位(B)と、
からなるブロック共重合体(Z)の水素添加物であり、
重量平均分子量15万〜50万、スチレン系単量体の含有割合が20〜50質量%である水添熱可塑性スチレン系エラストマー(E)100質量部と、
動粘度が40℃において50〜500センチストークス(cSt)のゴム用軟化剤100〜600質量部と、
オレフィン系樹脂1〜100質量部と、
水添石油樹脂50〜300質量部と、
の混合物100体積部に対して、
表面被覆水酸化アルミニウムおよび/または表面被覆酸化マグネシウムを熱伝導性充填材として40〜400体積部配合した組成物であって、
上記表面被覆水酸化アルミニウムは有機系カップリング剤で表面被覆された水酸化アルミニウムであり、
上記表面被覆酸化マグネシウムは不活性化させた酸化マグネシウムであるマグネシアクリンカーを無機物および/または有機物で表面被覆した酸化マグネシウムである
ことを特徴とする熱伝導性エラストマー組成物。 - 上記有機系カップリング剤で表面被覆された水酸化アルミニウムおよび/またはマグネシアクリンカーを無機物および/または有機物で表面被覆した酸化マグネシウムの耐湿試験による吸水率が1.5質量%未満であり、上記熱伝導性充填材の新モース硬度が10未満である請求項1に記載の熱伝導性エラストマー組成物。
- 上記水添石油樹脂の融点が100℃以上である請求項1または請求項2に記載の熱伝導性エラストマー組成物。
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