JP5612330B2 - セラミックス繊維の製造方法およびその方法により得られるセラミックス繊維 - Google Patents
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Description
また、炭素含有量の多いSiOC系繊維(化学組成におけるCとSiとの比がC/Si>1)では、1000℃以上の高温条件下での酸化が著しいという欠点を有する。
(1)化学組成が、式(I):
SiOxCyHz (I)
(式中、x、yおよびzは、それぞれ1≦x≦2、1≦y≦2および3≦z≦6を満たす数である)
で表される溶融性シリコーン樹脂を、溶融紡糸して繊維を得る工程、
(2)得られた繊維を、不融化剤の存在下、不活性ガスの流通下に、常温よりも高く前記樹脂の軟化点よりも低い温度で加熱して、不融化剤からの蒸気により不融化する工程、および
(3)不融化した繊維を、不活性雰囲気中で焼成する工程
を含む、セラミックス繊維の製造方法が提供される。
SiOxCy (II)
(式中、xおよびyは、それぞれ1≦x≦2および0.2≦y≦1を満たす数である)
で表されるセラミックス繊維が提供される。
第1工程では、化学組成が、式(I):
SiOxCyHz (I)
(式中、x、yおよびzは、それぞれ1≦x≦2、1≦y≦2および3≦z≦6を満たす数である)
で表される溶融性シリコーン樹脂を、溶融紡糸して繊維を得る。
本発明において、溶融性シリコーン樹脂の軟化点は、JIS K 2207に規定の試験法に準拠して測定したときに、通常60℃以上、好ましくは80℃以上、より好ましくは100℃以上、さらに好ましくは140℃以上である。
ポリシロキサンは、公知物質であり、その製造方法は特に限定されず、例えばジアルキルジクロロシランを加水分解してジアルキルシラノールとし、これを脱水縮合反応させることによって製造できる。
このようなポリシロキサンとしては、例えばSR350(General Electric Silicone products Div.社)などの市販されているものを用いることができる。あるいは、信越化学工業株式会社から市販されているゴムコンパウンドKE-931-UまたはKE-520-Uからの成型体を用いてもよい。
このポリシルセスキオキサンは公知物質であり、その製造方法は特に限定されず、例えば特開昭53−88099号公報に記載の方法により製造できる。ポリシルセスキオキサンの平均分子量は特に限定されないが、例えばGPCにより測定して得られ重量平均分子量が5000〜300,000、好ましくは8000〜200,000である。
このようなポリシルセスキオキサンとしては、例えば、YR3370(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社)、Wacker-Belsil(商標)PMS MK(Wacker Chemie AG社)、Gransil PSQ(Grant Industries社)などの市販されているものを好適に用いることができる。
より具体的には、例えばペレット状にした溶融性シリコーン樹脂を、押出機型紡糸機のスクリューにより搬送しながら加熱して溶融した後、計量ポンプによって流量を調節して紡糸口金から吐出させ、巻取装置により回収してシリコーン樹脂繊維を得る。
なお、上記の装置において、紡糸口金付近の温度を調節できる保温筒、冷却送風装置などを適宜設けてもよい。
溶融温度は、原料の溶融性シリコーン樹脂の軟化点にもよるが、通常60〜200℃、好ましくは100〜150℃の範囲である。
巻き取り速度は、所望の繊維径が得られ、かつ糸切れが起こらない速度であれば特に限定されないが、通常120〜1200 m/分の範囲で適宜設定される。
ここで、「バッチ方式で不融化する」とは、第1工程で得られる繊維を適当な長さの束にして、これを該装置内で一括して不融化処理することを意味する。
不融化装置は、その内部にシリコーン樹脂繊維束を下流側に、不融化剤を上流側に配置できる空間を有する管と、該管内の繊維束が配置された部分を加熱するための加熱装置とを有する。この不融化装置では、不融化剤からの蒸気を効率的に繊維束と接触させるために、不活性ガスを流通させる通気管を、管の両端に接続してある。
まず、管内の下流側に、シリコーン樹脂繊維の束を配置し、上流側に不融化剤であるSiCl4の入った容器を配置する。次いで、装置内の雰囲気を不活性ガスで置換する。なお、繊維と不融化剤との間隔は特に限定されないが、繊維と不融化剤との間に所定の間隔をあけて、両者間の温度差を維持できるようにするのが好ましい。
加熱の際の昇温速度は、特に限定されないが、通常0.05〜1.0℃/分である。また、加熱温度の保持時間は、通常1〜48時間、好ましくは6〜24時間である。
不融化剤が配置された側の温度は、不融化処理工程の間、常温を維持するのが好ましい。
例えば、図2に示すような繊維の送出部と巻取部とが設けられた不融化装置を用いて、第1工程で得られる繊維を不融化装置内へ連続的に送り出し、不融化された繊維を巻き取ることによって、繊維の不融化処理を連続的に行うことができる。この場合の加熱温度などの処理条件は、バッチ方式の場合と同様である。
なお、第3工程で用いられる焼成炉は、焼成時の雰囲気を制御できるものであればよく、特に限定されない。
また、焼成工程では、繊維に張力をかけると繊維の収縮を防止できる。
したがって、本発明の製造方法の第2工程および第3工程では、繊維に張力をかけた状態で、不融化処理および焼成を行うのが好ましい。
連続的に不融化処理および焼成を行う場合は、例えば繊維の送出部に張力制御装置を設けることにより、張力をかけることができる。
繊維にかける張力の強さは、糸切れを起こさない範囲で適宜設定できるが、好ましくは5〜100 MPa、より好ましくは10〜30 MPaである。
化学組成が、式(II):
SiOxCy (II)
(式中、xおよびyは、それぞれ1≦x≦2および0.2≦y≦1を満たす数である)
で表される。
なお、繊維の構成元素として水素が微量含まれている場合も、本発明のセラミックス繊維に含まれるが、その場合は化学組成におけるHとSiとの比がH/Si<0.1であるのが好ましい。
(1)溶融性シリコーン樹脂の溶融紡糸
溶融性シリコーン樹脂として、YR3370(化学組成:SiO1.78C1.22H3.67、軟化点:約109℃、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)を用いた。
YR3370(20 g)を、底部に紡糸口金(口径0.5 mm)を有するガラス製紡糸管に入れ、該管を紡糸装置に装着した。次いで、該管をアルゴンガス雰囲気下で130〜180℃に加熱して、YR3370を溶融した。溶融したYR3370をアルゴンガス圧によって紡糸口金から液滴状に押し出し、該液滴を紡糸装置のドラムにより600 m/分の速度で巻き取って、シリコーン樹脂繊維(平均直径約15μm)を得た。
不融化処理のために用いるガラス管(全長500 mm、直径70 mm)の中に、得られた繊維の束(長さ約120 mm、重量約100 mg)と、不融化剤であるSiCl4(10 ml)の入ったガラスシャーレ(直径30 mm、高さ10 mm)とを約300 mmの間隔をあけて配置した。次いで、このガラス管内の雰囲気を窒素ガスで置換した。なお、ガラス管の繊維束側の外周にラバーヒーター(長さ240 mm;株式会社三商製)を取り付け、ガラス管内の繊維を、不融化剤が配置された側とは独立して加熱できるようにした。
不融化された繊維を焼成炉に入れて、アルゴンガス雰囲気下200℃/時間の昇温速度で室温から1000℃まで加熱した。この焼成温度を1時間維持して、Si-O-C系セラミックス繊維(平均直径約14.3μm)を得た。得られたセラミックス繊維は、相互に付着しないで繊維の形態を保っており、縮れも認められなかった。得られたセラミックス繊維の電子顕微鏡写真を図3に示す。
実施例1(1)と同様にして、YR3370のシリコーン樹脂繊維を得た。得られた繊維の束を黒鉛板の上に並べ、その両端をカーボンテープで固定し、さらに繊維上に黒鉛製の重し(10 g)を2個置いて、繊維に張力をかけた。
上記のように張力をかけたこと以外は実施例1と同じ条件で、繊維の不融化処理および焼成を行って、セラミックス繊維(平均直径12.5μm)を得た。得られたセラミックス繊維は、相互に付着しないで繊維の形態を保っており、縮れも認められなかった。
実施例1(1)と同様にして、YR3370のシリコーン樹脂繊維を得た。得られた繊維の束を実施例2と同様に黒鉛板上に固定し、重しを置いた。そして、この繊維の束と、不融化剤(SiCl4)の入ったシャーレとを、約300 mmの間隔をあけてガラス管内に配置した。
このガラス管内に、室温(26℃)のアルゴンガスを不融化剤が配置された側から繊維束が配置された側へ50 ml/分で流通させながら、ラバーヒーターにより繊維束を室温から60℃まで1時間で加熱した。この温度で8時間維持した後、室温に戻して、SiCl4蒸気による不融化処理を行った。ガラス管内の不融化剤が配置された側の温度は、不融化処理工程の間、室温を維持した。
不融化した繊維束に張力をかけたこと以外は実施例1と同じ条件で焼成を行って、セラミックス繊維(平均直径10.1μm)を得た。得られたセラミックス繊維は、相互に付着しないで繊維の形態を保っており、縮れも認められなかった。
実施例1(1)と同様にして、YR3370のシリコーン樹脂繊維を得た。得られた繊維の束と、不融化剤(SiCl4)の入ったシャーレとを約300 mmの間隔をあけてガラス管内に配置した。このガラス管内に、室温(26℃)のアルゴンガスを不融化剤が配置された側から繊維束が配置された側へ50 ml/分で流通させながら、繊維および不融化剤を室温で1時間保持した。不融化処理工程の間、繊維には張力をかけず、また加熱もしなかった。
この繊維を実施例1(3)と同じ条件で焼成して、セラミックス繊維(平均直径約14.5μm)を得た。
なお、この比較例1の製造工程は、非特許文献2に記載の方法と同様のものである。
上記のようにして得られたセラミックス繊維は、相互に付着しないで繊維の形態を保っていたが、縮みが著しかった。
試験例1:耐熱性および耐酸化性
実施例1〜3および比較例で得られた各セラミックス繊維を、ガスバーナの炎(ラディエーションサーモメータによる測定温度として、約1400〜1461℃)に30秒間曝露した後、それらの形態を目視および電子顕微鏡により観察した。実施例1で得られた本発明のセラミックス繊維の試験後の電子顕微鏡写真を図4に示す。
いずれの繊維も、燃焼および繊維同士の付着は認められず、繊維としての形態を保っていた。また、図4からも明らかなように、実施例1で得られたセラミックス繊維の表面には、亀裂などの損傷は認められなかった。
図5から明らかなように、実施例1で得られたセラミックス繊維の表面には、若干の亀裂が生じているものの、繊維同士の付着は認められなかった。
以上の試験結果から、本発明のセラミックス繊維は、優れた耐熱性および耐酸化性を有することが示された。
セラミックス繊維の機械的強度として、引張強度を測定した。測定法は、次のとおりである。まず、1本の繊維を台紙に張り付けて、末端をクリップで固定した。そして、引張試験機TENSILON UTM-II(株式会社オリエンテック製)およびロードセルORIENTEC TLU-0.1L-F2(0.1 kgf、株式会社オリエンテック製)を用いて、ゲージ長10 mm、クロスヘッドスピード2.0 mm/分で、繊維の引張強度を測定した。
各繊維の引張強度(繊維10本当たりの平均値)を表1に示す。
上記の試験結果から、本発明のセラミックス繊維は、優れた機械的強度を有することが示された。
2:加熱装置
3:シリコーン樹脂の繊維
4:不融化剤
5:栓
6:通気管
7:送出部
8:巻取部
Claims (3)
- (1)化学組成が、式(I):
SiOxCyHz (I)
(式中、x、yおよびzは、それぞれ1≦x≦2、1≦y≦2および3≦z≦6を満たす数である)
で表される溶融性シリコーン樹脂を、溶融紡糸して繊維を得る工程、
(2)得られた繊維を、常温としての15〜35℃に維持された不融化剤の存在下、不活性ガスの流通下に、常温よりも高く前記樹脂の軟化点よりも低い温度で加熱して、不融化剤からの蒸気により不融化する工程、および
(3)不融化した繊維を、不活性雰囲気中で焼成する工程
を含む、セラミックス繊維の製造方法。 - 前記の不融化工程および焼成工程が、繊維に張力をかけた状態で行われる、請求項1に記載の製造方法。
- 前記の不融化剤が、SiCl4、CH3SiCl3、TiCl4およびBCl3から選択される、請求項1または2に記載の製造方法。
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