JP5611618B2 - 多孔質材料の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、フィルタ、断熱材、吸音材、衝撃緩衝材等として好適に用いることができる多孔質材料の製造方法に関する。
内部に多数の空隙を含有する構造を有する多孔質材料は、その特性から、気相・液相に拘わらず各種流体のフィルタ、断熱材、吸音材、衝撃緩衝材等、広範囲の用途に使われている。また、上記の物理的特性のみならず、内部の表面積が大きいことから、触媒の担持体、もしくは多孔質材料が直接触媒として機能する等、化学反応場としての利用もなされている。
昨今、ファインケミカル用途や、飲料水の製造、その他工業プロセス用水の製造等の目的から、非常に微小な粒子のろ過が必要とされる場面が多くなっている。その際、孔径がサブミクロンオーダーのろ過膜が必要とされるが、この領域では孔を媒体が通過する際の抵抗が大きく、膜の圧力損失が大きくなるという課題がある。また、一般的に有機系の膜で構成されたろ過材料では、ろ過材料内部のランダムに配列した樹脂や繊維の空隙部で、粒子を捕捉することから、一度捕捉された粒子を脱離させることが困難であり、汚染されやすいという傾向がある。
この状況を解決するために、一方向に配向した表面から裏面に貫通する細孔を有する多孔質材料を、ろ過材料として適用することが検討されている。この場合、細孔が一直線で一次側から二次側まで貫通していることから、有機系の膜のようにランダムに配向した膜で構成されたろ過材料に比較してパスが短くなり、圧力損失の低減が期待できる。
また、このような一方向に配向し、一直線の細孔を有するろ過材料において、単位面積当たりの孔数を増加させることができれば、流束を向上させることができる。さらに、粒子を捕捉するのは細孔の表面部においてであり、ろ過材料内部に粒子が侵入しないことから、汚染しにくいという効果が期待できる。
一方向に配向した細孔を形成する方法として、アルミニウム等の金属材料の陽極酸化処理を用いる方法がある。この方法では、サブミクロンサイズの孔径を持つ細孔を自律的に形成することができる。孔径は電解液の組成、電圧等の条件により制御可能であり、孔径分布の揃った細孔を有する多孔質材料を得ることができる。作製した陽極酸化膜は、アルミニウム素地の溶解、逆電解によるアルミニウム基板からの剥離処理等によって、アルミニウム基板から分離することが可能であり、分離した陽極酸化膜をろ過材料として使用することができる。
しかしながら、陽極酸化膜はアモルファスのアルミニウム酸化物であって、化学的に不安定であり、水または薬品に接触すると、溶解する性質がある。また、内部に水分及び電解時に使用した電解液の組成物を残留物として含んでいるので、水または薬品に接触すると、これらの残留物質が水中に溶出したり、水または薬品に含まれる成分と反応したりする可能性がある。したがって、孔壁の溶解、膜厚の減少、膜の微細構造の変化が発生し、最終的には膜の破損に至る場合もある。
このような観点から、アモルファスのアルミニウム陽極酸化膜をろ過フィルタとして使用する場合、常温の媒体に対する短期間の使用は可能であっても、長期間にわたり、流束、分離孔径、強度といった膜の性能を維持することは困難である。
このような問題に鑑みて、特許文献1では、これらの特性を改善するために、アモルファスのアルミニウム陽極酸化膜を熱処理により結晶化する技術が開示されている。アルミニウム陽極酸化膜を結晶性のアルミナとすることにより、特にαアルミナとすることにより、著しく耐水性を向上させることが可能である。しかしながら、アルミニウム陽極酸化膜は熱処理時に変形し、割れが発生したり、反りが発生したりしてフィルタ材料として適用できなくなる等の問題が発生する。
一方、アルミニウム陽極酸化膜をアルミニウム基材から剥離する際には、特許文献2に示されているように、陽極酸化プロセスにおいて電流回復現象を利用してバリア層の厚みを薄くさせた後に、逆電解を実施する。この電流回復処理においては、低い電解電圧で陽極酸化プロセスを行うことになるので、基材側の細孔の孔径が小さくなる。そのため、表面側に比較して基材側の細孔径は小さく、厚さ方向に細孔径の非対称性が生ずる。結果として、一方向に配向し、表面から裏面に貫通する孔径分布の揃った細孔を有する多孔質材料を得ることができないでいた。
特開平2−149698号 特公平5−65212号
本発明は、一方向に配向し、表面から裏面に貫通する孔径分布の揃った細孔、すなわち厚さ方向において孔径の揃ったスルーホールを有する多孔質材料を提供することを目的とする。
上記目的を達成すべく、本発明の一態様は、アルミニウム基材を電解液に浸漬させて陽極酸化処理を行い、前記アルミニウム基材の表面に、アモルファス状であって、厚さ方向に貫通する第1の孔部を有する第1の陽極酸化膜を形成する第1の工程と、前記第1の陽極酸化膜に対してアルミニウムの融点以下の温度で第1の熱処理を実施し、前記第1の陽極酸化膜を化学的に安定化させる第2の工程と、前記アルミニウム基材に再度前記陽極酸化処理を行い、前記アルミニウム基材の表面において、前記第1の陽極酸化膜の第1の孔部と連通し、厚さ方向に貫通する第2の孔部を有するアモルファス状の第2の陽極酸化膜を、前記第1の陽極酸化膜と連続するようにして形成する第3の工程と、前記アルミニウム基材及び前記第2の陽極酸化膜を除去する第4の工程とを具えること特徴とする、多孔質材料の製造方法に関する。
上記態様によれば、目的とする多孔質材料を製造するに際して、アルミニウム基材上に第1の陽極酸化膜及び第2の陽極酸化膜を互いの貫通孔である第1の孔部及び第2の孔部が連続するようにして形成した後、アルミニウム基材及び第2の陽極酸化膜を除去するようにしている。
この結果、目的とする多孔質材料は、第1の孔部から構成されるスルーホールと、第1の陽極酸化膜から構成される壁面材とから構成されるようになる。
従来、上述のようにして多孔質材料を製造しようとすると、第1の陽極酸化膜を電解液、酸又はアルカリに浸漬させることになるので、化学的に不安定なアモルファス状の第1の陽極酸化膜は浸食されるようになる。この結果、第1の陽極酸化膜における孔壁も溶解されることになり、第1の孔部がその長さ方向の中心に対してより対称でなくなり、孔径も不均一となり、例えば第1の陽極酸化膜の上面の孔径は大きく、第1の陽極酸化膜の下面の孔径は小さくなってしまう傾向があった。また、第1の陽極酸化膜の膜厚が減少してしまうなどの問題も生じてしまっていた。
しかしながら、上記態様においては、第1の陽極酸化膜を、上述した電解液、酸又はアルカリに浸漬する以前に、アルミニウムの融点以下の温度で熱処理を実施するようにしている。この結果、第1の陽極酸化膜は、吸着水及び水和水の脱離により、微小領域の結晶構造が変化し、化学的に安定化する。したがって、第1の熱処理により、第1の陽極酸化膜の、電解液等に対する耐性が向上する。また、第1の熱処理の熱処理温度が高いほど、及び熱処理時間が長いほど結晶性のアルミナの比率が高くなることから、効果が大きい。
このため、第1の陽極酸化膜における孔壁の溶解が抑制され、その配向が一方向に揃った状態で、第1の孔部がその長さ方向の中心に対して対象となるとともに、孔径も均一となり、厚さ方向において孔径の揃ったスルーホール(第1の孔部)を有する、第1の陽極酸化膜を壁面材とする多孔質材料を得ることができるようになる。
本発明の一例において、第4の工程は、前記アルミニウム基材、前記第1の陽極酸化膜及び前記第2の陽極酸化膜をアルミニウム基板を溶解させる電解液に浸漬させて電解処理を行うことにより、前記アルミニウム基材を除去する工程と、前記第1の陽極酸化膜及び残存する前記第2の陽極酸化膜を酸又はアルカリに浸漬させることにより、残存する第2の陽極酸化膜を除去する工程とを含むようにすることができる。この場合、上記アルミニウム基材及び第2の陽極酸化膜の除去を確実に行うことができるようになる。
本発明の一例において、第4の工程の後、第1の陽極酸化膜に対して第2の熱処理を行って結晶化させる第5の工程を具えることができる。この場合、第1の陽極酸化膜、すなわち多孔質材料を結晶化させることができるので、その耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性、耐高温水性等の化学的性質、すなわち化学的安定性を向上させることができ、得られた多孔質材料の適用範囲を拡大することができる。
例えば、上記多孔質材料をろ過材料として使用するような場合においても、常温かつ中性の腐食性の無い気体、液体のみならず、高温及び/又は酸性、アルカリ性の腐食性の気体、液体にも使用することができる。
なお、多孔質材料を構成する第1の陽極酸化膜は、一般には酸化アルミニウムの組成を有する。したがって、上述した第2の熱処理を行うことにより、第1の陽極酸化膜を結晶性のアルミナから構成することができるようになる。
以上説明したように、本発明によれば、一方向に配向し、表面から裏面に貫通する孔径分布の揃った細孔、すなわち厚さ方向において孔径の揃ったスルーホールを有する多孔質材料を提供することができる。
本実施形態における多孔質材料の製造方法を説明するための工程図である。 本実施形態における多孔質材料の製造方法を説明するための工程図である。 本実施形態における多孔質材料の製造方法を説明するための工程図である。 本実施形態における多孔質材料の製造方法を説明するための工程図である。 本実施形態における多孔質材料の製造方法を説明するための工程図である。 実施形態における多孔質材料の断面SEM写真である。 図6の多孔質材料の断面の拡大SEM写真である。 実施形態における多孔質材料の表面SEM写真である。 第2の陽極酸化膜を溶解除去する際の、硫酸水溶液への浸漬時間と、得られるスルーホールの孔径との関係を示すグラフである。 実施形態における、第2の熱処理における熱処理温度毎の、多孔質材料のX線回折グラフである。 図10に示す各温度で熱処理を実施した後の多孔質材料を、水中に浸漬させた後の重量変化を示すグラフである。
以下、本発明の詳細、その他の特徴及び利点について、実施の形態に基づいて説明する。
図1〜5は、本実施形態における多孔質材料の製造方法を説明するための工程図である。最初に、例えば純度99.99%の円板形状のアルミニウム板を準備し、これをアルミニウム基材11とする。なお、このアルミニウム基材11に対し、必要に応じてエタノール及び過塩素酸の混合溶液(例えば、エタノール:過塩素酸=4:1)で電解処理し、その表面に形成された皮膜を予め除去し、表面を平滑化しておくことができる。この電解処理は、例えば10℃以下の温度で、1000A/m、3分の条件で行うことができる。
次いで、図1に示すように、アルミニウム基材11を第1の電解液に浸漬して陽極酸化処理を行い、アルミニウム基材11上に、アモルファス状の第1の陽極酸化膜12を形成する。この第1の陽極酸化膜12には、その形成過程において、厚さ方向に貫通する第1の孔部13が形成される。第1の孔部13の孔径は、例えば10nm〜200nmの範囲となる。
第1の陽極酸化膜12は、後に多孔質材料の壁面材、すなわち母材を構成することになるので、自立膜としての構造を維持すべく、50μm以上の厚さを有することが好ましい。また、得られた多孔質材料をろ過材料として用いる場合、多孔質材料の厚さが大きくなり過ぎると、ろ過すべき気体、液体の圧力損失が増大してしまうことから、その上限値は100μmとすることが好ましい。
第1の電解液としては、シュウ酸、リン酸、硫酸、クロム酸、クエン酸、酒石酸等の酸性溶液、水酸化ナトリウム等のアルカリ性溶液等、陽極酸化膜の形成に際して汎用のものを用いることができる。一例として、0.3mol/Lのシュウ酸水溶液を用い、30℃、40Vの条件で行うことができる。なお、処理時間は得ようとする第1の陽極酸化膜12の厚さに依存して決定されるが、上述の好ましい膜厚の下限値である50μmの厚さを得るためには、例えば2時間55分、上述した条件で処理を行う。
次いで、図2に示すように、上述のようにして形成した第1の陽極酸化膜12に対して第1の熱処理を行う。この第1の熱処理は、アルミニウム基材11が溶解しないように、また、アルミニウム基材11と第1の陽極酸化膜12との熱膨張差に起因した剥離が生じないように、アルミニウムの融点以下の温度で実施する。この場合、第1の陽極酸化膜は、吸着水及び水和水の脱離により、微小領域の結晶構造が変化し、化学的に安定化する。したがって、第1の熱処理により、第1の陽極酸化膜の、電解液等に対する耐性が向上する。また、第1の熱処理の熱処理温度が高いほど、及び熱処理時間が長いほど結晶性のアルミナの比率が高くなることから、効果が大きい。
一方、第1の熱処理の温度が低すぎると、上述した作用効果を得ることができず、化学的に不安定のままで、電解液、酸又はアルカリへの浸漬によっても浸食される場合がある。このような観点から、第1の熱処理の温度の下限値は100℃とすることが好ましい。したがって、このような上限値及び下限値を考慮すると、第1の熱処理は、100℃〜600℃の温度で行うことが好ましい。なお、熱処理雰囲気は非酸化性雰囲気とすることができる。熱処理は、第1の陽極酸化膜12を支持台の上に設置し、そのまま加熱炉に入れて行うことができる。
次いで、図3に示すように、図2に示す、アルミニウム基材11及び第1の陽極酸化膜12からなる積層体を、上述した第1の電解液に浸漬して再度陽極酸化処理を実施し、第1の陽極酸化膜12と連続するようにしてアモルファス状の第2の陽極酸化膜14を形成する。この場合も、第2の陽極酸化膜14には、その形成過程において、厚さ方向に貫通する第2の孔部15が形成される。なお、第1の陽極酸化膜12の第1の孔部13と、第2の陽極酸化膜14の第2の孔部15とは、互いに連通している。
また、第2の陽極酸化膜14を形成する際の陽極酸化処理の条件、すなわち第1の電解液や電圧は、第1の陽極酸化処理の条件と同一とすることが好ましい。また、電解液を変えることも可能であるが、その場合電圧など電解条件を同一とすることが好ましい。これによって、第1の陽極酸化膜12における第1の孔部13の孔径と第2の陽極酸化膜14における第2の孔部15の孔径とを同一にすることができる。
上述のように、第1の孔部13と第2の孔部15とは互いに連通しているので、第2の陽極酸化膜14の陽極酸化処理条件が異なり、第2の孔部15の孔径が第1の孔部13の孔径よりも大きかったり、小さかったりするようになると、第1の孔部13の、第2の孔部15側の開口部が影響を受け、第2の孔部15の大小関係によってその開口部が第1の孔部13の孔径よりも大きくなったり、小さくなったりしてしまう。したがって、以下の工程において、第2の陽極酸化膜14の残部を除去した後に、第1の孔部13、すなわち最終的に得る多孔質材料のスルーホールの下側開口部が、その孔径よりも大きくあるいは小さくなってしまう。この結果、厚さ方向における中心線に対して対象であって、均一な孔径のスルーホールを得ることが困難となる場合がある。
次いで、図4に示すように、図3に示す、アルミニウム基材11、第1の陽極酸化膜12及び第2の陽極酸化膜14からなる積層体を、第2の電解液に浸漬させて電解処理を実施する。その結果、アルミニウム基材11と第2の陽極酸化膜14の界面で、11アルミニウム基材の溶解反応が進行し、両者が分離する。第2の電解液としては、エタノール及び過塩素酸の混合溶液(例えば、エタノール:過塩素酸=4:1)を用い、電解処理は、例えば15℃以下の温度で、45V、1分の条件でアノード電解することで行うことができる。
次いで、図4に示すような、第1の陽極酸化膜11及び残存する第2の陽極酸化膜14を酸又はアルカリに浸漬し、第2の陽極酸化膜14を溶解除去する。その結果、第1の陽極酸化膜12を壁面材21とし、第1の孔部13をスルーホール22とする、図5に示すような多孔質材料20を得ることができるようになる。
上述した酸又はアルカリとしては、硫酸、塩酸、リン酸や水酸化ナトリウム等を用いることができる。また、過塩素酸と無水酢酸との混合液、リン酸と硫酸との混合液等を用いることもできる。なお、これらの酸又はアルカリは適宜水で希釈し、所定の濃度となるように設定することができる。一例として、50℃、2mol/Lの硫酸水溶液を準備し、この水溶液に対して第1の陽極酸化膜12及び第2の陽極酸化膜14を5〜20分間浸漬して、第2の陽極酸化膜14を溶解除去することができる。
なお、第1の陽極酸化膜12及び第2の陽極酸化膜14を酸又はアルカリに浸漬させることにより、第1の陽極酸化膜12のみが残存し、第2の陽極酸化膜14のみが溶解するのは、上述のように、第1の陽極酸化膜12は全体として見た場合アモルファスであっても、上述した第1の熱処理を経ることによって、吸着水及び水和水の脱離により、微小領域の結晶構造が変化し、化学的に安定化する。したがって、第1の熱処理により、第1の陽極酸化膜12の、電解液等に対する耐性が向上しているのに対し、第2の陽極酸化膜14は何ら熱処理を経ないアモルファスであるので、化学的に不安定であることに起因する。
以上説明したように、本実施形態では、第1の陽極酸化膜12を、上述した電解液、酸又はアルカリに浸漬する以前に、アルミニウムの融点以下の温度で熱処理を実施するようにしている。この結果、第1の陽極酸化膜は、全体としてはアモルファスの状態ではあっても、第1の熱処理を経ることによって、吸着水及び水和水の脱離が生じ、微小領域の結晶構造が変化して、化学的に安定化する。したがって、上述のような電解液、酸又はアルカリへの浸漬によっても浸食されることがなくなる。
このため、第1の陽極酸化膜12における孔壁の溶解が抑制され、その配向が一方向に揃った状態で、第1の孔部13がその長さ方向の中心に対して対象となるとともに、孔径も均一となり、厚さ方向において孔径の揃ったスルーホール21(第1の孔部13)を有する、第1の陽極酸化膜12を壁面材21とする多孔質材料20を得ることができるようになる。
図6は、上記実施形態における、具体的な数値に基づいて作製した多孔質材料の断面写真であり、図7は、図6の多孔質材料の断面の拡大写真である。図6及び図7から明らかなように、本実施形態に基づいて得た多孔質材料は、その厚さ方向において、一方向に揃った細孔(スルーホール)が形成されていることがわかる。
図8は、上記多孔質材料の表面写真である。なお、ここでいう“表面”とは、多孔質材料20を構成する第1の陽極酸化膜12の、溶解除去した第2の陽極酸化膜14と相対向する側の面を意味する。図8から明らかなように、得られた多孔質材料20のスルーホール22の、表面側の開口部は総て円形状であって、ほぼ均一な大きさを有していることが分かる。
図9は、上述した第2の陽極酸化膜14を溶解除去する際の、硫酸水溶液への浸漬時間と、得られるスルーホール22の孔径との関係を示すグラフである。図9から明らかなように、浸漬時間の増大につれて、スルーホール22の孔径も増大していることが分かる。また、浸漬時間が5分以上の場合に、スルーホール22の、多孔質材料20の表面側及び裏面側の開口部の孔径がほぼ等しくなっていることが分かる。すなわち、浸漬時間を5分以上とすることによって、第2の陽極酸化膜14が完全に溶解除去されて、均一な孔径を有するスルーホール22が形成されていることが分かる。
なお、ここでいう“表面”とは、多孔質材料20を構成する第1の陽極酸化膜12の、溶解除去した第2の陽極酸化膜14と相対向する側の面を意味し、“裏面”とは、多孔質材料を構成する第1の陽極酸化膜12の、溶解除去した第2の陽極酸化膜14側の面を意味するものである。
なお、図5に示すようにして得た多孔質材料20は、第2の熱処理を行って結晶化させることができる。この場合、第1の陽極酸化膜12、すなわち多孔質材料20を結晶化させることができるので、その耐熱性、耐酸性、耐アルカリ性、耐高温水性等の化学的性質、すなわち化学的安定性を向上させることができ、得られた多孔質材料20の適用範囲を拡大することができる。
例えば、多孔質材料20をろ過材料として使用するような場合においても、常温かつ中性の腐食性の無い気体、液体のみならず、高温及び/又は酸性、アルカリ性の腐食性の気体、液体にも使用することができる。
なお、多孔質材料20を構成する第1の陽極酸化膜12は、一般には酸化アルミニウムの組成を有する。したがって、上述した第2の熱処理を行うことにより、第1の陽極酸化膜12、すなわち多孔質材料20を結晶性のアルミナから構成することができるようになる。
また、第2の熱処理の温度は特に限定されないものの、800℃以上の温度で行うことにより、多孔質材料20をγアルミナから構成することができる。また、1200℃以上の温度で行うことにより、多孔質材料20をαアルミナから構成することができる。熱処理雰囲気は、非酸化性雰囲気とすることができる。γアルミナ、特にαアルミナは化学的に極めて安定であるので、多孔質材料20の適用範囲を拡大するのに極めて好都合である。
第2の熱処理の温度の上限は例えば1400℃とすることができる。1400℃を超えた温度で熱処理を実施しても最早αアルミナの結晶性には何ら影響を及ぼさず、熱処理に要するエネルギーを無駄に消費してしまうことになる。
なお、従来、アモルファスの陽極酸化膜に対して熱処理を実施して結晶化し、例えばαアルミナからなる膜を形成しようとすると、形成過程において、変形や割れなどが生じてしまっていたが、本実施形態においては、そのような変形や割れは確認されていない。これは、本実施形態においては、表面から裏面に貫通する孔径分布の揃った細孔、すなわち厚さ方向において孔径の揃ったスルーホールが形成されることによるものである。
熱処理を行う際には、多孔質材料20を支持台の上に設置し、そのまま加熱炉に入れてもよいし、多孔質材料20の変形を抑制するために、押さえ板により拘束した条件で処理を行ってもよい。僅かな細孔構造の不均一に起因する変形が発生する場合には、拘束条件での熱処理が有効である。このとき、押さえ板としては、熱処理温度以上で安定な物質が必要である。代表的な物質としては、高温で安定な、αアルミナ,シリカ,マグネシア等の耐火性のセラミック材料が挙げられる。
図10は、第2の熱処理における熱処理温度毎の、多孔質材料20のX線回折グラフである。なお、多孔質材料20は、上述した実施形態において例示された条件に基づいて形成されたものであり、スルーホール22の孔径は40nm〜60nmであり、厚さは100μmである。
図10(a)に示すように、多孔質材料20に対して第2の熱処理を実施していない場合、多孔質材料20はアモルファスのままであるので、X線回折のグラフはブロードの状態を示す。一方、図10(b)に示すように、多孔質材料20に対して800℃で熱処理を実施した場合、多孔質材料20はγアルミナから構成されていることが分かる。但し、一部にブロードな回折線が見られることから、多孔質材料20の総てがγアルミナとなったものではなく、アモルファス構造とγアルミナ構造とが混在しているものと推察される。
また、図10(c)に示すように、多孔質材料20に対して1000℃で熱処理を実施した場合、多孔質材料20はγアルミナを主成分としたγアルミナとδアルミナとの混合結晶から構成されていることが分かる。さらに、図10(d)に示すように、多孔質材料20に対して1200℃で熱処理を実施した場合、多孔質材料20はαアルミナから構成されていることが分かる。
なお、いずれの場合においても、熱処理による多孔質材料20の欠損等は認められなかった。
図11は、図10に示す各温度で熱処理を実施した後の多孔質材料20を水中に(48時間)浸漬させた後の、重量変化を示すグラフである。図10(a)に相当するアモルファスの多孔質材料20は、重量変化が最も大きくなっている。これは、多孔質材料20を構成する第1の陽極酸化膜12に含まれるアルミニウム酸化物の一部が溶解し、水和したアルミニウム酸化物として再析出することによるものである。なお、浸漬時間が経過すると、水和したアルミニウム酸化物も水に対して溶解することから、徐々に重量は減少に転じることになる。
図10(b)に相当するγアルミナを主成分として含む多孔質材料20、図10(c)に相当するγアルミナとδアルミナとの混合結晶から構成されている多孔質材料20、及び図10(d)に相当するαアルミナから構成される多孔質材料20は、この順に水による変質が抑制され、耐水性が向上していることが分かる。したがって、第2の熱処理を実施して、多孔質材料20を結晶化させることにより、その耐水性を向上できることが分かる。
以上、本発明を上記具体例に基づいて詳細に説明したが、本発明は上記具体例に限定されるものではなく、本発明の範疇を逸脱しない限りにおいて、あらゆる変形や変更が可能である。
例えば、上記実施形態では、アルミニウム基材を電解処理によって溶解除去し、第2の陽極酸化膜を酸等で溶解除去することにより、アルミニウム基材と第2の陽極酸化膜とをそれぞれ独立に除去するようにしているが、両者を一度に除去するようにしてもよい。
11 アルミニウム基材
12 第1の陽極酸化膜
13 第1の孔部
14 第2の陽極酸化膜
15 第2の孔部
20 多孔質材料
21 壁面材
22 スルーホール

Claims (8)

  1. アルミニウム基材を電解液に浸漬させて陽極酸化処理を行い、前記アルミニウム基材の表面に、アモルファス状であって、厚さ方向に貫通する第1の孔部を有する第1の陽極酸化膜を形成する第1の工程と、
    前記第1の陽極酸化膜に対してアルミニウムの融点以下の温度で第1の熱処理を実施し、前記第1の陽極酸化膜を化学的に安定化させる第2の工程と、
    前記アルミニウム基材に再度前記陽極酸化処理を行い、前記アルミニウム基材の表面において、前記第1の陽極酸化膜の第1の孔部と連通し、厚さ方向に貫通する第2の孔部を有するアモルファス状の第2の陽極酸化膜を、前記第1の陽極酸化膜と連続するようにして形成する第3の工程と、
    前記アルミニウム基材及び前記第2の陽極酸化膜を除去する第4の工程とを具えることを特徴とする、多孔質材料の製造方法。
  2. 前記第4の工程は、前記アルミニウム基材、前記第1の陽極酸化膜及び前記第2の陽極酸化膜をアルミニウム基板を溶解させる電解液に浸漬させて電解処理を行うことにより、前記アルミニウム基材を除去する工程と、前記第1の陽極酸化膜及び残存する前記第2の陽極酸化膜を酸又はアルカリに浸漬させることにより、前記残存する第2の陽極酸化膜を除去する工程とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の多孔質材料の製造方法。
  3. 前記第4の工程の後、前記第1の陽極酸化膜に対して第2の熱処理を行って結晶化させる第5の工程を具えることを特徴とする、請求項1又は2に記載の多孔質材料の製造方法。
  4. 前記第2の熱処理は800℃以上の温度で実施し、前記第1の陽極酸化膜中にγアルミナを析出させることを特徴とする、請求項3に記載の多孔質材料の製造方法。
  5. 前記第2の熱処理は1200℃以上の温度で実施し、前記第1の陽極酸化膜中にαアルミナを析出させることを特徴とする、請求項3に記載の多孔質材料の製造方法。
  6. 前記第1の孔部は、長さ方向における中心線に対して対称であり、均一な孔径を有することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一に記載の多孔質材料の製造方法。
  7. 前記第1の孔部の孔径は、10nm〜200nmの範囲であることを特徴とする、請求項6に記載の多孔質材料の製造方法。
  8. 前記多孔質材料の厚さが50μm以上であることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一に記載の多孔質材料の製造方法。
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