以下、図面を参照して、本発明の好適な実施の形態を例示的に詳しく説明する。ただし、以下の実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、それらの相対配置などは、本発明が適用される装置の構成や各種条件により適宜変更されるべきものである。従って、特に特定的な記載がない限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
〔第1実施形態〕
第1実施形態に係る画像形成装置について説明する。ここでは、画像形成装置の一例として、電子写真方式を採用した画像形成装置のうち中間転写ベルトを用いた4ドラムフルカラー画像形成装置を例示している。図1は、中間転写ベルトを用いた4ドラムフルカラー画像形成装置の概略構成を示す模式断面図である。
(画像形成装置の全体構成)
図1に示すように、4ドラムフルカラー画像形成装置1は、画像形成装置本体(以下、装置本体という)2に対して、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4色のプロセスカートリッジPY,PM,PC,PBkが着脱自在に構成されている。また、装置本体2には、中間転写体(回転体)である中間転写ベルト30を有する中間転写ベルトユニット31や、定着器25が設けられている。
ここで、各プロセスカートリッジPは、メモリータグ(不図示)を有しており、装置本体2との通信により、プロセスカートリッジの残り寿命や交換状況を判別することができるように構成されている。
また、各プロセスカートリッジPは、それぞれ像担持体である感光体ドラム26Y,26M,26C,26Bkを有している。さらに各プロセスカートリッジPは、それぞれ感光体ドラムの周囲に、帯電手段としての一次帯電器50、現像手段としての現像器51、及びクリーニング手段としてのクリーナ53を一体に有している。各プロセスカートリッジPは、中間転写ベルト30に沿って並列配置されている。
各プロセスカートリッジPにおいて、一次帯電器50は、感光体ドラム26の外周表面上に配置され、感光体ドラム表面を一様に帯電する。また、現像器51は、各レーザ露光器(露光手段)28Y,28M,28C,28Bkからの露光により形成された感光体ドラム表面上の各色の静電潜像を、対応する色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)のトナーを用いて現像する。なお、現像器51内の現像ローラ54は、現像器51ごと感光体ドラム26から離間し回転を停止させることで、現像剤の劣化を防止できるように構成されている。すなわち、現像ローラ54は現像器51ごと感光体ドラム26に対して当接又は離間可能に構成されている。クリーナ53は、トナー画像が転写された後、感光体ドラム表面に付着している転写残りトナーを除去する。
また、感光体ドラム26と共に中間転写ベルト30を挟持する位置には、感光体ドラム26と共に一次転写部を形成する一次転写ローラ52が対向設置されている。
一方、中間転写ベルトユニット31は、中間転写ベルト30と、中間転写ベルト30を張架する駆動ローラ100、テンションローラ105、二次転写対向ローラ108の3本のローラを備えている。そして、ベルト駆動モータ(不図示)により駆動ローラ100を回転駆動させることで中間転写ベルト30を回転搬送している。
テンションローラ105は、中間転写ベルト30の長さに応じて図1の水平方向に移動可能に構成されている。
さらに、テンションローラ105の近傍には、中間転写ベルト30上のトナーパッチを検出するためのレジ検知センサ90がローラ長手方向両端に2個設置されている。なお、長手方向とは、ローラの軸線方向であり、ベルトの搬送方向と直交する幅方向である。
また、二次転写対向ローラ108の中間転写ベルト30を挟んだ位置には、二次転写対向ローラ108と共に二次転写部を形成する二次転写ローラ27が対向配置されている。この二次転写ローラ27は、転写搬送ユニット33によって保持されている。
また、装置本体2の下部には、二次転写部に記録媒体Qを給送する給送部3が配置されている。この給送部3は、複数枚の記録媒体Qを収納したカセット20、給送ローラ21、重送防止のリタードローラ対22、搬送ローラ対23a,23b、レジストローラ対24等を備えている。
定着器25の下流側搬送路には、排出ローラ対61,62,63が設けられている。
更に、このカラー画像形成装置1は、両面印刷に対応しており、1面目の画像形成を終えた記録媒体が定着器25から排出された後、切替部材69を切り替えることで、反転ローラ対70,71側に記録媒体Qを搬送する。この記録媒体の後端が切替部材72を越えたところで、切替部材72を切り替えると同時に、反転ローラ71を逆回転させて記録媒体Qを両面搬送路73に導く。
そして両面搬送路ローラ対74,75,76を回転駆動して記録媒体Qを再給送することで、2面目への印刷を可能にしている。
次に図2を用いて、画像形成装置の制御構成について説明する。図2は、画像形成装置の制御構成を示すブロック図である。
図1に示す装置本体2は、装置本体に対して通信可能に接続されたパーソナルコンピュータなどの外部ホスト機器10、あるいは、装置本体が別途備える原稿読み取り部(不図示)からのRGB画像信号を受信する。
画像処理制御部(制御手段)11では、受信したRGB信号を、CMYK信号に変換し、階調、濃度補正を加えた後に、レーザ露光器28用の露光信号を生成する。画像形成制御部12では、以下に説明する画像形成動作を統括して制御すると共に、パッチ検出手段としてのレジ検知センサ90、マーク検出手段としてのマークセンサ91を用いた画像形成動作補正時の装置本体2の制御を行っている。
この画像形成制御部12は、この画像形成制御部12による処理を制御するCPU121、このCPU121により実行されるプログラムなどを記憶しているROM122、CPU121による制御処理時に各種データを記憶するRAM123を有している。
なお、画像形成部13は、図1に示すように、感光体ドラム26と、このドラムに作用する帯電手段、現像手段、クリーニング手段、露光手段を有し、中間転写ベルトの回転方向に複数(ここでは4つ)設けられている。
ベルト駆動モータ14は、画像形成制御部12からの指示により、中間転写ベルト30を所定の速度で回転駆動するための駆動手段である。
ドラム駆動モータ15は、画像形成制御部12からの指示により、全ての感光体ドラム26を所定の速度で回転駆動するための駆動手段である。
レジ検知センサ部16は、レジ検知センサ90を用いて中間転写ベルト30上のトナーパッチの検出を行っている。
マークセンサ部17は、マークセンサ91を用いて中間転写ベルト30上に設けられた位置表示マークの検出を行っている。
(画像形成動作)
ここで、以上のように構成された4ドラムフルカラー画像形成装置1の画像形成動作について図1を用いて説明する。画像形成装置1は、記録媒体に複数色(ここでは4色)のトナーからなる画像を形成することが可能な構成となっている。
画像形成動作が開始されると、まずカセット20内の記録媒体Qは、給送ローラ21により給送された後、リタードローラ対22により一枚ずつに分離され、ついで搬送ローラ対23a,23b等を経てレジストローラ対24に搬送される。ここで、このときレジストローラ対24は、回転を停止しており、このレジストローラ対24のニップに記録媒体Qが突き当てられることにより、記録媒体Qの斜行が矯正される。
一方、この記録媒体Qの搬送動作に並行して例えばイエローのプロセスカートリッジPYにおいては、まず感光体ドラム26Yの表面が一次帯電器50によって一様にマイナス帯電され、次にレーザ露光器28Yにより画像露光が行われる。これにより、感光体ドラム26Yの表面には画像信号のイエロー画像成分と対応した静電潜像が形成される。
次に、現像器51内の現像ローラ54が回転駆動されながら、感光体ドラム26Yに当接し、上記静電潜像が、現像器51によりマイナス帯電したイエロートナーを用いて現像され、イエロートナー画像として可視化される。そして、このようにして得られたイエロートナー画像は、一次転写バイアスが供給された一次転写ローラ52により、中間転写ベルト30上に一次転写される。
なお、トナー画像が転写された後、感光体ドラム26Yは、表面に付着している転写残りトナーがクリーナ53によって除去される。
このような一連のトナー画像形成動作は、他のプロセスカートリッジPM,PC,PBkにおいても所定のタイミングをもって順次行われる。そして、各感光体ドラム26上に形成された各色トナー画像は、それぞれの一次転写部で中間転写ベルト30上に順次重ねて一次転写される。なお、現像ローラ54は、現像動作を終えると、下流側のプロセスカートリッジが一次転写中であっても、現像剤の劣化を防止するために順次感光体ドラムから離間し回転が停止される。
次に、このように中間転写ベルト30上に重畳して転写された4色のトナー画像は、中間転写ベルト30の矢印方向の回転に伴い、二次転写部に移動される。
さらに、レジストローラ対24で斜行を矯正された記録媒体Qは、中間転写ベルト30上の画像とタイミングをとって二次転写部に送り出される。
この後、記録媒体Qを挟んで中間転写ベルト30に当接した二次転写ローラ27により、中間転写ベルト30上の4色のトナー画像が記録媒体Q上へ一括して二次転写される。そして、このようにしてトナー画像が転写された記録媒体Qは、定着器25に搬送されて、加熱、加圧されることによりトナー画像が定着された後、排出ローラ対61,62,63により、装置本体上面に排出され、積載される。
なお、二次転写を終了した中間転写ベルト30は、駆動ローラ100近傍に設置されたベルトクリーナ(不図示)によって表面に残留した転写残りトナーが除去される。
次に、感光体ドラムの周面速度Vdと中間転写ベルトの周面速度Vbが同じ場合の中間転写ベルトの駆動トルクTの変動について説明する。
図9は感光体ドラムの周面速度Vdと中間転写ベルトの周面速度Vbが同じ時の負荷状態図である。この時の中間転写ベルトの駆動トルクTは、T=Tbとなる。この時は、ドラム周面速度Vdとベルト周面速度Vbが等速であることから滑りがないため、ベルト駆動トルクTは、ベルトのみを動かすトルクTbとなり、摩擦力によるトルクの増減はゼロである。
このドラム周面速度とベルト周面速度の周速差とベルト駆動トルクの関係を、実際の画像形成装置で測定し検証した結果を用いて詳しく説明する。
上記構成の画像形成装置において、A3用紙を3枚連続印刷した際の駆動ローラ100の回転トルク変動を測定した結果を図3に示す。
測定に当たって、感光体ドラム26の定常回転速度を変えることで、中間転写ベルト30と感光体ドラム26の間に故意に周速度差をつけた場合と、周速度差がほとんどない状態での測定を行った。
図3からわかるように、感光体ドラム26と中間転写ベルト30との間に周速度差をつけた状態では、画像形成中に過渡的なトルク変動(負荷変動)が発生している。詳しくは、現像器51内の現像ローラ54が回転駆動されながら、イエローの感光体ドラム26Yに当接する現像器当接開始タイミングからトルクの変動が始まり、順次、下流側の現像ローラ54が各色の感光体ドラム26に当接した後、トルク変動が収まっている。そして、上流側のイエローの1次転写が終了し、現像ローラ54が感光体ドラム26Yから離間をする現像器離間開始タイミングから、再びトルク変動が始まっている。
感光体ドラム速度を中間転写ベルト速度に対して−0.4%とした場合でみると、現像器の当接が開始されると、中間転写ベルトの駆動トルクが下がっていく。感光体ドラム速度<中間転写ベルト速度の時には、現像器の当接後に、順次1次転写ニップに各色トナーが到達することで、ドラム・ベルト間の摩擦力が弱まり、ベルトに対して負荷となっていたドラムからの反力が減少することが確認できた。
一方、画像形成終盤になって、上流側のイエロートナーから1次転写が終了するにつれて、現像器の離間が始まると、上記1次転写ニップへのトナーの供給がなくなる。このため、再度、ドラムがベルトの駆動負荷になり始め、ベルトの駆動トルクが上昇していく。
次に、実際に感光体ドラム速度<中間転写ベルト速度という周速度差関係がある状態で3枚のA3用紙を連続出力した場合、出力画像上のブラックに対するイエローの相対位置ズレである色ズレを測定した結果の例を図4に示す。
ここで、縦軸は、画像上でブラックに対して、イエローが用紙後端側に色ズレしている場合を正としている。また、ブラックとイエロー間の色ズレに着目するのは、ここで取り上げる色ズレが、後述する理由により、転写順序で、第一色であるイエローと最終色であるブラックとの間で顕著に発生するからである。
図4の1枚目の測定結果を見ると、紙搬送方向距離で0〜200mmの前半部において色ズレが発生しており、3枚目の紙搬送方向距離で200mm以降の後半部では1枚目とは逆方向に色ズレが発生している。
1枚目の色ズレに関しては、図3において見られた、現像器当接開始に伴うベルト駆動トルクの減少に伴い、転写順序が第一色であるイエローの1次転写中のベルト速度が徐々に速くなっていることが関与している。一方、3枚目の色ズレに関しては、図3において見られた、現像器離間開始に伴うベルト駆動トルクの増加に伴い、最終色であるブラックの1次転写中のベルト速度が徐々に遅くなっていることが関与している。
トルク変動がない状態で1次転写が行われている2枚目に関しては、ほとんど色ズレは発生していない。ここでは取り上げていないが、マゼンタ、シアンも色ズレが生じているものの、イエロー、ブラックほど顕著ではない。
なお、感光体ドラム速度>中間転写ベルト速度という周速度差関係がある状態で3枚のA3用紙を連続出力した場合には、図4のグラフは正負が逆になる挙動を示す。
また、図3に示すトルク変動は、ドラムとベルト間の周速度差が大きいほど顕著になることが判っており、トルク変動によりベルトの速度変動が発生してしまうのは、ベルト駆動伝達系の剛性不足が原因である。
そこで、本実施形態では、トルク変動の発生原因であるドラムとベルト間の周速度差を小さくする対策を講じた。
ドラムとベルト間の周速度差を小さくすると言っても、それぞれの速度を決める部品の製造公差を厳しくするようなことをしては製造コストがアップすることを免れない。そこで、本実施形態では、図4に示した色ズレ状況を検出し、その検出結果をもとにドラムとベルト間の周速度差を推定して、その周速差に応じてドラムの周面速度の補正を行い、上記色ズレの発生を防止する対策を講じた。
以下に、その方法について詳述する。
なお、ドラムとベルト間の周速度差を小さくするためには、ドラムの周面速度ではなく、ベルトの周面速度を補正しても良いが、ベルトの周面速度を補正して周速度差を抑制する方法については、後述する第2実施形態にて説明する。
図5は、中間転写ベルトユニット31の構成を示した斜視図である。
中間転写ベルト30は、図中の矢印方向に周面速度Vb[mm/s]で回転している。ここでの設計値はVb=190である。
本実施形態で採用した中間転写ベルト30には、内周面両側端部に中間転写ベルト30の蛇行を防止する寄り規制リブ301が貼り付けられている。この寄り規制リブ301がテンションローラ105の両端側に設置された寄り規制フランジ(不図示)に規制されることでベルトの蛇行が防止される。また、中間転写ベルト30の外周面両側端部には、中間転写ベルト30の破損を防止するための透明なベルト補強テープ302が1周ずつ貼り付けられている。なお、寄り規制リブ301、ベルト補強テープ302は同じ側に貼り付けてあれば必ずしも両側端部にある必要はない。
レジ検知センサ90は、中間転写ベルト30上に形成された未定着トナーパッチを検出するための反射型光学センサであり、ここではテンションローラ105の長手方向両端側にそれぞれ1個のセンサを設置している。
レジ検知センサ90は、テンションローラ105に中間転写ベルト30が巻き付いた状態の位置でトナーパッチを検出できるように位置決めされており、テンションローラ105の軸の動きに追従して移動できるように支持されている。
次に、レジ検知センサ90を用いたドラム速度補正の原理について説明する。
(第1トナーパッチパターンの形成)
ここでは、感光体ドラムと中間転写ベルト間に周速度差があり、図10に示したようなトルク変動が発生する場合を例示して説明する。
図5に示すように中間転写ベルト30上に図示するような第1及び第2のトナーパッチパターンTP1,TP2を、図10に示すタイミングで順に形成する。
なお、図10において、TM1は全ての感光体ドラムに対して全ての現像器の当接が完了したタイミングである。TM2は第2のトナーパッチパターン形成時にイエローの画像形成部において感光体ドラムから現像器が離間したタイミングである。
実際は、トナーパッチ形成後にレジ検知センサ90でトナーパッチの検出を行った後、駆動ローラ100近傍に設置されたベルトクリーナ(不図示)によりトナーパッチはクリーニングされる。そのため、実際は、図5に示す位置では中間転写ベルト30上にトナーパッチは存在しないものの、説明の便宜上、図中記載している。
画像形成動作を開始し、各感光体ドラム26に各色の現像ローラ54が順次当接してから、所定時間後(例えば約5秒後)に、まず第1のトナーパッチパターンTP1を形成し始める。まず、前記所定時間後にイエローのプロセスカートリッジPYの画像形成動作を開始し、トナーパッチTY1F,TY1Rを形成する。図5に示すトナーパッチTY1F,TY1Rを中間転写ベルト30に形成するタイミングは、図10中のty1F,Rのタイミングである。
次に所定のタイミングだけ遅れて、中間転写ベルト30上で各トナーパッチTY1F,TY1Rを挟み込むような位置にトナーパッチTBk1F,TBk1R及びTBk2F,TBk2RをブラックのプロセスカートリッジPBkにより形成する。図5に示すトナーパッチTBk1F,TBk1Rを中間転写ベルト30に形成するタイミングは、図10中tbk1F,Rのタイミングである。トナーパッチTBk2F,TBk2Rを中間転写ベルト30に形成するタイミングは、図10中tbk2F,Rのタイミングである。
このように、全ての感光体ドラム26に全ての現像ローラ54が当接した状態で、トナーパッチTY1F,TY1R,TBk1F,TBk1R,TBk2F,TBk2Rからなる第1のトナーパッチパターンTP1が中間転写ベルト30上に形成される。
なお、トナーパッチTBk1FとTBk2Fは、それぞれベルト30上でトナーパッチTY1Fから同じ距離だけベルト回転方向上流と下流にずれた位置に形成される。同様に、トナーパッチTBk1RとTBk2Rも、それぞれベルト30上でトナーパッチTY1Rから同じ距離だけベルト回転方向上流と下流にずれた位置に形成される。
ここで中間転写ベルト30に形成した第1のトナーパッチパターンTP1は、図10に示すように全ての感光体ドラムに全ての現像ローラが当接した後に形成されている。このため、ドラムとベルト間の周速度差に起因する過渡的なトルク変動は生じていない。つまり、中間転写ベルトの過渡的な速度変動が無い状態で形成されていることになる。
(第2トナーパッチパターンの形成)
次に、第1のトナーパッチパターンTP1を形成してから、中間転写ベルト30がほぼ1周した後に、第2のトナーパッチパターンTP2を形成し始める。まず、イエローのプロセスカートリッジPYによりトナーパッチTY2F,TY2Rを形成する。図5に示すトナーパッチTY2F,TY2Rを中間転写ベルト30に形成するタイミングは、図10中のty2F,Rのタイミングである。このトナーパッチTY2F,TY2Rを中間転写ベルト30に一次転写した直後に、イエローの現像器51が感光体ドラム26から離間される。
次に所定のタイミングだけ遅れて、中間転写ベルト30上で各トナーパッチTY2F,TY2Rを挟み込むような位置にトナーパッチTBk3F,TBk3R及びTBk4F,TBk4RをブラックのプロセスカートリッジPBkにより形成する。図5に示すトナーパッチTBk3F,TBk3Rを中間転写ベルト30に形成するタイミングは、図10中tbk3F,Rのタイミングである。トナーパッチTBk4F,TBk4Rを中間転写ベルト30に形成するタイミングは、図10中tbk4F,Rのタイミングである。このトナーパッチTBk3F,TBk3R及びTBk4F,TBk4Rを中間転写ベルト30に一次転写した直後に、ブラックの現像器51が感光体ドラム26から離間される。
このように、各感光体ドラム26に対して各現像ローラ54が順次離間している中で、トナーパッチTY2F,TY2R,TBk3F,TBk3R,TBk4F,TBk4Rからなる第2のトナーパッチパターンTP2が中間転写ベルト30上に形成される。
なお、トナーパッチTBk3FとTBk4Fは、それぞれベルト30上でトナーパッチTY2Fから同じ距離だけベルト回転方向上流と下流にずれた位置に形成される。同様に、トナーパッチTBk3RとTBk4Rも、それぞれベルト30上でトナーパッチTY2Rから同じ距離だけベルト回転方向上流と下流にずれた位置に形成される。
ここで中間転写ベルト30に形成したトナーパッチのうち、トナーパッチTBk3F,TBk3R,TBk4F,TBk4Rは、図10に示すようにイエローの現像器51の離間開始タイミング直後に形成されている。すなわち、現像器離間開始タイミング直後に生じているドラムとベルト間の周速度差に起因する過渡的なトルク変動中に形成されている。このため、トナーパッチTY2F,TY2Rを形成したときの中間転写ベルト速度と、トナーパッチTBk3F,TBk3R,TBk4F,TBk4Rを形成したときの中間転写ベルト速度が異なっている。つまり、第2のトナーパッチパターンは中間転写ベルトの過渡的な速度変動中に形成されていることになる。
したがって、トナーパッチTY1F,TY1R,TBk1F,TBk1R,TBk2F,TBk2Rから算出するイエローとブラックの色ズレ量(第1のズレ量)と、トナーパッチTY2F,TY2R,TBk3F,TBk3R,TBk4F,TBk4Rから算出するイエローとブラックの色ズレ量(第2のズレ量)の差から、ドラムとベルト間の周速度差を推定することができる。
補足するならば、上記画像形成動作を行うことで、図4で説明した3枚のA3用紙を連続通紙した際の色ズレ状況のうち、2枚目〜3枚目の後半部に見られる色ズレ状況を中間転写ベルト30上に再現することができ、これらのトナーパッチをレジ検知センサ90で検出することでドラムとベルト間の周速度差を推定できることになる。
なお、ここでは、各プロセスカートリッジPの間隔は95mm、各感光体ドラム26の外径はφ30mm、中間転写ベルト30の周長は957mm、駆動ローラ100の外径はφ30.2mmとしてある。
図5中のトナーパッチパターンTP1,TP2間の距離TLは、各プロセスカートリッジの間隔95mmの整数倍、かつ中間転写ベルト30の周長957mmに最も近い距離950mmに設定してある。これにより、ドラム周期の色ズレ成分、ベルト膜厚ムラ起因の色ズレ成分をキャンセルして、ドラムとベルト間の周速度差に起因して発生する色ズレのみを検出できる。
(色ズレ量の算出)
次に、ベルト上に形成されたトナーパッチをレジ検知センサ90により検出して色ズレ量を算出する方法について説明する。なお、以下の説明で画像形成装置フロント側とはユーザーの操作側となる画像形成装置の正面側であり、これに対し画像形成装置リア側とは前記操作側から見て奥側となる画像形成装置の背面側である。各トナーパッチ名にも、フロント側にはFを、リア側にはRを付している。
レジ検知センサ90は、その読取位置に搬送されたトナーパッチパターンの各トナーパッチのエッジを順次検出し、その検出タイミングから、各トナーパッチの中心位置検出タイミングを算出する。
各トナーパッチの中心位置検出タイミングを、それぞれt_トナーパッチ名とする。例えば、トナーパッチTBK1Fの中心位置検出タイミングは、t_TBK1Fとする。
始めに、現像器当接完了後の過渡的なトルク変動(ベルト速度変動)の影響を受けていないタイミングでのイエローとブラックの位置ズレ量(第1のズレ量)P_Y1を算出する。現像器当接完了後の過渡的なトルク変動(ベルト速度変動)の影響を受けていないタイミングでのイエローとブラックの画像形成装置フロント側の位置ズレ量をY1Fとし、リア側の位置ズレ量をY1Rとする。この場合、フロント側とリア側の位置ズレを平均化するため、P_Y1は以下の式(1)により定義した。
P_Y1=(Y1F+Y1R)/2・・・式(1)
ここで、Y1F,Y1Rはそれぞれ以下の式(2)、(3)で表される。
Y1F=t_TY1F−(t_TBk1F+t_TBk2F)/2・・・式(2)
Y1R=t_TY1R−(t_TBk1R+t_TBk2R)/2・・・式(3)
このため、式(1)〜(3)より、第1のズレ量P_Y1が算出される。
一方、現像器離間開始後の過渡的なトルク変動(ベルト速度変動)の影響を受けているタイミングでのイエローとブラックの位置ズレ量(第2のズレ量)P_Y2を算出する。現像器離間開始後の過渡的なトルク変動(ベルト速度変動)の影響を受けているタイミングでのイエローとブラックの画像形成装置フロント側の位置ズレ量をY2Fとし、リア側の位置ズレ量をY2Rとする。この場合、P_Y1と同様に、P_Y2は以下の式(4)により定義した。
P_Y2=(Y2F+Y2R)/2・・・式(4)
ここで、Y2F,Y2Rはそれぞれ以下の式(5)、(6)で表される。
Y2F=t_TY2F−(t_TBk3F+t_TBk4F)/2・・・式(5)
Y2R=t_TY2R−(t_TBk3R+t_TBk4R)/2・・・式(6)
このため、式(4)〜(6)より、第2のズレ量P_Y2が算出される。
以上から、現像器の当接完了後及び離間開始後の過渡的なトルク変動(ベルト速度変動)の影響により発生している色ズレ量P(m)は、次式(7)で算出される。
P(m)=P_Y2−P_Y1・・・式(7)
なお、ここでは検出結果の精度向上のため、上記色ズレ量P(m)の検出を3回行い、その平均値を最終的な検出色ズレ量Rとしている。ここで、mは検出回数を表す変数である。
ここでの色ズレ量の検出は、現像器の順次離間によるベルト速度変動起因で発生する色ズレ量を検出しているが、同様に現像器の順次当接時のベルト速度変動起因で発生する色ズレ量を検出しても構わない。
つまり、図4でいうと、1枚目の前半部で発生していた色ズレと、2枚目での色ズレをそれぞれ検出するように画像形成シーケンスを変更して各トナーパッチパターンを形成しても同様な色ズレ量を検出することができる。
さらに、トナーパッチパターン長を前記距離TLだけさらに延長して、現像器の当接離間双方の影響を受けて発生している色ズレ量を両方とも検出しても構わない。この場合は、トナーパッチパターン長が伸びた分検出時間が増してしまうものの、色ズレ量検出のS/Nを稼ぐことができる。
図6に、本実施形態での色ズレ量の算出方法で実際に検出された色ズレ量を示す。図6において、縦軸はイエロー−ブラック間の色ズレ量[μm]を示し、横軸はドラム速度の設計中心値を0とした、その設計中心値からの変化量[%]を示している。
なお、ドラムとベルト間の周速度差を実験的に簡単に変化させることが出来なかったため、図6に示す結果は、ドラム駆動モータの速度を変えて、周速度差と色ズレの関係を示したものである。また、1次転写バイアスを変えたときの影響も併記した。
図6を見ると、ベルトとドラム間の周速度差が大きくなるにつれて、イエロ−ブラック間の色ズレ量も大きくなり、1次転写バイアスを高く設定すると色ズレ量も大きくなることがわかる。ただし、周速度差が大きくなりすぎると、色ズレ量が頭打ちになってくることも見てとれる。
ここでは、ドラムとベルトの設計上の速度変動幅はそれぞれ±0.1%程度であるため、実際に想定されるドラムとベルト間の周速度差としては約±0.2%となる。図6をみると、横軸±0.2%の範囲では、ドラム速度変化量と色ズレ量の関係がほぼ線形性を保っている。このため、検出された色ズレ量をもとに現在のベルトとドラム間の周速度差を推定して、色ズレ量を0に近付けるためのドラムの周面速度を算出することができる。
また、1次転写バイアスを高くすると色ズレ量は増加するものの(図6参照)、1次転写バイアスを高く設定しても測定毎の検出色ズレ量のバラツキは大きくならなかった。そのため、色ズレ量の検出に当たっては通常の画像形成時よりも1次転写バイアスを高く設定することで、色ズレの検出精度を高めて検出を行うこととした。実際には、1次転写バイアスは定電流制御を行っているため、目標電流値を通常の画像形成時よりも高い電流値(ここでは25μA)に設定して、色ズレ量検出用のトナーパッチパターンの形成を行った。なお、1次転写バイアスを高くすると色ズレ量が増加するのは、1次転写バイアス印加による1次転写ローラ52と感光体ドラム26間の静電吸着力が増加し、1次転写ニップへのトナー有無による摩擦力変化がより顕著になるためだと考えられる。この吸着力の増加により、負荷トルク変動が拡大される。つまり同じ周速差設定で、より大きい変化が得られるため、1次転写バイアスが低い状態において、レジ検知センサで検出不可能な微小色ズレも1次転写バイアスを高くすることで検出可能になる。
(ドラム速度補正)
実際に想定される周速度差の範囲で、典型的な中間転写ベルトの抵抗値、1次転写目標電流値(ここでは25μA)で測定した周速度差と色ズレの関係を図7に示す。図7において、縦軸はイエロー−ブラック間の色ズレ量[μm]を示し、横軸はドラム速度の設計中心値を0とした、その設計中心値からの変化量[%]を示している。
ここでは、図7に示すグラフの傾きから、ドラム速度の補正係数Dを0.002%/μmと決定した。なお、ドラム速度の補正係数Dを図7に示すグラフの傾きから上記のように設定しているが、これは装置構成に応じて適宜設定すべきものであって、これに限定されるものではない。検出された色ズレ量Rにドラム速度の補正係数Dを乗じてドラム速度の補正量を算出し、新しいドラム速度Vdを算出する。これを式で表すと、下式(9)となる。
Vd=(100+D×R)/100×Vd_def・・・式(9)
ここで、Vdは算出された感光体ドラム速度[mm/s]、Vd_defは感光体ドラム速度の設計中心値[mm/s]である。
画像形成装置が、複数の速度モードを持つ場合には、それぞれ同様に速度補正を行う。ここで、算出された新しいドラム速度Vdあるいはドラム速度の補正係数Dは、不揮発メモリであるROM122(図2参照)に記録される。
なお、ドラムとベルト間の周速度差が±0.2%以上つくような構成であった場合には、図6からも判るように、周速度差と色ズレ量の関係が線形範囲外となってしまう。このため、単純に1度のドラム速度補正ではなく、ドラム速度を変えた後に再度色ズレ量を測定し、更にドラム速度を補正するというようなループを組むことで対応する必要が出てくる。
また、ここでは、上記ドラム速度の補正制御は、プロセスカートリッジPの交換時、及び中間転写ベルトユニットの新品検知時に自動で実施されるようにしている。必要に応じて、環境変化時、装置内の温度上昇時、耐久の進み具合などドラム速度や中間転写ベルトの速度変動が生じるような場合に、前述したドラム速度の補正制御を実行することで、安定的に色ズレの発生を抑制することも可能である。
図8に示すフローチャートを用いて、ドラム速度の補正制御の流れについて説明する。
図8に示すフローチャート内で使用する変数は、以下のように定義されている。kはトナーパッチパターン検出失敗時のリトライ回数カウンタ(累積3回まで)である。mは色ズレ検出回数カウンタ(3回まで)である。P(m)はm回目の色ズレ量演算結果[μm]である。Rはm回検出した色ズレ量の平均値[μm]である。Vdはドラム速度[mm/s]、Vd_defはドラム速度の設計中心値[mm/s]である。
プロセスカートリッジの交換あるいは中間転写ベルトユニットの新品が検出された時に、図8のフローチャートに示すドラム速度の補正シーケンスが実行される。
まず、ステップS111で各変数の初期化を行い、ドラム速度Vdは設計中心値にセットされる。
次に、ステップS112で前述したトナーパッチパターンの形成を行い、順次レジ検知センサ90にてトナーパッチの通過タイミングがRAM123に記憶されていく。すなわち、過渡的な負荷変動が生じていない状態で複数のトナーパッチからなる第1トナーパッチパターンを形成してこれらを検出し、更に過渡的な負荷変動中に複数のトナーパッチからなる第2トナーパッチパターンを形成してこれらを検出し、それをRAM123に記憶する。ここで、過渡的な負荷変動が生じていない状態とは、色ズレ量を検出するための2種のトナーパッチを形成している間に、ドラムと現像器の当接又は離間の変動がない状態のことである。またトナーパッチパターンとは、1種目のトナーパッチ(1つのイエローパッチ)とこれを挟み込む位置に形成された2種目のトナーパッチ(2つのブラックパッチ)からなるトナー画像である。一方、過渡的な負荷変動中とは、1種目のトナーパッチと2種目のトナーパッチ転写間に、ドラムと現像器の当接又は離間の変動がある場合のことである。
ステップS113では、全てのトナーパッチパターンの各トナーパッチのエッジを検出できたかを判定している。ここでは、検出エッジの数が足りているか否かを判断基準にしている。
ステップS113で読取エラーが発生していると判断されると、ステップS120へと進み、リトライ回数カウンタkの値が3に達しているか否かを判定する。ステップS120にて、リトライ回数カウンタkの値が3に達していた場合、つまり、読取エラーによりリトライを2回行っている場合には、ドラム速度の補正シーケンスを終了させる。この場合には、ドラム速度Vdは、設計中心値Vd_defにセットされたままとなる。リトライ回数カウンタkの値が3に達していなかった場合には、ステップS119でリトライ回数カウンタkをインクリメント(整数型の変数の値を1増やす処理)して、再度トナーパッチパターンの形成及び検出が行われる。
ステップS113にて全てのトナーパッチパターンの各トナーパッチのエッジが検出できた場合には、ステップS114へと進み、RAM123に記録されたデータから、m回目の色ズレ検出値P(m)を式(1)〜(7)を用いて算出する。すなわち、RAM123に記憶させた、過渡的な負荷変動が生じていない状態での2種のトナーパッチの第1のズレ量と、過渡的な負荷変動中の2種のトナーパッチの第2のズレ量との差を算出する。
次に、ステップS115では、算出された色ズレ量P(m)の絶対値が所定の値(ここでは10μm)以下であるか否かを判定する。この比較対象となる所定の値(ここでは10μm)は予め設定されている。ステップS115にて色ズレ量P(m)の絶対値が所定の値以下であった場合には、色ズレが生ずるほどの周速度差は発生していないと判断し、ステップS121へと進み、ドラム速度の変更をする必要がないとする処理を行う。この処理により、色ズレが十分に小さいと判断できた場合には、ドラム速度の補正シーケンスをすぐに中断することで、補正時間を短縮させている。なお、色ズレ量の1回ごとの検出バラツキは、実験的に約30μmであったので、色ズレ量が10μm以下と検出された場合には、色ズレ検出を終了させても、最大で検出される色ズレ量は40μm以下と推測される上に、実際の画像形成時には、色ズレ検出時よりも低い1次転写バイアスで画像形成が行われる為、実画像上、問題とならない色ズレ状態に抑制することができる。したがって、本実施例では色ズレ検出を終了させる閾値として10μmと設定した。
ステップS114で算出された色ズレ量P(m)の絶対値が所定の値(ここでは10μm)を超えた場合には、ステップS116へと進み、色ズレ検出回数カウンタmの値が3に達しているか否かを判定する。ステップS116にて色ズレ検出回数カウンタmの値が3に達していなかった場合には、ステップS122へと進み、色ズレ検出回数カウンタmをインクリメントして、再度ステップS112からm回目の色ズレ検出が実行される。
ステップS116にて色ズレ検出回数カウンタmの値が3に達していた場合、つまり、3回の色ズレ量P(m)の検出が終ると、ステップS117へと進み、3回検出した色ズレ量の平均値Rを算出する。
次にステップS118にて、ドラム・ベルト間の周速度差を抑制する新しいドラム速度Vdを、算出した色ズレ量Rを用いて式(9)で算出し、その結果を不揮発メモリであるROM122に記録する。そして、再度ドラム速度の補正シーケンスが実行されるまでは、このドラム速度Vdで画像形成動作が行われる。
このようにドラム速度の補正制御を行うことで、ドラムとベルト間の周速度差を所定の範囲内(ここでは約0.05%以内)に収めることができる。これにより、ドラムとベルト間の周速度差に起因して発生する中間転写ベルトの過渡的な速度変動を抑制し、画像形成装置の生産性を落とすことなく、1枚目の画像先端部と最終紙の画像後端部に発生していた色ズレを防止することができる。例えば、環境変動、耐久変動、機内昇温などによって生じた感光体ドラムと中間転写ベルト間の周速度差に起因して発生する色ズレを防止でき、高品質な画像を安定して出力できる。
〔第2実施形態〕
前述した実施形態では、感光体ドラム26と中間転写ベルト30間の周速度差に起因して発生する色ズレを抑制するために、感光体ドラム26の速度補正を行うことについて説明した。
本実施形態では、中間転写ベルトの定常速度の変動域(例えば設計上±0.2%)が、感光体ドラムの定常速度の変動域(例えば設計上±0.1%)よりも大きい構成の画像形成装置において、中間転写ベルト30の速度補正を行うようにしている。これにより、感光体ドラムと中間転写ベルトの周速度差を抑制し、色ズレの発生を防止すると共に、出力画像の記録精度を向上させることができる。以下、詳しく説明する。
なお、画像形成装置の構成は、図1に示す画像形成装置の構成と同様であるため、重複する部分の説明は省略する。
図1に示す画像形成装置において、本実施形態では中間転写ベルト30が駆動ローラ100に対して滑ってしまうことを防止するために、駆動ローラ100の表層にゴム層が設けられている。ここで、中間転写ベルト30の駆動ローラ100の下方には、熱源となる定着器25が配されている。したがって、画像形成装置を連続的に使用することで、駆動ローラ100が徐々に温められてしまい、その外径が変化してしまう。この外径変化は、上記ゴム層が製造上あまり薄くできない場合には、無視できないほどの外径変化となり、中間転写ベルト30の回転速度を変化させてしまう原因となる。
結果として、中間転写ベルト上に一次転写される各色トナー像の重ね合わせ位置がずれてしまい色ズレとなると共に、第1実施形態で説明した感光体ドラムと中間転写ベルト間の周速度差に起因する色ズレも発生してしまい画像品質を落とすことになる。また、中間転写ベルト30上に一次転写されたトナー画像が二次転写位置である二次転写対向ローラ108に到達するタイミングも変化してしまう。このため、レジストローラ対24から所定のタイミングで再給送された記録媒体Qに対して、トナー画像が本来の転写位置からずれて二次転写されることになる。この記録媒体Q上の画像書き出し位置ズレのような記録精度の悪化は、本実施形態のように両面印刷に対応した画像形成装置においては特に画像品質の観点で抑制しなければならないものである。
ここで、製造公差や装置本体内の温度変化、環境変動などにより、感光体ドラム26よりも中間転写ベルト30の回転速度変動幅の方が大きい構成の画像形成装置においては、感光体ドラムの速度を中間転写ベルトの速度に合わせるのではなく、変動幅の大きい中間転写ベルトの速度を感光体ドラムの速度に合わせることで、色ズレや記録精度の悪化を抑制するのが好ましいといえる。
以下に、中間転写ベルト30の速度補正について説明する。
感光体ドラムと中間転写ベルト間の周速度差によって生じる色ズレに関しては、両者の相対的な速度関係によって発生しているので、第1実施形態で示した図3のトルク変動図や、図4の色ズレ挙動は本実施形態でも同様である。中間転写ベルト上に図5に示すようなトナーパッチパターンを形成することで、色ズレ発生状況を同様に検出できる。但し、図7に関してはグラフの横軸がベルト速度の変化量となり、グラフの傾きも正負が逆となる。したがって、本実施形態での中間転写ベルト30の速度補正のためのフローチャートは図8のステップS118の式を次式(8)に置き換えたものとなる。
Vb=(100−D×R)/100×Vb_def・・・式(8)
ここで、Vbは算出された中間転写ベルト速度[mm/s]、Vb_defは中間転写ベルト速度の設計中心値[mm/s]である。Dは中間転写ベルト速度の補正係数である。
このように、中間転写ベルト速度を補正することで、前述した実施形態と同様に感光体ドラムと中間転写ベルト間の周速度差を小さくし、過渡的なトルク変動によるベルト速度変動を抑制し、色ズレの発生を低減できる。また、中間転写ベルトの速度を、定常速度の変動が小さいドラム速度に近づけることができるため、中間転写ベルト速度の設計中心値からのズレを抑制でき、記録媒体上の記録位置のズレ(記録精度の悪化)を抑えることも実現できた。
なお、中間転写ベルト速度を補正したことで、記録媒体上の転写画像の位置ズレ、つまり記録精度の悪化をかなり抑制することが可能になっているが、速度補正の目標値となる感光体ドラムの速度も実際には設計中心値からずれている場合がある。また、中間転写ベルトが装置本体の温度上昇や耐久劣化により周長が変化してしまうことがある。これらの原因により、中間転写ベルト速度を補正したものの記録精度がわずかにずれている状態が発生する。
そこで、本実施形態では、さらに記録精度の悪化を防止するための手段を講じている。以下、この手段について説明する。
図5は、前述した実施形態の説明でも用いた、中間転写ベルトユニット31の構成を示した斜視図である。
中間転写ベルト30は、図中の矢印方向に速度Vb[mm/s]で回転している。ここでの設計値はVb=190である。
本実施形態で採用した中間転写ベルト30には、両側端部にベルト寄り規制リブ301とベルト補強テープ302が1周ずつ貼り付けられている。さらに、ベルト補強テープ302と中間転写ベルト30の間には図のような位置に位置表示マーク303が1枚貼り付けられている。なお、複数枚の位置表示マークを設けることで検出待ち時間を減らすこともできる。
この位置表示マーク303は、白色で1辺が約8mmの正方形型PETシートであり、厚さは50μmである。なお、中間転写ベルト30は、材質PIで、厚さは約80μmである。ただし、これらの部材の材質や厚さは、本発明の構成を限定するものではなく、任意に設定することが可能である。また、位置表示マークは、中間転写ベルト、あるいはベルト補強テープに印刷などされたマークであっても構わないし、中間転写ベルト、あるいはベルト補強テープに設けられた穴であっても構わない。
マークセンサ91は、上記位置表示マーク303の上流側端面を検出するためのマーク検出手段で、反射型光学センサである。マークセンサ91は、中間転写ベルト30の表面と、位置表示マーク303からの乱反射光量の差から、位置表示マーク303の到達を検出することができる。また、マークセンサ91は、テンションローラ105に中間転写ベルト30が巻き付いた状態の位置で位置表示マーク303の検出を行えるように位置決めされており、テンションローラ105の軸の動きに追従して移動できるように支持されている。
本実施形態では、この位置表示マーク303の検出結果を利用して中間転写ベルト30の1回転周期を予め計測しておく。そして、その測定結果を用いて、中間転写ベルト30上に一次転写されたトナー画像が二次転写位置である二次転写対向ローラ108に到達するタイミングを予測し、レジストローラ対24から再給送する記録媒体Qの再給送タイミングを制御している。
上述したように、本実施形態によれば、中間転写ベルトの速度補正制御と、記録媒体の再給送タイミング制御により、色ズレの発生を防止することができる。さらに、中間転写ベルトの設計中心速度からの微妙な速度ズレや、周長の変動による記録精度の悪化をも防止することができる。これにより、安定して高画質な画像出力を提供する画像形成装置を実現することができる。
なお、本実施形態で説明した中間転写ベルトの速度補正制御も、前述した第1実施形態と同様に、感光体ドラムの交換時や、中間転写ベルトの新品検知時に実行することで効果を発揮する。
さらに、環境温度の変化や連続通紙中の装置内温度変化に伴い中間転写ベルト速度が設計中心値からずれてしまう場合に対して、装置本体内あるいは駆動ローラ近傍に温度検出手段を設け、所定の温度上昇が検出されたときに、中間転写ベルト速度の補正制御を実行しても良い。
さらに、ピクセルカウントや通紙枚数の履歴から、中間転写ベルト速度の補正制御を実行することで、中間転写ベルトの耐久要因による速度変動を補正することも可能である。
〔他の実施形態〕
なお、前述した実施形態では、像担持体として感光体ドラムを採用し、中間転写体として中間転写ベルトを採用した画像形成装置を例示したが、これに限定されるものではない。例えば、像担持体としての感光体ベルトを採用し、中間転写体として中間転写ドラムを採用した画像形成装置であっても良い。この場合、同様な速度補正シーケンスにより感光体ベルトの速度を補正することも可能である。
また前述した実施形態では、複数の画像形成部として、色の異なる4つの画像形成部を使用した構成を例示したが、この使用個数は限定されるものではなく、必要に応じて適宜設定すれば良い。
また前述した実施形態では、色ズレが顕著に表れることに着目して、1つパッチパターンを形成する複数のトナーパッチを、中間転写ベルトの回転方向において、最も上流側の画像形成部と最も下流側の画像形成部により形成する構成を例示した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、前述した4つの画像形成部のうち、イエローとシアンなど、第1の画像形成部と、この第1の画像形成部よりもベルトの回転方向下流側の第2の画像形成部とを用いて、複数のトナーパッチからなる1つのパッチパターンを形成する構成であれば良い。
また前述した実施形態では、画像形成装置本体に対して着脱自在なプロセスカートリッジとして、感光体ドラムと、該感光体ドラムに作用するプロセス手段としての帯電手段,現像手段,クリーニング手段を一体に有するプロセスカートリッジを例示した。しかしながら、プロセスカートリッジは、これに限定されるものではない。感光体ドラムの他に、帯電手段、現像手段、クリーニング手段のうち、いずれか1つを一体に有するプロセスカートリッジであっても良い。
また前述した実施形態では、画像形成装置としてプリンタを例示したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、複写機、ファクシミリ装置等の他の画像形成装置や、或いはこれらの機能を組み合わせた複合機等の他の画像形成装置であっても良い。或いは、記録媒体搬送体を使用し、該記録媒体搬送体に担持された記録媒体に各色のトナー像を順次重ねて転写する画像形成装置であっても良い。これらの画像形成装置に本発明を適用することにより同様の効果を得ることができる。また前述した実施形態では、ドラムとベルト間の周速度差を抑制することで色ズレを抑制する形態について説明したが、本発明を利用することで、制御の目標値を周速度差0%ではなく、例えばドラムとベルト間の周速度差を所望の値(例えばドラム周速に対して、ベルトの周速を0.2%速く)に設定することで、色ズレと転写効率といったトレードオフになる性能の両立を狙った速度設定に追い込むことなども可能になる。