以下、本発明を実施するための実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
(基本構成)
図1に、本発明の適用されるインクジェット記録装置の概略構成を説明するための模式的な平面図を示す。なお、ここに示すインクジェット記録装置は、インク滴を吐出可能な記録ヘッドを記録媒体の搬送方向と交差する方向に移動させて記録を行ういわゆるシリアル型のインクジェット記録装置となっている。
図1において、記録ヘッド1は、供給されるインクを複数の吐出口から吐出可能なインクジェット記録ヘッドであり、この記録ヘッド1は、キャリッジ102に着脱可能に搭載される。キャリッジ102には、不図示のコネクタを介して記録ヘッド1に駆動信号等を伝達するためのコネクタホルダ(電気接続部)が設けられている。キャリッジ102は、装置本体に設置されたガイドシャフト103によって、矢印Aに示す方向に往復移動可能に支持されている。当該移動の駆動源をなすモータ(以下、主走査モータという)104により回転駆動されるモータプーリ105と従動プーリ106との間には、キャリッジ102に連結されたタイミングベルト107が架け渡されている。キャリッジ102は、これらのモータ104、プーリ105、106、タイミングベルト107などによって構成された駆動機構によってA方向に移動される。
プリント用紙やプラスチック薄板等の記録媒体108は、給紙モータ115の駆動によってピックアップローラ113が回転されることにより、オートシートフィーダ(ASF)114から一枚ずつ分離されて給紙される。さらに、記録媒体108は、搬送ローラ109の回転により矢印Bの方向に搬送されて、記録ヘッド1における吐出口の形成面(吐出口面)と対向する位置(記録部)を通る。搬送ローラ109は、搬送モータ116の駆動により回転される。記録媒体108が給紙されたかどうかの判定と、その給紙時における記録媒体の先端の頭だし位置の確定は、搬送ローラ109の上流に配されたペーパエンドセンサ112の検知信号に基づいて行われる。さらに、記録媒体108の後端位置の割り出し、及び記録媒体108の後端位置から現在の記録位置を割り出すためにもペーパエンドセンサ112が使用される。なお、記録媒体108は、記録部において平坦な記録面を形成するように、その裏面がプラテン(不図示)により支持される。
上記構成を有するインクジェット記録装置では、記録ヘッド1がキャリッジ102と共に矢印A方向に移動しつつインクを吐出する記録動作(以下、記録走査という)と、各記録走査の間に行われる記録媒体の搬送動作とを繰り返し、記録録媒体上に画像を形成する。
図2は、本発明の実施形態に係るインクジェット記録装置100のインク供給システムの概略図である。ここでは説明を簡単にするため、液体としてのインク1色分の経路についてのみ示す。図2は、特に、メインタンク5内部にインクが十分に収容されており、メインタンク5内のインクが使用されて記録が行われている状態を示す図である。
まず、本実施形態のインク供給システムの構成について説明する。本実施形態のインク供給システムは、記録ヘッド1、メインタンク5、サブタンク4及びバッファ室6を有している。本実施形態の記録ヘッド1は、インクを吐出させる記録素子が設けられた素子基板と、この素子基板に接合されるオリフィスプレートとを備えている。オリフィスプレートは、インクの液滴を吐出する複数の吐出口を有するとともに、素子基板に接合されることによって吐出口が連通するエネルギ作用室としての発泡室及びこれに連通するインク流路等が形成されている。
メインタンク(第1のインクタンク)5は、記録装置本体に対して着脱可能に搭載されている。本実施形態では、メインタンク5は、比較的大容量のインクを収容可能に形成されている。メインタンク5に収容されたインクは、記録装置本体に搭載されたサブタンク4に供給され、さらにサブタンク内のインクがキャリッジに搭載された記録ヘッド1に供給される。記録ヘッド1は供給されたインクを吐出口から吐出し、画像の記録を行う。記録動作が進むにつれ、メインタンクからサブタンクへのインクの供給が行われ、メインタンク5の内部のインクは減少してゆく。そして、メイタンク内のインクが無くなったとき、あるいは一枚の記録媒体に対して記録を行うのに不十分な量となったときに、メインタンク5をインクの充填された新たなものに交換する。
サブタンク(第2のインクタンク)4は、メインタンク5と記録ヘッド1の間で、メインタンク5から記録ヘッド1へ供給されるインクを一旦貯留することが可能なように形成されている。このサブタンク4は、メインタンクが空となって交換されている間に、記録動作を中断させないようにするため、メインタンク5の交換作業の間、記録動作を行うことが可能な量のインクが収容されている。このため、サブタンク4の容量は、メインタンク5に比べ、比較的小さく形成される。メインタンク5とサブタンク4は、サブタンク4の液室4の上面部に突設された第1の中空管11によって連通される。第1の中空管11は金属などの導電部材によって形成され、その内部にインクを流通させることが可能なように形成されている。
ここで、第1の中空管11は、インクの流通する流路が流路抵抗を十分に有するように、その内径が十分に細く形成されている。このため、メインタンク5がサブタンク4よりも高い位置に配置されていても、メインタンク5内に収容されているインクは、重力のみによってサブタンク4内に供給されることはない。記録ヘッド1でインクが吐出され、サブタンク4内のインク量が減少することでサブタンク4内に所定値以上の負圧が発生したときにメインタンク5からサブタンク4へインクが供給される。
また、記録ヘッド1とサブタンク4との間には、これらを接続するための供給チューブ2が配置されている。供給チューブ2は、内部にインクを流通させることが可能とされ、サブタンク4内部のインクを記録ヘッド1に供給する。供給チューブ2は柔軟な材料によって形成されており、記録ヘッド1を記録走査させつつ記録ヘッド1にインクを供給することが可能である。
サブタンク4には、外部と空気を流通させることを可能としている大気連通路8が連結されている。大気連通路8は、導入部81と、空間部82と、排出部83とを備えている。導入部81は、サブタンク4内で最も高い位置41から上方に立ち上がるように形成されている。空間部82は、導入部81の上端に形成された導出口81bに連結されて形成されている。排出部83は、空間部82からサブタンク4の底面よりも下方に立ち下がって形成されている。そして、大気連通路8は、全体として逆U字状に構成されている。導入部81の下端部に形成された導入口81aはサブタンク4における最も高い位置と同一の高さ位置に配設されている。また、大気連通路8には、その排出部83に外周面に沿って摺動可能に大気連通弁9が設けられており、この大気連通弁9を移動させることによって大気連通路8の出口である大気連通口(大気連通部)8aを開放、閉塞することが可能になっている。従って、大気連通口8aが開放状態にあるときには、サブタンク4の内部の空気を導入部81、空間部82及び排出部83を介して大気へと放出することができる。
また、サブタンク4には、サブタンク4内のインクの液面が所定の高さ以上にあるとき、インクと接触する金属などの導電部材によって形成された中実管13が取り付けられている。この中実管13と中空管11とは図外の配線部によって電気的に接続され、中実管13と中空管11とが液体サブタンク内に収納されたインクと接触すると閉回路が形成され、インクがサブタンク内に充填されたことを表す電気信号が出力される。
なお、本実施形態では、中実管13をサブタンク4の上面に形成された傾斜面42に配置し、サブタンク4のインク内に生じた気泡が中実管13の周囲に溜まるのを避けるように構成されている。これによれば、液面の位置が中実管13との接触位置に達しているにも拘わらず、中実管13の周囲に溜まった気泡によってインクと中実管13とが非接触となって液面位置が検出されないという誤検出が生じるのを避けることができる。
また、サブタンク4と記録ヘッド1との間のインク供給経路の途中には、内容積の変化が可能なダイヤフラム部3が設けられている。ダイヤフラム部3は、本実施形態ではサブタンク4の液室部4aに連通する流路部4bに設けられている。ダイヤフラム部3は、可撓性を有するゴムとしてのダイヤフラムによって形成されている。図2は、ダイヤフラム部3が流路部4bの壁面から外方に膨出した初期状態を示しており、その内容積は拡張した状態にある。一方、図3はダイヤフラム部3の中央部が流路部4bの壁面に接する位置まで押圧された状態を示しており、この状態においてダイヤフラム部3の内容積は前述の拡張状態に比べて縮小する。なお、この実施形態における流路部4bには、ダイヤフラム部3によって開閉される連通口4b1が形成されると共に、連通口4b1より下流側(サブタンクから記録ヘッドへのインクの流動方向において下流側)に前述の供給チューブ2の下端部が連結されている。従って、図3に示すようにダイヤフラム部3が押圧された状態にあるとき、連通口4b1はダイヤフラム部3によって閉塞され、液室部4aと記録ヘッド1との連通が遮断されるようになっている。つまり、ダイヤフラム部3は記録ヘッドから液室部4aの間を連通、遮断させる開閉弁としての機能も併せ持つ構成となっている。
また、ダイヤフラム部3が設けられている流路部4bは、サブタンク4の液室部4aにおいて下方部に配置されており、液室部4aとの連通口は比較的低い位置に形成されている。これにより、インクが消費され、サブタンク4内に残るインクの量が僅かな量になるまで流路部4b及びダイヤフラム部3内に空気が流入しないように構成されている。
バッファ室6は、内部にインクを収容可能な容器として、メインタンク5と連通するように形成されている。そして、バッファ室6の内部には大気に開放された大気連通路7が配置されており、バッファ室6の内部の空間は大気連通路7を介して大気と連通している。メインタンク5とバッファ室6との間は、第2の中空管12によって接続される。第2の中空管12も金属などの導電部材によって形成され、その内部にインクを流通させることが可能なように形成されている。メインタンク5とバッファ室6とが連通しているので、メインタンク5の内部のインクが温度上昇によって膨張し、メインタンク5の内部の圧力が上昇するようなことがあっても、メインタンク5内部のインクをバッファ室6の内部に流入させることができる。このため、メインタンク5の内部の圧力が過度に上昇することが抑えられる。また、メインタンク5が、バッファ室6を介して大気と連通するように形成されており、バッファ室6は、メインタンク5内部の圧力を大気の圧力とバランスさせる役割を果たしている。
ここで、本実施形態におけるダイヤフラム部3の押圧、開放動作、及び大気連通弁の開閉動作を行う機構を説明する。本実施形態では、ダイヤフラム部3を押圧、開放させることによるダイヤフラム部3の内容積の拡張・縮小動作及び大気連通口の開閉動作は、同一のモータ14を有する駆動機構30によって行われる。駆動機構30は、モータ14と、モータ14の出力軸に固定された駆動ギア14a、アイドルギア15、遊星ギア16からなる駆動力伝達機構とを備える。また、駆動機構30は、駆動力伝達機構によって選択的に回転駆動される第1ギア19及び第2ギア24と、第1ギアと一体的に回転する第1カム20と、第2ギア24と一体的に回転する第2カム25を有する。さらに駆動機構30は、第1カム20によって作動する大気弁レバー21と、第2カム25によって作動するダイヤフラムレバー27とを有する。
より詳細に説明すると、モータ14の出力軸に固定された駆動ギア14aは、アイドルギア15と噛合するように配置されている。また、アイドルギア15と遊星ギア16とは噛合し、それぞれのギアがモータ14からの駆動力を伝達する。遊星ギア16は、アーム17を介してアイドルギア15に接続されており、アイドルギア15の中心軸との距離を保ちながら、図2に示されるモータ14の回転方向によってR1、R2のいずれかの方向に移動できる。遊星ギア16がR1方向に移動したときには、遊星ギア16はギア24と噛合し、遊星ギア16がR2方向に移動したときにはギア19と噛合することが可能とされている。
さらに駆動機構30は、支点22を中心軸として回転する大気弁レバー21と、支点26を中心軸として回転するダイヤフラムレバー27とを有している。大気弁レバー21の一端部は、前述の大気連通口8aを開閉させるための大気連通弁9に連結されており、圧縮バネ23の付勢力によって大気連通口8aを開放させる位置へと付勢されている。カム20の外周の一部には、外方に突出する押圧部20aが設けられており、カム20が所定の位相位置まで回転することにより、この押圧部20aが大気弁レバー21の一端部を圧縮バネ23の付勢力に抗して押圧する。また、カム20の外周部の一部には、外方に突出する押圧部20aが設けられており、カム20が所定の位相位置まで回転することにより、この押圧部20aが圧縮バネ23に抗してダイヤフラムレバー27を押圧することができる。ギア24及びギア19に近接した位置には、ギア24及びギア19と共に回転するカム20及びカム25の位相検知を行うセンサ42、43が、それぞれ配置されている。このうち、ダイヤフラム部3を作動させるダイヤフラムレバー27を押圧部20aで押すカム25の位相の検知は、ダイヤフラム部センサ42が行う。また、大気連通弁9を作動させる大気弁レバー21を押圧部25aで押すカム20の位相検知は、大気弁センサ43が行う。センサ42、43によってそれぞれのギア19、24の位相を正確に検出し、大気連通口の開閉動作及びダイヤフラム部3の移動によるダイヤフラム部3の内容積の拡張・縮小動作を確実に行うことが可能とされている。本実施形態では、センサ42、43は発光素子及び受光素子を有する光学的なフォトセンサが用いられている。センサ42、43は、受光素子での光量を検出することによってギア19、24の位相を検出している。本実施形態では、ギア19、24の所定位置にフラグが設けられており、このフラグが所定位相に位置したときに発光素子からの光が遮光され、受光素子での受光量を変化させてギア19、24の位相を検知している。なお、センサ42、43の形態としてはこれに限定されず、その他の形態のものが用いられても良い。例えば、ギアが近くの位置を通過することで発生する磁界の変化を検出する磁気センサが用いられても良い。
図9は、本実施形態におけるインクジェット記録装置の制御系の概略構成を示すブロック図である。図9において、インクジェット記録装置の各部の動作は、ROM121内に格納された制御プログラム及びRAM122に格納された種々のデータなどに基づいてCPU120により制御される。すなわち、CPU120には、記録ヘッド1に設けられた電気熱変換素子を駆動するヘッド駆動回路123、主走査モータ104を駆動する主走査モータ駆動回路124、LFモータ116を駆動するLFモータ駆動回路125などが接続されている。さらに、前述の大気弁9の開閉及びダイヤフラム部3の移動などを行うための駆動源であるモータ4がCPU120に接続されている。また、CPU120には、インクジェット記録装置の動作状態を表示する表示部52及び記録媒体を供給するASF114などが接続されている。また、CPU120には、前述の大気弁センサ43、ダイヤフラム部センサ42、ペーパーエンドセンサ112などが接続されている。また、CPU120には、メインタンク5及びサブタンク4内に収容されているインクが所定量以下に達したか否かを表す信号を出力する液体検出回路50が接続されている。この液体検出回路50は、前述の第1の中空管11と第2の中空管12との間、第1の中空管11と中実管13との間に、それぞれ所定の電圧を印加する。そして、第1の中空管11と第2の中空管12との間、第1の中空管11と中実管13との間に電流が流れたか否かを検出し、電流が流れた場合にはCPU120に検出信号を出力する。なお、この液体検出回路50と中空管11,12及び中実管13によって、メインタンク及びサブタンク内にインクが存在するか否かを検出する液体検出手段が構成されている。
また、上記の制御系において、CPU120は、液体検出回路50及び各部のセンサから出力された信号に応じて、ROM121に格納されている制御プログラムに従い、記録動作、サブタンクへのインクの充填動作などの種々の動作が制御される。例えば、メインタンク5の交換後に実行されるサブタンクへのインクの充填動作においては、ダイヤフラム部センサ42及び大気弁センサ43によって検出された各カム20、25の位相を表す信号がCPU120に入力される。CPU120は、それらの位相と液体検出回路50からの信号に基づいてモータ14の回転方向及び回転量が制御される。
このように構成されたインクジェット記録装置100における記録ヘッド1がインクを吐出し、インクが消費されると、記録ヘッド1内に負圧が生じる。この記録ヘッド1内の負圧がチューブ2を介してサブタンク4に伝わり、サブタンク4内のインクが記録ヘッド1へ供給されることになる。このとき、大気連通弁9は閉塞されているので、負圧が外部に逃げずにサブタンク4内に伝播する。そして、上述したように第1の中空管11を介してメインタンク5とサブタンク4とが連通しているので、サブタンク4内に負圧が形成されると、メインタンク5からサブタンク4へインクが供給される。また、本実施形態では、上述したようにメインタンク5とバッファ室6とが第2の中空管12を介して連通しているので、大気連通路7によって外部と連通したバッファ室6内部の空気が、メインタンク5の内部に流入することが可能である。従って、上述のように記録が行われることでメインタンク5内のインクが減少したとしても、メインタンク5内の圧力は大気とバランスされてメインタンク5内部の圧力が過度に低下することが抑えられる。
本実施形態では、重力によってのみではインクが流通しないように流路抵抗が十分に大きい第1の中空管11を介してメインタンク5とサブタンク4とが連通している。第1の中空管11内部の流路抵抗が十分に大きいので、メインタンク5内部からサブタンク4へは記録ヘッドで消費された分のインクのみしか供給されない。従って、メインタンク5からはサブタンク4が必要としている適量のインクのみが供給されることになり、重力によって過剰なインクがメインタンク5からサブタンク4内部に供給されることが抑えられる。このため、サブタンク4内でのインクの液面は、一定の領域内に位置するように調節される。本実施形態では、メインタンク5内にインクが収容されている状態では、サブタンク4の内部ではインクの液面が中実管13の下端部とサブタンク4の上面との間に位置するように調節されている。
本実施形態の記録装置によって記録動作が続けられ、メインタンク5内のインクが消費され続けると、最終的にはメインタンク5内部のインクが使い切られる。メインタンク5内部のインクが使い切られてインクが無くなってしまったときには、メインタンク5からサブタンク4へ空気が供給されることになる。従って、メインタンク5が空になった状態になった後に記録ヘッド1からインクが吐出され続けると、サブタンク4の供給路10内に空気が供給される。この空気は、メインタンク5とサブタンク4を連結する第1の中空管11を介して、サブタンク4内の供給路10内に流入する。このように、メインタンク5内のインクが使い切られて空になった後に記録ヘッド1でインクが消費されると、メインタンク5内の空気とサブタンク4内のインクが置換されてサブタンク4内に空気が流入することになる。
本実施形態では、中空管11と中実管13との間に所定の電圧を印加し、中空管11と中実管13との間が通電するか否かによって供給路10内にインクが存在しているかどうかの判断が行われている。このとき、供給路10内にインクが存在している場合には中空管11、13の間が導通し、インクの存在しない領域がある場合には導通しない。この導通の有無によって供給路10内にインクが収容されているか否かが判断され、これによってメインタンク5内のインクの有無が確認される。例えば、中空管11と中実管13との間の電気的接続が切断されると、サブタンク4内部のインクが消費され始めたことが検知される。このときは、メインタンク5の内部にはインクが無く空になって、メインタンク内の空気がサブタンク4の供給路10内に吸引された状態であると考えられる。メインタンク5内のインク有無の検知の精度を高めるために、鉛直方向に延出する比較的内径の小さな円筒部が形成されている。本実施形態では、中空管11の内径が1.6mm、供給路10の内径が2〜3mmである。メインタンク5がほぼ空となった際には、中空管11及び流路10内に空気が導入され、電気的接続が切断されてインク切れが検出される。また、このとき供給路10を形成する壁面が比較的内径の小さな円筒状に形成されているので、サブタンク4内に空気が供給されてインクの液面が低下したときに、液面の変位が比較的大きくなる。このように、サブタンク4内に空気が供給されたときにインク液面が大きく変位するので、メインタンクからサブタンクへの空気の流入量が僅かであっても、中空管11及び中実管13の間の通電を確実に遮断することができる。これにより、メインタンク5内のインクがなくなったことを、インク液面の変位によって確実に検知できる。このように、サブタンク4の内部には、メインタンク5からのインクの供給口に近接した位置でインクの有無を検知し、メインタンク5からのインクの供給が止まったことを検知するインク有無検知センサ(液体有無検知センサ)が取り付けられている。本実施形態では特に、中空管11が、メインタンク5からのインクの供給口とインク有無検知センサとしての機能を兼ね備えており、メインタンク5からのインクの供給口の位置とインクの有無を検知する位置が略一致している。
メインタンク5の交換が行われる際には、サブタンク4内にはある一定量のインクが保持されている。サブタンク4における供給路10内のインクの有無の検知によってメインタンク5のインク切れが検出された後は、記録ヘッド1によるインク消費量がインクの吐出回数によって計算され、そのインク消費量に基づいてサブタンク4内のインク残量が計算される。その後、もしメインタンク5が交換されることなく記録が続行され、サブタンク4が空となったときには記録が中断される。このときは、やむを得ず記録動作が中断され、メインタンク5の交換作業を促す報知動作が行われる。
メインタンク5内部のインク切れが検知された際には、記録装置はディスプレーや記録装置の表示部に表示してユーザーに報知する。
メインタンク5が交換される際には、メインタンク5が上方に引き上げられて、第1の中空管11及び第2の中空管12からメインタンク5が引き抜かれる。そして、新たなメインタンク5を第1の中空管11及び第2の中空管12がメインタンク5の壁面を貫通するように装着され、サブタンク4及びバッファ室6をメインタンク5に接続する。
なお、本実施形態では、第1の中空管11と第2の中空管12との間に所定の電圧を印加し、第1の中空管11と第2の中空管12との間が通電するか否かによってインクの充填されているメインタンク5が装着されているか否かを確認することができる。このように、本実施形態では、インクが充填されているメインタンク5が装着されたことを検知するメインタンク装着検知センサ(第1のインクタンク装着検知センサ)が取り付けられている。
図5は、図4に示す状態からさらに記録動作が行われることによってサブタンク4内のインクが消費されて減少した状態を示す説明図である。記録動作が行われている状態では、大気連通弁9は閉塞され、ダイヤフラム部3は外方に膨出した初期状態にあるため、ダイヤフラム部3の内容積が拡張された状態に保たれている。
メインタンク5はサブタンク4よりも高い位置に配置されているが、インクが収容されているメインタンク5が搭載されたとしても、すぐにはサブタンク4内にはインクは供給されない。通常、メインタンク5は空になった状態で交換されるので、メインタンク5を交換する際には、図6に示されるようにサブタンク4内の供給路10には空になった状態のメインタンク5から空気が吸引されサブタンク4内に空気が流入する。従って、通常、メインタンク5が交換されると、サブタンク4の供給路10内には空気が存在している。
また、メインタンク5を交換する際には大気連通弁9が閉塞されている。そして、サブタンク4内のインクの上部には空気が収容されている。これにより、メインタンク5が交換されることでインクが収容されているメインタンク5とサブタンク4とが連通したとしても、この空気はサブタンク4の外部に放出されないので、サブタンク4にはインクはほとんど流入しない。このため、メインタンク5を交換したとしても、サブタンク4で負圧が発生しないと、メインタンク5からはインクは供給されない。
従って、サブタンク4にインクを供給するためには、サブタンク4内に負圧を発生させ、サブタンク4内の空気と新たに交換されたメインタンク5内のインクとが置換されて、サブタンク4内にインクが充填されることが求められる。ここで、図7及び図8を参照しつつ、サブタンクへのインクの充填動作の概略を説明する。なお、図7(a)〜(c)は、サブタンク内にインクを充填する際のサブタンク周辺の各部の動作を示す説明図、図8は、図7に示すサブタンクへのインクの充填動作時の制御工程を示すフローチャートである。
図7(a)は、メインタンク5が交換され、サブタンク内のインクが僅かな状態になった状態を、図7(b)は、ダイヤフラム部3を内方に移動させることでサブタンク4内の空気をサブタンク4の外部に送り出した状態を示している。また、図7(c)は、ダイヤフラム部3を外方に移動させることでメインタンク5からサブタンク4内にインクを供給している状態を示している。
図7(a)に示すように、メインタンク5を交換した直後は、ダイヤフラム部3が外方に膨出し、その内容積が拡張されている。このとき大気連通弁9は閉塞されている。次に、図7(b)に示すように、大気連通弁9を閉塞状態から開放状態にした後(S201)、ダイヤフラム部3を内方に位置させて、その内容積を縮小させる(S202)。ダイヤフラム部3の移動によって約0.5cc分の体積変化を行う。
ダイヤフラム部3を内方に移動させることにより、約0.5cc分のインクがダイヤフラム部3からサブタンク4におけるメインタンク側に押出される。このとき、ダイヤフラム部3から記録ヘッド1までの流路抵抗ΔPH(供給チューブ2の流路抵抗)はダイヤフラム部3からサブタンク4(メインタンク5)までの流路抵抗ΔPSに比べ、圧倒的に高いので、殆ど記録ヘッド1側にはインクは殆ど押出されない。
このときの管内の流路抵抗は管内の流れの圧力損失にて次式のように表すことができる。
圧力損失ΔPは
ΔP=Q×(128μΔL)/πd4・・・(1)
と表すことができる。ここでQはインク流量、μはインク粘度、ΔLは流路長、dは流路内径である。
本実施形態では、供給チューブ2は、その内径が2.4mmであり、長さが約1.9mである。一方、流路部4bのうちダイヤフラム部3から液室部4aまでの部分ではその内径が約5mm、長さが約10mmである。このとき、ダイヤフラム部3から記録ヘッド1までの流路抵抗ΔPHと、ダイヤフラム部3からの流路部4bでの流路抵抗ΔPSとの比は、
ΔPH:ΔPS=3580:1・・・(2)
である。従って、圧倒的にダイヤフラム部3から記録ヘッド1までの流路抵抗の方が、サブタンク4におけるダイヤフラム部3からの流路部4bにおける流路抵抗よりも大きい。
ゆえに、ダイヤフラム部3が移動することによってサブタンク4内部のインクが圧縮されたとしても、サブタンク4に収容されているインクは、殆ど記録ヘッド1側には押出されない。その結果、ダイヤフラム部3が内方に移動することによってダイヤフラム部3から圧縮され押出されるインクは、サブタンク4側に移動する。
次に、仮にインクがサブタンク内の供給路10及び第1の中空管11を介してメインタンク5に流入する際の抵抗値ΔPH2と、サブタンク4内の空気がサブタンク4内の大気連通路8を介して大気に排出される抵抗値ΔPAとを比較する。本実施形態では、インクの粘度が空気の粘度よりも約100倍強大きい。また、供給路10の内径が約2〜3mm、長さが約20mm、第1の中空管11の内径が1.6mm、長さが約30mmであり、一方、大気連通路8の内径が2.7mm、長さが約74mmである。従って、サブタンク4からメインタンク5までの流路抵抗ΔPH2と、サブタンク4から大気連通路8を介して大気に至るまでの流路抵抗ΔPAとの比は
ΔPH2:ΔPA=27.5:1・・・(3)
である。
このように、大気連通弁9が開放された際のサブタンク4から大気までの流路抵抗ΔPAの方が、サブタンク4からメインタンク5までの流路抵抗ΔPH2よりも圧倒的に小さい。そのため、ダイヤフラム部3が内方に移動してその内容積が小さくなりサブタンク4内部のインク及び空気が圧縮された際には、サブタンク4内の空気は大気連通弁9を通って大気に排出されることになる。従って、サブタンク4内の圧力は高くならず、インクは殆どメインタンク5へは流れない。
次に図7(c)に示されるように、大気連通弁9を開放状態から閉塞状態にした後(S203)、ダイヤフラム部3を内方へと押圧した状態から外方に膨出する初期状態へと移動させる(S204)。このダイヤフラム部3の移動により、その内容積が拡大する。これにより、サブタンク4内に負圧が発生し、ダイヤフラム部3内にインクが約0.5cc分流入すると共に、メインタンク5からサブタンクへインクが供給される。このとき、ダイヤフラム部3から記録ヘッド1までの流路抵抗は、ダイヤフラム部3からメインタンク5までの流路抵抗に比べかなり高いため、記録ヘッド1側からダイヤフラム部3へ流入するインクは殆ど無い。本実施形態では、供給路10の内径が約2〜3mm、長さが約20mm、第1の中空管11の内径が1.6mm、長さが約30mmである。従って、ダイヤフラム部3から記録ヘッド1までの流路抵抗ΔPHとダイヤフラム部3からメインタンク5までの流路抵抗ΔPTとの比は
ΔPH:ΔPT=11:1・・・(4)
であり、ダイヤフラム部3から記録ヘッド1までの流路抵抗の方がかなり大きい。従って記録ヘッド1側のインクがダイヤフラム部3に流入することは殆ど無い。このとき、大気連通弁9が閉塞されていることにより、記録装置の外部から大気連通路8を介してサブタンク4内に空気が入ってくることは殆どない。そして、メインタンク5内は負圧になるが、大気連通路7を介してバッファ室6から空気がメインタンク5内に導入されるので、メインタンク5内の負圧は解消される。その結果、メインタンク5からサブタンク4へある一定量のインクが導入されることとなる。
次に、本実施形態のインク供給システムにおけるメインタンク5の交換後に、メインタンク5からサブタンク4の内部へインクを供給する際の駆動機構30の各部の動作について説明する。
前述のように、メインタンク5の交換後にサブタンク4内から空気を除去しつつ、メインタンク5からサブタンク4へインクを供給するには、ダイヤフラム部3の拡張・縮小動作(ダイヤフラムの移動)及び大気連通弁9の開閉作動を繰り返す。このときの記録装置におけるダイヤフラム部3と大気連通弁9の状態としては、概ね2つの状態が考えられる。まず一方の状態としては、図2に示されるように、ダイヤフラム部3をサブタンク4の外方に膨出してダイヤフラム部3の内容積が拡張した状態(以下、この状態をダイヤフラム部の拡張状態と称す)にあり、かつ大気連通弁9が閉塞した状態がある。また、他方の状態としては、図3に示されるように、ダイヤフラム部3が押圧されて、その内容積が縮小した状態(以下、この状態をダイヤフラム部の縮小状態と称す)にあり、かつ大気連通弁9が開放された状態がある。
図2に示されるようにダイヤフラム部3が拡大状態あり、かつ大気連通弁9が閉塞した状態から、図3に示されるようにダイヤフラム部3が縮小状態にあり、かつ大気連通弁9を閉塞させる場合の各部の動作について説明する。
図2に示す状態では、第1カム20の押圧部20aが大気弁レバー21の端部(図中右端部)を圧縮バネ23の付勢力に抗して押圧しており、これによって大気弁レバー21の他端部(図中、左端部)に設けられた大気連通弁9が大気連通口8aが閉塞されている。また、第2カム25の押圧部25aは、ダイヤフラムレバー27から離間した状態にあり、ダイヤフラムレバー27は、ばねの付勢力によってカム25の円形の外周面に当接している。このとき、ダイヤフラムレバー27の一端部(図中、左端部)はダイヤフラム部3を押圧していない状態(開放状態)にあり、ダイヤフラム部3は拡張状態に保たれている。
ここで、まず、モータ14を駆動し、駆動ギア14aをS2方向へと回転させる。この駆動ギア14aの回転力はアイドルギア15を介して遊星ギア16に伝達され、遊星ギア16はその回動中心軸を中心として回転する。なお、アイドルギア15は定位置に保持された不図示の軸を中心に定位置で回転する。遊星ギア16の回転により、これに噛合しているギア19と共に第1カム20が回転し、その押圧部20aが大気弁レバー21の端部(右端部)から離間する。その結果、大気弁レバー21は、圧縮バネ23の弾性力によって支点22を中心に図2における反時計方向へと回転し、大気連通弁9を大気連通口8aを閉塞する位置から移動させる。これにより、大気連通口8aは大気に開放される。
次に、モータ14によって駆動ギア14aをS2方向に回転させると、駆動ギアに噛合しているアイドルギア15が回転する。このアイドルギア15の回転により、これに噛合している遊星ギア16がR1方向へと移動し、図3に示すようにギア24と噛合する。その後も継続してモータ14を駆動することにより、ギア16はその回動中心を中心として回転し、押圧部25aがダイヤフラムレバー27との対向位置へと移動し、ダイヤフラムレバー27の端部(図中、右端部)を圧縮バネ28に抗して押圧する。これにより、ダイヤフラムレバー27の他端部(図中、左端部)がダイヤフラム部3を押圧し、ダイヤフラム部3を縮小状態にする(図3参照)。こうしてダイヤフラム部3が縮小されることにより、ダイヤフラム部3内のインクがサブタンク4の液室4a側に送り込まれ、液室4内のインクの液面は上昇する。この際、大気連通口8aは大気連通弁9によって開放状態となっているため、液室4内のインクの液面上昇に伴ってサブタンク4の上方部に溜まっている空気は大気連通口8aから大気へと排出される。
このように、ダイヤフラム部3及び大気連通弁9について、図2の状態から図3の状態に位置関係を変化させることができる。
次に、図3に示されるようにダイヤフラム部3が縮小状態あり、かつ大気連通弁9が開放された状態から、図2に示されるようにダイヤフラム部3が拡張状態にあり、かつ大気連通弁9を閉塞させる場合の各部の動作について説明する。
図3に示すダイヤフラムの縮小状態から、モータ14を駆動して駆動ギア14aをS1方向へと回転させると、アイドルギア15の回転に伴って遊星ギア16はR2方向へと移動し、ギア19と噛合する。その後、継続してモータ14を駆動することにより、アイドルギア15を介して遊星ギア16が回転し、その回転に連動してギア19及びカム20が回転する。カム20の回転によって押圧部20aが大気弁レバー21の端部を圧縮バネ23に抗して押圧し、大気弁レバー21を支点を中心に回転させる。大気連通弁9は、大気弁レバー21の移動に伴って移動し、それまで開放状態にあった大気連通口8aを閉塞する。この時点で、モータ14の回転は一旦停止する。また、ダイヤフラム部3は、図3に示す縮小状態を維持する。
上記のようにして大気連通口8aが大気連通弁9によって閉塞した後、モータ14を駆動し、駆動ギア14aをS2方向に回転させる。駆動ギア14aの回転に連動してアイドルギア15が回転することにより、遊星ギア16はR1方向へと移動し、ギア24に噛合する。遊星ギア16とギア24とが係合した後も、モータ14の駆動力によって駆動ギア14が回転し続けることにより、遊星ギア16はその回動中心を中心として回転し、ギア24を回転させる。これにより、カム25の押圧部25aがダイヤフラムレバー27から離間し、ダイやフラムレバー27は圧縮バネ28の付勢力によって支点26を中心に図3における時計方向へと回転する。その結果、ダイヤフラムレバー27は、ダイヤフラム部3に対する押圧力を解除し、ダイヤフラム部3は自身の復元力によって図2に示す拡張状態に復帰する。このとき、大気連通口8aは閉塞されているため、ダイヤフラム部3が拡張状態に復帰することにより、サブタンク4内に負圧が発生し、メインタンク5内のインクが中空管11を通じてサブタンク内に流入する。
以上のように、ダイヤフラム縮小・拡大、及び大気連通口8aの開閉を繰り返すことにより、メインタンク5内のインクが一定量ずつ(本実施形態では、0.5ccずつ)、サブタンク4へと供給されて行く。なお、上記動作において、ギア19、24を回転させる際には、それぞれのギア19、24に対応して取り付けられたダイヤフラム部センサ42及び大気弁センサ43によってカム20、25の位相が正確に検知されている。従って、大気連通弁9の開閉状態や、ダイヤフラム部3がサブタンク4の比較的外方か内方のいずれに位置しているかが正確に把握される。
図10(a)はサブタンク4内の中実管13にインクの液面が触れた状態の記録装置が示され、図10(b)にはインクのサブタンク4への充填動作終了時の状態の記録装置が示されている。
メインタンク5内のインクの有無検出方法は前述したように、サブタンク4内の中実管13と、メインタンク5の中空管11との間の空間がインクで満たされているか否かで判断する。このとき、中実管13と中空管11との間の空間がインクで満たされていれば、これらの間に電気を流したときに通電され、一方からの電気信号を他方で検知することができ、インクで満たされていることを検知することができる。サブタンク4内のインクの充填動作においても、中実管13と中空管11との間の空間で電気が導通するかどうかで判断される。この空間にインクが満たされ、電気が導通した直後の状態を図10(a)に示す(S205)。本実施形態では、サブタンク4の天面に傾斜を持たせ、大気への排出口を傾斜の上方に位置させ、メインタンク5からサブタンク4へのインク導入口が傾斜面よりも下方に位置し、インクの有無を検出するための中実管13が傾斜面の途中に位置させている。このことにより、サブタンク4内に溜まっている空気が大気連通路8を介してスムーズに除去される。このようにサブタンク4が形成されることで、サブタンク4内の空気が抜けずに、インクが充填されているにも関わらずインクの存在が検知されないようなインクの有無の検知における誤検知を防止している。図10(a)の状態になった際には、ある一定量サブタンク4にはインクが充填し終わっている。本実施形態では、その後、第1ステップ及び第2ステップの制御が一回ずつ行われて1セットとし、このセットが10回行われて終了としている(S206)。なお、第1ステップ及び第2ステップが繰り返される回数は10回に限定されず、他の回数であっても良い。中実管13と中空管11との間のインクの有無検知によってインクの存在が検知されるまで繰り返されることとしても良い。また、記録の用途に応じてサブタンク内のインク量を調節することとしても良い。
なお、本実施形態では、残量検出後に所定回数のダイヤフラム部3及び大気連通弁9の開閉動作が行われ、本実施形態では特に10回の開閉動作が行われている。しかし、残量の検出によってサブタンク4の供給路10内に十分にインクが収容されていることが検知された際に、これらの開閉動作を止めることとしても良い。
また、本実施形態では、ダイヤフラム部3から記録ヘッド1までの流路抵抗ΔPHとダイヤフラム部3からメインタンク5までの流路抵抗ΔPTとの比が
ΔPH:ΔPT=11:1‥‥(5)
であったが、本発明に用いられる供給チューブはこれに限定されず、他の長さ及び内径を有する供給チューブが用いられても良い。他の実施形態において、内径が2.4mm、長さが約1mの供給チューブが用いられ、その他は上記実施形態と同じ記録装置の場合、ΔPH:ΔPT=6:1となる。ここで、ダイヤフラム部3から記録ヘッド1までの流路抵抗をΔPHとし、ダイヤフラム部3からメインタンク5までの流路抵抗をΔPTとしている。サブタンク4は、上記実施形態のものと同様のものが用いられ、供給路10の内径が約2~3mm、長さが約20mm、第1の中空管11の内径が1.6mm、長さが約30mmである。この、実施形態においても、ほぼ同じ効果が得られている。
本発明の実施例の形態だけでなく、上記流路抵抗の大小関係を維持すれば、他の挙動を制御することで(ダイヤフラム部の開閉スピード等)、略同じ効果が得られる。
このように、本実施形態では、大気連通口8aを開放させてからイヤフラム部3の内容積を縮小させる工程と、大気連通口8aを閉塞させてからダイヤフラム部3の内容積を拡大させる工程とを繰り返すことでサブタンクへのインクの充填が行われる。従って、メインタンク5からサブタンク4内にインクを供給するのに、サブタンク4内に負圧を形成するための構成が簡易な構造にすることができる。これにより、記録装置の構造が簡易で済み、記録装置の製造コストを低く抑えることができる。
また、本実施形態の記録装置の構成によれば、サブタンク4内にインクを供給するための負圧を形成するための手段とサブタンク4内から空気を除去するための駆動機構を駆動させるための駆動源を共通化することができる。一般に、サブタンク4に負圧を形成するための駆動源と、サブタンク4から空気を除去するための駆動源とは別々に形成されるため、モータ等の駆動源が別々に必要となり、これによって記録装置の製造コストを高くしていた。これに対して、本実施形態では、ダイヤフラム部3の容積変化と、大気連通弁9の開閉動作とを選択的に作動させることで、サブタンク4に負圧を形成するための駆動源と、サブタンク4から空気を除去するための駆動源とが単一の駆動源によって駆動されている。従って、記録装置の構造がさらに簡易となり、記録装置の製造コストをさらに低く抑えることができる。
ここで、本実施形態のサブタンクへの液体充填方法は、大気連通口8aを開放させてからダイヤフラム部3の内容積を縮小させる容積変化部材縮小ステップ(S202)を有している。そして、本実施形態のサブタンクへの液体充填方法は、大気連通口8aを閉塞させてからダイヤフラム部3の内容積を拡大させる容積変化部材拡大ステップ(S201)を有していることとした。このとき、サブタンク4へのインクの供給を速く行うためには、ダイヤフラム部3の内容積を縮小させる容積変化部材縮小ステップにおいて、大気連通口8aを開放させてから、ダイヤフラム部3の内容積を縮小させるまでの時間は短い方が好ましい。本実施形態では、大気連通口8aを開放させてから、ダイヤフラム部3の内容積を縮小させるまでの時間は、5秒以内とされている。また、同様に、大気連通口8aを閉塞させてからダイヤフラム部3の内容積を拡大させる容積変化部材拡大ステップにおいても、大気連通口8aを閉塞させてからダイヤフラム部3の内容積を拡大させるまでの時間は短い方が好ましい。本実施形態では、大気連通口8aを閉塞させてからダイヤフラム部3の内容積を拡大させるまでの時間は5秒以内とされている。
また、さらに、大気連通口8aを開放させてからダイヤフラム部3の内容積を縮小させる容積変化部材縮小ステップと、大気連通口8aを閉塞させてからダイヤフラム部3の内容積を拡大させる容積変化部材拡大ステップとの間の時間も短い方が好ましい。本実施形態では、サブタンク4にインクを供給するために、容積変化部材縮小ステップと容積変化部材拡大ステップとのそれぞれのステップが繰り返されるときに、それぞれのステップの時間は5秒以内とされている。
なお、本実施形態では、ダイヤフラム部3の作動及び大気連通弁9の開閉を、大気弁レバー21及びダイヤフラムレバー27をバネによって付勢すると共に、モータ14の回転方向を変え、遊星ギア16と噛合するギアを変えることによって操作している。しかしながら、本発明はこの実施形態に限定されず、他の方法によってダイヤフラム部3の開閉及び大気連通弁9の開閉が行われても良い。例えば、ギア19、24をそれぞれ駆動させるモータを二つ取り付け、それぞれのモータによってギア19、24を駆動させることにしても良い。
(特徴構成)
以上の実施形態の基本構成に対し、記録装置の移動時等に際してインク噴出や漏出を確実に防止できるようにするための特徴的な実施形態について説明する。
先に説明した図2は、メインタンク5及びサブタンク4双方にインクが十分にあり、従って、サブタンク4から記録ヘッド1に供給される量に相当するインクが常にメインタンク5からサブタンク4に供給されながら記録動作が行われている状態を示している。この状態では、大気連通口8aが閉塞され、ダイヤフラム部3が外方への変位位置にある。
このような状態のまま電源がオフとされ、記録装置を移動させることを考える。このとき、記録ヘッド1が鉛直方向下側にされている場合は記録ヘッド1の吐出口から、また記録ヘッド1が上側にされている場合はバッファ室6に配設されている大気連通路7から、それぞれインクが漏出する恐れがある。移動時におけるこれらの姿勢に起因した漏出が生じないよう、電源をオフするに際して、図11に示すように、ダイヤフラム部3を内方への変位位置(内容積が縮小する位置)に設定し、インク供給路を閉塞する。この内容積の縮小分のインクは、サブタンク4とダイヤフラム部3との間の流路抵抗がダイヤフラム部3とヘッド1との間の流路抵抗より小さければ、同図の矢印で示すように、サブタンク4へと流れ込む。この場合、インク供給系は密閉状態となっている。このため、ダイヤフラム部3の作動に伴う圧力伝播によりサブタンク4からメインタンク5、さらにはバッファ室6へのインク流入があっても、インクはバッファ室6に貯留され、移動時に生じる多少の傾斜では大気連通路7からのインク漏出が生じることはない。
一方、記録動作の実行中にメインタンク5内のインクが無くなり、ユーザがメインタンク5を取り外した場合、図12に示すようにサブタンク4から供給されるインクによって記録の続行が可能である。これは、メインタンク5内にインクがあるにも拘らずユーザがメインタンク5を取り外した場合でも生じる状態である。このような状態で電源のオフが指示された場合、記録装置の移動が行われることを考慮して、インク漏出を防止するためにダイヤフラム部3を内方への変位位置(内容積が縮小する位置)に設定し、インク供給路を遮断する。
図13はこのときの状態を示している。メインタンク5が装着されていない状態で大気連通口8aが閉塞され、ダイヤフラム部3を内方への変位位置に設定することでインク供給路が遮断されると、ダイヤフラム部3の内容積の縮小分のインクはサブタンク4へと流れ込む。この場合には、メインタンク5が存在しないことで、サブタンク4内は大気に対し開放状態となっている。このため、サブタンク4内へのインク流入に伴うサブタンク4の内圧の上昇に起因して、第1の中空管11からインク噴出30が生じ、記録装置の内外あるいはユーザの手などを汚してしまう恐れがある。
図14はそのような不都合を防止するために採用される特徴構成に係る処理手順の一例である。また、図15および図16は、図14のシーケンスによるメインタンクの非装着状態における動作を説明するための説明図である。図14の手順は電源スイッチのオフ等により電源オフが指示されたときに起動されるものであり、この手順に対応した制御プログラムは図9の制御系におけるROM121内に格納され、CPU120により実行されるものとすることができる。
図14のシーケンスでは、電源オフが指示されると、まず大気連通口8aを開放し(ステップS301;図15)、その後にダイヤフラム部3を内方へ移動させてインク供給路を遮断する(ステップS302)。このとき、ダイヤフラム部3の内容積の縮小分のインクはサブタンク4へと流れ込む。ここで、ダイヤフラム部3から大気連通口8aまでの流路抵抗よりもダイヤフラム部3からメインタンク5までの流路抵抗が大きければ、サブタンク4と大気連通口8a間の空気は大気連通口8aから排出される。この後、大気連通口8aを閉塞させ(ステップS303)、電源のオフを許容して(ステップS304)、シーケンスを終了する。
図16はこのときの状態を示している。本実施形態の特徴構成では、ダイヤフラム部3の内容積を縮小させるに先立ち、大気連通口8aを開放しているので、サブタンク4内へのインク流入に伴うサブタンク4の内圧の上昇が緩和される。従って、図13の状態と異なり、第1の中空管11からのインク噴出が生じず、記録装置の内外あるいはユーザの手などを汚してしまう不都合を防止することができる。
なお、図16の状態で電源がオフとされてから、再び電源がオンとなったときの状態は図12と同等である。この場合、大気連通口8aを閉塞させた状態でダイヤフラム部3を外方に移動(復元)させて記録ヘッド1へのインク供給路を形成する。この状態では大気連通口8aが閉塞されているので、図示のようにメインタンク5が装着されていない状態でも、サブタンク4内のインクを利用して記録動作を再開することができる。
ところで、上記ステップS302の処理により空気が排出される場合、そのときのサブタンク4内の空気量ないしインク量によっては、大気連通口8aから若干インクが漏れることがある。しかし大気連通口8aの下側にインク吸収体等を配置しておけば(不図示)、そのような不慮のインク漏出に備えることができる。
また、そのようなインクの漏出を低減するために、ステップS302の処理に次のような制御を含ませることができる。つまり、サブタンク4および大気連通口8a間にある空気量を求め、その空気量に最適なダイヤフラム部3の内方への変位速度(ダイヤフラムの作動速度)を設定し、作動時間を可変とすることである。
ここで、例えばサブタンク4の容量をW1、サブタンク内に存在する空気量をW2とした場合、サブタンク内の空気比K(%)は、
K=(W2/W1)×100‥‥(6)
と表すことができる。
そして、図17に示すように、K値が小さい(空気量が少なく、インク量が多い)ときはダイヤフラム部3の作動速度を下げ、K値が大きい(空気量が多く、インク量が少ない)ときはダイヤフラム部3の作動速度を上げるようにする。つまり、インク量が多い場合には大気連通口か8aからの排出速度を下げることで、インクよりも空気が確実に先に排出されるようになし、空気量が多い場合には大気連通口か8aからの排出速度を上げることで、空気が速やかに排出されるようにする。図17は、例えば容量20ccのサブタンク4内にインクが充満している場合、すなわちK=0の場合はダイヤフラム部3の作動時間を10秒、K=25の場合は5秒、K=40の場合は3秒となる例を示している。
サブタンク4内の空気量ないしインク量の算出は、例えば次のようにを行うことができる。すなわち、上述のように、中実管13と中空管11との間の導通の有無を判定するで、サブタンク4内にインクが実質的に充満している状態及びメインタンク5内のインク量が実質的に無い状態またはメインタンク5が装着されていない状態を知ることができる。そこで、導通が確認されている状態から、メインタンク5内のインク量が実質的に無くなったかまたはメインタンク5が装着されていないために導通が確認されない状態が判定された以降、記録に使用されたインク量を算出する。そのインク量の分、空気がサブタンク4において置換されて行くので、空気量を算出することができる。なお、インク量の算出は、例えば記録ヘッド1が吐出したインクのドット数をカウントし、これに1ドットあたりのインク吐出量を乗じることで行うことができる。そして、図17に示したようなK値およびこれに応じたダイヤフラム部3の最適な作動速度(時間)の関係を示すデータを例えばROM121等に格納し、図14のシーケンス実行時にこれを参照するようにすればよい。これによれば、サブタンク4内のインク量検知のための特別な機構や検知のための時間が不要となり、構成簡単で効率の高いインクジェット記録装置が得られる。
また、図14のシーケンスはメインタンク5が装着の有無に関わらず実施可能であるが、特に非装着状態において図13で説明したような不都合を防止する上で有効である。従って、メインタンク5が非装着であることを検知し、その場合に図14のシーケンスが実行されるようにすることができる。
(その他)
なお、以上の説明では、所謂シリアルスキャン方式のインクジェット記録装置に本発明を適用した実施形態について説明した。しかし本発明は、記録媒体の幅方向の全域に亘って吐出口を配列してなる記録ヘッドを用いる所謂フルライン方式のインクジェット記録装置にも適用が可能である。
また、上例ではサブタンクと記録ヘッドとの間のインク供給経路の途中に設けられてこれを開放及び閉塞させる開閉弁の機能を、サブタンク内へのインク充填機能を実行するために容積変化を生じさせる部材としてのダイヤフラム部が果たす場合を例示した。開閉弁の形態はこれに限られるものではないが、しかし両機能を1つの部材で実行可能とすることは、装置構成および制御を簡単化する上で有利である。さらに、変位または変形によって容積変化を生じさせ、上述した各動作を可能とするものであれば、ダイヤフラム以外の容積変化部材、例えばベローズをを使用することが可能である。