JP5609372B2 - 積層フィルムおよび製造方法 - Google Patents
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Description
そこで、本発明は、屈折率を制御した層を設けることにより、反射・写り込みを防止して視認性を向上させた積層フィルムであって、その視認性を低下させることなく、印刷性をも兼ね備えた積層フィルム、およびその製造方法を提供することを課題とする。
本発明において、塗布液は、硬化性樹脂を含み、硬化性樹脂のみであっても、硬化性樹脂と溶媒との混合物であってもよい。
図1を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る積層フィルム1について説明する。なお、図1は多層に構成された積層フィルム1の層構成を説明するものであり、各層の厚みは誇張されている。積層フィルム1は、透明なフィルム状の基材10と、コート層A11、コート層B12、コート層C13を備える。図1に示すように、透明なフィルム状の基材10の一方の面(図1では基材10の上側)には、コート層B12が積層される。コート層B12上にはさらにコート層A11が積層される。また、基材10の他方の面(図1では基材10の下側)には、コート層C13が積層される。このように、積層フィルム1は多層に構成される。
基材10には、透明性を有するフィルム状の各種のプラスチックやガラスを用いることができる。透明性を有するプラスチックフィルムの材料としては、例えば、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリビニルアルコール系樹脂、ポリアリレート系樹脂、ポリフェニレンサルファイド系樹脂、ノルボルネン系樹脂等の樹脂が挙げられる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート、トリアセチルセルロース、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリアリレート、ポリエーテルエーテルケトン等が好ましい。なお、ポリエチレンテレフタレートおよびポリエチレンナフタレートは、機械的強度、寸法安定性、耐熱性、耐薬品性、光学特性等、およびフィルム表面の平滑性やハンドリング性に優れているためより好ましい。ポリカーボネートは、透明性、耐衝撃性、耐熱性、寸法安定性、燃焼性に優れているためより好ましい。価格・入手の容易さをも考慮すると、ポリエチレンテレフタレートが特に好ましい。
コート層B12は、図1に示すように、透明なフィルム状の基材10上に、硬化性樹脂を含む塗布液を塗布し、得られた塗膜を硬化させることで形成される。硬化性樹脂の積層には、溶媒に溶解させた硬化性樹脂を均一にコーティングするウェットコーティング法を用いることが好ましい。ウェットコーティング法としては、グラビアコート法やダイコート法等を用いることができる。
コート層A11は、図1に示すように、コート層B12上に、硬化性樹脂を含む塗布液を塗布し、得られた塗膜を硬化させることで形成される。コート層A11に用いる硬化性樹脂の種類、硬化性樹脂の積層方法、硬化処理方法は、コート層B12について記載した硬化性樹脂の種類、積層方法、硬化方法を用いることができる。なお、コート層A11とコート層B12に用いる硬化性樹脂の種類は、同一でもよく、異なってもよい。同一の硬化性樹脂を用いると、同一の材料を使用できるため、生産性を向上させることができる。異なる硬化性樹脂を用いると、選択可能な屈折率の幅が広がり、屈折率の調整が容易になる。
コート層C13は、図1に示すように、基材10の下に、硬化性樹脂を含む塗布液を塗布し、得られた塗膜を硬化させることで形成される。コート層C13に用いる硬化性樹脂の積層方法、硬化処理方法は、コート層B12について記載した積層方法、硬化方法を用いることができる。
なお、コート層C13を形成する硬化性樹脂中に含まれる官能基(または高分子鎖)により、コート層C13は、30〜50mN/m、好ましくは35〜45の表面自由エネルギーを有するように形成される。なお、コート層C13に印刷するインクは特に問わないが、本願発明の効果を十分に発揮させるためには、スクリーン印刷に適したインクを用いることが好ましい。表面自由エネルギーが30mN/m未満の場合は、コート層C13は、印刷層との十分な密着性が得られない。一方、表面自由エネルギーが50mN/mを超える場合、印刷層を形成するインクの有する表面張力との差が大きくなり、印刷しにくくなる。
なお、コート層C13の表面自由エネルギーは、2種類以上のアクリル系化合物をブレンドすることにより調整してもよい。このようにすると、所望の数値の表面自由エネルギーをより容易に得ることができる。
また、コート層C13に界面活性剤等を含有させることにより、表面自由エネルギーを調整してもよい。
図2を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る積層フィルム2について説明する。積層フィルム2は、コート層A11とコート層B12をそれぞれ複数備える。具体的には、図2に示すように、コート層A11とコート層B12からなる組を、層の順序を変えることなく、複数組を積層させる。組数は、図2のように2組であってもよく、さらに3組以上でもよい。また、複数のコート層A11の屈折率は、同一でもよく、異なってもよい。同様に、複数のコート層B12の屈折率は、同一でもよく、異なってもよい。すなわち、コート層A11とコート層B12のそれぞれの組において、屈折率は、コート層A11<コート層B12であって、コート層A11が常に上層に配置されていればよい。このように、複数の組を備えると、反射を抑える光の波長の範囲を広くすることができる。
また、コート層A11とコート層B12は、典型的には直接積層するが、これらの間に、コート層A11よりも高く、コート層B12よりも低い屈折率を有する中間層(不図示)を設けてもよい。中間層を設けることで、カットする波長の範囲を広くすることができる。
図3を参照して、本発明の第3の実施の形態に係る画像表示装置3について説明する。画像表示装置3は、本発明に係る積層フィルム1と、機械的処理により映し出された像を表示する画像パネル15とを備える。画像パネル15には、例えば、CRT、PDPまたはLCDなどのフラットパネルやディスプレイを挙げることができる。図3に示すように、画像パネル15上に、コート層A11(図1参照)が上側になるように積層フィルム1が載置される。積層フィルムの下側(すなわちコート層C13)に、画像パネル15の画面の窓枠14等が印刷される。
なお、図3では、窓枠14を誇張しているため、画像表示装置3の中央部分、すなわち積層フィルム1と画像パネル15の間に空間があるが、実際には積層フィルム1は画像パネル15上に密着して載置される。
図4を参照して、本発明の第4の実施の形態に係る積層フィルムの製造方法について説明する。まず、透明なフィルム状の基材10の一方の面にウェットコーティング法を用いて塗布液を塗布し、溶媒が含まれている場合には、該塗布液を乾燥させた後、得られた塗膜を硬化させることにより、コート層B12を積層する(S01)。次に、コート層B12の基材10側とは反対側の面にウェットコーティング法を用いて塗布液を塗布し、溶媒が含まれている場合には、該塗布液を乾燥させた後、得られた塗膜を硬化させることにより、コート層A11を積層する(S02)。次に、基材10の他方の面にウェットコーティング法を用いて塗布液を塗布し、溶媒が含まれている場合には、該塗布液を乾燥させた後、得られた塗膜を硬化させることにより、コート層C13を積層する(S03)。
積層フィルムの製造は、コート層Aを積層する工程(S01)、コート層Bを積層する工程(S02)、およびコート層Cを積層する工程(S03)を不連続に行ってもよい。
しかし、連続した一連の工程として、積層フィルムの製造を行なうことで、積層フィルムの製造が完了するまでフィルムをロールに巻き取る必要がなく、製造工程の効率化を図ることができるため好ましい。
また、積層フィルムの製造方法は、コート層A11の屈折率を所望の屈折率とするために、無機物の種類や量を調整する工程、コート層B12の屈折率を所望の屈折率とするために、無機酸化物の種類や量を調整する工程、さらに、コート層C13の表面自由エネルギーを所望の表面自由エネルギーとするために、複数のアクリル系化合物をブレンドする工程をさらに備えてもよい。
実施例1〜2および比較例1〜4に用いる塗布液を調製した。
具体的には、表1に示す組成で、塗布液(a)〜(c)の調製を行なった。すなわち、攪拌機付き容器に表1に示す割合の原材料を投入・攪拌し、塗布液(a)〜(c)を調製した。
塗布液を形成する原材料のうちa−1は、シリカ分散物である、JSR(株)製「オプスターTU2205(商品名)」を用いた。
a−2は、酸化ジルコニウム、AZO分散物である、ペルノックス(株)製「ペルトロンXJC−0563−FL(商品名)」を用いた。
a−3は、t−ブチルアルコールである。
a−4は、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)である。
a−5は、メタノールである。
b−1は、酸化ジルコニウム分散物である、ペルノックス(株)製「ペルトロンXJA−0155(商品名)」を用いた。
b−2は、ペンタエリスリトールトリアクリレートとペンタエリスリトールテトラアクリレートの混合物である、東亞合成(株)製「アロニックスM−305(商品名)」を用いた。
b−3は、メチルイソブチルケトンである。
c−1は、アクリレートエステル溶液である、荒川化学工業(株)製「ビームセット1461(商品名)」を用いた。
c−2は、多官能アクリレートであるエトキシ化グリセリントリアクリレートである、新中村化学工業(株)製「NKエステル A−GLY−9E(商品名)」を用いた。
c−3は、メチルエチルケトンである、荒川化学工業(株)製「ビームセット575CB(商品名)」を用いた。
c−4は、ウレタンアクリレート系オリゴマーである、ダイキン工業(株)製「オプツールDAC(商品名)」を用いた。
c−5は、フッ素化合物である。
c−6は、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)である。
実施例1〜2および比較例1〜4のそれぞれについて、表1に示す塗布液(a)でコート層Aを、塗布液(b)でコート層Bを、塗布液(c)でコート層Cを形成した。以下に、コート層A〜Cの形成方法を示す。
基材としてPETフィルムを用いた。PETフィルムの膜厚は、100μmであった。
塗布液(b)を、乾燥膜厚が3μmになるように、バーコーターでPETフィルムに塗布し、80℃で2分間乾燥させた後、高圧水銀灯を用いて500mJ/cm2の光照射条件で塗膜を光硬化させ、コート層Bを形成した。すなわち、コート層B/基材とした。
形成したコート層Bの片面に、塗布液(a)を、乾燥膜圧が0.1μmになるようにバーコーターで塗布し、80℃で1分間乾燥させた後、窒素雰囲気下で高圧水銀灯を用いて500mJ/cm2の光照射条件で塗膜を光硬化させ、コート層Aを形成した。すなわち、コート層A/コート層B/基材とした。
塗布液(c)を、PETフィルムのコート層AおよびBとは反対側の面に、乾燥膜厚が3μmになるように、バーコーターで塗布し、80℃で2分間乾燥させた後、高圧水銀灯を用いて500mJ/cm2の光照射条件で塗膜を光硬化させ、コート層Cを形成した。すなわち、コート層A/コート層B/基材/コート層Cとした。
実施例1〜2および比較例1〜4の積層フィルム1について、各層の屈折率は以下の通りであった。
以下のとおり、実施例1〜2および比較例1〜4の積層フィルム1について、視認性、透明性、印刷性を評価した。
実施例1〜2および比較例1〜4の積層フィルム1について、コート層C上に、油性マジックで線を引き、蛍光灯下でコート層AおよびB側からの線の視認性を以下の基準で評価した。結果を表3に示す。
○:よく見える
×:見えづらい
実施例1〜2および比較例1〜4の積層フィルム1について、分光光度計(UDH−5000:日本電色工業(株)製)を用いて、全光線透過率(T.T%)を測定し、得られた全光線透過率から以下の基準で透明性を評価した。結果を表3に示す。
○:全光透過率が90%以上の値である。
△:全光透過率が85〜90%の値である。
×:全光透過率が85%未満の値である。
実施例1〜2および比較例1〜4の積層フィルム1について、コート層Cの面上で、水とジヨードメタンの接触角を測定し、表面自由エネルギーを算出した。また、コート層Cの面上に(株)セイコーアドバンス製 Conc 710 Black、およびNo.3 Silverの2種類のインクをスクリーン印刷して乾燥させ、90℃以上の熱水に30分間さらした後、JIS K5400に準拠した剥離試験により以下の基準で評価した。表面自由エネルギーと印刷性の評価結果を表3に示す。
○:剥離数0個。
△:剥離数1〜10個。
×:剥離数11個以上。
また、積層フィルム1の印刷性は、コロナ放電処理やプラズマ処理等により表面改質されたフィルムよりも、長期間にわたり高く維持することができる。
さらに、積層フィルム1は、基材が硬化性樹脂で形成されたコート層Bとコート層Cに挟まれた構成となる。そのため、基材がプラスチックで形成された場合に、基材がカールしたり、基材中に含まれるオリゴマー等の低分子物質が溶出したりするのを防ぐことができる。
3 画像表示装置
10 基材
11 コート層A
12 コート層B
13 コート層C
14 窓枠
15 画像パネル
Claims (6)
- 透明なフィルム状の基材と;
前記基材の一方の面側に積層されたコート層Bと;
前記コート層Bの前記基材側とは反対側に積層されたコート層Aと;
前記基材の他方の面側に積層されたコート層Cとを備え;
コート層Aは、0.05〜1.0μmの膜厚と、1.30〜1.50の屈折率を有し、
コート層Bは、1.0〜5.0μmの膜厚と、1.50〜1.70の屈折率であって前記コート層Aよりも高い屈折率を有し、
前記コート層Cは、1.30〜1.70の屈折率を有し、
前記コート層Cは、水酸基、カルボキシル基、ポリエチレングリコール鎖、ポリプロピレングリコール鎖のうち少なくとも1つを有するアクリル系化合物で形成され、
前記コート層Cは、30〜50mN/mの表面自由エネルギーを有する、
積層フィルム。 - 前記アクリル系化合物は、硬化性樹脂である、
請求項1に記載の積層フィルム。 - 前記コート層Aは、シリカを含有する硬化性樹脂で形成され、
前記コート層Bは、酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化亜鉛、酸化ハフニウム、酸化タンタル、酸化アンチモン、酸化インジウム、酸化ガリウム、酸化スズ、酸化セリウム、酸化アルミニウム、または、これらの複合酸化物のうち少なくとも1つを含有する硬化性樹脂で形成された、
請求項1または請求項2に記載の積層フィルム。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の積層フィルムと;
前記コート層Cの前記基材側とは反対側に載置された画像パネルとを備える;
画像表示装置。 - 透明なフィルム状の基材に、コート層A、コート層Bおよびコート層Cを積層した、積層フィルムの製造方法であって、
透明なフィルム状の基材の一方の面側に、ウェットコーティング法によって、コート層Bを形成するための、硬化性樹脂を含む塗布液を塗布し、塗膜Bを形成し、その後、前記塗膜Bを硬化させることにより、コート層Bを積層する工程と;
前記コート層Bの前記基材側とは反対側に、ウェットコーティング法によって、コート層Aを形成するための、硬化性樹脂を含む塗布液を塗布し、塗膜Aを形成し、その後、前記塗膜Aを硬化させることにより、コート層Aを積層する工程と;
前記基材の他方の面側に、ウェットコーティング法によって、コート層Cを形成するための、硬化性樹脂を含む塗布液を塗布し、塗膜Cを形成し、その後、前記塗膜Cを硬化させることにより、コート層Cを積層する工程とを備え;
コート層Aは、0.05〜1.0μmの膜厚と、1.30〜1.50の屈折率を有するように積層され、
コート層Bは、1.0〜5.0μmの膜厚と、1.50〜1.70の屈折率であって前記コート層Aよりも高い屈折率を有するように積層され、
前記コート層Cは、1.30〜1.70の屈折率を有し、
前記コート層Cは、水酸基、カルボキシル基、ポリエチレングリコール鎖、ポリプロピレングリコール鎖のうち少なくとも1つを有するアクリル系化合物で形成され、
前記コート層Cは、30〜50mN/mの表面自由エネルギーを有するように積層される、
積層フィルムの製造方法。 - 前記コート層Aを積層する工程、前記コート層Bを積層する工程、および前記コート層Cを積層する工程は、連続した一連の工程である、
請求項5に記載の積層フィルムの製造方法。
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