JP2008018652A - 積層フィルム及び画像表示装置 - Google Patents

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晶 畠山
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Abstract

【課題】界面での接着強度が高く、光の干渉による虹ムラの発生が抑制された積層フィルムを製造する。
【解決手段】ポリエステルからなる支持体11の少なくとも一方の面に、支持体11から近い順に、酸化錫、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、酸化チタンのいずれかひとつを主成分とする微粒子及びバインダを含む第1層12と、第1層12に接するようにして配置される第2層13とを塗設して積層フィルム10を形成する。支持体11の屈折率をη1とし、第1層12の屈折率をη2とし、第2層13の屈折率をη3とするとき、η1<η2<η3とする。積層フィルム10は各層界面での接着強度が高く、かつ界面での光の干渉による虹ムラの発生が効果的に抑制されて良好な光学特性を示す。また、積層フィルム10を画像表示装置の構成部材とすることで優れた画像品質を確保することができる。
【選択図】図1

Description

本発明は、積層フィルムに関するものであり、この積層フィルムを構成部材とする液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、或いは表面電界ディスプレイ(SED)、並びにCRTディスプレイ等の画像表示装置に関するものである。
液晶ディスプレイ(LCD)、プラズマディスプレイ(PDP)、有機ELディスプレイ、表面電界ディスプレイ(SED)、或いはCRTディスプレイ等のような画像表示装置の需要増加に伴い、これらの高品質画像を確保することを目的として主要構成部材とされる光学フィルムの需要も急激に増加している。光学フィルムは、外光の映りこみ防止、視野角の拡大や光学ムラの補正等を実現する各種光学機能を備えたフィルムである。
光学フィルムは、光学フィルムの軸となる支持体と、その上に接するように設けられた上層とを有する複層構造の積層フィルムが主流とされる。一般的に支持体は、ポリマーを主成分とする透明フィルムが使用される。中でも、ポリエステル樹脂からなる支持体は、透明性、寸法安定性、耐薬品性、低吸湿性等に優れる等の特徴を有するため需要が増大している。また、上層は、ポリマーを主成分とし、積層フィルムの反射防止等を目的とする等の各種光学機能を付与する添加剤等が含有された層であり、例えば、反射防止層、プリズム層、光拡散層等が挙げられる。支持体と上層との組合せを適宜選択することにより、例えば、LCD等に用いられるプリズムフィルムや反射防止フィルム、光拡散フィルム、更には、PDPに用いられるIR吸収フィルムや電磁波シールドフィルム、調色フィルム、反射防止フィルム、防眩フィルム、ハードコートフィルム等の各種光学フィルムを自在に形成することができる。
ただし、支持体と上層との界面における接着強度が低いと、上層と支持体との間で剥離が発生し、光の漏れや、光の反射を防止することが出来ない等の問題が生じる。そのため、積層フィルムでは、界面における接着強度の高さが重要となるが、界面での接着強度は、支持体や上層の材料組成、接触面の凹凸具合、各層の形成条件等に影響を受け易いため所望の値となるように制御することは難しい。そこで、例えば、特許文献1には、ポリエステルフィルムを支持体とし、この支持体の上にポリエステルを含む易接着層を設けることで界面での接着強度を向上させた積層フィルムが提案されている。
また、積層フィルムは、支持体、易接着層、上層と、屈折率の異なる複数の部材で構成されるため、各界面では光の反射が起こり易い。更に、各界面において光の反射が生じると、反射した光がお互いに干渉し合って虹色の干渉ムラ(虹ムラ)が発生するため、積層フィルムの表示品質は著しく低下する。現在、主流とされるポリエステル樹脂からなる支持体の屈折率は約1.65であり、比較的高い値を示す。そこで、隣接する層を高屈折率化させて支持体と隣接層との屈折率差を小さくする方法が検討されている。例えば、特許文献2には、所定の金属酸化物である微粒子を含有させて高屈折率化した上層を有する積層フィルムが提案されており、特許文献3には、ポリエステルからなる支持体の上に水溶性の化合物からなる水系塗布層と少なくとも一方向に延伸された層とを上層として設けた積層フィルムが提案されている。更に、特許文献4には、ポリマーの屈折率に着目し、適宜選択して高屈折率化した支持体と、この支持体との屈折率差を調整した易接着層と、上層とを有する積層フィルムが提案されている。
ただし、虹ムラは各層の厚みムラによっても発生する。特に、上層に厚みムラが存在すると、特定の厚みで反射光強度が大きくなり、多量の虹ムラが発生するため問題である。そこで、例えば、特許文献5には、易接着層の屈折率や膜厚を制御しながらフィルムを製造することで虹ムラの発生を抑制する方法が提案されている。また、特許文献6には、透明支持体の少なくとも片面上に、二酸化チタンを主成分とする無機微粒子を添加させて高屈折率化した層を有する積層フィルムが提案されている。
特開2001−294826号公報 特開2004−054161号公報 特開2005−097571号公報 特開2000−111706号公報 特開2003−177209号公報 特開2005−178173号公報
上記いずれも、支持体や各層における屈折率の向上や光学特性の調整を目的として微粒子やキレート化合物等を添加させる。しかし、この場合、支持体/易接着層、或いは易接着層/上層との各界面に、微粒子やキレート化合物等が析出して接着強度が低下するという問題がある。更に、高屈折率化を目的として微粒子を多量に含有させると、層の強度が低下し、連鎖的にフィルム全体の強度低下を引き起こす。また、特許文献5では、所望の屈折率を有するポリマーを適宜選択して使用することで易接着層の屈折率を調整する方法が用いられているが、このようなポリマーは高額なものが多いため、製造コストの増大という問題が生じる。
そこで、本発明は、複層構造でありながら、各部材間において高い接着強度を示すと共に、虹ムラの発生が抑制されたフィルムであり、反射防止等の各種光学特性に優れる積層フィルムを提供することを第1の目的とする。更に、この光学フィルムとして作用する積層フィルムを用いることで、優れた表示品質を発現する画像表示装置を提供することを第2の目的とする。
ポリエステルからなる支持体と、前記支持体の少なくとも一方の面上に配置され、酸化錫、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、酸化チタンのいずれかひとつを主成分とする微粒子及び屈折率が1.60以上であるバインダを含む第1層と、第1層の上に配置される第2層とからなり、支持体の屈折率η1と第1層の屈折率η2と第2層の屈折率η3とは、η1<η2<η3とすることを特徴とする。
η1、η2、η3は、−0.03≦η2−(η1×η3)1/2 ≦0.03を満たすことが好ましい。また、バインダは、ポリエステル樹脂であることが好ましい。
第1層は、分子内にカルボジイミド構造を複数個有する化合物を含むことが好ましい。可視光の波長であるλが550nm≦λ≦600nmの範囲において、第1層の膜厚であるd1(nm)とη2とは、−30≦d1−λ/(4×η2)≦30を満たすことが好ましい。なお、ポリエステルはポリエチレンテレフタレートであり、η2及びη3はいずれも2.0以下であることが好ましい。
また、第2層は、ハードコート層であることが好ましい。ハードコート層の上には反射防止層を有することが好ましい。反射防止層は、屈折率が1.50以下であることが好ましい。
本発明の画像表示装置は、上記いずれか1つに記載される積層フィルムを有することを特徴とする。
本発明により、ポリエステルからなる支持体の上に、支持体に近い側から順に第1層と第2層とが積層された複層構造を有しながら、各部材間での接着強度が高く、かつ虹ムラの発生が抑制された積層フィルムを提供することができる。第2層として、ハードコート層、反射防止層等の光学機能層や耐擦傷性に優れる物理機能層を形成することにより、優れた光学機能を有するハードコートフィルム、反射防止フィルム等の光学フィルムを得ることができる。また、これらの光学フィルムを構成部材とすることで、優れた表示品質を有する画像表示装置を得ることが可能となる。
以下、実施形態を挙げながら、本発明について詳細に説明する。ただし、下記の実施形態は本発明の好適な適用例の一つであって、本発明を限定するものではない。
先ず、本発明に係る第1実施形態について説明する。図1は、本発明に係る積層フィルムの一例の概略図である。図1に示すように積層フィルム10は、ポリエステル樹脂から形成されるフィルム状の支持体11と、支持体11に近い側から順に積層された第1層12及び第2層13とから構成されている。第1層12は支持体11の片面だけでなく、その両面に設けても良い。例えば、支持体11の裏面に第1層12を設け、その上にNIRA(近赤外線遮断)コート層を形成すると、支持体11の裏面にNIRAコート層を良好な易接着性で設けることができ、このような積層フィルムは、PDP用の反射防止フィルムとして好適に使用することができる。なお、図1では、図の煩雑さを避けるため記載を省略する。
第1層12及び第2層13は、いずれもポリマーからなる少なくとも1層以上の層から構成される。第1層12及び第2層13を構成する層数、層の種類等は特に限定されるものではないし、各層を複層構造とする場合、構成層の組成等は同一にする必要はなく、いずれの場合も、用途等に応じて適宜決定すれば良い。図1に示す第1層12及び第2層13は、いずれも1層で構成される単層構造とする。
支持体11の屈折率であるη1と第1層12の屈折率であるη2と第2層13の屈折率であるη3とは、η1<η2<η3とする。これにより界面における光の反射が防止されて、光の干渉による虹ムラの発生が抑制される。本発明では、隣接する層同士の屈折率が上記条件を満たすように調整することで、複層構造でありながら各界面での虹ムラが抑制された積層フィルム10を得ることができる。また、各部材の屈折率は、種類や含有量を調整しながら各部材に微粒子を含有させたり、バインダとして利用するポリマーの屈折率を適宜選択することで調整可能である。屈折率の測定方法は公知の方法を用いれば良く、特に限定されるものではない。なお、本発明に係る各部材の屈折率は、波長550〜600nmでの可視光線による値とする。
更に、η2は−0.03≦η2−(η1×η3)1/2 ≦0.03を満たすことが好ましい。より好ましくは、η2は−0.02≦η2−(η1×η3)1/2 ≦0.02を満たすことであり、特に好ましくは、−0.01≦η2−(η1×η3)1/2 ≦0.01を満たすことである。これにより、積層フィルム10における各界面での虹ムラの発生がよりいっそう抑制される。
また、可視光の波長であるλが550nm≦λ≦600nmの範囲において、第1層12の膜厚であるd1(nm)とη2とは、−30≦d1−λ/(4×η2)≦30を満たすことが好ましい。より好ましくは、−20≦d1−λ/(4×η2)≦20であり、特に好ましくは、−10≦d1−λ/(4×η2)≦10を満たすことである。このように第1層12の膜厚と屈折率とが調整された積層フィルム10は、界面での反射が防止され、光の干渉である虹ムラの発生が著しく抑制される。
上記のうち、η1、η2、η3との関係である数式(1)及び、第1層12の膜厚d1と屈折率η2との関係である数式(2)について説明する。例えば、支持体11と第1層12との界面における反射は、一般に、第2層を空気とした場合、η2=(η1)1/2 及びη2×d1=λ/4を満たせば防止することができるとされる。これらの各数式は、例えば、「光学技術ハンドブック」(p.449、久保田広ほか編、(株)朝倉書店、昭和54年発行)のような、一般の光学の教科書に記載されている。したがって、数式を構成する各値が式を満たすように調整されれば、界面での反射率は理論的にゼロになる。ただし、材料種の変更や微粒子の添加等を行なうだけでは、層の屈折率を理論値に近づけることが可能であるが、光の吸収、散乱等が発生するため反射率を理論値に近づけることは難しい。更に、図1に示すような複層構造の積層フィルム10を作製する場合には、因子が複合的になるためよりいっそう困難となる。しかし、実際には、上記の一般式から若干のズレが生じても、界面での反射が防止され、虹ムラの発生が抑制されることを確認し、本発明では、その許容範囲を加味した上で複層構造の積層フィルムに適合することができる数式(1)及び(2)を規定すると共に、更なる適正値を規定する。
〔支持体〕
支持体11の形成に用いられるポリエステルは特に制限されるものではなく、ポリエステルとして公知のものを使用することができる。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリブチレンナフタレート等が挙げられる。中でも、コストや機械的強度の観点から、ポリエチレンテレフタレートを用いることが特に好ましい。支持体11がポリエチレンテレフタレートからなる場合には、上記のη2及びη3はいずれも2.0以下であることが好ましい。ここで、各屈折率が2.0を超えると、第1層12及び第2層13に多量の微粒子を添加する必要が生じるため、各層の強度が低下してしまう。なお、より好ましくは、η1が1.62以上1.68以下である。
本発明の支持体11は2軸延伸されていることが好ましい。2軸延伸とは、支持体11の幅方向及び長手方向をそれぞれ1軸とみなして両方向に延伸させることである。このように2軸延伸された支持体11は、2軸での分子配向が十分に制御されているため非常に優れた機械強度を有する。延伸倍率は特に制限されるものではないが、一方向に対する延伸倍率が1.5〜7倍であることが好ましく、より好ましくは2〜5倍である。特に、1軸方向あたりの延伸倍率を2〜5倍として2軸延伸させた支持体は、分子配向がより効果的かつ効果的に制御されているので、非常に優れた機械強度を備えることから支持体11として好適である。ただし、支持体11の延伸倍率が1.5倍よりも小さいと充分な機械的強度が得られなくなる。一方で、延伸倍率が7倍を超えると均一な厚みを得ることが難しくなり問題である。
支持体11の厚みd2(μm)は30μm以上400μm以下であることが好ましい。より好ましくは、d2が35μm以上350μm以下である。支持体11の厚みは、延伸倍率を制御することで容易に調整可能である。このような支持体11は、透明度や種々の光学特性を有しながら、軽量かつ取り扱い性に優れる。ただし、d2が30μm未満の支持体11は、厚さが薄すぎるので取り扱いが難しい。一方で、d2が400μmを超えるような支持体11は厚すぎるので、画像表示装置の小型化や軽量化が困難であり、製造コストの増大等を引き起こすため不適である。
第2層13の厚みd3(μm)は、特に限定されるものではないが、1μm以上10μm以下とすることが好ましい。より好ましくは、2μm以上5μm以下である。これにより、所望の光学機能や耐擦傷性に優れる等の物理機能を持ち、更に、第1層12と第2層13との界面における高接着強度を確保することができる。ただし、d3が1μm以下の場合には、光学機能や物理機能を十分に発現させることができないので、耐擦傷性に劣る。一方で、10μmを超えると、第1層12と第2層13との界面において高接着強度を確保することが難しい。なお、第2層13が複層構造の場合には、全総数を併せての膜厚をd3とみなす。
〔第1層〕
第1層12は、屈折率が1.60以上であるバインダと酸化錫、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、酸化チタンのいずれかひとつを主成分とする微粒子とを含む層である。第1層12は、支持体11の上に接するようにして配置される。また、第1層12の上に第2層13を設けることで、易接着層として作用する。なお、第1層12に含まれ、屈折率が1.60以上であるようなバインダを第1バインダと称する。
第1バインダは、例えば、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリエステル樹脂等が挙げられる。中でも、高屈折率であるポリエステル樹脂を第1バインダとすることが好ましい。このような第1層12をポリエステルからなる支持体11の上に設けると、支持体11と第1層12との界面では、高い接着強度を確保することができる。
ポリエステル樹脂とは、主鎖にエステル結合を有するポリマーの総称であり、通常、ポリカルボン酸とポリオールとの反応で得られる。ポリカルボン酸としては、例えばフマル酸、イタコン酸、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等が挙げられる。中でも、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸が好ましく用いられる。特に、高屈折率が得られるナフタレンジカルボン酸を酸成分として含むポリエステル樹脂が好ましい。ポリエステル樹枝に含まれる各種酸成分の総量に対するナフタレンジカルボン酸の含有される割合は、30〜99モル%であることが好ましい。より好ましくは40〜95モル%であり、更に好ましくは50〜90モル%である。上記の割合が99モル%を越えると水溶性または水分散性化が困難となり、一方で、30モル%以下では屈折率上昇の度合いが小さいため不適である。スルホイソフタル酸ナトリウム等を共重合させたものは、水溶性、または水分散性のバインダとして使用することができるので好ましい。
ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4ブタンジオール、1,6ヘキサンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、ネオペンチルグリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物(NC−1900、日本乳化剤(株)製等)、ポリエステルポリオール等が挙げられる。
上記の様に、本発明では、屈折率が1.60以上であるような高屈折率の第1バインダと、酸化錫、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、酸化チタンのいずれか1つを主成分とする微粒子とを含ませて第1層12を形成させるようにしたので、微粒子の量を増やすことなく高屈折率の層を得ることができる。これにより、微粒子の含有量が増えることで生じていた層強度の低下は抑制され、高い層強度を保持したまま、所望の屈折率の第1層12を形成することができる。また、微粒子の添加量は少なくて済むので、層に傷が付く等の問題も改善することができる。なお、第1バインダの含有量は、所望とする第1層12の屈折率や、第1バインダ以外に用いるバインダ、また、微粒子の種類等により実験的に求めることが出来る。第1層12中の各種バインダの総量に対する第1バインダの含有量は、20〜100質量%であることが好ましい。より好ましくは、30〜100質量%であり、もっとも好もしくは、40〜100質量%で用いられる。
上記の様に屈折率の調整等を目的として微粒子を使用すると、微粒子が凝集して巨大な異物となり第1層12の光透過性が低下するおそれがある。この場合、微粒子の粒径や種類を好適に選択して使用することで、凝集を抑制することができる。微粒子の凝集を効果的に抑制するために、微粒子の平均粒径が5nm以上200nm以下であることが好ましい。より好ましくは、平均粒径が10nm以上100nm以下であり、特に好ましくは15nm以上70nm以下である。平均粒径が200nmを超えるような微粒子を用いると、目視により確認することができる第1層12の透明度が低下したり、光透過性が低下するおそれがある。一方で、平均粒径が5nm未満の微粒子は、製造コストが高額であるため、第1層12の形成に係る製造コストが増大したり、微粒子同士が凝集し易いので巨大異物となって透明度の低下を引き起こすため好ましくない。なお、本発明における微粒子の平均粒径は、微粒子を走査型電子顕微鏡で撮影した時の微粒子と同面積の円の直径とを粒径としたとき、任意の50個の微粒子について求めた粒径の平均値とする。
第1層12に用いる微粒子としては、先に列挙した微粒子の中でも、入手し易いこと、比較的低価格であること、等の理由から、酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化チタンを用いることが好ましい。
酸化錫としては、SnOの組成を持つ酸化錫(IV)が好ましい。更に、この酸化錫にドーピング剤としてアンチモン等をドープしたものを使用することが好ましい。このようにドープさせた酸化錫は導電性を有するために、積層フィルムの表面抵抗率を低下させてゴミ等の不純物が付着するのを防止することができる。アンチモンをドープさせた酸化錫としては、例えば、FS−10D、SN−38F、SN−88F、SN−100F、TDL−S、TDL−1(いずれも、石原産業(株)製)等が挙げられ、本発明において好適に用いることができる。なお、ドーピング剤としてリンを用いた酸化錫も好適に用いることができる。
酸化ジルコニウムとしては、ZrOの組成を持つ酸化ジルコニウム(IV)を用いることが好ましい。例えば、NZS−20A、NZS−30A(いずれも、日産化学(株)製)等が挙げられる。酸化チタンは、TiOの組成を持つ酸化チタン(IV)を用いることが好ましい。酸化チタンは、結晶構造の違いにより、正方晶高温型であるルチル型や正方晶低温型であるアナターゼ型等が存在するが、特に限定されるものではない。また、表面処理が施された酸化チタンを用いることもできる。好適に用いることができる酸化チタンとしては、例えば、IT−S、IT−O、IT−W(いずれも、出光興産(株)製)等が挙げられる。
上記の様に、第1層12は複数のバインダを含んでいても良い。第1バインダとして用いられるポリエステル樹脂や、その他のバインダに関しては、例えば、「ポリエステル樹脂ハンドブック」(滝山栄一郎著、日刊工業新聞社、昭和63年発行)において記載されている。
上記その他のバインダとしては、例えば(a)アクリル樹脂、(b)ポリウレタン樹脂、(c)ゴム系樹脂、(d)ポリエステル樹脂を挙げることが出来る。(a)アクリル樹脂とは、アクリル酸、メタクリル酸及びこれらの誘導体を成分とするポリマーである。このようなアクリル樹脂としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、アクリルアミド、アクリロニトリル、ヒドロキシルアクリレート等を主成分として、これらと共重合可能なモノマーを共重合させたポリマーが挙げられる。なお、このモノマーとしては、例えば、スチレン、ジビニルベンゼン等が挙げられる。
(b)ポリウレタン樹脂とは、主鎖にウレタン結合を有するポリマーの総称であり、通常、ポリイソシアネートとポリオールとの反応によって得られる。ポリイソシアネートとしては、TDI、MDI、NDI、TODI、HDI、IPDI等があり、ポリオールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ヘキサントリオール等がある。また、本発明のイソシアネートとしては、ポリイソシアネートとポリオールとの反応によって得られたポリウレタンポリマーに鎖延長処理をして分子量を増大させたポリマーも使用することができる。以上に述べたポリイソシアネート、ポリオール及び、鎖延長処理については、例えば、「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(岩田敬治編、日刊工業新聞社、昭和62年発行)において記載されている。
(c)ゴム系樹脂とは、合成ゴムのうちジエン系合成ゴムを言う。ジエン系合成ゴムとしては、例えば、ポリブタジエン、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ブタジエン−ジビニルベンゼン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体、ポリクロロプレン等が挙げられる。なお、ゴム系樹脂については、例えば、「合成ゴムハンドブック」(神原周ら編集、(株)朝倉書店、昭和42年発行)に記載されている。また、(d)ポリエステル樹脂としては、第1バインダの項で記載したものを使用することができる。
第1バインダとして用いるポリマーは、分子内にカルボキシル基を有するものが特に好ましい。なお、第1バインダを使用する際には、所望のポリマーを有機溶剤に溶解した混合物を用いても良いし、水に分散させた水分散物を用いても良い。更には、水溶性ポリマーでも良い。第1バインダとして水分散物、水溶性ポリマーを用いると、環境負荷が小さい水系塗布を行うことができるので好ましい。このような水分散物、水溶性ポリマーとしては、市販品を用いれば良く特に限定されるものではない。
第1バインダとして用いられる、水分散物又は水溶性ポリマーとしては、ポリ塩化ビニリデンラテックス(サランラテックス、旭化成ケミカルズ(株)製)、ポリエステル系水溶性ポリマー(Z−687、互応化学工業(株)製)等がある。
第1バインダとともに用いられる水分散物又は水溶性ポリマーとしては、例えば、ポリウレタン系水分散物であるスーパーフレックス830、460、870、420、420NS(商品名:第一工業製薬(株)製)、ボンディック1370NS、1320NS、ハイドランAP-40F(商品名:大日本インキ化学工業(株)製)、アクリル系水分散物であるジュリマーET325、ET410、SEK301(商品名:日本純薬(株)製)、ボンコートAN117、AN226(商品名:大日本インキ化学工業(株)製)、スチレン−ブタジエンゴム系水分散物であるラックスターDS616、DS807(商品名:大日本インキ化学工業(株)製)、ニッポールLX110、LX206、LX426、LX433(商品名:日本ゼオン(株)製)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム系水分散物であるニッポールLX513、LX1551、LX550、LX1571(商品名:日本ゼオン(株)製)、ポリエステル系水分散物であるファインテックスES650、ES2200(商品名:大日本インキ化学工業(株)製)、バイロナールMD1400、MD1480(商品名:東洋紡(株)製)、ポリエステル系水溶性ポリマーであるプラスコートZ−221、Z−561、Z−730、RZ−142(商品名:互応化学工業(株)製)等を挙げることができる。
第1層12に使用する第1バインダや、第1バインダとともに用いられるポリマーの分子量は特に制限されないが、取り扱い性に優れると共に、良好な平面を有する層を形成することを目的として、通常、重量平均分子量で3000〜1000000のものを用いることが好ましいポリマーの重量平均分子量が3000未満の場合には、第1層12の強度が不充分になるおそれがあり、一方で、ポリマーの重量平均分子量が1000000を超えると、流動性が悪く塗布しづらい等の理由から第1層12の面状が悪くなるおそれがあるので好ましくない。
第1層12は、分子内にカルボジイミド構造を複数個有する化合物を含むことが好ましい。このような化合物を含ませて第1層12を形成すると、微粒子を含有させた場合、その剥落が防止される。このカルボジイミド系化合物は、複数個のカルボジイミド基を有するものであれば特に制限されるものではなく、カルボジイミド基の数も限定されない。ポリカルボジイミドは、通常、有機ジイソシアネートの縮合反応により合成される。この合成に用いられる有機ジイソシアネートの有機基は特に限定されず、芳香族系、脂肪族系のいずれか、あるいはそれらの混合系も使用可能である。反応性の観点から脂肪族系が特に好ましい。合成原料としては、有機イソシアネート、有機ジイソシアネート、有機トリイソシアネート等が使用される。
有機イソシアネートの例としては、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、及び、それらの混合物が使用可能である。具体的には、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキサンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート等が用いられる。また、有機モノイソシアネートとしては、イソホロンイソシアネート、フェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、ブチルイソシアネート、ナフチルイソシアネート等が使用される。また、本発明に用いることができるカルボジイミド系化合物としては、例えば、カルボジライトV−02−L2(商品名:日清紡(株)製)等の市販品としても入手可能である。
本発明のカルボジイミド系化合物は、バインダに対して1〜200質量%の範囲で添加することが好ましい。より好ましくは、5〜100質量%の範囲で添加することである。カルボジイミド系化合物の添加量が1質量%よりも少ないと、第1層12が微粒子を含んでいる場合、微粒子の剥落を十分に防止することができないおそれがあり、一方で、添加量が200質量%を超えると、第1層12の面状が悪化するおそれがあるため、いずれも好ましくない。
第1層12には、滑り性を改良する目的等でマット剤としての作用を有する微粒子を用いても良い。マット剤としては、有機又は無機微粒子のいずれも使用することができる。例えば、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリコーン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂等のポリマー微粒子や、シリカ、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等の無機微粒子が挙げられる。これらの中で、ポリスチレン、ポリメチルメタクリレート、シリカは、滑り性が改良されること、低コストであること等の理由から好ましい。
良好な滑り性を付与するためには、平均粒径が0.01μm以上12μm以下のマット剤を用いることが好ましい。より好ましくは、平均粒径が0.03μm以上9μm以下のマット剤を使用することである。マット剤の平均粒径が0.01μm未満になると、良好な滑り性を得ることが難しい。一方で、平均粒径が12μmを超えると、画像表示装置における表示品位を低下させるおそれがあり不適である。また、マット剤の添加量は、その平均粒径によっても異なるが、滑り性の改良効果に優れ、かつ、画像表示装置の表示品位を低下させないために、0.1mg/m以上30mg/m以下であることが好ましく、より好ましくは0.5mg/m以上20mg/m以下である。なお、本発明におけるマット剤の平均粒径は、前述の微粒子の平均粒径と同様の方法により測定される値とする。
第1層12には、界面活性剤等の各種添加剤を用いることもできる。界面活性剤としては、例えば、公知のアニオン系、ノニオン系、カチオン系のものが挙げられる。本発明で用いることができる界面活性剤については、例えば、「界面活性剤便覧」(西 一郎、今井 怡知一郎、笠井 正蔵編 産業図書(株) 1960年発行)に記載されている。界面活性剤を用いる場合、その添加量は0.1mg/m以上30mg/m以下とすることが好ましく、より好ましくは0.2mg/m以上10mg/m以下とする。ただし、界面活性剤の添加量が0.1mg/m未満であると、界面活性剤による効果を得ることが難しいので第1層12においてハジキが発生するおそれがある。一方で、その添加量が30mg/mを超えると、第1層12の面状が悪化するおそれがあるため好ましくない。
第1層12には、帯電防止を目的として帯電防止剤を用いることもできる。帯電防止剤の種類等は特に限定されるものではないが、例えば、ポリアニリン、ポリピロール等の電子伝道系のポリマー、分子鎖中にカルボキシル基やスルホン酸基を有するイオン伝道系ポリマー、導電性微粒子等が挙げられる。導電性微粒子としては、前述の酸化錫、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化インジウムを主成分とする微粒子と共通の微粒子でも良い。例えば、特開昭61−020033号公報に記載されている導電性酸化錫微粒子は、導電性と透明性の観点から好ましく用いることができる。帯電防止剤を用いる場合、その添加量は、25℃、30%RH雰囲気で測定した第1層12の表面抵抗率が、1×10Ω以上1×1013Ω以下となるように調整することが好ましい。ただし、第1層12の表面抵抗率が1×10Ω未満の場合には、多量の帯電防止剤が使用されていることを意味するため、第1層12の透明性が低下するおそれがある。一方で、表面抵抗率が1×1013Ωを超えるような場合は帯電防止の効果が不充分であることから、第1層12の表面にゴミ等の不純物が付着するおそれがあるため好ましくない。
第1層12には、その滑り性を向上させるために滑り剤を用いることが好ましい。このような滑り剤は、脂肪族ワックスを用いることが好ましく、その添加量は、0.1mg/m以上30mg/m以下とすることが好ましい。より好ましくは、その添加量を0.5mg/m以上10mg/m以下とすることである。ただし、滑り剤の添加量が0.1mg/m未満の場合には、十分に滑り性を発現させることが難しい。一方で、添加量が30mg/mを超える場合には、第1層12と第2層13との界面での接着強度が低くなるおそれがあるので好ましくない。なお、本発明に用いることができる脂肪族ワックスに関しては、特開2004−054161号公報に詳細に記載されている。
第1層12を形成する方法について説明する。本実施形態では、予め第1バインダと微粒子及び添加剤等と溶剤とを混合した塗布液を支持体11の表面に塗布して塗布層を形成させた後、この塗布層を乾燥させる、いわゆる塗設方法で第1層12を形成する。このように第1バインダ等を溶剤で希釈した塗布液は、流動性を有するので扱いやすいことから、均一な膜厚の塗布層を容易に形成することができる。上記の溶剤、すなわち塗布溶剤としては、水、トルエン、メチルアルコール、イソプロピルアルコール、メチルエチルケトン等、及びこれらの混合物を用いることができる。なお、塗布液中において、第1バインダや添加剤等と溶剤との溶解性は特に限定されるものではない。したがって、塗布液は分散物或いは溶解物のどちらでも良い。また、塗布溶剤としては、水を用いることもできる。この場合、水は塗布溶媒として作用する。このように水を塗布溶媒として用いると、製造コスト及び製造を簡便にすることができる。
塗布層を乾燥する際には、塗布層中の残留溶剤量が乾燥後に5質量%以下とすることが好ましい。より好ましくは、塗布層中の残留溶剤量が2質量%以下となるように乾燥することであり、特に好ましくは、その残留溶剤量を1質量%以下とすることである。塗布層中の残留溶剤量は、その値を低くする程にポリマーの重合率を高めることができるので、面内において光学特性分布ムラが低減された層を得ることができる。ただし、塗布層の乾燥条件は、支持体11及び第1層12の熱的強度や搬送速度、乾燥工程の長さ等を考慮して適宜決定されれば良く、特に限定されるものではない。
塗布液は、先に説明したように2軸延伸させた支持体11に塗布することが好ましいが、1軸延伸させた支持体11の上に、第1層12を設けた後、この支持体11を先ほどとは異なる方向に1軸延伸させることで2軸延伸を行なうこともできる。ここで1軸とは、支持体の幅方向或いは長手方向いずれか一方を意味し、2軸延伸させる場合、延伸させる方向の順序は問わない。
第1層12の形成方法は、所望の厚みの層を形成することができれば特に限定されるものではない。したがって、塗布方法も限定されるものではなく、薄膜を形成させる際に使用される公知の方法を用いることができる。例えば、ディッピング法、スピナー法、スプレー法、ロールコーター法、グラビア法、ワイヤーバー法、スロットエクストルージョンコーター法(単層及び重層)、スライドコーター法等が挙げられる。上記の方法は、本発明に係る層、すなわち第1層12及び第2層13を構成する層の形成方法として使用することができる。
〔第2層〕
第2層13は、第1層12よりも支持体11から離れた位置に設けられ積層フィルム10の最外部となる層であり、通常、耐擦傷性を有する層や各種光学機能を有する機能層等から構成される。第2層13としてハードコート層を形成すると、ハードコートフィルムとして作用する光学フィルムを得ることができるので好ましい。機能層は、本形態に限定されるものではなく、付与したい特性に応じて適宜選択しながら形成すれば良い。例えば、反射防止層を形成すると、反射防止フィルムとして作用する光学フィルムを得ることができる。なお、ハードコートフィルム、反射防止フィルムに関しては後述する。
本発明に係る第2実施形態について説明する。図2は、本発明に係る一例の積層フィルム20である。積層フィルム20は、図1を示して説明した積層フィルム10の中で第2層23が異なる他は同じとする。そのため、支持体、第1層には同符号を付して説明を行うと共に、膜厚や屈折率等の光学特性、形成材料等に関しては説明を割愛する。
図2に示すように、積層フィルム20は、屈折率がη1の支持体11及び屈折率がη2の第1層12と、異なる2層の光学機能層であり、屈折率がη3のハードコート層21及び反射防止層22からなる第2層23とからなる。ここで、ハードコート層21は、図1の第2層13に相当する。ハードコート層21は、エネルギー硬化性樹脂或いは熱硬化性樹脂を用いて形成することが好ましい。中でも、エネルギー硬化性樹脂を使用することが好ましい。エネルギー硬化性樹脂は、活性エネルギー線を照射することで硬化するので硬化時に熱をエネルギーとする熱エネルギー硬化樹脂に比べて、樹脂がダメージを受けることがない。そのため、透明度の高い層を形成することができるという特長を有する。なお、エネルギー硬化性樹脂に関する詳細は後述する。
ハードコート層21を形成する際に使用するエネルギー硬化性樹脂について説明する。エネルギー硬化性樹脂としては、同一分子内に2個以上のアクリル基を有する硬化性樹脂であることが好ましい。例えば、エチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ビスフェノール−Aジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート等のポリオールポリアクリレート類、ポリイソシアネート硬化性樹脂とヒドロキシエチルアクリレート等の水酸基含有アクリレートとの反応によって得られる多官能のウレタンアクリレートや、ポリエポキシ硬化性樹脂とヒドロキシエチルアクリレート等の水酸基含有アクリレート(メタアクリレート)との反応によって得られる多官能のエポキシアクリレート等を挙げることができる。また、エチレン性不飽和基を側鎖に有するポリマーを用いることもできる。
エネルギー硬化性樹脂を用いる場合には、活性エネルギーである放射線、ガンマー線、アルファー線、電子線、紫外線等の電離放射線を塗布層に照射させることが好ましい。これにより樹脂を効率良くかつ効果的に硬化させることができるので、十分な硬度を有する塗布層、すなわちハードコート層21を形成することが可能となる。なお、ハードコート層21を形成させる場合には、第1層12の上に、ハードコート層21を形成させるための塗布液を塗布して塗布層を形成した後、この塗布層に紫外線を照射することが好ましい。これにより短時間のうちに膜厚が均一であり、光学特性にムラのないハードコート層21を得ることができる。なお、上記の塗布液として、予め所望のエネルギー硬化性樹脂や重合開始剤等を溶剤で希釈した液を用いると、膜厚が均一な塗布層を容易に形成することができるので好ましい。
反射防止作用を持たせるため、反射防止層22はハードコート層21よりも低屈折率を示す層とすることが好ましい。ハードコート層21は、ハードコート層21の形成に用いるバインダに無機微粒子を含有させる等して、その屈折率は1.68以上2.00以下とすることが好ましい。一般的に無機微粒子は屈折率が1.6〜2.7と高い値を有するため、形成する層の屈折率を上記のような高屈折率の範囲内で容易に調整することができる。
従来、低屈折率の層を形成するには、フッ素系材料やシリコーン系材料等の低屈折率材料をバインダとして用いることで調整が行なわれていた。しかし、例えば、ハードコート層21の屈折率を1.60とした場合、反射防止層22の最適な屈折率は1.26程度であるが、上記の様にバインダを選択して使用するだけでは、屈折率を1.35より小さくするのは困難であった。そこで、上記の様に高屈折率を有するハードコート層を形成すると、屈折率が1.85であるハードコート層を形成する場合、最適屈折率が1.36程度の反射防止層を容易に形成することが可能となる等、反射防止層23の屈折率の設計が容易となり、かつ、より低反射の反射防止フィルムとして作用する積層フィルム20を形成することができる。なお、上記の無機微粒子は、第1層12において使用した微粒子を使用すれば良い。そのため、微粒子に関する説明は前述のものを準用し、ここでの説明は割愛する。
反射防止層22は、低屈折率を示す層と高屈折率を示す層とからなる複層構造を有していても良い。このような反射防止層22は、表面の硬度が比較的高く、かつハードコート層21の表面で生じる光の反射を防止する作用を持つため、優れた耐擦傷性と光学特性とを有する。なお、本発明において低屈折率を示す層とは、屈折率が1.35以上1.50以下の層であり、高屈折率を示す層とは屈折率が1.68以上2.00以下の層とする。
以上により得られる積層フィルム20は、複層構造を有するが、各界面では高い接着強度を有すると共に、各界面での光の干渉が抑制されるため、虹ムラの発生が低減される。このような光学機能に優れる積層フィルム20は、表示品質に優れる反射防止フィルムとして各種画像表示装置に使用することができる。
本発明において重合開始剤は、単独でも複数を組合せて用いても良く、特に限定されるものではない。また、重合開始剤の添加量も特に限定されるものではないが、硬化性樹脂組成物に含まれるエチレン性不飽和基含有硬化性樹脂と開環重合性基含有硬化性樹脂との総和に対して、0.1〜15質量%とすることが好ましい。より好ましくは、上記の総和に対する添加量を1〜10質量%とすることである。
高屈折率を示すハードコート層を形成することができる組成物の例としては、樹脂成分として多官能性アクリル酸エステル系モノマーを使用し、これに無機微粒子であるアルミナや酸化チタン等を含有させた組成物が挙げられ、特許第1815116号に開示されている。その他にも、アルミナからなる無機微粒子を含む光重合性化合物組成物として特許第1416240号に記載され、これらの記載も本発明に適用することができる。ただし、本発明に用いられるハードコート層21は、上記の例に限定されるものではない。
また、高屈折率のハードコート層21は、屈折率の高いポリマーを使用することでも形成させることができる。屈折率の高いポリマーとしては、例えば、環状基を有するポリマー、フッ素以外のハロゲン原子を含むポリマー、環状基とフッ素以外のハロゲン原子との双方を含むポリマー等が挙げられる。なお、上記の環状基には、芳香族、複素環基、脂肪族環基等が含まれる。そして、反射防止層22を形成する際には、反射防止フィルム用として市販されているコーティング材料を用いることができる。このようなコーティング材料としては、低屈折率層を形成させる場合には、市販の低屈折率材料、例えば、TT1148、TU2111、TU2153(いずれも、JSR(株)製)等が挙げられる。同様に、高屈折率層を形成させる場合には、市販の高屈折率材料、例えば、Z7410C、Z7410D、Z7410E(いずれも、JSR(株)製)等が挙げられる。
本発明の積層フィルムは、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ、SED(表面電界)ディスプレイ、CRTディスプレイに用いられる光学フィルムとして使用することができる。これらの画像表示装置については、例えば、「ディスプレイ先端技術」(谷 千束著 共立出版(株) 1998年出版)や、「EL、PDP、LCDディスプレイ」((株)東レリサーチセンター 2001年発行)や、「カラー液晶ディスプレイ」(小林 俊介著 産業図書出版(株) 平成2年出版)等に詳細に記載されている。
本発明では、第2層として、ハードコート層、反射防止層等の各種機能層を適宜選択して設けることで、優れた光学特性を有する積層フィルムを得ることができる。この積層フィルムは光学フィルムとしての作用を有し、液晶ディスプレイに用いられる、反射防止フィルムやハードコートフィルム、或いはPDPに用いられる、反射防止フィルム、IR吸収フィルム、電磁波シールドフィルム、調色フィルム等の光学フィルム、及びそれらを一体化したフィルムフィルターとして好適に利用することができる。なお、これらのフィルムに関しては、例えば、上記の文献の他に、エレクトリックジャーナル誌2002年8月号の74ページに記載されている。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより詳細に説明する。なお、各実施例及び比較例は本発明の一例であり、本発明を限定するものではない。したがって、以下に示す材料の種類、各材料の割合、処方等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更して良い。また、以下の説明では、製造方法及び条件等については実施例1で詳細に説明し、その他の実施例や比較例において実施例1と同じ場合には、その説明を省略する。
本実施例では、以下の手順に従い、図1に示す積層フィルム10を作製した。なお、第2層13は、ハードコート層21のみからなる単層構造とした。
〔支持体〕
先ず、三酸化アンチモンを触媒として重縮合した固有粘度0.66のポリエチレンテレフタレート(以下、PETと記す)樹脂を含水率50ppm以下に乾燥させた後、ヒーター温度が280〜300℃に設定された押し出し機内で溶融させた。次に、この溶融させたPET樹脂をダイ部より静電印加されたチルロール上に吐出させて、非結晶フィルムを得た。続けて、この非結晶フィルムを、フィルムの長手方向に対して3.3倍に延伸後、フィルムの幅方向に対して3.8倍に延伸することで2軸延伸を施した厚さ100μmの支持体11を作製した。なお、完成した支持体11の屈折率であるη1は1.65であった。
〔第1層〕
搬送速度を70m/分として支持体11を搬送しながら、その表面に対して730J/mの条件でコロナ放電処理を施した後、この支持体11の両面に、バーコート法により塗布液Aを塗布して塗布層を設けた。そして、この塗布層を180℃で1分乾燥させて第1層12を形成した。なお、塗布液Aの塗布量は、両面それぞれ4.4ml/mとした。
〔塗布液A〕
以下の固形塗布量の各種原料を混合して塗布液Aとした。
・第1ポリエステル樹脂 16.1(mg/m)
・第2ポリエステル樹脂 24.2(mg/m)
・カルボジイミド化合物 8.1(mg/m)
・カルナバワックス 2.4(mg/m)
・界面活性剤A 0.4(mg/m)
・界面活性剤B 2.4(mg/m)
・第1微粒子分散液 1.0(mg/m)
・第2微粒子分散液 189(mg/m)
上記の各種材料に関して、第1ポリエステル樹脂は、大日本インキ化学工業(株)製、ファインテックス ES650(固形分29%、屈折率1.55、ガラス転移温度30℃)であり、第2ポリエステル樹脂は、互応化学工業(株)製Z−687(固形分25%、屈折率1.63、ガラス転移温度110℃)である。また、カルボジイミド化合物は、日清紡(株)製、カルボジライトV‐02‐L2、固形分10%水溶液、カルボジイミド等量385であり、カルナバワックスは、中京油脂(株)製、セロゾール524、固形分3%水溶液である。更に、界面活性剤Aは、日本油脂(株)、ラピゾールB−90、固形分1%水溶液、アニオン性であり、界面活性剤Bは、三洋化成工業(株)、ナロアクティー HN−100、固形分5%水溶液、ノニオン性である。そして、第1微粒子分散液は、シリカ微粒子分散液;日本アエロジル(株)製、OX−50の水分散物、固形分10%水溶液であり、第2微粒子分散液は、酸化錫分散液;石原産業(株)製、アンチモンドープ酸化錫 SN−38F、固形分17%水溶液、平均粒径30nmである。
乾燥後の第1層12の厚みを、透過型電子顕微鏡(JEM2010(日本電子化(株)製)を用いて倍率200000倍で測定した。その結果、第1層12の膜厚d1は81nmであった。また、第1層12の屈折率を下記の方法により測定したところ、1.70であった。なお、厚みを測定する際には、第1層12を設けた支持体11をサンプルaとした。
〔第1層の屈折率の測定〕
屈折率測定機(SPA−4000(Sairon Technokogy,Inc.社製))を用いて、塗布液Aからなる塗布層を設けたサンプルbの波長660nm、850nmでの屈折率をプリズムカプラ法により測定した。次に、各波長での屈折率の測定値と下記のセルメイヤーの式とから550nmでの屈折率を算出し、これを第1層における屈折率η1とした。なお、セルメイヤーの式とは、η−1=Aλ/(λ−B)で表される式である。ここで、λは測定波長(nm)、ηは測定波長での屈折率、A,Bは定数である。上記の式に、測定波長と屈折率とを代入して定数A,Bを求めた後、波長=550nmを代入することで550nmにおける屈折率を求めることができる。上記のサンプルbは、市販のシリコンウエハの上に乾燥後の膜厚が3〜4μmとなるように塗布液Aを塗布して塗布層を設けた後、これを105℃で10分間乾燥させることで作製した。
〔ハードコート層〕
形成した両面の第1層12のうち、片方の表面に、UV硬化樹脂(JSR(株)製、Z7410E、屈折率1.75)を膜厚が約9μmとなるように塗布して塗布層を設けた後、この塗布層を70℃で1分間乾燥させた。次に、乾燥した塗布層に対して高圧水銀灯を用いて紫外線を照射することにより樹脂を硬化させて4μmのハードコート層を形成した。なお、塗布層に対する紫外線の照射量は1000mj/cmとした。また、第1層の屈折率測定方法と同様にハードコート層の屈折率であるη3を測定したところ、1.75であった。
塗布液Aにおける第2微粒子分散液を酸化ジルコニウム分散液とした以外は、全て実施例1と同様にして積層フィルムを作製した。上記の酸化ジルコニウム分散液は、酸化ジルコニウムゾル(日産化学工業(株)製、HZ−307W6、固形分20%水溶液)であり、固形塗布量は189(mg/m)とした。また、実施例1と同様の方法で実施例2に応じた第1層12の膜厚や屈折率を測定したところ、η2=1.70、d1=88nmであった。
塗布液Aにおける第2微粒子分散液を酸化インジウム分散液とした以外は、全て実施例1と同様にして積層フィルムを作製した。上記の酸化インジウム分散液は、(株)ジェムコ製の酸化インジウム分散液であるEP ITO DL−1(固形分20%水溶液)であり、固形塗布量は170(mg/m)とした。また、実施例1と同様の方法で実施例3に応じた第1層12の膜厚や屈折率を測定したところ、η2=1.70、d1=78nmであった。
塗布液Aを下記の塗布液Bに変更した以外は、全て実施例1と同様にして積層フィルムを作製した。塗布液Bは、塗布液A中の第2微粒子分散液を下記の第3微粒子分散液に変更し、各種材料の固形塗布量を変更した混合液である。また、実施例1と同様の方法で実施例4に応じた第1層12の膜厚や屈折率を測定したところ、η2=1.70、d1=80nmであった。なお、各種材料の詳細は、実施例1で説明したものと同じであるため説明は割愛する。
〔塗布液B〕
・第1ポリエステル樹脂 20.0(mg/m)
・第2ポリエステル樹脂 30.0(mg/m)
・カルボジイミド化合物 10.0(mg/m)
・カルナバワックス 3.0(mg/m)
・界面活性剤A 0.5(mg/m)
・界面活性剤B 3.0(mg/m)
・第1微粒子分散液 1.2(mg/m)
・第3微粒子分散液 55.0(mg/m)
〔第3微粒子分散液〕
先ず、攪拌機(特殊機化工業(株)製、ロボミクス)を用いて攪拌した450質量部のイオン水の中に、50質量部の二酸化チタン微粒子(出光興産(株)製、出光チタニア TI−W)を添加した。次に、これを10分間攪拌することにより、イオン水の中に微粒子を分散させた後、この分散液を超音波分散機(エムエステー(株)製、UH600S)により出力を9.0として8分間分散させて、固形分10%水溶液である第3微粒子分散液を調製した。
塗布液A中の第1ポリエステル樹脂をウレタン樹脂(第一工業製薬(株)製、スーパーフレックス860、固形分40%)に変更して、その固形塗布量を16.7(mg/m)とした以外は、全て実施例1と同様にして積層フィルムを作製した。また、実施例1と同様の方法で実施例5に応じた第1層12の膜厚や屈折率を測定したところ、η2=1.70、d1=81nmであった。
〔比較例1〕
第1層12を設けずに、PETフィルムである支持体11の上に直接、第2層13を形成して積層フィルムとした。
〔比較例2〕
第2微粒子分散液を含有させずに調製した塗布液Aを使用する以外は、全て実施例1と同様に積層フィルムを作製した。また、実施例1と同様の方法で実施例2に応じた第1層12の膜厚や屈折率を測定したところ、η2=1.57、d1=54nmであった。
〔比較例3〕
塗布液A中の、第2ポリエステル樹脂を第1ポリエステル樹脂で置き換えた。また、第1層12の屈折率を1.70にするために、第2微粒子分散液を239(mg/m)になるようにして第1層12を設けたが、均一な製膜を得ることが出来なかった。
上記の各実施例及び比較例で作製した積層フィルムに関して、接着性や光学特性等に係る下記の4項目について評価を行った。評価1は支持体と第1層との接着性、評価2は第2層の接着性、評価3は積層フィルムの塗布面状、評価4は積層フィルムの虹ムラの有無である。以下に、各評価方法の詳細を示す。
・ 支持体と第1層との接着性〕
先ず、各実施例及び比較例において第1層を形成させるために使用した塗布液を支持体11の表面に塗布した後、このサンプルcを60℃の蒸留水中に16時間浸漬させた。次に、浸漬後のサンプルを蒸留水から取り出して、サンプルcの表面に付着している水滴を紙(キムワイプS−200、クレシア(株)製)で軽く拭き取った後、即座に、このサンプルcの表面を引掻強度試験機(HEIDEN−18、新東科学(株)製)を用いて0.1Rダイヤモンド針で擦った。そして、この擦った部分を顕微鏡の倍率を100倍にして観察した後、更に、目視により観察して第1層12の剥れ具合を下記基準により判断することで、支持体と第1層との接着強度の高さ、すなわち接着性を5段階で評価した。また、上記のダイヤモンド針に加える荷重は200gとした。なお、下記の評価においてBランク以上は製品上問題ないレベルである。
Aランク:剥れなしの場合
Bランク:剥れた面積がダイヤモンド針で擦った部分の面積に対して30%未満の場合
Cランク:剥れた面積がダイヤモンド針で擦った部分の面積に対して30%以上70%未満の場合
Dランク:剥れた面積がダイヤモンド針で擦った部分の面積の70%以上100%以下の場合
Eランク:ダイヤモンド針で擦った部分に加えて、その周辺部の塗布層にまで剥れが発生した場合
〔2.第2層の接着性〕
先ず、完成した積層フィルム10を、25℃、60%RHの雰囲気下で24時間調湿してサンプルdを作製した。次に、片刃カミソリを用いて、このサンプルdの評価面とする面に縦、横それぞれ6本のキズをつけて25個の桝目を形成した後、この上にセロハンテープ(ニチバン(株)製 405番、24mm幅)を貼り付けた。そして、セロハンテープの上をケシゴムでこすって完全に付着させた後、90度方向に剥離させることにより剥離した桝目の数を求めることで第2層の接着強度の高さ、すなわち接着性を5段階で評価した。下記の評価においてBランク以上は製品上問題ないレベルである。なお、上記のキズの幅は、縦、横とも3mmとした。
Aランク:剥れなしの場合
Bランク:剥離した桝目数が1未満の場合
Cランク:剥離した桝目数が1以上3未満の場合
Dランク:剥離した桝目数が3以上20未満の場合
Eランク:剥離した桝目数が20以上の場合
〔3.積層フィルムの塗布面状〕
先ず、支持体11の表面に第1層を形成させるために使用した塗布液を塗布してサンプルeを作製した。次に、サンプルeを、黒色ドスキン布を張り合わせた机上に置いてから、乳白色のアクリル板を通した蛍光灯の拡散光を塗布層に照射した。そして、ここで発生する反射光を目視により観察して、塗布ムラを下記基準により判断することにより、塗布面状として3段階で評価した。なお、下記の評価においてBランク以上は製品上問題ないレベルである。
Aランク:黒化処理後のサンプルe及び未処理のサンプルの双方において、塗布ムラが目視で確認されない。
Bランク:黒化処理後のサンプルeでは塗布ムラが目視で確認されるが、未処理のサンプルeでは確認されない。
Cランク:黒化処理後のサンプルe及び未処理のサンプルeの双方において、塗布ムラが目視で確認される。
なお、上記の評価3では、目視判断にあたり、裏面からの反射を防止する意味でサンプルeの所定の面に黒化処理を行い、波長500nmの光の透過率が1%以下となるように調整した。上記の黒化処理は、サンプルeのうち観察する面とは反対面に、マジックインキ(artline 油性マーカー補充インキ KR−20クロ、shachihata(株)製)を塗工した後、これを乾燥させた。
〔4.虹ムラの有無〕
先ず、完成した積層フィルム10を、25℃、60%RHの雰囲気下で24時間調湿してサンプルfを作製した。次に、このサンプルfの表面のうち、ハードコート層がない面をサンドペーパーで適量擦った後に、評価3で使用するものと同じ黒マジックを塗ることで、裏面の反射が起こらないようにした。そして、このサンプルfを机の上に置き、その30cm上から3波長蛍光灯(商品名:ナショナルパルック蛍光灯 FL20SS・EX−D/18)を用いて照らすことで発生する干渉斑(虹ムラ)を目視により観察した。この観察で見られた干渉斑を虹ムラとして、下記の基準により5段階で評価した。なお、後述の評価においてCランク以上は製品上問題ないレベルである。
Aランク:虹ムラが全く見えない。
Bランク:虹ムラがほとんど見えない。
Cランク:虹ムラが若干見える。
Dランク:虹ムラが強く見える。
Eランク:虹ムラが非常に強く見える。
各実施例及び比較例での評価結果を、表1に纏めて示す。
Figure 2008018652
表1に示すように、各実施例では、全ての評価に関して製品として使用する上で良好な結果を示した。一方で、各比較例では、比較例1、2のいずれも、製品として問題になる程の虹ムラが確認された。また、比較例3では、評価を行なう以前に、積層フィルムを完成することが出来なかった。
評価結果が良好であった各実施例の積層フィルムの上に、反射防止層として作用する層を1枚設けて反射防止フィルムを作製し、評価1及び4と同様の方法で、接着性及び虹ムラを評価した。その結果、いずれの反射防止フィルムも、各界面での接着性が良好であると共に、虹ムラの発生が抑制されており、反射防止性等の光学特性が非常に優れていることを確認した。なお、上記の反射防止層は、各実施例で得られた積層フィルムの上に、UV硬化樹脂(JSR(株)製、TU2111、屈折率1.39)を塗布した後、乾燥、硬化させることで形成した。この反射防止層の膜厚は90nmであった。また、作製した反射防止フィルムを市販のPDPの光学フィルターを除去した部分に設置したところ、虹ムラの発生が抑制され、反射防止性等の光学特性が非常に優れていることを確認した。
本発明に係る積層フィルムの一例の概略図である。 本発明に係る積層フィルムの一例であり、反射防止フィルムとして作用する光学フィルムの概略図である。
符号の説明
10、20 積層フィルム
11 支持体
12 第1層
13、23 第2層
21 ハードコート層
22 反射防止層

Claims (10)

  1. ポリエステルからなる支持体と、前記支持体の少なくとも一方の面上に配置され、酸化錫、酸化インジウム、酸化ジルコニウム、酸化チタンのいずれかひとつを主成分とする微粒子及び屈折率が1.60以上であるバインダを含む第1層と、前記第1層の上に配置される第2層とからなり、
    前記支持体の屈折率をη1とし、前記第1層の屈折率をη2とし、前記第2層の屈折率をη3とするとき、η1<η2<η3とすることを特徴とする積層フィルム。
  2. 前記η2は、−0.03≦η2−(η1×η3)1/2 ≦0.03を満たすことを特徴とする請求項1記載の積層フィルム。
  3. 前記バインダは、ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1または2記載の積層フィルム。
  4. 前記第1層は、分子内にカルボジイミド構造を複数個有する化合物を含むことを特徴とする請求項1ないし3いずれか1つに記載の積層フィルム。
  5. 可視光の波長であるλが550nm≦λ≦600nmの範囲において、前記第1層の膜厚であるd1(nm)と前記η2とは、−30≦d1−{λ/(4×η2)}≦30を満たすことを特徴とする請求項1ないし4いずれか1つに記載の積層フィルム。
  6. 前記ポリエステルはポリエチレンテレフタレートであり、η2及びη3はいずれも2.0以下であることを特徴とする請求項1ないし5いずれか1つに記載の積層フィルム。
  7. 前記第2層は、ハードコート層であることを特徴とする請求項1ないし6いずれか1つに記載の積層フィルム。
  8. 前記ハードコート層の上には反射防止層を有することを特徴とする請求項7に記載の積層フィルム。
  9. 前記反射防止層は、屈折率が1.50以下であることを特徴とする請求項8に記載の積層フィルム。
  10. 請求項1から9のいずれか1つに記載される積層フィルムを有することを特徴とする画像表示装置。
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