JP5609076B2 - モータコア - Google Patents

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Description

本発明は、モータコアに関し、特にコア外周から圧縮力が付加された場合に懸念されるコア鉄損の劣化を効果的に低減しようとするものである。
家庭用エアコンのコンプレッサーモータは、可変速運転が行われており、最高周波数は200〜400Hz程度であって、PWM(Pulse Width Modulation)制御等により数kHzのキャリア周波数が重畳した状態で使用されている。
また、最近急速に普及しているハイブリッド電気自動車の駆動モータや発電機も、高出力、小型化の観点から数kHzの周波数で駆動されている。
このようなモータのコア材として使用される無方向性電磁鋼板には、高周波鉄損の低いものが要望されていて、(Si+Al)量が3〜4質量%程度の高グレードの電磁鋼板が使用されている。
ところで、コンプレッサーモータでは、コア締結に焼きばめが適用されているため、モータコアはその外周から100MPa程度の圧縮力が付加された状態で使用されている。また、ハイブリッドEV(Electric Vehicle)の駆動モータにも、樹脂モールド等が施されることから、モータコアにはその外周から圧縮力が付加されることとなる。
しかしながら、このような圧縮応力下では電磁鋼板の磁気特性は大きく劣化することが知られている。
圧縮応力下での鉄損特性を改善するものとして、例えば特許文献1には、Si:2.6〜4%、比抵抗:50〜75×10-8Ωm、結晶粒径:60〜165μmとした無方向性電磁鋼板が開示されている。
特許第4023183号公報
しかしながら、特許文献1に開示の材料を用いても、コア外周からの圧縮力付与による鉄損劣化代の改善量は従来材に比べて著しく多いわけではなく、そのため、かかる圧縮力下での鉄損の劣化を抑制する手法が求められている。
本発明は、上記の要請に有利に応えるもので、コア外周から圧縮力が付加された状態での使用に際しても鉄損の劣化を効果的に軽減することができる、モータコアについて提案することを目的とする。
さて、発明者らは、上記の問題を解決すべく鋭意検討を重ねたところ、モータコアの積層方向に圧縮力を付与することにより、焼きばめ時等に付加されるステータの周方向への圧縮応力に起因した鉄損の劣化が効果的に軽減されること、そして用いる電磁鋼板の絶縁被膜の厚みを規制することが鉄損劣化のさらなる抑制に有効であること、の知見を得た。
本発明は上記の知見に立脚するものである。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
ティース部とバックヨーク部を有する電磁鋼板の積層体で構成されるステータをそなえ、該ステータの周方向に10MPa以上50MPa以下の圧縮応力が付与されるモータのコアにおいて、該バックヨークの積層方向に0.3MPa以上の圧縮応力を付与するとともに、前記電磁鋼板の絶縁被膜の厚さを、該絶縁被膜が鋼板両面に施される場合は片面当たり0.4μm以上10μm以下、該絶縁被膜が鋼板片面のみに施される場合は片面当たり0.8μm以上20μm以下とすることを特徴とするモータコア。
本発明によれば、ステータの円周方向に圧縮応力が付加された使用状態下においても、鉄損の低いモータコアを得ることができる。
従って、本発明のモータコアを用いることにより、焼きばめや樹脂モールド等によりコア材料に圧縮力が付加されるエアコンコンプレッサーモータや、ハイブリッドEV用駆動モータ、EV用駆動モータ、FCEV用駆動モータ、高速発電機等において、その鉄損を低減することが可能となる。
モータコアにその外周から圧縮力が付加された状態およびバックヨークの積層方向に圧縮応力を付与する要領を示した図である。 ステータコアの円周方向の圧縮応力と鉄損との関係を示した図である。 積層方向の圧縮応力と鉄損との関係を示した図である。 電磁鋼板表面の絶縁被膜厚さと鉄損との関係を示した図である。
以下、本発明の解明経緯について説明する。
家電用エアコンコンプレッサーモータやハイブリッド電気自動車用のモータでは、コアを固定するために、ハウジングの焼きばめやハウジングへの圧入が行われる。この焼きばめや圧入によりモータコアに付加される圧縮応力は20〜150MPa程度と言われており、かような圧縮応力下での鉄損劣化抑制手法が望まれていた。
まず、発明者らは、このような圧縮応力下での鉄損特性について詳細な検討を行ったところ、圧縮応力によってヒステリシス損だけでなく渦電流損も増加することが明らかとなった。ハイブリッドEVモータやエアコンコンプレッサーモータは高周波域で駆動されるだけでなく、インバーター制御が行われているため数kHzの高調波も加わっていることから、渦電流損による鉄損劣化を抑制することが重要となる。
そこで、発明者らは、この渦電流損劣化の原因について検討したところ、ステータコア(モータコア)に圧縮応力が付加された場合、それを緩和するためにコアを構成する電磁鋼板の板面方向に磁化ベクトルが向き、この状態で磁化されると板面内で渦電流が流れ、これが鉄損劣化の原因であることが明らかとなった。
そこで、さらに発明者らは、磁化ベクトルが電磁鋼板の板面方向を向くことを抑制することが渦電流損抑制の観点で重要と考え、その対策として、電磁鋼板の板面方向すなわちコアにおける積層方向に応力を付与することに想い至った。
上記の考えを検証するため、板厚:0.35mmの3質量%Si鋼板を用い、12スロットのステータコアを打ち抜きにより作製した。ここで、ステータ外径は100mm、積み厚は60mmとした。
ついで、このコアに、焼きばめ代:5〜50μmで焼きばめを行った。その際、コアバック中央部の円周方向の圧縮応力を歪みゲージを用いて測定したところ、円周方向の圧縮応力(焼きばめ応力)は5〜50MPaであった。
ついで、積層方向に圧縮応力を付与するため、図1に示すように、バックヨーク部1に非磁性ステンレス鋼で作製したリング2を取り付け、このリング2を油圧プレスでコア積層方向に締めることにより、種々の圧縮力を付与した。その際の圧縮力は、リングとステータコア間に感圧紙を挟むことにより測定した。なお、図1中、番号3はティース部、4は焼きばめリング(ハウジング)である。
図2に、ステータコアの円周方向の圧縮応力がコア鉄損に及ぼす影響ついて調べた結果を示す。なお、ステータコアの鉄損は、バックヨーク部の非磁性体の上から励磁コイル、ピックアップコイルを巻き線することにより、ステータコア円周方向の鉄損を測定することにより行った。
同図に示したとおり、コア外周からの圧縮応力が10MPa以上になると、鉄損の劣化が顕著になることが確認された。
図3に、焼きばめ応力(円周方向の圧縮応力)が30MPaであるモータコアおよびかような焼きばめを行わなかったモータコアについて、積層方向(板厚方向)に圧縮力を付与した際の付与応力とコア鉄損との関係について調査した結果を示す。
同図から明らかなように、焼きばめを行わない場合は、積層方向に圧縮力を付与しても鉄損の変化はほとんどなかったが、焼きばめを行った場合には、積層方向に圧縮力を付与することによって、鉄損が大きく改善されることがわかる。特に付与応力が0.3MPa以上の場合に改善代が大きいことが判明した。
そこで、本発明では、積層方向の圧縮応力は0.3MPa以上、より好ましくは0.5MPa以上、さらに好ましくは3MPa以上とした。但し、積層方向に付与する圧縮応力があまりに大きいと、コア変形等の弊害を招くおそれがあるので、付与応力は100MPa以下とすることが好ましい。
ここで、板厚方向の圧縮応力は、焼きばめ応力が付与されるバックヨークの平均応力であり、バックヨーク全面において均一に付与されることが好ましい。
そして、板厚方向に圧縮力を付与する方法としてはどのような手法でも構わないが、例えば、上述したようにモータコアの両端にリング状のあて板を当て、ボルト等にてあて板を締め付ける方法、プレス等にてコアに積層方向の圧縮力を作用させた状態で、コア端面を溶接する方法、等が挙げられる。
なお、従来のモータコアにおいても、カシメ等により積層方向に圧縮力が付加される場合があるが、その場合の圧縮応力は0.2MPa以下程度の小さなものであり、またこの技術は、焼きばめ応力に起因した鉄損劣化を抑制することを狙いとしたものではなく、単にコアを固定することを目的としたものである。
また、ボルト締めにより固定されるモータコアも存在し、積層方向に圧縮力が加わっている場合もあるが、ボルト締めによる圧縮力はボルト近傍のみであり、磁束が主に流れているバックヨークには圧縮力はほとんど作用していない。しかも、ボルト締めにより固定されたモータコアに焼きばめを施すことは従来行われておらず、ボルト締めの目的は焼きばめ応力に起因した特性劣化を抑制するためのものではない。
次に、モータコアの鉄損に及ぼす電磁鋼板表面の絶縁被膜の影響を調査した。
板厚:0.35mmの3質量%Si鋼板の両面に、片面当たりの被膜厚さで0.2〜1.2μmの半有機皮膜を塗布し、外径:100mmのステータコアを作製し、図1に示したようにしてモータコアを作製後、鋼板表面の絶縁被膜の厚さと鉄損との関係について調査した結果を、図4に示す。なお、円周方向の圧縮応力は30MPaであり、また積層方向への付与応力は3MPaとした。
同図に示したとおり、積層方向に圧縮力を付与しない場合には鉄損に及ぼす絶縁被膜厚さの影響は認められなかったが、3MPaの圧縮応力を付与した場合には、絶縁被膜厚さが0.4μm未満であると、鉄損が増加することがわかる。これは、圧縮力を付与した場合には端面の短絡が生じやすくなっているものと考えられる。よって、絶縁被膜厚さは、片面当たり0.4μm以上、好ましくは0.8μm以上とする。一方、絶縁被膜厚さが10μmを超えると占積率が著しく低下しモータ効率が低下する。
従って、電磁鋼板表面の絶縁被膜厚さは、片面当たり0.4μm以上10μm以下(両面合計で0.8μm以上20μm以下)とする。
なお、鋼板の絶縁被膜厚さを調整する方法はどのようなものでも構わないが、ロールコーターの回転速度を制御し、液体状の被膜を掻き上げる量を変化させることにより被膜厚を制御する方法が、有利である。また、絶縁被膜は両面に施すことが好ましいが、目的に応じて片面のみに被膜形成を施してもよい。その場合は、両面に施す場合と同様の理由から、電磁鋼板表面の絶縁被膜厚さは、片面当たり0.8μm以上20μm以下とする。
Siを3質量%含有し、板厚が0.35mmの無方向性電磁鋼板の両面に絶縁被膜を形成した素材から、12スロットのステータコアをクリアランス:5%の金型にて打ち抜いた。ここで、ステータ外径は100mm、積み厚は60mmとした。ついて得られたステータコアに焼きばめ代:0〜50μmで焼きばめを行った。その際、コアバック中央部の円周方向の圧縮応力を歪みゲージを用いて測定した。ついで、積層方向に圧縮力を付与するため、図1に示したように、バックヨーク部に非磁性ステンレスで作製したリングを取り付け、リングを油圧プレスでコア積層方向に締めることにより圧縮力を変化させた。その際の圧縮応力は、リングとステータコア間に感圧紙を挟むことにより測定した。
かくして得られたステータコアの鉄損W10/1k(W/kg)について調べた結果を、表1に示す。
また、このステータコアを用いて、ステータ外径:100mm、ロータ外径:70mm、積み厚:60mmで、8極、12スロットの内部磁石埋込型モータ(IPMモータ)を作製し、トルクおよび回転数を種々に変化させたときの最大モータ効率を測定した結果も表1に示す。なお、表1には、鋼板表面の絶縁被膜厚さ(片面当たり)、焼きばめ応力(円周方向の圧縮応力)および積層方向に付与した圧縮応力も併せて示す。
Figure 0005609076
同表から明らかなように、本発明に従い、バックヨークの積層方向(鋼板の板厚方向)に0.3MPa以上の圧縮応力を付与し、かつ鋼板表面の絶縁被膜厚さを0.4〜10μmの範囲(両面合計で0.8μm以上20μm以下の範囲)とすることにより、焼きばめ応力に起因した鉄損劣化を軽減できることが分かる。
1 バックヨーク部
2 リング
3 ティース部
4 焼きばめリング(ハウジング)

Claims (1)

  1. ティース部とバックヨーク部を有する電磁鋼板の積層体で構成されるステータをそなえ、該ステータの周方向に10MPa以上50MPa以下の圧縮応力が付与されるモータのコアにおいて、該バックヨークの積層方向に0.3MPa以上の圧縮応力を付与するとともに、前記電磁鋼板の絶縁被膜の厚さを、該絶縁被膜が鋼板両面に施される場合は片面当たり0.4μm以上10μm以下、該絶縁被膜が鋼板片面のみに施される場合は片面当たり0.8μm以上20μm以下とすることを特徴とするモータコア。
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