JP5608948B2 - 導電性を有する粘着シートの製造方法 - Google Patents
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Description
また、導通できるフィラーのみをマトリックス中に偏析させる手段として、導電性磁性粉を利用した導電性粘着シートが提案されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この場合、ドット状に厚み方向のみ導電性磁性粉を偏析化させたものであり、磁気成型金型などの設備が必要となり、且つ粒子状の磁性粉を用いるために、高い導電性を得るためには、やはりある程度の量が必要となる。
本発明は、このような状況下になされたもので、磁性及び導電性を有する銀/マグネタイト複合ワイヤーを用い、導電性能と粘着性能の良好な、表面及び厚さ方向に導電性を有する粘着性シートの製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明はかかる知見に基づいて完成したものである。
[1](A)平均直径が20〜800nmの範囲にある銀ナノワイヤー表面に、平均粒子径が5〜500nmの範囲にあるマグネタイト粒子を形成させて、磁性及び導電性を有する銀/マグネタイト複合ワイヤーを作製する工程、及び(B)前記(A)工程で得られた磁性及び導電性を有する銀/マグネタイト複合ワイヤーを含有する粘着剤を、磁性部材上に設けられた剥離シートの剥離層表面に塗布、乾燥処理して、導電性粘着剤層を形成させる工程、を含むことを特徴とする導電性を有する粘着シートの製造方法、
[2](A)工程において、銀ナノワイヤーが、塩化銀を含む前躯体と、単糖類からなる還元剤とを水媒体中において、130〜200℃の温度で加熱処理するハイドロサーマル法により得られたものである、上記[1]項に記載の導電性を有する粘着シートの製造方法、
[3](A)工程が、銀ナノワイヤーを水系溶媒に分散して得られる銀ナノワイヤー水系分散液中に、第一鉄塩を添加し、次いで130〜200℃の温度で加熱処理するハイドロサーマル法により、前記銀ナノワイヤー表面にマグネタイト粒子を形成させる工程である、上記[1]又は[2]項に記載の導電性を有する粘着シートの製造方法、
[4](A)工程における銀ナノワイヤーが、表層部にカルボキシル基を有する有機層が形成されてなるものである、上記[1]〜[3]項のいずれかに記載の導電性を有する粘着シートの製造方法、
[5](A)工程において、第一鉄塩を、銀ナノワイヤー1質量部に対して、0.5〜10質量部の割合で用いる、上記[3]又は[4]項に記載の導電性を有する粘着シートの製造方法、
[6](A)工程において、銀ナノワイヤー水系分散液中に、さらにアルカリ剤を、第一鉄塩に対するモル比が1〜15の範囲になるように添加する、上記[3]〜[5]項のいずれかに記載の導電性を有する粘着シートの製造方法、
[7]アルカリ剤がヒドラジン及び/又はヒドラジン誘導体である、上記[6]項に記載の導電性を有する粘着シートの製造方法、
[8](B)工程において、導電性粘着剤層が、それを構成する粘着剤100質量部に対して、銀/マグネタイト複合ワイヤーを5〜50質量部の割合で含有する、上記[1]〜[7]項のいずれかに記載の導電性を有する粘着シートの製造方法、及び
[9](B)工程において、磁性部材の磁力により、導電性粘着剤層の厚み方向にみて表面付近に、銀/マグネタイト複合ワイヤーの偏析層を形成させる、上記[1]〜[8]項のいずれかに記載の導電性を有する粘着シートの製造方法、
を提供するものである。
まず、(A)工程について説明する。
本発明の導電性粘着シートの製造方法における(A)工程は、磁性及び導電性を有する銀/マグネタイト複合ワイヤー(以下、単に「銀/マグネタイト複合ワイヤー」と略称することがある。)を作製する工程であって、平均直径が20〜800nmの範囲にある銀ナノワイヤー表面に、平均粒子径が5〜500nmの範囲にあるマグネタイト粒子を形成させることにより、前記銀/マグネタイト複合ワイヤーを作製する。
一例として、塩化銀を含む前駆体と、単糖類からなる還元剤とを水媒体中において、130〜200℃の温度で加熱処理するハイドロサーマル法により得られた銀ナノワイヤーを用いる方法や、該銀ナノワイヤーを水系溶媒に分散して得られる水系分散液中に、第一鉄塩と、好ましくはアルカリ剤を添加し、次いで130〜200℃の温度で加熱処理するハイドロサーマル法により、前記銀ナノワイヤー表面にマグネタイト粒子を形成させる方法が挙げられる。
当該(A)工程における銀/マグネタイト複合ワイヤーの作製においては、まず、銀ナノワイヤーを形成し、その水系分散液を調製する。
前記銀ナノワイヤーの形成においては、下記の方法で調製した塩化銀を含む前駆体と、単糖類からなる還元剤とを、水媒体中において、130〜200℃の温度で加熱処理する(ハイドロサーマル法)。
前記銀ナノワイヤーは、フロー式粒子像分析装置を用いた画像解析による測定における、平均(最大垂直長/最大長)比が0.65以下であることが好ましく、以下の手順により形成することができる。
まず以下に示す方法により、塩化銀を含む前駆体を調製する。
すなわち、濃度0.01〜0.10モル/L程度の銀塩水溶液と、濃度0.10〜0.70モル/L程度の塩素含有物水溶液とを、銀塩と塩素含有物のモル比が1:1〜1:7程度になるように用い、かつ前記の銀塩水溶液と塩素含有物水溶液との合計量に対して、新たに水媒体を3〜10体積倍程度加えることにより、塩化銀を含む前駆体を調製する。
前記塩素含有物水溶液としては、得られる銀ナノワイヤーにおける異方性などの性状の観点から、アルカリ金属塩化物水溶液が好ましく、さらに塩化ナトリウムがより好ましく、また塩酸も好ましく用いられる。また、その濃度は、0.10〜0.5モル/Lの範囲が好ましい。
さらに、得られる銀ナノワイヤーにおける異方性などの性状の観点から、前記銀塩と塩素含有物のモル比は1:2〜1:5の範囲が好ましく、また、新たに加える水媒体の量は、前記の銀塩水溶液と塩素含有物水溶液との合計量に対して、4〜7体積倍が好ましい。
(単糖類)
塩化銀に対する還元剤として用いられる単糖類としては特に制限はなく、例えばグルコース、フルクトース、キシロース、ソルボース、ガラクトースなどが挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中で、得られる銀ナノワイヤーにおける異方性などの性状の観点から、グルコース及び/又はフルクトースが好ましい。
また、当該単糖類の使用量は、還元剤としての効果の観点から、前記銀塩水溶液中の銀塩と当該単糖類とのモル比が1:1〜1:10になるような量が好ましく、1:1.5〜1:5になるような量がより好ましい。
本発明においては、前記のコロイド状塩化銀を含む前駆体液と単糖類からなる還元剤とを混合して、130〜200℃の温度で加熱処理する。この温度が130℃未満では、塩化銀の金属体への還元が進行しにくく、一方200℃を超えると還元された金属体の再融着が進行するため、得られる銀ナノワイヤーの径が大きくなる傾向がある。
好ましい加熱処理温度は、使用する単糖類の分解温度近辺であり、例えば単糖類としてグルコースを使用する場合には、150〜200℃の範囲の温度が好ましく、フルクトースを使用する場合には、130〜180℃の範囲の温度が好ましい。
反応装置としては、耐圧密閉容器を用い、反応圧力は自発圧力でよい。反応時間は反応温度などに左右され、一概に定めることはできないが、通常20〜72時間程度で充分である。
このようにして得られた反応液に、遠心分離などの固液分離手段を施したのち、固相を水洗処理することにより、目的の異方性の銀ナノワイヤーを取得することができる。
得られる異方性の銀ナノワイヤーの平均直径及び平均長さは、走査型電子顕微鏡(SEM)写真により求めることができ、平均直径は、通常20〜800nm程度、平均長さは、通常20〜100μmであり、平均アスペクト比(平均長さ/平均直径)は50〜250程度である。
また、得られるナノワイヤーが銀であることは、X線回折(XRD)により、確認することができる。
また、当該銀ナノワイヤーは、通常その表層部に上記還元剤由来と思われる厚さ数10nm程度のカルボキシル基を有する有機層が形成されており、したがって後述のマグネタイト粒子を当該銀ナノワイヤー表面に形成させる際に、該カルボキシル基とその相互作用により、上記マグネタイト粒子が効果的に、当該銀ナノワイヤー表面に形成される。なお、カルボキシル基の存在は、X線光電子分光分析(XPS)により確認することができる。
[第一鉄塩]
第一鉄塩としては、水溶性塩であるものが好ましく、例えば硫酸第一鉄、硝酸第一鉄、塩化第一鉄、酢酸第一鉄などが挙げられる。これらは無水物であってもよく、水和物であってもよい。また、これらの第一鉄塩は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
当該第一鉄塩は、銀ナノワイヤー水系分散液中に、銀ナノワイヤー1質量部に対して、好ましくは0.5〜10質量部、より好ましくは0.7〜7質量部の割合で添加され、室温、好ましくは20〜30℃程度の温度において、1時間以上撹拌することにより、第一鉄塩を含む前駆体を調製することが望ましい。撹拌時間が1時間未満の場合には、銀ナノワイヤー表面に存在するカルボキシル基との相互作用が充分に発揮されず、銀ナノワイヤー表面以外へのマグネタイト粒子の形成が増加する。
また、第一鉄塩の量が上記の範囲にあれば、銀ナノワイヤー表面にマグネタイト粒子が均一に形成し、得られる銀/マグネタイト複合ワイヤーは、導電性と磁性とが両立したものとなる。
当該銀/マグネタイト複合ワイヤーの作製においては、前記第一鉄塩を含む銀ナノワイヤー水系分散液中に、さらに前記アルカリ剤を添加する方法を採用することができる。
このアルカリ剤としては、反応系のpHを7以上に保持し得ると共に、還元機能を有する化合物が好適である。このような化合物としては、特にヒドラジン及び/又はヒドラジン誘導体が好ましく、ヒドラジン誘導体としては、例えばメチルヒドラジンやフェニルヒドラジンなどを挙げることができる。
その他、水素化ホウ素ナトリウムなどの水素化ホウ素化合物、次亜リン酸ナトリウムなどの次亜リン酸化合物、ヒドロキシルアミン、アミンボラン類なども用いることができる。
アルカリ剤として、ヒドラジンやその誘導体以外の還元機能を有する化合物を用いる場合、反応系のpHを7以上に保持するために、必要に応じて水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ剤を添加してもよい。なお、この場合、pH11以下に抑えることが肝要である。pHが11を超えると、形成されるマグネタイト粒子が、粒径10nm以下の結晶性の悪い粒子を含む粒度分布の低いものとなる。
酸化反応 N2H4+2H2O+2e- → 2NH3+2OH-
還元反応 N2H4+4OH- → N2+4H2O+4e-
この場合、アルカリ剤であるヒドラジンの使用量は、第一鉄塩に対するモル比が1〜15となる量であることが好ましい。なお、溶液中のpHが7より低い場合には、α−酸化第二鉄やゲーサイトがマグネタイト中に混在し、マグネタイトの純度が低下する。
また、特開2004−182526号公報に記載されているような、Fe3+とFe2+が混在した水溶液に、アルカリを添加し、加熱熟成してFe3O4を共沈法により形成することも可能である。
<(B)工程>
当該(B)工程は、前述の(A)工程で得られた磁性及び導電性を有する銀/マグネタイト複合ワイヤーを含有する粘着剤を、磁性部材上に設けられた剥離シート(工程シート)の剥離層表面に塗布、乾燥処理して、導電性粘着剤層を形成させる工程である。
この(B)工程においては、粘着剤中に含有させた磁性及び導電性を有する銀/マグネタイト複合ワイヤーが、磁性部材の磁力によって、形成される導電性粘着剤層の表面及び厚さ方向に偏析化されることから、少ない量の前記銀/マグネタイト複合ワイヤーの含有量で、良好な導電性能が発揮されると共に、該複合ワイヤーの含有量が少ないので粘着性能も良好な導電性粘着シートが得られる。
なお、前記導電性粘着剤層の表面とは、該粘着剤層の剥離シートと接触している側の表面を指す。
当該(B)工程において、導電性粘着剤層を構成する粘着剤としては特に制限はなく、各種の粘着剤、例えばアクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤及び紫外線硬化型粘着剤などを用いることができるが、これらの中で、耐候性、粘着性能、経済性などの観点から、アクリル系粘着剤が好適に用いられる。
アクリル系粘着剤としては、(メタ)アクリル酸エステル共重合体を主成分として含むと共に、必要に応じて架橋剤を含む粘着剤組成物を熱架橋してなるものが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては特に制限はなく、従来アクリル系粘着剤の樹脂成分として慣用されている(メタ)アクリル酸エステル共重合体の中から任意のものを適宜選択して用いることができる。このような(メタ)アクリル酸エステル共重合体としては、例えばエステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルと、所望により用いられる活性水素をもつ官能基を有する単量体及び他の単量体との共重合体を好ましく挙げることができる。なお、(メタ)アクリル酸エステルは、メタクリル酸エステル及び/又はアクリル酸エステルを意味する。
ここで、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜20の(メタ)アクリル酸エステルの例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、パルミチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
さらに、この(メタ)アクリル酸エステル共重合体においては、活性水素をもつ官能基を有する単量体単位の含有量は、0.01〜10質量%の範囲が好ましい。この含有量が0.01質量%未満では架橋点が少なすぎて、架橋が不充分となり、粘着剤層の凝集破壊が生ずるおそれがあるし、10質量%を超えると粘度の上昇によって塗工適性が低下するおそれが生じる。この活性水素をもつ官能基を有する単量体単位のより好ましい含有量は0.05〜6.0質量%であり、特に0.2〜5.0質量%の範囲が好ましい。
この架橋剤としては特に制限はなく、従来アクリル系樹脂において架橋剤として慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。このような架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、アジリジン系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などが挙げられるが、ポリイソシアネート化合物が好ましく用いられる。
当該粘着剤組成物には、本発明の目的が損なわれない範囲で、各種添加剤、例えばシラン系カップリング剤、粘着付与剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、軟化剤などを、所望により含有させることができる。
当該(B)工程においては、前記粘着剤組成物中の前記銀/マグネタイト複合ワイヤーの含有量は、導電性及び経済性のバランスの観点から、粘着剤組成物の固形分100質量部に対して、好ましくは5〜50質量部、より好ましくは7〜45質量部、さらに好ましくは10〜40質量部であることが望ましい。
さらに、前記粘着剤組成物の23℃における粘度は、磁性部材の磁力によって、形成される導電性粘着剤層の表面及び厚さ方向に効率よく、当該銀/マグネタイト複合ワイヤーを偏析化させるためには、10〜10000Pa・sであることが好ましく、30〜5000Pa・sであることがより好ましく、50〜2000Pa・sであることがさらに好ましい。この粘度は、前記粘着剤組成物中に含まれる溶媒量を制御することにより調整することができる。
この(B)工程において、形成される導電性粘着剤層の表面及び厚さ方向に、当該銀/マグネタイト複合ワイヤーを偏析化するのに用いる磁性部材を構成する磁性材料としては、特に制限はなく、例えば、ストロンチウムフェライト、バリウムフェライト、鉛フェライトなどのフェライト系、Sm−Co合金、Nd−F−B合金、Ce−Co合金などの希土類系合金などを用いることができる。これらの磁性材料は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、当該磁性部材の形状については特に制限はないが、通常板状体のものが好ましく用いられる。
当該(B)工程において、剥離処理面に導電性粘着剤層が形成される剥離シート(工程シート)としては、種々の剥離シートを使用できるが、代表的に剥離性を表面に有する剥離シート用基材から構成される。剥離シート用基材としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブデン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体、ポリブチレンテレフタレート、ポリウレタン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー樹脂、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、ポリスチレン、ポリカーボネート、フッ素樹脂、低密度ポリエチレン、直鎖低密度ポリエチレン、トリアセチルセルロース等の樹脂フィルムや、上質紙、コート紙、グラシン紙、ラミネート紙などが挙げられる。これらの中で、安価でコシもあるポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。剥離シート用基材の厚さは、5μm〜300μmが好ましく、10μm〜200μmがより好ましい。
剥離シート用基材の表面に剥離性を持たせるには、その表面にシリコーン系樹脂、フッ素系樹脂、長鎖アルキル基系樹脂等の剥離剤を塗布することにより設ける。これらの中で、安価で安定した性能が得られるシリコーン系樹脂が好ましい。剥離剤層の厚さは、0.05μm〜2.0μmが好ましく、0.1μm〜1.5μmがより好ましい。
本発明における導電性粘着シートは、導電性粘着剤層の開放面に、工程シートとして用いられる剥離シートの剥離力とは異なる剥離力を有する剥離シートを貼付して、2枚の剥離シートに挟持された形態としてもよいし、前記導電性粘着剤層の開放面側を基板などの支持体に貼合してなる支持体付き導電性粘着シートの形態としてもよい。
本発明の導電性粘着シートは、例えば帯電しやすい部品の表面と、筐体表面とにまたがるように本発明の導電性粘着シートを貼付することで、帯電した部品と筐体とを導通させ、帯電した部品の静電気をアースすることができる。したがって、帯電防止ラベルや導通用ラベルとしての用途に好適に用いられる。
(1)銀ナノワイヤーの作製
テフロン製内筒へ30mlの脱イオン水を入れ、これに銀塩原料として0.02モル/L硝酸銀水溶液5mlと塩素含有物として0.2モル/L塩化ナトリウム水溶液1.0mlを滴下し、単糖の還元剤としてグルコースを0.4ミリモル添加した。その後、テフロン製内筒をステンレス製の耐圧反応器へ入れた後、160℃にて24時間反応させた。さらに、得られた反応液を遠心分離機[(株)久保田製作所製、機種名「卓上小型遠心機」](40000rpm、40分間)により沈殿物を取り出して純水で洗浄し、遠心分離、洗浄の工程を3回繰り返した。
その後、得られた沈殿物をSEM観察にて確認したところ、直径50〜500nm程度(平均直径284nm)のナノワイヤー構造を有する物質を確認することができた。さらに得られた沈殿物のXRD回折を確認したところ、得られたものが銀であることが確認された。また、ナノワイヤー構造を有する物質の表面について、X線光電子分光分析[(株)島津製作所製、機種名「KRATOS・AXIS−ULTRA OLD」]によりX線光電子分光分析(XPS)を行い、カルボキシル基の存在を確認した。X線にはMgKα線(1256.6eV、10mA、15kV)を用いた。
上記(1)で得られた銀ナノワイヤー20.0mgを、蒸留水30g中に添加し、超音波処理を約5分間行い、銀ナノワイヤー水系分散液を調製した。その後、該水系分散液に、硫酸第一鉄七水和物(FeSO4・7H2O)14.0mgを添加して1時間撹拌した。さらに、アルカリ剤としてヒドラジン一水和物[和光純薬工業(株)製、80質量%]16.0mgを添加して、5分間撹拌した。このときの反応系のpHは9であった。次いで、このものを耐圧容器へ投入し、150℃雰囲気下にて7時間反応させた。
反応終了後のサンプルを遠心分離機にかけて沈殿物を採取し、蒸留水で数回洗浄した。この沈殿物について、電界放出型走査電子顕微鏡[日立製作所(株)製、機種名「S−5000型」]を用いて、電子顕微鏡像を撮影した。図1に該電子顕微鏡写真図を示す。
また、X線回折装置[理学(株)製、機種名「RU200B型」]を用いてX線回折(XRD)を行い、銀(Ag)及びマグネタイト(Fe3O4)であることを確認した。すなわち、この沈殿物は、銀/マグネタイト複合ワイヤーである。
さらに、磁石への吸着性を下記の方法により調べた。その結果、透過率は76.8%であり、十分な吸着性が確認された。
<磁石への吸着性>
10mlガラス製スクリュー管(φ18mm)へ作製した複合ワイヤー0.01gとイソプロピルアルコール(IPA)5gを添加し、超音波処理を5分間行い、懸濁溶液を作製した。その後、スクリュー管側面下部に(株)マグファイン製ネオジム磁石(φ20.5mm×9mm<厚み>、磁束密度;281mT)を固定し、懸濁しているフィラーが磁石へ引き寄せられる否かを確認した。また、磁石を固定して1分後の上澄み液をスポイトにて採取し、紫外−可視−近赤外分光光度計[日立製作所(株)製「U−3500」]を用いて、UV−VIS測定を行い、上澄み液の550nmにおける透過率を測定した。銀/マグネタイト複合ワイヤーの磁石への吸着性が強いほど、上澄み液中の銀/マグネタイト複合ワイヤー濃度が低くなり、該透過率が高くなる。
製造例1で得られた銀ナノワイヤーの代わりに、市販の銀パーティクル20.0mgを用いた以外は、製造例1と同様な操作を行い、比較例1用の材料を作製した。
この材料について、電界放出型走査電子顕微鏡[日立製作所(株)製、機種名「S−5000型」]を用いて、電子顕微鏡像を撮影した。図2に該電子顕微鏡写真図を示す。
また、X線回折装置[理学(株)製、機種名「RU200B型」]を用いてX線回折(XRD)を行い、銀(Ag)及びマグネタイト(Fe3O4)であることを確認した。
さらに、製造例1と同様にして磁石への吸着性を調べた。その結果、透過率は50.7%であり、吸着性は不十分であった。
溶媒としてイソプロピルアルコール(IPA)を用い、フィラー濃度が5.0質量%になるようにフィラーを添加し、超音波処理機にて30分間超音波処理を行い、フィラー分散液を製造した。
アクリル系溶剤型粘着剤として、日本カーバイド工業(株)製「ニッセツPE−121」を使用した。
製造例4で得られたアクリル系共重合体溶液100質量部に対して、銀/マグネタイト複合フィラー(ワイヤー)3.3質量部(5質量%IPA分散液を66質量部)と、架橋剤[日本カーバイド(株)製、「CK−401」]1質量部を添加し、23℃の粘度が85Pa・sの粘着剤組成物を調製した。マグネットシート[(株)パイロットコーポレーション製、「マグネットシートDX−M−10W5K−10N」]上に、剥離シート[リンテック(株)製、「SP−PET38−1031」]を載置し、その剥離処理面に、前記粘着剤組成物を塗布したのち、1分間放置し、さらに90℃雰囲気にて脱溶媒することにより、厚さ15μmの導電性粘着剤層を形成した。この導電性粘着剤面に50μm厚のポリエステルフィルム[東レ(株)製、「ルミラー」]を貼り合わせて導電性粘着シートを得た。
製造例4で得られたアクリル系共重合体溶液100質量部(固形分として33質量部)に対して、銀/マグネタイト複合フィラー(ワイヤー)9.9質量部(5質量%IPA分散液を198質量部)添加し、23℃の粘度が110Pa・sの粘着剤組成物を調製した。マグネットシート(前出)上に、剥離シート(前出)を載置し、その剥離処理面に、前記粘着剤組成物を塗布したのち、1分間放置し、さらに90℃雰囲気に脱溶媒することにより、厚さ15μmの粘着剤層を形成した。
実施例1において、銀/マグネタイト複合フィラーの代わりに、市販の銀パーティクル[アルドリッチ社製、平均粒子径2〜3.5μmの銀パウダー、純度99%以上]を用いた以外は、実施例1と同様な操作を行い、厚さ15μmの粘着剤層を形成した。
なお、粘着剤組成物の23℃粘度は80Pa・sであった。
実施例1において、マグネットシートの代わりにガラス板を用いた以外は、実施例1と同様な操作を行い、厚さ15μmの粘着剤層を形成した。
<試験1>表面抵抗値の測定
表面抵抗値が107Ω/□未満は、[(株)三菱化学アナリテック製「ロレスタGP MCP−T610型」]、それ以上の抵抗値のものは、[(株)三菱化学アナリテック製「ハイレスターUP MCP−HT450」]を使用した。
<試験2>粘着力の測定
JIS Z 0237(2009)に従い、常温(23℃)で、貼り付け1分以内の粘着力を測定した。被着体にはステンレス板(SUS380)を用いた。
なお、実施例及び比較例における粘着剤組成物の粘度測定は、粘度測定機器として、[東機産業(株)製、機種名「ビスコブロックVTB250」]を用いて行った。
Claims (9)
- (A)平均直径が20〜800nmの範囲にある銀ナノワイヤー表面に、平均粒子径が5〜500nmの範囲にあるマグネタイト粒子を形成させて、磁性及び導電性を有する銀/マグネタイト複合ワイヤーを作製する工程、及び(B)前記(A)工程で得られた磁性及び導電性を有する銀/マグネタイト複合ワイヤーを含有する粘着剤を、磁性部材上に設けられた剥離シートの剥離層表面に塗布、乾燥処理して、導電性粘着剤層を形成させる工程、を含むことを特徴とする導電性を有する粘着シートの製造方法。
- (A)工程において、銀ナノワイヤーが、塩化銀を含む前躯体と、単糖類からなる還元剤とを水媒体中において、130〜200℃の温度で加熱処理するハイドロサーマル法により得られたものである、請求項1に記載の導電性を有する粘着シートの製造方法。
- (A)工程が、銀ナノワイヤーを水系溶媒に分散して得られる銀ナノワイヤー水系分散液中に、第一鉄塩を添加し、次いで130〜200℃の温度で加熱処理するハイドロサーマル法により、前記銀ナノワイヤー表面にマグネタイト粒子を形成させる工程である、請求項1又は2に記載の導電性を有する粘着シートの製造方法。
- (A)工程における銀ナノワイヤーが、表層部にカルボキシル基を有する有機層が形成されてなるものである、請求項1〜3のいずれかに記載の導電性を有する粘着シートの製造方法。
- (A)工程において、第一鉄塩を、銀ナノワイヤー1質量部に対して、0.5〜10質量部の割合で用いる、請求項3又は4に記載の導電性を有する粘着シートの製造方法。
- (A)工程において、銀ナノワイヤー水系分散液中に、さらにアルカリ剤を、第一鉄塩に対するモル比が1〜15の範囲になるように添加する、請求項3〜5のいずれかに記載の導電性を有する粘着シートの製造方法。
- アルカリ剤がヒドラジン及び/又はヒドラジン誘導体である、請求項6に記載の導電性を有する粘着シートの製造方法。
- (B)工程において、導電性粘着剤層が、それを構成する粘着剤100質量部に対して、銀/マグネタイト複合ワイヤーを5〜50質量部の割合で含有する、請求項1〜7のいずれかに記載の導電性を有する粘着シートの製造方法。
- (B)工程において、磁性部材の磁力により、導電性粘着剤層の厚み方向にみて表面付近に、銀/マグネタイト複合ワイヤーの偏析層を形成させる、請求項1〜8のいずれかに記載の導電性を有する粘着シートの製造方法。
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