JP5608403B2 - 酢酸n−プロピルの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、酢酸n−プロピルの製造方法及び酢酸アリルの製造方法に関する。
従来、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソブチル、酢酸 n−ブチル等の飽和カルボン酸エステル類は、溶剤や反応溶媒として多用されており、工業上重要な化合物である。
これらの飽和カルボン酸エステル類は、化学構造の対応する不飽和カルボン酸エステル類の水素化反応により製造することができる。
不飽和カルボン酸エステル類の製造方法については、いくつかの方法が挙げられる。
具体的には、不飽和アルコールとカルボン酸とのエステル化反応により製造する方法、カルボン酸と酸素とオレフィン化合物とを用いた酸化的カルボキシル化反応により製造する方法が挙げられる。
たとえば、酢酸アリルの製造方法としては、アリルアルコールと酢酸とのエステル化反応、あるいは、プロピレンと酢酸と酸素との酸化的カルボキシル化反応により酢酸アリルを製造する方法が一般的に挙げられる。
これらのエステル化反応又は酸化的カルボキシル化反応においては、酢酸アリルと水が同時に生成する。そのため、これらの反応により得られる酢酸アリルは、通常、副生物の水および未反応の酢酸を不純物として含んでいる。すなわち、工業的に利用可能な酢酸アリルは、水を含んでいる酢酸アリルを使用するか、又は何らかの方法で水を除去した酢酸アリルを使用するかのいずれかになる。
たとえば、プロピレンと酢酸と酸素との酸化的カルボキシル化反応では、下式のように酢酸アリルと水が生成する。
Figure 0005608403
また、不飽和アルコールとカルボン酸とのエステル化反応により不飽和カルボン酸エステル類を製造する場合、通常、不飽和アルコールとカルボン酸とのエステル化反応では反応平衡が存在するため、定常に達した後の反応混合物中には、生成物である不飽和カルボン酸エステルと水に加えて、原料である不飽和アルコールとカルボン酸が残存する。したがって、不飽和カルボン酸エステル類に対して水素化反応を行う場合、不飽和アルコールとカルボン酸とのエステル化反応の後、その反応混合物から高純度の不飽和カルボン酸エステル類を分離する必要がある。
他方、カルボン酸と酸素とオレフィン化合物とを用いた酸化的カルボキシル化反応により不飽和カルボン酸エステル類を製造する方法として、特許文献1に、パラジウム触媒の存在下に、プロピレン、酸素及び酢酸を気相で反応させることによって酢酸アリルを製造する方法が開示されている。この製造方法によれば、酢酸アリルを工業的に有利に製造することが可能であるとされている。
しかし、反応器出口から得られる混合物には、酸化的カルボキシル化反応の生成物である不飽和カルボン酸エステルと水に加えて、多くの場合、原料である未反応のカルボン酸が含まれる。したがって、不飽和カルボン酸エステル類に対して水素化反応を行う場合、酸化的カルボキシル化反応後の混合物から高純度の不飽和カルボン酸エステル類を分離する必要がある。
また、不飽和カルボン酸エステル類に対して水素化反応を行う場合、主反応である水素化反応とともに、副反応である異性化反応又は水素化分解反応を伴うおそれがある。そのため、不飽和カルボン酸エステル類の水素化反応においては、副反応をできるだけ抑制することが求められる。
特許文献2には、飽和カルボン酸エステル類の製造方法として、不飽和カルボン酸エステルをニッケル系水素化触媒の存在下で水素化反応を行う製造方法が開示されている。この製造方法によれば、水素化分解反応を抑制し、高収率で飽和カルボン酸エステルが製造できるとされている。
特開昭61−238759号公報 特開平9−194427号公報
特許文献2に記載された発明においては、飽和カルボン酸エステルを製造する際の選択率及び収率は、たとえば、酢酸アリルの水素化反応における酢酸アリルの転化率が96.5%、酢酸n−プロピルの選択率が96.2%、酢酸n−プロピルの収率が92.8%とあるように、工業的に充分なものであるとは云えない。
ところで、本発明者らは検討により、たとえば酢酸n−プロピルを製造する際、酸化的カルボキシル化反応により酢酸アリルと同時に生成する水の影響により、酢酸アリルの水素化反応で副反応が生じやすくなり、高収率で酢酸n−プロピルを製造するのが難しくなることをはじめて見出した。
酸化的カルボキシル化反応においては、酢酸アリルと少なくとも等モルの水が同時に生成するため、当該反応後に得られる酢酸アリルと水との混合物中の水の濃度は、分子量の関係から、約15質量%となる。一方、酢酸アリルと水は共沸組成を有し、共沸組成における水のモル分率は53mol%、重量割合では16.7質量%である。
したがって、当該反応により得られた酢酸アリルと水との混合物を単純に蒸留した場合、留出液の組成はほぼ当該反応により得られた混合物と同じ組成となり、単純な蒸留操作では、酢酸アリルを含む留出液中の水の濃度を下げることは困難である。
単純な蒸留操作以外の水の濃度を下げる方法としては、蒸留操作とその他の分離操作とを組み合わせる方法が考えられる。
たとえば、酢酸アリルと水とを含有する原料液(粗酢酸アリル)が油相と水相との二相を形成する場合、原料液を、油水分離装置(たとえばデカンター等)を用いて、酢酸アリルを主成分とする油相と、水相とに分離した後、油相を蒸留する方法が考えられる。
しかし、この油水分離の操作と蒸留操作とを組み合わせても、油水分離後の酢酸アリルを主成分とする油相中の水濃度は少なくても2質量%程度であるため、その後の蒸留操作で得られる留出液中の水濃度を下げるには限界がある。
また、上述のように、不飽和アルコールとカルボン酸とのエステル化反応、あるいは、カルボン酸と酸素とオレフィン化合物とを用いた酸化的カルボキシル化反応により不飽和カルボン酸エステル類を製造する際、反応混合物中には、不飽和カルボン酸エステル類と水に加えて、未反応原料が残存することが一般的である。
具体的には、アリルアルコールと酢酸とのエステル化反応における反応混合物中には、エステル化の反応平衡のため、酢酸アリルと水に加えて、酢酸とアリルアルコールとが残存し、反応混合物は四成分の混合物となる。
一方、プロピレンと酢酸と酸素との酸化的カルボキシル化反応により酢酸アリルを製造する際、反応混合物は、特許文献1に記載されているように、反応器出口のガスを凝縮することで得られ、酢酸アリルと酢酸と水との三成分の混合物となる。
これらの三成分又は四成分の混合物から高純度の酢酸アリルを得るのは、酢酸アリルと水の二成分の混合物から酢酸アリルを得るのに比べてさらに困難となる。
このように、一般的な酢酸アリルの製造方法によると、得られる反応混合物は多成分系となり、反応混合物から高純度で酢酸アリルを分離することは難しい。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、共存する水の量が少ない高純度の酢酸アリルを得ることができ、高収率で酢酸n−プロピルを製造できる方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、鋭意検討により、水を抽出用溶媒として用いた抽出操作と蒸留操作とを組み合わせて行うことにより、共存する水の量が低減した酢酸アリルが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の[1]〜[10]に関する。
[1]酢酸アリルと水を含有する原料液に対して、水を抽出用溶媒とする抽出操作を行い、油相と水相とに分離する抽出工程と、前記油相を蒸留して、酢酸アリルを主成分とする留出液を得る蒸留工程と、前記留出液に対して水素化反応を行う水素化工程とを有することを特徴とする酢酸n−プロピルの製造方法。
[2]酢酸アリルと水を含有する原料液に対して、水を抽出用溶媒とする抽出操作を行い、酢酸アリルを主成分とする油相(B)と、水を主成分とする水相(B)とに分離する抽出工程と、前記油相(B)を蒸留して、酢酸アリルを主成分とする留出液(X)を得る第一の蒸留工程と、前記留出液(X)を、油相(C)と水相(C)とに分離する油水分離工程と、前記油相(C)を蒸留して、酢酸アリルを主成分とする留出液(Y)を得る第二の蒸留工程と、前記留出液(Y)に対して水素化反応を行う水素化工程とを有する前記[1]に記載の酢酸n−プロピルの製造方法。
[3]前記水相(C)を、前記第一の蒸留工程に返送する前記[2]に記載の酢酸n−プロピルの製造方法。
[4]前記第二の蒸留工程と前記水素化工程との間に、前記留出液(Y)をさらに蒸留する第三の蒸留工程を有する前記[2]又は前記[3]に記載の酢酸n−プロピルの製造方法。
[5]前記抽出工程の前段側に、プロピレンと酢酸と酸素ガスを原料とする酸化的カルボキシル化反応により前記原料液を調製する原料液調製工程を有する前記[1]〜[4]のいずれかに記載の酢酸n−プロピルの製造方法。
[6]前記水素化反応に用いる留出液中の水の濃度(質量基準)が1000ppm以下である前記[1]〜[5]のいずれかに記載の酢酸n−プロピルの製造方法。
[7]前記水素化反応に用いる留出液中の水の濃度(質量基準)が100ppm以下である前記[6]に記載の酢酸n−プロピルの製造方法。
[8]前記水素化反応には、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム及びニッケルから選ばれる少なくとも一種を含む触媒を用いる前記[1]〜[7]のいずれかに記載の酢酸n−プロピルの製造方法。
[9]酢酸アリルと濃度(質量基準)100ppm以下の水とを含有する原料に対して水素化反応を行うことを特徴とする酢酸n−プロピルの製造方法。
[10]プロピレンと酢酸と酸素ガスを原料とする酸化的カルボキシル化反応を行う反応工程と、前記反応工程で得られた反応混合物に対して、水を抽出用溶媒とする抽出操作を行い、油相と水相とに分離する抽出工程と、前記油相を蒸留する蒸留工程とを有することを特徴とする酢酸アリルの製造方法。
本発明において「主成分」とは、油相、水相又は留出液中の含有量が50質量%以上の成分をいう。
本発明の酢酸n−プロピルの製造方法によれば、高収率で酢酸n−プロピルを製造できる。
また、本発明の酢酸アリルの製造方法によれば、共存する水の量が少ない高純度の酢酸アリルを得ることができる。
本発明の酢酸n−プロピルの製造方法の一実施形態を示す概略工程図である。 原料液調製工程の一実施形態を示す概略工程図である。
<酢酸n−プロピルの製造方法(1)>
本発明の第一の態様である酢酸n−プロピルの製造方法(1)は、酢酸アリルと水を含有する原料液に対して、水を抽出用溶媒とする抽出操作を行い、油相と水相とに分離する抽出工程と、前記油相を蒸留して、酢酸アリルを主成分とする留出液を得る蒸留工程と、前記留出液に対して水素化反応を行う水素化工程とを有する。
図1は、本発明の酢酸n−プロピルの製造方法の一実施形態を示す概略工程図である。
本実施形態においては、抽出工程と蒸留工程と水素化工程とを有し、当該蒸留工程として第一の蒸留工程及び第二の蒸留工程を有している。また、抽出工程の前段側、及び第一の蒸留工程と第二の蒸留工程との間に、油水分離工程をそれぞれ有している。
本実施形態では、まず、抽出工程の前段側の油水分離工程(1)で、酢酸アリルと水を含有する原料液を、酢酸アリルを主成分とする油相(A)と、水を主成分とする水相(A)とに分離する。
次いで、抽出工程で、油相(A)に対して、水を抽出用溶媒とする抽出操作を行い、酢酸アリルを主成分とする油相(B)と、水を主成分とする水相(B)とに分離する。
次に、第一の蒸留工程で、油相(B)を蒸留して、酢酸アリルを主成分とする留出液(X)を得て、第一の蒸留工程後の油水分離工程(2)で、留出液(X)を、油相(C)と水相(C)とに分離し、その後、第二の蒸留工程で、油相(C)を蒸留して、酢酸アリルを主成分とする留出液(Y)を得る。
次いで、水素化工程で、留出液(Y)に対して、水素化反応を行うことにより酢酸n−プロピルが製造される。
酢酸アリルと水を含有する原料液は、たとえば、プロピレンと酢酸と酸素ガスを原料とする酸化的カルボキシル化反応により原料液を調製する方法(1)、アリルアルコールとカルボン酸とのエステル化反応により原料液を調製する方法(2)、プロピレンクロリドとカルボン酸又はその塩との反応により原料液を調製する方法(3)等によって調製されるものが挙げられる。
原料液中、酢酸アリルの含有量は40質量%以上であることが好ましく、50〜60質量%であることがより好ましい。酢酸アリルの含有量が40質量%未満であると、油水が分離しにくくなり、本実施形態においては油水分離工程(1)での油水の分離効率が低下することがある。
原料液中、水の含有量は35質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましい。水の含有量が35質量%を超えて多すぎると、油水が分離しにくくなり、本実施形態においては油水分離工程(1)での油水の分離効率が低下することがある。
なお、酢酸アリルと水を含有する原料液は、酢酸アリルと水以外に、場合によっては未反応の酢酸を含有するものでもよい。
本実施形態では、抽出工程の前段側に油水分離工程(1)を有している。
油水分離工程(1)では、油水分離装置1を用いて、原料液を、酢酸アリルを主成分とする油相(A)と、水を主成分とする水相(A)とに分離する。
本発明の酢酸n−プロピルの製造方法においては、油水分離工程(1)は必須ではないが、原料液を油相(A)と水相(A)とに予め分離し、酢酸アリル濃度が高い油相(A)だけを抽出工程へ供給することが好ましい。これにより、抽出工程で、共存する水の量の少ない高純度の酢酸アリルが得られやすくなる。
油水分離の操作は、静置分離、遠心分離等で行えばよく、たとえばデカンター等の油水分離装置を用いて行うことができる。
[抽出工程]
本実施形態の抽出工程では、油水分離工程(1)で得られた油相(A)に対して、水を抽出用溶媒とする抽出操作を行い、酢酸アリルを主成分とする油相(B)と、水を主成分とする水相(B)とに分離する。
具体的には、油相(A)を抽出塔2の塔底から、抽出用溶媒として水を抽出塔2の塔頂からそれぞれ供給することにより、抽出塔2内で油相(A)と水とを接触させる。そして、酢酸アリルを主成分とする油相(B)と、水を主成分として酢酸等を含む水相(B)とに分離し、塔頂から油相(B)を得るとともに、塔底から水相(B)を除去する。
抽出塔2に供給される油相(A)と水の温度は特に制限されない。抽出塔2内への水の供給量は、油相(A)の100質量部に対して40〜100質量部であることが好ましく、50〜70質量部であることがより好ましい。水の供給量が下限値未満であると、油相(A)からの水および酢酸の抽出効率が低下し、一方、上限値を超えると、水相(B)の処理(排水処理)にコストを要する。
油相(A)と水との接触時間は5分間以上であることが好ましく、15〜30分間であることがより好ましい。接触時間が下限値以上であれば、油相(A)と水とを良好に分離できる。
本発明の酢酸n−プロピルの製造方法においては、蒸留工程前に、前記の抽出操作を行うことにより、共存する水の量の少ない高純度の酢酸アリルが得られる。
[蒸留工程]
蒸留工程では、前記抽出工程で得られた油相を蒸留して、酢酸アリルを主成分とする留出液を得る。
本実施形態においては、第一の蒸留工程と第二の蒸留工程とを有している。
(第一の蒸留工程)
第一の蒸留工程では、前記抽出工程で得られた油相(B)を蒸留して、酢酸アリルを主成分とする留出液(X)を得る。
具体的には、油相(B)を、第一の蒸留塔3に供給して蒸留を行い、蒸留塔3の塔頂から酢酸アリルを主成分とする留出液(X)を得るとともに、塔底から酢酸等の高沸点成分を除去する。
第一の蒸留工程における蒸留条件は、酢酸アリルと共存する水の量がより低減し、高収率で酢酸アリルを得る目的から、蒸留塔のトップ圧力を0〜200kPaG(ゲージ圧)とすることが好ましく、20〜100kPaGとすることがより好ましく、ボトム圧力を10〜210kPaGとすることが好ましく、30〜110kPaGとすることがより好ましい。
蒸留塔のトップ温度は85〜120℃とすることが好ましく、95〜105℃とすることがより好ましく、ボトム温度は105〜150℃とすることが好ましく、110〜120℃とすることがより好ましい。
還流比は0.1〜0.5とすることが好ましく、0.1〜0.2とすることがより好ましく、蒸発率は80質量%以上とすることが好ましく、90質量%以上とすることがより好ましい。
ここで「トップ圧力」、「ボトム圧力」、「トップ温度」及び「ボトム温度」とは、蒸留塔のトップとボトムでそれぞれ測定されるゲージ圧と温度のことであり、トップは留出液が出る塔頂部、ボトムは残留物が溜まる塔底部である。
「還流比」とは、還流液量の留出液量に対する比である。
「蒸発率」とは、仕込み(供給)液量に対する留出液量の比率(質量%)を示したものである。蒸発率は高いほど好ましく、蒸発率が高いと、回収できる酢酸アリル量が多くなり、歩留まりが向上する。
本実施形態においては、第一の蒸留工程後に油水分離工程(2)を有している。
油水分離工程(2)では、油水分離装置4を用いて、前記第一の蒸留工程で得られた留出液(X)を、油相(C)と水相(C)とに分離する。
本発明の酢酸n−プロピルの製造方法においては、油水分離工程(2)は必須ではないが、留出液(X)を、酢酸アリルを主成分とする油相(C)と、水を主成分とする水相(C)とに分離し、酢酸アリル濃度が高い油相(C)だけを次の第二の蒸留工程へ供給することが好ましい。これにより、第二の蒸留工程で、酢酸アリルと共存する水の量をより少なくできる。
油水分離の操作は、静置分離、遠心分離等で行えばよく、たとえばデカンター等の油水分離装置を用いて行うことができる。
また、本実施形態では、油水分離装置4の水相部と、第一の蒸留塔3とが流路4aで繋がれ、水相(C)が第一の蒸留塔3へ返送されるようになっている。
このように、油水分離工程(2)で得られた水相(C)を、第一の蒸留工程に返送して再度蒸留することは、水相(C)に含まれている酢酸アリルを回収でき、高収率で酢酸アリルが得られることから好ましい。
なお、図示はしていないが、油水分離装置4の油相部と、第一の蒸留塔3とを流路で繋いで、油水分離工程(2)で得られた油相(C)の一部又は全部を、第一の蒸留工程に返送して再度蒸留を行ってもよい。特に、留出液(X)の組成が水と酢酸アリルとの共沸組成に比べて相対的に水濃度が高い場合、当該操作(再度の蒸留)を実施することで、油相(C)から水をさらに除去して、留出液(X)の組成を、水と酢酸アリルとの共沸組成に近づけることができる。
(第二の蒸留工程)
第二の蒸留工程では、油水分離工程(2)で得られた油相(C)を蒸留して、酢酸アリルを主成分とする留出液(Y)を得る。
具体的には、油水分離工程(2)で得られた油相(C)を、第二の蒸留塔5に供給して蒸留を行い、蒸留塔の塔底から酢酸アリルを主成分とする留出液(Y)を得るとともに、塔頂から酢酸アリルよりも沸点の低い低沸点成分を除去する。
第二の蒸留工程における蒸留条件は、酢酸アリルよりも沸点の低い成分を除去して、より高純度の酢酸アリルを得る目的から、蒸留塔のトップ圧力を50〜200kPaGとすることが好ましく、100〜200kPaGとすることがより好ましく、ボトム圧力を60〜210kPaGとすることが好ましく、110〜180kPaGとすることがより好ましい。
蒸留塔のトップ温度は100〜135℃とすることが好ましく、110〜120℃とすることがより好ましく、ボトム温度は120〜150℃とすることが好ましく、130〜140℃とすることがより好ましい。
還流比は8〜12とすることが好ましく、10〜12とすることがより好ましい。
第二の蒸留工程では、目的とする精製酢酸アリルは残留物として塔底から抜き出されるため、第二の蒸留工程においては、蒸発率は低い方が好ましく、蒸発率は12質量%以下とすることが好ましく、8質量%以下とすることがより好ましい。
本実施形態においては、第二の蒸留工程で得られた留出液(Y)が次の水素化工程に供給されて、水素化反応が行われる。
本実施形態によれば、第二の蒸留工程で得られる留出液(Y)中の酢酸アリルの濃度を、好ましくは99.00質量%以上とすることができ、より好ましくは99.50質量%以上とすることができ、特に好ましくは99.60質量%以上とすることができる。
このように、本実施形態によれば高純度の酢酸アリルが得られる。また、酢酸アリルの濃度が99.00質量%以上であると、高収率で酢酸n−プロピルを製造できる。
また、本実施形態によれば、留出液(Y)中の水の濃度(質量基準)を、好ましくは1000ppm以下とすることができ、より好ましくは500ppm以下とすることができ、さらに好ましくは100ppm以下とすることができ、特に好ましくは50ppm以下とすることができる。
水の濃度が高いと、水素化反応の際、酢酸アリルの異性化反応による酢酸1−プロペニルの副生、水素化分解反応による酢酸および/またはプロパンの副生が顕著であり、さらに副生した酢酸が酢酸アリルの水素化反応を阻害する。そのため、水の濃度(質量基準)を1000ppm以下とすることが好ましい。
酢酸アリルの異性化反応を避けるという観点から、より好ましい水の濃度(質量基準)は500ppm以下である。さらに酢酸の副生による触媒被毒を避けるため、特に好ましい水の濃度(質量基準)は50ppm以下である。
また、本実施形態によれば、第二の蒸留工程で得られる留出液(Y)中のアクリル酸アリルの濃度(質量基準)を3000ppm以下、酢酸の濃度(質量基準)を500ppm以下とすることができる。
[水素化工程]
本実施形態の水素化工程では、第二の蒸留工程で得られた留出液(Y)に対して水素化反応(後述の式1)を行う。
具体的には、水素化反応器6に、水素ガスと、第二の蒸留工程から送られてくる留出液(Y)とを供給して、水素化反応器6内で水素化反応を行うことにより、酢酸n−プロピルが得られる。
本実施形態によれば、上述したように、水の濃度が低い留出液(Y)に対して水素化反応を行うことができるため、高収率で酢酸n−プロピルを製造できる。
水素化反応に用いる水素ガスは、特に制限されず、通常は市販されているものでよく、高純度のものを用いることが好ましい。
また、供給する水素ガスの量は、酢酸アリルから酢酸n−プロピルを製造するのに必要な水素ガスの理論量以上であることが好ましく、理論量の1.1〜3.0倍モルの範囲であることがさらに好ましく、理論量の1.1〜2.0倍モルの範囲であることが特に好ましい。理論量に等しい、又はこれ未満の水素ガスの供給量では、水素化分解反応等の副反応が生じた場合、所定量の水素ガスが該副反応に消費されるため、主反応に必要な水素ガスが不足する。また、水素ガスの供給量が、極端に多すぎる場合には、経済的に不利となる。
水素化反応に用いる触媒(水素化触媒)としては、周期律表(国際純正および応用化学連合無機化学命名法改訂版(1989年)による。以下同じ。)の8族元素、9族元素及び10族元素の中から選ばれる元素、すなわち、鉄、ルテニウム、オスミウム、コバルト、ロジウム、イリジウム、ニッケル、パラジウム又は白金を含有する触媒が挙げられる。
なかでも、水素化反応がより良好に進行することから、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム及びニッケルから選ばれる少なくとも一種を含む触媒を用いることが好ましい。
上記水素化触媒としては、元素単独(単体)であっても化合物単独であってもよく、また必要に応じて担体に担持させたものであってもよい。担体に担持させたものは、たとえば後述の固定層型反応装置を用いた場合の水素化反応において、水素化触媒と酢酸アリルとの接触の際に大きな金属表面積を得ることができる点から好ましい。
上記担体としては、通常、触媒担持用の担体として用いられる物質(たとえば、多孔質物質など)を特に制限なく使用することが可能である。このような担体の好ましい具体例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、珪藻土、カーボン、活性炭又はこれらの混合物等が挙げられる。
これらの担体は、ペレット状、球状に成形されたものであると、取扱いが簡便となり好ましい。
上記担体の比表面積は、特に制限されない。触媒金属の良好な分散を容易とする点から、高い比表面積を有するものが好ましい。より具体的には、BET法による比表面積の値が10〜5000m/gのものが好ましく、30〜3000m/gのものがより好ましく、50〜2000m/gのものが特に好ましい。
また、担体の全細孔容積は、特に制限されず、0.05〜10.0ml/gであることが好ましく、0.1〜8.0ml/gであることがより好ましく、0.5〜5.0ml/gであることが特に好ましい。
上記担体の形状は、特に制限されず、公知の形状から適宜選択することが可能である。水素化反応器6の内圧の均一性の点からは、ペレット状、球状、中空円柱状、スポーク車輪状、鱗片状又は平行なフローチャネルを有する蜂の巣状の形のモノリス触媒担体、開放性孔系を有する発泡セラミックが好ましく、製造法の簡便性を考慮すると、ペレット状、球状が特に好ましい。
上記担体は、担体に担持した触媒を触媒層にばら積みした場合、圧力低下が過大になり過ぎることなしに使用でき、かつ、ばら積みの総容量に比べて非常に高い幾何学的表面積を有することが好ましい。このような点から、上記担体は0.5〜5.0mmの範囲の外寸であることが好ましく、1.0〜4.5mmの範囲の外寸であることがさらに好ましい。
酢酸アリルの水素化反応において、反応温度は、低い方が水素化分解反応の抑制が容易なため、好ましい。
水素化反応は、発熱量が極めて大きい(たとえば、酢酸アリル1kgの水素化に伴う発熱量は1180kJである。)ため、酢酸アリルのみを反応させると、その水素化に伴う発熱により、反応系内の温度が著しく上昇し、これが原因となって水素化分解反応が促進する可能性がある。
この極端な温度上昇を抑制するには、酢酸アリルを水素化反応に不活性な溶媒で希釈して、水素化反応を行うことが好ましい。
ここで、「水素化反応に不活性な溶媒」とは、本発明における酢酸アリルの水素化反応に実質的に影響を与えない溶媒をいう。
上記不活性な溶媒で酢酸アリルを希釈する場合、酢酸アリルの濃度は1〜50質量%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは3〜30質量%であり、最も好ましくは5〜15質量%の範囲である。
酢酸アリルの濃度が1質量%未満では、発熱による極端な温度上昇は充分に抑制できるものの、酢酸アリルの濃度が低くなりすぎ、その結果、生産性が低くなる。他方、酢酸アリルの濃度が50質量%を超えると、発熱による極端な温度上昇を充分に抑制することが困難となる。さらに断熱式の液相反応(特に、断熱式の気液二相流の液相反応)を採用した場合は、水素化反応器6内の温度を制御できなくなる(たとえば、水素化反応器6の温度を0〜200℃の好適な範囲に制御できなくなる。)おそれが高くなる。
上記「水素化反応に不活性な溶媒」は、特に制限されず、水素化反応を受けにくいという点から、エチレン性炭素二重結合(C=C結合)を有さない有機溶媒が好ましい。
図1に示すように、水素化反応器6内での水素化反応により生成した酢酸n−プロピル含有液(水素化反応液)の一部を、該有機溶媒(水素化反応器循環液)としてリサイクル使用してもよい。
上記「水素化反応に不活性な溶媒」として具体的には、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソプロピル、プロピオン酸n−プロピル、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、プロピオン酸イソプロピル等の飽和エステル類;シクロヘキサン、n−ヘキサン、n−ヘプタン等の炭化水素類;ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;四塩化炭素、クロロホルム、塩化メチレン、塩化メチル等のハロゲン化炭化水素類;ジエチルエーテル、ジ−n−プロピルエーテル等のエーテル類;エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、sec−ブタノール等のアルコール類;N−メチル−2−ピロリドン、N、N−ジメチルアセトアミド等のアミド類が挙げられる。
これらのなかでも、水素化反応を受けにくく、かつ、酢酸アリルの水素化分解反応を起こしにくいという点から、飽和エステル類、炭化水素類、ケトン類が好ましい。本発明では酢酸n−プロピルが生成するため、この酢酸n−プロピルを溶媒として循環使用することが、溶媒を分離する必要がなく、最も好ましい。
本発明の水素化反応は、気相反応又は液相反応のいずれでも可能である。
気相反応の場合、水素化反応器6の構造形式は、固定層型反応装置、トリクルベッド型反応装置、移動層型反応装置、流動層型反応装置等の使用が可能であり、固定層型反応装置が最も一般的である。
気相反応の場合には、以下のことを考慮することが好ましい。一般に水素化に伴う反応熱は極めて大きい。また、気相反応の場合、水素化反応器6への反応物質の投入温度は、沸点以上に設定される。この場合、空時収率を高くしようとすると、水素化に伴う発熱量が増加し、水素化反応器6内の温度が好適な反応温度(たとえば200℃)を超えて上昇し、副反応である水素化分解反応が加速するおそれがある。この対策として、空時収率を低くして発熱量を抑制する方法、又は冷却などにより温度を制御する方法が挙げられる。
この点、液相反応の場合には、水素化反応器6への反応物質の投入温度を沸点より低くすることができるため、好適な反応温度(たとえば200℃以下)に保ち易いという利点がある。
液相反応の場合における水素化反応器6の構造形式の具体例としては、固定層型、流動層型、撹拌層型等が挙げられる。なかでも、反応後の触媒と生成物の分離の容易性の点から、固定層型反応装置が最も好ましい。
水素化反応では、水素ガスを使用するため、固定層型反応装置を用いた液相反応での流体の流れ方は、原料を含む液体と、水素ガスを含む気体との気液二相流となる。該気液二相流は、原料の気体と液体の流れ方から、気液向流式、気液下向並流式、気液上向並流式の三つの方式に分けられる。本発明では、その何れも使用可能であり、反応に必要な水素と触媒が効率的に接触できる点から、気液下向並流式が最も好ましい。
上述したことを総合すると、水素化分解を抑制しつつ空時収率を高くする点から、水素化反応器6の最も好ましい反応形態は、気液二相流の液相反応であり、その流体の流れ方は気液下向並流式となる。
固定層型反応装置を用いる気液下向並流式の反応形態が用いられる場合には、冷却用ジャケット付き反応器、冷却用ジャケット付きの多管式反応装置、断熱式反応装置等を使用することが好ましい。なかでも、水素化反応器6の建設コストや酢酸アリルの転化率等の点から、断熱式反応装置が好ましい。
上記気液二相流の液相反応を行う場合、上記水素化分解反応を抑制する点から、上述の不活性溶媒で酢酸アリルを希釈した希釈液を反応液として使用して、断熱系の液相反応として水素化反応を行うことが好ましい。その理由は、反応液中の酢酸アリル濃度を低くすることにより、水素化反応器6を冷却する等の措置が必須でなくなるからである。
水素化反応の反応温度は、原料の種類によって異なる場合もあるが、0〜200℃が好ましく、40〜150℃が特に好ましい。反応温度が0℃未満では、充分な反応速度が得られにくくなる傾向があり、200℃を超えると、水素化分解が進行しやすくなる傾向がある。
水素化反応の反応圧力は、気相反応の場合、常圧でも充分な活性が得られる。このため、常圧で実施することが好ましい。しかしながら、酢酸アリルが200℃以下の温度で気化できる程度の加圧であれば、必要に応じて、加圧条件で反応を加速することも可能である。
一方、気液二相流の液相反応の場合、溶存水素濃度を確保する点から、加圧することが好ましい。気液二相流の液相反応で水素化反応器6内の水素濃度を充分に確保する点から、原料の気体と液体の流れ方は、上述したように気液下向並流式が好ましい。
気液二相流の液相反応の場合、反応圧力は0.05〜10MPaGの範囲であることが好ましく、0.3〜5MPaGの範囲であることがより好ましい。
反応圧力が0.05MPaG未満では、水素化反応が充分に促進されにくい傾向があり、他方、反応圧力が10MPaGを超えると、水素化分解反応が起こりやすくなる傾向がある。
上記のなかでも、水素化反応の形態としては、水素化反応器6内の水素濃度を充分に確保できる点から、上述したように気液下向並流式の反応形態が最も好ましい。
上述した本実施形態によれば、水素化工程後の反応液中の酢酸n−プロピルの濃度を、好ましくは99.00質量%以上とすることができ、より好ましくは99.20質量%以上とすることができ、特に好ましくは99.50質量%以上とすることができる。
また、本実施形態によれば、酢酸アリルの転化率を99.99%以上、酢酸1−プロペニルの選択率を0.01%以下、酢酸の選択率を1.00%以下とすることができる。
さらに、反応液中のプロピオン酸プロピルの濃度(質量基準)を、好ましくは3000ppm以下とすることができ、より好ましくは1000ppm以下とすることができ、特に好ましくは500ppm以下とすることができる。
以上説明したように、本発明の酢酸n−プロピルの製造方法によれば、高収率で酢酸n−プロピルを製造できる。
本発明の酢酸n−プロピルの製造方法においては、共存する水の量の少ない高純度の酢酸アリルの水素化反応が行われるため、酢酸アリルの異性化反応による酢酸1−プロペニルの副生、水素化分解反応による酢酸とプロパンの副生が抑制される。
一般的な酢酸アリルの製造方法である、アリルアルコールと酢酸とのエステル化反応、あるいは、プロピレンと酢酸と酸素との酸化的カルボキシル化反応においては、酢酸アリルと水が同時に生成する。
上述したように、本発明者らは検討により、酢酸アリルと同時に生成する水の影響により、酢酸アリルの水素化反応で副反応が生じやすくなり、高収率で酢酸n−プロピルを製造するのが難しくなることをはじめて見出した。
水の濃度と副生物の生成量との関係については必ずしも明確ではないが、たとえばパラジウムを含む触媒(水素化触媒)を用いた場合、共存する水の量によって、酢酸アリルとパラジウム活性点との相互作用が変化する。その結果、以下に示す競争反応である酢酸アリルの水素化反応(主反応)、異性化反応(副反応)及び水素化分解反応(副反応)が起こる割合が変化すること、が推測される。
Figure 0005608403
従来、酢酸アリルの製造で生成する水を取り除くため、蒸留操作のみ、又はデカンターを用いた単純な油水分離の操作と蒸留操作とを組み合わせた方法が用いられているが、不充分である。
これに対し、本発明の酢酸n−プロピルの製造方法は、蒸留操作の前に抽出用溶媒を用いて抽出操作を行う方法であり、さらに、当該抽出用溶媒として不純物である水と同じ水を積極的に用いる。かかる抽出操作の後、蒸留操作を行うことにより、従来に比べて、共存する水の量の格段に少ない高純度の酢酸アリルが得られる。
そして、この高純度の酢酸アリルの水素化反応では、共存する水の量が少ないため、副反応(異性化反応、水素化分解反応)がほとんど起こらない、と考えられる。その結果、高収率で酢酸n−プロピルを製造できる。
また、抽出用溶媒は水であることから、抽出工程で発生した廃液は主に水と酢酸と酢酸アリルである。この排水処理は容易で環境負荷も低く、かかる抽出操作は簡便な方法である。
本発明の酢酸n−プロピルの製造方法は、図1に示した製造方法に限定されず、たとえば酢酸アリルと沸点が近く、かつ、酢酸アリルより沸点の高いアクリル酸アリル等の不純物が含まれる場合には、前記第二の蒸留工程と、前記水素化工程との間に、前記第二の蒸留工程で得られた前記留出液(Y)をさらに蒸留する第三の蒸留工程を有することが好ましい。第三の蒸留工程を有することにより、酢酸アリルよりも沸点の高い高沸点成分を除去して、より高純度の酢酸アリルを得ることができる。
[第三の蒸留工程]
第三の蒸留工程では、第二の蒸留工程で得られた前記留出液(Y)を、第三の蒸留塔に供給してさらに蒸留を行い、蒸留塔の塔頂から高純度の酢酸アリルを含有する留出液(Z)を得るとともに、塔底から酢酸アリルよりも沸点の高い高沸点成分(アクリル酸アリル等)を除去する。
第三の蒸留工程における蒸留条件は、比較的沸点の高い物質を扱うことから、蒸留塔のトップ圧力を0〜200kPaGとすることが好ましく、0〜50kPaGとすることがより好ましく、ボトム圧力を20〜220kPaGとすることが好ましく、20〜70kPaGとすることがより好ましい。
蒸留塔のトップ温度は100〜130℃とすることが好ましく、100〜110℃とすることがより好ましく、ボトム温度は110〜145℃とすることが好ましく、110〜120℃とすることがより好ましい。
還流比は0.5〜3とすることが好ましく、1.5〜2とすることがより好ましく、蒸発率は80質量%以上とすることが好ましく、90質量%以上とすることがより好ましい。
第三の蒸留工程を有することにより、アクリル酸アリルおよび酢酸の濃度(質量基準)がそれぞれ、好ましくは10ppm程度以下、より好ましくは5ppm程度以下の留出液(Z)を得ることができる。
留出液(Z)を水素化反応に用いることにより、より高収率で酢酸n−プロピルを製造できる。また、プロピオン酸プロピルの副生も抑制できる。
第三の蒸留工程を有する場合、水素化工程における水素化反応後の反応液中、副生するプロピオン酸プロピルの濃度(質量基準)を10ppm程度以下とすることができ、好ましくは5ppm程度以下とすることができる。
本発明の酢酸n−プロピルの製造方法において、酢酸アリルと水を含有する原料液としては、上述したように、たとえば方法(1)〜(3)によって調製されるものが挙げられる。なかでも、簡便な装置で安価に効率良く原料液を調製できる点から、方法(1)、方法(2)が好ましい。
そのなかでも、本発明の酢酸n−プロピルの製造方法においては、安価に効率良く原料液を調製できる点から、方法(1)が特に好ましく、すなわち、抽出工程の前段側に、プロピレンと酢酸と酸素ガスを原料とする酸化的カルボキシル化反応により前記原料液を調製する原料液調製工程を有することが好ましい。
[原料液調製工程]
図2は、原料液調製工程の一実施形態を示す概略工程図であり、前記方法(1)により原料液を調製する場合について示している。
本実施形態の原料液調製工程は、プロピレンと酢酸と酸素ガスを原料として酸化的カルボキシル化反応を行う反応器7と、当該酸化的カルボキシル化反応により得られたガス成分を、凝縮液と非凝縮ガスとに分離する気液分離器8とを備えている。
本実施形態では、原料液調製工程で得られた原料液は油水分離工程(1)へ送られ、一方、非凝縮ガスは反応器7へ返送されて再利用されている。
以下、方法(1)について説明する。
方法(1)で用いるプロピレンは、特に制限はなく、プロパン、エタン等の低級飽和炭化水素が混入していてもよいが、高純度のプロピレンを用いることが好ましい。
酸素ガス(O)は、特に制限はなく、窒素ガス、炭酸ガス等の不活性ガスで希釈されていてもよく、たとえば空気であってもよい。ただし、反応生成ガスを循環させる場合には、高純度の酸素ガス、特に99vol%以上の純度の酸素ガスを用いるのが好ましい。
酸化的カルボキシル化反応においては触媒を用いることが好ましい。触媒としては、プロピレンと酢酸と酸素ガスとを反応させて酢酸アリルが得られるものであればよく、パラジウム、銅、鉛、金、ルテニウム、アルカリ金属酢酸塩及びアルカリ土類金属酢酸塩から選ばれる少なくとも一種を含有する担持型固体触媒を用いることが好ましい。
担持型固体触媒の調製方法としては、パラジウム塩などの成分と、銅塩などの成分との水溶液を担体に含浸した後、アルカリ金属塩の水溶液で処理(以下この処理を「アルカリ処理」という。)する含浸法などが挙げられる。その際、当該水溶液が含浸した担体を乾燥することなくアルカリ処理することが好ましい。アルカリ処理の時間は、担体に含浸した当該水溶液中の成分(触媒成分の金属塩)が、水に不溶な化合物に完全に変換されるのに必要な時間とすることが好ましく、通常20時間程度であればよい。
次に、アルカリ処理により担体の表面層に存在するようになった触媒成分の金属塩を、還元剤で処理し、0価の金属とする。該還元剤での処理は、たとえばヒドラジン又はホルマリン等の還元剤の添加により、液相において行われる。その後、当該担体を塩素イオン等が検出されなくなるまで水洗し、乾燥後、アルカリ金属酢酸塩を担持させて、さらに乾燥する。以上のような方法により担持型固体触媒を調製できる。
上記担持型固体触媒における担体は、特に制限されず、一般に担体として用いられている多孔質物質であればよい。好ましくはシリカ、アルミナ、シリカ−アルミナ、珪藻土、モンモリロナイト、チタニア等が挙げられ、より好ましくはシリカである。また、担体の形状には、特に制限はなく、具体的には粉末状、球状、ペレット状等が挙げられる。
プロピレンと酢酸と酸素ガスを原料とする酸化的カルボキシル化反応は、所定の反応器7内で行われる。
触媒の存在下で、プロピレンと酢酸と酸素ガスとの反応を行う際の反応形式は、従来公知の反応形式を選ぶことができる。一般には、用いる触媒に最適な反応形式があり、その反応形式で行うことが好ましい。
触媒として前記担持型固体触媒を用いる場合は、担持型固体触媒を反応器に充填して触媒充填層を形成した固定床流通反応を採用することが実用上有利である。
反応器7の材質については、特に制限はなく、耐食性を有する材料で構成された反応器であることが好ましい。
酢酸アリルを製造する際の反応温度は、100〜300℃であることが好ましく、120〜250℃であることがより好ましい。
反応圧力は、特に制限はなく、設備の点から0.0〜3.0MPaGであることが実用上有利であり、より好ましくは0.1〜1.5MPaGである。
原料として用いる反応原料ガスは、プロピレンと酢酸と酸素ガスを含み、さらに必要に応じて窒素、二酸化炭素、希ガスなどを希釈剤として使用することができる。
反応原料ガス全量に対して、酢酸は4〜20vol%が好ましく、6〜10vol%がより好ましく、プロピレンは5〜50vol%が好ましく、10〜40vol%がより好ましい。
プロピレンと酢酸と酸素ガスとの混合比率は、モル比で、酢酸1モルに対してそれぞれ、プロピレンは0.25〜13モルが好ましく、1〜7モルがより好ましく、酸素ガスは0.15〜4モルが好ましく、0.5〜2モルがより好ましい。
反応原料ガスについては、標準状態において、空間速度が、好ましくは10〜15000hr−1、特に好ましくは300〜8000hr−1で触媒充填層に通すのが好ましい。
反応器7内での酸化的カルボキシル化反応により得られたガス成分は、冷却されたのち気液分離器8へ送られ、凝縮液と非凝縮ガスとに分離される。
凝縮液には、酢酸アリルと水に加えて酢酸などが含まれている。
非凝縮ガスには、プロピレン、酸素ガス、炭酸ガスが主成分として含まれている。
なお、気液分離器8は、酢酸と水を吸収液とする吸収塔であってもよく、その場合、吸収塔で処理して得られる吸収液は、凝縮液と合わせて原料液とされる。
そして、酢酸アリルと水を含有する原料液は、気液分離器8の底部から油水分離工程(1)へ送られる。一方、非凝縮ガスは、気液分離器8の底部と対向する側から反応器7へ返送されて再利用される。
以下、アリルアルコールとカルボン酸とのエステル化反応により原料液を調製する方法(2)について説明する。
たとえばカルボン酸として酢酸を用いた酢酸アリルの製造方法は、従来公知の方法で行うことが可能である。
すなわち、アリルアルコールと酢酸を反応器に加え、撹拌をしながら数時間加熱することにより酢酸アリルを製造することができる。一般的に、反応速度を高めるため、アリルアルコールと酢酸に加えて、触媒として作用する酸性物質を添加することが有効である。
酸性物質としては、特に制限されず、鉱酸、有機酸、固体酸などが挙げられる。なかでも、入手容易性、取扱いの簡便性の観点から、塩酸、硫酸、ヘテロポリ酸、イオン交換樹脂などが好ましい。
反応の形式については、特に制限はなく、液相、気相の何れでも可能であり、また、連続操作、バッチ操作の何れでも構わない。
一般的な方法としては、強酸性イオン交換樹脂を充填した反応器に、アリルアルコールと酢酸との混合物を供給して加熱する方法が挙げられる。この方法により、反応器出口から、原料液として酢酸アリル、水、酢酸及びアリルアルコールの混合物が得られる。
エステル化の反応圧力、反応温度については、特に制限はなく、一般的には反応圧力が0〜5.0MPaG、反応温度が20〜200℃である。
また、本発明の酢酸n−プロピルの製造方法においては、水素化工程の後段側に、水素化工程で得られる酢酸n−プロピルを精製する精製工程を有していてもよい。
具体的には、水素化反応後の反応液の一部又は全量を、第四の蒸留塔に供給して蒸留を行い、塔底から高沸点成分(酢酸、プロピオン酸プロピル等)を除去し、塔頂から低沸点成分(プロパンガス、プロピオンアルデヒド、水分等)を除去することにより、第四の蒸留塔の塔中段から高純度の酢酸n−プロピルが得られる。
精製工程における蒸留条件は、高沸点成分と酢酸n−プロピルと低沸点成分とを分離する目的から、蒸留塔のトップ圧力を0〜150kPaGとすることが好ましく、20〜100kPaGとすることがより好ましく、ボトム圧力を40〜190kPaGとすることが好ましく、60〜130kPaGとすることがより好ましい。
蒸留塔のトップ温度は90〜130℃とすることが好ましく、100〜130℃とすることがより好ましく、ボトム温度は120〜160℃とすることが好ましく、130〜140℃とすることがより好ましい。
還流比は300〜800とすることが好ましく、400〜600とすることがより好ましく、蒸発率は0.5質量%以上とすることが好ましく、1質量%以上とすることがより好ましい。
<酢酸n−プロピルの製造方法(2)>
本発明の第二の態様である酢酸n−プロピルの製造方法(2)は、酢酸アリルと濃度(質量基準)100ppm以下の水とを含有する原料に対して水素化反応を行う方法である。
酢酸アリルと濃度(質量基準)100ppm以下の水とを含有する原料は、たとえば、上述した図1に示す実施形態(油水分離工程(1)、抽出工程、第一の蒸留工程、油水分離工程(2)、第二の蒸留工程)により調製することができる。
水素化反応は、上述した水素化工程における水素化反応と同様にして行えばよい。
<酢酸アリルの製造方法>
本発明の酢酸アリルの製造方法は、プロピレンと酢酸と酸素ガスを原料とする酸化的カルボキシル化反応を行う反応工程と、前記反応工程で得られた反応混合物に対して、水を抽出用溶媒とする抽出操作を行い、油相と水相とに分離する抽出工程と、前記油相を蒸留する蒸留工程とを有する。
前記反応工程は、たとえば、上述した方法(1)と同様にして行えばよい。
当該酢酸アリルの製造方法における抽出工程と蒸留工程は、上述した抽出工程と蒸留工程(第一の蒸留工程、第二の蒸留工程)と同様にして行えばよい。好ましくは、反応工程と抽出工程との間に、油水分離工程(1)を有する。また、好ましくは、第一の蒸留工程と第二の蒸留工程との間に、油水分離工程(2)を有する。
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
以下の実施例において、油相及び留出液の組成は下記の方法により分析した。酢酸アリルの転化率と、酢酸1−プロペニル及び酢酸の選択率は、下記数式より算出した。
[油相及び留出液の組成の分析]
油相及び留出液の組成は、ガスクロマトグラフィー(GC)により求めた。その際の測定条件を以下に示す。分析値は断りのない限り、質量基準のppm、%で示した。
(GC条件)
機器:GC−17A(島津製作所製)
検出器:水素炎イオン化検出器
測定方法:内部標準法、内部標準物質として1,4−ジオキサンを用いた。
インジェクション温度:200℃
昇温条件:40℃で10分間保持し、その後5℃/分で昇温し、200℃で30分間保持した。
使用カラム:TC−WAX(GL Science Inc.製)、内径0.25mm、膜厚0.25μm、長さ30m。
[酢酸アリルの転化率]
酢酸アリルの転化率(%)=(水素化反応で消費された酢酸アリルのモル数)/(水素化反応器に供給された酢酸アリルのモル数)×100
[酢酸1−プロペニル及び酢酸の選択率]
化合物Aの選択率(%)=(水素化反応で生成した化合物Aのモル数)/(水素化反応で消費された酢酸アリルのモル数)×100
式中、化合物Aとは、酢酸1−プロペニル又は酢酸のいずれか一方を示す。
(実施例1)
原料液調製工程:
含浸法により、パラジウム5.0g、銅0.66g及び酢酸カリウム52gを、5.0mm球のシリカ担体に担持した触媒1リットルを調製した。
この触媒10.5mlをシリカ担体31.5mlで均一に希釈した後、反応器(SUS316L製、内径25mm)に充填した。
反応温度135℃、反応圧力0.8MPaG(ゲージ圧)の条件下、反応原料ガス(プロピレン:酸素ガス:酢酸:水:窒素ガスの容積比=29:6:7.1:19:38.9の割合で混合したガス)を、空間速度2070hr−1にて反応器に導入して触媒充填層を通過させることにより、酸化的カルボキシル化反応を行った。
次いで、触媒充填層を通過したガス成分を気液分離器(酢酸と水を吸収液とする吸収塔)へ送り、当該ガス成分の全量を冷却した。そして、当該ガス成分のうち、凝縮した凝縮液を回収し、非凝縮ガスについては吸収塔で処理し、この処理により得られた吸収液は凝縮液と合わせて原料液とした。
油水分離工程(1):
原料液調製工程で得られた原料液100質量部をデカンターに供給し、40分間の滞留時間を経て、油相(A1)43質量部と水相(A1)57質量部との二相に分離した。
抽出工程:
次に、油相(A1)43質量部を抽出塔の塔底から、抽出用溶媒として水26質量部を抽出塔の塔頂からそれぞれ供給し、抽出塔内で油相(A1)と水とを15分間接触させることにより、酢酸アリルを主成分とする油相(B1)25質量部と、水を主成分とする水相(B1)44質量部とに分離した。そして、塔頂から油相(B1)を得るとともに、塔底から水相(B1)を除去した。
第一の蒸留工程:
次に、油相(B1)25質量部を、第一の蒸留塔に供給し、トップ圧力50kPaG、ボトム圧力55kPaG、トップ温度98℃、ボトム温度130℃、還流比0.14、蒸発率90質量%の条件で蒸留を行い、蒸留塔の塔頂から酢酸アリルを主成分とする留出液(X1)を得るとともに、塔底から水と酢酸等を除去した。
油水分離工程(2):
次に、留出液(X1)をデカンターに供給し、滞留時間15分間で油相(C1)22質量部と水相(C1)3質量部との二相に分離した。油相(C1)はその全量を次工程に送り込み、水相(C1)はその全量を第一の蒸留塔に返送し、再利用した。
第二の蒸留工程:
次に、油相(C1)22質量部を、第二の蒸留塔に供給し、トップ圧力130kPaG、ボトム圧力140kPaG、トップ温度116℃、ボトム温度135℃、還流比22、蒸発率5.1質量%の条件で蒸留を行い、蒸留塔の塔底から酢酸アリルを主成分とする留出液(Y1)21質量部を得た。
得られた留出液(Y1)中の水の濃度(濃度は全て質量基準、以下同じ。)は27ppm、酢酸アリルの濃度は99.62質量%、酢酸の濃度は260ppm、アクリル酸アリルの濃度は1100ppmであった。
水素化工程:
次いで、前記留出液(Y1)に対して水素化反応を以下のようにして行った。
内径25mmのSUS316L製円筒型反応器(水素化反応器)に、水素化触媒として、破砕状活性炭を触媒担体とするNEケムキャット社製0.3質量%パラジウムカーボン粒触媒35mlを充填した。水素化反応器内を水素置換した後、水素雰囲気下で0.8MPaGまで昇圧した。
次に、水素化反応器に、前記の第二の蒸留工程で得られた留出液(Y1)5.0質量%と酢酸n−プロピル95.0質量%とからなる原料液を156ml/hr、水素ガスを2.1L/hrの速度で、40℃下、下向並流操作により供給して酢酸アリルの水素化反応を行い、酢酸n−プロピルを得た。
得られた酢酸n−プロピルについて、酢酸アリルの転化率は99.8%、酢酸n−プロピルの選択率は99.49%、酢酸1−プロペニルの選択率は0.25%、酢酸の選択率は0.26%、酢酸n−プロピルの収率は99.29%であった。また、得られた反応液中のプロピオン酸プロピル濃度は56ppmであった。
(実施例2)
第三の蒸留工程:
実施例1における第二の蒸留工程で得られた留出液(Y1)21質量部を、第三の蒸留塔に供給し、トップ圧力5kPaG、ボトム圧力45kPaG、トップ温度105℃、ボトム温度135℃、還流比1.7、蒸発率96質量%の条件で蒸留を行い、蒸留塔の塔頂から高純度の酢酸アリルを含有する留出液(Z1)を得た。
得られた留出液(Z1)中の水の濃度は30ppm、酢酸アリルの濃度は99.74質量%、酢酸の濃度は5ppm未満、アクリル酸アリルの濃度は5ppm未満であった。
水素化工程:
次いで、前記留出液(Z1)に対して水素化反応を実施例1と同様にして行い、酢酸n−プロピルを得た。
得られた酢酸n−プロピルについて、酢酸アリルの転化率は99.9%、酢酸1−プロペニルの選択率は0.21%、酢酸の選択率は0.25%、酢酸n−プロピルの収率は99.97%であった。また、得られた反応液中のプロピオン酸プロピル濃度は5ppm未満であった。
(比較例1)
実施例1で得られた油相(A1)を、蒸留塔に供給して蒸留を行い、蒸留塔の中段から、酢酸アリルを含有する留出液(α)を得た。
得られた留出液(α)中の水の濃度は2860ppm、酢酸アリルの濃度は99.24質量%、酢酸の濃度は270ppm、アクリル酸アリルの濃度は1630ppmであった。
次いで、前記留出液(α)に対して水素化反応を実施例1と同様にして行い、酢酸n−プロピルを得た。
得られた酢酸n−プロピルについて、酢酸アリルの転化率は97.1%、酢酸1−プロペニルの選択率は4.3%、酢酸の選択率は0.56%、酢酸n−プロピルの収率は93.47%であった。また、得られた反応液中のプロピオン酸プロピル濃度は83ppmであった。
(比較例2)
比較例1で得られた留出液(α)を、さらに蒸留塔に供給して蒸留を行い、蒸留塔の塔底から、酢酸アリルを含有する留出液(β)を得た。
得られた留出液(β)中の水の濃度は282ppm、酢酸アリルの濃度は99.49質量%、酢酸の濃度は300ppm、アクリル酸アリルの濃度は1700ppmであった。
次いで、前記留出液(β)に対して水素化反応を実施例1と同様にして行い、酢酸n−プロピルを得た。
得られた酢酸n−プロピルについて、酢酸アリルの転化率は98.5%、酢酸1−プロペニルの選択率は2.3%、酢酸の選択率は0.33%、酢酸n−プロピルの収率は96.56%であった。また、得られた反応液中のプロピオン酸プロピル濃度は87ppmであった。
表1に、油相(A1)、油相(B1)、油相(C1)、留出液(Y1)、留出液(Z1)、留出液(α)、留出液(β)について組成の分析を行った結果を示す。
表2に、各例の水素化反応後に得られる反応液についての評価結果を示す。
Figure 0005608403
表1の結果から、本発明における留出液(Y1)、留出液(Z1)は、いずれも、水の濃度が50ppm未満と低く、かつ、酢酸アリルの濃度が99.6質量%以上と高いことより、本発明によれば、高純度の酢酸アリルが得られることが分かる。
また、本発明において第三の蒸留工程をさらに有することにより、アクリル酸アリルと酢酸をほとんど含まない酢酸アリルが得られることが分かる。
さらに、デカンターを用いた油水分離操作と、水を抽出用溶媒とする抽出操作とを組み合わせることにより、油水分離操作だけの場合に比べて、油相に含まれる水の濃度を約6倍以下に(12.9質量%から1.9質量%へ)低減できることが分かる。
Figure 0005608403
表2の結果から、実施例1、2の製造方法は、酢酸n−プロピルの収率が99質量%以上と高いことより、本発明によれば、高収率で酢酸n−プロピルを製造できることが分かる。
また、実施例1、2の製造方法においては、比較例の製造方法に比べて、酢酸アリルの転化率が高く、酢酸1−プロペニルの選択率、酢酸の選択率及び反応液中のプロピオン酸プロピル濃度のいずれも低いことが分かる。このことから、酢酸アリルと同時に生成する水が、酢酸アリルの水素化反応における不純物の副生に影響している、と云える。
1 油水分離装置
2 抽出塔
3 第一の蒸留塔
4 油水分離装置
5 第二の蒸留塔
6 水素化反応器
7 反応器
8 気液分離器

Claims (7)

  1. 酢酸アリルと水を含有する原料液に対して、水を抽出用溶媒とする抽出操作を行い、酢酸アリルを主成分とする油相(B)と、水を主成分とする水相(B)とに分離する抽出工程と、
    前記油相(B)を蒸留して、酢酸アリルを主成分とする留出液(X)を得る第一の蒸留工程と、
    前記留出液(X)を、油相(C)と水相(C)とに分離する油水分離工程と、
    前記油相(C)を蒸留して、酢酸アリルを主成分とする留出液(Y)を得る第二の蒸留工程と、
    前記留出液(Y)に対して水素化反応を行う水素化工程と
    を有する酢酸n−プロピルの製造方法。
  2. 前記水相(C)を、前記第一の蒸留工程に返送する請求項に記載の酢酸n−プロピルの製造方法。
  3. 前記第二の蒸留工程と前記水素化工程との間に、前記留出液(Y)をさらに蒸留する第三の蒸留工程を有する請求項又は請求項に記載の酢酸n−プロピルの製造方法。
  4. 前記抽出工程の前段側に、プロピレンと酢酸と酸素ガスを原料とする酸化的カルボキシル化反応により前記原料液を調製する原料液調製工程を有する請求項1〜のいずれか一項に記載の酢酸n−プロピルの製造方法。
  5. 前記水素化反応に用いる留出液中の水の濃度(質量基準)が1000ppm以下である請求項1〜のいずれか一項に記載の酢酸n−プロピルの製造方法。
  6. 前記水素化反応に用いる留出液中の水の濃度(質量基準)が100ppm以下である請求項に記載の酢酸n−プロピルの製造方法。
  7. 前記水素化反応には、白金、パラジウム、ロジウム、ルテニウム及びニッケルから選ばれる少なくとも一種を含む触媒を用いる請求項1〜のいずれか一項に記載の酢酸n−プロピルの製造方法。
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