JP5605120B2 - チューナブルデバイス用誘電体セラミックス - Google Patents

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Description

本発明は、チューナブルデバイス用誘電体セラミックスに関し、さらに詳しくは、直流バイアス電界による比誘電率の変化を信号処理に積極的に利用する各種チューナブルデバイスに用いられるチューナブルデバイス用誘電体セラミックスに関する。
誘電体は、電界を加えると誘電分極を生じる物質である。誘電体は、コンデンサ、メモリー、フィルタ、アンテナ、共振器などに利用されている。誘電体には、一般に、用途に応じた大きさの比誘電率、低い誘電損失、低い共振周波数の温度依存性、低い比誘電率の温度依存性などが求められる。また、誘電体は、ある種の用途(例えば、スイッチング用途)においては、低い比誘電率の印加電界依存性が求められる場合もある。
一方、これまでにペロブスカイト型結晶構造の強誘電体であるチタン酸バリウム(BaTiO3)やチタン酸鉛(PbTiO3)に、常誘電体であるチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)を固溶させたチタン酸バリウムストロンチウム((Ba、Sr)TiO3)やチタン酸鉛ストロンチウム((Pb、Sr)TiO3)について、直流バイアス電界下での非線形な誘電率変化が報告されている。また、このような印加電界によって比誘電率を大きく変化させることが可能な特性(チューナブル特性)を利用したチューナブルデバイスも提案されている。
このような各種誘電体の組成及びその用途に関し、従来から種々の提案がなされている。
例えば、特許文献1には、aATiO3−bNaNbO3(AはCa、Srのいずれか1種又は2種)で表され、0.03≦a≦0.170、0.83≦b≦0.970、a+b=1を満足し、かつ、ATiO3成分とNaNbO3成分が固溶体を形成している誘電体磁器組成物が開示されている。
同文献には、組成範囲を上記の範囲にすることにより、誘電率を170〜1400の範囲内で調整でき、共振周波数の温度係数τfを−650〜−1800ppm/Kの範囲で調整できる点が記載されている。
また、特許文献2には、イオン注入により、誘電体層の境界面の全面にウェル領域を形成したキャパシタ素子と、ウェル領域が形成されていない誘電体層を備えたキャパシタ素子とを並列接続させた薄膜積層デバイスが開示されている。
同文献には、
(1)ウェル領域が形成されていないキャパシタ素子は、キャパシタンスの最大値がゼロVにあるのに対し、ウェル領域が形成されたキャパシタ素子は、C−V曲線が電圧軸に関しプラス方向にシフトする点、及び、
(2)これらのキャパシタ素子を並列接続すると、キャパシタンスの最大値が電圧軸に関しプラス方向にシフトし、かつ、C−V曲線の幅が増大し、広い電圧範囲で安定したキャパシタンスが得られる(すなわち、キャパシタンスの電圧依存性が小さい)点
が記載されている。
また、非特許文献1には、(Bi、Zn)2(Zn、Nb)27系パイロクロア型誘電体を用いたチューナブルデバイスが報告されている。
さらに、非特許文献2〜5には、NaNbO3−SrTiO3、及び、NaNbO3−CaTiO3の無バイアス電界下でのkHz帯における誘電特性が報告されている。
マイクロ波やミリ波で使用されるチューナブルデバイスには、高いQ・f値と、直流バイアス電界に対する大きな比誘電率の変化、さらに比誘電率の温度に対する安定性が望まれる。
ここで、Q・f値は、誘電損失の逆数に共振周波数を乗じた値であり、Q・f値が高いほど、誘電損失が低いことを示す。
(Ba、Sr)TiO3や(Pb、Sr)TiO3は、直流バイアス電界に対して大きな比誘電率変化を示す。一方、これらの材料は、同時に比誘電率の温度依存性も大きな値を示す。従って、これらの材料においては、比誘電率の温度依存性を改善するために、温度係数の絶対値が小さい低誘電率化合物(例えば、MgO、Al23など)の添加が行われる。しかしながら、この方法では、直流バイアス電界に対する比誘電率の変化量も同時に大きく低下するという問題がある。
また、固相反応プロセスで(Ba、Sr)TiO3や(Pb、Sr)TiO3の焼結体を作製する場合、1400℃程度の焼結温度が必要となる。さらに、(Pb、Sr)TiO3については、原材料に鉛を含むため、環境上、好ましくない。
ペロブスカイト型化合物の一種であるAg(Nb、Ta)O3は、比較的高いQ・f値を示すチューナブル誘電体として提案されているが、直流バイアス電界に対する比誘電率変化は、比較的小さい。また、この材料は、原料に貴金属元素を使っているため、製造コストが高いという問題がある。
一方、ある種のパイロクロア型化合物もまた、チューナブル特性を示すことが知られている。しかしながら、パイロクロア型化合物は、ペロブスカイト型化合物に比べて、バイアス電界に対する比誘電率変化が小さいという問題がある。
ところで、強誘電体は、直流バイアス電界に対して高い比誘電率変化を示す。(Ba、Sr)TiO3や(Pb、Sr)TiO3系のチューナブルデバイスは、BaTiO3やPbTiO3などの強誘電相が示す高いチューナブル特性を利用したものである。
一方、強誘電体と自由エネルギーが近い相状態として、反強誘電体が挙げられる。反強誘電体においても、強誘電体と同様に常誘電体を固溶させることで、バイアス電界に対する高い比誘電率変化を示すことが期待される。しかしながら、反強誘電体であるNaNbO3をベースとするチューナブルデバイス用誘電体セラミックスが提案された例は、従来にはない。
特開2009−234888号公報 特開2004−031408号公報
Thin Solid Films, 419, 183-188(2002) J.Am.Ceram.Soc., 43, 348-353(1960) Chem.Mater., 16, 5370-5376(2006) J.Am.Ceram.Soc., 90, 2122-2127(2007) Bulltein of the Academy of Science of the U.S.S.R. Physical Series, 22, 1486-1489(1058)
本発明が解決しようとする課題は、直流バイアス電界に対する比誘電率変化が大きく、比誘電率の温度依存性が小さく、幅広い周波数域における誘電損失が小さく、しかも、低温焼結が可能なチューナブルデバイス用誘電体セラミックスを提供することにある。
また、本発明が解決しようとする他の課題は、環境負荷元素を含まず、しかも、低コストなチューナブルデバイス用誘電体セラミックスを提供することにある。
上記課題を解決するために本発明に係るチューナルブルデバイス用誘電体セラミックスは、以下の構成を備えていることを要旨とする。
(a)前記チューナブルデバイス用誘電体セラミックスは、(1)式で表される組成を有する。
(1−x−y)NaNbO3−xSrTiO3−yCaTiO3 ・・・(1)
但し、0≦x<1、0≦y<1、0<x+y<1。
x及びyは、0≦x≦0.2、0≦y≦0.2、0<x+y≦0.2が好ましい。
(b)前記x及びyは、(x、y)=(0、0.15)、(0.09、0.06)、(0.04、0.06)、(0、0.10)の4点で囲まれる領域内(境界線上を含む)にある。
反強誘電体であるNaNbO3に常誘電体であるSrTiO3及び/又はCaTiO3を固溶させると、誘電損失(又は、Q・f値)、比誘電率、直流バイアス電界に対する比誘電率の変化率、比誘電率の温度依存性、及び、比誘電率の周波数依存性のいずれか1以上の特性が向上する。
また、反強誘電体をベースとする本発明に係るチューナブルデバイス用誘電体セラミックスは、強誘電体をベースとする誘電体セラミックスと異なり、高周波域も含めて、幅広い周波数に対して低い誘電損失を示す。
さらに、NaNbO3は難焼結性材料であるが、これにSrTiO3及び/又はCaTiO3を固溶させると、焼結温度を低下させることができる。しかも、上述した諸特性を得るために、環境負荷元素や高価な貴金属元素を添加する必要もない。
(1−x−y)NaNbO3−xSrTiO3−yCaTiO3の好ましい組成を示す図である。 図2(a)は、誘電体セラミックスを用いた容量素子の第1の具体例を示す断面図である。図2(b)は、誘電体セラミックスを用いた容量素子の第2の具体例を示す平面図である。図2(c)は、チューナブルデバイスの回路の一例を示す図である。
以下に、本発明の一実施の形態について詳細に説明する。
[1. チューナブルデバイス用誘電体セラミックス]
[1.1. 組成]
本発明に係るチューナブルデバイス用誘電体セラミックス(以下、単に「誘電体セラミックス」ともいう)は、(1)式で表される組成を有する。
(1−x−y)NaNbO3−xSrTiO3−yCaTiO3 ・・・(1)
但し、0≦x<1、0≦y<1、0<x+y<1。
(1)式中、xは、誘電体セラミックスに含まれるSrTiO3のモル分率を表す。yは、誘電体セラミックスに含まれるCaTiO3のモル分率を表す。誘電体セラミックスは、SrTiO3又はCaTiO3のいずれか一方を含んでいても良く、あるいは、双方を含んでいても良い。
(1)式の中でも、x及びyは、(1.1)式の関係を満たしているのが好ましい。
0≦x≦0.2、0≦y≦0.2、0<x+y≦0.2 ・・・(1.1)
(1.1)式を満たす誘電体セラミックスは、誘電損失(又は、Q・f値)、比誘電率、直流バイアス電界に対する比誘電率の変化率、比誘電率の温度安定性、及び、比誘電率の周波数依存性のいずれか1以上に関し、優れた特性を示す。
具体的には、(1.1)式を満たす誘電体セラミックスは、
(a)後述する比誘電率電界変化率の絶対値が0.3%以上となる、
(b)kHz帯からGHz帯にかけて、比誘電率の周波数依存性が小さい、
(c)高周波域で低い誘電損失(高いQ・f値)を示す、
(d)1300℃以下の焼結温度で、緻密に焼結可能である
という利点がある。
x及びyは、特に、(x、y)=(0、0.15)、(0.09、0.06)、(0.04、0.06)、(0、0.10)の4点で囲まれる領域内(境界線上を含む)にあるのが好ましい(図1参照)。
x及びyが図1に示すハッチング領域内にある誘電体セラミックスは、1%以上の比誘電率電界変化率を示す。比誘電率電界変化率については、後述する。
x及びyは、さらに、(x、y)=(0.09、0.06)、( 0.04、0.06)、(0.05、0.10)の3点で囲まれる領域内(境界線上を含む)にあるのが好ましい。
x及びyがこのような領域内にある誘電体セラミックスは、1.0%以上の比誘電率電界変化率と、100GHz以上のQ・f値を同時に示すという利点がある。
[1.2. 結晶構造]
NaNbO3は、ペロブスカイト型結晶構造を取る反強誘電体である。一方、SrTiO3及びCaTiO3は、いずれもペロブスカイト型結晶構造を取る常誘電体である。
本発明に係る誘電体セラミックスは、NaNbO3に所定量のSrTiO3及び/又はCaTiO3を固溶させたものであり、x及びyによらず、ペロブスカイト型結晶構造を取る。
[1.3. 誘電特性]
[1.3.1. 比誘電率]
誘電体セラミックスの比誘電率は、x及びyに依存し、x及びyの値に応じて、約150〜2100の範囲で制御することができる。一般に、比誘電率が大きくなるほど、直流バイアス電界に対する比誘電率変化の絶対量は大きくなるが、これと同時に誘電損失も大きくなる。従って、比誘電率は、他の誘電特性とのバランスが最も良好となるように選択するのが好ましい。
[1.3.2. 比誘電率電界変化率(チューナビリティ)]
「比誘電率電界変化率」とは、直流バイアス電界に対する比誘電率の変化率をいい、具体的には、(2)式で表される値をいう。
比誘電率電界変化率(%)=(εr0−εr1)×100/εr0 ・・・(2)
但し、εr0は、直流バイアス電界0kV/cmでの比誘電率、
εr1は、直流バイアス電界10kV/cmでの比誘電率。
本発明に係る誘電体セラミックスは、チューナブル特性を持つ。本発明において、「チューナブル特性」とは、室温、周波数100kHzの条件下において、(2)式で表される比誘電率電界変化率の絶対値が0.1%以上であることをいう。一般に、比誘電率電界変化率の絶対値が大きくなるほど、比誘電率の変化量の絶対値が大きくなるので、比誘電率の変化を信号処理に利用するのが容易化する。
比誘電率電界変化率は、x及びyの値に依存する。x及びyを最適化すると、室温、周波数100KHzにおける比誘電率電界変化率の絶対値が0.3%以上である誘電体セラミックスが得られる。x及びyをさらに最適化すると、比誘電率電界変化率の絶対値が0.5%以上、0.7%以上、0.9%以上、あるいは、1.5%以上である誘電体セラミックスが得られる。
[1.3.3. Q・f値(誘電損失)]
Q・f値は、誘電損失の逆数に共振周波数を乗じた値であり、Q・f値が高いほど、誘電損失が低いことを示す。
Q・f値は、x及びyの値に依存する。x及びyを最適化すると、Q・f値が50GHz以上である誘電体セラミックスが得られる。x及びyをさらに最適化すると、Q・f値が100GHz以上である誘電体セラミックスが得られる。
[1.3.4. 比誘電率周波数変化率]
「比誘電率周波数変化率」とは、誘電体セラミックスに印加される高周波電流の周波数に対する比誘電率の変化率をいい、具体的には、(3)式で表される値をいう。
比誘電率周波数変化率(%)=(εr2−εr3)×100/εr2 ・・・(3)
但し、εr2は、周波数100kHzでの比誘電率、
εr3は、周波数1GHzでの比誘電率。
一般に、比誘電率周波数変化率の絶対値が小さくなるほど、幅広い周波数に対する回路素子として使用できるという利点がある。
比誘電率周波数変化率は、x及びyの値に依存する。x及びyを最適化すると、室温、無バイアスの条件下において、比誘電率周波数変化率の絶対値が相対的に小さい誘電体セラミックスが得られる。比誘電率周波数変化率の絶対値は、小さいほど良い。
[1.3.5. 比誘電率温度変化率]
「比誘電率温度変化率」とは、温度に対する比誘電率の変化率をいい、具体的には、(4)式で表される値をいう。
比誘電率温度変化率(%)=(εr5−εr4)×100/εr4 ・・・(4)
但し、εr4は、温度20℃での比誘電率、
εr5は、温度80℃での比誘電率。
一般に、比誘電率温度変化率の絶対値が小さくなるほど、幅広い温度域で用いられる回路素子として使用できるという利点がある。
比誘電率温度変化率は、x及びyの値に依存する。x及びyを最適化すると、周波数100kHz、無バイアスの条件下において、比誘電率温度変化率の絶対値が50%以下である誘電体セラミックスが得られる。x及びyをさらに最適化すると、比誘電率温度変化率の絶対値が、40%以下、30%以下、あるいは、20%以下である誘電体セラミックスが得られる。
[1.4. 易焼結性]
「焼結温度」とは、1時間の焼結により、98%以上の相対密度が得られる最低の温度をいう。
NaNbO3、SrTiO3及びCaTiO3は、いずれも、単独では焼結温度が1300℃を超える難焼結性材料である。これに対し、NaNbO3に所定量のSrTiO3及び/又はCaTiO3を固溶させると、焼結温度を低下させることができる。
焼結温度は、x及びyの値に依存する。x及びyを最適化すると、焼結温度が1300℃以下である誘電体セラミックスが得られる。
[2. チューナブルデバイス]
本発明に係る誘電体セラミックスは、チューナブルデバイスに用いられる。
「チューナブルデバイス」とは、誘電体の直流バイアス電界による比誘電率の変化を信号処理に積極的に利用するデバイスをいう。
チューナブルデバイスとしては、具体的には、チューナブルアンテナ、マルチバンドパスフィルタ、位相器、可変容量素子などがある。
図2(a)に、誘電体セラミックスを用いた容量素子の第1の具体例(断面図)を示す。図2(a)において、容量素子10は、基板12の上に、下部電極層14、誘電体層16、上部電極層18がこの順で形成されたものである。誘電体層16には、本発明に係る誘電体セラミックスが用いられる。
図2(b)に、誘電体セラミックスを用いた容量素子の第2の具体例(平面図)を示す。図2(b)において、容量素子20は、基板(図示せず)上に形成された金属線路24、26の間に誘電体層22が形成されたものである。誘電体層22には、本発明に係る誘電体セラミックスが用いられる。この場合、誘電体層22の両側の金属線路24、26が電極となる。
図2(c)に、このような容量素子を用いたチューナブルデバイスの回路の一例を示す。図2(c)において、チューナブルデバイス30は、容量素子32と、インダクタンス34と、可変直流電源36とを備えている。容量素子32の誘電体層には、本発明に係る誘電体セラミックスが用いられている。容量素子32の一方の電極には入力端子が接続され、他方の電極には出力端子が接続されている。また、容量素子32には、インダクタンス34を介して可変直流電源36が接続されている。
このようなチューナブルデバイス30に入力端子から高周波信号が入力されると、出力端子から高周波信号が出力される。この時、可変直流電源36を用いて容量素子32に印加する電圧を調整すると、誘電体層の比誘電率が変化する。その結果、出力端子からは、比誘電率変化の影響を受けた高周波信号が出力される。
[3. チューナブルデバイス用誘電体セラミックスの製造方法]
本発明に係るチューナブルデバイス用誘電体セラミックスは、
(a)所定のx及びyとなるように、原料(Na源、Nb源、Sr源、Ti源、及び、Ca源)を秤量し、
(b)秤量された原料を混合し、
(c)混合物を仮焼して、原料間に固相反応を生じさせ、
(d)必要に応じて仮焼物を粉砕した後、これを造粒し、
(e)造粒粉を所定の形状に成形し、
(f)成形体を焼結させる、
ことにより製造することができる。
各工程の条件は、特に限定されるものではなく、目的とする誘電特性が得られるように、x及びyの値に応じて、最適な条件を選択すればよい。
[4. チューナブルデバイス用誘電体セラミックスの作用]
反強誘電体であるNaNbO3に常誘電体であるSrTiO3及び/又はCaTiO3を固溶させると、誘電損失(又は、Q・f値)、比誘電率、直流バイアス電界に対する比誘電率の変化率、比誘電率の温度依存性、及び、比誘電率の周波数依存性のいずれか1以上の特性が向上する。
また、反強誘電体をベースとする本発明に係るチューナブルデバイス用誘電体セラミックスは、強誘電体をベースとする誘電体セラミックスと異なり、高周波域も含めて、幅広い周波数に対して低い誘電損失を示す。
さらに、NaNbO3は難焼結性材料であるが、これにSrTiO3及び/又はCaTiO3を固溶させると、焼結温度を低下させることができる。しかも、上述した諸特性を得るために、環境負荷元素や高価な貴金属元素を添加する必要もない。
(実施例1、比較例1〜6)
[1. 試料の作製]
原料には、Na2CO3、K2CO3、Nb25、TiO2、SrCO3、CaCO3、及び、BaCO3(いずれも、純度99.9%以上)を用いた。
これらの原料を、
(a)(1−x−y)NaNbO3−xSrTiO3−yCaTiO3(実施例1)、
(b)NaNbO3(比較例1)、
(c)SrTiO3(比較例2)、
(d)CaTiO3(比較例3)、
(e)(1−x)Na0.50.5NbO3−xSrTiO3(比較例4)、
(f)(1−y)Na0.50.5NbO3−yCaTiO3(比較例5)、又は、
(g)Ba0.5Sr0.5TiO3(比較例6)
となるように秤量した。
所定量秤量された原料粉末及び溶媒(アセトン)をポリエチレンポットに入れ、20時間のボールミル混合を行った。混合粉を乾燥させた後、これをアルミナ坩堝に入れ、800〜1000℃の範囲で5時間の仮焼を行った。仮焼粉及び溶媒(アセトン)を再度、ポリエチレンポットに入れ、20時間のボールミル混合を行った。仮焼粉を乾燥させた後、これを造粒した。さらに、直径13mmの金型に造粒粉を充填し、1t/cm2(98MPa)の圧力で厚さ2mm又は7mmの円柱状に成形した。
これらの成形体を酸素雰囲気中において、1100〜1300℃で1時間焼結した。但し、NaNbO3については1375℃、SrTiO3については1500℃、CaTiO3については1450℃で1時間焼結した。また、いずれの試料とも、室温から焼結温度までの昇温速度及び降温速度は、それぞれ200℃/hとした。
[2. 試験方法]
[2.1. 比誘電率、Q・f値]
高さ7mmの成形体から得られた円柱状の焼結体の両端を研磨した。得られた円柱状試料を用いて、両端短絡型誘電体共振器法(JIS−R1627)に基づいてマイクロ波(1〜4GHz)における比誘電率とQ・f値とを測定した。測定には、ネットワークアナライザを用いた。
[2.2. 比誘電率電界変化率、比誘電率温度変化率]
高さ2mmの成形体から得られた円柱状の焼結体の両端を研磨した。さらに、円柱状試料の両端面に、金蒸着により電極を形成した。インピーダンスアナライザを用いて、室温(20℃)から80℃の範囲において100kHzでの比誘電率を測定した。また、直流電圧/電流源を用いて、試料の表面に対して10kV/cmの直流電界を印加し、室温において100kHzでの比誘電率を測定した。
得られた比誘電率及び(2)式を用いて、室温、周波数100kHzでの比誘電率電界変化率を算出した。また、得られた比誘電率及び(4)式を用いて、周波数100kHz、無バイアス下での比誘電率温度変化率を算出した。
[3. 結果]
[3.1. マイクロ波帯での誘電特性]
表1に、マイクロ波帯(1GHz)での比誘電率及びQ・f値を示す。表1より、以下のことがわかる。
(1)強誘電体であるNa0.50.5NbO3にSrTiO3又はCaTiO3を固溶させると、高い比誘電率が得られる。しかしながら、Q・f値は、いずれも50GHz未満であり、マイクロ波帯域での誘電損失が大きい。従って、Na0.50.5NbO3系の材料は、高周波用素子には適さない。
これに対し、反強誘電体であるNaNbO3にSrTiO3又はCaTiO3を固溶させると、150以上の高い比誘電率が得られる。また、試料No.3、9、10を除き、Q・f値は100GHz以上であり、マイクロ波帯域における誘電損失が低い。
(2)NaNbO3に所定量のSrTiO3又はCaTiO3を固溶させると、焼結温度を1300℃以下にすることができる。
Figure 0005605120
[3.2. kHz帯での誘電特性]
表2に、100kHzでの比誘電率、比誘電率電界変化率、及び、比誘電率温度変化率を示す。なお、表2には、マイクロ波帯(1GHz)での比誘電率及びQ・f値も併せて示した。表2より、以下のことがわかる。
(1)SrTiO3又はCaTiO3のいずれか一方のみを固溶させる場合において、0<x≦0.2又は0<y≦0.2である時には、比誘電率電界変化率は、0.3%以上となる。特に、x=0、y=0.15の場合、2.8%の比誘電率電界変化率が得られた。
(2)試料No.3、9、10のQ・f値は、50GHz以下であった。一方、NaNbO3−SrTiO3−CaTiO3三成分系である試料No.24〜27においては、1%程度の比誘電率電界変化率と、100GHz以上のQ・f値が得られた。すなわち、0<x+y≦0.2の範囲でxとyを調整することで、低い誘電損失を有しつつ、直流バイアス電界に対して大きな比誘電率変化を示す誘電体が得られる。
(3)本発明に係る誘電体セラミックスは、いずれも、100kHzにおける比誘電率とマイクロ波帯における比誘電率の差が小さい。
(4)本発明に係る誘電体セラミックスは、Ba0.5Sr0.5TiO3に比べて、比誘電率温度変化率の絶対値が小さい。
(5)図1に示す三元系状態図において、0.85NaNbO3−0.15CaTiO3と、0.85NaNbO3−0.15SrTiO3を結んだ組成に着目する(試料No.3、10、25〜27)。この組成線上では、チューナビリティがCaTiO3量の増加と共に増大しており、CaTiO3が6mol%以上の組成において、1.0%以上のチューナビリティを示している。
また、0.9NaNbO3−0.1CaTiO3と0.9NaNbO3−0.1SrTiO3を結ぶ組成(試料No.2、9、24)においても、チューナビリティはCaTiO3量の増加と共に増大し、CaTiO3が6mol%以上の組成において、1.0%以上のチューナビリティが得られることが推測される。
すなわち、(x、y)を図1のハッチング領域内(境界線上を含む)にすると、1.0%以上のチューナビリティが得られる。
Figure 0005605120
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
本発明に係るチューナブルデバイス用誘電体セラミックスは、チューナブルアンテナ、マルチバンドパスフィルタ、位相器、可変容量素子などの各種チューナブルデバイスに用いることができる。

Claims (4)

  1. 以下の構成を備えたチューナブルデバイス用誘電体セラミックス。
    (a)前記チューナブルデバイス用誘電体セラミックスは、(1)式で表される組成を有する。
    (1−x−y)NaNbO3−xSrTiO3−yCaTiO3 ・・・(1)
    但し、0≦x<1、0≦y<1、0<x+y<1。
    (b)前記x及びyは、(x、y)=(0、0.15)、(0.09、0.06)、(0.04、0.06)、(0、0.10)の4点で囲まれる領域内(境界線上を含む)にある。
  2. 室温、周波数100kHzの条件下において、(2)式で表される比誘電率電界変化率の絶対値が0.3%以上である請求項1に記載のチューナブルデバイス用誘電体セラミックス。
    比誘電率電界変化率(%)=(εr0−εr1)×100/εr0 ・・・(2)
    但し、εr0は、直流バイアス電界0kV/cmでの比誘電率、
    εr1は、直流バイアス電界10kV/cmでの比誘電率。
  3. Q・f値が100GHz以上である請求項1又は2に記載のチューナブルデバイス用誘電体セラミックス。
  4. 焼結温度が1300℃以下である請求項1から3までのいずれかに記載のチューナブルデバイス用誘電体セラミックス。
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