JP5604757B2 - 食酢及びその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、食酢の製造方法に関する。
食酢は酸味を提供する調味料として広く用いられているが、近年においては、食酢の持つ健康食品としての機能が注目されており、黒酢、りんご酢、諸味酢などの健康酢が種々提供されている。食酢は、多くは、米、麦などの穀物類といった澱粉を成分に含むでんぷん質物を主原料とし、これに麹、酵母を加えて構成される仕込み液を、糖化反応させ、アルコール発酵させ、更に、酢酸発酵を起こさせ、次いで濾過、殺菌を行うことによって製造されている。酢酸発酵は、自然界に存在する酢酸菌によって生じさせられるほか、予め準備された酢酸菌を添加することによって生じさせられてもよい。
食酢の用途が、調味料に限らず、健康食品として飲料にまで拡大するにつれ、食酢には、酸味のみならず、うま味や甘味を向上させて摂取者に一般に心地よい味覚を提供することが求められるようになってきた。ところが、食酢は、飲料の用途とするには甘味の点で適切でなく、酸味ばかりがその他の味覚に対して強すぎるという問題があった。これに対して、例えば特許文献1には、甘味を強めた食酢が開示されている(特許文献1明細書段落[0055]、表7など)。
特開2007−49906号公報
しかしながら、特許文献1に開示された食酢は、仕込み液に、食酢本来の原料とされるでんぷん質物とは別に準備された水あめを添加されたものを用いて製造されるものである。ここで、水あめは、二糖類を主成分とするものであり、食酢の摂取者に極めて強い甘味を感じさせる糖質成分をなすものである。このため、特許文献1における食酢は、水あめの強い甘味を呈して食酢本来の原料に由来する甘みを損なわれたものとなってしまう虞が高いうえ、甘味の極端に勝ったものとなって味覚のバランスを損なってしまう虞が高い。なお、食酢本来の原料に由来する甘味とは、食酢本来の原料とされるでんぷん質物の澱粉が麹によって糖化された際に産生される糖化物(でんぷん質物分解物)に由来する甘味を示すものとする。
本発明は、上記問題点に鑑み、食酢本来の原料に由来する甘味を損なう虞を効果的に抑制しつつも甘味を適度に向上させ味覚のバランスに優れた食酢の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、
(1)蒸し米と麹と水とを容器内に仕込んで該容器内に仕込み組成物を調製するとともに該仕込み組成物の層を形成し、該仕込み組成物を糖化し且つアルコール発酵し且つ酢酸発酵して酢酸発酵組成物の層となして食酢を調製する食酢の製造方法であって、
酢酸発酵組成物の層の表面に向けて所定量の乾燥麹を添加した乾燥麹添加状態を形成し
且つ該乾燥麹添加状態を所定期間維持することを特徴とする食酢の製造方法、
(2)蒸し米と麹と水とを容器内に仕込んで該容器内に仕込み組成物を調製するとともに該仕込み組成物の層の表面に向けて所定量の振り麹を添加した状態を形成し、該仕込み組成物を糖化し且つアルコール発酵し且つ酢酸発酵して酢酸発酵組成物の層となして食酢を調製する食酢の製造方法であって、
酢酸発酵組成物の層の表面に向けて所定量の乾燥麹を添加した乾燥麹添加状態を形成し
且つ該乾燥麹添加状態を所定期間維持することを特徴とする食酢の製造方法、
(3)乾燥麹の添加量が、仕込み組成物の総重量に対する重量比率で、10重量%以上20重量%以下である上記(1)または(2)に記載の食酢の製造方法、
を要旨とする。
本発明によれば、食酢本来の原料に由来する甘味を損なう虞を効果的に抑制しつつも甘味を適度に向上させた食酢を得ることができる。
本発明の食酢の製造方法について以下に詳細に説明する。ここでは、食酢の製造方法を説明するにあたり、製造方法を構成する各製造工程が、伝統的製法を用いた手段にて実現される場合を例として説明する。ただし、このことは、本発明の適用可能な範囲を伝統的製法に限定するものではない。例えば、本発明において、食酢の製造方法は、工業的製法を用いた手段にて実施されてもよい。
伝統的製法とは、露天壷仕込みによる製造方法を一例として挙げることができる。露天壷仕込みによる製造方法は、麹などの原料を露天のかめ壷に仕込んで仕込み組成物を調製し、かめ壷内で長期間かけて仕込み組成物を糖化し且つアルコール発酵し且つ酢酸発酵し、酢酸発酵後に続く所定期間、仕込み組成物をかめ壷内に保持する、という方法である。なお、仕込み組成物を糖化し且つアルコール発酵し且つ酢酸発酵する一連の工程を、まとめて醸造工程と呼ぶことがある。また、酢酸発酵後に続く所定期間、仕込み組成物をかめ壷内に保持する工程を、熟成工程と呼ぶことがある。
工業的製法とは、伝統的製法を除く製法を示しており、例えば、醸造又は熟成の少なくとも一方の工程を、工業設備及び機械装置を使用して工程の実施条件を適宜制御しつつ実施して、食酢を製造する方法等を示す。
[食酢の製造方法]
食酢を製造するにあたり、仕込み組成物を構成する成分のうち蒸し米と麹が調製される。
(蒸し米の調製)
蒸し米の調製は、例えば、公知の炊飯方法を適宜用いて実現可能である。具体的には、例えば、米を準備して、米を水に浸漬させて暫く置いた後、水と米とを分離し、米を蒸気で加熱する。こうして蒸し米が調製される。なお、米は、原料となるでんぷん質物の例として用いられるものであり、白米、胚芽米、玄米などを適宜用いられてよいが、食酢に含有されるアミノ酸含有量を効率良く高める点では、玄米が好ましい。
米などのでんぷん質物を蒸気で加熱する処理は、例えば、公知の蒸し器など、水蒸気導入部と水蒸気排出部とを備えた蒸煮装置を適宜用い、蒸煮装置内に導入した過熱水蒸気等によりでんぷん質物を加熱することにより具体的に実現可能である。蒸煮時間は、でんぷん質物の種類やその量、さらには水蒸気の量などの条件に応じて適宜選択可能であるが、でんぷん質物が米である場合、通常、1時間以上3時間以下程度が好ましいとされる。
(麹の調製)
麹は、澱粉を含む製麹原料に種麹を蒔くとともに種麹を構成する麹黴を増殖させて形成される。具体的には、麹は、生麹を好適に用いられる。種麹は、特に限定されず、例えば、白麹、黄麹、黒麹など適宜採用可能である。製麹原料には、でんぷん質物が好適に用いられる。また、麹は、米麹を好適に用いられる。米麹を調製する際に用いられる製麹原料としては、米類であれば特に限定されないが、7分づき米が好適である。そこで、7分づき米を用いた米麹を麹に採用する場合を例として、麹の調製を説明する。
水に7分づき米を浸漬した状態を形成して、その状態を常温下で所定時間保持する。このとき、保持時間は、適宜選択可能であるが、10時間以上20時間以下程度であることが好ましい。その後、7分づき米と水とを分離する水切りが行われ浸漬処理米が得られる。
水切り後、浸漬処理米を蒸気により加熱することで蒸煮処理が行われる。蒸煮処理は、例えば、水蒸気加熱により蒸煮できる機構を備えた製麹装置で浸漬処理米を加熱することで具体的に実現可能である。蒸煮処理の実施時間は、適宜選択可能であるが、1時間以上3時間以下程度であることが好ましい。
蒸煮処理された浸漬処理米に種麹を蒔き、種麹を構成する麹黴を増殖させることで製麹が行われる。製麹の実施温度は、30℃以上40℃以下が好ましく、また製麹の実施時間は30時間以上50時間以下が好ましい。
こうして、種麹が増殖することで麹が製造される。なお、このとき調製された麹は、水分を含むものであり、後述の振り麹よりも水分含有量の多い麹である。
(仕込み工程)
仕込み工程においては、上記のように調製された蒸し米と米麹とが、水とともに容器内に仕込まれる。具体的には、蒸し米、米麹及び水が容器内に投入される。このとき容器中に調製される組成物を、仕込み組成物と呼ぶ。容器内には、仕込み組成物の層が形成されていることになる。
蒸し米と米麹と水を仕込む際に用いられる容器は、適宜選択可能であるが、伝統的製法においては陶磁器製のかめ壷が好適に用いられる。
仕込み組成物において、蒸し米、米麹及び水の配合割合については、蒸し米、米麹及び水の合計量で特定される仕込み組成物の総重量に対する重量割合(重量%)で、蒸し米が10重量%以上30重量%以下、米麹が5重量%以上15重量%以下、水が60重量%以上80重量%以下(重量換算値)であることが好ましい。ただし、蒸し米、米麹及び水の配合量は、蒸し米、米麹及び水の合計量が100重量%となるように選択される。
蒸し米の配合割合が10重量%未満であると、製造される食酢のアミノ酸含有量が不十分となる虞があり、蒸し米の配合割合が30重量%を超えると、均一な発酵が行われにくくなる虞がある。
仕込み組成物には酵母が添加されてもよい。伝統的製法では、米麹の中に含まれる野生の酵母や空気中に存在する野生の酵母が容器に混入すること等によってアルコール発酵が進行するが、アルコール発酵をより確実に促進するために、培養等の手段を適宜用いて調製された酵母が別途仕込み組成物に添加されていてもよい。
(振り麹)
仕込み組成物の調製終了後、かめ壷等の容器内に形成される仕込み組成物の層の表面上に、振り麹が蒔かれることが好ましい。振り麹とは、水に浮くように調製された麹である。仕込み組成物の層の上表面が振り麹で覆われていることで、雑菌が外部から仕込み組成物の層内部へと侵入することを効果的に抑制することができる。振り麹は、例えば、仕込み組成物の形成の際に用いられる麹よりも製麹にかける時間を長くし、仕込み組成物の形成の際に調製された麹を乾燥させて調製される。振り麹の好適な製造方法の一例を挙げると、振り麹は、製麹温度を30℃以上40℃以下の範囲とし、製麹時間を90時間以上150時間以下の範囲とする他は、仕込み組成物を構成する麹の調製方法として上記に説明した方法と同様の方法を適用されることで調製することができる。なお、製麹原料としては、特に限定されず、白米、7分づき米など適宜選択可能である。このように、振り麹は、製麹時間を長くし、麹を乾燥させて調製されることで、その水分含有量を適切に減じた状態となすことが容易となり、麹をより水に浮くように調製しやすくなる。麹菌の生存を確保しつつ水に浮きやすくする点で、振り麹の水分含有量は、振り麹の全重量に対する水分の割合であるが、5重量%以上20重量%以下であることが好ましい。
また、振り麹は、酵素活性の強さに優れる点で老麹を好適に用いられる。老麹は、製麹原料に蒔かれて付着した麹菌を十分に生育させるとともに製麹原料の周囲に胞子を付着されて形成された麹である。なお、振り麹の麹菌種は、仕込み組成物の麹の麹菌種と同種であることが好適である。
振り麹の添加量は、仕込み組成物の総重量に対する重量比率で、1重量%以上2重量%以下であることが好適である。
(醸造工程)
仕込み工程終了後、仕込み組成物の醸造が行われる。これは、仕込み組成物の層を内部に形成したかめ壷を所定の場所に所定期間置いておくことで実施される。このとき、かめ壷内部では、仕込み組成物に含まれる蒸し米に含まれる澱粉が米麹の麹黴によって糖化されて糖化物となる。すなわち、麹黴から産生される加水分解酵素により澱粉のグリコシド結合が加水分解されてオリゴ糖や単糖類へと低分子化され、でんぷん質物分解物が形成される。このとき、でんぷん質物分解物は、酢酸発酵の後においても、食酢によりまろやかな甘味を残し易くする点で、単糖類、二糖類、オリゴ糖、多糖類など様々な分子量を有する化合物の混合物となっていることが好適である。また、酵母などの作用により糖化物がアルコール発酵されて仕込み組成物がアルコール発酵組成物となる。このとき、酵母としては、例えば、麹に含まれる酵母や、かめ壷に住み着いた酵母や、空気中に存在する酵母などが挙げられる。
そして、アルコール発酵組成物をなす仕込み組成物は、酢酸菌の作用により酢酸発酵されて酢酸発酵組成物となる。酢酸発酵組成物は、もろ味と呼ばれることがある。醸造工程が実施されると、かめ壷の底側にもろ味の固形成分が堆積して沈殿物をなし、沈殿物の上に酢酸を含む上澄み液が形成される。したがって、酢酸発酵組成物は、上澄み液と沈殿物で構成されるようになる。
酢酸発酵は、上述のように酢酸菌の作用で実現されるが、このとき、酢酸菌としては、例えば、空気中に存在する酢酸菌などをあげることができる。なお、酢酸発酵は、かめ壷内に混入した空気中の酢酸菌の作用に全てを依存して実現される場合に限定されない。酢酸発酵は、かめ壷内の仕込み組成物に種酢を添加して酢酸菌を補給して、添加された種酢に含まれる酢酸菌の作用で酢酸発酵を効率的に実現するように構成されてもよい。これは、たとえば、種酢が、仕込み組成物のアルコール発酵でかめ壷内に形成されたアルコール発酵組成物の層の表面に散布されることで具体的に実現可能である。
醸造工程の実施温度は適宜選択可能であるが、醸造工程を効果的に進行させるには、仕込み組成物の温度を15℃以上50℃以下の範囲に保持することが好ましい。醸造工程の実施温度が15℃未満になると、酵母の生育が弱まり、アルコール発酵が効率的に進まなくなる虞があるうえ、アルコール発酵の進行が遅れている間に雑菌が侵入してしまう虞がある。仕込み組成物の温度が、50℃を超えると、麹菌に含まれる酵素の活性、酵母に含まれる酵素の活性が低下し、醸造の進行が遅くなる虞がある。
醸造工程の期間は、通常、かめ壷に蒸し米、米麹、水を仕込んで仕込み組成物を調製したときを醸造開始時として、醸造開始後1か月以上6か月間以下経過するまでの期間を、好適に選択される。醸造工程の終了のタイミングに関しては、醸造工程が進行して、仕込み組成物がアルコール発酵組成物を経て酢酸発酵組成物となる過程で、仕込み組成物に酢酸が存在した状態となり、仕込み組成物の液体成分に含まれるアルコールの濃度(容量%)が1%以下となるに至った段階を、醸造工程の終了時とすることが好適である。このときの酢酸発酵組成物の酸度は、仕込み組成物調製時にその仕込み組成物に含まれる澱粉の量などの条件によって変動するが、概ね、5%以上8%以下程度に高められている。
なお、米には、通常、澱粉のほかにグルテリン等の蛋白質が含まれており、仕込み組成物には蛋白質が存在している。また、麹黴では、蛋白質分解酵素の産生も行われる。こうしたことから、醸造工程においては、麹黴の産生する蛋白質分解酵素の働きで、仕込み組成物に含まれる蛋白質が分解され、アミノ酸の生成が行われる。
(熟成工程)
醸造工程で生成された酢酸発酵組成物に対しては、次のように熟成工程が施される。熟成工程は、酢酸発酵組成物を構成する上澄み液などといった液体成分のうま味を向上させ、酢酸発酵組成物の液体成分を原酢となす工程である。したがって、熟成工程は、最終的に得られる食酢のうま味の向上に貢献する。醸造工程で進行する糖化、アルコール発酵及び酢酸発酵は、同じかめ壷内で行なわれるが、熟成工程についても、そのかめ壷で実施される。即ち、蒸し米、米麹、水といった原料を仕込んだかめ壷内で、醸造工程及び熟成工程が継続実施される。
熟成工程において酢酸発酵組成物の熟成温度は、適宜選択可能であるが、10℃以上50℃以下であることが好ましい。また、熟成工程の実施期間については、それが長いほど食酢の旨味が向上し、奥深い味となる。従って、最終的に得ようとする食酢の製品グレードに応じて熟成工程の実施期間は適宜選択可能である。通常、熟成工程の実施期間としては、熟成工程開始時から1ヶ月間以上10年間以下の期間が設定される。
なお、熟成工程においては、酢酸発酵組成物の熟成が進むにつれ、かめ壷内の酢酸発酵組成物を構成する上澄み液(酢酸含有水溶液)は、琥珀色に着色し、更に時間の経過と共に次第に濃い色を呈し、いわゆる黒酢様の色を呈するようになりうる。このとき、上澄み液の色が熟成工程終了のタイミングの基準として用いられてもよい。
(乾燥麹の添加)
醸造工程終了後の所定時期において、かめ壷などの容器内に形成される該酢酸発酵組成物の層の表面に向けて所定量の乾燥麹が添加され、容器内に乾燥麹添加状態が形成される。すなわち、伝統的製法を用いた例では、かめ壷における酢酸発酵組成物の上澄み液の液面上に乾燥麹が添加される。乾燥麹は、酢酸発酵組成物を構成する上澄み液の液面上に浮くように水分含有量を減ぜられた麹として調製されるものである。乾燥麹は、例えば、仕込み組成物の形成の際に調製される麹と同様の方法で調製された麹を所定期間乾燥させることで調製可能である。このとき、乾燥麹の水分含有量は、乾燥麹の全重量に対する水分の割合(重量%)であるが、5重量%以上20重量%以下であることが好ましい。また、乾燥麹としては、白麹、黄麹、黒麹など適宜採用可能であり、かめ壷内に投入される麹を均質化することができる点で、上述した振り麹が好適に用いられる。
乾燥麹は酢酸発酵組成物の上澄み液の液面上方所定位置より液面に向けて投入された時点では、少なくとも一部の乾燥麹は、上澄み液の液面に浮かぶ状態となっている。
乾燥麹の添加量は、仕込み組成物の総重量に対する重量比率で、10重量%以上20重量%以下であることが好適である。乾燥麹の添加量が10重量%未満であると、食酢の糖度を十分に向上させることができない虞があり、乾燥麹の添加量が20重量%超過であると、乾燥麹に由来した糖分がアルコール発酵まで進行してアルコール発酵物を含んだ食酢となる虞が生じる。
乾燥麹の添加を行うタイミングは、上述のように醸造工程終了後の所定時期、すなわち酢酸発酵組成物の調製後であれば、適宜選択可能である。したがって、酢酸発酵組成物に対し、熟成工程の開始時にあわせて乾燥麹が添加されてもよいし、熟成工程進行中に乾燥麹が添加されてもよい。ただし、食酢における酸味とうま味と甘味のバランスをできるだけ損なわずに甘味を向上させる等といった効果を一層高める点では、乾燥麹が投入された後、1ヶ月以上4ヶ月以下程度経過した所定時期に熟成工程が終了するように、乾燥麹の添加を行うタイミングが選択されることが好ましい。また、上記甘味を向上させる効果をより効果的に高める点で、乾燥麹が投入された後1ヶ月以上3ヶ月以下程度経過した所定時期に熟成工程が終了するように、乾燥麹の添加を行うタイミングが選択されることがより好ましい。熟成工程の実施期間を6ヶ月とする場合を一つの例としてみると、醸造工程の終了とともに熟成工程を開始した後3ヶ月から5ヶ月程度経過した時点で酢酸発酵組成物に乾燥麹を添加し、さらに1ヶ月から3ヶ月程度経過して6ヶ月の熟成工程が完了するように、熟成工程が実施される。
また、仕込み組成物の調製開始から酢酸発酵組成物の調製完了までの醸造工程の期間は、上記したように1ヶ月から6ヶ月程度であることが多いことから、乾燥麹の添加を行うタイミングは、仕込み組成物の調製後6ヶ月経過時点以降であることが、より確実に醸造工程の完了後に乾燥麹の添加を実現できて好ましい。
(原酢の精製)
熟成工程終了後、得られた原酢を精製する。原酢の精製は、例えば次のように実施される。熟成工程終了後、かめ壷より酢酸発酵組成物を取り出し、酢酸発酵組成物を圧搾し、圧搾液を得る。さらに、圧搾液をろ過して、酢酸発酵組成物に含まれる液体成分と固形成分とを分離する。これにより得られた液体成分として原酢が精製される。原酢の酸度は、仕込み組成物の内容や醸造工程や熟成工程の実施期間などの諸条件で適宜変動しうるが、通常、5%以上8%以下の範囲にある。こうして得られた原酢は、そのまま食酢とされてよいし、原酢を適宜希釈したものが食酢とされてもよい。原酢を希釈する場合、原酢は、酸度が4%以上5%以下となるように所定の希釈溶媒で希釈される。希釈溶媒は、安全に飲用可能なものであって原酢の酸度を低下させることができるものであれば特に限定されないが、原酢の甘味やうま味を妨げにくい点で、水を好適に採用される。このようにして、製品としての食酢が得られる。なお、通常は、製品としての食酢は、原酢を水で適宜希釈するとともに、加熱殺菌又は限外濾過などの無菌処理を施される。
なお、上記醸造工程や熟成工程といった製造工程の説明の便宜上、蒸し米、米麹、及び水といった各原料を仕込んだかめ壷内にて、醸造工程開始から熟成工程終了までを継続実施する場合を例として食酢の製造方法の説明を行ったが、食酢の製造方法は、この例に限定されない。例えば、醸造工程終了後、かめ壷内に調製された酢酸発酵組成物を、そのかめ壷とは別途準備された容器又はタンクに移し入れ、この容器又はタンク内で熟成工程が別途実施されてもよい。
[食酢]
上記に示すような製造方法を実施して得られた食酢は、酢酸発酵終了後に乾燥麹を追加で添加する工程を経ることなく調製された食酢に比べて、糖度が高められたものであり、すなわち甘味の高められたものである。具体的に、食酢の糖度は、食酢の酸度を4.3%とした条件下で、Brix値(%)で8以上となる程度であるが、食酢の糖度が、Brix値(%)で10以上となる程度であることがより好ましい。また、食酢としての酸味を確実に維持する点で、食酢は、糖度がBrix値(%)で13以下とされていることが好ましい。
Brix値(%)は、糖度計(屈折計)として公知なBrix計を適宜用いて測定された値である。
本発明により得られる食酢の甘味は、食酢の調製に用いられた蒸し米と麹と乾燥麹からなる群から選ばれた少なくとも1種類以上に含まれる澱粉が糖化されて形成された糖化物に由来する。通常は、食酢の甘味は、蒸し米と麹と乾燥麹の全種に含まれる澱粉が糖化されて形成された糖化物に由来する。なお、食酢を得るにあたり振り麹が用いられた場合には、食酢の甘みの由来となる物質の対象となるものとして、振り麹に含まれる澱粉が糖化されて形成された糖化物も対象に含まれる。そして、本発明では、食酢は、このような糖化物にてBrix値(%)で8以上となるようなものとされることが可能である。なお、麹に含まれる澱粉は、製麹原料に含まれる澱粉を示す。振り麹及び乾燥麹に含まれる澱粉についても、製麹原料に含まれる澱粉を示す。
本発明により得られる食酢は、酸度を特に限定されるものではないが、概ね酸度を8%以下とされている。調味料としての利用しやすさの点では、食酢は、酸度を4%以上5%以下とされることが好ましい。
酸度は、例えば、次のようにして測定できる。2mLの食酢をビーカーに測りとり、これに水を加えて10mLの溶液となし、その10mLの溶液にフェノールフタレイン指示薬を加えたものを酸度特定用試料液とする。次に、酸度特定用試料液を、濃度が0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液で中和滴定する。中和滴定は、例えば次のように実施可能である。0.1Nの水酸化ナトリウム水溶液を注ぎ入れたビュレットを、酸度特定用試料液の入ったビーカーの上方にセットする。次に、酸度特定用試料液が中和点に達するまで水酸化ナトリウム水溶液をビュレットから酸度特定用試料液に向けて滴下する。中和点は、フェノールフタレイン指示薬の色で確認できる。こうして中和点に到達するまでに消費された0.1N水酸化ナトリウム水溶液の体積が計測される。そして、この体積をV(mL)とし、0.1N水酸化ナトリウム水溶液のファクターをFとして、下記の数式(1)に基づき食酢の酸度(W/V%)が算出される。
Figure 0005604757
本発明により得られる食酢は、アミノ酸含有量を特に限定されるものではないが、うま味を適度に有する点及び甘味とうま味の両方の味覚のバランスをとる点で、食酢の酸度を4.3%とした条件下で、アミノ酸含有量が540mg/100mL以上であることが好ましい。また、食酢のアミノ酸含有量を高めるために熟成期間をより長期化すると、生産性が低下し、すなわち生産コストの向上を招くことから、食酢の生産コストの点ではアミン酸含有量は、食酢の酸度を4.3%とした条件下で、810mg/100mL以下であることが好ましい。
食酢のアミノ酸含有量は、食酢に含まれるアミノ酸の総含有量を示すが、ポストカラム誘導体化高速液体クロマトグラフを用いたオルトフタルアルデヒド(OPA)法(ポストカラム−OPA法)により測定される。すなわち、ポストカラム−OPA法により、食酢に含まれる18種類のアミノ酸と個々のアミノ酸量が測定され、18種類のアミノ酸の総量として、食酢に含まれるアミノ酸の総含有量(mg/100mL)が特定される。なお、18種類のアミノ酸は、具体的には、アスパラギン酸、スレオニン、セリン、グルタミン酸、プロリン、グリシン、アラニン、シスチン、バリン、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、ヒスチジン、アルギニンを示す。
本発明によれば、食酢として、酸度を4.3%とした条件下においてBrix値で8以上となる程度とされて適度な甘味を有するものが得られる。また、本発明においては、醸造工程で麹菌の作用等により産生される蒸し米の糖化物に由来する甘味及び麹自体の甘味以外に、甘味をもたらす成分として甘味料を別途添加することなく、適度に甘味を有する食酢を得ることも可能となる。このことは、本発明によれば、食酢本来の原料に由来する甘味を損なう虞を効果的に抑制しつつも適度な甘味を有する食酢が得られることを示す。
さらに、本発明によれば、上記したように食酢の甘味は、蒸し米と麹と乾燥麹の少なくともいずれかに含まれる澱粉の糖化物としてのでんぷん質物分解物に由来する。このようなでんぷん質物分解物には、ブドウ糖や麦芽糖といった低分子糖類のみならず蒸し米や製麹原料に含まれる蛋白質に由来するアミノ酸が混在している。このようなアミノ酸は、食酢のうま味を効果的に向上させる。こうしたことから、本発明で得られる食酢は、一般的な食酢にブドウ糖や麦芽糖などの甘味料を加えて単に甘味を向上させた食酢加工液に比べ、アミノ酸含有量に優れたものとすることが可能であるとともに、うま味と甘味とのバランスにも優れたものとすることができ、より奥深く風味豊かなものとすることができる。
実施例1
(蒸し米の調製)
金属製容器に、でんぷん質物として玄米1300kgと水2000リットルを入れ、常温で17時間、静置した。その後、玄米と水と分離する水切りを行い、玄米を蒸煮装置にセットし、水蒸気圧1013hPaの過熱水蒸気を蒸煮装置内に導き、水蒸気により玄米を加熱蒸煮した。蒸煮時間は、1時間とした。蒸煮処理後、蒸煮装置を自然放冷により冷却して蒸し米を得た。
(米麹の調製)
金属製容器に、製麹原料となる7分づき米1300kgと、水2000リットルを入れ、常温で17時間、7分づき米を水に浸漬した。その後、浸漬した米と水とを分離する水切りを行って浸漬処理米を得て、浸漬処理米を製麹装置にセットし、水蒸気圧1013hPaの過熱水蒸気を装置内に導き、浸漬処理米を水蒸気により加熱蒸煮して蒸煮処理米を得た。蒸煮時間は1時間とした。蒸煮処理後、蒸煮処理された米を自然放冷して荒熱をとった。この荒熱をとった蒸煮処理米に種麹を蒔き、製麹を開始した。種麹には、黄麹が用いられた。また、製麹の条件について、製麹温度を36℃、製麹時間を42時間とした。こうして米麹を得た。
(仕込み工程)
調製した蒸し米8.1kg(元原料6kg相当)、米麹4.2kg(元原料4kg相当)、水47.7リットルの配合割合で、蒸し米、米麹、水を陶磁器製のかめ壷に仕込んだ。このとき、かめ壷内に、仕込み組成物60kgが調製された。
(振り麹の添加)
仕込み終了後、仕込み組成物の層の上表面を覆うように、振り麹500gを蒔いた。なお、振り麹は、7分づき米130kg、及び、水200リットルを用い、7分づき米の水への浸漬時間を15時間、製麹時間を100時間としたほかは上記米麹の調製と同じ方法で米麹を調製し、さらにその米麹を乾燥室で24時間、37℃の条件下で乾燥することにより調製された。振り麹の水分含有量は15重量%であった。
(醸造工程)
仕込み組成物を収容して振り麹を添加したかめ壷に蓋をし、かめ壷を所定の場所に静置することで、醸造工程が実施された。醸造工程では、仕込み組成物に含まれる澱粉が糖化し、糖化物のアルコール発酵にともなうアルコール発酵組成物の形成が行われ、さらにアルコール発酵組成物の酢酸発酵に伴う酢酸発酵組成物の形成が進行する。
(熟成工程)
熟成工程は、醸造工程に引き続いて醸造工程実施場所にかめ壷を静置することで実施された。
(乾燥麹の添加)
仕込み組成物の調製時から表1の添加迄欄に示す期間が経過した時点で、乾燥麹の添加を行い、かめ壷内に乾燥麹添加状態を形成した。乾燥麹の添加は、かめ壷内に形成されている酢酸発酵組成物の層の表面上に、乾燥麹を6.8kg添加することで実施された。このことは、表1の添加物及び添加量欄に明記される。なお、表1中、この欄において、上段が添加物の種別を示し、下段が添加量(kg)を示す。
また、乾燥麹の添加を行う直前に、酢酸発酵組成物の上澄み液を100mL分取した。このとき、分取された上澄み液の一部をそのままろ過して原酢となした。得られた原酢は、添加直前の原酢となる。
なお、乾燥麹は次に示すように調製されたものを用いて実施された。
(乾燥麹の調製)
乾燥麹は、上記振り麹と同様に調製された。すなわち、乾燥麹は、7分づき米130kg、及び、水200リットルを用い、7分づき米の水への浸漬時間を15時間、製麹時間を100時間としたほかは、上記米麹の調製と同じ方法で米麹を調製し、さらにその米麹を乾燥室で24時間、37℃の条件下で乾燥することにより調製された。乾燥麹の水分含有量は15重量%であった。
(醸造工程の終了確認と熟成工程の進行確認)
仕込み組成物の調製及び振り麹の添加を終了したかめ壷を所定の場所に6ヶ月間静置した時点で、仕込み組成物の状態を確認したところ、かめ壷内部では酢酸発酵組成物の形成が進行しており、アルコール発酵組成物の濃度が1%(V/V%)以下となっていた。これにより、醸造工程が仕込み組成物の調製から6ヶ月経過した時点ですでに終了段階に達し、熟成工程に進んでいることが確認された。アルコール濃度は、酸化法により測定された。具体的には、次のようにアルコール濃度の測定が実施された。
(アルコール濃度の測定)
アルコール濃度を測定対象となるアルコール発酵組成物2mLを試料としてケルダールフラスコにはかりとり、これに10mLの蒸留水を加えて水蒸気蒸留する。このとき、得られる蒸留液は100mLのメスフラスコ内に受け取られた。水蒸気蒸留は、メスフラスコ内に70mLから80mLの範囲に収まる程度の蒸留液が溜まった段階で終了し、終了後得られた蒸留液に水を加えて100mLの液を得た。この液のうち10mLを共栓三角フラスコ内にいれ、そこにN/5重クロム酸カリウム溶液10mLと濃硫酸10mLを加え、共栓三角フラスコに栓をして一時間放置して放置液を得る。このとき、アルコール発酵組成物に残存するアルコール量に応じて重クロム酸カリウムがアルコールとの反応に消費される。放置後、放置液に蒸留水(20mL)を加えて希釈して希釈液を得る。この希釈液に、10%ヨウ化カリウム溶液5mlを添加する。このとき、ヨウ化カリウムが残余の重クロム酸カリウムで酸化分解され、ヨウ素が遊離してくる。このヨウ素を、N/10チオ硫酸ナトリウム溶液で酸化還元滴定する。酸化還元滴定の終点に近づいてヨウ素自身の色による液色が薄まってきたら1%デンプン溶液約0.5mlを加え、ヨウ素デンプンの紫色が消失する点まで滴定する。なお、酸化還元滴定の終点では、クロムによる淡青色が残る。このとき、酸化還元滴定で消費されたN/10チオ硫酸ナトリウム溶液の消費量(A)(mL)を特定し、この値とN/10チオ硫酸ナトリウム溶液のファクター(F)と、下記数式(2)を用いて、試料100mL中のアルコール量を特定した。なお、アルコールの量は、アルコール表(Windisch)を用いて(W/V%)という単位から(V/V%)という単位に換算され、アルコール濃度が特定された。
Figure 0005604757
ただし、式2中、Fは、N/10チオ硫酸ナトリウム溶液のファクターであり、Aは、酸化還元滴定で消費されたN/10チオ硫酸ナトリウム溶液の消費量(mL)である。
(熟成工程の終了)
乾燥麹の添加後、表1の添加後欄に示す期間が経過するまで、かめ壷を所定の場所に静置し、その期間が経過した時点で熟成工程を終了した。
(原酢の精製)
熟成工程終了後、かめ壷から酢酸発酵組成物を取り出し、これを圧搾して圧搾液を調製し、圧搾液のろ過を行い、原酢をなすろ液を得た。
熟成工程終了後に原酢を精製して得られた原酢、及び、上記した乾燥麹の添加時の原酢について、下記のように酸度が測定された。さらに、原酢を酸度4.3%となるように水を添加して食酢を得た。食酢についてBrix値、アミノ酸含有量を測定した。これらの値についての結果は、熟成工程終了後に原酢を精製して得られた原酢を水で希釈して得られた食酢については、表1の熟成工程終了後欄に記載され、乾燥麹の添加直前の上澄み液の一部を分取してこれから精製された原酢を水で希釈して調製された食酢については、表1の添加直前欄に記載されている。
(酸度)
原酢2mLをビーカーにとって、これに水を加えて全体で10mLとし、さらにフェノールフタレイン指示薬をビーカー内に滴下して、これを酸度特定用試料液とした。0.1N水酸化ナトリウムをビュレットに注ぎ、そのビュレットを、酸度特定用試料液がはいっているビーカーの上方にセットし、0.1N水酸化ナトリウムを酸度特定用試料液に滴下して中和滴定を行った。0.1N水酸化ナトリウムのファクター(F)は、1.00であった。この値と、中和滴定に要した0.1N水酸化ナトリウムの体積V(mL)と、上記式(1)に基づき、酸度が算出された。酸度の値を表1に示す。
(Brix値)
得られた食酢についてBrix値(%)を測定した。Brix値は、Brix計(アタゴ社製、商品名;手持屈折計)を用いられた。食酢のBrix値は表1に示されるとおりである。
(アミノ酸含有量)
得られた食酢について上記したようなポストカラム−OPA法(ポストカラム誘導体化高速液体クロマトグラフ法)により、食酢に含まれるアミノ酸含有量(mg/100mL)を定めた。食酢に含まれるアミノ酸含有量の特定結果は表1に示されるとおりである。
Figure 0005604757
実施例2から5
仕込み組成物を調製して乾燥麹の添加までに経過する期間及び乾燥麹の添加後にかめ壷を静置しておく期間を、表1の添加迄欄及び添加後欄に示す期間としたほかは実施例1と同様にして食酢を得た。得られた食酢及び乾燥麹の添加直前の原酢について、実施例1と同様に酸度、Brix値、アミノ酸含有量を測定した。結果を表1に示す。なお、熟成工程終了後に原酢を精製してこれを水で希釈して得られた食酢については、表1の熟成工程終了後欄に記載され、乾燥麹の添加直前の上澄み液の一部を分取してこれを精製して得られた原酢を水で希釈して調製された食酢については、表1の添加直前欄に記載されている。
実施例6
乾燥麹の添加量を、表1の添加物及び添加量欄に示す量(kg)としたほかは実施例1と同様にして食酢を得た。得られた食酢及び乾燥麹の添加直前の原酢について、実施例1と同様に酸度、Brix値、アミノ酸含有量を測定した。なお、熟成工程終了後に原酢を精製してこれを水で希釈して得られた食酢については、表1の熟成工程終了後欄に記載され、乾燥麹の添加直前の上澄み液の一部を分取してこれを精製して得られた原酢を水で希釈して調製された食酢については、表1の添加直前欄に記載されている。
比較例1から5
比較例1,2,3,4,5について、酢酸発酵組成物へ乾燥麹を添加することに替えて蒸し米6.8kg(表1に示す)を添加したほかは、それぞれ実施例1,2,3,4,5と同様にして食酢を得た。得られた食酢及び蒸し米の添加直前の原酢について、実施例1から5と同様に酸度、Brix値、アミノ酸含有量を測定した。結果を表1に示す。ここに、乾燥麹にかえて添加された蒸し米には、仕込み組成物の調製時に用いた蒸し米を準備する際に採用された方法と同様の方法で準備されたものが用いられた。なお、熟成工程終了後に原酢を精製してこれを水で希釈して得られた食酢については、表1の熟成工程終了後欄に記載され、蒸し米の添加直前の上澄み液の一部を分取してこれを精製して得られた原酢を水で希釈して調製された食酢については、表1の添加直前欄に記載されている。
比較例6から10
比較例6,7,8,9,10について、酢酸発酵組成物へ乾燥麹を添加することに替えて、仕込み組成物の調製時に蒸し米と水とともにかめ壷に仕込む際に用いられる麹と同様の方法で調製された麹6.8kg(表1に示す)を用いたほかは、それぞれ実施例1,2,3,4,5と同様にして食酢を得た。ここに、酢酸発酵組成物へ添加される麹は、乾燥麹よりも水分含有量の多い麹(非乾燥麹)である。得られた食酢及び麹の添加直前の原酢について、実施例1と同様に酸度、Brix値、アミノ酸含有量を測定した。なお、熟成工程終了後に原酢を精製してこれを水で希釈して得られた食酢については、表1の熟成工程終了後欄に記載され、非乾燥麹の添加直前の上澄み液の一部を分取してこれを精製して得られた原酢を水で希釈して調製された食酢については、表1の添加直前欄に記載されている。
実施例1、比較例1でえられた食酢を用いて、次に示すように官能試験を実施した。
(官能試験)
実施例1で得られた食酢を水で10倍に希釈した液を調製して試飲液1となした。比較例1で得られた食酢についても、同様に水で10倍に希釈して試飲液2を調製した。比較例1で得られた食酢については、試飲液2のほかに、水で10倍に希釈するとともに、Brix値が試飲液1と同様になるようにブドウ糖を添加したものを調整して試飲液3となした。
試飲液1,2,3について、実施例1で説明した方法と同様の方法で、酸度、Brix値、アミノ酸含有量を測定した。これらの値の測定結果を表2に示す。
また、試飲液1,2,3それぞれについての味を分析した。すなわち、複数の試飲者に試飲液1,2,3を摂取させ、各試飲液1,2,3について試飲者の認識した味覚を次のように数値化して分析した。味覚の数値化にあたり、うま味、甘味、うま味と甘味のバランスの3つを評価項目として挙げ、各評価項目について、1点から3点までの点数を用いて各試飲者に3段階評価させた。そして、3つの評価項目のそれぞれについて、3段階評価の平均値を算出した。この値を表2に示す。そして、試飲液1,2,3についてこれらの平均値を比べることで、試飲液1,2,3を摂取した試飲者の味覚が数値化されて分析される。結果を表2に示す。
なお、官能試験では、試飲者数は10名であった。また、各試飲者が摂取した試飲液1,2,3の液量はそれぞれ30mLで、試飲液1,2,3の温度はいずれも約20℃であった。
3段階評価基準については、まず、うま味については、試飲者の認識上、うま味がちょうどよく酸味を引き立ていると感ぜられた場合を3点、うま味が酸味を引き立てていないと感ぜられた場合を2点、うま味がない又はうま味が酸味を邪魔していると感ぜられた場合を1点とする。
甘味については、試飲者の認識上、甘味がちょうどよく酸味を引き立ていると感ぜられた場合を3点、甘味が酸味を引き立てていないと感ぜられた場合を2点、甘味がない又は甘味が酸味を邪魔していると感ぜられた場合を1点とする。
うま味と甘味のバランスについては、試飲者の認識上、うま味と甘味と両方をバランスよく感じ且つうま味と甘味をあわせた味の強さが酸味に対してちょうどよいと感ぜられた場合を3点、うま味と甘味のバランスはとれているがうま味と甘味をあわせた味の強さが酸味よりも弱すぎると感ぜられた場合を2点、うま味と甘味のバランスがとれていない又はうま味と甘味のバランスがとれているもののうま味と甘味をあわせた味の強さが酸味を邪魔していると感ぜられた場合を1点とする。
Figure 0005604757
表2に示す官能試験の結果から、試飲液1は、試飲液2よりも甘味とうま味を試飲者に適度に感じさせていることが明らかとなっており、試飲液1は、試飲液3よりも適度なうま味と、うま味と甘味のバランスのよさを感じさせていることが確認された。また、このことは、実施例1の食酢についても、甘味とうま味の相対的な強さのバランスがとられているものであることを明らかに示すものである。
本発明は、食酢本来の原料に由来する甘味を損なう虞を効果的に抑制しつつも甘味を適度に向上させた食酢を提供するために有益なものである。

Claims (3)

  1. 蒸し米と麹と水とを容器内に仕込んで該容器内に仕込み組成物を調製するとともに該仕込み組成物の層を形成し、該仕込み組成物を糖化し且つアルコール発酵し且つ酢酸発酵して酢酸発酵組成物の層となして食酢を調製する食酢の製造方法であって、
    酢酸発酵組成物の層の表面に向けて所定量の乾燥麹を添加した乾燥麹添加状態を形成し且つ該乾燥麹添加状態を所定期間維持することを特徴とする食酢の製造方法。
  2. 蒸し米と麹と水とを容器内に仕込んで該容器内に仕込み組成物を調製するとともに該仕込み組成物の層の表面に向けて所定量の振り麹を添加した状態を形成し、該仕込み組成物を糖化し且つアルコール発酵し且つ酢酸発酵して酢酸発酵組成物の層となして食酢を調製する食酢の製造方法であって、
    酢酸発酵組成物の層の表面に向けて所定量の乾燥麹を添加した乾燥麹添加状態を形成し且つ該乾燥麹添加状態を所定期間維持することを特徴とする食酢の製造方法。
  3. 乾燥麹の添加量が、仕込み組成物の総重量に対する重量比率で、10重量%以上20
    重量%以下である請求項1または2に記載の食酢の製造方法。
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