JP5602264B2 - 山留壁の架構構造 - Google Patents
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Description
一般に腹起にはSS400材(リムド鋼)を用いており、同一面では同じサイズとしている。腹起サイズはH300×300〜H400×400が主に使われ、反力が大きい場合にH500×500が使われる。腹起耐力は一般に5m程度が限界とされている。
この工法は腹起の内方に別途の腹起を重ね梁として積層し、重ね合せた腹起内にケーブルを配置してプレストレスを導入するものである。
また図4,5に示すように山留壁80の内方に内外二重に重ねて配置した腹起81,82のうち、外方の腹起82の中央部間に腹起を兼ねたケーブル取付用梁材83を介装して腹起82と高力ボルト85で一体に連結するとともに、ケーブル取付用梁材83の両端部間に張設したケーブル84を緊張して外方の腹起82の中央部にプレストレスを導入することも知られている。
<1>プレストレスを与えることで腹起の曲げ耐力を補強できるものの、腹起のせん断耐力を補強することはできない。
そのため、腹起のせん断耐力はSS400材のせん断耐力が上限値となり、腹起の支間距離(スパン長)を長くすることの貢献度が低い。
<2>腹起の設置工にくわえてケーブルの緊張工と除荷工を必要とするため、山留作業に多くの時間がかかる。
<3>ケーブルの緊張工と除荷工には、ケーブルの他に専用の油圧設備が必要であるため、作業が大掛かりとなって山留コストが高くつく。
<4>腹起を構成する鋼材の継手部には大きなせん断力が作用するため、突き合せた鋼材の継手部に多数の高力ボルト85を使用しなければならない。
例えば図4,5に示したケーブル取付用梁材83と積層した腹起81,82に、H400×400の鋼材を用いた場合には、最低でも220本もの高力ボルト85を作業員が手作業で着脱しなければならず、山留のコストアップ、作業時間の長期化、および作業労力の増大化の大きな要因になっている。
<5>切梁を用いない山留構造において、腹起の組立てに必要なボルトの本数削減と、腹起の支間距離の延長化の両立が長年に亘って課題となっているが、前記課題の両立を可能とする好適な技術が未だに提案されていない。
<6>切梁を用いる従来の山留構造では、腹起の構造計算を簡易設計法で対応できるが、腹起にプレストレスを与える場合には、複雑な特殊設計法で腹起の構造計算をしなければならない。
<1>プレストレスを与えることなく腹起のせん断耐力を高めること。
<2>腹起を構成する鋼材の継手部における荷重負担を軽減しつつ、ボルトの使用本数を大幅に削減すること。
<3>腹起の構造計算を簡易に行えること。
前記中央単体梁は前記端部重合梁の素材強度より高強度であることを特徴とする。
具体的には前記中央単体梁が引張強さ490N/mm2以上の鋼材であることを特徴とする。
前記端部重合梁が積層した内方梁と外方梁とからなり、該内方梁および外方梁の断面が同一寸法であることを特徴とする。
前記中央単体梁と端部重合梁とがH形鋼であることを特徴とする。
<1>断面寸法の異なる複数の形鋼を組み合せた複合腹起と火打とを用いることで、プレストレスを与えることなく腹起のせん断耐力を高めることが可能となる。
<2>火打の端部を中央単体梁の端部近くに連結して、端部重合梁と中央単体梁の継手部を火打との連結部の外方に位置させることで、複合腹起を構成する端部重合梁と中央単体梁の継手部における荷重負担を軽減しつつ、ボルトの使用本数を大幅に削減することができる。
<3>複合腹起にプレストレスを与えないので、腹起の構造計算を簡易に行うことができる。
図1に本発明に係る山留の架構構造の平面モデル図を示す。
本発明に係る山留構造は断面寸法の異なる複数の形鋼を組み合せて構成する複合腹起20と、隣接する複合腹起20,20の間に架設する火打22とを具備する。
山留壁10に内面には適宜の間隔(一般に2.0m〜3.2m)を隔てて公知のブラケット23が取り付けてあって、該ブラケット23により、山留壁10の内面に横架した複合腹起20の複数箇所を支持している。
山留壁10は鋼矢板に限定されず公知の各種壁体を含む。
複合腹起20は、中央単体梁40と、該中央単体梁40の両端に接合する端部重合梁30,30とからなり、端部重合梁30と中央単体梁40の間がボルト連結により一体化してある。
本発明では、腹起の最大モーメントおよび最大せん断力が発生する支間に中央単体梁40が位置し、その外側に端部重合梁30,30が位置していればよい。
端部重合梁30は土圧負担の小さな山留壁10の端部付近を支保する梁材であり、内方梁31と外方梁32で構成する。
積層して使用する内方梁31および外方梁32は、その断面と全長が同一の関係にあり、一般構造用圧延鋼材(例えばSS400材)を使用する。
中央単体梁40は、土圧負担の大きな山留壁10の中央付近を支保する一本ものの高強度鋼(高張力鋼)であり、端部重合梁30と比べて高強度の素材からなる。
中央単体梁40は引張強さが490N/mm2以上の鋼材であり、その素材としては、例えばSM490A、SM490YB、SM520C、SMA490等の高強度鋼が使用可能である。
中央単体梁40の素材は上記した例示した素材に限定されず、同等以上の強度を有する鋼材であれば適用可能である。
内方梁31と外方梁32を並べて構成する端部重合梁30と、中央単体梁40は、山留壁10からの突出長(高さ)がともに等しい関係にある。
すなわち、図2に示すように、端部重合梁30を構成する各梁31,32の高さをH1、フランジ幅をB1とし、中央単体梁40の高さをH2、フランジ幅B2すると、中央単体梁40の高さH2と端部重合梁30(梁31,32)の高さ(H1×2)は等しく、また中央単体梁40のフランジ幅B2は端部重合梁30(梁31,32)のフランジ幅B1と等しい。
少なくとも中央単体梁40の高さH2と端部重合梁30の高さ(H1×2)を等しくするのは、両梁30,40の継手部に段差を生じさせないためである。
JIS規格のなかから選択すると、例えば、端部重合梁30を構成する内方梁31および外方梁32に其々H400×400のH形鋼を用い、中央単体梁40にH800×400を用いることで、両梁30,40の高さとフランジ幅は同一となる。
端部重合梁30の断面と中央単体梁40の断面を同一にするのは、両梁30,40の連結部に段差をなくして連結構造を簡略化するためと、複合腹起20の構造計算をし易くするためである。
既述したように、端部重合梁30の素材に一般鋼材(例えばSS4000材)を用い、中央単体梁40の素材として高強度の鋼材(例えばSM490A等)を用いる。
複合腹起20を構成する端部重合梁30と中央単体梁40の素材を上記の組み合わせとしたのは、複合腹起20の耐力向上、腹起の軽量化および資材コストの削減の並立を図るためである。
複合腹起20を構成する端部重合梁30(内方梁31および外方梁32)、および中央単体梁40と複数の火打22を山留現場へ搬入する。
現場で内方梁31および外方梁32を積層して端部重合梁30を製作する。
山留壁10で囲まれた空間内に複合腹起20を吊り込み、ブラケット23を介して山留壁10の内面に複合腹起20を横架する。
複合腹起20の両端に端部重合梁30を設置し、複数のボルトを用いて継手部を連結して複合腹起20を完成する。
端部重合梁30と中央単体梁40は、山留壁10からの突出長(高さ)とフランジ幅がそれぞれ同一寸法に設定してある。
したがって、端部重合梁30と中央単体梁40との継手部において、段差がなくフラットになるから、両梁30,40の継手部のボルト連結作業を簡易に行うことができる。
さらに、後述する理由により、両梁30,40の継手部の連結に使用するボルト・ナット25の数を大幅に削減できる。
隣り合う複合腹起20,20の間に複合腹起20の変形を阻止するための火打22を斜めに配置するとともに、火打22の端部を各複合腹起20にボルト連結する。
火打22の端部を、複合腹起20の端部重合梁30に連結すると、両梁30,40の継手部の負担荷重が大きくなるので、火打22の端部は中央単体梁40の端部近くに連結する。
火打22の端部を中央単体梁40の端部近くに連結して、両梁30,40の継手部を火打22の連結部の外方(複合腹起20の端部側)に位置させる。
火打22に油圧式のジャッキ21を介挿すると、火打22の長さ調整や複合腹起20の拘束力を切梁と同等に付与できるだけでなく、火打22に大きな軸力が作用した場合でもジャッキ21を収縮操作することで安全に除荷することができる。
図1に示すように、本発明では切梁を用いることなく、複合腹起20と火打22を組み合せることで土圧に十分対抗できるので、複合腹起20の支間距離を従来と同等以上に長くすることが可能である。
複合腹起20の支間を設定した場合、中央単体梁40の最大支間を端部重合梁30の支間Lの2倍(2L)とすると、中央単体梁40の最大支間の曲げモーメントは外側の端部重合梁30の支間LのモーメントMの4倍(4M)になる。
また中央単体梁40の最大支間2Lのせん断力は、端部重合梁30の支間Lのせん断力Sの2倍(2S)になる。
ここで、H800×400の内、SM490で断面係数が2H500の約0.75倍になるウェブ厚・フランジ厚の鋼材を選択すれば耐力が足りる。
一方、H800×400(SM490)を適用すれば、単位質量は約40%(350kg/m以下)の軽量化が可能となる。
更に、腹起の全長を9mとすれば、汎用性の高い10tonトラックの荷台に収まり、中央単体梁40の支間の途中をジョイントなしにできるため、連結ボルトの本数も最小限に抑制できる。
切梁作用を有する火打22の端部を中央単体梁40の端部近くに連結することで、両梁30,40の継手部が火打22の連結部の外方(複合腹起20の端部側)に位置することになる。
火打22との連結位置と両梁30,40の継手部の位置関係を上記のようにすることで、両梁30,40の継手部の荷重負担を大幅に軽減でき、さらに最大支間における中央単体梁40の耐力を確保しつつ、その外側の支間における端部重合梁30の耐力も維持できて、同一面における合理的な腹起の配置を実現できる。
殊に、両梁30,40の継手部の荷重負担が大幅に軽減しつつ、継手部の連結に必要なボルトの本数を大幅に削減できる。
汎用のSS400材でH400×400のH形鋼を横に二列並べてだけの腹起では、最大支間は5mが限界である。
最大支間を延長する方法のひとつとして、腹起に例えばSM490材を用いることが考えられるが、腹起の全長を高価な鋼材で構成するとコスト高の問題を生じる。
腹起の最大モーメントおよび最大せん断が発生する支間を、高強度の鋼材よりなる中央単体梁40で支持し、その外側を中央単体梁40と比べて低廉な鋼材よりなる端部重合梁30で支持するようにすることで、腹起の強度配分を理想的に行えるとともに、鋼材コストと重量を圧縮することができる。
具体的には、例えば中央単体梁40にSM490材を使用することで、同一断面のSS400材と比較して耐力が33%増加し、断面係数が33%少なくなって腹起の軽量化が可能となる。
火打22を連結した中央単体梁40の端部近くが複合腹起20の支点となり、この支間が複合腹起材20の最大モーメントおよび最大せん断が発生する支間と一致する。
この最大区間に高強度鋼よりなる中央単体梁40を配置したことで、中央単体梁40の強度により効率的に支持することが可能となる。中央単体梁40の外方はモーメントおよびせん断が中央部と比べて小さいことから、端部重合梁30によって効率よく、かつ経済的に支持できる。
複合腹起20は切梁機能を有する梁火打22で支承する単純梁の構造であるから、従来の簡易設計法で腹起の構造計算が行えるため、設計者には従来の山留めのほかに、特別な技術力を要求しない。
先の実施例では、内方梁31と外方梁32とにより端部重合梁30を構成する場合について説明したが、端部重合梁30の断面と中央単体梁40の断面が同一の関係になるように、三本以上の梁で端部重合梁30を構成してもよい。
また複合腹起20を構成する素材は鋼材に限定されず、公知の合金系、樹脂系、繊維系、またはコンクリート系の軽量高強度素材を適用することも可能である。
20・・・・・複合腹起
21・・・・・ジャッキ
22・・・・・火打
24・・・・・カバープレート
30・・・・・端部重合梁
31・・・・・内方梁
32・・・・・外方梁
40・・・・・中央単体梁
Claims (5)
- 山留壁の内面に横架した腹起と、隣り合う腹起間に架設する火打とを具備した非切梁式の山留壁の架構構造であって、
前記腹起が断面寸法の異なる複数の形鋼を組み合せた複合腹起で構成し、
前記複合腹起が中央単体梁と、
該中央単体梁の両端に接合する端部重合梁とからなり、
前記端部重合梁と中央単体梁は、その高さがともに等しい関係にあり、
前記火打の端部を中央単体梁の端部近くに連結して、端部重合梁と中央単体梁の継手部を火打との連結部の外方に位置させたことを特徴とする、
山留壁の架構構造。 - 前記中央単体梁が前記端部重合梁の素材強度より高強度であることを特徴とする、請求項1に記載の山留壁の架構構造。
- 前記中央単体梁が引張強さ490N/mm2以上の鋼材であることを特徴とする、請求項2に記載の山留壁の架構構造。
- 前記端部重合梁が積層した内方梁と外方梁とからなり、該内方梁および外方梁の断面が同一寸法であることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか一項に記載の山留壁の架構構造。
- 前記中央単体梁と端部重合梁とがH形鋼であることを特徴とする、請求項1乃至4の何れか一項に記載の山留壁の架構構造。
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