以下、本発明の双極型電極を用いた双極型二次電池並びに双極型電極の製造方法を一実施形態に基づいて説明する。なお、図中、同一の部材には同一の符号を用いた。また、図面の寸法比率は、説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。以下の実施形態では、双極型リチウムイオン二次電池を例示して説明する。
図1は、本発明の双極型電極を使用したリチウムイオン二次電池の代表的な一実施形態である扁平型(積層型)の双極型リチウムイオン二次電池(以下、単に「双極型二次電池」とも称する)の全体構造を模式的に表わした概略断面図である。
図1に示すように、本実施形態の双極型リチウムイオン二次電池10は、実際に充放電反応が進行する略矩形の電池要素17が、電池外装材20の内部に封止された構造を有する。図1に示すように、本実施形態の双極型二次電池10の電池要素17は、2枚以上で構成される双極型電極14で電解質層15を挟み、隣り合う双極型電極14の正極活物質層12と負極活物質層13とが電解質層15を介して対向するようになっている。ここで、双極型電極14は、図2に拡大して示すように、集電体11の片面に正極活物質層12を設け、もう一方の面に負極活物質層13を設けた構造を有している。即ち、双極型二次電池10では、集電体11の片方の面上に正極活物質層12を有し、他方の面上に負極活物質層13を有する双極型電極14を、電解質層15を介して複数枚積層した構造の電池要素17を具備してなるものである。
隣接する正極活物質層12、電解質層15および負極活物質層13は、一つの単電池層16を構成する。したがって、双極型二次電池10は、単電池層16が積層されてなる構成を有するともいえる。また、電解質層15からの電解液の漏れによる液絡を防止するために単電池層16の周辺部にはシール部21が配置されている。該シール部21を設けることで隣接する集電体11間を絶縁し、隣接する電極(正極活物質層12及び負極活物質層13)間の接触による短絡を防止することもできる。
なお、電池要素17の最外層に位置する正極側電極14a及び負極側電極14bは、双極型電極構造でなくてもよい。例えば、集電体11a、11b(または端子板)に必要な片面のみの正極活物質層12または負極活物質層13を配置した構造としてもよい。具体的には、図1に示すように、電池要素17の最外層に位置する正極側の最外層集電体11aには、片面のみに正極活物質層12が形成されているようにしてもよい。同様に、電池要素17の最外層に位置する負極側の最外層集電体11bには、片面のみに負極活物質層13が形成されているようにしてもよい。
また、双極型リチウムイオン二次電池10では、上下両端の正極側最外層集電体11a及び負極側最外層集電体11bにそれぞれ正極集電板18(正極タブ)および負極集電板19(負極タブ)が接合されている。但し、正極側最外層集電体11aが延長されて正極集電板18とされ、電池外装材20であるラミネートシートから導出されていてもよい。同様に、負極側最外層集電体11bが延長されて負極集電板19とされ、同様に電池外装材20であるラミネートシートから導出される構造としてもよい。
また、双極型リチウムイオン二次電池10でも、電池要素17部分を電池外装材20に減圧封入し、正極集電板18及び負極集電板19を電池外装材20の外部に取り出した構造とするのがよい。かかる構造とすることで、使用する際の外部からの衝撃、環境劣化を防止することができるためである。この双極型リチウムイオン二次電池10の基本構成は、複数積層した単電池層16が直列に接続された構成ともいえるものである。上記のような双極型二次電池10に使用する本発明の双極型電極14は、集電体11が高分子材料を含む少なくとも2層で構成される。
次に、上記のような双極型リチウムイオン二次電池10およびそれに使用する双極型電極14の各部材について説明する。
集電体11の材料は、特に制限されるものではなく、公知のものが使用されうる。例えば、集電体11の材料としてアルミニウム、ステンレス(SUS)などが好適に使用される。また、集電体11は、高分子材料を含むこともできる。例えば、ポリオレフィン(ポリプロピレン、ポリエチレン)、ポリエステル(PET、PEN)、ポリイミド、ポリアミド、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)を用いることができる。その際、高分子材料に導電性をもたせるために、カーボン(ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンブラック)や、金属(Al、Cu、SUS、Ti)などの粒子を分散させることが好ましい。
正極活物質層12は、正極活物質を含み、単電池26の正極として機能するものである。正極活物質層12は、正極活物質に加えて、導電助剤、バインダーなどを含みうる。正極活物質としては、例えば、溶液系のリチウムイオン電池でも使用される、遷移金属とリチウムとの複合酸化物を使用できる。具体的には、リチウム−遷移金属複合酸化物が好ましく、例えば、LiMn2O4などのLi−Mn系複合酸化物やLiNiO2などのLi−Ni系複合酸化物が挙げられる。場合によっては、2種以上の正極活物質が併用されてもよい。
負極活物質層13は、負極活物質を含み、単電池26の負極として機能するものである。負極活物質層13は、負極活物質に加えて、導電助剤、バインダーなどを含みうる。負極活物質としては、溶液系のリチウムイオン電池でも使用される負極活物質を用いることができる。
具体的には、炭素材料が好ましい。炭素材料としては、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛等の黒鉛系炭素材料(黒鉛)、カーボンブラック、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン、ハードカーボン等が挙げられる。より好ましくは、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛などの黒鉛である。天然黒鉛は、例えば鱗片状黒鉛、塊状黒鉛などが使用できる。人造黒鉛としては塊状黒鉛、気相成長黒鉛、鱗片状黒鉛、繊維状黒鉛が使用できる。これらのなかで、特に好ましい材料は、鱗片状黒鉛、塊状黒鉛である。鱗片状黒鉛、塊状黒鉛を用いた場合、充填密度が高い等の理由で、特に有利である。場合によっては、2種以上の負極活物質が併用されてもよい。
特に、正極活物質層12は、正極活物質として、リチウム−遷移金属複合酸化物を用い、負極活物質層13は、負極活物質として、カーボンまたはリチウム−遷移金属複合酸化物を用いることによって、容量、出力特性に優れた電池を構成することができる。
電解質層15は、イオン伝導性を有する高分子を含む層または液体電解質である。本実施形態の電解質は、高分子ゲル電解質であり、基材としてセパレータ22にプレゲル溶液を含浸させた後、化学架橋または物理架橋により高分子ゲル電解質として用いている。なお、本実施形態のセパレータ22の融点は約120℃であり、電解質溶媒の沸点は約140℃である。
シール部21は、電池要素17を密封するためのものである。シール部21は、単電池26の外周部に設けられており、電池要素17を密封することにより、電解質のイオン伝導度が低下することが防止される。また、液体または半固体のゲル状の電解質を使用する場合おいて、液漏れによる液絡が防止される。
シール前駆体として、たとえば、加圧変形させることによって集電体11に密着するゴム系樹脂、または加熱加圧して熱融着させることによって集電体11に密着するオレフィン系樹脂などの熱融着可能な樹脂を好適に利用することができる。
ゴム系樹脂としては、特に制限されるものではない。好ましくは、シリコン系ゴム、フッ素系ゴム、オレフィン系ゴム、ニトリル系ゴムよりなる群から選択されるゴム系樹脂が用いられる。これらのゴム系樹脂は、シール性、耐アルカリ性、耐薬品性、耐久性、耐候性、耐熱性などに優れ、使用環境下でもこれらの優れた性能、品質を劣化させずに長期間維持することができる。
熱融着可能な樹脂としては、シール部21として電池要素17のあらゆる使用環境下にて、優れたシール効果を発揮することができるものであれば特に制限されるものではない。好ましくは、シリコン、エポキシ、ウレタン、ポリブタジエン、オレフィン系樹脂(ポリプロピレン、ポリエチレンなど)、パラフィンワックスよりなる群から選択される樹脂である。これらの熱融着可能な樹脂は、シール性、耐アルカリ性、耐薬品性、耐久性・耐候性、耐熱性などに優れ、使用環境下でもこれらの優れた性能、品質を劣化させずに長期間維持することができる。
正極および負極集電板(タブ)18,19は、電池要素17で生成した電力を双極型二次電池10の外部へ取出すものである。また、正極および負極集電板(タブ)18,19の材料は、特に制限されるものではなく、公知のものが使用されうる。たとえば、アルミニウム、ステンレス(SUS)、高分子材料などが好適に使用される。
外装材20は、双極型二次電池10の電池内部を外気から遮断し、電池内部を保護するためのものである。外装材20は、電池内部と電池外部との圧力差により損傷されることがない一方で、容易に変形しうる可撓性を有するシート状素材により形成される。シート状素材は、電解液や気体を透過させず、電気絶縁性を有し、電解液などの材料に対して化学的に安定であることが望ましい。
シート状素材としては、ラミネートフィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネートなどが好適に用いられる。ラミネートフィルムは、アルミニウム、ステンレス、ニッケル、銅などの金属(合金を含む)からなる金属箔を、ポリプロピレンフィルムなどの絶縁性の合成樹脂膜で被覆したものである。
上記のような双極型二次電池10は、集電体11の一方の面に正極活物質層12が形成され他方の面に負極活物質層13が形成された双極型電極14と、セパレータ22を含む電解質層15とを、未硬化のシール部21を外周部に配置して、交互に積層して積層体を形成する。そして、集電体11の一方若しくは他方の面に正極活物質層12若しくは負極活物質層13のみを形成した正極側電極14aおよび負極側電極14bを、前記した積層体の積層方向両端面に配置して双極型の電池要素17の構造体を作製する。その後に、上記電池要素17の構造体を熱プレス機により熱プレスすることにより、シール部21を所定の厚みまでプレスして、未硬化のシール部21を硬化させて、双極型の電池要素17を完成させる。
ところで、前記双極型電極14の製造においては、通常、正極活物質等を含むペーストを集電体11の一方の面に塗布・乾燥させ、負極活物質等を含むペーストを集電体11の他方の面に塗布・乾燥させる。次いで、表面の平滑性および厚さの均一性を向上させるため、かつ所望の膜厚になるように、この電極構造体を両面からプレスすることにより、電極の密度調整がなされる。
しかしながら、上記電極の密度調整のためのプレスの際に、正極活物質層12と負極活物質層13との充填性の違いにより、充填性の低い活物質層側の面方向の伸びが大きくなり、片面に潰しすぎを生じて、集電体11の表裏で活物質層の厚さが相違する現象を生じる。そうすると、集電体11の表裏に、活物質層により発生する応力が異なることになり、図3に示すように、集電体11即ち双極型電極14が反ることとなる。
このような現象は、より高容量・高エネルギ密度が要求される電動自動車用の双極型リチウムイオン二次電池10においては、塗布する活物質層が厚いため、プレスすることにより発生する応力も大きく、双極型電極14の反りも大きくなる。即ち、正極活物質層12の高充填が求められており、正極活物質層12を高充填するためのプレス圧力では、負極活物質層13が潰れすぎることとなる。このように双極型電極14の反りが大きくなると、電池要素17の容量保持率を低下させ、振動に対する耐久性を低下させる虞がある。また、双極型二次電池10としての積層工程時のハンドリングが悪化したり、シール部21の信頼性を低下させる虞が生じる。
本実施形態においては、上記不具合を解消するために、双極型電極14において、正負極のうち圧縮強度の小さい活物質を含む活物質層としての負極活物質層13に、その活物質(第二活物質)の円形度より円形度の小さい第三活物質を含ませる構成とした。なお、以下では、双極型電極14の正負極活物質層12,13のうち、圧縮強度の大きい活物質層に含まれる活物質を第一活物質とする。
また、円形度とは、粒子の投影像に関する形状指数であり、
円形度=[(投影面積の等しい円の周長)/(粒子の周長)]×100
で表すことができる。ここで、「投影面積の等しい円の周長」とは、「ある粒子を真上から観察した時、下の平面に映った粒子の影の面積を求め、この面積に等しい円を計算し、その円の輪郭の長さ」である。また、「粒子の周長」とは、「ある粒子を真上から観察した時、下の平面に映った粒子の影の輪郭の長さ」のことである。
即ち、負極活物質層13に含まれる第二活物質の円形度が90以上であれば、第三活物質は非球形の円形度が90未満となる粒子を使用する。円形度の低い粒子としては、球形の粒子が割れた後のようなエッジがある粒子やエッジ部を有する角からなる形状や、立方体形状であっても、直方体、楕円球状、針状、板状、角状ないし柱状であってもよく、球状や立方体形状でない不定形状の形態であってもよい。第三活物質に使用する素材の具体例としては、面がエッジ部を有する角を備えたハードカーボン、鱗片状のグラファイト(鱗片状黒鉛)、気相法炭素繊維(VGCF)等がある。
本実施形態における双極型電極14は、正極活物質(第一活物質)等を含むペーストを集電体11の一方の面に塗布・乾燥させ、負極活物質等を含むペーストを集電体11の他方の面に塗布・乾燥させる。負極活物質等を含むペーストには、第二活物質としての負極活物質および結着剤に加えて、上記した円形度の低い第三活物質を含ませて、スラリー粘度調整溶媒としてのNMP(N−メチルピロリドン)に分散させて負極スラリーにしている。そして、正極活物質層12を形成した後の集電体11の反対側面に、この負極活物質等を含むペーストを塗布・乾燥させる。そして、正負極活物質層12,13を乾燥させた後の双極型電極14に対して、正負極活物質層12,13を両面からプレスして密度調整する。
プレスによる密度調整時に、正負極活物質層12,13、特に負極活物質層13を潰しすぎると、活物質の隙間(空孔)が埋められてしまい、電解液の浸透が制限され、リチウムイオンの拡散性が低下するため、負極活物質と電解液との電極反応が起こりにくくなり、出力特性が低下する。また、電極内の電解液の分布が不均一となり電極反応に部分的な偏りを生ずるため、電解液の存在する部分に電極反応が集中して、通常状態で出力の低下や寿命の短縮を招き、過充電状態に陥ると安全性が低下する。反対に、負極活物質層13の潰しが不足すると、活物質の隙間(空孔)が所定量より多く、負極活物質の割合が減少して電子伝導性が低下するので、電極反応が不均一となり出力が低下する。
本実施形態の双極型電極14では、負極には第二活物質としての負極活物質に加えて円形度の低い第三活物質を含ませているため、円形度の小さい第三活物質が円形度の高い第二活物質の再配置を抑制する。このため、集電体11の表裏に形成される正負極活物質層12,13のプレスによるつぶれ量がほぼ等しくなり、プレスによる正負極の延び率の差が減少し、集電体11の表裏の活物質層に生じる応力差が小さくなり、電極の反りが抑制できる。このため、電池要素17の容量保持率の低下を抑制でき、振動に対する耐久性の低下も抑制できる。また、双極型二次電池10としての積層工程時のハンドリングが向上し、シール部21の信頼性も向上できる。
また、プレスによる密度調整後のつぶれた正負極活物質層12,13に形成される隙間(空孔)の割合を空孔率といい、正負極活物質層12,13の体積に対する、正負極活物質層12,13内の空孔(空隙)の総体積で表すことができる。この空孔内には電解液が浸透するため、正負極活物質層12,13内の空孔率が、適正(例えば、25〜45体積%)であると、電子伝導性と、拡散性の両方を向上させ、容量特性・出力特性が有意に向上した電池に供される電極を提供することができる。また、空孔率が低すぎると、電解液が正負極活物質層12,13内へ浸み込み難く、電池抵抗が増大し、充放電サイクル特性が低下するため好ましくない。逆に、空孔率が高すぎると、電解液との反応面積が増大し、電解液の分解反応が促進され、充放電サイクル特性が低下するため好ましくない。
また、負極に形成される空孔率は、正極に形成される空孔率を基準として、ほぼ等しいことが望ましい。また、両者の空孔率が同一でない場合であっても、その差が所定の範囲内となるように設定する。前記所定の範囲内とは、正極の空孔率を基準として下記の範囲、
[正極空孔率−(正極空孔率−20)/2]≦負極空孔率≦[正極空孔率+(正極空孔率−20)/2]
に設定する。
即ち、密度調整のためのプレス後の正極の空孔率が、例えば、30体積%である場合には、負極の空孔率は、25〜35体積%の範囲で設定する。このように、負極の空孔率と正極の空孔率とが同等にされた双極型電極14は、反りを抑制でき、電池要素17の容量保持率の低下を抑制でき、振動に対する耐久性の低下も抑制できる。また、双極型二次電池10としての積層工程時のハンドリングが向上し、シール部21の信頼性も向上できる。
この空孔率は、プレスによる密度調整により変化し、また、負極においては、第三活物質の粒径や添加量によっても変化する。
第二活物質に第三活物質を添加する場合には、プレス後の負極の空孔率が正極の空孔率と同等となるよう、その粒径および添加量を調整する。
第三活物質として、球形の粒子が割れた後のようなエッジがある粒子やエッジ部を有する角からなる形状の粒子からなるハードカーボン、鱗片状グラファイト(鱗片状黒煙)を使用する場合には、その平均粒径D50を、第二活物質の平均粒径D50の0.3〜1.3倍の粒子を備えるものが望ましい。例えば、第二活物質の平均粒径D50=23μmである場合には、第三活物質は、その平均粒径がD50=8〜30μmの粒子を備えるものが望ましい。即ち、第三活物質の粒径が第二活物質より小さいときには、プレスによる密度調整時に、第三活物質が第二活物質の隙間に入ってしまうことが防止でき、活物質間に適正な隙間を確保して、その空孔率を適正に確保させることができる。また、第三活物質の粒径が第二活物質より大きいときには、活物質の粒子の量が減少するが、粒径が大きいことによりプレスによる密度調整を効果的に実施できる。また、第三活物質の粒径が第二活物質の粒径と同等であるときには、少ない添加量で効果的に空孔率を増加させることができる。いずれの場合においても、第三活物質の添加量を増加させるに連れて、負極に形成される空孔率は増加する。ただし、第三活物質の粒径が極端に小さい場合には、プレスによる密度調整時に、第三活物質が第二活物質の隙間に入ってしまうことが生じ、第三活物質の添加量を増量しても、その空孔率を効果的に増加できない場合がある。
また、第三活物質として、気相法炭素繊維(VGCF)を使用する場合には、そのアスペクト比(繊維の直径に対する長さの比率)が10以上のものを使用する。この場合には、少ない添加量で効果的に空孔率を増加させることができる。
以上のように、エッジ部を有する角からなる形状のハードカーボン、鱗片状グラファイト(鱗片状黒煙)、気相法炭素繊維(VGCF)のいずれかを第三活物質として添加する場合には、プレス後の負極の空孔率が正極の空孔率と同等となるよう、その粒径および添加量を調整する。
本実施形態においては、以下に記載する効果を奏することができる。
(ア)集電体11の一方の面に第一活物質を含む第一活物質層を形成する工程と、前記集電体11の他方の面に第一活物質の円形度より大きい第二活物質および第二活物質より円形度の小さい第三活物質を含む第二活物質層を形成する工程と、第一活物質層および第二活物質層が形成された電極をプレスして、プレス後の正極空孔率を25〜35%とし、且つ、正極活物質層と負極活物質層の空孔率を、[正極空孔率−(正極空孔率−20)/2]≦負極空孔率≦[正極空孔率+(正極空孔率−20)/2]とする工程と、を備える。即ち、プレスによる潰れ易い第二活物質層において、円形度の小さい第三活物質が円形度の高い第二活物質の再配置を抑制する。このため、集電体11の表裏に形成される正負極活物質層12,13のプレスによる延び率の差が減少し、正負極活物質層12,13のつぶれ量をほぼ等しくでき、集電体11の表裏の活物質層に生じる応力差を小さくでき、双極型電極14の反りを抑制できる。
また、第二活物質の円形度を第一活物質の円形度より大きくしても、第二活物質のプレスによる再配置が第三活物質により抑制されるため、両活物質層のプレスによる延び率の差が減少し、正負極活物質層12,13のつぶれ量をほぼ等しくでき、集電体11の表裏の活物質層に生じる応力差を小さくでき、双極型電極14の反りを抑制できる。
(イ)第三活物質の円形度は、第一活物質の円形度より小さいため、プレスによる第二活物質層の第二活物質の再配置を抑制して、第一活物質層のプレスによる第一活物質の再配置状体に近似させることができる。このため、集電体11の表裏に形成される正負極活物質層12,13のプレスによる延び率の差が減少し、正負極活物質層12,13のつぶれ量をほぼ等しくでき、集電体11の表裏の活物質層に生じる応力差を小さくでき、双極型電極14の反りを抑制できる。
(ウ)集電体11の一方の面に形成される第一活物質層は、正極活物質層12であり、集電体11の他方の面に形成される第二活物質層は、円形度90以上の第二活物質と第二活物質より円形度の小さい第三活物質を含む負極活物質層13である。負極に円形度の低い第三活物質を添加することによって、活物質がプレスにより再配置されるときに円形度の低い第三活物質が第二活物質の再配置を抑制でき、負極が最適な密度になるために必要なプレス圧を高くでき、反らない双極型電極14とすることができる。
(エ)第三活物質は、鱗片状または欠けた部分によるエッジがある粒子形状であるため、第二活物質のプレスによる再配置をより一層抑制することができ、負極が最適な密度になるために必要なプレス圧を高くでき、反らない双極型電極14とすることができる。
(オ)第三活物質の粒径(D50)は、球形活物質の粒径(D50)の0.3から1.3倍若しくはアスペクト比が10以上である。このため、第三活物質の粒径が小さいときには、第二活物質の隙間に入ってしまうことを防ぎ、第三活物質が大きいときには粒子の量が減少することによって、プレスによる再配置が低下することを防止できる。
(カ)上記した(ア)〜(オ)のいずれかの製造方法によって製造される双極型電極14とした。このため、正負極活物質層12,13の空孔率が等しいため、反らない双極型電極14とすることができる。
また、負極のプレス圧が極端に小さくなって電解液の浸み込みが悪くなることによる電池特性の悪化や、正極の空孔率を下げられないことによる体積エネルギ密度への悪影響をさせることができる。このため、高体積エネルギ密度、耐久性を向上させた電池を得ることができる。
以下、各実施例を用いて本発明の双極型電極の製造方法を説明する。しかしながら、本発明は、各実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1
まず、正極活物質層12を下記の要領により作成した。即ち、ニッケルコバルトマンガン酸リチウム(第一活物質、累積粒度分布D50:6μm、D10:4μm、D90:10μm)、カーボン粉末(導電助剤)、バインダーPVDF(ポリフッ化ビニリデン、結着材)をそれぞれ89:6:5(重量比%)でスラリー粘度調整溶媒としてNMP(N−メチルピロリドン)に分散させて正極スラリーを作成した。そして、集電体11(SUS316、15μm、200mm×300mm)上にダイコーターにて塗布(電極サイズ=170mm×270mm)し、その後、乾燥を行なって正極活物質層12を得た。
次いで、負極活物質層13を下記の要領により作成した。即ち、第二(負極)活物質としての球状グラファイトMCMB(活物質、累積粒度分布D50:23μm、D10:10μm、D90:40μm、円形度90)を使用した。また、第三(負極)活物質として、面がエッジ部を有する角からなる形状のハードカーボン(体積粒度分布D50:18μm、D10:12μm、D90:30μm)を使用した。
そして、第二(負極)活物質と第三(負極)活物質との合計重量比が90%となるように、第三(負極)活物質の重量比を5、10,20%(第二(負極)活物質の重量比は、85,80,70%)と変化させて、3種類の負極活物質を使用した。そして、この3種類の負極活物質をバインダーPVDF(ポリフッ化ビニリデン、結着材、重量比10%)と混合して、スラリー粘度調整溶媒としてNMP(N−メチルピロリドン)に分散させて4種類の負極スラリーを作成した。そして、この負極スラリーを正極活物質層12を形成した後の集電体11の反対側(裏面には正極が塗布されている)にダイコーターにて塗布(電極サイズ=180mm×280mm)し、その後、乾燥を行なって負極活物質層13を得た。
両極の乾燥後、正極の空孔率が30vol%になるように設定したプレス圧にて、ロールプレスを行い、負極活物質層13の第三活物質の添加量が、5,10,20%と異なる3種類の双極型リチウムイオン二次電池10の双極型電極14を得た。正極のプレス後の空孔率は30vol%、プレス後の厚み77μmであった。
実施例2
まず、正極活物質層12を実施例1と同様に作成した。また、負極活物質層13を下記の要領により作成した。即ち、実施例1と同様に、第二(負極)活物質としての球状グラファイトMCMB(活物質、累積粒度分布D50:23μm、D10:10μm、D90:40μm、円形度90)を使用した。また、第三(負極)活物質として、鱗片状の形状を備え、D50の粒子厚さが8μm以下であるグラファイト(活物質、累積粒度分布D50:20μm、D10:8μm、D90:35μm)を使用した。
そして、実施例1と同様に、第二(負極)活物質と第三(負極)活物質との合計重量比が90%となるように、第三(負極)活物質の重量比を5、10,20%(第二(負極)活物質の重量比は、85,80,70%)と変化させて、3種類の負極活物質を使用した。そして、この3種類の負極活物質をバインダーPVDF(ポリフッ化ビニリデン、結着材、重量比10%)と混合して、スラリー粘度調整溶媒としてNMP(N−メチルピロリドン)に分散させて3種類の負極スラリーを作成した。
そして、実施例1と同様に、この負極スラリーを正極活物質層12を形成した後の集電体11の反対側(裏面には正極が塗布されている)にダイコーターにて塗布し、その後、乾燥を行なって負極活物質層13を得た。
両極の乾燥後、正極の空孔率が30vol%になるように設定したプレス圧にて、ロールプレスを行い、負極活物質層13の第三活物質の添加量が、5,10,20%と異なる3種類の双極型リチウムイオン二次電池10の双極型電極14を得た。正極のプレス後の空孔率は30vol%、プレス後の厚み77μmであった。
実施例3
まず、正極活物質層12を実施例1と同様に作成した。また、負極活物質層13を下記の要領により作成した。即ち、実施例1と同様に、第二(負極)活物質としての球状グラファイトMCMB(活物質、累積粒度分布D50:23μm、D10:10μm、D90:40μm、円形度90)を使用した。また、第三(負極)活物質として、面がエッジ部を有する角からなる形状のハードカーボン(体積粒度分布D50:4μm)を使用した。
そして、実施例1と同様に、第二(負極)活物質と第三(負極)活物質との合計重量比が90%となるように、第三(負極)活物質の重量比を5、10,20%(第二(負極)活物質の重量比は、85,80,70%)と変化させて、3種類の負極活物質を使用した。そして、この3種類の負極活物質をバインダーPVDF(ポリフッ化ビニリデン、結着材、重量比10%)と混合して、スラリー粘度調整溶媒としてNMP(N−メチルピロリドン)に分散させて3種類の負極スラリーを作成した。
そして、実施例1と同様に、この負極スラリーを正極活物質層12を形成した後の集電体11の反対側(裏面には正極が塗布されている)にダイコーターにて塗布し、その後、乾燥を行なって負極活物質層13を得た。
両極の乾燥後、正極の空孔率が30vol%になるように設定したプレス圧にて、ロールプレスを行い、負極活物質層13の第三活物質の添加量が、5,10,20%と異なる3種類の双極型リチウムイオン二次電池10の双極型電極14を得た。正極のプレス後の空孔率は30vol%、プレス後の厚み77μmであった。
実施例4
まず、正極活物質層12を実施例1と同様に作成した。また、負極活物質層13を下記の要領により作成した。即ち、実施例1と同様に、第二(負極)活物質としての球状グラファイトMCMB(活物質、累積粒度分布D50:23μm、D10:10μm、D90:40μm、円形度90)を使用した。また、第三(負極)活物質として、面がエッジ部を有する角からなる形状のハードカーボン(体積粒度分布D50:8μm)を使用した。
そして、実施例1と同様に、第二(負極)活物質と第三(負極)活物質との合計重量比が90%となるように、第三(負極)活物質の重量比を5、10,20%(第二(負極)活物質の重量比は、85,80,70%)と変化させて、3種類の負極活物質を使用した。そして、この3種類の負極活物質をバインダーPVDF(ポリフッ化ビニリデン、結着材、重量比10%)と混合して、スラリー粘度調整溶媒としてNMP(N−メチルピロリドン)に分散させて3種類の負極スラリーを作成した。
そして、実施例1と同様に、この負極スラリーを正極活物質層12を形成した後の集電体11の反対側(裏面には正極が塗布されている)にダイコーターにて塗布し、その後、乾燥を行なって負極活物質層13を得た。
両極の乾燥後、正極の空孔率が30vol%になるように設定したプレス圧にて、ロールプレスを行い、負極活物質層13の第三活物質の添加量が、5,10,20%と異なる3種類の双極型リチウムイオン二次電池10の双極型電極14を得た。正極のプレス後の空孔率は30vol%、プレス後の厚み77μmであった。
実施例5
まず、正極活物質層12を実施例1と同様に作成した。また、負極活物質層13を下記の要領により作成した。即ち、実施例1と同様に、第二(負極)活物質としての球状グラファイトMCMB(活物質、累積粒度分布D50:23μm、D10:10μm、D90:40μm、円形度90)を使用した。また、第三(負極)活物質として、面がエッジ部を有する角からなる形状のハードカーボン(体積粒度分布D50:30μm)を使用した。
そして、実施例1と同様に、第二(負極)活物質と第三(負極)活物質との合計重量比が90%となるように、第三(負極)活物質の重量比を5、10,20%(第二(負極)活物質の重量比は、85,80,70%)と変化させて、3種類の負極活物質を使用した。そして、この3種類の負極活物質をバインダーPVDF(ポリフッ化ビニリデン、結着材、重量比10%)と混合して、スラリー粘度調整溶媒としてNMP(N−メチルピロリドン)に分散させて3種類の負極スラリーを作成した。
そして、実施例1と同様に、この負極スラリーを正極活物質層12を形成した後の集電体11の反対側(裏面には正極が塗布されている)にダイコーターにて塗布し、その後、乾燥を行なって負極活物質層13を得た。
両極の乾燥後、正極の空孔率が30vol%になるように設定したプレス圧にて、ロールプレスを行い、負極活物質層13の第三活物質の添加量が、5,10,20%と異なる3種類の双極型リチウムイオン二次電池10の双極型電極14を得た。正極のプレス後の空孔率は30vol%、プレス後の厚み77μmであった。
実施例6
まず、正極活物質層12を実施例1と同様に作成した。また、負極活物質層13を下記の要領により作成した。即ち、実施例1と同様に、第二(負極)活物質としての球状グラファイトMCMB(活物質、累積粒度分布D50:23μm、D10:10μm、D90:40μm、円形度90)を使用した。また、第三(負極)活物質として、面がエッジ部を有する角からなる形状のハードカーボン(体積粒度分布D50:40μm)を使用した。
そして、実施例1と同様に、第二(負極)活物質と第三(負極)活物質との合計重量比が90%となるように、第三(負極ょ活物質の重量比を5、10,20%(第二(負極)活物質の重量比は、85,80,70%)と変化させて、3種類の負極活物質を使用した。そして、この3種類の負極活物質をバインダーPVDF(ポリフッ化ビニリデン、結着材、重量比10%)と混合して、スラリー粘度調整溶媒としてNMP(N−メチルピロリドン)に分散させて3種類の負極スラリーを作成した。
そして、実施例1と同様に、この負極スラリーを正極活物質層12を形成した後の集電体11の反対側(裏面には正極が塗布されている)にダイコーターにて塗布し、その後、乾燥を行なって負極活物質層13を得た。
両極の乾燥後、正極の空孔率が30vol%になるように設定したプレス圧にて、ロールプレスを行い、負極活物質層13の第三活物質の添加量が、5,10,20%と異なる3種類の双極型リチウムイオン二次電池10の双極型電極14を得た。正極のプレス後の空孔率は30vol%、プレス後の厚み77μmであった。
実施例7
まず、正極活物質層12を実施例1と同様に作成した。また、負極活物質層13を下記の要領により作成した。即ち、実施例1と同様に、第二(負極)活物質としての球状グラファイトMCMB(活物質、累積粒度分布D50:23μm、D10:10μm、D90:40μm、円形度90)を使用した。また、第三(負極)活物質として、アスペクト比が10のVGCFを使用した。
そして、実施例1と同様に、第二(負極)活物質と第三(負極)活物質との合計重量比が90%となるように、第三(負極)活物質の重量比を5、10,20%(第二(負極)活物質の重量比は、85,80,70%)と変化させて、3種類の負極活物質を使用した。そして、この3種類の負極活物質をバインダーPVDF(ポリフッ化ビニリデン、結着材、重量比10%)と混合して、スラリー粘度調整溶媒としてNMP(N−メチルピロリドン)に分散させて3種類の負極スラリーを作成した。
そして、実施例1と同様に、この負極スラリーを正極活物質層12を形成した後の集電体11の反対側(裏面には正極が塗布されている)にダイコーターにて塗布し、その後、乾燥を行なって負極活物質層13を得た。
両極の乾燥後、正極の空孔率が30vol%になるように設定したプレス圧にて、ロールプレスを行い、負極活物質層13の第三活物質の添加量が、5,10,20%と異なる3種類の双極型リチウムイオン二次電池10の双極型電極14を得た。正極のプレス後の空孔率は30vol%、プレス後の厚み77μmであった。
比較例1
まず、正極活物質層12を実施例1と同様に作成した。また、負極活物質層13を下記の要領により作成した。即ち、第二(負極)活物質のみとし、球状グラファイトMCMB(活物質、累積粒度分布D50:23μm、D10:10μm、D90:40μm、円形度90)を使用した。
そして、この第二(負極)活物質(重量比90wt%)をバインダーPVDF(ポリフッ化ビニリデン、結着材、重量比10%)と混合して、スラリー粘度調整溶媒としてNMP(N−メチルピロリドン)に分散させて負極スラリーを作成した。
そして、実施例1と同様に、この負極スラリーを正極活物質層12を形成した後の集電体11の反対側(裏面には正極が塗布されている)にダイコーターにて塗布し、その後、乾燥を行なって負極活物質層13を得た。
両極の乾燥後、正極の空孔率が30vol%になるように設定したプレス圧にて、ロールプレスを行い、一種類の双極型リチウムイオン二次電池10の双極型電極14を得た。
以上に説明した比較例1および実施例1〜7の双極型電極14の正負極活物質層12,13の組成は、表1に示す組合せにより構成したものとしている。
そして、比較例1および実施例1〜7(第三活物質の添加量が相違する四種類)の双極型電極14に対して、正極活物質層12の空孔率が30%となるブレス圧によりロールプレスした。表2は、ロールプレス後の各双極型電極14の負極活物質層13の空孔率、負極活物質層13の表面外観、および、双極型電極14の反りの測定結果および目視結果を示したものである。負極活物質層13の空孔率は、所定形状の負極シートのユアサアイオニクス社製・ペンタピクノメータを用いて測定したHe置換体積より算出した。
電極の反りの表示は、◎が反りが認められない、○が電極が波打つ程度であり、積層数を増やすと電池性能に影響する程度、×が反りが発生した、ことを表している。
表2に示す通り、比較例1と実施例1〜7を比較すると、比較例1では、反りが発生するのに対して、実施例1〜7ではいずれも反りが、「○」と電極が波打つ程度であり、積層数を増やすと電池性能の影響する程度に抑制されている。
実施例1では、平均粒径D50が18μmと比較的大きく、面がエッジ部を有する角からなる形状のハードカーボンを第三活物質として添加するものである。このため、5wt%と少量の添加であっても負極活物質層13内に28体積%と適正空孔率(30体積%)に近い空効率を得ることができ、且つ、電極の反りを確実に抑制できる。なお、この場合に、10wt%〜20wt%と添加量を増加させると負極活物質層13内の空効率が35〜40体積%と適正空孔率(30体積%)に対して大幅に増加し、電極に波打つ程度の反りが発生する。
実施例2では、平均粒径D50が20μmと比較的大きく、鱗片状の黒鉛を第三活物質として添加するものである。このため、5〜10wt%と少量の添加であっても負極活物質層13内に26〜32体積%と適正空孔率(30体積%)に近い空効率を得ることができ、且つ、電極の反りを確実に抑制できる。なお、この場合に、20wt%と添加量を増加させると負極活物質層13内の空効率が35体積%と適正空孔率(30体積%)に対して大きく増加し、電極に波打つ程度の反りが発生する。
実施例3では、平均粒径D50が4μmと比較的小さく、面がエッジ部を有する角からなる形状のハードカーボンを第三活物質として添加するものである。このため、20wt%と大量の添加であっても負極活物質層13内に25体積%と適正空孔率(30体積%)に近い空効率を得ることができず、且つ、電極の反りを確実に抑制できるものは得られなかった。
実施例4では、平均粒径D50が8μmと比較的小さく、面がエッジ部を有する角からなる形状のハードカーボンを第三活物質として添加するものである。このため、実施例1よりも多い10〜20wt%と多量の添加により、負極活物質層13内に28〜33体積%と適正空孔率(30体積%)に近い空効率を得ることができ、且つ、電極の反りを確実に抑制できるものとなった。
実施例5では、平均粒径D50が28μmと比較的大きく、面がエッジ部を有する角からなる形状のハードカーボンを第三活物質として添加するものである。このため、5wt%と少量の添加であっても負極活物質層13内に25体積%と適正空孔率(30体積%)に近い空効率を得ることができ、且つ、電極の反りを確実に抑制できる。なお、この場合に、10〜20wt%と添加量が増加されても負極活物質層13内に30〜35体積%と適正空孔率(30体積%)に近い空効率を得ることができ、且つ、その場合においても電極の反りを確実に抑制できるものとできた。
実施例6では、平均粒径D50が35μmと大きく、面がエッジ部を有する角からなる形状のハードカーボンを第三活物質として添加するものである。このため、10〜20wt%と多量の添加であっても負極活物質層13内に27〜30体積%と適正空孔率(30体積%)に近い空効率を得ることができ、且つ、電極の反りを確実に抑制できる。なお、この場合には、第三活物質の平均粒径D50が35μmと大きいこともあり、電極表面に突起部が発生した。
実施例7では、第三(負極)活物質として、アスペクト比が10のVGCFを添加するものである。このため、5wt%と小量の添加であっても負極活物質層13内に32体積%と適正空孔率(30体積%)に近い空効率を得ることができ、且つ、電極の反りを確実に抑制できる。
また、実施例1,4,5(夫々第三活物質の添加量が相違する3種類)の双極型電極14に対して、正極活物質層12の空孔率を25%とするプレス圧によりロールプレスした。表3は、ロールプレス後の各双極型電極14(実施例1',4',5')の負極活物質層13の空孔率、および、双極型電極14の反りの測定結果を示したものである。負極活物質層13の空孔率は、所定形状の負極シートのユアサアイオニクス社製・ペンタピクノメータを用いて測定したHe置換体積より算出した。
プレス圧が増加されたことにより、正極活物質層12の空孔率25vol%と密度が高められると共に、負極活物質層13の密度も増加され、その空孔率が低下される。
表3に示す通り、第三活物質の添加量が、実施例1では5wt%で空孔率24vol%となり、実施例4では20wt%で空孔率25vol%となり、実施例5では10wt%で空孔率24vol%となり、夫々反りが確実に抑制されるものとなっている。
次いで、下記に示す要領により、比較例1および実施例1(第三活物質添加量5wt%),実施例2(10wt%)、実施例4(10wt%),実施例5(10wt%),実施例7(5wt%)の正極および負極を用いて、夫々の双極型二次電池10を作成した。
正極は集電体11の一方の面に正極スラリーを170mm×270mmの範囲に25mg/cm2の目付量で塗布・乾燥して、ロールプレス機を用いてプレスしたものを6枚用意した。負極は別の集電体11の一方の面に、夫々比較例1および実施例1,2、4,5,7の負極スラリーを180mm×280mmの範囲に、正極と対向する部分の充電容量が正極よりも10%多くなる目付量で塗布・乾燥して、ロールプレス機を用いてプレスしたものを、夫々用意した。
また、セパレータとしてのポリプロピレン製の不織布50μmを使用した。そして、イオン伝導性高分子マトリックスの前駆体である平均分子量7500〜9000のモノマー溶液を5重量%、電解液としてEC+DMC(vol比1:3)を95重量%、1.0M LiPF6、重合開始剤(BDK)からなるプレゲル溶液を用意した。上記モノマー溶液としては、ポリエチレンオキシドとポリプロピレンオキシドの共重合体を使用した。そして、上記ポリプロピレン製の不織布を上記プレゲル溶液に浸漬させて、石英ガラス基板に挟み込み紫外線を15分照射して前駆体を架橋させて、ゲルポリマー電解質層15を得た。
そして、上記負極の負極活物質層13上に電解質保持不織布を載せ、その周りに三層構造のホットメルトをおきシール材とした。そして、電解質保持不織布の上に上記正極の正極活物質層12を積層し、その後にシール部21を上下から熱と圧力をかけて融着してシールした。これらの積層体をラミネートパックで封止し、正極1層、負極1層のテストセルを、比較例1および実施例1,2、4,5,7の夫々について作製した。
そして、比較例1および実施例1,2、4,5,7の夫々のテストセルに対して、電流容量1Cの電流を印加し、得られる電圧値より各テストセルの直流抵抗値を測定した。表4は、各テストセルの直流抵抗値の測定結果を示したものである。
表4に示すように、テストセルの直流抵抗値は、比較例1よりも実施例1,2,4,5,7が低くなっており、セルの内部抵抗が低下されている。このため、電子抵抗が下がり、電子導電性を確保することができ、ひいては、出力特性・容量特性に優れた電池とすることができ、優位であることが理解できる。