以下、本発明の実施形態に係る画像形成装置について、図面に基づき詳細に説明する。ここで、画像形成装置として、タンデム方式の画像形成装置を例に挙げて説明する。また、画像形成装置の種類としては、カラープリンターを例に挙げて説明するが、例えば、複写機、ファクシミリ装置及び複合機等であってもよく、カラープリンターに限定されない。
〔第1の実施の形態〕
画像形成装置10は、図1に示すように、箱形を呈した装置本体11内に内装された、用紙Pを給紙する給紙部12と、この給紙部12から給紙された用紙Pを搬送しながら、この用紙P上に画像情報に基づくトナー像を形成する画像形成部13と、この画像形成部13で用紙P上に形成された未定着トナー像を用紙Pに定着する定着処理を施す定着部14とが設けられている。更に、装置本体11の上部には、定着部14で定着処理の施された用紙Pが排紙される排紙部15が形成されている。
装置本体11の上面の適所には、用紙Pに対する出力条件等を入力操作するための図略の操作パネルが設けられている。この操作パネルには、電源キーや出力条件を入力するための各種のキー等が設けられている。
また、装置本体11内には、図1に示す画像形成部13より右側位置に、上下方向に延びた用紙搬送路111が形成されている。用紙搬送路111には、適所に搬送ローラー対112が設けられている。そして、用紙搬送路111は、搬送ローラー対112によって、用紙Pを給紙部12から排紙部15まで搬送し、その搬送中の用紙Pが、画像形成部13の転写部や定着部14を通過するように形成されている。
給紙部12は、給紙トレイ121、ピックアップローラー122及び給紙ローラー対123を備えている。給紙トレイ121は、装置本体11内における画像形成部13より下方位置に挿脱可能に装着され、複数枚の用紙Pが積層された用紙束P1を貯留する。ピックアップローラー122は、給紙トレイ121の、用紙Pの搬送方向上流側で上方位置、具体的には、図1に示す右上方位置に設けられ、給紙トレイ121に貯留された用紙束P1の最上面の用紙Pを1枚ずつ取り出す。給紙ローラー対123は、ピックアップローラー122によって取り出された用紙Pを用紙搬送路111に送り出す。そうすることによって、給紙部12は、画像形成部13へ向けて用紙Pを給紙する。
また、給紙部12は、装置本体11の、図1に示す左側側面に取り付けられる手差しトレイ124、ピックアップローラー125及び給紙ローラー対126を更に備えている。手差しトレイ124は、用紙Pを手差し操作で画像形成部13へ向けて供給するためのものである。手差しトレイ124は、装置本体11の側面に収納可能であり、手差しで用紙Pを給紙する際、図1に示すように、装置本体11の側面から引き出されて手差し給紙に供される。ピックアップローラー125は、手差しトレイ124に載置された用紙Pを取り出す。ピックアップローラー125によって取り出された用紙Pは、給紙ローラー対123及び126によって用紙搬送路111に送り出す。そうすることによって、前記給紙部12は、画像形成部13へ向けて用紙Pを給紙する。
画像形成部13は、所定の画像処理によって給紙部12から給紙された用紙Pにカラー画像等の画像を形成させるものである。画像形成部13は、複数の画像形成ユニット131と、中間転写ベルト(一次転写部材)132と、一次転写ローラー133と、二次転写ローラー(二次転写手段)134とを備えている。
画像形成ユニット131としては、本実施形態では、中間転写ベルト132の回転方向上流側から下流側へ(図1に示す左側から右側へ)向けて順次配設された、マゼンタ(M)色の現像剤を用いるマゼンタ用ユニット131M、シアン(C)色の現像剤を用いるシアン用ユニット131C、イエロー(Y)色の現像剤を用いるイエロー用ユニット131Y、及びブラック(K)色の現像剤を用いるブラック用ユニット131Kが備えられている。各ユニット131は、感光体ドラム(像担持体)135を備え、感光体ドラム135上に画像情報に基づいて各色に対応するトナー像を形成させ、中間転写ベルト132に一次転写する。
画像形成ユニット131は、感光体ドラム135が矢印方向に回転可能に配置されている。そして、感光体ドラム135の周囲には、除電装置24、ドラムクリーニング装置25、帯電装置21、露光装置22及び現像装置23が各々配置されている。
帯電装置21は、矢印方向に回転されている感光体ドラム135の周面を帯電させる。露光装置22は、帯電装置21によって周面が帯電された感光体ドラム135の周面に、画像情報に基づくレーザー光を照射し、感光体ドラム135の周面上に画像情報に基づく静電潜像を形成させる。
現像装置23は、感光体ドラム135の周面にトナーを供給する。感光体ドラム135は、露光装置22から出射されるレーザー光によって周面に静電潜像が形成され、現像装置23によるトナー供給によって顕像化されたトナー像を担持する。
除電装置24は、一次転写ローラー133が感光体ドラム135周面上のトナー像を中間転写ベルト132に一次転写した後、感光体ドラム135の周面上に残存したトナーを除電させるものである。感光体ドラム135の周面は帯電しているため、除電することによって、後述するドラムクリーニング装置25が感光体ドラム135の周面上の残トナーを好適に除去することができる。
ドラムクリーニング装置25は、一次転写後に感光体ドラム135の周面にある残トナーを除去して清浄化するものである。具体的には、例えば、クリーニングブレード等が挙げられる。ドラムクリーニング装置25によって清浄化処理された感光体ドラム135の周面は、新たな画像形成処理のために帯電位置へ向かう。ドラムクリーニング装置25によって除去されたトナーは、所定の経路を通ってトナー回収ボックス(不図示)に搬送され、貯留される。
中間転写ベルト132は、複数の画像形成ユニット131によって、その周面(トナー担持面)に画像情報に基づくトナー像が一次転写されるためのものである。即ち、中間転写ベルト132は、本実施形態においては、感光体ドラム135と一次転写ローラー133とで狭持され、感光体ドラム135からトナー像が転写される周面を有する被転写体である。
また、中間転写ベルト132は、無端状のベルト状回転体であって、その周面側が各感光体ドラム135の周面にそれぞれ当接するように、二次転写対向ローラー136及び従動ローラー137に架け渡されている。また、中間転写ベルト132は、中間転写ベルト132を介して各感光体ドラム135と対向する位置に配される各一次転写ローラー133によって各感光体ドラム135に押圧された状態で、二次転写対向ローラー136の回転駆動によって、無端回転するように構成されている。
二次転写対向ローラー136は、ステッピングモータ等の駆動源によって回転駆動し、中間転写ベルト132を無端回転させるための駆動力を与える。従動ローラー137は、回転自在に設けられ、二次転写対向ローラー136による中間転写ベルト132の無端回転に伴って従動回転する。
一次転写ローラー133は、中間転写ベルト132を狭持して感光体ドラム135周面上のトナー像を中間転写ベルト132に一次転写させる。また、一次転写ローラー133は、中間転写ベルト132を介して各感光体ドラム135と対向する位置に配置される。一次転写ローラー133は、各画像形成ユニット131の感光体ドラム135に対して、それぞれ設けられる。
また、一次転写ローラー133は、上述したように、中間転写ベルト132が感光体ドラム135に押圧された状態になるように、中間転写ベルト132に接触している。そして、一次転写ローラー133は、中間転写ベルト132に接触したまま、中間転写ベルト132の無端回転に従属して回転する。その際、各一次転写ローラー133に、トナーの帯電極性とは逆極性である一次転写バイアスを印加することによって、各感光体ドラム135上に形成されたトナー像が、各感光体ドラム135とそれに対応する各一次転写ローラー133との間で、中間転写ベルト132に一次転写される。これにより、各感光体ドラム135上に形成されたトナー像が、矢印A方向(図1では、反時計回り)に周回する中間転写ベルト132に重ね塗り状態で順次一次転写される。
二次転写ローラー134は、中間転写ベルト132の周面に接触してニップ部を形成し、そのニップ部を通過する用紙Pに、中間転写ベルト132の周面上のトナー像を二次転写させる。
二次転写ローラー134は、中間転写ベルト132を介して、二次転写対向ローラー136と対向する位置に配置され、中間転写ベルト132に接触したまま、中間転写ベルト132の無端回転に従属して回転する。その際、二次転写ローラー134に、トナーの帯電極性とは逆極性である二次転写電流を供給することによって、中間転写ベルト132上に一次転写されたトナー像が、二次転写ローラー134と二次転写対向ローラー136との間で、給紙部12から給紙された用紙Pに二次転写される。これにより、用紙P上に、画像情報に基づくトナー像が未定着の状態で転写される。
また、画像形成部13には、中間転写ベルト132における二次転写位置より回転方向下流側であって一次転写位置より回転方向上流側の位置に、ベルトクリーニング装置(除去手段)138を更に備えている。ベルトクリーニング装置138は、ファーブラシ31、トナー回収ローラー32、クリーニングブレード33及びトナー回収スクリュー34を備え、二次転写後、中間転写ベルト132の周面上に残った残トナーを除去して清浄化するための装置である。
トナー回収ローラー32にはトナーの帯電極性とは逆極性のクリーニングバイアス電流が供給される。これにより、接地された従動ローラー135から中間転写ベルト132、ファーブラシ31を経てトナー回収ローラー32へ電位傾斜が発生する。これにより、ファーブラシ31は、中間転写ベルト132上の残トナーを静電的に吸着する。ファーブラシ31が吸着したトナーは、トナー回収ローラー32へ移動する。
トナー回収ローラー32に付着したトナーはクリーニングブレード33が掻き落とし、掻き落とされたトナーはトナー回収スクリュー34によってトナー回収ボックス(不図示)へ搬送され、貯留される。このようにベルトクリーニング装置138によって清浄化処理された中間転写ベルト132の周面は、新たな一次転写処理のために一次転写位置へ向かう。
濃度センサー(測定手段)40は、中間転写ベルト132に転写されたトナー像のトナー濃度を測定するものであり、中間転写ベルト132におけるブラックトナー像の一次転写位置より回転方向下流側であって二次転写位置より回転方向上流側の位置に配置される。
図2及び図3は、濃度センサー40の配置について詳しく示した図である。図2は画像形成部13の下方から中間転写ベルト132と濃度センサー40を見た時の斜視図であり、図3は、図2に示す矢印Y方向から見たときの図、つまり、二次転写対向ローラー136の回転軸と直交する方向から中間転写ベルト132及び濃度センサー40を見た時の正面図である。図2に示すように、濃度センサー40は、中間転写ベルト132の回転方向(矢印A方向)と直交する方向(矢印B方向)に沿って所定間隔で複数個配置される。
また、図3に示すように、中間転写ベルト132には、画像形成ユニット131によってトナー像が転写される転写領域132Aと、トナー像が転写されない非転写領域132Bが存在する。非転写領域132Bは、中間転写ベルト132の矢印X方向における両端部に相当する。濃度センサー40は、転写領域132Aのトナー濃度を測定する濃度センサー40aと、非転写領域132Bのトナー濃度を測定する濃度センサー40bによって構成される。濃度センサー40aと濃度センサー40bは、同種のセンサーである。
濃度センサー40は、例えば中間転写ベルト132上のトナー像の光学濃度を検出するものであり、例えば反射光を検出する鏡面反射型センサーが用いられる。このような鏡面反射型センサーは、中間転写ベルト132表面の検出位置に対して所定角度だけ傾斜して配置されたLED光源と、受光素子としてのフォトトランジスタ等によって構成される。そして中間転写ベルト132上のトナー像に対してLED光源から光が照射され、その反射光の量をフォトトランジスタが検出することによってトナー像の光学濃度(以下、単に「濃度」という)を測定する。濃度センサー40は測定結果を電気信号に変換し、後述する制御部へ出力する。
定着部14は、画像形成部13で転写された用紙P上のトナー像に対し定着処理を施す。定着部14は、内部に加熱源である通電発熱体を備えた加熱ローラー141と、加熱ローラー141と配向配置された定着ローラー142と、定着ローラー142と加熱ローラー141との間に張架された定着ベルト143と、定着ベルト143を介して定着ローラー142と対向配置された加圧ローラー144とを備えている。
定着部14へ供給された用紙Pは、定着ベルト143と加圧ローラー144との間に形成される定着ニップ部を通過することで、加熱加圧される。これにより、画像形成部13で用紙Pに転写されたトナー像は、用紙Pに定着される。定着処理の完了した用紙Pは、定着部14の上部から延設された用紙搬送路111を経由して、装置本体11の頂部に設けられた排紙部15の排紙トレイ151へ向けて排紙される。
排紙部15は、装置本体11の頂部が凹没されることによって、形成され、この凹部の底部に排紙された用紙Pを受ける排紙トレイ151が形成されている。
図4は、二次転写ローラー134と濃度センサー40に関連する部分の電気的構成を示した図である。電源(二次転写電流供給手段)D1は、トナーの帯電極性とは逆極性の二次転写電流を二次転写ローラー134に供給する。この二次転写電流の供給により、中間転写ベルト132上に形成されたトナー像が用紙Pへ二次転写される。
制御部(転写電流制御手段)42は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)等によって構成され、画像形成装置10を構成する各機能部への指示信号の出力、データ転送等を行って画像形成装置10を統括的に制御するものである。また、制御部42は、濃度センサー40から中間転写ベルト132の転写領域132A及び非転写領域132Bのトナー濃度の測定結果を取り込み、測定結果に応じて二次転写電流の絶対値の低下量を決定する。そして、決定した低下量に基づいて二次転写電流の絶対値を下げる制御を電源D1に対して行う。
画像形成ユニット131が形成する画像の画像部が少ない、つまり印字率が低い状態が長く続くと、現像装置23から感光体ドラム135へ移動するトナー量が少なくなる。そのため、現像装置23内のトナーが撹拌等によってストレスを受けて劣化し、十分に帯電されない不良帯電トナーが増加する。この不良帯電トナーは、感光体ドラム135や中間転写ベルト132の画像転写領域ではない部分(白地部)に付着しやすく、画像かぶりが発生する。
図5及び図6は、二次転写位置におけるトナーの移動を説明するための図である。図5に示すように、中間転写ベルト132の周面には、帯電能力が正常である正常帯電トナーTと、転写領域132Aの白地部に付着した不良帯電トナーTxがあるとする。尚、本実施の形態では、正常帯電トナーTは正電荷を帯びており、不良帯電トナーTxは帯電量が0近傍、又は0近傍からわずかに正電荷を帯びているものとして説明する。
電源D1が通常用いるマイナスの二次転写電流を二次転写ローラー134に供給すると、プラスの正常帯電トナーTは二次転写ローラー134側へ引き寄せられて用紙Pへ移動する。このとき、帯電量が0近傍の不良帯電トナーTxも同時に用紙Pへ移動してしまう。このように、用紙Pの本来ならば画像形成が行われない位置にトナーが移動してしまうために画像かぶりが発生し、その結果画像品質が低下してしまう。
そこで、制御部42が濃度センサー40から測定結果を取り込んで、転写領域132Aのうちトナー像が形成されてない白地部(つまり、中間転写ベルト132の地肌部)のトナー濃度と非転写領域132Bのトナー濃度の差を算出する。転写領域132Aの白地部と非転写領域132Bはどちらも中間転写ベルト132の地肌部であるから、トナー濃度は同じであるはずである。しかし、不良帯電トナーが多くなると、転写領域132Aの白地部に不良帯電トナーが付着して、白地部のトナー濃度が高くなる。つまり、転写領域132Aの白地部と非転写領域132Bに濃度差が出てくる。
制御部42は、この濃度差に応じて二次転写電流の絶対値の低下量を決定する。極性はそのままで二次転写電流の絶対値が低下することによって、二次転写位置における転写効率は下がる。
図6を用いて説明すると、電源D1が二次転写ローラー134に供給する二次転写電流を極性はそのままで絶対値だけを下げると、帯電量が十分な正常帯電トナーTは中間転写ローラー134側へ引き寄せられて用紙Pへ移動するが、帯電量が0に近い不良帯電トナーTxは二次転写ローラー134との電位差が小さくなるため、二次転写ローラー134側へ引き寄せられない。つまり、不良帯電トナーTxは用紙Pに転写されないため、画像かぶりが発生しても画像品質の低下を抑えることができる。
図7は、制御部42が二次転写電流の絶対値の低下量を決める際の処理の流れを示したフローチャートである。画像形成ユニット131が中間転写ベルト132にトナー像を形成した後、制御部42は、濃度センサー40から測定結果を取り込む(ステップS11)。画像形成ユニット131が形成するトナー像は、外部装置から送信された画像情報に基づいた用紙Pへの印刷用のトナー像でもよいし、画像かぶりを検出するために予め記憶部(不図示)に記憶されたパッチ画像でもよい。
そして、制御部42は、転写領域132Aのトナー濃度を測定した濃度センサー40aの測定結果から、トナー像が形成されていない白地部のトナー濃度の測定結果を抽出する(ステップS12)。具体的には、制御部42は、露光装置22に送られた画像情報を用いて濃度センサー40aの測定箇所における白地部の位置を特定する。そして、制御部42は、その白地部の位置に対向する位置にある濃度センサー40aの測定結果を採用し、他の濃度センサー40aの測定結果は削除する。
尚、転写領域132Aの白地部のトナー濃度の測定結果については、上記したように、制御部42が全ての濃度センサー40aから測定結果を取り込んだ後、白地部の測定結果を抽出するようにしてもよいし、制御部42が画像情報を用いて白地部の位置を特定した後、その位置に対向配置されている濃度センサー40aからのみ測定結果を取り込むようにしてもよい。
続いて、制御部42は、転写領域132Aの白地部のトナー濃度と非転写領域132Bのトナー濃度の濃度差を算出する(ステップS13)。ここで、転写領域132Aの白地部の測定結果が複数ある場合、制御部42はその平均値を白地部のトナー濃度としてもよいし、最もトナー濃度の高い値を白地部のトナー濃度としてもよい。
また、非転写領域132Bのトナー濃度を測定する濃度センサー40bは、図3では中間転写ベルト132の矢印X方向の両端部にそれぞれ1個(合計2個)配置した図を示した。この場合、制御部42は2つの濃度センサー40bから取り込んだ測定結果の平均値を非転写領域132Bのトナー濃度としてもよいし、何れか一方の測定結果を採用してもよい。また、濃度センサー40bは、中間転写ベルト132の両端部の何れか一方だけに配置することとしてもよい。
制御部42は、ステップS13で算出した濃度差に比例して、二次転写電流の絶対値の低下量を決定する(ステップS14)。つまり、制御部42は、濃度差が小さいときは低下量を小さく、濃度差が大きいときは低下量を大きくする。低下量の決定方法としては、制御部42が各濃度差について予め設定された低下量の値を記憶するデータテーブルを予め記憶しており、制御部42はこのデータテーブルを用いて算出した濃度差から低下量を決定する。この他、制御部42は、予め記憶する所定の計算式を用いて低下量を決定するようにしてもよい。
ここで、二次転写電流の絶対値の低下量は、転写効率の低下による用紙上の画像濃度の低下が視覚的に顕著に表れない範囲とする。図10は二次転写電流と画像濃度(ID)の関係を示すグラフである。図10に示すのは、4連タンデム方式の装置における実験データである。中間転写ベルト132は、120μmのPVDFの基層に、200μmのTPUの弾性層を積層し、表面に3μmのPTFE層をコーティングしたものであり、体積抵抗はlog10Ω・cmである。二次転写ローラー134は、金属性の軸にヒドリンゴムを被せた直径22mmのローラーであり、抵抗はlog7Ωである。また、画像形成時のプロセス速度は150mm/secである。図10に示す結果から、画像濃度は二次転写電流が30μAを超えると画像濃度がほぼ1.4で飽和するため、通常の二次転写電流は30μA付近に設定している。
また、画像濃度の低下が視覚的に顕著に表れないのは画像濃度が1.2付近までである。1.2の画像濃度を得るために必要な二次転写電流は20μAであることがわかる。従って、二次転写電流の絶対値の低下量は、予め定められた二次転写電流(画像かぶりの発生がない時に用いられる通常の二次転写電流)の絶対値に対して30%以下の範囲であることが望ましい。
そして、制御部42は決定した低下量に従って、極性はそのままで二次転写電流の絶対値を下げる制御を電源D1に対して行う(ステップS15)。この制御によって電源D1は、極性はそのままで二次転写電流の絶対値を下げる。これにより、中間転写ベルト132に付着している不良帯電トナーの用紙Pへの転写を抑えることができる。また、二次転写電流の絶対値の低下量は、転写効率の低下によって画像品質が損なわれない範囲で決定されるため、画像品質を維持しつつ、不良帯電トナーの用紙への転写を抑えることができる。
尚、制御部42が行う二次転写電流の絶対値を下げる制御は、用紙1枚分の画像形成が終わり、次の画像形成が開始されるまでの間、若しくは外部装置から送られる印刷ジョブと印刷ジョブの間に行われる。
以上、説明したように、制御部42が転写領域132Aの白地部と非転写領域132Bの各トナー濃度の濃度差を算出し、この濃度差に比例して二次転写電流の絶対値の低下量を決定して電源D1を制御することにより、不良帯電トナーの用紙Pへの転写を抑えることができる。つまり、画像かぶりが発生しても、画像品質を維持することができる。
〔第2の実施の形態〕
第1の実施の形態では、転写領域132Aの白地部と非転写領域132Bのトナー濃度の濃度差に応じて二次転写電流の絶対値を下げることによって、不良帯電トナーの用紙Pへの転写を抑制する方法について説明した。第2の実施の形態では、二次転写後に中間転写ベルト132に残った不良帯電トナーを効率的に除去することによって、中間転写ベルト132のクリーニング不良を防ぐ方法について説明する。尚、本実施の形態における画像形成装置は、第1の実施の形態において説明した画像形成装置10と同じであるため、説明を省略する。
二次転写ローラー136には、トナーの帯電極性とは逆極性の二次転写電流が供給されているが、帯電能力が低下した不良帯電トナーは、二次転写位置において逆帯電化する場合がある。そして、ベルトクリーニング装置138のトナー回収ローラー32にはトナーの帯電極性とは逆極性のクリーニングバイアス電流が供給されているが、逆帯電トナーはベルトクリーニング装置138のファーブラシ31と静電的に反発し合いベルトから除去されにくい。そして、逆帯電トナーが中間転写ベルト132に付着したまま一次転写位置へ向かうと。画像品質の低下を招いてしまう。
そこで、後述する制御部は、濃度センサー40が測定したトナー濃度に応じて二次転写電流の絶対値を低下させると共に、ベルトクリーニング装置138のトナー回収ローラー32に供給されるクリーニングバイアス電流の絶対値も低下させる。こうすることで、逆帯電トナーとファーブラシ31の反発力が弱まり、ファーブラシ31が逆帯電トナーを掻き取りやすくなる。つまり、逆帯電トナーを確実に除去することができ、中間転写ベルト132のクリーニング不良を防ぐことができる。
図8は、二次転写ローラー134、濃度センサー40及びトナー回収ローラー32に関連する部分の電気的構成を示した図である。第1の実施の形態において説明した図4と同じ構成要素については同じ符号を付し、説明を省略する。
電源(バイアス電流供給手段)D2は、トナーの帯電極性とは逆極性のクリーニングバイアス電流をトナー回収ローラー32に供給する。
制御部(転写電流制御手段、バイアス電流制御手段)44は、画像形成装置10を統括的に制御するものであり、更に、濃度センサー40から中間転写ベルト132の転写領域132A及び非転写領域132Bのトナー濃度の測定結果を取り込み、測定結果に応じて二次転写電流の絶対値の低下量を決定して、二次転写電流の絶対値を可変させる制御を電源D1に対して行う。同時に、制御部44は、濃度センサー40の測定結果から転写領域132Aの単位面積当たりのトナー付着量を算出し、このトナー付着量に応じてクリーニングバイアス電流の絶対値の低下量を決定する。
図9は、制御部44が二次転写電流及びクリーニングバイアス電流の絶対値の低下量を決める際の処理の流れを示したフローチャートである。ステップS21〜ステップS25については、第1の実施の形態において説明した図7のフローチャートと同じであるため、説明を省略し、ステップS26から説明する。
制御部44は、濃度センサー40aから取り込んだトナー濃度を用いて、転写領域132Aにおける単位面積当たりのトナー付着量を算出する(ステップS26)。トナー付着量はトナー濃度に比例するため、制御部44は測定結果からトナー付着量を算出することができる。
そして、制御部44は、算出した単位面積当たりのトナー付着量からクリーニングバイアス電流の絶対値の低下量を決定する(ステップS27)。単位面積当たりのトナー付着量が多いということは、不良帯電トナーの他に、帯電量を十分持った正常帯電トナーも多いことになる。つまり、二次転写後の残トナーに正常帯電トナーが多く含まれる可能性が高い。ベルトクリーニング装置138は、正常帯電トナーも確実に除去する必要があるため、制御部44はクリーニングバイアス電流の絶対値の低下量を小さくする。言い換えると、クリーニング効率はあまり低下させずに、ファーブラシ31による不良帯電トナーの掻き取りを行いやすくする。
一方、単位面積当たりのトナー付着量が少ないということは、残トナーに含まれる正常帯電トナーが少ないことになる。従って、逆帯電トナーを確実に除去するために、制御部44はクリーニングバイアス電流の絶対値の低下量を大きくする。
クリーニングバイアス電流の絶対値が低下すると、ファーブラシ31と逆帯電トナーとの反発力が弱まるため、ファーブラシ31が逆帯電トナーを掻き取りやすくなる。つまり、逆帯電トナーを確実に除去することができ、中間転写ベルト132のクリーニング不良を防ぐことができる。また、制御部44は、単純にクリーニングバイアス電流の絶対値を低下させるのではなく、中間転写ベルト132の転写領域132Aにおける単位面積当たりのトナー付着量に反比例してクリーニングバイアス電流の低下量を決定する。つまり、制御部44は残トナーに含まれる正常帯電トナーの量によってクリーニングバイアス電流の低下量を決定するため、正常帯電トナーはもちろん、逆帯電トナーも効率的に除去することができる。
クリーニングバイアス電流の低下量の決定方法としては、制御部44は各トナー付着量に対して予め設定された低下量を記憶するデータテーブルを予め記憶しており、制御部44はこのデータテーブルを用いて算出したトナー付着量から低下量を決定する。この他、制御部44は、予め記憶した所定の計算式を用いて低下量を決定してもよい。
尚、クリーニングバイアス電流の低下量は、クリーニングバイアス電流の絶対値を低下させても正常帯電トナーを確実に除去できる範囲とする。図11は、クリーニングバイアス電流とトナー回収ローラーによるトナー回収量の関係を示す実験データである。図10の測定において前述の装置を用いて実験を行った実験データである。ベルトクリーニング装置138のファーブラシ31は、外径19.0mm、直径10mmの金属軸と、300T/50F、100KF/inch2の導電性アクリル繊維のブラシで構成されている。トナー回収ローラー32は、表面をアルマイト処理した直径18mmの金属ローラーである。また、ファーブラシ31とトナー回収ローラー32の線速比は1.2である。図11の実験データは、中間転写ベルト132上に特定のパターン画像を形成して、その画像をそのままベルトクリーニング装置138に除去させて、トナー回収ローラー32が回収したトナー量を測定したものである。
図11の実験データから、クリーニングバイアス電流が22μA付近でトナーの回収効率が最も良いことが分かる。また、クリーニングバイアスが10μA付近まではトナー回収量があまり大きく低下しないことがわかる。従って、クリーニングバイアス電流の低下量は、予め定められたクリーニングバイアス電流(画像かぶりの発生がない時に用いられる通常のクリーニングバイアス電流)の絶対値の50%以下の範囲であることが望ましい。
以上、説明したように、制御部44が転写領域132Aにおける単位面積当たりのトナー付着量に反比例してクリーニングバイアス電流の絶対値の低下量を決定し、電源D2を制御することにより、ベルトクリーニング装置138は正常帯電トナーの他に逆帯電トナーを除去することができる。つまり、クリーニング不良を防ぐことができる。