以下、本発明に係る画像形成装置を図面に則して更に詳しく説明する。
[実施例1]
1.画像形成装置の全体的な構成及び動作
図1は、本発明の一実施例に係る画像形成装置100の概略縦断面図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真方式を用いたレーザプリンタである。
画像形成装置100は、トナー像を担持する回転可能な像担持体として、ドラム型(円筒形)の電子写真感光体(感光体)である感光ドラム1を有する。感光ドラム1の周囲には、その回転方向に沿って、次の各プロセス機器が配置されている。まず、帯電手段としてのローラ型の帯電部材である帯電ローラ2が配置されている。次に、露光手段としての露光装置3が配置されている。次に、現像手段としての現像装置4が配置されている。次に、転写手段としてのローラ型の転写部材である転写ローラ5が配置されている。次に、クリーニング手段としてのクリーニング装置6が配置されている。
本実施例では、感光ドラム1と、感光ドラム1に作用するプロセス手段としての帯電ローラ2、現像装置4及びクリーニング装置6とは、一体的にカートリッジ化されてプロセスカートリッジを形成している。このプロセスカートリッジは、画像形成装置100の装置本体に対して着脱可能とされている。
感光ドラム1は、直径30mmのアルミニウムシリンダの外周面に有機光導電体層(OPC感光体)を塗布して構成したものである。感光ドラム1は、その長手方向(回転軸線方向)の両端部を支持部材によって回転自在に支持されており、一方の端部に駆動手段としての駆動モータ(図示せず)からの駆動力が伝達されることにより、図中矢印R1方向に回転駆動される。この感光ドラム1の所定の帯電極性は負極性である。
帯電ローラ2は、芯金の周囲に導電性の弾性層が形成された導電性ローラである。帯電ローラ2は、感光ドラム1の表面に当接させられ、感光ドラム1に向けて付勢(加圧)されている。帯電ローラ2は、感光ドラム1の回転に対し従動して回転する。帯電ローラ2には、図示しない帯電電圧印加手段としての帯電電源(高圧電源)から、所定の極性(本実施例では負極性)で、かつ、放電開始電圧以上の所定の帯電電圧(帯電バイアス)が印加される。これにより、帯電ローラ2は、感光ドラム1の表面を一様に負極性に帯電させる。
露光装置3は、レーザスキャナ(レーザ光学ユニット)で構成されており、画像信号に基づいて感光ドラム1の表面にレーザビームを照射し、感光ドラム1上に静電潜像(静電像)を形成する。露光装置3は、画像形成装置100と通信可能に接続されたパーソナルコンピュータ(PC)などの外部のホスト機器から画像形成装置100のコントローラ150に入力された画像信号に応じて、駆動回路(図示せず)を介してレーザ光Lの点灯が制御される。本実施例では、画像解像度は600dpiに設定されているため、副走査方向(感光ドラム1の表面の移動方向)において約42.3μmごとに、帯電済みの感光ドラム1の表面を選択的に露光する。
現像装置4は、現像剤としてのトナーを収容した現像容器41と、感光ドラム1にトナーを供給して静電潜像を現像する現像剤担持体としての現像ローラ42と、を有する。現像容器41に収容されたトナーが現像ローラ42に供給され、現像ローラ42に付着したトナーは摺擦により一様に所定の極性(本実施例では負極性)に帯電させられる。また、現像ローラ42には、図示しない現像電圧印加手段としての現像電源(高圧電源)から、感光ドラム1の表面電位より絶対値が小さく、かつ、負極性である所定の現像電圧(現像バイアス)が印加される。これにより、現像ローラ42から感光ドラム1上の静電潜像の画像部のみにトナーを付着させることが可能となり、静電潜像はトナー像として現像される。このように、本実施例では、イメージ部露光と反転現像とにより、トナー像が形成される。すなわち、一様に帯電処理された後に露光されることで電位の絶対値が小さくなった感光ドラム1の露光部に、感光ドラム1の帯電極性と同極性に帯電したトナーが付着する。
転写ローラ5は、芯金の周囲に導電性の弾性層が形成された導電性ローラである。この転写ローラ5は、ステンレス鋼などの金属からなる外径6mmのシャフトの周囲に、外径15mmとなるよう発泡性弾性層が形成されて構成されている。転写ローラ5の電気抵抗は、1×107〜1×109Ωに調整されている。転写ローラ5は、感光ドラム1に向けて付勢(加圧)され、感光ドラム1と転写ローラ5とが接触する転写部(転写ニップ)Nを形成する。転写ローラ5は、感光ドラム1の回転に対し従動して回転する。また、転写ローラ5には、転写電圧印加手段としての転写電源(高圧電源)50から所定の転写電圧(転写バイアス)が印加される。
転写電源50は、直流電源(高圧電源)51と交流電源(高圧電源)52とを有して構成される。転写電源50は、直流電源51によって出力される現像時のトナーの帯電極性(正規の帯電極性)とは逆極性である正極性の直流電圧に、交流電源52によって出力される交流電圧が重畳された転写電圧(振動電圧)を、転写ローラ5に印加する。本実施例では、画像形成時に転写電圧の直流電圧及び交流電圧は、それぞれ定電圧制御される。これにより、転写部Nに転写電界が形成され、感光ドラム1上のトナー像はこの転写電界の作用により記録材S上に転写される。このように、転写電源50は、直流成分と交流成分とを含む電圧を出力して、転写部Nにおいて感光ドラム1から記録材Sにトナー像を転写させる転写電界を転写部Nに形成する。直流電圧値及び交流電圧値は、コントローラ150によって制御され、画像パターン、雰囲気環境、記録材Sの種類などに応じて変更される。なお、本実施例では、転写電源50は、直流電圧と交流電圧の出力を独立して変更することができる。すなわち、コントローラ150は、転写電源50からの直流電圧と交流電圧の出力のオン、オフを制御して、転写ローラ5に直流電圧と交流電圧のいずれか又はその両方の重畳電圧を出力するように制御することができる。また、コントローラ150は、転写電源50の直流電圧の出力電圧値と、交流電圧の出力電圧値と、をそれぞれ制御することができる。
なお、画像形成装置100に設けられたコントローラ(制御部)150は、演算処理を行う中心的素子であるCPU、記憶素子であるROM、RAMなどのメモリなどを有して構成される。RAMには、センサの検知結果、演算結果などが格納され、ROMには制御プログラム、予め求められたデータテーブルなどが格納されている。本実施例では、コントローラ150が、画像形成装置100の各部を統括的に制御する。特に、本実施例との関係で言えば、コントローラ150は、後述するように転写電圧において直流電圧に重畳する交流電圧の電圧値(ピークピーク値)を変更する制御を行う。
クリーニング装置5は、クリーニング部材としてのクリーニングブレード61と、回収されたトナーを収容する回収トナー容器62と、を有する。クリーニングブレード61は、ウレタンゴムなどの弾性ゴムを板状に形成したブレードである。クリーニングブレード61は、感光ドラム1に当接して配置され、転写工程後に感光ドラム1上に残った転写残トナーなどの不要なトナーを、回転する感光ドラム1上から物理的に掻き取って除去する。クリーニングブレード3により除去されたトナーは、回収トナー容器62に回収される。そして、この回収されたトナーは、プロセスカートリッジの交換とともに廃却される。
画像形成装置100の下部には、記録材Sを収納するカセット7が装着されており、このカセット7に収納された記録材Sが、給送ローラ8によって1枚ずつ分離給送され、搬送ローラ対9により転写部Nへと搬送される。そして、転写部Nにおいて、この記録材Sに、感光ドラム1上のトナー像が転写される。
トナー像が転写された記録材Sは、感光ドラム1から分離されて、定着手段としての定着装置10へと搬送される。記録材Sは、定着装置10において、加熱ローラ10aと加圧ローラ10bとの接触部である定着部(定着ニップ)Fを通過することで加熱及び加圧されて、その上にトナー像が定着(固着)される。トナー像が定着された記録材Sは、排出ローラ対11により、画像形成装置100の上部へ排出(出力)される。
本実施例では、帯電ローラ2、露光装置3及び現像装置4によって、感光ドラム1にトナー像を形成するトナー像形成手段が構成される。
2.転写電圧の制御
次に、本実施例における転写電圧の制御について説明する。本実施例の特徴の一つは、転写ローラ5に印加する転写電圧において直流電圧に重畳される交流電圧の電圧値(ピークピーク値)を転写部Nに存在するトナー量によって可変にする点にある。
本実施例では、記録材Sが感光ドラム1に巻き付くことを抑制するために、転写電圧において直流電圧に交流電圧を重畳する。薄紙などの剛性が弱い記録材Sを用いる場合、記録材Sと感光ドラム1との間の静電気力の方が、記録材Sが感光ドラム1から離れようとする力よりも強くなり、記録材Sが感光ドラム1に密着して巻き付き、ジャムが発生しやすくなる。転写電界が、直流電源51が出力する電圧と交流電源52が出力する電圧とによって形成されると、交流電源52が出力する交流電圧により生じる交流電界の除電能力によって記録材Sが除電される。そのため、記録材Sと感光ドラム1との静電気力が弱められ、記録材Sが感光ドラム1に密着したまま感光ドラム1の外周の曲率に沿って曲ることが抑制され、記録材Sが搬送経路に沿って直進しやすくなるので、ジャムの発生を抑制することができる。
しかしながら、正極性の直流電圧に交流電圧を重畳した場合、転写ローラ5に瞬間的に大きな正極性の直流電圧が印加されるのと等しい状況が生じる。転写ローラ5に印加される正極性の転写電圧が大きくなりすぎると、感光ドラム1に対して正電荷を供給する放電が発生し、感光ドラム1上の負極性のトナーの電荷が失われてしまうことがある。負電荷を失ったトナーは、静電的に記録材S上へ転写できなくなるため、画像不良となってしまう。
一方、感光ドラム1への記録材Sの巻き付き具合は、感光ドラム1上のトナーの有無によって変化する。記録材Sと感光ドラム1との間にトナーが介在する場合、トナーがスペーサー粒子として作用して、記録材Sと感光ドラム1との密着具合が緩和され、記録材Sと感光ドラム1との静電吸着力を弱める効果が得られるためと考えられる。
そこで、本実施例では、感光ドラム1の転写部Nに進入する区間に付着しているトナー量の情報を取得する。そして、その情報に基づき、転写部Nに存在するトナー量が多い場合には、転写電圧において直流電圧に重畳する交流電圧の電圧値を小さくし、転写部Nに存在するトナー量が少ない場合には、転写電圧において直流電圧に重畳する交流電圧の電圧値を大きくする。
このように、本実施例では、転写部Nに存在するトナー量の情報に基づいて、転写電圧において直流電圧に重畳する交流電圧の電圧値を変更する制御を行う。これにより、感光ドラム1への記録材Sの巻き付き防止と放電による画像不良の抑制との両立を図ることができる。
本実施例では、コントローラ150が、感光ドラム1の周方向の全領域のうち転写部Nに進入する区間に付着しているトナー量の情報を取得する取得手段として機能する。つまり、この取得手段は、記録材Sへの転写のために転写部Nに進入するトナー像のトナー量の情報を取得する。また、コントローラ150は、取得手段が取得した情報に基づいて、転写電源50の交流成分の出力値(本実施例では電圧値(ピークピーク値))を変更する制御を行う制御手段として機能する。上述のように、コントローラ150は、転写部Nに存在するトナー量が第1のトナー量の場合に、転写部Nに存在するトナー量が第1のトナー量よりも少ない第2のトナー量の場合よりも、転写電源50の交流成分の出力値を小さくする。より詳細には、コントローラ150は、転写電源50の交流成分の出力目標値を変更する処理を実行する。
転写部Nに進入する感光ドラム1上のトナー像の画像面積率は、転写部Nに進入する感光ドラム1上のトナー像の単位面積あたりのトナー量と相関関係がある。したがって、転写部Nに進入する感光ドラム1上のトナー像の画像面積率を求めることで、感光ドラム1の転写部Nに進入する区間に存在する単位面積率あたりのトナー量の情報を取得することが可能となる。そこで、本実施例では、転写電圧において直流電圧に重畳する交流電圧の電圧値を、転写部Nに進入する感光ドラム1上のトナー像の画像面積率に応じて変更する。
本実施例では、転写ニップ幅(転写部Nの感光ドラム1の表面の移動方向の幅)は約2.5mmである。画像解像度600dpiの場合、1画素は約42.3μmであり、2.5mmは約60画素分である。そこで、本実施例では、副走査方向(感光ドラム1の表面の移動方向)において、60画素分の平均値を画素面積率とした。コントローラ150は、画像信号に基づいて、一の記録材Sに対する感光ドラム1上の画像形成領域(トナー像を形成可能な領域)の、感光ドラム1の表面の移動方向の先端側から、60画素分の平均値を順次算出してメモリに記憶していく。
なお、転写材Sへの転写のために転写部Nに進入するトナー像のトナー量の情報は、本実施例のように副走査方向の60画素分の平均値が順次算出されたものに限定されない。転写電圧における直流電圧に重畳する交流電圧の出力値を変更するために、記録材Sの移動方向における感光ドラム1からの記録材Sの分離し易さの程度の差を十分に把握することができればよい。例えば、記録材Sの移動方向を所定の範囲ごとに区分して、各区分におけるトナー像のトナー量を算出してもよい。
図2は、A4サイズの記録材Sと、その上に形成されるトナー像の一例とを示す模式図である。転写部Nにおいて、記録材Sは、図中矢印X方向に搬送される。図2の例では、記録材Sのトナー像が転写される面を搬送方向の先端側を上にして見たときに、上半分、左半分にのみ、ベタ黒画像が形成されている。図2に示すような画像パターンを出力する場合を例に、本実施例における転写電圧の制御の手順を図3のフローチャートを用いて説明する。
まず、コントローラ150は、PCからプリント開始信号を受信すると、画像出力動作(ジョブ)を開始させ、これにより感光ドラム1及び転写ローラ6は回転し始める(STEP1)。次に、コントローラ150は、所定の時間後、直流電圧に交流電圧を重畳した転写電圧の転写ローラ5への印加を開始させる(STEP2)。次に、コントローラ150は、PCから画像データを受信する(STEP3)。次に、コントローラ150は、受信した画像データに基づいて、副走査方向の60画素分の平均値を計算し、画素面積率を計算する(STEP4)。
図4は、図2に示すトナー像における画像面積率の変化を表している。領域Aと領域Eは、トナー像が形成されない領域なので画像面積率は0%となる。また、領域Cは、左半分にベタ黒画像が形成される画像パターンなので、画像面積率は50%となる。また、領域Bは、ベタ白から左半分のベタ黒へ変化する領域なので、副走査方向の1画素分ごとに画像面積率が0%から50%へ線形に変化する。また、領域Dは、左半分のベタ黒からベタ白へ変化する領域なので、副走査方向の1画素分ごとに画像面積率が50%から0%へ線形に変化する。
次に、コントローラ150は、計算した画像面積率に基づき、転写電圧において直流電圧に重畳する交流電圧の電圧値を決定する(STEP5)。そして、コントローラ150は、感光ドラム1上に形成されている画像パターンの各画像面積率の領域が転写部Nに到達する際に、STEP5で決定した交流電圧の電圧値に切り替える(STEP6)。
図5は、本実施例における画像面積率と、転写電圧において直流電圧に重畳する交流電圧の電圧値との関係を表している。画像面積率が0%(ベタ白)の場合は、転写電圧において直流電圧に重畳する交流電圧の電圧値は、感光ドラム1からの記録材Sの分離性が確保できる5KVppとした。そして、画像面積率が100%(ベタ黒)の場合は、転写電圧において直流電圧に重畳する交流電圧の電圧値は0KVppとした。ハーフトーン画像の場合は、画像面積率が0%(ベタ白)の場合と100%(ベタ黒)の場合との間を線形に補間して、転写電圧において直流電圧に重畳する交流電圧の電圧値を決定した。例えば、画像面積率が50%のハーフトーンの場合は、転写電圧において直流電圧に重畳する交流電圧の電圧値は2.5KVppとした。図5に示すような関係の情報が、コントローラ150のメモリに格納されており、コントローラ150はその情報を参照して、転写電圧における直流電圧に重畳する交流電圧の電圧値を決定する。
なお、画像データと、転写電圧において直流電圧に重畳する交流電圧の電圧値との関係は、線形である必要はない。トナー量が多い画像データの場合に電圧値が小さく、トナー量が少ない画像データの場合には電圧値が大きくなるような関係であれば良い。例えば、図6に示すように、非線形な関係でも良い。
次に、コントローラ150は、記録材Sが転写部Nから排出されてから所定の時間後、転写ローラ2への転写電圧の印加を停止させる(STEP7)。その後、コントローラ150は、画像出力動作(ジョブ)を終了させ、これにより感光ドラム1及び転写ローラ5の回転が停止する(STEP8)。
3.効果
次に、本実施例の効果について更に詳しく説明する。
表1は、本実施例の画像形成装置100において、転写電圧において直流電圧に重畳する交流電圧の電圧値を変化させて、最も分離性の悪いベタ白画像を出力した場合の感光ドラム1からの記録材Sの分離性を確認した結果を示す。転写電圧における交流電圧の波形は正弦波とした。また、転写電圧における直流電圧値は3KVとした。また、評価用の記録材Sとしては、キヤノン製の普通紙薄紙CS−520(坪量52g/m2)を使用した。評価結果は、十分な分離性が得られた場合を○、十分な分離性が得られなかった場合を×で示す。
表1からわかるように、転写電圧において直流電圧に重畳する交流電圧の電圧値を5KVpp以上とすることで、感光ドラム1からの記録材Sの分離性が確保される。したがって、本実施例では、転写電圧において直流電圧に重畳する交流電圧の電圧値は、画像面積率0%の場合は5KVppに設定した。一方、画像面積率100%の場合は0KVppに設定した。
表2は、本実施例と比較例について、ベタ白画像を出力した際の転写電圧の直流電圧値とジャムの発生状況との関係を確認した結果を示す。比較例としては、画像に関係無く転写電圧において直流電圧に交流電圧を重畳しない比較例1と、画像に関係無く転写電圧において直流電圧に電圧値5KVppの交流電圧を重畳する比較例2と、について試験を行った。なお、比較例1、比較例2の画像形成装置100の構成は、上述のように転写電圧の構成が異なることを除いて、実質的に本実施例のものと同じである。試験条件は次のとおりである。評価用の記録材Sとしては、キヤノン製の普通紙薄紙CS−520(坪量52g/m2)を使用した。また、転写電圧における交流電圧の波形は正弦波とした。そして、転写電圧の直流電圧値を変化させて、感光ドラム1からの記録材Sの分離不良によるジャムの発生状況を確認した。評価結果は、ジャムが発生しなかった場合を○、発生した場合を×で示す。なお、出力する画像パターンが、それぞれベタ白画像、ベタ黒画像、画像面積率が25%のハーフトーン画像と異なるが、表2の結果を得た試験と、後述の表3、表4の結果を得た試験とで、試験条件、評価結果の表示方法は同じである。
比較例1では、転写電圧の直流電圧値が低い場合はジャムが発生しないものの、転写電圧の直流電圧値を高くするとジャムが発生した。これは、転写電圧の直流電圧値が低いと感光ドラム1への記録材Sの静電吸着力が弱く、転写電圧の直流電圧値が高いと感光ドラム1への記録材Sの静電吸着力が強くなるためと考えられる。一方、比較例2及び本実施例では、ジャムは発生しなかった。これは、転写電圧の直流電圧値が高くなっても、比較例2及び本実施例では転写電圧において直流電圧に交流電圧が重畳されて記録材Sが除電されることで、感光ドラム1への記録材Sの静電吸着力が強くなることが抑制されるためと考えられる。
表3は、本実施例と比較例1、2について、ベタ黒画像を出力した際の転写電圧の直流電圧値とジャムの発生状況との関係を確認した結果を示す。
比較例1、比較例2及び本実施例の全てにおいて、ジャムは発生しなかった。ベタ黒画像の場合、記録材Sと感光ドラム1との間にトナーが介在する。このトナーがスペーサー粒子として作用し、記録材Sと感光ドラム1との静電吸着力を弱める効果が得られるためと考えられる。
表4は、本実施例と比較例1、2について、画像面積率が25%のハーフトーン画像を出力した際の転写電圧の直流電圧値とジャム発生状況との関係を確認した結果を示す。
ベタ黒画像の場合と同様、比較例1、比較例2及び本実施例の全てにおいて、ジャムは発生しなかった。
表5は、本実施例と比較例1、2について、ベタ黒画像を出力した際の転写電圧の直流電圧値と画質との関係を確認した結果を示す。試験条件は次のとおりである。評価用の記録材Sとしては、キヤノン製の普通紙薄紙CS−520(坪量52g/m2)を使用した。また、転写電圧における交流電圧の波形は正弦波とした。そして、転写電圧の直流電圧値を変化させて、画質(転写性、放電による画像不良)を確認した。評価結果は、画像不良が発生せずに画質的に全く問題無い場合を○、画像不良が若干発生しているものの画質的に問題無い場合を△、画像不良が発生して画質的に問題がある場合を×で示す。なお、出力する画像パターンが、それぞれベタ黒画像、画像面積率が25%のハーフトーン画像と異なるが、表5の結果を得た試験と、後述の表6の結果を得た試験とで、試験条件、評価結果の表示方法は同じである。
比較例1では、転写電圧の直流電圧値が2.5KV以下の場合は充分な転写性が得られず、充分な画像濃度が得られるのは転写電圧の直流電圧値が3KV以上の場合であった。また、比較例1では、転写電圧の直流電圧値が4KV以上の場合は、放電による画像不良が発生した。比較例2においても、転写電圧の直流電圧値が2.5KV以下の場合は充分な転写性が得られず、充分な画像濃度が得られるのは転写電圧の直流電圧値が3KV以上の場合であった。しかし、比較例2では、転写電圧の直流電圧値が3.5KV以上の場合に放電による画像不良が発生した。一方、本実施例では、画像パターンがベタ黒画像の場合には、転写電圧において直流電圧に交流電圧は重畳されない。したがって、本実施例も比較例1と同じ結果となった。
表6は、本実施例と比較例1、2について、画像面積率が25%のハーフトーン画像を出力した際の転写電圧の直流電圧値と画質との関係を確認した結果を示す。
比較例1では、転写電圧の直流電圧値が1.5KV以下の場合は充分な転写性が得られず、充分な画像濃度が得られるのは転写電圧の直流電圧値が2.0KV以上の場合であった。ベタ黒画像の場合と比較して低い転写電圧の直流電圧値で良好な転写性が得られるのは、転写するトナー量が少ないためであると考えられる。また、比較例1では、転写電圧の直流電圧値が3.5KV以上の場合は、放電による画像不良が発生した。比較例2においても、転写電圧の直流電圧値が1.5KV以下の場合は充分な転写性が得られず、充分な画像濃度が得られるのは転写電圧の直流電圧値が2.0KV以上の場合であった。しかし、比較例2では、転写電圧の直流電圧値が2.5KV以上の場合に放電による画像不良が発生した。一方、本実施例では、転写電圧の直流電圧値が1.5KV以下の場合は充分な転写性が得られず、充分な画像濃度が得られるのは転写電圧の直流電圧値が2.0KV以上の場合であった。また、本実施例では、転写電圧の直流電圧値が3.0KV以上の場合に放電による画像不良が発生した。本実施例において、画像面積率が25%のハーフトーンの場合は、転写電圧の直流電圧に重畳する交流電圧の電圧値は5KVppよりも小さい2.5KVppに制御される。そのため、比較例2と比べて、放電による画像不良が発生し始める転写電圧の直流電圧値が大きめの値になったものと考えられる。
以上のような転写電圧の直流電圧値を変更して確認したジャムの発生状況及び画質の結果から、ベタ黒画像の転写性が確保される転写電圧の直流電圧値が3.0KVの場合の結果を表7にまとめた。
比較例1では、ベタ白画像において感光ドラム1への記録材Sの巻き付きが発生してジャムとなる。比較例2では、ベタ白画像におけるジャムの発生は抑制できるものの、画像面積率が25%のハーフトーン画像において問題となるレベルの放電による画像不良が発生する。一方、本実施例では、ベタ白画像におけるジャム発生を抑制しつつ、画像面積率が25%のハーフトーン画像における放電による画像不良も問題無いレベルに抑制することが可能となる。つまり、本実施例では、放電による画像不良の発生を低減させつつ、薄紙などの感光ドラム1からの分離性が悪い記録材Sの分離性を確保することが可能となる。
以上、本実施例によれば、記録材Sの画像が形成される領域が転写部Nを通過している際に直流成分と交流成分とを含む転写電圧を印加する場合にも、画像不良を抑制しつつ、感光ドラム1からの記録材Sの分離性を向上させることができる。本実施例によれば、記録材Sの全面に画像形成が可能な、所謂、縁無し画像形成を行う場合などにおいても、記録材Sの移動方向の先端部に形成される画像における画像不良を抑制しつつ、感光ドラム1からの記録材Sの分離性を向上させることができる。
[実施例2]
次に、本発明の他の実施例について説明する。本実施例の画像形成装置の基本的な構成及び動作は、実施例1のものと同じである。ただし、本実施例の画像形成装置は、装置本体内の各プロセス機器のレイアウトが実施例1の画像形成装置のものとは異なる。本実施例の画像形成装置において、実施例1のものと同一又は実施例1のものに対応する機能あるいは構成を有する要素については、同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
図7は、本実施例の画像形成装置100の概略縦断面図である。実施例1では、転写部Nにおいて記録材Sは略鉛直方向に下方から上方に搬送された。これに対して、本実施例では、転写部Nにおいて記録材Sは略水平方向に搬送され、転写部Nにおいて上方に配置された感光ドラム1から記録材Sにトナー像が転写される。
実施例1では、記録材Sの移動方向の先端から後端までの全域において、転写部Nに存在するトナー量に応じて転写電圧における交流電圧の電圧値を変更する制御を行った。
しかし、転写部Nから排出された記録材Sの移動方向の先端が定着部Fへ進入すれば、定着部Fによって記録材Sは搬送されるため、感光ドラム1への記録材Sの巻き付きは防止できる。このように、転写部Nと定着部Fとの間の距離が短く、記録材Sの移動方向の後端が転写部Nを通過しないうちに、記録材Sの移動方向の先端側が定着部Fに進入する場合がある。この場合には、感光ドラム1からの記録材Sの分離性を向上させる目的で転写電圧において直流電圧に交流電圧を重畳するのは、記録材Sの移動方向の先端が定着部Fへ進入するまでの、記録材Sの移動方向の先端側の領域が転写部Nを通過する期間のみで良い。
また、本実施例の画像形成装置100のように、転写部Nを通過した記録材Sに、感光ドラム1からの分離を促進させる方向に重力がかかる場合がある。この場合、記録材Sの先端が定着部Fに進入していなくても、記録材Sの先端部分での記録材Sの感光ドラム1からの分離性が確保されれば、それ以外の記録材Sの後端側の領域では、記録材Sの自重により感光ドラム1からの分離性が確保できる。したがって、この場合にも、感光ドラム1からの記録材Sの分離性を向上させる目的で転写電圧において直流電圧に交流電圧を重畳するのは、記録材Sの移動方向の先端側の一定の領域が転写部Nを通過する期間のみで良い。
そこで、本実施例では、転写部Nに存在するトナー量に応じて転写電圧において直流電圧に重畳する交流電圧の電圧値を変更する制御を、記録材Sの移動方向の先端から後端側の所定の範囲が転写部Nを通過する期間においてのみ実行する。当該制御においては、実施例1と同様に、画像データに基づき、転写部Nに存在するトナー量が多い場合には交流電圧の電圧値を小さくし、転写部Nに存在するトナー量が少ない場合には交流電圧の電圧値を大きくする。そして、記録材Sの上記所定の範囲以外の領域が転写部Nを通過する期間では、転写電圧における直流電圧には交流電圧を重畳しないように転写電圧を制御する。
これにより、記録材Sの移動方向の先端から後端側の所定の範囲では、転写電圧において直流電圧に重畳された交流電圧の効果によって、感光ドラム1からの分離性が確保される。また、記録材Sの上記所定の範囲以外の領域では、上述のように転写電圧における直流電圧に交流重畳を重畳しなくても、感光ドラム1からの分離性が確保される。それと共に、この記録材Sの上記所定の範囲以外の領域では、転写電圧における直流電圧に交流重畳を重畳しないので、実施例1において画像面積率が25%のハーフトーン画像で発生することのあった軽微な画像不良の発生も抑制することが可能になる。
表8は、記録材Sの移動方向の先端からどの程度の範囲が転写部Nを通過するまで転写電圧において直流電圧に交流電圧を重畳すれば、感光ドラム1からの記録材Sの分離性を十分に向上することが可能かを確認した結果を示す。評価用の記録材Sとしては、キヤノン製の普通紙薄紙CS−520(坪量52g/m2)を使用した。転写電圧の直流電圧値は3KVとした。これは、実施例1で説明したように、ベタ黒画像の転写性が確保できる転写電圧の直流電圧値である。また、転写電圧における交流電圧の波形は正弦波とした。そして、転写電圧において直流電圧に電圧値5KVppの交流電圧を重畳する記録材Sの先端から後端側の範囲を変化させながら、ベタ白画像を出力した場合の感光ドラム1からの記録材Sの分離性を確認した。評価結果は、十分な分離性が得られた場合を○、十分な分離性が得られなかった場合を×で示す。
表8からわかるように、本実施例の画像形成装置100の構成では、記録材Sの移動方向の先端から後端側に50mmの範囲が転写部Nを通過する際に転写電圧における直流電圧に交流電圧を重畳すれば、感光ドラム1からの記録材Sの分離性が確保できる。つまり、記録材Sの移動方向の先端から後端側に50mmの範囲よりも後端側が転写部Nを通過する際には、画像がベタ白かベタ黒かによらず、転写電圧において直流電圧に交流電圧を重畳しなくても、感光ドラム1からの記録材Sの分離性が確保できる。
そこで、本実施例では、記録材Sの移動方向の先端から後端側に50mmの範囲が転写部Nを通過する期間においてのみ、転写部Nに存在するトナー量に応じて転写電圧において直流電圧に重畳する交流電圧の電圧値を変更する制御を実行する。これにより、記録材Sの移動方向の先端から後端側に50mmの範囲以外の部分では、例えば画像面積率が25%のハーフトーン画像で発生することのある軽微なレベルの画像不良も抑制することが可能である。
なお、上記所定の範囲は、転写部Nを通過した記録材Sに対する重力の作用など、画像形成装置100の構成に応じて適宜変更することができる。また、上述のように記録材Sの移動方向の後端が転写部Nを通過しないうちに記録材Sの移動方向の先端側が定着部Fに進入する構成の場合、上記所定の範囲は、記録材Sの移動方向の先端が定着部Fへ進入するまでに転写部Nを通過する範囲とすればよい。なお、本実施例では、転写部Nよりも記録材Sの移動方向の下流側で記録材Sを挟持して搬送する挟持部は、定着装置10の定着部Fであるが、転写部Nと定着部Fとの間に定着部Fに加えて又は代えて別の挟持部が設けられていてもよい。その場合、上記所定の範囲は、記録材Sの移動方向の先端がその挟持部へ進入するまでに転写部Nを通過する範囲とすればよい。
[実施例3]
次に、本発明の更に他の実施例について説明する。本実施例では、本発明を中間転写方式のカラー画像形成装置に適用する。
実施例1、2では、本発明を電子写真方式のモノクロプリンタに適用した例を説明したが、本発明はカラー画像形成装置に対しても適用可能である。図8は、カラー画像形成装置の一例である、本実施例の中間転写方式の画像形成装置の要部の概略縦断面図である。図8の画像形成装置において図1又は図7の画像形成装置のものと同一又は対応する機能あるいは構成を有する要素については、同一符号を付して、詳しい説明は省略する。
本実施例の画像形成装置100は、複数の画像形成部として第1、第2、第3、第4の画像形成部(ステーション)PY、PM、PC、PKを有する。各画像形成部PY、PM、PC、PKは、それぞれイエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の画像を形成する。各画像形成部PY、PM、PC、PKの基本的な構成及び動作は、使用するトナーの色が異なることを除いて実質的に同一である。したがって、以下、特に区別を要しない場合は、いずれかの色用の要素であることを示す符号の末尾のY、M、C、Kは省略して、当該要素について総括的に説明する。
各画像形成部Pは、実施例1のものと実質的に同一の感光ドラム1、帯電ローラ2、露光装置3、現像装置4及びクリーニング装置6、並びに、実施例1における転写ローラ5に対応する一次転写ローラ5を有して構成される。
そして、本実施例の画像形成装置100は、各画像形成部Pの第1の像担持体としての感光ドラム1に対向するように、第2の像担持体としての無端ベルト状の中間転写体である中間転写ベルト20を有する。中間転写ベルト20は、複数の支持ローラとしての駆動ローラ21、テンションローラ22、二次転写対向ローラ23に所定の張力をもって巻回されている。中間転写ベルト20は、画像形成時には、駆動ローラ21によって図中矢印R2方向に回転駆動される。中間転写ベルト20の内周面側において、各感光ドラム1と対向する位置に、一次転写手段としてのローラ型の一次転写部材である一次転写ローラ5が配置されている。一次転写ローラ5は、中間転写ベルト20を介して感光ドラム1に向けて付勢(押圧)され、中間転写ベルト20と感光ドラム1とが接触する一次転写部(一次転写ニップ)N1を形成する。また、中間転写ベルト20の外周面側において、二次転写対向ローラ23と対向する位置に、二次転写手段としてのローラ型の二次転写部材である二次転写ローラ30が配置されている。二次転写ローラ30は、中間転写ベルト20を介して二次転写対向ローラ23に向けて付勢(押圧)され、中間転写ベルト20と二次転写ローラ30とが接触する二次転写部(二次転写ニップ)N2を形成する。また、中間転写ベルト20の外周面側において、駆動ローラ21と対向する位置には、中間転写体クリーニング手段としてのベルトクリーニング装置24が配置されている。
感光ドラム1上に形成されたトナー像は、一次転写部N1において、一次転写ローラ5の作用により、中間転写ベルト20上へ転写(一次転写)される。例えば、フルカラー画像の形成時には、各感光ドラム1上に形成されたイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各色のトナー像が各一次転写部N1において、中間転写ベルト20上に順次重ね合わせるようにして転写される。中間転写ベルト20上のトナー像は、二次転写部N2において、二次転写ローラ30の作用により、中間転写ベルト20と二次転写ローラ30とに挟持されて搬送される記録材S上に転写(二次転写)される。このとき、二次転写ローラ30には、二次転写電圧印加手段としての二次転写電源70から、所定の二次転写電圧(二次転写バイアス)が印加される。トナー像が転写された記録材Sは、中間転写ベルト20から分離されて、定着装置10へ導入され、ここでトナー像の定着処理を受ける。その後、記録材Sは、画像形成装置100の装置本体の外部に排出(出力)される。
一次転写工程後の感光ドラム1の表面に残留したトナー(一次転写残トナー)などの付着物は、クリーニング装置6によって感光ドラム1の表面から除去されて回収される。また、二次転写工程後の中間転写ベルト20の表面に残留したトナー(二次転写残トナー)などの付着物は、ベルトクリーニング装置24によって中間転写ベルト20の表面から除去されて回収される。
本実施例の画像形成装置100においても、二次転写部N2を通過した記録材Sは、二次転写対向ローラ23に巻回された中間転写ベルト20の外周の曲率によって中間転写ベルト20から記録材Sが分離される。しかし、薄紙などの剛性が弱い記録材Sを用いる場合、記録材Sと中間転写ベルト20との間の静電気力の方が、記録材Sが中間転写ベルト20から離れようとする力よりも強くなり、記録材Sが中間転写ベルト20から分離されずにジャムが発生しやすくなる。そこで、実施例1の転写部Nにおける転写電界と同様に、二次転写部N2における二次転写電界を、二次転写電源70の直流電源71が出力する電圧と交流電源72が出力する電圧とにより形成する。これにより、交流電界の除電能力により記録材Sが除電され、記録材Sと中間転写ベルト20との静電気力が弱められ、ジャムの発生が抑制される。
しかしながら、本実施例の画像形成装置100においても、実施例1の転写電圧の場合と同様に、二次転写電圧における直流電圧に重畳される交流電圧の電圧値が大きすぎる場合には、放電による画像不良が発生することがある。
したがって、本実施例では、実施例1において転写部Nに適用した転写電圧の制御を、二次転写部N2における二次転写電圧の制御に適用する。つまり、記録材Sへの転写のために二次転写部N2に進入するトナー像のトナー量の情報を取得し、取得した情報に基づいて二次転写電源70の交流成分の出力値(本実施例では電圧値(ピークピーク値))を変更する。このとき、二次転写部N2に存在するトナー量が第1のトナー量の場合に、二次転写部N2に存在するトナー量が第1のトナー量よりも少ない第2のトナー量の場合よりも、二次転写電源70の交流成分の出力値を小さくする。具体的な制御方法については、実施例1における像担持体としての感光ドラム1を中間転写ベルト20、実施例1における転写電圧を二次転写電圧などと、実施例1における説明を適宜読み替えることで援用し、繰り返しの説明は省略する。
なお、本実施例では、二次転写ローラ30に、トナーの正規の帯電極性とは逆極性の直流電圧と、交流電圧と、を重畳した電圧を印加して、二次転写部N2に二次転写電界を形成したが、これに限定されるものではない。二次転写電界は、次のようにしても形成することができる。例えば、二次転写対向ローラ23にトナーの正規の帯電極性と同極性の直流電圧と、交流電圧と、を重畳した電圧を印加する方法がある。また、二次転写ローラ30にトナーの正規の帯電極性とは逆極性の直流電圧を印加し、二次転写対向ローラ23に交流電圧を印加する方法がある。また、二次転写対向ローラ23にトナーの正規の帯電極性と同極性の直流電圧を印加し、二次転写ローラ30に交流電圧を印加する方法がある。つまり、中間転写体を挟持するように配置された複数の支持ローラの一つと転写部材とのうち一方に直流電圧と交流電圧とが重畳された電圧が印加されるか、又は一方に直流電圧が印加され他方に交流電圧が印加されることで、二次転写電界が形成される。
以上、本実施例によれば、二次転写部N2における二次転写電圧の制御に本発明を適用することで、二次転写部N2での放電による画像不良を抑制しながら、中間転写ベルト20からの記録材Sの分離性を向上することができる。
[その他]
以上、本発明を具体的な実施例に即して説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではない。
例えば、上述の実施例では、転写電圧(二次転写電圧)が定電圧制御される場合を例として説明したが、転写電圧(二次転写電圧)は定電流制御されるものであってもよい。この場合、上述の実施例において転写電圧(二次転写電圧)における交流電圧の電圧値(ピークピーク値)を可変制御したのに代えて、交流電流値を可変制御することができる。
また、上述のように、特に薄紙などの分離性の悪い記録材を用いる場合に、像担持体から記録材が分離しにくくなりジャムが発生しやすくなる。したがって、制御手段が、画像形成に使用される記録材の種類に応じて、上述の実施例で説明した転写電圧(二次転写電圧)における直流電圧に重畳する交流電圧の出力値を変更する制御を実行するか否かを決定するようにしてもよい。制御手段は、該制御を実行しない場合は、転写電源(二次転写電源)から直流成分のみを出力させて転写電界(二次転写電界)を形成させればよい。この場合、記録材の種類は、記録材の坪量によって設定することができる。そして、制御手段が、画像形成に使用される記録材の坪量が所定の閾値以下の場合に、上述の実施例で説明した転写電圧(二次転写電圧)における直流電圧に重畳する交流電圧の出力値を変更する制御を実行するようにする。制御手段は、画像形成装置に設けられた操作部又は画像形成装置に通信可能に接続された操作部から入力される画像形成に使用される記録材を示す情報、あるいは記録材の種類を検知するセンサの検知結果から、記録材の種類を判断することができる。なお、記録材の坪量によって記録材の種類が設定されるとは、坪量の値自体で設定されることに限定されず、薄紙、普通紙、厚紙といったように所定の坪量範囲ごとに記録材の種類が設定されている場合も含む。その場合、坪量が所定の閾値以下の記録材とは、該閾値以下の坪量範囲に属する記録材のことをいう。
また、上述の実施例では、転写部材、二次転写部材は、それぞれローラ状の部材とされたが、転写部材、二次転写部材の形状はローラ状に限定されるものではなく、ブレード状、パッド状、ブラシ状など、任意の形状であってよい。