JP5600515B2 - 省力化軌道の補修改善工法及び補修改善装置 - Google Patents
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他の具体例としては、路盤の表面に発生した空洞部(空隙)に高可塑材料を注入し、その後更に補修用填充材料を注入して、高可塑材料の一部を補修用填充材料と置換する工法が提案されている(特許文献1参照)。
一方、地盤の改良技術として、建物など構築物の基礎地盤に対して複数箇所に薬液注入
管を配置し、この薬液注入管により、瞬結性の薬液材を所定のインターバルで地盤内下部へ順次圧入し、地盤を改良すると同時に不同沈下した建物を押し上げて復元する工法が知られている(特許文献3参照)。
殊に、特許文献1に記載の工法では、路盤の変状箇所にてん充材を注入するのが難しく、高精度の修正ができない問題があった。また、特許文献2に記載の工法では、路盤表面を乾燥する必要があるものの、路盤中の水分が継続的に滲出して乾燥を邪魔する問題があった。また、深夜など、列車が運休する限られた時間内だけでは、乾燥が不十分であり、しかも天候にも左右される(雨天時や高湿時には不可)という問題もあった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、帯状に細長く且つ載荷重が小さいという特徴を有する鉄道の省力化軌道に対し、不同沈下が生じたときに、限られた短時間で復元修正を可能にし、且つ路盤の耐圧強度の改善を図って繰り返しの動的荷重に対する耐久性を向上させ得るようにした省力化軌道の補修改善工法及び補修改善装置を提供することを目的とする。
即ち、本発明に係る省力化軌道の補修改善工法は、省力化軌道に対し、軌道長手方向及びこの軌道長手方向に平面直交する軌間方向に離隔した複数箇所に、前記省力化軌道の最下層であるてん充層を支持した路盤へ達する深さでそれぞれ薬液注入管を突き刺し、前記省力化軌道における軌道長手方向及び軌間方向の水準測量を行い、瞬結性、中結性、急結性、通常型、超瞬結性のうち一つが得られるように選定する主材と硬化剤とを複数本の前記薬液供給管のうち一つに供給して前記路盤中で前記主材と前記硬化剤との混合によって薬液材に構成させる注入作業を行い、前記水準測量に並行しつつ、軌道長手方向で配置を異ならせながら選出する個々の前記薬液供給管について前記注入作業を繰り返し行うことにより、路盤改善と前記省力化軌道の扛上補修とを行うことを特徴とする。
定する主材とこの主材に混合する硬化剤とを一つの薬液供給管へ供給することを軌道長手方向で配置を異ならせながら複数本の前記薬液供給管に対して一巡するまで繰り返して行う制御部が設けられていることを特徴とする。
前記給液切換装置は、前記省力化軌道の軌道長手方向に沿って並んだ順番で直列に接続されているものとするのがよい。
図1乃至図5は、本発明に係る補修改善装置1を用いて省力化軌道2の補修改善工法を実施している状況を示している。
なお、省力化軌道2は、図4に示すように、路盤3上に、凝固性のあるセメントモルタル系のてん充材で固めたてん充層4を形成させ、このてん充層4で軌道5を支持する構造となっている。路盤3は、粘性土などからなる下地層6を基礎として、この下地層6上に所定厚さのバラスト層7を形成させたものとしてあるのが一般的である。なお、路盤3にバラスト層7が含まれることは限定事項ではない。また軌道5は、コンクリート枕木8を下敷きにして、その上に軌間(レール間隔)を保持させて2本のレール9を固定することによって構成されている。
本発明に係る補修改善装置1は、複数本の薬液注入管15と、各薬液注入管15ごとに設けられる給液切換装置16と、これら各給液切換装置16に対して高圧ホース等の給液管17を介して接続される薬液供給装置18と、省力化軌道2の軌間内に設置するカバー部材19とを有している。
そのため、この薬液注入管15では、内管により、薬液材を構成するうちの一方の液材(後述するA液又はB液)を供給することが可能であると共に、内管と外管との間の周隙間により、薬液材を構成するうちの他方の液材を供給することが可能である。そして、内管により供給した液材と、内外管の周隙間により供給した液材とを、管先端部で初めて合流させ、混合させる(薬液材を構成させる)ことができるようになっている。
前記したように、薬液注入管15は二重管構造とされて薬液材の構成に必要な二種類の液材(以下、「A液」「B液」と言う。A液、B液の詳細については後述する。)を供給するようになっているため、切換弁20には、A液の注入可否を切り換えるA液用切換弁20Aと、B液の注入可否を切り換えるB液用切換弁20Bとを有したものが用いられている。個々の薬液注入管15に対して設けられたA液用切換弁20AとB液用切換弁20Bとは、同時に切り換え動作をするようになっている。
制御部32は、各給液切換装置16の切換弁20(20A,20B)を、その配置順にしたがって順次、切り換え操作して、貯留部30からのA液、及び貯留部31からのB液を、それぞれ各切換弁20に対応する薬液注入管15へ供給させるものである。この制御部32では、切換弁20を切り換えさせる順番(薬液注入管15による注入順序)と、各薬液注入管15に対して薬液材を供給する供給量とを設定できるようになっている。また制御部32では、切換弁20を順次、切り換えさせる際のインターバルを設定することができる。
道2における軌道長手方向及び軌間方向の水準測量を行い、省力化軌道2の扛上度合いを確認するものとする。
前記したように、本実施形態において薬液材には、A液とB液との二材を路盤3中で混合させるものを用いている。ここにおいて、A液は主材となるものであり、B液は硬化剤として作用するものであるが、A液とB液との組み合わせや成分などは、現場の状況に応じて適宜使い分ければよい。例えば、A液には、B液との組み合わせの結果、瞬結性を示すことになる液材(ゲルタイムが5秒から30秒程度のもの)、瞬結性よりもゲルタイムがやや長い特性を示すことになる液材(一般に、中結性、急結性、通常型などと呼ばれているもの)、超瞬結性を示すことになる液材(ゲルタイムが5秒以下のもの)、の中から一つを選定する。
なお、A液には、低アルカリ性の急結セメント材(例えば、電気化学工業社製の商品名:デンカES)や、その他の非シリカ系材料を用いることもできる。またB液には、セメント・カルシウム系材料を用いることができる。この場合、A液又はB液のいずれか一方に、ゲル化調整剤を加えるのが好適である。
次に、本発明に係る補修改善工法を説明する。
省力化軌道2では、列車が軌道5上を頻繁に走行することにより、軌道5に作用する繰り返しの動的負荷が原因で、路盤3に不同沈下が発生し、てん充層4の下面と路盤3との上下間に空隙が生じることがある。殊に、路盤3が軟弱である区間などでは、空隙の生じる頻度が高く、空隙の程度も大きくなる傾向にある。このような空隙が発生すると、てん充層4の支持状態が不安定になり、それに伴って軌道5もその長手方向に沿って上下変形を起こすようになる。
そこでまず、空隙の発生した省力化軌道2の軌間内(レール9とレール9との間)で、軌道長手方向に沿った所定間隔をおいて(例えば、二本の枕木8おき)、てん充層4を貫通させて路盤3に届く注入孔を形成させる。そして、この注入孔にそれぞれ薬液注入管15を突き刺して、その先端が路盤3(下地層6)に達するように設置する。
また、給液切換装置16の設置が全て完了した後、又は個々の設置作業に並行しつつ、各給液切換装置16の切換弁20(20A,20B)を、省力化軌道2の軌道長手方向に沿って並んだ順番で、薬液材が供給されるように、送液管22で直列に接続する(図1参照)。
なお、列車が頻繁に走行する区間では、一般的に運行休止時間が短く、しかもこの運行休止時間帯が夜間となる。従って、補修作業を行えるのは、夜間のごく短時間に限られている。そこで、上記のような薬液注入管15及び給液切換装置16の設置作業や、薬液供給装置18との接続作業など、準備工程と呼べる作業の実施日と、実際に、これらを用いる薬液注入工程と呼べる作業の実施日とを、分けて行うとよい。
準備工程を実施した日の後日、薬液注入工程を実施するには、まず薬液供給装置18において、A液とB液とを調整する。なお、カバー部材19は除去してもよいし、薬液注入管15や給液切換装置16に対する配管作業などが完了していれば除去しなくてもよい。
薬液供給装置18を作動させると、制御部32の設定に基づいて、各切換弁20が順次、切り換えられ、A液の貯留部30及びB液の貯留部31において調整されたA液とB液とが、所定配置の薬液注入管15へと供給されることになる。
この水準測量により、各薬液注入管15の設置位置で、省力化軌道2がどれだけ扛上されたか(持ち上げられたか)が判明するため、以後、この扛上高さを目安として、作業者による次の操作入力を行って、前記と同じ手順で薬液注入工程を繰り返すようにする。なお、水準測量ではmm単位での計測が可能であり、省力化軌道2の扛上高さもmm単位で調整できることになる。
いて円盤状の広がりを呈して存在している(図1及び図4に破線で示したXの領域を参照)。そのため、新たに注入される薬液材は、この円盤状の硬化部分に対する上側で拡散流動したり、この硬化部分を割裂してその下側で拡散流動したり、或いは、この硬化部分の中へ侵入した状態で固まりを形成したりする。その結果、この硬化部分のボリュウムが増大し、てん充層4と共に省力化軌道2が、更に扛上されることとなる。
省力化軌道2が目標とした扛上レベルに達し、薬液注入工程を終了する場合は、給液切換装置16の切換弁20(20A,20B)を介して薬液注入管15へと洗浄液(例えば水)を注入し、薬液注入管15内の洗浄を行っておくのが好適である。
また、沈下状態から扛上修復された省力化軌道2にあっては、路盤3を形成する土壌(地盤)が薬液材との結合硬化によって改良され、耐圧強度が高められる。従って、それ以降の省力化軌道2は、動的負荷に対して安定した状態を長期にわたり維持できるものとなるという利点がある。
また、準備工程では、省力化軌道2に設置の薬液注入管15及び給液切換装置16をカバー部材19で覆い隠すことにより、列車運行時において運転士の視界を妨げることもない。それ故に、準備工程で、多くの機器類を省力化軌道2上に設置することも可能となり、作業性が飛躍的に向上する。
また、重機による掘削を伴わないから、重機による掘削が困難な狭隆部(例えば駅構内など)の省力化軌道2に対しても問題なく実施することができる利点がある。
例えば、薬液注入管15は、二重管構造にすることが限定されるものではなく、A液用管材とB液用管材とを2本一組で寄り添わせた構造としてもよい。
薬液注入管15は、軌間の外側、すなわち、レール9の外側からてん充層4へ突き刺すようにしてもよい。また給液切換装置16についても、軌間の外側に設置するようにしてもよい。
2 省力化軌道
3 路盤
4 てん充層
5 軌道
6 下地層
7 バラスト層
8 枕木
9 レール
15 薬液注入管
16 給液切換装置
17 給液管
18 薬液供給装置
19 カバー部材
20 切換弁
20A A液用切換弁
20B B液用切換弁
21 設置フレーム
22 送液管
25 取付脚
26 安定脚
27 支持台
28 アンカー孔
30 A液貯留部
31 B液貯留部
32 制御部
M 建築限界
Claims (5)
- 省力化軌道に対し、軌道長手方向及びこの軌道長手方向に平面直交する軌間方向に離隔した複数箇所に、前記省力化軌道の最下層であるてん充層を支持した路盤へ達する深さでそれぞれ薬液注入管を突き刺し、
前記省力化軌道における軌道長手方向及び軌間方向の水準測量を行い、
瞬結性、中結性、急結性、通常型、超瞬結性のうち一つが得られるように選定する主材と硬化剤とを複数本の前記薬液供給管のうち一つに供給して前記路盤中で前記主材と前記硬化剤との混合によって薬液材に構成させる注入作業を行い、
前記水準測量に並行しつつ、
軌道長手方向で配置を異ならせながら選出する個々の前記薬液供給管について前記注入作業を繰り返し行うことにより、
路盤改善と前記省力化軌道の扛上補修とを行う
ことを特徴とする省力化軌道の補修改善工法。 - 複数の前記薬液注入管に対して行う前記注入作業の順番を、前記省力化軌道の軌道長手方向に沿った並び順とし、
各々の前記薬液注入管を一巡させて前記注入作業を行った後、注入した前記薬液材が前記路盤の土壌と結合して当該路盤が扛上するのを待ち、
前記路盤が扛上した後に前記水準測量を行って前記省力化軌道の扛上度合いを確認し、
前記水準測量の結果に基づいて再び、前記注入作業を始めることを繰り返す
ことを特徴とする請求項1記載の省力化軌道の補修改善工法。 - 省力化軌道に対し、軌道長手方向及びこの軌道長手方向に平面直交する軌間方向に離隔した複数箇所で前記省力化軌道の最下層であるてん充層を支持した路盤へ達する深さで突き刺し可能とされた複数本の薬液注入管と、
前記薬液注入管ごとに設けられて薬液材注入の可否を切り換える給液切換装置と、
前記各給液切換装置に対し給液管を介して接続される薬液供給装置とを有し、
前記薬液供給装置には、瞬結性、中結性、急結性、通常型、超瞬結性のうち一つが得られるように選定する主材とこの主材に混合する硬化剤とを一つの薬液供給管へ供給することを軌道長手方向で配置を異ならせながら複数本の前記薬液供給管に対して一巡するまで繰り返して行う制御部が設けられている
ことを特徴とする省力化軌道の補修改善装置。 - 前記省力化軌道の軌間内に設置された前記薬液注入管及び前記給液切換装置を、前記省力化軌道の軌間方向及び高さ方向に規定された建築限界に収まる大きさで覆って軌道上方から見えない状態に隠すことのできるカバー部材を有していることを特徴とする請求項3記載の省力化軌道の補修改善装置。
- 前記給液切換装置は、前記省力化軌道の軌道長手方向に沿って並んだ順番で直列に接続されていることを特徴とする請求項3又は請求項4記載の省力化軌道の補修改善装置。
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