JP5598842B2 - 繊維強化樹脂からなる部材の補修方法 - Google Patents
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Description
傷や異物が存在すると、強度低下が生じることがあるため、これらを補修する必要がある。
これに対し、補修部位を除去することも考えられるが、除去した部分は凹部となっている。この凹部をそのまま強化繊維基材で覆い、樹脂を注入・含浸させた場合に、凹部に樹脂を均一に含浸するのが難しく、表層部のみに樹脂が含浸され、凹部の底部に樹脂が十分に行き渡らないこともある。その結果、補修後に十分な強度回復を得られない場合がある。また特に規定せずに傷や異物を除去して補修を行った場合、補修後に、補修部位と母材とで荷重伝播がうまくいかず、思うほどの強度回復を得ることができない。
本発明は、このような技術的課題に基づいてなされたもので、母材の平滑性が求められる部位においても、確実かつ効率よく補修することのできる繊維強化樹脂からなる部材の補修方法を提供することを目的とする。
このようにして、部材に凹部を形成し、部材に用いられている強化繊維と同材料からなるプラグを用いて補修を行うことで、母材の元の表面形状を維持した状態で、強度回復を容易かつ確実に行うことができる。
形成する凹部は、面内方向寸法と板厚方向寸法のテーパ比が10:1〜40:1程度のすり鉢状とするのが好ましい。
樹脂拡散媒体は、凹部の開口の外周に沿って環状に形成されることが好ましい。さらに、樹脂拡散媒体を凹部の開口の内周および外周に跨って配置することが好ましい。
樹脂拡散媒体とは、強化繊維およびバッグ材を形成する材料よりも樹脂に対する親和性の高い材料からなる。すると、樹脂は樹脂拡散媒体に導かれ、凹部の外周部から注入される。
そして、凹部の外周部に注入された樹脂が、凹部の外周部全周にわたって行き渡り、これにより、外周側から中央部へと樹脂の流れを作ることができる。
さらに、吸引手段により、凹部の開口の中央部からバッグ材と部材との間を吸引するようにしてもよい。このように凹部内の外周部から樹脂を含浸させ、中央部から吸引することで、凹部内の全域に樹脂を含浸させることができる。
この場合、プラグを形成する際に、強化繊維と、強化繊維が配置されるベース板との間に、樹脂拡散媒体が設けられた構成とすることができる。さらに、吸引手段は、強化繊維の開口の中央部からバッグ材で覆われた空間を吸引するようにしてもよい。
また、バッグ材において凹部の外周部に対向する領域に、樹脂拡散媒体を設けることで、凹部内に樹脂を均一に含浸させることができる。これによっても、補修品質がさらに向上する。
さらに、凹部およびプラグを長円形または楕円形とすることにより、補修部位の形状(傷や異物の形状)に合わせた凹部を作製することができる。これにより凹部を加工する範囲を制限することが可能となる。
[第一の実施形態]
図1は、本実施の形態における繊維強化樹脂からなる部材の補修方法を説明するための図である。
図1、図2に示すように、炭素繊維等の強化繊維を含む繊維強化樹脂からなる部材10に傷等の損傷、気泡の混入等の補修対象部位を補修するには、部材10の表面10aから、補修対象部位を削り取り、凹部11を形成する。この凹部11は、部材10の表面10aから凹部11の底部11aに向けて、その内径が漸次縮小するテーパ形状とされている。このとき、凹部11の内周面11bの中心軸に対する傾斜角度は、予め定められた所定の角度となるよう、凹部11を形成するための所定のドリルビット等を用いて凹部11を正確に形成するのが好ましい。凹部11は、例えば、面内方向寸法と板厚方向寸法のテーパ比が10:1〜40:1程度のすり鉢状とするのが好ましい。
プラグ20を形成する加熱温度条件としては、例えば50〜100℃とすることができる。
負圧発生部32は、真空バッグ31の外周部に一端が接続された吸引ホース34と、吸引ホース34の他端に接続された真空ポンプ等の負圧発生源35と、を備える。
この後、負圧発生部32による負圧の発生を停止して樹脂の注入を停止する。そして、プラグ20がセットされた凹部11を、ヒータ等で所定の温度、例えば50〜200℃まで加熱して熱硬化性の樹脂を硬化させることにより、凹部11が繊維強化樹脂で埋められることになる。
次に、本発明に係る繊維強化樹脂からなる部材の補修方法の第二の実施形態について説明する。ここで、以下の説明において、上記第一の実施形態と共通する構成については同符号を付してその説明を省略する。以下においては、樹脂の注入に用いる樹脂注入装置30Bの構成が上記第一の実施形態と異なる他は、上記第一の実施形態で示した構成と同様である。
ここで用いる樹脂注入装置30Bは、真空バッグ31には、凹部11の中央部に対応した位置に負圧発生部32の吸引ホース34が配置されて接続され、樹脂注入部33の注入ホース36は、上記第一の実施形態と同様、真空バッグ31の外周部に接続されている。
また、真空バッグ31において、部材10に対向する側には、凹部11の外周部に対向する領域に、環状のパスメディア(樹脂拡散媒体)40が設けられている。パスメディア40は、メッシュ状のシートからなり、樹脂を拡散しやすくするため、強化繊維および真空バッグ31を形成する材料よりも樹脂に対する親和性の高い材料からなるもので、注入された樹脂はパスメディア40に沿って優先的に流れる。
そして、重力により樹脂は凹部11内に流れ落ちていき、凹部11の底部11aに当たって流れが上方に向かい、中央部から吸引ホース34により吸引される。
さらに、上記第一の実施形態で示したような構成では、注入した樹脂が、凹部11内のプラグ20に十分に含浸されず、凹部11の下部に雰囲気(空気)が残存してしまう可能性がある。これに対し、本実施形態の構成によれば、凹部11内のプラグ20の全域に樹脂を均一に含浸させることができるため、補修品質も向上する。
次に、本発明に係る繊維強化樹脂からなる部材の補修方法の第三の実施形態を示す。
以下においても、上記第一、第二の実施形態と共通する構成については同符号を付してその説明を省略する。
図4に示すように、本実施形態においては、まず、上記第一、第二の実施形態と同様、部材10の表面10aから、補修対象部位を削り取り、凹部11を形成する。
すなわち、図5に示すように、プラグ成形装置60において、プラグ50を作成する。プラグ成形装置60は、ベース板61と、ベース板61上にかぶせられるシート状の真空バッグ(バッグ材)62と、真空バッグ62とプラグ50との間のパスメディア(樹脂拡散媒体)70と、真空バッグ62によって覆われた領域を負圧にするための負圧発生部(吸引手段)63と、真空バッグ62に覆われた領域に繊維強化樹脂を形成する樹脂を注入する樹脂注入部64と、を備える。
負圧発生部63は、真空バッグ62の外周部に一端が接続された吸引ホース65と、吸引ホース65の他端に接続された真空ポンプ等の負圧発生源66と、を備える。このような負圧発生部63では、負圧発生源66で発生した負圧により、真空バッグ62によって囲まれた領域の雰囲気を吸引ホース65を通して吸引する。
次いで、真空バッグ62を強化繊維50Fにかぶせた後、負圧発生源66で負圧を発生させ、真空バッグ62によって囲まれた領域の雰囲気を吸引ホース65を通して吸引する。そして、樹脂材料タンク68から樹脂を供給する。すると、負圧発生部63で発生する負圧により、樹脂材料タンク68から注入ホース67を介して樹脂が真空バッグ62内に吸引・導入される。
このようにして、真空バッグ62内で、樹脂が、強化繊維50Fに含浸され、その後、加熱により樹脂を仮硬化させる。このプラグ50を仮硬化させる加熱温度条件としては、例えば50〜200℃とすることができる。
これにより、強化繊維50Fの全域に均一に樹脂を含浸させることができる。
これ以外にも、本発明の主旨を逸脱しない限り、上記実施の形態で挙げた構成を取捨選択したり、他の構成に適宜変更することが可能である。
Claims (9)
- 繊維強化樹脂からなる部材の補修方法であって、
前記部材において補修すべき補修部位を削除し凹部を形成する工程と、
前記凹部に対応した形状を有し、前記部材に用いられている強化繊維と同種の強化繊維を積層し、加熱により密着させることで予め形成されたプラグを前記凹部に挿入する工程と、
前記プラグが挿入された前記凹部をバッグ材で覆い、当該バッグ材と前記部材との間を吸引手段で吸引することで、前記バッグ材と前記部材の間に樹脂を注入し、前記プラグの前記強化繊維を前記樹脂で含浸させる工程と、
前記プラグおよびその周囲の前記部材を加熱し、前記樹脂を硬化させる工程と、
を含むことを特徴とする繊維強化樹脂からなる部材の補修方法。 - 前記凹部の開口の外周部と前記バッグ材との間に、樹脂拡散媒体を設けることを特徴とする請求項1に記載の繊維強化樹脂からなる部材の補修方法。
- 前記吸引手段は、前記凹部の開口の中央部から前記バッグ材と前記部材との間を吸引することを特徴とする請求項2に記載の繊維強化樹脂からなる部材の補修方法。
- 前記樹脂拡散媒体は、前記凹部の開口の外周に沿って環状に形成されることを特徴とする請求項2または3に記載の繊維強化樹脂からなる部材の補修方法。
- 前記樹脂拡散媒体は、前記凹部の開口の内周および外周に跨って配置されることを特徴とする請求項4に記載の繊維強化樹脂からなる部材の補修方法。
- 前記凹部および前記プラグを、平面視で長円形または楕円形とすることを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の繊維強化樹脂からなる部材の補修方法。
- 繊維強化樹脂からなる部材の補修方法であって、
前記部材において補修すべき補修部位を削除し凹部を形成する工程と、
前記凹部に対応した形状を有し、前記部材に用いられている強化繊維と同種の強化繊維を積層し、樹脂を含浸させて予め形成されたプラグを前記凹部に挿入する工程と、
前記プラグおよびその周囲の前記部材を加熱し、前記樹脂を硬化させる工程と、を含み、
前記プラグは、前記部材に用いられている強化繊維と同種の強化繊維を積層してバッグ材で覆い、当該バッグ材で覆われた空間を吸引手段で吸引しつつ、前記空間に樹脂を注入して前記強化繊維に含浸させ、加熱して仮硬化させることで形成されたものであることを特徴とする繊維強化樹脂からなる部材の補修方法。 - 前記プラグを形成する際に、
前記強化繊維と、前記強化繊維が配置されるベース板との間に、樹脂拡散媒体が設けられていることを特徴とする請求項7に記載の繊維強化樹脂からなる部材の補修方法。 - 前記吸引手段は、前記強化繊維の開口の中央部から前記バッグ材で覆われた前記空間を吸引することを特徴とする請求項8に記載の繊維強化樹脂からなる部材の補修方法。
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