JP5598503B2 - 空気電池用イオン性液体、当該イオン性液体を含有するリチウム空気電池用電解液及び空気電池 - Google Patents

空気電池用イオン性液体、当該イオン性液体を含有するリチウム空気電池用電解液及び空気電池 Download PDF

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Description

本発明は、空気電池に使用された際に出力密度及び放電容量を向上させるイオン性液体、並びに、当該イオン性液体を含有するリチウム空気電池用電解液及び空気電池に関する。
空気電池は、金属単体又は金属化合物を負極活物質に、酸素を正極活物質に利用した、充放電可能な電池である。正極活物質である酸素は空気から得られるため、電池内に正極活物質を封入する必要がないことから、理論上、空気電池は、固体の正極活物質を用いる二次電池よりも大きな容量を実現できる。
空気電池の一種であるリチウム空気電池においては、放電の際、負極では式(I)の反応が進行する。
2Li→2Li+2e (I)
式(I)で生じる電子は、外部回路を経由し、外部の負荷で仕事をした後、空気極に到達する。そして、式(I)で生じたリチウムイオン(Li)は、負極と空気極に挟持された電解質内を、負極側から空気極側に電気浸透により移動する。
また、放電の際、空気極では式(II)及び式(III)の反応が進行する。
2Li+O+2e→Li (II)
2Li+1/2O+2e→LiO (III)
生じた過酸化リチウム(Li)及び酸化リチウム(LiO)は、固体として空気極に蓄積される。
充電時においては、負極において上記式(I)の逆反応、空気極において上記式(II)及び(III)の逆反応がそれぞれ進行し、負極において金属リチウムが再生するため、再放電が可能となる。
従来のリチウム二次電池には、電解液に可燃性、揮発性を有する有機溶媒が用いられていたため、安全性の向上に限界があった。
これに対し、安全性を高めるための取り組みとして、イオン性液体(常温溶融塩)を電解液に用いたリチウム二次電池が、従来から知られている。ここでイオン性液体とは、100℃以下で液体の塩のことをいい、一般に難燃性、不揮発性を有する。このような難燃性の電解液は、安全性を向上させることができるだけでなく、電位窓(電位領域)が比較的広く、さらに比較的高いイオン伝導性を示すという長所がある。
特許文献1の明細書の段落[0054]には、金属空気電池の負極層及び空気極層の間でアルカリ金属イオンの伝導を司る電解液として、疎水性イオン性液体が例示されている。
一方、特許文献2には、P−N結合を1個、2個、又は4個含むホスホニウムイオンをカチオン成分として含むイオン性液体が開示されている。当該文献の明細書の段落[0001]には、当該ホスホニウムイオンを含むイオン性液体をリチウム二次電池に使用することが記載されている。
特開2011−3313号公報 国際公開第2007/063959号
特許文献1の明細書の段落[0057]には、疎水性イオン性液体の具体例として、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、及び1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドが記載されている。しかし、本発明者が検討した結果、これらのイオン性液体を用いた空気電池の出力密度及び放電容量は、いずれも低いことが明らかとなった。
また、特許文献2の明細書の段落[0077]には、P−N結合を1個含むホスホニウムカチオンを含むイオン性液体のサイクリックボルタンメトリーについて、当該文献の明細書の段落[0044]には、P−N結合を2個含むホスホニウムカチオンを含むイオン性液体のサイクリックボルタンメトリーについて、当該文献の明細書の段落[0132]には、P−N結合を4個含むホスホニウムカチオンを含むイオン性液体のサイクリックボルタンメトリーについて、それぞれ記載されている。また、当該文献の図1−図3は、これらのサイクリックボルタンメトリーにより得られたサイクリックボルタモグラムである。しかし、当該文献には、これらサイクリックボルタモグラムのデータに加えて、当該文献の発明に係るホスホニウムイオンを含むイオン性液体のNMR、融点、及び導電率等の、基本的な物性データが記載されているのみであり、当該イオン性液体を用いた空気電池に関する記載や示唆は一切ない。また、当該文献には、ホスホニウムカチオンを含むイオン性液体を空気電池に用いる具体的な態様については何ら示唆もなく、また、ホスホニウムカチオンを含むイオン性液体を空気電池に用いた場合の効果に関する示唆や、当該効果を裏付けるデータに関する記載も一切ない。
本発明は、上記実状を鑑みて成し遂げられたものであり、空気電池に使用された際に出力密度及び放電容量を向上させるイオン性液体、並びに、当該イオン性液体を含有するリチウム空気電池用電解液及び空気電池を提供することを目的とする。
本発明の空気電池用イオン性液体は、カチオン及びそのカウンターアニオンを含有するイオン性液体であって、前記カチオンは、下記一般式(1)で表される構造を有することを特徴とする。
(上記一般式(1)中、R〜Rは互いに独立であり、且つ、 〜R の内の少なくともいずれか1つの基が、−NR (R 及びR は互いに独立な基を表し、且つ、R 及びR は炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を表す。)で表される第3級アミノ基であり、〜R の内の残りの基が、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、及び−OR(Rは炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を表す。)で表されるアルコキシ基からなる群より選ばれる基である。)
本発明のリチウム空気電池用電解液は、リチウム塩、及び、上記空気電池用イオン性液体を含有することを特徴とする。
本発明の空気電池は、空気極、負極、及び、当該空気極と当該負極との間に介在する電解質層を備える空気電池であって、前記電解質層は、上記空気電池用イオン性液体を含有することを特徴とする。
本発明によれば、窒素原子よりも電気陰性度の低い原子を有するカチオンを含有するイオン性液体は、空気電池に使用された際に、当該カチオンが空気極に吸着しにくく、電極反応に使用される酸素を空気極表面の活性点により多く供給することができ、その結果、アンモニウムカチオンを含有するイオン性液体を用いた従来の空気電池と比較して、出力密度及び放電容量を向上させることができる。
本発明に係る空気電池の層構成の一例を示す図であって、積層方向に切断した断面を模式的に示した図である。 参考例1、実施例2、実施例3及び比較例1のリチウム空気電池用電解液の酸素還元電流値の時間依存性を比較したグラフである。 参考例4、実施例5、実施例6及び比較例2のリチウム空気電池の放電容量を比較した棒グラフである。 参考例4、実施例5、実施例6及び比較例2のリチウム空気電池の出力密度を比較した棒グラフである。
1.空気電池用イオン性液体
本発明の空気電池用イオン性液体は、カチオン及びそのカウンターアニオンを含有するイオン性液体であって、前記カチオンは、下記一般式(1)、下記一般式(2)、又は下記一般式(3)で表される構造を有することを特徴とする。
(上記一般式(1)中、R〜Rは互いに独立であり、且つ、R〜Rは、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、−NR(R及びRは互いに独立な基を表し、且つ、R及びRは水素、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。)で表されるアミノ基、−OR(Rは炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基を表す。)で表されるアルコキシ基、並びに、−OR(Rは炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。)で表されるアリールオキシ基からなる群より選ばれる基である。)
(上記一般式(2)中、R〜Rは互いに独立であり、且つ、R〜Rは、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、−NR(R及びRは互いに独立な基を表し、且つ、R及びRは水素、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。)で表されるアミノ基、−OR(Rは炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基を表す。)で表されるアルコキシ基、並びに、−OR(Rは炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。)で表されるアリールオキシ基からなる群より選ばれる基である。)
(上記一般式(3)中、R〜R10は互いに独立であり、且つ、R〜R10は、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、−NR(R及びRは互いに独立な基を表し、且つ、R及びRは水素、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。)で表されるアミノ基、−OR(Rは炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基を表す。)で表されるアルコキシ基、並びに、−OR(Rは炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表す。)で表されるアリールオキシ基からなる群より選ばれる基である。)
上述したように、特許文献1に記載されたような、アンモニウムカチオンを含むイオン性液体を用いた従来の空気電池は、出力密度や放電容量が低い。本発明者が検討した結果、従来の空気電池における出力密度や放電容量の低さは、イオン性液体中のカチオンの化学構造によるもの、特に、当該カチオンの中心原子の種類によるものであることが明らかとなった。なお、本明細書中において、「カチオンの中心原子」とは、通常、当該カチオンの構造式において、正電荷(+)を帯びるように記載される原子のことを指す。ただし、カチオンの中心原子は、構造式において正電荷を帯びるように記載される原子であればよく、必ずしも実際に正電荷を帯びる必要はない。また、同じカチオンに当該中心原子が1つのみ存在していてもよく、2つ以上存在していてもよい。
アンモニウムカチオンの中心原子となる窒素の電気陰性度は、3.04である(ポーリングの電気陰性度。以下、電気陰性度の値については、公知文献(国立天文台編、「理科年表 平成20年」、初版、丸善株式会社、平成19年11月30日、368ページ)参照)。窒素は、フッ素(F、電気陰性度:3.98)、酸素(O、電気陰性度:3.44)、塩素(Cl、電気陰性度:3.16)に次いで、全元素中で4番目に電気陰性度が高い元素である。アンモニウムカチオンにおいて、電気陰性度が高い窒素原子には電子が局所的に集まりやすく、その結果、カチオン中に部分的な電荷が発生しやすい。空気電池に用いられた際、部分的な電荷を有するこのようなカチオンは、電極表面の活性点に吸着しやすくなる。例えば、空気電池の放電時には、部分的な電荷を有するカチオンは、空気極表面の活性点に吸着しやすくなる。電極表面の活性点への、電極反応に関与すべきイオンや酸素の供給が、当該活性点に吸着したカチオンによって遮断されることにより、電極反応が進行しにくくなる結果、電極としての性能が部分的に失われ、空気電池の出力密度及び放電容量の低下につながっていた。
本発明者は、鋭意努力の結果、上記一般式(1)、一般式(2)、及び一般式(3)により表される構造を有するカチオンが、カチオン全体として均等な電荷分布を有するため、電極表面に吸着しにくく、その結果、当該カチオンを含むイオン性液体を空気電池に用いた場合に、アンモニウムカチオンを含むイオン性液体を用いた従来の空気電池よりも、高い出力密度及び放電容量を有することを見出し、本発明を完成させた。
上記一般式(1)〜一般式(3)により表されるカチオンの中心原子は、それぞれ、リン(P、電気陰性度:2.19)、炭素(C、電気陰性度:2.55)、及び硫黄(S、電気陰性度:2.58)であり、これら電気陰性度の値は、窒素の電気陰性度の値よりも低い。したがって、上記一般式(1)〜一般式(3)により表されるカチオンは、上述したアンモニウムカチオンよりもカチオン中に部分的な電荷が発生しにくく、均等な電荷分布を有する。そのため、上記一般式(1)〜一般式(3)により表されるカチオンを含むイオン性液体を空気電池に用いた場合には、アンモニウムカチオンを含むイオン性液体を用いた従来の空気電池よりも、カチオンが電極表面の活性点に吸着しにくく、活性の高い電極面積を広く確保することができる。その結果、電極反応に関与するリチウムイオンや酸素を電極に多く供給でき、空気電池の出力密度及び放電容量の向上を達成できる。
後述する実施例中のクロノアンペアメトリーにおいて、本発明に係る空気電池用イオン性液体(参考例1、実施例2、及び実施例3)においては、従来の空気電池に使用されているイオン性液体(比較例1)と比較して、2倍以上の酸素還元電流値が観測されている。この結果より、本発明者は、本発明に係る空気電池用イオン性液体が空気電池に使用された際に、当該空気電池の電解質中において酸素を拡散させる性能が、従来のアンモニウムカチオンを有するイオン性液体よりも長けていることを見出した。
一方、後述する実施例中の導電率測定の結果において示されるように、本発明に係る空気電池用イオン性液体の導電率は、アンモニウムカチオンを含む従来のイオン性液体の導電率と同程度か、それ以下である。この導電率測定の結果を、後述する実施例中のクロノアンペアメトリーの結果、並びに空気電池の放電試験及びI−V試験の結果と合わせて鑑みるに、本発明に係る空気電池用イオン性液体のイオン供給性能は、酸素供給性能と比較して、さほど空気電池の性能の向上に貢献していないといえる。すなわち、本発明に係る空気電池用イオン性液体は、その優れた酸素の供給性能を有する点において、まさに空気電池の用途に特化したイオン性液体であるといえる。
上記一般式(1)において、リン原子と結合を有するR〜Rは、互いに独立であり、且つ、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、アミノ基、アルコキシ基、及びアリールオキシ基のうちいずれかであれば、特に限定されない。
リン原子と結合を有する炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基としては、例えば、メチル基(−CH)、エチル基(−C)、n−プロピル基(−CH−CH−CH)、i−プロピル基(−CH(CH)、n−ブチル基(−CH−CH−CH−CH)、i−ブチル基(−CH−CH(CH)、sec−ブチル基(−CH(CH)−CH−CH)、t−ブチル基(−C(CH)、n−ペンチル基(−CH−CH−CH−CH−CH)、i−ペンチル基(−CH−CH−CH(CH)、ネオペンチル基(−CH−C(CH−CH)、n−ヘキシル基(−CH−CH−CH−CH−CH−CH)、i−ヘキシル基(−CH−CH−CH−CH(CH)、n−ヘプチル基(−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH)、i−ヘプチル基(−CH−CH−CH−CH−CH(CH)、n−オクチル基(−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH)、及びi−オクチル基(−CH−CH−CH−CH−CH−CH(CH)等が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、及びn−ペンチル基がより好ましい。
リン原子と結合を有する炭素数6〜10の芳香族炭化水素基としては、例えば、フェニル基(−C)、o−トルイル基(−C(CH))、m−トルイル基、p−トルイル基、2,4−キシリル基(−C(CH)、2,6−キシリル基、2,4,6−トリメチルフェニル基(−C(CH)、1−ナフチル基(−C10)、及び2−ナフチル基等が挙げられる。これらの中でも、フェニル基、1−ナフチル基、及び2−ナフチル基がより好ましい。
リン原子と結合を有するアミノ基(−NR)としては、R及びRが互いに独立であり、且つ、R及びRが水素、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、及び炭素数6〜10の芳香族炭化水素基のいずれかであれば、特に限定されない。R及びRとして使用される炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基は、リン原子と結合を有する炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基と同様である。また、R及びRとして使用される炭素数6〜10の芳香族炭化水素基は、リン原子と結合を有する炭素数6〜10の芳香族炭化水素基と同様である。
リン原子と結合を有するアミノ基(−NR)としては、例えば、アミノ基(−NH)、メチルアミノ基(−NHCH)、ジメチルアミノ基(−N(CH)、エチルアミノ基(−NHC)、エチルメチルアミノ基(−N(CH)−C)、ジエチルアミノ基(−N(C)、n−プロピルアミノ基(−NH−CH−CH−CH)、メチルn−プロピルアミノ基(−N(CH)−CH−CH−CH)、n−ブチルアミノ基(−NH−CH−CH−CH−CH)、n−ブチルメチルアミノ基(−N(CH)−CH−CH−CH−CH)、n−ペンチルアミノ基(−NH−CH−CH−CH−CH−CH)、メチルn−ペンチルアミノ基(−N(CH)−CH−CH−CH−CH−CH)、n−ヘキシルアミノ基(−NH−CH−CH−CH−CH−CH−CH)、n−ヘキシルメチルアミノ基(−N(CH)−CH−CH−CH−CH−CH−CH)、n−ヘプチルアミノ基(−NH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH)、n−ヘプチルメチルアミノ基(−N(CH)−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH)、n−オクチルアミノ基(−NH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH)、及びメチルn−オクチルアミノ基(−N(CH)−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH)等が挙げられる。
リン原子と結合を有するアミノ基(−NR)は、第3級アミノ基、すなわち、R及びRが互いに独立であり、且つ、R及びRが炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、又は炭素数6〜10の芳香族炭化水素基を表すアミノ基であってもよい。第3級アミノ基は電子供与性が高いため、リン原子に電子が供給されやすくなり、その結果、カチオンの電荷分布をより均等にすることができる。第3級アミノ基の具体例としては、ジメチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、メチルn−プロピルアミノ基、n−ブチルメチルアミノ基、メチルn−ペンチルアミノ基、n−ヘキシルメチルアミノ基、n−ヘプチルメチルアミノ基、及びメチルn−オクチルアミノ基等が挙げられる。
リン原子と結合を有するアルコキシ基(−OR)としては、Rが炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基であれば、特に限定されない。Rとして使用される炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基は、リン原子と結合を有する炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基と同様である。
リン原子と結合を有するアルコキシ基(−OR)としては、例えば、メトキシ基(−OCH)、エトキシ基(−OC)、n−プロポキシ基(−OCH−CH−CH)、i−プロポキシ基(−OCH(CH)、n−ブトキシ基(−OCH−CH−CH−CH)、i−ブトキシ基(−OCH−CH(CH)、sec−ブトキシ基(−OCH(CH)−CH−CH)、t−ブトキシ基(−OC(CH)、n−ペンチルオキシ基(−OCH−CH−CH−CH−CH)、i−ペンチルオキシ基(−OCH−CH−CH(CH)、n−ヘキシルオキシ基(−OCH−CH−CH−CH−CH−CH)、i−ヘキシルオキシ基(−OCH−CH−CH−CH(CH)、n−ヘプチルオキシ基(−OCH−CH−CH−CH−CH−CH−CH)、i−ヘプチルオキシ基(−OCH−CH−CH−CH−CH(CH)、n−オクチルオキシ基(−OCH−CH−CH−CH−CH−CH−CH−CH)、及びi−オクチルオキシ基(−OCH−CH−CH−CH−CH−CH(CH)等が挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を含むアルコキシ基が好ましく、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、i−プロポキシ基、n−ブトキシ基、及びn−ペンチルオキシ基がより好ましい。
リン原子と結合を有するアリールオキシ基(−OR)としては、Rが炭素数6〜10の芳香族炭化水素基であれば、特に限定されない。Rとして使用される炭素数6〜10の芳香族炭化水素基は、リン原子と結合を有する炭素数6〜10の芳香族炭化水素基と同様である。
リン原子と結合を有するアリールオキシ基(−OR)としては、例えば、フェノキシ基(−OC)、o−トルイルオキシ基(−OC(CH))、m−トルイルオキシ基、p−トルイルオキシ基、2,4−キシリルオキシ基(−OC(CH)、2,6−キシリルオキシ基、2,4,6−トリメチルフェニルオキシ基(−OC(CH)、1−ナフチルオキシ基(−OC10)、及び2−ナフチルオキシ基等が挙げられる。これらの中でも、フェノキシ基、1−ナフチルオキシ基、及び2−ナフチルオキシ基がより好ましい。
なお、上記一般式(1)において、リン原子と結合を有するR〜Rは、上述した炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、アミノ基、アルコキシ基、及びアリールオキシ基の中に、硫黄原子(S)及び/又はリン原子(P)をそれぞれ含むものであってもよい。
上記一般式(1)により表される構造を有するカチオンの製造方法としては、公知の合成方法が採用でき、例えば、上記特許文献2(国際公開第2007/063959号)に記載された製造方法や、国際公開第2008/153045号等の公知文献に記載された製造方法が採用できる。
上記一般式(2)において、炭素原子と結合を有するR〜Rは、互いに独立であり、且つ、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、アミノ基、アルコキシ基、及びアリールオキシ基のうちいずれかであれば、特に限定されない。
炭素原子と結合を有する炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基としては、リン原子と結合を有する炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。炭素原子と結合を有する炭素数6〜10の芳香族炭化水素基としては、リン原子と結合を有する炭素数6〜10の芳香族炭化水素基と同様のものが例示できる。炭素原子と結合を有するアミノ基(−NR)としては、リン原子と結合を有するアミノ基(−NR)と同様のものが例示できる。炭素原子と結合を有するアルコキシ基(−OR)としては、リン原子と結合を有するアルコキシ基(−OR)と同様のものが例示できる。炭素原子と結合を有するアリールオキシ基(−OR)としては、リン原子と結合を有するアリールオキシ基(−OR)と同様のものが例示できる。
なお、上記一般式(2)において、炭素原子と結合を有するR〜Rは、上述した炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、アミノ基、アルコキシ基、及びアリールオキシ基の中に、硫黄原子(S)及び/又はリン原子(P)をそれぞれ含むものであってもよい。
上記一般式(2)により表される構造を有するカチオンの製造方法としては、公知の合成方法が採用でき、例えば、特開2005−203363号公報等の公知文献に記載された製造方法が採用できる。
上記一般式(3)において、硫黄原子と結合を有するR〜R10は、互いに独立であり、且つ、炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、アミノ基、アルコキシ基、及びアリールオキシ基のうちいずれかであれば、特に限定されない。
硫黄原子と結合を有する炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基としては、リン原子と結合を有する炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基と同様のものが例示できる。硫黄原子と結合を有する炭素数6〜10の芳香族炭化水素基としては、リン原子と結合を有する炭素数6〜10の芳香族炭化水素基と同様のものが例示できる。硫黄原子と結合を有するアミノ基(−NR)としては、リン原子と結合を有するアミノ基(−NR)と同様のものが例示できる。硫黄原子と結合を有するアルコキシ基(−OR)としては、リン原子と結合を有するアルコキシ基(−OR)と同様のものが例示できる。硫黄原子と結合を有するアリールオキシ基(−OR)としては、リン原子と結合を有するアリールオキシ基(−OR)と同様のものが例示できる。
なお、上記一般式(3)において、硫黄原子と結合を有するR〜R10は、上述した炭素数1〜8の脂肪族炭化水素基、炭素数6〜10の芳香族炭化水素基、アミノ基、アルコキシ基、及びアリールオキシ基の中に、硫黄原子(S)及び/又はリン原子(P)をそれぞれ含むものであってもよい。
上記一般式(3)により表される構造を有するカチオンの製造方法としては、公知の合成方法が採用でき、例えば、特開2008−231033号公報等の公知文献に記載された製造方法が採用できる。
本発明に使用されるカウンターアニオンは、空気電池のイオン伝導源となる金属(例えば、リチウム空気電池の場合はリチウム金属)に対して不活性であれば特に限定されず、通常イオン液体のアニオン種として使用されるものが挙げられる。
ここでいう金属に対して不活性なアニオンとは、当該アニオンを含むイオン性液体に金属を100分間浸漬させても化学構造が変化せず、安定なアニオンをいう。一方、金属に対して活性なアニオンとは、当該アニオンを含むイオン性液体に金属を100分間浸漬させることによって分解するアニオンをいう。
本発明に使用されるカウンターアニオンは、具体的には、[N(CF、[N(SOCF、[N(SO等のアミドアニオン;RSO (以下、Rは脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を指す)、RSO 、RSO (以下、Rは含フッ素ハロゲン化炭化水素基を指す)、RSO 等のスルフェートアニオン又はスルフィットアニオン;R P(O)O、R PF 等のリン酸アニオン;その他、ラクテート、トリフルオロアセテート等が挙げられる。
これらのアニオンのうち、本発明に使用されるカウンターアニオンは、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドアニオン([N(SOCF)であることが好ましい。
上記一般式(1)〜一般式(3)により表されるカチオンのうち、本発明においては、上記一般式(1)により表されるホスホニウムカチオンを用いることが好ましい。
本発明の空気電池用イオン性液体の具体例としては、トリエチルペンチルホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、トリス(ジメチルアミノ)−n−ブトキシホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、エチルトリ(ブチルメチルアミノ)ホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、トリエチルヘキシルホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、トリメチルプロピルホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、トリエチルペンチルホスホニウム トリフルオロメタンスルホネート、トリエチル−3−メチルブチルホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド、及びトリエチル−2−エチルブチルホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミドが挙げられる。
本発明に係る空気電池用イオン性液体は、ナトリウム塩を含有させることによりナトリウム空気電池に使用できるし、カリウム塩を含有させることによりカリウム空気電池にも使用できる。同様に、本発明に係る空気電池用イオン性液体は、マグネシウム空気電池やカルシウム空気電池等にも使用できる。
本発明に係る空気電池用イオン性液体の用途は、空気電池用材料としての用途であれば特に限定されない。本発明に係る空気電池用イオン性液体は、例えば、電極間においてイオンを交換する電解質層にも使用できるし、電極内のイオン伝導性を高めるための電極用電解質としても使用できる。
2.リチウム空気電池用電解液
本発明のリチウム空気電池用電解液は、リチウム塩、及び、上記空気電池用イオン性液体を含有することを特徴とする。
本発明に係るリチウム空気電池用電解液は、上記空気電池用イオン性液体の他に、さらに支持塩としてリチウム塩を含有する。リチウム塩としては、例えばLiOH、LiPF、LiBF、LiClO及びLiAsF等の無機リチウム塩;LiCFSO、LiN(SOCF(LiTFSA)、LiN(SO及びLiC(SOCF等の有機リチウム塩が挙げられる。このようなリチウム塩は1種類のみ用いてもよいし、2種類以上組み合わせて用いてもよい。
リチウム空気電池用電解液中のリチウム塩の濃度は、0.10〜2.4mol/kgであることが好ましい。リチウム塩濃度が0.10mol/kg未満であるとすると、リチウムイオンの量が少なすぎるため、リチウムイオンの輸送性能に劣るおそれがある。一方、リチウム塩濃度が2.4mol/kgを超えるとすると、リチウム塩濃度が高すぎるため、電解液の粘度が高くなりすぎる結果、リチウムイオンの輸送性能に劣るおそれがある。
リチウム空気電池用電解液中のリチウム塩の濃度は、0.32mol/kg以上であることがより好ましく、0.50mol/kg以上であることがさらに好ましい。また、リチウム空気電池用電解液中のリチウム塩の濃度は、1.4mol/kg以下であることがより好ましく、1.2mol/kg以下であることがさらに好ましい。
本発明に係るリチウム空気電池用電解液は、上記空気電池用イオン性液体及びリチウム塩の他に、非水系電解質をさらに含んでいてもよい。
非水系電解質としては、非水系電解液及び非水ゲル電解質を用いることができる。
非水系電解液は、通常、上述したリチウム塩及び非水溶媒を含有する。上記非水溶媒としては、例えばエチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、エチルカーボネート、ブチレンカーボネート、γ−ブチロラクトン、スルホラン、アセトニトリル、1,2−ジメトキシエタン、1,3−ジメトキシプロパン、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン及びこれらの混合物等を挙げることができる。また、溶存した酸素を効率良く反応に用いることができるという観点から、上記非水溶媒は、酸素溶解性が高い溶媒であることが好ましい。非水系電解液におけるリチウム塩の濃度は、例えば0.5〜3mol/Lの範囲内である。
また、本発明に用いられる非水ゲル電解質は、通常、非水系電解液にポリマーを添加してゲル化したものである。例えば、上述した非水系電解液に、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリルニトリル(PAN)又はポリメチルメタクリレート(PMMA)等のポリマーを添加し、ゲル化することにより、得ることができる。本発明においては、例えば、LiTFSA(LiN(CFSO)−PEO系の非水ゲル電解質を用いることができる。
3.空気電池
本発明の空気電池は、空気極、負極、及び、当該空気極と当該負極との間に介在する電解質層を備える空気電池であって、前記電解質層は、上記空気電池用イオン性液体を含有することを特徴とする。
上述したように、本発明に係る空気電池用イオン性液体中のカチオンにおいては、カチオンの中心原子の電気陰性度が、窒素の電気陰性度よりも低い。当該カチオンの中心原子が電荷を帯びにくくなることにより、従来のイオン性液体よりもカチオン全体の電荷分布が均等になる結果、カチオンが空気極に吸着しにくくなる。したがって、本発明に係る空気電池においては、電解質層中に拡散しているリチウムイオン及び酸素が、電解質層中のイオン性液体に阻害されることなく、空気極へ供給されやすくなり、その結果、空気電池の出力密度及び放電容量を高くすることができる。後述する実施例において示すように、本発明に係る空気電池(参考例4、実施例5、及び実施例6)は、アンモニウムカチオンを含むイオン性液体を用いた従来の空気電池(比較例2)と比較して、約2倍の出力密度及び約2倍の放電容量を有する。
図1は、本発明の空気電池の層構成の一例を示す図であって、積層方向に切断した断面を模式的に示した図である。なお、本発明の空気電池は、必ずしもこの例のみに限定されるものではない。
空気電池100は、空気極層2及び空気極集電体4を備える空気極6と、負極活物質層3及び負極集電体5を備える負極7と、空気極6及び負極7に挟持される電解質層1を備える。
以下、本発明の空気電池を構成する、空気極、負極、及び電解質層、並びに本発明の空気電池に好適に使用されるセパレータ及び電池ケースについて、詳細に説明する。
本発明に用いられる空気極は、好ましくは空気極層を備え、通常、空気極集電体、及び当該空気極集電体に接続された空気極リードをさらに備える。
本発明に用いられる空気極層は、少なくとも導電性材料を含有する。さらに、必要に応じて、触媒及び結着剤の少なくとも一方を含有していても良い。
本発明に用いられる導電性材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば炭素材料、ペロブスカイト型導電性材料、多孔質導電性ポリマー及び金属多孔体等を挙げることができる。特に、炭素材料は、多孔質構造を有するものであっても良く、多孔質構造を有しないものであっても良いが、本発明においては、多孔質構造を有するものであることが好ましい。比表面積が大きく、多くの反応場を提供することができるからである。多孔質構造を有する炭素材料としては、具体的にはメソポーラスカーボン等を挙げることができる。一方、多孔質構造を有しない炭素材料としては、具体的にはグラファイト、アセチレンブラック、カーボンブラック、カーボンナノチューブおよびカーボンファイバー等を挙げることができる。空気極層における導電性材料の含有量としては、例えば、空気極層全体の質量を100質量%としたとき、10〜99質量%、中でも50〜95質量%であることが好ましい。導電性材料の含有量が少なすぎると、反応場が減少し、電池容量の低下が生じる可能性があり、導電性材料の含有量が多すぎると、相対的に触媒の含有量が減り、充分な触媒機能を発揮できない可能性があるからである。
本発明に用いられる空気極用の触媒としては、例えば、酸素活性触媒が挙げられる。酸素活性触媒の例としては、例えば、ニッケル、パラジウム及び白金等の白金族;コバルト、マンガン又は鉄等の遷移金属を含むペロブスカイト型酸化物;ルテニウム、イリジウム又はパラジウム等の貴金属酸化物を含む無機化合物;ポルフィリン骨格又はフタロシアニン骨格を有する金属配位有機化合物;酸化マンガン等が挙げられる。空気極層における触媒の含有割合としては、特に限定されるものではないが、例えば、空気極層全体の質量を100質量%としたとき、0〜90質量%、中でも1〜90質量%であることが好ましい。
電極反応がよりスムーズに行われるという観点から、上述した導電性材料に触媒が担持されていてもよい。
上記空気極層は、少なくとも導電性材料を含有してれば良いが、さらに、導電性材料を固定化する結着剤を含有することが好ましい。結着剤としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)や、スチレン・ブタジエンゴム(SBRゴム)等のゴム系樹脂等を挙げることができる。空気極層における結着剤の含有割合としては、特に限定されるものではないが、例えば、空気極層全体の質量を100質量%としたとき、1〜40質量%、中でも1〜10質量%であることが好ましい。
空気極層の作製方法としては、例えば、上記導電性材料を含む空気極層の原料等を、混合して圧延する方法や、当該原料に溶媒を加えてスラリーを調製し、後述する空気極集電体に塗布する方法等が挙げられるが、必ずしもこれらの方法に限定されない。スラリーの空気極集電体への塗布方法としては、例えば、スプレー法、スクリーン印刷法、ドクターブレード法、グラビア印刷法、ダイコート法等の公知の方法が挙げられる。
上記空気極層の厚さは、空気電池の用途等により異なるものであるが、例えば2〜500μm、中でも5〜300μmであることが好ましい。
本発明に用いられる空気極集電体は、空気極層の集電を行うものである。空気極集電体の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばステンレス、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、カーボン等を挙げることができる。空気極集電体の形状としては、例えば箔状、板状、及びメッシュ(グリッド)状等を挙げることができる。中でも、本発明においては、集電効率に優れるという観点から、空気極集電体の形状がメッシュ状であることが好ましい。この場合、通常、空気極層の内部にメッシュ状の空気極集電体が配置される。さらに、本発明の空気電池は、メッシュ状の空気極集電体により集電された電荷を集電する別の空気極集電体(例えば箔状の集電体)を備えていても良い。また、本発明においては、後述する電池ケースが空気極集電体の機能を兼ね備えていても良い。
空気極集電体の厚さは、例えば10〜1000μm、中でも20〜400μmであることが好ましい。
本発明に用いられる負極は、好ましくは負極活物質を含有する負極活物質層を備え、通常、負極集電体、及び当該負極集電体に接続された負極リードをさらに備える。
本発明に用いられる負極活物質層は、金属材料、合金材料、及び炭素材料からなる群より選ばれる少なくとも1つを含む負極活物質を含有する。負極活物質に用いることができる金属及び合金材料としては、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム等の第2族元素;アルミニウム等の第13族元素;亜鉛、鉄等の遷移金属;又は、これらの金属を含有する合金材料や化合物を例示することができる。
リチウム元素を含有する合金としては、例えばリチウムアルミニウム合金、リチウムスズ合金、リチウム鉛合金、リチウムケイ素合金等を挙げることができる。また、リチウム元素を含有する金属酸化物としては、例えばリチウムチタン酸化物等を挙げることができる。また、リチウム元素を含有する金属窒化物としては、例えばリチウムコバルト窒化物、リチウム鉄窒化物、リチウムマンガン窒化物等を挙げることができる。また、負極活物質層には、固体電解質をコートしたリチウムを用いることもできる。
また、上記負極活物質層は、負極活物質のみを含有するものであっても良く、負極活物質の他に、導電性材料及び結着剤の少なくとも一方を含有するものであっても良い。例えば、負極活物質が箔状である場合は、負極活物質のみを含有する負極活物質層とすることができる。一方、負極活物質が粉末状である場合は、負極活物質及び結着剤を含有する負極活物質層とすることができる。なお、結着剤の種類及び含有割合については上述した通りである。
負極活物質層が含有する導電性材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば炭素材料、ペロブスカイト型導電性材料、多孔質導電性ポリマー及び金属多孔体等を挙げることができる。炭素材料は、多孔質構造を有するものであっても良く、多孔質構造を有しないものであっても良い。多孔質構造を有する炭素材料としては、具体的にはメソポーラスカーボン等を挙げることができる。一方、多孔質構造を有しない炭素材料としては、具体的にはグラファイト、アセチレンブラック、カーボンナノチューブ及びカーボンファイバー等を挙げることができる。
本発明に用いられる負極集電体の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば銅、ステンレス、ニッケル、カーボン等を挙げることができる。負極集電体は、これらの内、SUS及びNiを用いることが好ましい。上記負極集電体の形状としては、例えば箔状、板状及びメッシュ(グリッド)状等を挙げることができる。本発明においては、後述する電池ケースが負極集電体の機能を兼ね備えていても良い。
本発明に用いられる電解質層は、空気極及び負極の間、好ましくは空気極層及び負極活物質層の間に保持され、空気極及び負極の間(好ましくは空気極層及び負極活物質層の間)で金属イオンを交換する働きを有する。
電解質層には、上述した本発明に係る空気電池用イオン性液体、及びその他の電解液を用いることができる。これらは、1種類のみを単独で用いてもよいし、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。本発明がリチウム空気電池である場合には、上述した本発明に係るリチウム空気電池用電解液が使用できる。
電解質層に使用できるその他の電解液としては、水系電解液及び非水系電解液が例示できる。
非水系電解液の種類は、伝導する金属イオンの種類に応じて、適宜選択することが好ましい。例えば、リチウム空気電池に用いる非水系電解液としては、通常、上述したリチウム塩及び非水溶媒を含有したものを用いる。
水系電解液の種類は、伝導する金属イオンの種類に応じて、適宜選択することが好ましい。例えば、リチウム空気電池に用いる水系電解液としては、通常、リチウム塩及び水を含有したものを用いる。上記リチウム塩としては、例えばLiOH、LiCl、LiNO、CHCOLi等のリチウム塩等を挙げることができる。
本発明の空気電池は、空気極及び負極の間に、セパレータを備えていてもよい。上記セパレータとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔膜;及びポリプロピレン等の樹脂製の不織布、ガラス繊維不織布等の不織布等を挙げることができる。
セパレータに使用できるこれらの材料は、上述した電解液を含浸させることにより、電解液の支持材として使用することもできる。
本発明の空気電池は、通常、空気極、負極、及び電解質層等を収納する電池ケースを備える。電池ケースの形状としては、具体的にはコイン型、平板型、円筒型、ラミネート型等を挙げることができる。電池ケースは、大気開放型の電池ケースであっても良く、密閉型の電池ケースであっても良い。大気開放型の電池ケースは、少なくとも空気極層が十分に大気と接触可能な構造を有する電池ケースである。一方、電池ケースが密閉型電池ケースである場合は、密閉型電池ケースに、気体(空気)の導入管及び排気管が設けられることが好ましい。この場合、導入・排気する気体は、酸素濃度が高いことが好ましく、乾燥空気や純酸素であることがより好ましい。また、放電時には酸素濃度を高くし、充電時には酸素濃度を低くすることが好ましい。
電池ケース内には、電池ケースの構造に応じて、酸素透過膜や、撥水膜を設けてもよい。
以下に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を更に具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
1.リチウム空気電池用電解液の調製
参考例1
下記式(4)で表される構造を有するトリエチルペンチルホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(以下、P2225TFSAと称する場合がある)(関東化学株式会社製)に、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(以下、LiTFSAと称する場合がある)(キシダ化学株式会社製)を、濃度が0.58mol/kgとなるように秤量混合し、組成が均一となるように攪拌することにより、参考例1のリチウム空気電池用電解液を調製した。
[実施例2]
下記式(5)で表される構造を有するトリス(ジメチルアミノ)−n−ブトキシホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(以下、TDMABPTFSAと称する場合がある)(関東電化工業株式会社製)に、LiTFSA(キシダ化学株式会社製)を、濃度が0.58mol/kgとなるように秤量混合し、組成が均一となるように攪拌することにより、実施例2のリチウム空気電池用電解液を調製した。
[実施例3]
下記式(6)で表される構造を有するエチルトリ(ブチルメチルアミノ)ホスホニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(以下、ETMBAPTFSAと称する場合がある)(関東電化工業株式会社製)に、LiTFSA(キシダ化学株式会社製)を、濃度が0.58mol/kgとなるように秤量混合し、組成が均一となるように攪拌することにより、実施例3のリチウム空気電池用電解液を調製した。
[比較例1]
下記式(7)で表される構造を有するN,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウム ビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(以下、DEMETFSAと称する場合がある)(関東化学株式会社製)に、LiTFSA(キシダ化学株式会社製)を、濃度が0.58mol/kgとなるように秤量混合し、組成が均一となるように攪拌することにより、比較例1のリチウム空気電池用電解液を調製した。
2.クロノアンペロメトリー
参考例1、実施例2、実施例3、及び比較例1のリチウム空気電池用電解液を、それぞれ測定用セルに加えた。測定用セルの構成は以下の通りである。
作用電極:グラッシーカーボン(φ3mm)
参照電極:Ag/Ag
対極:Ni
まず、各測定用セル内を、アルゴンガスにより30分間置換した。次に、各測定用セルについて、25℃の恒温槽内に3時間静置した。続いて、各測定用セルを用いてクロノアンペロメトリーを実施した。具体的には、ポテンショスタット/ガルバノスタット(Solartron社製)を用いて、以下に示す酸素還元ピーク電位にて10分間電位を保持した際の電流変化を観察し、各リチウム空気電池用電解液についてのアルゴン雰囲気下における酸素還元電流値Aを測定した。
<酸素還元ピーク電位>
参考例1のリチウム空気電池用電解液:−1.24V(vs.Ag/Ag
実施例2のリチウム空気電池用電解液:−1.32V(vs.Ag/Ag
実施例3のリチウム空気電池用電解液:−1.37V(vs.Ag/Ag
比較例1のリチウム空気電池用電解液:−1.17V(vs.Ag/Ag
次に、各測定用セル内を、酸素ガスにより30分間置換した。次に、各測定用セルについて、25℃の恒温槽内に3時間静置した。以下、アルゴン雰囲気下と同様の条件下でクロノアンペロメトリーを実施し、各リチウム空気電池用電解液についての酸素雰囲気下における酸素還元電流値Aを測定した。
酸素雰囲気下における酸素還元電流値Aから、アルゴン雰囲気下(不活性雰囲気下)における酸素還元電流値Aを減じた値を、そのリチウム空気電池用電解液の酸素還元電流値とした。
図2は、参考例1、実施例2、実施例3及び比較例1のリチウム空気電池用電解液の酸素還元電流値の時間依存性を比較したグラフである。図2は、縦軸に酸素還元電流値(A)を、横軸に時間(秒)を、それぞれとったグラフである。図2中、薄く太い曲線が参考例1のデータを、濃く細い曲線が実施例2のデータを、薄く細い曲線が実施例3のデータを、濃く太い曲線が比較例1のデータを、それぞれ示す。
図2より、アンモニウムカチオンを含むDEMETFSAを用いた比較例1のリチウム空気電池用電解液の、10分後(600秒後)の酸素還元電流値は、1.77×10−6Aである。これに対し、ホスホニウムカチオンを含むP2225TFSAを用いた参考例1のリチウム空気電池用電解液の、10分後(600秒後)の酸素還元電流値は3.00×10−6Aであり、ホスホニウムカチオンを含むTDMABPTFSAを用いた実施例2のリチウム空気電池用電解液の、10分後(600秒後)の酸素還元電流値は3.74×10−6Aであり、ホスホニウムカチオンを含むETMBAPTFSAを用いた実施例3のリチウム空気電池用電解液の、10分後(600秒後)の酸素還元電流値は3.35×10−6Aである。
これらの結果から、ホスホニウムカチオンを含む参考例1、実施例2、及び実施例3のリチウム空気電池用電解液の酸素還元電流値は、アンモニウムカチオンを含む従来のリチウム空気電池用電解液の酸素還元電流値の1.7倍以上であることが分かる。よって、ホスホニウムカチオンを含む本発明に係るリチウム空気電池用電解液は、アンモニウムカチオンを含む従来のリチウム空気電池用電解液と比較して、酸素の供給性に優れることが分かる。
3.導電率の測定
参考例1、実施例2、実施例3、及び比較例1のリチウム空気電池用電解液について、導電率計(METTLER TOLEDO社製:SevenMulti−A)を用いて、アルゴン雰囲気下、25℃にて導電率を測定した。
アンモニウムカチオンを含むDEMETFSAを用いた比較例1のリチウム空気電池用電解液の導電率は2.55mS/cmである。一方、ホスホニウムカチオンを含むP2225TFSAを用いた参考例1のリチウム空気電池用電解液の導電率は3.0mS/cmであり、ホスホニウムカチオンを含むTDMABPTFSAを用いた実施例2のリチウム空気電池用電解液の導電率は0.9mS/cmであり、ホスホニウムカチオンを含むETMBAPTFSAを用いた実施例3のリチウム空気電池用電解液の導電率は1.7mS/cmである。
これらの結果から、参考例1、実施例2、及び実施例3のリチウム空気電池用電解液の導電率は、比較例1のリチウム空気電池用電解液の導電率と同程度か、それ以下である。したがって、本発明において、リチウム空気電池の出力密度及び放電容量がいずれも後述のように向上した理由は、リチウム空気電池用電解液のイオン伝導性によるものというよりは、むしろ、リチウム空気電池用電解液における優れた酸素の供給性によるものであると考えられる。
4.リチウム空気電池の作製
参考例4
まず、導電性材料としてケッチェンブラック(KetjenBlack International製、ECP600JD;以下、KBと称する場合がある)を、結着剤としてPTFE(ダイキン工業株式会社製)を、それぞれ用意した。これら導電性材料及び結着剤を、KB:PTFE=90質量%:10質量%の割合で混合し、ロールプレスにより圧延し、乾燥し、成形して、空気極層とした。空気極集電体として、SUS304製100メッシュ(株式会社ニラコ製)を用意し、当該SUSメッシュの一面側に上記空気極層を貼り合わせて、空気極を作製した。
また、負極集電体としてSUS304箔(株式会社ニラコ製)を用意し、当該SUS箔の一面側に、負極活物質層としてリチウム金属(本城金属株式会社製)を貼り合わせて、負極を作製した。
ポリプロピレン製不織布(JH1004N)に、参考例1のリチウム空気電池用電解液100mLを浸漬させたものを電解質層とした。当該電解質層を、気泡が入らないように、上記空気極と負極によって、重力方向略下側から、負極集電体、リチウム金属、電解質層、空気極層、及び空気極集電体の順となるように挟持し、参考例4のリチウム空気電池を製造した。以上の工程は、全て窒素雰囲気下のグローブボックス内で行った。
参考例4のリチウム空気電池は、電気化学セル内に配置した。空気極集電体として用いたSUSメッシュの空隙から、リチウム空気電池内に純酸素(大陽日酸株式会社製、純度:99.9%)を導入した。
[実施例5]
参考例4と同様に、空気極及び負極を用意した。
ポリプロピレン製不織布(JH1004N)に、実施例2のリチウム空気電池用電解液100mLを浸漬させたものを電解質層とした。
あとは、参考例4と同様に、負極、電解質層、及び空気極を用いて、実施例5のリチウム空気電池を製造した。なお、実施例5のリチウム空気電池には、参考例4のリチウム空気電池と同様の態様により純酸素を導入した。
[実施例6]
参考例4と同様に、空気極及び負極を用意した。
ポリプロピレン製不織布(JH1004N)に、実施例3のリチウム空気電池用電解液100mLを浸漬させたものを電解質層とした。
あとは、参考例4と同様に、負極、電解質層、及び空気極を用いて、実施例6のリチウム空気電池を製造した。なお、実施例6のリチウム空気電池には、参考例4のリチウム空気電池と同様の態様により純酸素を導入した。
[比較例2]
参考例4と同様に、空気極及び負極を用意した。
ポリプロピレン製不織布(JH1004N)に、比較例1のリチウム空気電池用電解液100mLを浸漬させたものを電解質層とした。
あとは、参考例4と同様に、負極、電解質層、及び空気極を用いて、比較例2のリチウム空気電池を製造した。なお、比較例2のリチウム空気電池には、参考例4のリチウム空気電池と同様の態様により純酸素を導入した。
5.放電試験
参考例4、実施例5、実施例6及び比較例2のリチウム空気電池について、60℃の恒温槽にて3時間静置した後、以下の条件にて放電試験を行い、放電容量を測定した。
試験装置:二次電池充放電試験装置(株式会社ナガノ製、BTS2004HT)
電流密度:0.1mA/cm
電極面積:2.5cm
電池内温度:60℃
電池内圧力:1気圧
雰囲気:純酸素
図3は、参考例4、実施例5、実施例6及び比較例2のリチウム空気電池の放電容量を比較した棒グラフである。図3は、縦軸に放電容量(mAh/g)をとったグラフである。
図3から分かるように、アンモニウムカチオンを含むイオン性液体(比較例1)を用いた比較例2のリチウム空気電池の放電容量は1,713mAh/gである。一方、ホスホニウムカチオンを含むイオン性液体(参考例1)を用いた参考例4のリチウム空気電池の放電容量は3,658mAh/gであり、ホスホニウムカチオンを含むイオン性液体(実施例2)を用いた実施例5のリチウム空気電池の放電容量は4,015mAh/gであり、ホスホニウムカチオンを含むイオン性液体(実施例3)を用いた実施例6のリチウム空気電池の放電容量は3,985mAh/gである。
これらの結果から、ホスホニウムカチオンを含むイオン性液体を用いた参考例4、実施例5、及び実施例6のリチウム空気電池の放電容量は、アンモニウムカチオンを含むイオン性液体を用いた従来のリチウム空気電池の放電容量の2.1倍以上であることが分かる。
6.I−V試験
参考例4、実施例5、実施例6及び比較例2のリチウム空気電池について、60℃の恒温槽にて3時間静置した後、以下の条件にてI−V試験を行い、出力密度を測定した。
充放電I−V測定装置:マルチチャンネル ポテンショスタット/ガルバノスタット VMP3(Bio−Logic社製)
電流印加時間:30分間
休止時間:0.1秒間
電池内温度:60℃
電池内圧力:1気圧
雰囲気:純酸素
図4は、参考例4、実施例5、実施例6及び比較例2のリチウム空気電池の出力密度を比較した棒グラフである。図4は、縦軸に出力密度(mW/cm)をとったグラフである。
図4から分かるように、アンモニウムカチオンを含むイオン性液体(比較例1)を用いた比較例2のリチウム空気電池の出力密度は0.48mW/cmである。一方、ホスホニウムカチオンを含むイオン性液体(参考例1)を用いた参考例4のリチウム空気電池の出力密度は0.88mW/cmであり、ホスホニウムカチオンを含むイオン性液体(実施例2)を用いた実施例5のリチウム空気電池の出力密度は0.89mW/cmであり、ホスホニウムカチオンを含むイオン性液体(実施例3)を用いた実施例6のリチウム空気電池の出力密度は0.75mW/cmである。
これらの結果から、ホスホニウムカチオンを含むイオン性液体を用いた参考例4、実施例5、及び実施例6のリチウム空気電池の出力密度は、アンモニウムカチオンを含むイオン性液体を用いた従来のリチウム空気電池の出力密度の1.6倍以上であることが分かる。
1 電解質層
2 空気極層
3 負極活物質層
4 空気極集電体
5 負極集電体
6 空気極
7 負極
100 空気電池

Claims (3)

  1. カチオン及びそのカウンターアニオンを含有するイオン性液体であって、
    前記カチオンは、下記一般式(1)で表される構造を有することを特徴とする、空気電池用イオン性液体。
    (上記一般式(1)中、R〜Rは互いに独立であり、且つ、 〜R の内の少なくともいずれか1つの基が、−NR (R 及びR は互いに独立な基を表し、且つ、R 及びR は炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を表す。)で表される第3級アミノ基であり、〜R の内の残りの基が、炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基、及び−OR(Rは炭素数1〜5の脂肪族炭化水素基を表す。)で表されるアルコキシ基からなる群より選ばれる基である。)
  2. リチウム塩、及び、前記請求項1に記載の空気電池用イオン性液体を含有することを特徴とする、リチウム空気電池用電解液。
  3. 空気極、負極、及び、当該空気極と当該負極との間に介在する電解質層を備える空気電池であって、
    前記電解質層は、前記請求項1に記載の空気電池用イオン性液体を含有することを特徴とする、空気電池。
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