JP5593798B2 - 金属空気電池 - Google Patents

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Description

本発明は、充放電レート特性の高い金属空気電池に関する。
金属空気電池は、金属単体又は金属化合物を負極活物質に、酸素を正極活物質に利用した、充放電可能な電池である。正極活物質である酸素は空気から得られるため、電池内に正極活物質を封入する必要がないことから、理論上、金属空気電池は、固体の正極活物質を用いる二次電池よりも大きな容量を実現できる。
金属空気電池の一種であるリチウム空気電池においては、放電の際、負極では(I)式の反応が進行する。
2Li→2Li+2e (I)
式(I)で生じる電子は、外部回路を経由し、外部の負荷で仕事をした後、空気極に到達する。そして、式(I)で生じたリチウムイオン(Li)は、負極と空気極に挟持された電解質内を、負極側から空気極側に電気浸透により移動する。
また、放電の際、空気極では式(II)及び式(III)の反応が進行する。
2Li+O+2e→Li (II)
2Li+1/2O+2e→LiO (III)
生じた過酸化リチウム(Li)及び酸化リチウム(LiO)は、固体として空気極に蓄積される。
充電時においては、負極において上記式(I)の逆反応、空気極において上記式(II)及び(III)の逆反応がそれぞれ進行し、負極において金属リチウムが再生するため、再放電が可能となる。
近年、有機溶媒にLiPF等のリチウム塩を溶解させた非水電解質の替わりに、安全性に優れ、不揮発性且つ疎水性であるイオン液体を非水電解質として用いた、非水電解質空気電池の技術が開発されている。特許文献1には、正極と負極の間に電解質含有層が設けられた空気電池において、前記電解質含有層の電解質が、イオン液体、無機微粒子及び電解質塩を含有してなることを特徴とする空気電池の技術が開示されている。
特開2008−066202号公報
特許文献1に開示された空気電池は、粘性の高いイオン液体に加え、当該文献の明細書中の段落19に記載されているように、粘性の高いシリコンオイルを無機微粒子として用いることが記載されている。このような空気電池においては、電解液全体として流動性が低いことが予想されるため、酸素拡散性が悪く、充放電レート特性が低いものと考えられる。
本発明は、上記実状を鑑みて成し遂げられたものであり、充放電レート特性の高い金属空気電池を提供することを目的とする。
本発明の金属空気電池は、少なくとも空気極と、負極と、当該空気極と当該負極との間に介在した電解質とを備える金属空気電池であって、前記電解質が、イミダゾリウムカチオン部位と非イオン部位を備えるカチオンを含有し、前記カチオンがカラムナー液晶性を有し、前記非イオン部位が、前記イミダゾリウムカチオン部位をディスク状に取り囲んでディスク状分子集合体を構成し、前記ディスク状分子集合体は互いに積み重なることによりカラム状分子集合体を構築し、前記空気極及び前記負極の少なくともいずれか一方の面に平行な方向と、前記カラム状分子集合体におけるカラムの長さ方向とが垂直となることを特徴とする。
このような構成の金属空気電池は、前記空気極及び前記負極の少なくともいずれか一方の面方向と交わる方向に、前記電解質の金属イオン伝導性及び酸素拡散性が高まるため、充放電レートを向上させることができる。また、このような構成の金属空気電池は、前記カチオンが、当該カチオンのイミダゾリウム塩部位同士、非イオン部位同士が集合することにより自己組織化してカラムナー液晶となり、その結果、当該カラムナー液晶が特定の方向に配向することによって、カラムナー液晶中のカラムの中央部分に位置するイミダゾリウム塩部位が集合した部分において、金属イオン伝導性及び酸素拡散性を高めることができる。
本発明の金属空気電池の一形態としては、前記電解質が、当該電解質を構成する各前記カチオンが共有結合によって互いに連結したフィルム状電解質であるという構成をとることができる。
本発明によれば、前記空気極及び前記負極の少なくともいずれか一方の面方向と交わる方向に、前記電解質の金属イオン伝導性及び酸素拡散性が高まるため、充放電レートを向上させることができる。
本発明に用いられる電解質の典型例である、非極性部位及び極性部位を備える絶縁性分子並びにイオン液体を含有する液晶構造の一例を示した断面模式図である。 本発明に用いられる電解質の第2の典型例である、イミダゾリウムカチオン部位と非イオン部位を備えるカラムナー液晶構造の一例を示した斜視模式図である。 本発明に係る金属空気電池の層構成の一例を示す図であって、積層方向に切断した断面を模式的に示した図である。 液晶中の、容器の内壁に略平行な方向(σ//)と、容器の内壁に略垂直な方向(σ)のリチウムイオン伝導度の温度依存性を比較したアレニウスプロットである。 カラムナー液晶中の、カラムの積層方向に略平行な方向(σ//)と、カラムの積層方向に略鉛直な方向(σ)のリチウムイオン伝導度の温度依存性を比較したアレニウスプロットである。 フィルム電解質中の、当該フィルム電解質の面方向に略平行な方向(σ//)と、当該フィルム電解質の面方向に略鉛直な方向(σ)のリチウムイオン伝導度の温度依存性を比較したアレニウスプロットである。
本発明の金属空気電池は、少なくとも空気極と、負極と、当該空気極と当該負極との間に介在した電解質とを備える金属空気電池であって、前記電解質として、イオン伝導性及び酸素拡散性に異方性を有し、少なくとも酸素拡散性の高い方向が、前記空気極及び前記負極の少なくともいずれか一方の面方向と交わる方向に配向した電解質を備えることを特徴とする。
従来から、イオン液体の粘度と酸素の拡散性との相関については、盛んに議論がされている。例えば、イオン液体のような高粘度液体中では、酸素分子の並進拡散が遅くなり、化学反応速度に大きな影響があることが報告されている(分子科学会年会2009年予稿集1B05)。
さらに近年では、イオン液体の粘度と金属イオン伝導度との相関についても、研究成果が報告されている。例えば、イオン液体の一種であるイミダゾリウム塩は、粘性と等モル伝導度が反比例するという報告がある(京都大学21世紀COEプログラムにおける、京都大学化学連携研究教育拠点の平成15年度重点プロジェクト報告)。
以上より、イオン液体は一般的に高粘度の液体であり、このような高粘度の液体中においては、酸素拡散及び金属イオン伝導度が低減することが分かる。
一方、液晶の粘度に異方性が存在するという報告もなされている。例えば、ネマティック液晶においては配向秩序が存在するため、粘度が非等方的となることが報告されている
(福岡大学理学集報34(1)67〜77(2004))。
本発明者は、粘性異方性を持つ液晶にイオン液体を混合した場合において、又は、粘性異方性を持つイオン液体中においては、金属イオン伝導度が高い方向と、酸素拡散速度が高い方向がほぼ揃うことを推測し、研究開発を行った。その結果、本発明者は、金属空気電池中の、空気極と負極との間に介在した電解質において、イオン伝導性及び酸素拡散性に異方性を有する電解質、好ましくは液晶中にイオン性部位を導入した電解質を配置することにより、電解質の金属イオン伝導性及び酸素拡散性を高めることができ、充放電レート向上を可能とすることを見出した。
本発明において、「空気極及び負極の少なくともいずれか一方の面方向と交わる方向」とは、空気極及び/又は負極の面方向と平行となる方向以外の方向のことをいう。すなわち、電解質中の酸素拡散性の高い方向が、空気極及び/又は負極の面方向と交線を持つ方向であることを意味する。
電解質中の酸素拡散性の高い方向は、空気極及び/又は負極の面方向と45°〜90°で交わる方向であることが好ましく、空気極及び/又は負極の面方向と略垂直となる方向であることがより好ましい。
本発明でいう「イオン伝導性及び酸素拡散性に異方性を有する」電解質としては、上述したように、イオン伝導性の高い方向と、酸素拡散性の高い方向とがほぼ同じ方向に揃っている電解質であることが好ましい。
このような電解質として、(1)絶縁性分子及びイオン液体を含む液晶、(2)カラムナー液晶、(3)各分子が共有結合によって互いに連結したフィルム状電解質の例が挙げられる。以下、これらの電解質について詳細に説明する。
(1)絶縁性分子及びイオン液体を含む液晶
本発明に用いられる電解質の典型例としては、非極性部位及び極性部位を備える絶縁性分子並びにイオン液体を含有し、当該絶縁性分子が液晶性を有する例を挙げることができる。
本典型例において、「絶縁性分子」とは、導電性を有さない分子のことであり、具体的には、結晶状態において、電子のエネルギーバンドの価電子帯と、伝導帯の間にエネルギーギャップが存在する分子である。
本典型例中に用いられる絶縁性分子は、非極性部位及び極性部位を備える。絶縁性分子の極性部位は、極性分子であるイオン液体分子、及び金属イオンと相互作用する働きを有する。絶縁性分子の非極性部位は、互いに自己集合を起こし、液晶を構築する働きを有する。非極性部位は、液晶中に形成されるイオン伝導路及び酸素拡散路を保持するため、剛直な棒状部分を備えることが好ましい。
図1は、本発明に用いられる電解質の典型例である、非極性部位及び極性部位を備える絶縁性分子並びにイオン液体を含有する液晶構造の一例を示した断面模式図である。
本例の液晶構造は、絶縁性分子1及びイオン液体分子2からなる。絶縁性分子1は、非極性部位中の剛直な棒状部分1a、非極性部位中の柔軟な部分1b及び極性部位1cを備え、このうち、主に棒状部分1a同士が互いに相互作用しあう結果、層状に組織化された分子集合体が形成される。絶縁性分子1は、基板3に対して略直角に立ち上がって集合するため、分子集合体の層の方向と、基板3の面方向とは、略平行となる。本例の液晶構造は、分子軸が層平面に対して立った配向を有するスメクティック構造である。
分子集合体の層は、基板3に略平行に層状に積層する。その結果、積層体は、極性部位1cが集合した極性層4と、棒状部分1a及び柔軟な部分1bが集合した非極性層5とが、交互に積層した構造となる。
極性層4は、イオン液体分子2と相互作用することにより、層状にイオン液体分子2が組織化される。その結果、イオン液体分子2を含む極性層4と、イオン液体分子2を含まない非極性層5が完全に相分離し、金属イオン伝導性及び酸素拡散性が、共に基板3に略平行方向に揃った、ナノスケールの液晶秩序構造を有する電解質が自己組織的に形成される。なお、図中の矢印6は、イオン及び酸素の移動方向を示す。
絶縁性分子の非極性部位の内、棒状部分としては、非極性基であり、かつ、分子骨格が剛直であれば特に限定されないが、具体的には、シクロヘキシレン基等の環状脂肪族炭化水素基や、フェニレン基等の芳香族炭化水素基から構成されるのが好ましい。なお、棒状部分の非極性及び剛直性を損なわなければ、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
絶縁性分子の非極性部位の内、柔軟な部分としては、非極性基であり、かつ、分子骨格が分子運動により柔軟に動くものであれば特に限定されないが、具体的には、鎖状脂肪族炭化水素基から構成されるのが好ましい。なお、非極性及び柔軟性を損なわなければ、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を含んでいてもよい。
絶縁性分子の極性部位としては、イオン液体分子と相互作用できる程度の極性を有していれば特に限定されないが、具体的には、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基から構成されるのが好ましい。なお、極性部位は、絶縁性分子中に2つ以上設けられていてもよい。また、絶縁性分子の極性部位は、鎖状脂肪族炭化水素基の末端に設けられていてもよい。
下記式(1)は、本典型例中に用いられる絶縁性分子の好ましい例の構造式である。式(1a)及び式(1b)に示す構造は、いずれもフェニレン基とシクロヘキシレン基を1つずつ含む棒状部位を備え、式(1c)に示す構造は、ビフェニレン基からなる棒状部位を備える。また、下記式(1)に示す構造は、いずれも、極性部位を1つずつ備えている。
Figure 0005593798
(上記式(1)中、R、Rは互いに独立であり、炭素数2〜8の直鎖脂肪族炭化水素基である。Xは、ヒドロキシル基、アミノ基及びカルボキシル基からなる群から選ばれる基である。)
上記式(1)中、R〜Rには、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のヘテロ原子が、分子全体の原子数に対して、合計で10%程度含まれていてもよい。
なお、棒状部位の構造は、必ずしも上記式(1)のようなフェニレン基及びシクロヘキシレン基の合計が2となる構造でなくてもよい。例えば、フェニレン基及びシクロヘキシレン基の合計が3以上であってもよいし、フェニレン基及びシクロヘキシレン基の連結位置が上記式(1)とは異なっていてもよい。ただし、分子運動に関わらず、絶縁性分子が全体として直線状となるように、棒状部位が設計されているのが好ましい。
本典型例に用いられるイオン液体とは、カチオンとアニオンとを組み合わせたイオン分子のみから成る物質であり、且つ、常温(15℃〜25℃)において液体である物質のことを指す。
本発明において用いることができるイオン液体のカチオン種としては、2−エチルイミダゾリウム、3−プロピルイミダゾリウム、1−エチル−3−メチルイミダゾリウム、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウム、1,3−ジメチルイミダゾリウム等のイミダゾリウム;ジエチルメチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、シクロヘキシルトリメチルアンモニウム、メチルトリ−n−オクチルアンモニウム、トリエチル(2−メトキシエトキシメチル)アンモニウム、ベンジルジメチルテトラデシルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム等のアンモニウム;その他にもアルキルピリジニウム、ジアルキルピロリジニウム、テトラアルキルフォスフォニウム、トリアルキルスルフォニウム等が挙げられる。
本発明において用いることができるイオン液体のアニオン種としては、Cl、Br、Iなどのハロゲン化物アニオン;BF 、B(CN) 、B(C 等のホウ素化物アニオン;(CN)、[N(CF、[N(SOCF等のアミドアニオン又はイミドアニオン;RSO (以下、Rは脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を指す)、RSO 、RSO (以下、Rは含フッ素ハロゲン化炭化水素基を指す)、RSO 等のスルフェートアニオン又はスルフォネートアニオン;R P(O)O、PF 、R PF 等のリン酸アニオン;SbF等のアンチモンアニオン;その他、ラクテート、硝酸イオン、トリフルオロアセテート等が挙げられる。
本発明においては、金属イオン伝導性を高めるために、金属塩を添加してもよい。特に、リチウム空気電池に用いられるリチウム塩としては、リチウムイオンと上記アニオンとから成る塩、例えばLiPF、LiBF、LiClO、LiTFSI、LiBETIなどが挙げられる。これらリチウム塩を2種以上組み合わせて用いてもよい。また、イオン液体に対するリチウム塩の添加量は特に限定されないが、0.1〜1.5mol/kg程度とすることが好ましい。
液晶構造の形成方法の例としては、絶縁性分子、イオン液体及びリチウム塩を常法により混合する方法が挙げられる。
好適な液晶構造の形成方法を以下に例示する。まず、不活性雰囲気下において、室温において絶縁性分子、イオン液体及びリチウム塩を混合する。次に、当該混合物を攪拌しながら、液晶性を有する絶縁性分子の相転移温度以上まで、当該混合物を徐々に加熱する。当該混合物が相転移温度まで達したら、当該温度において一定時間(例えば、1時間)保持する。保持時間後、攪拌を終了し、当該混合物を室温まで徐冷する。
金属イオン伝導性と酸素拡散性が高くなる方向は、上述したように、略同一方向となる。
積層構造の層方向を、金属空気電池の空気極及び/又は負極の面方向と交わる方向に配向させることにより、充放電レートを向上させることができる。
(2)カラムナー液晶
本発明に用いられる電解質の第2の典型例としては、イミダゾリウムカチオン部位と非イオン部位を備えるカチオンを含有し、当該カチオンがカラムナー液晶性を有するという例が挙げられる。
本第2の典型例中に用いられるカチオンは、イミダゾリウムカチオン部位と非イオン部位を備える。イミダゾリウムカチオン部位は、極性分子であるイオン液体分子、及び金属イオンと相互作用する働きを有する。非イオン部位は、イミダゾリウムカチオン部位をディスク状に取り囲むように自己集合を起こし、カラムナー液晶を構築する働きを有する。
図2は、本発明に用いられる電解質の第2の典型例である、イミダゾリウムカチオン部位と非イオン部位を備えるカラムナー液晶構造の一例を示した斜視模式図である。
本例のカラムナー液晶構造は、非イオン部位11a及びイミダゾリウムカチオン部位11bを有するカチオン11と、カウンターアニオン(図示せず)、並びに金属イオン(図示せず)からなる。極性部位であるイミダゾリウムカチオン部位11b及びカウンターアニオンが互いに相互作用しあい、且つ、非極性部位である非イオン部位11a同士が互いに相互作用しあう結果、イミダゾリウムカチオン部位11bが中心部に位置し、非イオン部位11aが周縁部に位置するディスク状分子集合体12が形成される。ディスク状分子集合体12は、互いに積み重なり、カラム状に組織化された分子集合体13が形成される。分子集合体13は、筒状に形成されたイオンチャンネル構造となり、イオン伝導体の特定方向の金属イオン伝導及び酸素拡散性を高め、充放電レート特性を向上させる。
カラムナー液晶構造は、図2(a)に示すように、基板14とカラムの高さ方向が略水平方向となるように構築することもできるし、図2(b)に示すように、基板14とカラムの高さ方向が略鉛直方向となるように構築することもできる。なお、図中の矢印15は、イオン及び酸素の移動方向を示す。
本第2の典型例中に用いられるカチオン中の非イオン部位は、非極性であり、且つ、カラムナー液晶の周囲を取り巻くことができる程度に嵩高い部位であれば特に限定されない。当該非イオン部位は、具体的には、フェニル基に直鎖脂肪族炭化水素基が2以上連結している構造であることが好ましい。なお、フェニル基と直鎖脂肪族炭化水素基とは、直接連結していてもよいし、酸素原子、窒素原子、硫黄原子等のヘテロ原子を介して間接的に連結していてもよい。
本第2の典型例中に用いられるカチオン中のイミダゾリウムカチオン部位は、イミダゾリウム環を備えていれば特に限定されないが、具体的には、イミダゾリウム環上の2つの窒素上に脂肪族炭化水素基を有している構造が好ましい。
本第2の典型例中に用いられるカチオン中の非イオン部位とイミダゾリウムカチオン部位は、直接結合していてもよいし、メチレン基等の脂肪族炭化水素基、フェニレン基等の芳香族炭化水素基等を介して間接的に結合していてもよい。
下記式(2)は、本第2の典型例中に用いられるカチオンの好ましい例の構造式である。
Figure 0005593798
(上記式(2)中、R〜Rは互いに独立であり、炭素数1〜10の直鎖脂肪族炭化水素基、炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる基である。X〜Xは、酸素原子、硫黄原子からなる群から選ばれる原子である。)
本第2の典型例に用いられるカウンターアニオン及び金属塩は、上述した典型例と同様の物を用いることができる。
カラムナー液晶の具体的な製造方法は以下の通りである。
まず、イミダゾリウムカチオン部位と非イオン部位を備えるカチオン、カウンターアニオン及びリチウム塩を混合して、昇温し、等方性液体とした後、室温付近まで徐冷し、カラムナー液晶相を発現させる。このままでは液晶全体がマルチドメイン構造となり、1次元イオン伝導体とならないため、液晶相に一定のせん断力を与えることにより、1次元イオン伝導体であるモノドメイン構造を形成する。製造容器壁の一部に、液晶配向処理アミノ基を含むシランカップリング材等の配向性薄膜を形成することにより、モノドメインの向きを任意の向きに制御できる。
金属イオン伝導性と酸素拡散性が高くなる方向は、上述したように、略同一方向となる。
カラムナー液晶のカラムの高さ方向を、金属空気電池の空気極及び/又は負極の面方向と交わる方向に配向させることにより、充放電レートを向上させることができる。
(3)フィルム状電解質
本発明に用いられる電解質の第3の典型例としては、当該電解質を構成する各分子が共有結合によって互いに連結したフィルム状電解質が挙げられる。
本第3の典型例のフィルム状電解質は、上述した自己組織化した液晶とは異なり、電解質を構成する各分子が共有結合によって互いに連結されていることにより、イオン伝導性及び酸素拡散性に異方性を有した構造が固定されている。したがって、フィルム状に加工された際にも、イオン伝導性及び酸素拡散性の異方性を保持できる。
本第3の典型例のフィルム状電解質は、予め重合性官能基が導入された液晶性分子が液晶を形成し、その後、重合反応により、液晶を構成する各分子が共有結合により連結したポリマー状電解質であることが好ましい。
重合性官能基が導入された液晶性分子としては、少なくとも、重合性官能基、液晶形成部位、及び、イオン部位を有することが好ましい。このうち、液晶形成部位としては、例えば、「(1)絶縁性分子及びイオン液体を含む液晶」の項で述べた非極性部位や、「(2)カラムナー液晶」の項で述べた非イオン部位等が挙げられる。また、「イオン部位」としては、例えば、「(2)カラムナー液晶」の項で述べたイミダゾリウムカチオン部位が挙げられる。
重合性官能基としては、例えば、カチオン重合、アニオン重合、ラジカル重合、配位重合、開環重合等に用いられる重合性官能基を採用することができ、特に、重合反応の簡便さから、光ラジカル重合に用いられる光ラジカル重合性官能基を採用することが好ましい。
光ラジカル重合性官能基としては、アクリル基、メタクリル基、スチレン基、ビニル基、シアン化ビニル基、アクリロイル基、メタアクリロイル基、アクリルアミド基及びメタアクリルアミド基等を採用することができる。
重合反応として光ラジカル重合を採用する場合には、重合前の液晶に予め光ラジカル重合開始剤を添加することが好ましい。光ラジカル重合開始剤としては、アルキルフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、チタノセン系光重合開始剤、オキシムエステル系光重合開始剤等を採用することができる。
下記式(3)は、本第3の典型例中に用いられる、重合性官能基が導入された液晶性分子の好ましい例の構造式である。下記式(3)に示す液晶性分子中のカチオンは、光ラジカル重合性官能基としてメタクリル基、液晶形成部位としてフェニレン基、イオン部位としてイミダゾリウムカチオン部位を有する。
Figure 0005593798
(上記式(3)中、R〜Rは互いに独立であり、炭素数1〜10の直鎖脂肪族炭化水素基、炭素数6〜15の芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる基である。また、上記式(3)中、Xはカウンターアニオンを示す。)
上記式(3)中、R〜Rには、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のヘテロ原子が、分子全体の原子数に対して、合計で10%程度含まれていてもよい。
フィルム状電解質の具体的な製造方法は以下の通りである。
まず、重合性官能基が導入された液晶性分子、カウンターアニオン、リチウム塩及び光ラジカル重合開始剤を混合して、昇温し、等方性液体とした後、室温付近まで徐冷し、液晶相を発現させる。特に、上記式(3)に示す構造式を有する液晶性分子を用いた場合には、スメクティックA相が発現し、2次元状イオン伝導体となる。液晶にさらに紫外線を照射することにより、重合反応が起こり、液晶の組織・形状を保ったまま、高分子フィルム化した電解質が完成する。
金属イオン伝導性と酸素拡散性が高くなる方向は、上述したように、略同一方向となる。
フィルム状電解質の面方向を、金属空気電池の空気極及び/又は負極の面方向と交わる方向に配向させることにより、充放電レートを向上させることができる。
図3は、本発明に用いられる金属空気電池の層構成の一例を示す図であって、積層方向に切断した断面を模式的に示した図である。なお、本発明に用いられる金属空気電池は、必ずしもこの例のみに限定されるものではない。
金属空気電池100は、空気極層22及び空気極集電体24を含有する空気極26と、負極活物質層23及び負極集電体25を含有する負極27と、空気極26及び負極27に挟持される電解質21を有する。電解質には、上述した電解質を用いる。
本発明に係る空気電池のうち、電解質については上述した通りである。以下、本発明に係る空気電池の他の構成要素である、空気極、負極、セパレータ、電池ケースについて、順に説明する。
(空気極)
本発明に係る金属空気電池の空気極は、好ましくは空気極層を備えるものであり、通常、これに加えて、空気極集電体、及び当該空気極集電体に接続された空気極リードを備えるものである。
(空気極層)
本発明に係る金属空気電池中の空気極層は、少なくとも導電性材料を含有するものである。さらに、必要に応じて、触媒および結着材の少なくとも一方を含有していても良い。
上記空気極層に用いられる導電性材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば炭素材料、ペロブスカイト型導電性材料、多孔質導電性ポリマー及び金属多孔体等を挙げることができる。特に、炭素材料は、多孔質構造を有するものであっても良く、多孔質構造を有しないものであっても良いが、本発明においては、多孔質構造を有するものであることが好ましい。比表面積が大きく、多くの反応場を提供することができるからである。多孔質構造を有する炭素材料としては、具体的にはメソポーラスカーボン等を挙げることができる。一方、多孔質構造を有しない炭素材料としては、具体的にはグラファイト、アセチレンブラック、カーボンナノチューブおよびカーボンファイバー等を挙げることができる。空気極層における導電性材料の含有量としては、例えば65質量%〜99質量%の範囲内、中でも75質量%〜95質量%の範囲内であることが好ましい。導電性材料の含有量が少なすぎると、反応場が減少し、電池容量の低下が生じる可能性があり、導電性材料の含有量が多すぎると、相対的に触媒の含有量が減り、充分な触媒機能を発揮できない可能性があるからである。
上記空気極層に用いられる触媒としては、例えば、酸素活性触媒が挙げられる。酸素活性触媒の例としては、例えば、ニッケル、パラジウム及び白金等の白金族;コバルト、マンガン又は鉄等の遷移金属を含むペロブスカイト型酸化物;ルテニウム、イリジウム又はパラジウム等の貴金属酸化物を含む無機化合物;ポルフィリン骨格又はフタロシアニン骨格を有する金属配位有機化合物;酸化マンガン等が挙げられる。
電極反応がよりスムーズに行われるという観点から、上述した導電性材料は触媒が担持されていることが好ましい。
上記空気極層は、少なくとも導電性材料を含有してれば良いが、さらに、導電性材料を固定化する結着材を含有することが好ましい。結着材としては、例えばポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)や、スチレン・ブタジエンゴム(SBRゴム)等のゴム系樹脂等を挙げることができる。空気極層における結着材の含有量としては、特に限定されるものではないが、例えば30質量%以下、中でも1質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましい。
上記空気極層の厚さは、空気電池の用途等により異なるものであるが、例えば2μm〜500μmの範囲内、中でも5μm〜300μmの範囲内であることが好ましい。
(空気極集電体)
本発明に係る金属空気電池中の空気極集電体は、空気極層の集電を行うものである。空気極集電体の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えばステンレス、ニッケル、アルミニウム、鉄、チタン、カーボン等を挙げることができる。空気極集電体の形状としては、例えば箔状、板状およびメッシュ(グリッド)状等を挙げることができる。中でも、本発明においては、集電効率に優れるという観点から、空気極集電体の形状がメッシュ状であることが好ましい。この場合、通常、空気極層の内部にメッシュ状の空気極集電体が配置される。さらに、本発明に係る金属空気電池は、メッシュ状の空気極集電体により集電された電荷を集電する別の空気極集電体(例えば箔状の集電体)を有していても良い。また、本発明においては、後述する電池ケースが空気極集電体の機能を兼ね備えていても良い。
空気極集電体の厚さは、例えば10μm〜1000μmの範囲内、中でも20μm〜400μmの範囲内であることが好ましい。
(負極)
本発明に係る空気電池中の負極は、好ましくは負極活物質を含有する負極層を有するものであり、通常、これに加えて負極集電体、及び当該負極集電体に接続された負極リードを有するものである。
(負極層)
本発明に係る空気電池中の負極層は、金属及び合金材料を含む負極活物質を含有する。負極活物質に用いることができる金属及び合金材料としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属;マグネシウム、カルシウム等の第2族元素;アルミニウム等の第13族元素;亜鉛、鉄等の遷移金属;又は、これらの金属を含有する合金材料や化合物を例示することができる。
リチウム元素を有する合金としては、例えばリチウムアルミニウム合金、リチウムスズ合金、リチウム鉛合金、リチウムケイ素合金等を挙げることができる。また、リチウム元素を有する金属酸化物としては、例えばリチウムチタン酸化物等を挙げることができる。また、リチウム元素を含有する金属窒化物としては、例えばリチウムコバルト窒化物、リチウム鉄窒化物、リチウムマンガン窒化物等を挙げることができる。また、負極層には、固体電解質をコートしたリチウムを用いることもできる。
また、上記負極層は、負極活物質のみを含有するものであっても良く、負極活物質の他に、導電性材料および結着材の少なくとも一方を含有するものであっても良い。例えば、負極活物質が箔状である場合は、負極活物質のみを含有する負極層とすることができる。一方、負極活物質が粉末状である場合は、負極活物質および結着材を有する負極層とすることができる。なお、導電性材料および結着材については、上述した「空気極」の項に記載した内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
(負極集電体)
本発明に係る空気電池中の負極集電体の材料としては、導電性を有するものであれば特に限定されるものではないが、例えば銅、ステンレス、ニッケル、カーボン等を挙げることができる。上記負極集電体の形状としては、例えば箔状、板状およびメッシュ(グリッド)状等を挙げることができる。本発明においては、後述する電池ケースが負極集電体の機能を兼ね備えていても良い。
(セパレータ)
本発明に係る電池が、空気極−電解質−負極の順番で配置されている積層体を、繰り返し何層も重ねる構造を取る場合には、安全性の観点から、異なる積層体に属する空気極および負極の間に、セパレータを有することが好ましい。上記セパレータとしては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン等の多孔膜;および樹脂不織布、ガラス繊維不織布等の不織布等を挙げることができる。
(電池ケース)
また、本発明に係る空気電池は、通常、空気極、負極、電解質等を収納する電池ケースを有する。電池ケースの形状としては、具体的にはコイン型、平板型、円筒型、ラミネート型等を挙げることができる。電池ケースは、大気開放型の電池ケースであっても良く、密閉型の電池ケースであっても良い。大気開放型の電池ケースは、少なくとも空気極層が十分に大気と接触可能な構造を有する電池ケースである。一方、電池ケースが密閉型電池ケースである場合は、密閉型電池ケースに、気体(空気)の導入管および排気管を設けることが好ましい。この場合、導入・排気する気体は、酸素濃度が高いことが好ましく、純酸素であることがより好ましい。また、放電時には酸素濃度を高くし、充電時には酸素濃度を低くすることが好ましい。
1.非極性部位及び極性部位を備える絶縁性分子を含む液晶構造の作製及び評価
非極性部位及び極性部位を備える絶縁性分子を用いて、液晶構造を構築した。
非極性部位及び極性部位を備える絶縁性分子として、下記式(1a)に示す分子を用意した。なお、下記式(1a)に示す分子において非極性部位とは、シクロヘキシレン基及びフェニレン基からなる剛直な棒状部位、並びに、柔軟なアルキル鎖部位のことを指し、極性部位とは、下記式(1a)中の2つのヒドロキシル基のことを指す。
Figure 0005593798
上記絶縁性分子の他に、下記式(4)に示すイミダゾリウム塩、及び、リチウム塩としてLiBFを用意した。
Figure 0005593798
以下、上記式(1a)に示す絶縁性分子、上記式(4)に示すイミダゾリウム塩及びLiBFを用いた液晶構造の構築について詳細に述べる。
上記式(1a)に示す絶縁性分子単独では、28〜64℃でスメクティックB相、64〜147℃でスメクティックA相を示す。室温、乾燥不活性ガス雰囲気下、パイレックス(登録商標)ガラス容器中において、上記式(1a)に示す絶縁性分子、上記式(4)に示すイミダゾリウム塩及びLiBFを、mol比で4:1:1、総量が約100mLとなるように混合した。さらに同様の雰囲気下で当該混合物を攪拌しながら、混合物温度が約220℃となるまで加熱し、30分間液温を保持した後、攪拌を停止し、加熱攪拌によって一様となった混合物を得た。
上述した方法により得られた、上記式(1a)に示す絶縁性分子、上記式(4)に示すイミダゾリウム塩、及び、リチウムイオンを含む液晶について、リチウムイオン伝導度を測定した。
図4は、液晶中の、容器の内壁に略平行な方向(σ//)と、容器の内壁に略垂直な方向(σ)のリチウムイオン伝導度の温度依存性を比較したアレニウスプロットである。
図から分かるように、140℃以上の比較的高温の領域においては、液晶は等方相(Iso)となり、方向σ//のイオン伝導度と、方向σのイオン伝導度はほぼ等しい。これに対し、降温過程を経て、75〜140℃の中温の領域においては、液晶はスメクティックA相(S相)となり、方向σ//のイオン伝導度は、方向σのイオン伝導度よりも1ケタ程度高くなる。さらに降温過程を経て、75℃以下の比較的低温の領域においては、液晶はスメクティックB相(S相)となり、方向σ//のイオン伝導度は、方向σのイオン伝導度よりも1ケタ〜3ケタ程度高い結果となった。
以上より、特にS相、S相となる温度領域において、液晶のイオン伝導度の異方性が観察できた。
2.イミダゾリウムカチオン部位と非イオン部位を備えるカチオンを含む液晶構造の作製及び評価
イミダゾリウムカチオン部位と非イオン部位を備えるカチオンを用いて、液晶構造を構築した。
イミダゾリウムカチオン部位と非イオン部位を備えるカチオンとして、下記式(2a)に示すカチオンを用意した。なお、カウンターアニオンには、ヘキサフルオロボレートアニオン(BF )を用いた。下記式(2a)に示すカチオンにおいて非イオン部位とは、3,4,5−トリ(n−オクチルオキシ)フェニルメチレン基を指す。
Figure 0005593798
以下、上記式(2a)に示すカチオン、及び、ヘキサフルオロボレートアニオンから構成されるヘキサフルオロボレート塩、並びに、LiBFを用いた液晶構造の構築について詳細に述べる。
ヘキサフルオロボレート塩単独では、−29〜133℃でカラムナー液晶相を示す。ヘキサフルオロボレート塩を単純にリチウム塩と混合して加熱し、等方性液体となった状態から冷却してカラムナー液晶相とすると、カラムの向きがそれぞれ異なる約50μmのサイズの多数のモノドメインから構成される無秩序なポリドメイン構造が構築される。そこで、以下のような方法でドメイン配列構造の制御を行った。
2−1.リチウムイオン伝導について、ガラス基板に略平行な方向に異方性を持つ液晶構造の構築
まず、上記式(2a)に示すカチオン、及び、ヘキサフルオロボレートアニオンから構成されるヘキサフルオロボレート塩、並びに、LiBFを混合して加熱し、等方性液体を調製した。
次に、室温、不活性雰囲気下で、清浄なガラス基板上に直径1mmのガラス棒を2本、間隔を数cm離して平行に置いた。そのガラス棒の間に、上記等方性液体を必要量滴下した。当該2本のガラス棒上に、清浄なガラス基板をおいた。なお、混合物の急冷を防ぐため、当該ガラス基板及びガラス棒は、予め混合物とほぼ同じ温度で一定時間加熱処理が施された。ガラス基板及びガラス棒で保持された等方性液体を、そのまま除冷した。混合物がカラムナー液晶相を示す130〜120℃付近において、上側のガラス基板をゆっくりとずらし、液晶相にせん断応力を与えた。せん断応力を付与した後、室温まで徐冷した。この操作によって、ガラス基板に略平行な方向に、1軸に整列したカラム配列が形成された。
2−2.リチウムイオン伝導について、ガラス基板に略鉛直な方向に異方性を持つ液晶構造の構築
等方性液体の調製は、上記2−1の項に記載した液晶構造の構築と同様に行った。
アミノ酸を含むシランカップリング剤を用いて、ガラス基板表面の化学修飾を行った。化学修飾後の2枚のガラス基板の間に等方性液体を保持し、等方性液体を加熱し、せん断応力を付与し、及び徐冷するまでの手順は、上記2−1の項に記載した液晶構造の構築と同様に行った。この操作によって、ガラス基板に略鉛直な方向に、1軸に整列したカラム配列が形成された。
上述した方法により得られた、上記式(2a)に示すカチオンを含むカラムナー液晶について、リチウムイオン伝導度を測定した。
図5は、カラムナー液晶中の、カラムの積層方向に略平行な方向(σ//)と、カラムの積層方向に略鉛直な方向(σ)のリチウムイオン伝導度の温度依存性を比較したアレニウスプロットである。
図から分かるように、140℃以上の比較的高温の領域においては、液晶は等方相(Iso)となり、方向σ//のイオン伝導度と、方向σのイオン伝導度はほぼ等しい。これに対し、降温過程を経て、140℃以下の中温〜低温の領域においては、方向σ//のイオン伝導度は、方向σのイオン伝導度よりも1ケタ程度高い結果となった。
以上より、特に140℃以下の温度領域において、液晶のイオン伝導度の異方性が観察でき、カラムの積層方向に略平行な方向のイオン伝導度は、カラムの積層方向に略鉛直な方向のイオン伝導度よりも高い結果であることが分かった。
3.フィルム状電解質の作製及び評価
重合性官能基としてメタクリル基が導入された液晶性分子を用いて、液晶構造を構築し、さらに、液晶中に光ラジカル重合開始剤を混合することにより、フィルム状電解質を作製した。
重合性官能基としてメタクリル基が導入された液晶性分子として、下記式(3a)に示す液晶性分子を用意した。
Figure 0005593798
以下、上記式(3a)に示す液晶性分子、LiBF、及び光ラジカル重合開始剤として、アルキルフェノン系光重合開始剤の一種である、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンを用いた、フィルム状電解質の作製について詳細に述べる。
上記式(3a)に示すヘキサフルオロボレート塩に、光ラジカル重合開始剤をmol比で1:1の割合で添加した混合物を、等方性液体となるまで加熱して徐冷した。その結果、当該混合物は、60〜52℃の範囲でスメクティックA相を呈し、無処理のガラス基板上において、自発的に、基板方向に対して鉛直方向に配向した液晶が構築された。
室温、乾燥不活性ガス雰囲気下、パイレックス(登録商標)ガラス容器中において、上記ヘキサフルオロボレート塩及び光ラジカル重合開始剤の混合物と、リチウム塩をmol比で1:1の割合で混合した。当該混合物に、さらに、混合後の質量比で約0.1%の光ラジカル重合開始剤を混合した。混合物温度が約100℃となるまで加熱しながら混合物を攪拌し、約30分間約100℃の液温を保持した後、等方性液体を得た。2枚のガラス基板の間に等方性液体を保持し、等方性液体を加熱し、せん断応力を付与するまでの手順は、上記2−1の項に記載した液晶構造の構築と同様に行った。混合物がスメクティックA相を呈する55℃まで徐冷して約30分間その温度を保持した。30分後の混合物に対して、ガラス基板越しにUVライト(波長365nm、30mW/cm)を1時間照射し、フィルム状電解質が完成した。
上述した方法により得られたフィルム状電解質について、リチウムイオン伝導度を測定した。
図6は、フィルム中の、当該フィルムの面方向に略平行な方向(σ//)と、当該フィルムの面方向に略鉛直な方向(σ)のリチウムイオン伝導度の温度依存性を比較したアレニウスプロットである。
図から分かるように、40℃〜140℃の幅広い温度領域において、方向σ//のイオン伝導度は、方向σのイオン伝導度よりも2ケタ〜3ケタ程度高い結果となった。
以上より、幅広い温度領域において、フィルム中のイオン伝導度の異方性が観察でき、フィルムの面方向に略平行な方向のイオン伝導度は、フィルムの面方向に略鉛直な方向のイオン伝導度よりも高い結果であることが分かった。
1 絶縁性分子
1a 棒状部分
1b 柔軟な部分
1c 極性部位
2 イオン液体分子
3 基板
4 極性層
5 非極性層
6 イオン及び酸素の移動方向を示す矢印
11 カチオン
11a 非イオン部位
11b イミダゾリウムカチオン部位
12 ディスク状分子集合体
13 カラム状に組織化された分子集合体
14 基板
15 イオン及び酸素の移動方向を示す矢印
21 電解質
22 空気極層
23 負極活物質層
24 空気極集電体
25 負極集電体
26 空気極
27 負極
100 金属空気電池

Claims (2)

  1. 少なくとも空気極と、負極と、当該空気極と当該負極との間に介在した電解質とを備える金属空気電池であって、
    前記電解質が、イミダゾリウムカチオン部位と非イオン部位を備えるカチオンを含有し、前記カチオンがカラムナー液晶性を有し、
    前記非イオン部位が、前記イミダゾリウムカチオン部位をディスク状に取り囲んでディスク状分子集合体を構成し、
    前記ディスク状分子集合体は互いに積み重なることによりカラム状分子集合体を構築し、
    前記空気極及び前記負極の少なくともいずれか一方の面に平行な方向と、前記カラム状分子集合体におけるカラムの長さ方向とが垂直となることを特徴とする、金属空気電池。
  2. 前記電解質が、当該電解質を構成する各前記カチオンが共有結合によって互いに連結したフィルム状電解質である、請求項1に記載の金属空気電池。
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