JP5598424B2 - 石英ガラスの成形方法 - Google Patents
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Description
一方、石英ガラスは、上記のように最終製品の形状に合わせて成形されるため、歩留まりの向上には、成形体表面の平坦度が直接的に影響する。
成形型を1600℃以上の高温に加熱するとこれらのガスが発生しやすく、特に1700℃以上の高温に加熱すると、これらのガス(SiOガスとCOガス)が多量に発生して成形型とガラス成形体との間で気泡を形成し、成形体表面を荒らしたり、または成形体内部に気泡が混入したりすることがあり、製品の歩留まりが著しく低下する。
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、カーボン製の型に設けた貫通孔に溶融ガラスが流入し易い問題がある。このため、温度低下に伴い、貫通孔内のガラス成分とカーボン製の型との熱膨張率差に起因して、カーボン製の型に割れが発生することがある。
また、底板を構成する各カーボン製の板上にガラス成分が付着しても、底板全体の大きさ、形状に与える影響が少なく、また洗浄による除去作業が容易であるため、リサイクル性を大幅に向上できる。
本発明の石英ガラスの成形方法は、二以上のカーボン板を、互いに隣接する端面が接合するように敷設してなる底板上に、石英ガラスを載置して行われる。
また、成形型の底板を、二以上のカーボン板で形成することで、成形時において、底板の角部や気体を排出するための接合部に溶融ガラスが付着し、そのガラスが固化しても、その除去を比較的精確かつ容易に行うことができ、リサイクル性を向上させることができる。
成形型1は、いずれもカーボン製の部材で構成されている。この図では底板6を固定するための下型2と、この下型2の上に敷設された底板6と、この下型2上に立設された側板3と、この側板3を支持する上部外枠4とを有している。この図では、下型2により、底板6や側板3を固定しているが、成形型を固定する方法としてはこれに限らない。
下型2は、図2に示すように、その上面に底板6を敷設することにより、その4周内側に、側板3の厚さよりも幅広の溝21が形成され、この溝21内に4枚の側板3を嵌合させることで、下型2上に側板3が立設されようになっている。
天板5は、側板3から構成される側壁の内壁面にそって上下方向摺動可能に配設されており、天板5上に錘7を乗せて、被成形体である石英ガラスに荷重を負荷できるように構成されている。
下型2の上面には、筐体30内部に嵌合するように、底板6が設けられている。
底板6は、中央に配設された、広面積で長方形状のカーボン製の板6(1)と、その周縁に配設された、幅狭の4枚のカーボン製の板6(2)、6(3)、6(4)、6(5)とで構成されている。図3に示すように、周縁部の板6(2)、6(3)、6(4)、6(5)は、台形状である。その各短辺と、板6(1)の各辺とを接合面61〜64で接合するとともに、板6(2)、6(3)、6(4)、6(5)の互いに隣接する斜辺を接合面65〜68で接合して、一の長方形状の平板を形成可能に構成されている。
なお、底板6の周縁部69〜72と、側板3の内壁面31とは互いに密接させており、以下の説明では、図3における周縁部69〜72を、側板3の内壁面31の設置位置として説明する。
このため、カーボン板の接合面61〜68は、底板6の全面に形成しなくても、その周縁領域に設けることで、成形型1内のガスを効率的に排出することができる。
接合面61〜68から内壁面31までの距離Dが5mm未満の場合、もしくは100mmを超える場合であると、接合面とガスが収束する場所との距離が離れるため、十分なガス排出効果を得られないおそれがある。
底板6のガスの排出性をより向上させる観点から、接合面61〜68から側板3の内壁面31までの距離Dは、10mm以上が好ましく、15mm以上がより好ましい。また、80mm以下が好ましく、60mm以下が特に好ましい。
接合面61〜68における隙間の幅が5mmを超えると、この隙間に溶融ガラスが侵入してガス排出口が閉塞される、または溶融ガラスが接合面61〜68を通過し難くなる等の問題が生じ易くなる。隙間は2.5mm以下が好ましく、2mm以下がより好ましい。
なお、カーボンは比較的気孔率が高いため、カーボン製の板同士を密接させた場合でも、平板間にわずかに形成された隙間から型内のガスを排出することが可能であり、必ずしも隙間を意図的に設けなくてもよい。ただし、ガラスとカーボン製の板との接触面積が高く、ガスの発生量が過大となる場合には、上記の範囲内で適宜調整して、隙間を設けることがよい。
底板6を構成するカーボン板の数が5枚未満であると、周縁部に配設した幅狭の板に反り等が生じ易くなり、底板6のリサイクル性が低下するおそれがある。一方、底板6を構成する板の数が13枚を超えると、取り扱いが煩雑となり、実用上の適用が困難となる。
接合面61〜64において、このような段差構造を形成することで、底板6の中央部から、接合面61〜64を通過して周縁側に溶融ガラスが移動する際に、接合面61〜64の隙間に溶融ガラスが流入してガス排出口が閉塞するのを抑制することができる。
カーボン板の密度が1.6g/cm2未満であると、ガスの放出性は向上するものの、ガラスとカーボン板との接触抵抗が高まり、底板6上でのガラスの流動性が低下する。また、放出されたガスの一部が、カーボン内部に残留して酸化を促進するため、カーボン板の劣化が進行しやすく、耐久性が低下するおそれがある。
本発明の成形方法では、底板6を二以上のカーボン板で形成することで、その表面に溝等を形成する必要がなく、また成形工程終了後は、各カーボン板(1)〜6(5)に分離できるため、表面研磨を容易に行うことができる。
本発明のガラス成形方法では、二以上のカーボン板を接合させて形成した底板6上に、石英ガラス8を載置して加熱溶融しているため、ガラスと底板6との界面で生じたガスは、接合面61〜68に形成された隙間に侵入し、その後、底板6と下型2との接触面または側板3同士の接触面等を通じて成形型1外部に排出される。このため、ガラスと底板6との界面でのSiO、CO等のガスの滞留が抑制されるため、成形体内部に気泡が混入したり、これらのガスが溶融状態のガラスと接して成形体表面を荒らしたりするのを防止することができる。
加圧成形時の温度が1600℃未満であると、加圧成形に長時間を要し、成形体に失透が生じ易い。一方、加圧成形時の温度が1800℃を超えると、ガラス成分とカーボンとの反応によるSiOガスとCOガス等の発生量が顕著となり、型内からのガスの排出を円滑に行うのが困難となる。
加圧成形は、真空又は減圧下、アルゴン、ヘリウム等の不活性ガス雰囲気下で、上記温度を、0.5〜数十時間保持することにより行うことができる。
また、本発明の石英ガラスの成形方法では、ガス排出口である接合面の位置、大きさが固定されないため、ガラス成分が付着しても、これを洗浄除去することで、底板6全体の大きさや形状の変動を殆ど生じることなく、再利用することができる。このため、成形型に貫通孔や溝等を設けてガス排出口を形成した場合と比較して、リサイクル性を大幅に向上させることができる。
成形体の厚みには特に制限はなく、必要に応じて、例えば10mm〜200mm程度の範囲内で自由に選択できる。
下型2上に、5枚のカーボン製の板6(1)〜6(5)を図3で示すように配設して、縦400mm×横400mmの底板6を形成した。
次いで、底板6の上に直径200mmの円柱状の21kgの石英ガラスを載せ、下型2の溝21に4枚の側板3を立て、その内壁面31とカーボン製の板6(1)〜6(5)の外周縁69〜72とを密接させて平板6(1)〜6(5)を固定するとともに、側板3の内壁面31を上下方向摺動可能なように、天板5を配設した。その後、側板3の上端部に上部型枠4を設けて側板3を固定し、図1に示す、四角箱型の成形型1を作製した。
カーボン製の板6(1)〜6(5)の接合面61〜64から、各面に最も近い内壁面31までの距離D1は50mmであった。なお、接合面61〜64から内壁面31までの距離D1は、この内壁面31と対向する内壁面31までの距離Lの13%であった。また、接合面61〜68における各カーボン製の板間の隙間の幅は0mmとした。
その後、炉の温度を1750℃まで昇温し、1750℃で5時間保持し、その後冷却を行い室温になったところで炉を開放して、縦400mm、横400mm、高さ60mmの長方形状の平板状石英ガラス成形体を得た。
底板6のサイズ(縦横の長さ)、接合面61〜64から各面に最も近い内壁面31までの距離D1、この内壁面31と対向する内壁面31までの距離Lに対する距離D1の割合(%)、接合面61〜68における各板間の隙間の幅、及び成形前の円柱状石英ガラスのサイズ(直径、高さ、質量)をそれぞれ表1に示す値とし、炉内の最高温度及びその保持時間、並びに天板と錘との合計質量を表1に示す値としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例2〜6の平板状の石英ガラス成形体を得た。得られた各成形体のサイズ(縦、横、厚み)を表2に示す。
底板6のサイズ(縦横の長さ)、接合面61〜64から各面に最も近い内壁面31までの距離D1、この内壁面31と対向する内壁面31までの距離Lに対する距離D1の割合(%)、接合面61〜68における各板間の隙間の幅をそれぞれ表1に示す値とするとともに、中央部の板6(1)の厚みを、その周縁に配設する板6(2)〜6(5)の厚みより、表1の接合部段差に示す分だけ厚くして段差構造を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、底板6を形成した。
次いで、成形前の円柱状石英ガラスのサイズ(直径、高さ、質量)、ならびに炉内の最高温度及びその保持時間、天板と錘との合計質量をそれぞれ表1に示す値としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、実施例7〜17の平板状の石英ガラス成形体を得た。得られた各成形体のサイズ(縦、横、厚み)を表2に示す。
底板6として、板6(1)〜6(5)を使用せず、縦横の長さを表1に示す値とした長方形状の一枚のカーボン製の平板で底板6を形成し、成形前の円柱状石英ガラスのサイズ(直径、高さ、質量)、炉内の最高温度及びその保持時間、天板と錘との合計質量をそれぞれ表1に示す値としたこと以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較例1〜7の平板状の石英ガラス成形体を得た。得られた各成形体のサイズ(縦、横、厚み)を表2に示す。
各石英ガラス成形体について、(2)気泡の最大深さを、(1)ガラス成形体の厚みで除して、不良率を評価した。
ただし、表2中、比較例7は、加熱溶融によっても石英ガラスが底板6全面に十分に伸長せず、いびつな形状となり成形不良となった。
一方、比較例1〜7の石英ガラス成形体では、不良率が66%以上と高いものであった。特に、1400mm×1700mmと大サイズのガラス成形体では、不良率が82%以上と極めて高くなっており、実用上の適用が極めて困難であることが認められた。
また、実施例1〜17では、上述した操作を終了後、成形型1からガラス成形体を取り出し、底板6を板6(1)〜6(5)に分離して各板毎に洗浄後、これらの板を再度接合して底板6を形成し、上記と同様にして、石英ガラスの成形を行った。この操作を5回繰り返して行ったところ、各板6(1)〜6(5)の劣化は進行せず、得られるガラス成形体の不良率に変化は見られなかった。
Claims (9)
- 底板と側壁と天板とで囲まれた成形型内に石英ガラスを載置し、石英ガラスを軟化点以上に加熱、溶融して成形する石英ガラスの成形方法において、
前記底板が、二以上のカーボン製の板からなり、当該板は互いに隣接する端面が接合するように敷設されてなり、
前記板の接合面から、前記成形型の最も近い側壁の内壁面までの距離が、この内壁面と対向する内壁面までの距離の15%以下の距離であることを特徴とする石英ガラスの成形方法。 - 前記板の接合面から、前記成形型の最も近い側壁の内壁面までの距離が、5mm以上100mm以下である請求項1に記載の石英ガラスの成形方法。
- 前記板の接合部における、当該板間の隙間の幅が0mmより大きく5mm以下である請求項1又は2に記載の石英ガラスの成形方法。
- 前記板の接合部の少なくとも一部に、前記底板の中心側から外縁側に向けて下降する段差が形成される請求項1〜3のいずれか1項に記載の石英ガラスの成形方法。
- 前記段差の高低差が、2mm以下である請求項4に記載の石英ガラスの成形方法。
- 前記底板が、5枚以上13枚以下の板で形成される請求項1〜5のいずれか1項に記載の石英ガラスの成形方法。
- 石英ガラスを平板状に成形する請求項1〜6のいずれか1項に記載の石英ガラスの成形方法。
- 前記平板状の成形体のサイズが200mm×200mm角以上である請求項7に記載の石英ガラスの成形方法。
- 石英ガラスの成形を、1600℃以上1800℃以下の温度で行う請求項1〜8のいずれか1項に記載の石英ガラスの成形方法。
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