JP5598324B2 - 低放射膜の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、誘電体層と金属層とを積層してなる低放射膜に関し、特に建築用の窓ガラスとして用いることが可能な低放射膜に関する。
低放射膜は、金属酸化物などの誘電体層と、Ag、Al、Cu、Au、Pt、Cr、Tiなどの金属層とを多積層してなる積層構造を有しており、ガラスなどの透明基材上に形成されることで、低放射ガラスとして建築物の窓ガラスに用いられている。低放射ガラスは、窓ガラスを通して、夏季は室外から室内へ流入する日射熱、冬季は室内から室外へ流出する暖房熱を反射する性質を有しているため、冷暖房費を抑えることができ、省エネルギーに役立つ窓ガラスとして広く普及している。
上記の低放射ガラス等に使用される低放射膜として、誘電体層とAg層を2n+1層積層してなる積層構造体が開示されている(特許文献1)。また、誘電体層に、酸化物又は窒化物又は酸窒化物を用いた低放射膜は、垂直及び斜めからの入射光に対して赤味や黄味を帯び難いことが開示されている(特許文献2)。
上記低放射膜に用いられる誘電体層としては、酸窒化ケイ素アルミニウム(SiAlNO)(特許文献3)、アルミドープ酸化亜鉛(AZO)又は酸化スズ(SnO)(特許文献4)、酸化亜鉛(ZnO)又は酸化チタン(TiO)又は窒化ケイ素(SiN)(特許文献5)、窒化アルミ(AlN)(特許文献6)、酸化タンタル(Ta)(特許文献7)、スズドープ酸化亜鉛又はシリコンドープ酸化亜鉛又はチタンドープ酸化亜鉛又はスズシリコン酸化物(特許文献8)、酸化ビスマス(非特許文献1)など種々の誘電体層が知られている。
前述したような低放射膜や誘電体層を形成する方法として真空成膜法は量産化に適した方法として様々な検討がなされている。真空成膜法の中でもスパッタリング法は、板ガラスなどの基材に、再現性良く、大面積に均一コーティングできることから、建築窓ガラス用の低放射膜や熱線反射膜、半導体などのフォトリソグラフィ工程用のフォトマスク、フラットパネルディスプレイ又は太陽電池用の電極膜など幅広い分野で用いられており(非特許文献2)、特に建築窓ガラス用の低放射膜の形成方法として広く用いられている。前述したように誘電体層として金属酸化物や金属窒化物、金属酸窒化物などが多く用いられているが、中でも酸化亜鉛又は酸化スズを主成分とする酸化物膜は、スパッタターゲットが比較的安価であり、また酸化物自体が導電性を有することからターゲットに印加する電源には安価な直流放電を用いることができ、生産性が良いことから、最も汎用的な誘電体層として知られている(非特許文献1)。
一方で、スパッタリング法は誘電体層を形成する際の成膜速度が低いという欠点があり、金属のスパッタターゲットと酸素や窒素などの反応性ガスを用いて誘電体層を形成する(以下、反応性スパッタと表記することがある)際に、反応性ガスの増加と共に、成膜速度が急激に低下する現象が知られている。これは、反応性ガスの増加と伴に、ターゲット表面に、蒸気圧の低い金属化合物層が形成され、ターゲットから叩き出されるスパッタ粒子の個数が急激に減少することに起因している。反応性スパッタにおいて、再現性良く酸化物膜を得る場合は、成膜速度が低い反応性ガスの条件下で形成する方法が一般的であるが、このような条件下での形成はスループットが悪く、生産性があまり良くないという問題がある(非特許文献3)。
特許文献9では、還元気味の酸化物ターゲット(亜酸化チタン)を用いることで、酸化物膜の成膜速度を向上することができ、上記の課題を解決できるとされている。
特開昭63−239044号公報 特開2004−585592号公報 特表2008−524030号公報 特開2007−70146号公報 特開2004−352567号公報 特開2004−47216号公報 特開2000−86298号公報 特開平9−85893号公報 特開平11−124689号公報
Large Area Glass Coating、Glaeser Hans Joachim、Von Ardenne Anlagentechnik Gmbh、1st English edition 2000、pp.70-71、p.241 日本学術振興会 透明酸化物光・電子材料第166委員会編、透明導電膜の技術 改訂2版(2006) 頁34 はじめての薄膜作製技術、草野英二著、(株)工業調査会発行、初版(2006)、頁124〜126
建築用の窓ガラスに用いられる低放射膜は、50%以上の可視光透過率と0.1以下の放射率とを有するものが望まれており、上記の特性を達成するために様々な種類の酸化物又は窒化物又は酸窒化物からなる誘電体層とAg等の金属層とを積層した積層体が開発されている。一方で、ビルや家屋の窓ガラスに用いる場合、大面積に上記の積層体からなる低放射膜を形成する必要があり、積層体となるに従って生産性が低下するため、成膜速度の向上が求められている。
またさらに、低放射膜は成膜速度の高い金属層と、成膜速度の低い誘電体層を交互に積層する必要があり、成膜速度を向上させるためには、誘電体層の成膜速度を増す必要がある。しかし現状では、誘電体層を形成する工程のターゲット本数を増やすなどの対応がなされているだけであり、根本的な成膜速度の改善には至っていなかった。
また、還元気味の酸化物ターゲットを用いる方法では、成膜速度の低さを改善できるとされているが、還元気味の酸化物ターゲット自体の焼結密度を高めることが困難であり、ターゲットの強度が低いことに起因して、ターゲットに高電力を印加することが出来ず、低電力で形成せざるを得ず、結果的に高い成膜速度を得られない場合があった。更に、還元気味の酸化物ターゲットの例としては、亜酸化チタンのみの限られた酸化物に留まっており、汎用性は低いという問題もあった。
かくして、本発明では生産性良く、建築用窓ガラスとして用いる低放射膜を得ることを目的とした。
本出願人は鋭意検討した結果、Sn及びZnの酸化物は成膜速度が低いにもかかわらず、Sn及びZnの酸窒化物は高い成膜速度で誘電体層を形成できることを見出した。さらに検討を行った結果、SnやZnの酸窒化物膜を誘電体層として用いることにより、低放射膜として好適な可視光透過率と放射率を維持したまま、成膜速度を向上できることが分かった。
すなわち本発明は、基材上に形成される低放射膜であり、該低放射膜は、誘電体層と金属層とを有しており、該誘電体層がSn及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1つの酸窒化物からなる層を少なくとも1層有することを特徴とする低放射膜である。
また、本発明の低放射膜は、前記誘電体層の少なくとも1層がSnの酸窒化膜であり、X線回折測定法においてSnO(211)面に起因する回折ピークが2θ位置で50.7°〜53.0°に検出されることを特徴とする。
また、本発明の低放射膜は、前記誘電体層の少なくとも1層がZnの酸窒化膜であり、X線回折測定法においてZnO(110)面に起因する回折ピークが2θ位置で56.1°〜58.5°に検出されることを特徴とする。
また、本発明の低放射膜において、前記誘電体層がSn及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1つの酸窒化物からなる層であることを特徴とする。
また、本発明の低放射膜において、前記金属層がAgからなることを特徴とする。
また、本発明の低放射膜は、基材上に誘電体層と金属層とが、交互に2n+1層(nは1以上の整数)積層されてなる積層構造を有しており、該積層構造の1層目は誘電体層であることを特徴とする。
ここで「基材上」とは、基材に接するものであっても、基材と前記積層構造との間に他の層が介在するものであってもよい。
また、本発明の低放射膜は、基材上に誘電体層と金属層とバリア層とが、この順に3n+1層積層されてなる積層構造を有しており、該積層構造の1層目は誘電体層であることを特徴とする。
また、本発明の低放射膜において、表面抵抗が0.5〜30Ω/□であることを特徴とする。表面抵抗が0.5Ω/□より低いことは、金属層の厚みが厚いことを意味し、可視光反射率の増加を招くことから、建築用の窓ガラスとして好適な可視光透過率を得ることが出来ない。一方、表面抵抗が30Ω/□を超える場合、低放射膜の放射率が高くなり、低放射膜の断熱特性の低下に繋がることがある。
また本発明は、基材上に、スパッタリング法を用い、Zn又はSnターゲットを用いて前述した低放射膜を形成することを特徴とする低放射膜の製造方法である。
また、本発明の低放射膜の製造方法は、前記誘電体層のうち、Sn及びZnからなる群から選ばれる少なくとも1つの酸窒化物からなる誘電体層を、少なくとも窒素と酸素とを含む混合ガス雰囲気下にて形成することを特徴とする。
また、本発明の低放射膜の製造方法は、前記金属層を、窒素、酸素からなる群から選ばれる少なくとも一つを含む混合ガス雰囲気下にて形成することを特徴とする。
また、本発明の低放射膜の製造方法は、前記誘電体層を窒素及び酸素を含む混合ガス雰囲気下において形成し、該混合ガスは酸素を15〜50%含むことを特徴とする。なお、上記の酸素の含有量は、前記混合ガスに対する酸素の分圧であり、15%未満だと誘電体層が還元気味の吸収色を呈することがあり窓ガラスなどの用途に適さない。また、50%を超えるとスパッタターゲットの表面が酸化されるのに伴って、成膜速度が低下し、生産性が低下することがあるので、本発明の低放射膜の製造方法として適さない。
本発明は、誘電体層を高い成膜速度で形成できる。また、本発明は好適な可視光透過性と日射遮蔽性を有する建築用窓ガラスとして利用できる。また、本発明は現行のスパッタ生産設備を用いることができる。さらに、本発明は、低放射膜に必須とされる金属層の直上に形成されるバリア層を省略することが可能である。
本発明の低放射膜の一実施形態を表す断面模式図である。 本発明の低放射膜の一実施形態を表す断面模式図である。 マグネトロンスパッタ装置の概略を示す図である。 実施例1及び比較例1の低放射膜の分光透過率及び分光反射率を示す図である。 実施例2及び比較例2の低放射膜の分光透過率及び分光反射率を示す図である。 実施例3及び比較例3の低放射膜の分光透過率及び分光反射率を示す図である。 実施例4の低放射膜の分光透過率及び分光反射率を示す図である。
本発明の低放射膜の好適な実施形態のひとつを図1に示す。図1に示すように、本発明の低放射膜は、基材1上に形成される低放射膜であり、該低放射膜は、誘電体層2と、該誘電体層の基材とは反対側に接するAgからなる金属層3とが、2n+1層(nは1以上の整数)積層される積層構造からなるものである。
また、本発明の低放射膜の好適な実施形態のひとつを図2に示す。図1と同様に、該低放射膜は、基材1上に誘電体層2と、該誘電体層の基材とは反対側に接するAgからなる金属層3と、該金属層3の直上にバリア層4と、最上層に誘電体層2とが積層された積層構造からなるものである。
また本発明の前記積層構造は、誘電体層との密着性を向上させるために、基材と積層構造との間に他の層を介在させてもよく、さらに、前記積層構造の上に保護層として他の層を積層させてもよい。
前記誘電体層は、Zn又はSnからなる酸窒化物を少なくとも1層使用する。上記の酸窒化物を金属層の上層に用いることにより、酸化物からなる誘電体層を形成することに起因する金属層の酸化を抑制することが可能なため好適である。
前記誘電体層としてZnの酸窒化物を用いた場合、形成される低放射はインプレーンX線回折測定法においてZnO(110)面に起因する回折ピークが2θ位置で56.1°〜58.5°に検出される。また、Snの酸窒化物を用いた場合は、インプレーンX線回折測定法においてSnO(211)面に起因する回折ピークが2θ位置で50.7°〜53.0°に検出される。前記誘電体層として用いるZn又はSnの酸窒化物は、任意の第3成分が添加された合金でもよい。
前記金属層は、Al、Cu、Au、Pt、Cr、Ti、純Ag又はAgにパラジウム、金、白金、ニッケル及び銅などの金属を添加したAg合金が好適に用いられるが、良好な光学特性と熱特性を両立できる純Agが好ましい。
前記バリア層は、金属層の上層に形成される層であり、金属層が酸化されるのを防ぐことを目的とするものである。ここで言う金属層の酸化とは、成膜時に金属層を形成した後、金属層の上層に酸化物からなる誘電体層を形成する際に生じるものであり、金属層が酸化されることにより、表面抵抗が増大するという欠陥が生じてしまうことがある。
本発明のバリア層としては、例えばB、Si、Al、Zn、Sn、In、Ti、Nb及びBiからなる群から選ばれる少なくとも1つからなる金属、金属合金、酸化物、窒化物膜、酸窒化物等が挙げられる。特に、B、Si、Al、Zn、Sn、In、Ti、Nb及びBiからなる群から選ばれる少なくとも1つからなる窒化物又は酸窒化物が好ましい。バリア層に用いられる化合物は、その上に積層される誘電体層との密着性を考慮して選択しても良い。
基材は特に限定するものではないが、例えば、建築物用窓ガラスや通常使用されているフロ−ト板ガラス、又はロ−ルアウト法で製造されたソーダ石灰ガラス等無機質の透明性がある板ガラスを使用できる。当該板ガラスには、クリアガラス、高透過ガラス等の無色のもの、熱線吸収ガラス等の緑等に着色されたもの共に使用可能であるが、可視光透過率を考慮すると、クリアガラス、高透過ガラス等の無色ガラスを使用することが好ましい。また、平板ガラス、曲げ板ガラスは風冷強化ガラス、化学強化ガラス等の各種強化ガラスの他に網入りガラスも使用できる。さらには、ホウケイ酸塩ガラス、低膨張ガラス、ゼロ膨張ガラス、低膨張結晶化ガラス、ゼロ膨張結晶化ガラス等の各種ガラス基材を用いることができる。また、ガラス基材以外の例としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニール樹脂等の樹脂基板が挙げられる。
本発明の低放射膜の形成方法は、真空成膜法の中でも、大面積の基材に、安定して均一コーティングが可能なスパッタリング法が好適に用いられる。スパッタリング法において、プラズマ発生源には直流電源、交流電源、又は交流と直流を重畳した電源、いずれの電源も好適に用いられるが、直流電源は最も安価であることから工業的に利用しやすく好ましい。
成膜装置は、例えば図3に示すようなマグネトロンスパッタリング装置が用いられる。図3は、該装置を上方から観察したときの要部を示すものである。以下図3を参照しながら、本発明の低放射膜の形成方法を説明する。
まず、バッキングプレート5上にターゲット6を接着し、基材ホルダー7に板ガラス基材8を保持させた後、真空チャンバー9内を、真空ポンプ10を用いて排気する。基材を保持した基材ホルダー7は移動可能な構造となっており、基材ホルダーの移動速度を調節することにより、成膜時の膜厚を変えることが可能である。
次に、真空チャンバー9内の雰囲気ガスとして、ガス導入管11より、Arや酸素、窒素などを適宜導入する。Zn又はSnの酸窒化物を形成する際、少なくとも酸素と窒素とを含むガス雰囲気下で形成することが好ましい。導入するガスとしては、酸素ガスや窒素ガス以外にも、二酸化炭素やアンモニアガスなど、酸素原子又は窒素原子を含むガスが好適に用いられる。また、酸素と窒素以外に加えるガスとしては、Ar等のスパッタ粒子と反応しないガスが用いられる。ガスの導入量やガス組成比は、好ましい成膜速度が得られるように適切に調整すれば良い。
また、前記バリア層を形成する際に、窒素を含む雰囲気で形成することが好ましい。バリア層として窒化物を形成する場合は、窒素ガス以外にも、Arと窒素との混合ガスが用いられる。
真空チャンバー9内に雰囲気ガスを導入した後、ターゲット6へ電源13を用いて電力を投じ、スパッタリングを行う。成膜中の真空チャンバー9内の圧力は、開閉バルブ12により0.1〜1.5Paの範囲で調節する。なお、真空ポンプの種類、ターゲットの個数や種類、電源、ターゲットへの出力電力などは適宜選択すれば良く特に限定しない。
上記の誘電体層を形成する際に、成膜時の真空チャンバーの圧力を0.1〜1.5Pa、より好ましくは0.1〜0.7Paに調整して形成することが好ましい。該圧力が0.1Paより低くなる場合、安定な放電を維持するのが難しく、1.5Paを超える場合、表面の粗い誘電体層が成長するため、低放射膜の光学特性や熱特性の劣化に繋がることがある。上記の圧力は、真空ポンプの排気速度とガス導入量の兼ね合いで決まるため、例えば、真空ポンプと成膜室の間に設置されたバルブの開度を調整することや、ガス導入量を調整することで、上記圧力を調整することが出来る。
また、前記金属層を形成する際は、成膜時の放電電圧を200〜400Vに調整することが好ましい。放電電圧が200V未満の場合、安定な放電を維持するのが難しく、400Vを越える場合、プラズマ中で生成した高エネルギー粒子、例えばターゲットで跳ね返り基材方向へ飛来するArガスによる金属層への衝撃が大きくなり、光学特性や熱特性の劣化に繋がる。ターゲット背後に配置した磁石の磁束密度を高くした強磁場スパッタ法により、放電電圧を調整することが可能である。
また、前記金属層は、可視光透過性と日射遮蔽性を損なわない程度であれば、誘電体層を成膜時の混合ガスと同様のガス雰囲気下で形成するものであってもよく、ガス雰囲気を同じにすることで、成膜工程の簡素化が可能となる。
本発明の低放射膜は、低放射膜をガラス上に形成した低放射ガラスとして、複層ガラスや合わせガラス等の建築用窓ガラスに使用できる。また、建築用窓ガラスとして用いる場合、対向する2枚のガラス基材の周辺部をスペーサーと封止材とで封止されてなる複層ガラスとしても使用できる。
上記の建築用窓ガラスに用いられる場合、本発明の低放射膜は、前記誘電体層の膜厚を5〜1000nm、前記金属層の膜厚を5〜30nm、前記バリア層の膜厚を1〜30nmとすることが好ましい。低放射膜における各層の厚みが、上記範囲から外れると、可視光透過率が低下しやすく、また赤味や黄色味を帯びた反射色調となりやすいので、建築用窓ガラスとして好ましい光学特性を得ることが出来ないことがある。また、建築用窓ガラスとして用いる場合、JIS R3106に準拠して算出した可視光透過率が50%以上であるのが望ましい。
まず、誘電体層に用いる酸窒化物の成膜速度及び光学特性の評価を行うために、ガラス基材上に誘電体膜を形成した参考例を示す。なお、以下の参考例において、成膜速度の算出のために、成膜前のガラス基材上に油性ペンなどでマーキングを施してから形成を行った。
1.誘電体層の成膜速度
参考例1
ガラス基材上にSnNO膜を形成した。ガラス基材としては厚さ3mmのソーダライムガラスを用いた。
図3に示すマグネトロンスパッタリング装置を用いてSnNO膜を作製した。
まず、基材8を基材ホルダー7に保持させた後、真空チャンバー9内を真空ポンプ10によって排気した。真空チャンバー内に雰囲気ガスとして、ガス導入管11より、Arと窒素と酸素を導入し、各ガスの流量をマスフローコントローラー(図示せず)により制御して、Ar、窒素、酸素の順に40sccm、60sccm、35sccmになるように調整した。成膜中の真空チャンバ−内の圧力は、真空チャンバーと真空ポンプの間に設置された開閉バルブ12の開度を制御することで0.6Paに調節した。
裏側にマグネット15が配置されたターゲット6には、Snターゲットを用い、Snターゲットへ電源ケーブル16を通じでDC電源13より投入される電力を1000Wとした。基材ホルダー7は、搬送ロール14上を搬送し、ターゲット6の横を通過させ形成した。
参考例2
ガラス基材上にSnNO膜を形成した。導入するガスを、Ar、窒素、酸素の順に40sccm、60sccm、40sccmになるように調整した以外は参考例1と同様の条件で形成した。
参考例3
ガラス基材上にSnO膜を形成した。導入するガスを、酸素のみとした以外は参考例1と同様の条件で形成した。
参考例4
ガラス基材上にZnNO膜を形成した。ターゲット6には、Znターゲットを用い、導入するガスを、Ar、窒素、酸素の順に40sccm、60sccm、30sccmになるように調整した以外は参考例1と同様の条件で形成した。
参考例5
ガラス基材上にZnNO膜を形成した。導入するガスを、Ar、窒素、酸素の順に40sccm、60sccm、35sccmになるように調整した以外は参考例4と同様の条件で形成した。
参考例6
ガラス基材上にZnO膜を形成した。導入するガスを、酸素のみとした以外は参考例4と同様の条件で形成した。
(成膜速度の算出)
成膜前にガラス基材上に施した油性ペンなどのマーキングを、成膜後に除去し、誘電体膜が形成された箇所と、マーキングを除去した誘電体膜が形成されていない箇所との段差を、触針式段差計(Veeco社製、Dektak 150)を用いて測定し、誘電体膜の膜厚(nm)とした。誘電体膜の膜厚と、基材ホルダーの搬送速度(mm/min)の積を算出することにより成膜速度(nm×mm/min)を求めた。また、酸窒化膜(SnNO膜又はZnNO膜)の成膜速度をdOxynitride、酸化膜(SnO膜又はZnO膜)の成膜速度をdOxideとした時の比(=dOxynitride/dOxide)を相対成膜速度として算出した。なお、相対成膜速度は、この値が大きい程、酸化膜に比べて成膜速度が高いことを意味する。
表1に参考例1〜参考例6の誘電体層の成膜速度及び相対成膜速度を示す。参考例1及び参考例2のSnNO膜は、参考例3のSnO膜に比べて3.5〜4.5倍高い成膜速度であった。また、参考例4及び参考例5のZnNO膜の成膜速度は、参考例6のZnOに比べて1.5倍以上高かった。以上より、Sn及びZnの酸窒化物は、Sn及びZnの酸化物よりも成膜速度が高い誘電体膜であることがわかった。
Figure 0005598324
2.誘電体層の光学特性
参考例7
ガラス基材上に、誘電体膜としてSnNO膜を形成した。誘電体膜の膜厚が30nmになるように、基材ホルダーの搬送速度を調整した以外は参考例1と同様の条件で形成した。
参考例8
ガラス基材上に、誘電体膜としてSnNO膜を形成した。誘電体膜の膜厚が30nmになるように、基材ホルダーの搬送速度を調整した以外は参考例2と同様の条件で形成した。
参考例9
ガラス基材上に、誘電体膜としてSnO膜を形成した。誘電体膜の膜厚が30nmになるように、基材ホルダーの搬送速度を調整した以外は参考例3と同様の条件で形成した。
参考例10
ガラス基材上に、誘電体膜としてZnNO膜を形成した。誘電体膜の膜厚が30nmになるように、基材ホルダーの搬送速度を調整した以外は参考例4と同様の条件で形成した。
参考例11
ガラス基材上に、誘電体膜としてZnNO膜を形成した。誘電体膜の膜厚が30nmになるように、基材ホルダーの搬送速度を調整した以外は参考例5と同様の条件で形成した。
参考例12
ガラス基材上に、誘電体膜としてZnO膜を形成した。誘電体膜の膜厚が30nmになるように、基材ホルダーの搬送速度を調整した以外は参考例6と同様の条件で形成した。
(光学特性の評価)
ガラス基材上に形成した誘電体膜の光学特性を、分光光度計(日立製作所製、U−4000)を用いて測定した。波長380から780nmにおける分光透過率を測定し、JIS R3106に準拠して可視光透過率を算出した。
Figure 0005598324
表2に参考例7〜参考例12の誘電体膜の相対成膜速度と、可視光透過率、X線回折ピーク位置を示す。参考例7及び参考例8のSnNO膜は、参考例9のSnO膜と比べて3.5〜4.5倍の高い成膜速度を有していながら、同等の可視光透過率を示した。また、参考例10及び参考例11のZnNO膜は、参考例12のZnO膜と比べて1.5倍以上高い成膜速度を有していながら、同等の可視光透過率を示した。
以上の結果から、SnNO膜やZnNO膜などの酸窒化膜は、高い成膜速度で得ることが出来、なおかつ誘電体膜として優れた可視光透過率を有していることが分かった。
3.誘電体層のX線回折ピーク
参考例13
ガラス基材上に、誘電体膜としてSnNO膜を形成した。誘電体膜の膜厚が500nmになるように、基材ホルダーの搬送速度を調整した以外は参考例1と同様の条件で形成した。
参考例14
ガラス基材上に、誘電体膜としてSnNO膜を形成した。誘電体膜の膜厚が500nmになるように、基材ホルダーの搬送速度を調整した以外は参考例2と同様の条件で形成した。
参考例15
ガラス基材上に、誘電体膜としてSnO膜を形成した。誘電体膜の膜厚が500nmになるように、基材ホルダーの搬送速度を調整した以外は参考例3と同様の条件で形成した。
参考例16
ガラス基材上に、誘電体膜としてZnNO膜を形成した。誘電体膜の膜厚が500nmになるように、基材ホルダーの搬送速度を調整した以外は参考例4と同様の条件で形成した。
参考例17
ガラス基材上に、誘電体膜としてZnNO膜を形成した。誘電体膜の膜厚が500nmになるように、基材ホルダーの搬送速度を調整した以外は参考例5と同様の条件で形成した。
参考例18
ガラス基材上に、誘電体膜としてZnO膜を形成した。誘電体膜の膜厚が500nmになるように、基材ホルダーの搬送速度を調整した以外は参考例6と同様の条件で形成した。
(X線回折ピークの測定)
ガラス基材上に形成した誘電体層のX線回折ピークを、X線回折測定装置(リガク製、RINT−UltimaIII)を用いて測定した。なお測定には、インプレーン測定法を用い、測定条件は、0.004°刻みでゴニオを制御するステップスキャンモードとし、計数時間は2秒とした。SnNO膜およびSnO膜についてはICCDカード#41−1445に記載されているSnO(211)面による回折ピーク、ZnNO膜およびZnO膜についてはICCDカード#36−1451に記載されているZnO(110)面による回折ピークを検出し、X線回折ピーク位置の算出には装置に付随の汎用プログラム(JADE6)を用いた。表3にX線回折ピークの測定結果、及び成膜速度を示した。
Figure 0005598324
参考例13及び参考例14のSnNO膜は、X線回折ピーク位置は50.7°以上であり、参考例15のSnO膜と比べて明らかに異なるピーク位置であった。また、参考例16及び参考例17のZnNO膜は回折ピーク位置は56.1°以上を示し、参考例18のZnO膜と異なる回折ピーク位置であった。また、500nmという膜厚においても、SnNO膜及びZnSO膜は成膜速度が向上することがわかった。以上より、SnNO膜及びZnNO膜は特徴的な回折ピークを示し、500nmの膜厚においても高い成膜速度が維持できることが明らかとなった。
前述した酸窒化物からなる誘電体膜を用いて、以下に本発明の低放射膜の実施例及び比較例を示す。なお、本発明は以下に限定されるものではない。
4.低放射膜の作製
実施例1
図3に示すマグネトロンスパッタリング装置を用いて、3mmのソーダライムガラスを基材とし、低放射膜の形成を行った。
まず、基材8を基材ホルダー7に保持させた後、真空チャンバー9内を真空ポンプ10によって排気して行った。真空チャンバー内に雰囲気ガスとして、ガス導入管11より、Arと窒素と酸素を導入し、各ガスの流量をマスフローコントローラー(図示せず)により制御して、Ar、窒素、酸素の順に40sccm、60sccm、35sccmになるように調整した。成膜中の真空チャンバ−内の圧力は、真空チャンバーと真空ポンプの間に設置された開閉バルブ12の開度を制御することで0.6Paに調節した。
裏側にマグネット15が配置されたターゲット6には、Snターゲットを用い、Snターゲットへ電源ケーブル16を通じでDC電源13より投入される電力を1000Wとした。基材ホルダー7は、搬送ロール14上を搬送し、ターゲット6の横を通過させ、SnNO膜の膜厚が23nmになるように搬送速度を調整した。なお、以降いずれの膜についても、搬送速度を制御することで所望の膜厚を得ており、基材の加熱は特に行わなかった。
次に、SnNO膜の上にAg膜を、真空を維持したまま連続して形成した。ターゲット6にAgターゲットを用い、真空チャンバー9内の雰囲気ガスとして、ガス導入管11よりArガスを導入し、圧力は0.5Paに調節した。Agターゲット6へDC電源13より投入する電力は360Wとし、膜厚10nmのAg膜を形成した。
次に、Ag膜の上にバリア層を形成した。ターゲット6にAlをドープしたZnO(以下AZOと記載することがある)ターゲットを用いて、真空チャンバー9内の雰囲気ガスとしてArガスを導入し、圧力は0.7Paに調節した。AZOターゲット6へDC電源13より投入する電力は1000Wとし、膜厚5nmのAZO膜を得た。
次に、バリア層の上にSnNO膜を形成した。ターゲット6にSnターゲットを用いて、真空チャンバー9内の雰囲気ガスとしてArと窒素と酸素とを導入し、Ar、窒素、酸素の順に40sccm、60sccm、35sccmになるように各ガスの流量を調整した。Snターゲット6へDC電源13より投入する電力を1000Wとし、膜厚32nmのSnNO膜を得た。
以上より、ガラス基材に誘電体層としてSnNO膜、金属層としてAg膜、バリア層としてAZO膜、誘電体層としてSnNO膜を順次積層した低放射膜を作製した。
比較例1
誘電体層として真空チャンバー内に導入するガスを酸素のみとしてSnO膜を形成し、金属層としてAg膜を形成し、バリア層としてAZO膜を形成し、誘電体層として真空チャンバー内に導入するガスを酸素のみとしてSnO膜を順次形成した以外は、実施例1と同様の方法で低放射膜を作製した。
実施例2
誘電体層としてZnターゲットを用いてZnNO膜を形成し、金属層としてAg膜を形成し、バリア層としてAZO膜を形成し、誘電体層としてZnターゲットを用いてZnNO膜を順次形成した以外は実施例1と同様の方法で低放射膜を作製した。
比較例2
誘電体層として真空チャンバー内に導入するガスを酸素のみとしてZnO膜を形成し、金属層としてAg膜を形成し、バリア層としてAZO膜形成し、誘電体層として真空チャンバー内に導入するガスを酸素のみとしてZnO膜を順次形成した以外は、実施例2と同様の方法で低放射膜を作製した。
(成膜時間の算出)
低放射膜の各層の成膜時間の和により、低放射膜を形成するのに要した時間を算出した。
(表面抵抗の測定と放射率の算出)
低放射膜の表面抵抗Rsを、表面抵抗測定器(Napson社製、ResistestVIII)を用いて測定した。放射率εを、次式を用いて算出した(参考文献:J. Szczyrbowski et al.,New low emissivity coating based on TwinMagTM sputtered TiO2 and Si3N4 layers,Thin Solid Films,Vol.351,Issues 1-2,1999,pp.254-259)。なお、低放射膜は、表面抵抗が低いほど、放射率が低く、優れた断熱性を有す相関関係があるものである。
ε=0.0129×Rs−6.7×10−5×Rs
(光学特性の測定)
低放射膜の光学特性を、自記分光光度計(日立製作所製、U−4000)を用いて測定した。波長380〜780nmの可視光領域における透過率が高い程、可視光透過率が高く、波長780nm〜2500nmの近赤外領域の反射率が高い程、日射遮蔽性が高いと判断できる。
実施例1及び比較例1、実施例2及び比較例2の低放射膜の成膜時間、表面抵抗を表4に示す。誘電体層にSnNO膜を用いた実施例1の成膜時間は、SnO膜を用いた比較例1の1/4程度、またZnO膜を用いた比較例2の1/3程度であり、成膜速度が飛躍的に向上していたことが分かった。また、実施例1の表面抵抗は、比較例1と同程度であり、同等の放射率を有していた。
更に、誘電体層にZnNO膜を用いた実施例2の成膜時間は、ZnO膜を用いた比較例2の3/5程度であり、SnNO膜を用いた場合と同様に成膜速度が向上していた。実施例2の表面抵抗は、比較例2に比べて高いが、誘電体層を成膜する際のガス圧力などの成膜条件を更に調整することで同程度の表面抵抗と放射率を実現できる。
実施例1及び比較例1、実施例2及び比較例2の低放射膜の分光透過率及び分光反射率をそれぞれ図4、図5に示す。実施例1及び実施例2の低放射膜は、比較例1及び比較例2と同等の光学特性を有しており、低放射膜として十分な可視光透過性と日射遮蔽性を有していることが分かった。
Figure 0005598324
実施例3
図3に示すマグネトロンスパッタリング装置を用いて、3mmのソーダライムガラスを基材とし、低放射膜の成膜を行った。
基材8を基材ホルダー7に保持させた後、真空チャンバー9内を真空ポンプ10によって排気した。真空チャンバー内に雰囲気ガスとして、ガス導入管11よりArと窒素と酸素とを導入し、各ガスの流量をマスフローコントローラー(図示せず)により制御して、Ar、窒素、酸素の順に40sccm、60sccm、35sccmになるように調整した。成膜中の真空チャンバ−内の圧力は0.6Paに調節した。
裏側にマグネット15が配置されたターゲット6にはSnターゲットを用い、SnターゲットへDC電源13より投入される電力を1000Wとした。基材ホルダー7は、搬送ロール14上を搬送し、ターゲット6の横を通過させ、SnNO膜の膜厚が23nmになるように搬送速度を調整した。
次に、SnNO膜の上にAg膜を、真空を維持したまま連続して形成した。ターゲット6にAgターゲットを用いて、真空チャンバー9内の雰囲気ガスは、ガス導入管11よりArガスを導入し、圧力を0.5Paに調節した。Agターゲット6へDC電源13より投入する電力を360Wとし、膜厚11nmのAg膜を形成した。
次に、Ag膜の上にSnNO膜を形成した。ターゲット6にSnターゲットを用いて、真空チャンバー9内の雰囲気ガスとして、ガス導入管11よりArと窒素と酸素とを導入し、各ガスの流量をマスフローコントローラー(図示せず)により制御して、Ar、窒素、酸素の順に40sccm、60sccm、35sccmになるように調整した。Snターゲット6へ電源ケーブル16を通じてDC電源13より投入する電力は1000Wとし、膜厚が43nmのSnNO膜を形成した。
以上より、ガラス基材に誘電体層としてSnNO膜、金属層としてAg膜、誘電体層としてSnNO膜を順次積層した低放射膜を作製した。
比較例3
ガラス基材に誘電体層としてSnO膜、金属層としてAg膜、誘電体層としてSnO膜を順次積層した低放射膜を作製した。誘電体層の成膜中、真空チャンバー内に導入する雰囲気ガスとして酸素ガスを用い、成膜中の真空チャンバ−内の圧力を0.3Paに調節した以外は実施例3と同様の方法で成膜を行った。
実施例3及び比較例3の低放射膜の成膜時間と表面抵抗を表5に示す。実施例3の成膜時間は、比較例3の1/4程度であり、実施例1及び実施例2と同様、成膜速度が向上した。また、実施例3の表面抵抗は10Ω/□であり、低放射膜として利用可能な放射率を有していた。一方、比較例3の表面抵抗は無限大であり、低放射膜として利用できるものではなかった。
実施例3及び比較例3の低放射膜の分光透過率及び分光反射率を図6に示す。実施例3は可視光透過性と日射遮蔽性に優れており、低放射膜として十分な性能を有していた。一方、比較例3の低放射膜は、可視光透過性は優れているものの、日射遮蔽性が悪く、低放射膜としては適していなかった。
Figure 0005598324
実施例4
ガラス基材に誘電体層としてSnNO膜、金属層としてAgNO膜、誘電体層としてSnNO膜を順次積層した低放射膜を作製した。
基材上のSnNO膜の成膜は、成膜時の真空チャンバー内の圧力を0.5Paとし、30nmの膜厚のSnNO膜を形成した以外は実施例1と同様の方法で誘電体層を形成した。
また、金属層であるAgNO膜は、ターゲットにAgターゲットを用い、真空チャンバー内の雰囲気ガスとして、Arと窒素と酸素を導入し、各ガスの流量をAr、窒素、酸素の順に28sccm、60sccm、28sccmになるように調整した。成膜中の圧力は排気バルブ22を制御して0.5Paに調節し、Agターゲットへ投入する電力を360Wとし、膜厚11nmのAg膜を形成した。
次にAg膜上に、基材上のSnNO膜と同様の方法でSnNO膜を形成した。
以上より、ガラス基材に誘電体層としてSnNO膜、金属層としてAgNO膜、誘電体層としてSnNO膜を順次積層した低放射膜を作製した。
実施例4の低放射膜の表面抵抗は13Ω/□、放射率は0.13となり、低放射膜として利用できる放射率を有していた。また、実施例4の低放射膜の分光透過率及び分光反射率を図7に示す。実施例4の低放射膜は、優れた可視光透過性と日射遮蔽性を有しており、低放射膜として十分な特性を有していることが分かった。
以上の結果から、本発明の低放射膜は、低放射ガラスとしての利用可能な可視光透過性、日射遮蔽性、断熱性を兼ね備えていながら、短い成膜時間で得ることができ、また誘電体層と金属層のガス条件を類似したガス組成に設定できることが確認された。
1 基材
2 誘電体層
3 金属層
4 バリア層
5 バッキングプレート
6 ターゲット
7 基材ホルダー
8 板ガラス
9 真空チャンバー
10 真空ポンプ
11 ガス導入管
12 開閉バルブ
13 DC電源
14 搬送ロール
15 マグネット
16 電源ケーブル

Claims (4)

  1. 建築用窓ガラス上に誘電体層と金属層とが、交互に2n+1層(nは1以上の整数)積層されてなる積層構造を有しており、該積層構造の1層目は誘電体層であり、JIS R3106に準拠して算出した可視光透過率が50%以上、表面抵抗が0.5〜30Ω/□である低放射膜をスパッタリング法を用いて製造する方法において、
    該誘電体層として、Znターゲットを用い、成膜時の真空チャンバーの圧力を0.1〜1.5Paとし、真空チャンバー内に、酸素を15〜50%含む窒素と酸素の混合ガスを導入し、
    Znを50質量%以上含む膜厚5〜1000nmの酸窒化物からなる層を形成し、
    該金属層として、膜厚5〜30nmのAg層を形成することを特徴とする低放射膜の製造方法。
  2. 建築用窓ガラス上に誘電体層と金属層とが、交互に2n+1層(nは1以上の整数)積層されてなる積層構造を有しており、該積層構造の1層目は誘電体層であり、JIS R3106に準拠して算出した可視光透過率が50%以上、表面抵抗が0.5〜30Ω/□である低放射膜をスパッタリング法を用いて製造する方法において、
    該誘電体層として、Snターゲットを用い、成膜時の真空チャンバーの圧力を0.1〜1.5Paとし、真空チャンバー内に内に、酸素を15〜50%含む窒素と酸素の混合ガスを導入し、
    Snを50質量%以上含む膜厚5〜1000nmの酸窒化物からなる層を形成し、
    該金属層として、膜厚5〜30nmのAg層を形成することを特徴とする低放射膜の製造方法。
  3. 該金属層として、誘電体層を成膜時の混合ガスと同じガス雰囲気下でAgNO膜を形成することを特徴とする請求項1又は2記載の低放射膜の製造方法。
  4. 該誘電体層として、膜厚500〜1000nmの酸窒化物からなる層を形成することを特徴とする請求項1又は2記載の低放射膜の製造方法。
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