JP5598266B2 - 電子鍵盤楽器の鍵スイッチ構造 - Google Patents

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Description

本発明は、電子鍵盤楽器の鍵スイッチ構造に関する。
従来、電子鍵盤楽器の鍵スイッチ構造において、押鍵操作によって動作し、タッチレスポンスの実現等のために弾性材でなる3メイク式のスイッチを備えたものが知られている。例えば、下記特許文献1(第5図)のスイッチ構造では、3つの可動接点が一列に配列されて設けられ、押鍵操作により順次メイク(オン)していく。
この種の、ゴム等の弾性材で構成した3メイク式スイッチは鍵やハンマで駆動されるが、駆動されることで反力を発生させるため、押鍵荷重に反映されることになる。これを図4で説明する。
図4(a)は、従来の3メイク式スイッチを備える鍵スイッチ構造の模式図である。図4(b)は、3メイク式スイッチにより鍵が受ける荷重の遷移を示す図である。
図4(a)に示すように、鍵Kが鍵支点Cを中心に揺動自在に配設される。3メイク式のスイッチSWは、ドーム状のスカート部SKを含んで基板Bから鍵K側に膨出し、上端部が鍵Kによって押圧駆動される。スカート部SKの内側に、基板B側に膨出した3つの膨出部が形成され、各々の膨出部の先端に可動接点sw1〜sw3が設けられる。鍵Kが押下操作されると、可動接点sw1〜sw3の順に、対応して基板Bに配設された固定接点(図示せず)に当接し、オンしていく。
図4(b)に示すように、押鍵往行程において、可動接点sw1がメイクする前までは、スカート部SKの弾性変形による反力F1が生じ、その後、可動接点sw1、sw2、sw3が順にオンしておくと、それぞれの膨出部のスカートの弾性変形によって反力F2、F3、F4が生じる。反力F2、F3、F4の山形状は、小さな膨出部の弾性変形と座屈によって形成され、反力の山が滑らかでない。しかも、可動接点数が3つと多い。そのため、滑らかでない反力の山が多く生じると共に、押鍵往行程後半において反力自体も加算されて大きくなり、押鍵感触に悪影響を及ぼす傾向にあった。
ところで、反力の山を滑らかにするために、下記特許文献2のスイッチ構造のように、ドーム状のスカート部の円形の下縁部に可動接点を設け、それの内側に複数の可動接点を設けることが考えられる。
特開平11−213815号公報 実開昭63−162399号公報
しかしながら、特許文献2のスイッチ構造では、基板において、ドームの内側の可動接点に対応する固定接点から配線を引き出す必要があるが、その配線は、ドーム状のスカート部に設けた可動接点が当接する領域を通らざるを得ず、押鍵の度にスカート部に踏まれてしまうことになる。そのため、何らかの保護をしないと、剥がれやすく耐久性が低くなり、長期的なスイッチング動作の安定を維持する上で問題があった。
また、仮に、ドーム状のスカート部が、押鍵操作時に外方に広がるような動きをするようであると、安定したスイッチング動作の妨げになるため、スイッチ構造の設計においてそれを考慮する必要がある。
ところで、特許文献2のスイッチ構造では、ドーム状のスカート部が内側の可動接点を囲むように円形に形成されるため、基板に平行ないずれの方向にも小型化できず、鍵スイッチに用いる上で有利とはいえない。
本発明は上記従来技術の問題を解決するためになされたものであり、その目的は、3メイク以上の鍵スイッチにおいて押鍵荷重特性の向上を実現すると共に、安定したスイッチング動作を維持することができる電子鍵盤楽器の鍵スイッチ構造を提供することにある。
上記目的を達成するために本発明の請求項1の電子鍵盤楽器の鍵スイッチ構造は、基板(10)に取り付けられるベース部(11)と、前記ベース部にスカート部(SKa)を介して接続され、前記基板から離れる方向に弾性的に膨出したドーム状膨出部(12)と、前記ドーム状膨出部の先端部に設けられ、鍵(K)または押鍵操作に伴い移動する移動部材によって駆動される被駆動部(14)と、前記ドーム状膨出部の前記基板に対向する縁部(13)に設けられたドーム可動接点(swA1、swA2)と、各々、前記被駆動部から前記基板に近づく方向に弾性的に膨出した膨出部(15、16)の先端部に設けられた複数の可動接点(swB、swC)と、を有し、押鍵往行程において、前記ドーム可動接点が、それに対応して前記基板に配設された固定接点に対して当接すると共に、前記複数の可動接点が、それら各々に対応して前記基板に配設された固定接点に対して各々当接することで、押鍵状態が検出されるように構成され、押鍵往行程において、前記ドーム可動接点及び前記複数の可動接点の、各々に対応する固定接点に対して当接するタイミングは互いに異なっており、前記ドーム状膨出部の前記縁部は、前記基板の側からみて、前記複数の可動接点を囲んで且つ前記複数の可動接点の配列方向に沿って長い環状であり、前記縁部のうち前記ドーム状膨出部の長手方向における中間部には、前記基板に当接しないような切欠部(13a)が形成され、前記縁部のうち前記ドーム状膨出部の長手方向における中間部には、厚肉部が設けられたことを特徴とする。
好ましくは、記縁部のうち前記切欠部が形成されている部分は前記縁部のうち他の部分よりも厚い前記厚肉部として形成されている(請求項2)。
好ましくは、前記ドーム状膨出部の前記縁部の前記基板の側から見た形状は、楕円形である(請求項3)。
好ましくは、記ドーム可動接点は、前記長手方向において、前記切欠部を挟んで、前記基板の側から見ていずれも円弧状の第1のドーム可動接点(swA1)及び第2のドーム可動接点(swA2)の2つに分かれて構成される(請求項4)。
好ましくは、押鍵往行程において、前記第1のドーム可動接点及び前記第2のドーム可動接点が、それら各々に対応して前記基板に配設された固定接点(21A1、21A2)に対して順に当接するように構成される(請求項5)。
好ましくは、非押鍵状態における前記第1のドーム可動接点は、前記ドーム状膨出部の短手方向視において、押鍵往行程において最初に当接する部分(17、P1)から前記第2のドーム可動接点の方向に向かうにつれて(18)前記基板からの距離が大きい(請求項6)。
好ましくは、前記複数の可動接点の配列方向は前記鍵の長手方向と同じである(請求項7)。
好ましくは、前記基板に配設される前記各固定接点に接続される配線(22)は、前記基板上における、前記ドーム状膨出部の前記縁部の前記切欠部に対向する部分を通って配設される(請求項8)。
上記目的を達成するために本発明の請求項9の電子鍵盤楽器の鍵スイッチ構造は、基板(10)に取り付けられるベース部(11)と、前記ベース部にスカート部(SKa)を介して接続され、前記基板から離れる方向に弾性的に膨出したドーム状膨出部(12)と、前記ドーム状膨出部の先端部に設けられ、鍵(K)自身または押鍵操作に伴い移動する移動部材によって駆動される被駆動部(14)と、前記ドーム状膨出部の前記基板に対向する縁部(13)に設けられたドーム可動接点(swA1、swA2)と、各々、前記被駆動部から前記基板に近づく方向に弾性的に膨出した膨出部(15、16)の先端部に設けられた複数の可動接点(swB、swC)と、押鍵往行程において、前記ドーム可動接点が、それに対応して前記基板に配設された固定接点に対して当接すると共に、前記複数の可動接点が、それら各々に対応して前記基板に配設された固定接点に対して各々当接することで、押鍵状態が検出されるように構成され、押鍵往行程において、前記ドーム可動接点及び前記複数の可動接点の、各々に対応する固定接点に対して当接するタイミングは互いに異なっており、前記ドーム状膨出部の前記縁部には、前記基板に当接しないような切欠部(13a)が形成されたことを特徴とする。
なお、上記括弧内の符号は例示である。
本発明の請求項1によれば、3メイク以上の鍵スイッチにおいて押鍵荷重特性の向上と小型化を実現すると共に、安定したスイッチング動作を維持することができる。
請求項2、3によれば、動作時におけるドーム状膨出部の縁部の外方への変形を抑制してスイッチング動作を安定させることができる。
請求項4によれば、動作時に外方へ変形しやすいドーム状膨出部の長手方向中間部が基板に当接しないので、ドーム可動接点に踏まれないように配線を配設して安定したスイッチング動作を長期に亘って維持することが容易となる。
請求項5によれば、4メイク以上の鍵スイッチを小型に構成することができる。
請求項6によれば、第1のドーム可動接点の固定接点との当接状態を安定させることができる。
請求項7によれば、鍵の幅方向において鍵スイッチをコンパクトにすることができる。
請求項8によれば、配線が踏まれないで済み、安定したスイッチング動作を長期に亘って維持することができる。
本発明の請求項9によれば、3メイク以上の鍵スイッチにおいて押鍵荷重特性の向上を実現すると共に、安定したスイッチング動作を維持することができる。
本発明の第1の実施の形態に係る鍵スイッチ構造におけるスイッチ体の断面図、裏面図、固定接点パターン、スカート部が発生させる反力による押鍵荷重の遷移を示す図である。 本発明の第2の実施の形態に係る鍵スイッチ構造におけるスイッチ体の断面図、裏面図である。 可動接点swA1の下面形状の変形例、下縁部の変形例を示す図である。 従来の3メイク式スイッチを備える鍵スイッチ構造の模式図、鍵が受ける荷重の遷移を示す図である。
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
(第1の実施の形態)
図1(a)は、本発明の第1の実施の形態に係る鍵スイッチ構造におけるスイッチ体の断面図である。この鍵スイッチ構造は、複数の鍵Kを有する電子鍵盤楽器に適用され、スイッチ体SWを有する。スイッチ体SWは、基板10上に、各鍵Kに対応して配設される。鍵Kは、図4(a)の構成と同様に、不図示の鍵支点を中心に揺動自在であり、押下操作されることで揺動し、スイッチ体SWを押下する。スイッチ体SWは、ゴム等の弾性部材で一体に構成された接点時間差タイプの3メイク式タッチレスポンススイッチである。
図1(b)は、スイッチ体SWを基板10の側から見た裏面図である。以降、スイッチ体SWにおいて鍵Kの側を上側、基板10の側を下側と呼称することもある。図1(c)は、固定接点パターンの平面図である。
スイッチ体SWは、ベース部11を有し、ベース部11が基板10に取り付けられる。ベース部11の基板10への取り付け態様は限定されるものではなく、接着や締結具を用いた態様の他、基板10に設けた貫通穴にベース部11から突設した突設部を貫通係合させる態様でもよい。
図1(a)に示すように、スイッチ体SWは、上方に弾性的に膨出したドーム状膨出部12を有する。ドーム状膨出部12は、スカート部SKaを介してベース部11に接続され、非押鍵時においては基板10から浮いた状態となっている。ドーム状膨出部12は、スカート部SKbとそれの下部に一体に連接する下縁部13とを有し、スカート部SKaとの連結部分を境として上側がスカート部SKb、下側が下縁部13となっている。また、スカート部SKbの上部に被駆動部14が形成されている。非押鍵状態において、被駆動部14の上面14aに、鍵Kが当接または近接している。
ドーム状膨出部12の内側であって、被駆動部14の下部には、下方に弾性的に膨出した2つの膨出部15、16が形成される。膨出部15、16はそれぞれスカート部SKc、SKdを有する。各スカート部SKa、SKb、SKc、SKdはいずれも薄く、弾性変形しやすくなっている。スカート部SKa、SKbは、上方ほど水平断面の環状形状が小さくなり、スカート部SKc、SKdは、下方ほど水平断面の環状形状が小さくなる。
膨出部15、16の下部(先端部)にはそれぞれ、カーボンインク等の導電性材料でなる可動接点swB、swCが基板10に対向して設けられている。非押鍵状態において、可動接点swBは可動接点swCよりも低く、押鍵往行程においては可動接点swBの方が先に基板10に当接する。スイッチ体SWが鍵Kの下方に配設されたとき、可動接点swBと可動接点swCとは、鍵Kの長手方向に沿って並ぶ。図1(a)の例では、鍵Kの先端側が図1(a)の左側とすれば、可動接点swBが鍵Kの先端側となる。
ドーム状膨出部12においては、図1(a)、(b)に示すように、導電性材料でなる2つの可動接点(第1のドーム可動接点swA1及び第2のドーム可動接点swA2)が設けられる。まず、ドーム状膨出部12の下縁部13は、裏側から見て鍵Kの長手方向(可動接点swB、swCの並び方向)に長い環状となっている。すなわち、2つの円弧状部分の両端をそれぞれ直線部分で連結したような形状となっている。また、ドーム状膨出部12の長手方向(鍵Kの長手方向)における中間部において下縁部13には、基板10に当接しないような切欠部13aが形成されている。切欠部13aは、下縁部13の2つの平行な直線部に、側面視(ドーム状膨出部の短手方向視)で下方に凹形状に切り欠かれて形成されている。
そして、下縁部13のうち切欠部13aを挟んで長手方向において2つに分かれた部分の下端に可動接点swA1、swA2が基板10に対向して設けられる。切欠部13aは、下縁部13の直線部のほぼ線領域に亘って形成されるため、可動接点swA1、swA2は、裏面から見て対称形状の半円型である。可動接点swA1、swA2は非押鍵状態において同じ高さであり、スイッチとしては共通に1つの動作を検出する。また、可動接点swA1、swA2は、可動接点swBよりも低い。従って、押鍵凹行程においては、可動接点swA1またはswA2→可動接点swB→可動接点swCの順に基板10に当接する。離鍵行程においてはこれと逆の順番となる。
図1(c)に示すように、基板10の上面には、固定接点パターンとして、各可動接点swに対応する複数の固定接点が敷設されている。可動接点swA1、swA2、swB、swCに対応して、固定接点21A1、21A2、21B、21Cが形成され、これらは各々一対の櫛歯状電極で構成されている。従って、各可動接点swが、それに対応する固定接点21に当接するとメイク(オン)し、検出信号が得られる。押鍵状態を把握する上で、各検出信号の用い方については問わない。例えば、可動接点swAから可動接点swBまでのオンの時間差で押鍵ベロシティを検出し、その情報により、発生すべき楽音の音量を決定すると共に、可動接点swCのオンタイミングで発音トリガを発生させるように用いてもよい。
各固定接点21からは、基板10上に施されるレジストパターンにより配線22が引き出されている。これらのうち、固定接点21A1、21A2から引き出される配線22の出所は、ドーム状膨出部12の下縁部13が呈する環状の外側に位置するので、下縁部13に踏まれることはない。しかし、固定接点21B、21Cから引き出される配線22の出所は、ドーム状膨出部12の下縁部13が呈する環状の内側に位置する。そこで、固定接点21B、21Cから引き出される配線22については、基板10上において、下縁部13の切欠部13aに対向する領域を通って、下縁部13が呈する環状の外側に導くように配設している。これにより、配線22は、いずれの箇所も下縁部13に踏まれることがない。
かかる構成において、押鍵往行程において、押鍵操作されると、鍵Kによって被駆動部14が押圧駆動される。すると、まず、主にスカート部SKaが撓んでドーム状膨出部12の全体が基板10側に変位し、可動接点swA1、swA2が固定接点21A1、21A2に当接すると、通電して第1メイクとしての信号が検出される。厳密には、可動接点swA1、swA2の間で時間差を生じることもあり得るが、いずれかが先に当接した時点で信号が検出される。
スカート部SKaの変形はその状態で留まり、次に、スカート部SKbが撓んで膨出部15、16が基板10側に変位し、可動接点swBが固定接点21Bに当接すると、通電して第2メイクとしての信号が検出される。さらに押鍵が進むと、可動接点swBはその位置に留まるが、スカート部SKcが撓んで膨出部16が基板10側に変位し、可動接点swCが固定接点21Cに当接すると、通電して第3メイクとしての信号が検出される。その後、押鍵終了状態まで、主にスカート部SKdが撓んでいく。
スカート部SKが発生させる反力による押鍵荷重の遷移は、図1(d)に示すものとなる。すなわち、可動接点swA1、swA2がメイクするまでは、主にスカート部SKaの弾性変形による荷重上昇(SKa)生じる、可動接点swAがメイクした後は、スカート部SKaによる荷重の増大はなく、可動接点swBがメイクするまでは、主にスカート部SKbの弾性変形による荷重上昇(SKa)が生じる。スカート部SKa、SKbは共に大きな腕状であるので、両者間の荷重上昇の変化は緩やかである。
可動接点swBのメイク後、可動接点swCがメイクするまでは、スカート部SKcの弾性変形による荷重上昇(SKc)が生じ、可動接点swCのメイク後はスカート部SKdの弾性変形による荷重上昇(SKd)が生じるが、これらの反力の山形状は従来と同じである。しかし、従来のように3つの可動接点が一列に配列されたものに比べると、山の数が1つ少なくて済み、押鍵ストロークの後半に荷重が急上昇することが抑制される。
第1メイク用の2個の可動接点swA1、swA2が可動接点swB、swCを挟んで配置されるので、可動接点swB、swCがメイクするときには可動接点swA1、swA2が支えとなって、可動接点swB、swCの接触動作が安定する。従来のように、単純に3つの可動接点を一列に配置した構成では、2つ目の可動接点がメイクする際には最初にメイクした可動接点の1点による支えとなるため、2つ目にメイクする可動接点が傾きやすく、同じ押鍵速度であっても接触状態やメイク時間差にばらつきが出やすい。しかし、本実施の形態では、可動接点swB、swCが2個の可動接点swA1、swA2で囲まれているので、2つ目移行のメイク動作が安定する。
本実施の形態によれば、ドーム状膨出部12の下縁部13に可動接点swAが設けられると共に、下縁部13は基板10の側からみて、可動接点swB、swCを囲んで且つこれらの配列方向に沿って長い環状である。また、可動接点swAを設けるためのドーム状膨出部12は、可動接点swB、swCを設けるための膨出部15、16のような個別の膨出部と比べればスペースを要しない。これらにより、3メイク式のスイッチ体SWにおいて小型化を実現することができる。特に、鍵Kの幅方向においてコンパクトである。しかも、3メイク式でありながら、滑らかでない反力の山は2つ(図1(d)に示すSKc、SKd)で済み、ストロークと共に荷重が急上昇する傾向が抑制され、抜け感のある良いタッチとなり、押鍵荷重特性を向上させることができる。
また、下縁部13に切欠部13aを設け、固定接点21B、21Cから引き出される配線22は、基板10の、切欠部13aに対向する部分を通って配設したので、配線22が踏まれず、別途の保護をすることなく、安定したスイッチング動作を長期に維持することができる。特に、下縁部13の直線部は、可動接点swAのメイク後のドーム状膨出部12の変形によって外方へ膨らむように変形しやすく、仮にその部分が基板10に当接すると、配線22を剥がしやすく耐久性を低くするおそれがある。従って、切欠部13aを、ドーム状膨出部12の長手方向における中間部に形成したことで、配線22の保護を効果的に果たしている。
なお、配線22を保護するという観点に限れば、切欠部13aを設けるのは1箇所でもよく、切欠部13aに対応する部分を通して配線22を配設すればよい。
また、押鍵荷重特性の向上と小型化を実現する観点に限れば、押鍵往行程におけるメイク順序は、例示したものに限定されず、例えば、可動接点swB→swA→swCの順であってもよい。ただし、スイッチング動作の安定の観点からは、図1(a)で例示したように、長手方向において遠い側の可動接点swA1、swA2が先に当接するのが好ましい。
(第2の実施の形態)
図2(a)、(b)は、本発明の第2の実施の形態に係る鍵スイッチ構造におけるスイッチ体の断面図、裏面図である。
第1の実施の形態では、可動接点swA1、swA2は同高で、メイクタイミングが同じであった。これに対し第2の実施の形態では、押鍵往行程において可動接点swA1が先にメイクし、可動接点swA2が後からメイクするよう、基板10に対する距離を、可動接点swA2よりも可動接点swA1の方が近い構成とする。また、可動接点swA1と固定接点21A1とのメイク、可動接点swA2と固定接点21A2とのメイクで、別の検出信号が得られるものとして扱う。ドーム状膨出部12以外の構成は第1の実施の形態と同様である。従って、本実施の形態においては、スイッチ体SWは4メイク式となる。
ドーム状膨出部12の下縁部13の形状形成によって、可動接点swA1の下面の側面視(ドーム状膨出部12の短手方向視)の形状は、ほぼ下方に凸の形状となっている。すなわち、非押鍵状態において、可動接点swA1の下面のうち、可動接点swA2から遠い側は水平な水平部17であり、それより可動接点swA2に近い側の部分は、可動接点swA2の方向に向かうにつれて基板10からの距離が大きくなるような斜面部18となっている。水平部17と斜面部18との連接部には微小なR形状を設けてもよい。
これにより、押鍵往行程において、可動接点swA1のうち水平部17が固定接点21A1に最初に当接する。その後、可動接点swA2が固定接点21A2に当接するまでの間に、可動接点swA1の下面は図2の時計方向に徐々に傾斜していく。しかし、その途中で斜面部18が固定接点21A1に当接するようになるため、可動接点swA1全体としては、固定接点21A1との当接状態が安定して維持される。
また、ドーム状膨出部12の下縁部13のうち直線部、すなわち、ドーム状膨出部12の長手方向における中間部は、他の部分よりも厚く(短手方向に厚く)形成された厚肉部19となっている。上下方向において厚肉部19とする領域に限定はないが、少なくとも下縁部13の最下端は厚肉とするのが好ましい。また、ドーム状膨出部12の長手方向において厚肉部19とする領域は、本実施の形態では切欠部13aの領域と一致させたが、両者を完全に一致させることは必須でない。
上記したように可動接点swA1乃至可動接点swA2のメイク後に、ドーム状膨出部12の弾性変形によって、環状の下縁部13は外方へ膨らむような力を受ける。仮に、厚肉部19を設けず、下縁部13を一様な厚みで形成したとする。その場合でも、可動接点swA1、swA2の部分は円弧状であるため、引っ張り力が作用して、それ自体としては外方へ大きく広がりにくい。ところが、下縁部13のうち円弧状部分(可動接点swAの部分)でない直線部は、ドーム状膨出部12の弾性変形によって広がる。その結果、円弧状部分の直線部との連接部分も直線部につられて外方へ広がることになる。直線部の長手方向中央部は最も外方に膨らむ。
本実施の形態では、厚肉部19を設けたことで、直線部の外方への広がり傾向が抑制され、それによって、可動接点swAの部分がスイッチ動作時に外方へ変位しないようにすることができる。可動接点swAが水平方向に変位しないので、固定接点21Aとの接触不良も生じにくく、スイッチング動作が安定する。
本実施の形態によれば、スイッチ体SWの小型化、押鍵荷重特性の向上、配線22の保護に関し、第1の実施の形態と同様の効果を奏することができる。特に、本実施の形態では、4メイク式とする場合に、ドーム状膨出部12の内側の可動接点は2個のままで、可動接点swA1、swA2のメイクタイミングを異ならせたので、小型の4メイク式のスイッチ体SWを実現することができる。
本実施の形態によればまた、厚肉部19により、スイッチ動作時における下縁部13の外方への変形を抑制してスイッチング動作を安定させることができる。さらに、可動接点swA1の下面に、水平部17に連接して斜面部18を設けたので、可動接点swA1の固定接点21A1との当接状態を安定させることができる。
ところで、可動接点swA1が傾いても固定接点21A1との当接状態を安定させる観点からは、可動接点swA1の下面の形状は、基本的には側面視で下方に凸であればよい。従って、斜面部18は平坦面でなくてもよく、下方に凸の緩やかな曲面であってもよい。さらに、図3(a)、(b)に示すように、各種の変形例が考えられる。
図3(a)、(b)は、可動接点swA1の下面形状の変形例を示す断面図である。例えば、図3(a)に示すように、可動接点swA1の下面のうち、押鍵往行程において最初に当接する部分P1は可動接点swA2に最も遠い位置となっていて、部分P1から可動接点swA2の方向に向かうにつれて基板10からの距離が大きくなっていてもよい。あるいは、図3(b)に示すように、可動接点swA1の下面形状は、全体的に下方に凸の曲面であって、押鍵往行程において最初に当接する部分P1は、可動接点swA2に最も遠い位置よりも少し可動接点swA2寄りであってもよい。
また、厚肉部19については、図2(b)の例では、円弧状部分(可動接点swAの部分)に対して外側、内側の双方に厚くなっていたが、これに限られない。例えば、図3(c)に示すように、内側にのみ厚く形成してもよいし、図3(d)に示すように、外側にのみ厚く形成してもよい。
ところで、上記第1、第2の実施の形態において、ドーム状膨出部12の下縁部13の環状形状は、可動接点swB、swCの並び方向に長い、直線部を有する環状とした。しかし、これに限るものではなく、図3(e)に例示するような、楕円形乃至長円(2定点からの距離の和が一定の曲線)であってもよい。楕円形にすると、可動接点swAでない部分も曲率半径は大きいものの円弧状となるので、下縁部13が基板10に当接した後にドーム状膨出部12が変形するときに引っ張り力が作用して、外方へ膨らもうとする力が図1(b)の例に比べれば減少する。これにより、可動接点swAの固定接点21Aとの接点動作が安定する。
なお、厚肉部19を設ける構成(図2(b))は、第1の実施の形態(図1(b))にも組み合わせて適用可能である。また、下縁部13を楕円形にする構成(図3(e))は、第1、第2の実施の形態のいずれにも、組み合わせて適用可能である。
なお、第1、第2の実施の形態において、ドーム状膨出部12の内側に設ける膨出部(可動接点sw)の数は、3つ以上であってもよい。その場合は、それら全てを一列に配列し、下縁部13の環状形状を、可動接点swの配列方向に沿って長い環状とすればよい。
なお、各実施の形態において、スイッチ体SWは鍵Kによって直接駆動されるとしたが、これに限られない。すなわち、押鍵のための操作に伴って回動等の移動をする移動部材、例えば、鍵自身のほか、鍵と連動して回動する質量体、あるいはそれらに介在する部材によってスイッチ体SW(被駆動部14の上面14a)が駆動される構成においても、本発明を適用可能である。また、これら鍵スイッチを駆動する部材の動きは、回動乃至揺動に限られず、平行移動であってもよい。
10 基板、 11 ベース部、 12 ドーム状膨出部、 13 下縁部、 13a 切欠部、 14 被駆動部、 15、16 膨出部、 17 水平部、 18 斜面部、 19 厚肉部、 21 固定接点、 22 配線、 K 鍵、 swA 可動接点(ドーム可動接点)、 swB、swC 可動接点、 SKa スカート部

Claims (8)

  1. 基板に取り付けられるベース部と、
    前記ベース部にスカート部を介して接続され、前記基板から離れる方向に弾性的に膨出したドーム状膨出部と、
    前記ドーム状膨出部の先端部に設けられ、鍵または押鍵操作に伴い移動する移動部材によって駆動される被駆動部と、
    前記ドーム状膨出部の前記基板に対向する縁部に設けられたドーム可動接点と、
    各々、前記被駆動部から前記基板に近づく方向に弾性的に膨出した膨出部の先端部に設けられた複数の可動接点と、を有し、
    押鍵往行程において、前記ドーム可動接点が、それに対応して前記基板に配設された固定接点に対して当接すると共に、前記複数の可動接点が、それら各々に対応して前記基板に配設された固定接点に対して各々当接することで、押鍵状態が検出されるように構成され、
    押鍵往行程において、前記ドーム可動接点及び前記複数の可動接点の、各々に対応する固定接点に対して当接するタイミングは互いに異なっており、
    前記ドーム状膨出部の前記縁部は、前記基板の側からみて、前記複数の可動接点を囲んで且つ前記複数の可動接点の配列方向に沿って長い環状であり、
    前記縁部のうち前記ドーム状膨出部の長手方向における中間部には、前記基板に当接しないような切欠部が形成され
    前記縁部のうち前記ドーム状膨出部の長手方向における中間部には、厚肉部が設けられたことを特徴とする電子鍵盤楽器の鍵スイッチ構造。
  2. 記縁部のうち前記切欠部が形成されている部分は前記縁部のうち他の部分よりも厚い前記厚肉部として形成されていることを特徴とする請求項1記載の電子鍵盤楽器の鍵スイッチ構造。
  3. 前記ドーム状膨出部の前記縁部の前記基板の側から見た形状は、楕円形であることを特徴とする請求項1または2記載の電子鍵盤楽器の鍵スイッチ構造。
  4. 記ドーム可動接点は、前記長手方向において、前記切欠部を挟んで、前記基板の側から見ていずれも円弧状の第1のドーム可動接点及び第2のドーム可動接点の2つに分かれて構成されたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の電子鍵盤楽器の鍵スイッチ構造。
  5. 押鍵往行程において、前記第1のドーム可動接点及び前記第2のドーム可動接点が、それら各々に対応して前記基板に配設された固定接点に対して順に当接するように構成されたことを特徴とする請求項4記載の電子鍵盤楽器の鍵スイッチ構造。
  6. 非押鍵状態における前記第1のドーム可動接点は、前記ドーム状膨出部の短手方向視において、押鍵往行程において最初に当接する部分から前記第2のドーム可動接点の方向に向かうにつれて前記基板からの距離が大きいことを特徴とする請求項5記載の電子鍵盤楽器の鍵スイッチ構造。
  7. 前記複数の可動接点の配列方向は前記鍵の長手方向と同じであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の電子鍵盤楽器の鍵スイッチ構造。
  8. 前記基板に配設される前記各固定接点に接続される配線は、前記基板上における、前記ドーム状膨出部の前記縁部の前記切欠部に対向する部分を通って配設されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の電子鍵盤楽器の鍵スイッチ構造。
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