JP5597115B2 - 硬引き線、ばね、及び硬引き線の製造方法 - Google Patents

硬引き線、ばね、及び硬引き線の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、硬引き線、その硬引き線を利用したばね、及び硬引き線の製造方法に関する。特に、ばね用鋼線に好適で、耐へたり性と疲労強度に優れた硬引き線に関する。
近年、自動車の低燃費化に対応して、自動車のエンジンやトランスミッションの小型・軽量化が進められている。それに伴って、エンジンの弁ばねやトランスミッション用のばねに負荷される応力は年々厳しくなっており、用いられるばね材料にも一層の耐久性(疲労強度)・耐へたり性の向上が求められている。これらのばねには、代表的にはシリコンクロム系のオイルテンパー線(例えば、特許文献1)が用いられている。
一方、このようなオイルテンパー線は、焼入れ・焼き戻し処理を必要とするため、線材の製造過程が煩雑な上、得られた線材がコスト高になる。そのため、オイルテンパー処理をせずに、オイルテンパー線と同等な疲労強度や耐へたり性を得るための技術として硬引き線(例えば、特許文献2)も知られている。この硬引き線では、鋼線の断面において、単位面積当たりにおける所定サイズの炭化物の個数を限定することで、疲労強度と耐へたり性が改善できるとされる。また、このような硬引き線は、熱間圧延時の鋼材の加熱温度を高めて炭化物の溶け込みを促進すると共に、炭化物の析出温度域における鋼材の冷却速度を速くし、さらにパテンティング時の鋼材の加熱温度(オーステナイト化温度)を880〜950℃といった比較的高めに制御することによって炭化物の析出を低減することで得られるとされる。
特開2008-266725号公報 特開2004-2994号公報
しかし、上記の硬引き線では炭化物の母相への溶かし込みに重点を置いており、その必要上、圧延時やパテンティング時の加熱温度が高く、その加熱温度での保持時間も長くなっている。そのため、上記硬引き線と同等以上の特性を備え、より一層生産性に優れる硬引き線が要望されている。
本発明は、上記の事情にかんがみてなされたもので、その目的の一つは、オイルテンパー線と遜色ない耐へたり性や疲労強度を有する硬引き線及びその製造方法を提供することにある。また、本発明の他の目的は、前記硬引き線を利用したばねを提供することにある。
本発明者らは、硬引き線の耐へたり性や疲労強度の改善について鋭意検討した結果、特許文献2に係る硬引き線が規定していた炭化物の数とは全く異なるパラメータを特定することで、上記目的が達成できるとの知見を得た。従来、硬引き線に未溶解炭化物が残存して破壊の起点になることを避けるため、できるだけ未溶解炭化物を母相に溶かし込むことを考慮し、オーステナイト化温度は高めにしている。特に、Siが1.95質量%超のハイシリコン材では、未溶解炭化物の溶解が困難であるため、一層オーステナイト化温度を高めに設定することが望ましいと考えられていた。しかし、本発明者らの試験・検討結果によれば、オーステナイト化温度を低めに設定し、パテンティング後の伸線加工度を適切に選択して伸線後ブロック径を小さく制御すれば、円相当径が100nm以上の球状炭化物の数がある程度多くても、十分に高い耐へたり性や疲労強度が得られるとの知見を得て、本発明を完成するに至った。
本発明の硬引き線は、質量%で、C:0.50〜0.70%、Si:1.00〜2.50%、Mn:0.50〜1.00%、Cr:0.50〜2.00%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、横断面の伸線後ブロック径の最大値が円相当径で2.0μm以下であることを特徴とする。ここで伸線後ブロック径とは、伸線後の鋼線の横断面組織に対してEBSD法にて結晶方位解析を行い、傾角9°を境界閾値として、この境界で囲まれた領域を一つの伸線後ブロックと定義し、その同一面積の円相当径を伸線後ブロック径とする。
この構成によれば、伸線後ブロック径を特定することで、高い耐へたり性や疲労強度を有する硬引き線とすることができる。
本発明の硬引き線において、さらに質量%で、V:0.05〜0.50%、Co:0.02〜1.00%、Ni:0.02〜1.00%、及びMo:0.05〜0.50%よりなる群から選択された少なくとも一種を含んでもよい。
これらの添加元素を所定量含有することで、主として軟化抵抗を増加させたり、耐食性を向上させたりすることができる。
また、本発明のばねは、上述した本発明の硬引き線を用いて作製したことを特徴とする。
本発明のばねによれば、オイルテンパー線から得たばねと同等以上の耐へたり性と疲労強度を実現することができる。
一方、本発明の硬引き線の製造方法は、次の工程を含むことを特徴とする。
・準備工程:質量%で、C:0.50〜0.70%、Si:1.00〜2.50%、Mn:0.50〜1.00%、Cr:0.50〜2.00%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼材を用意する。
・パテンティング工程:次の条件で上記鋼材をパテンティングする。
オーステナイト化するための加熱温度:860℃以下
前記加熱温度で実質的に均一に保持する保持時間:60秒以下
・伸線工程:パテンティング工程で得たパテンティング材に、減面率80〜95%の伸線加工を施す。
この製造方法によれば、パテンティング工程において、鋼材の加熱温度を低くし、伸線工程において、パテンティング材に施す伸線加工の減面率を高くすることで、伸線後ブロック径の小さな組織を有する硬引き線を得ることができる。特に、パテンティング時の加熱温度を低く、保持時間を短くしているため、効率的に硬引き線を製造することができる。
本発明の硬引き線およびばねは、高い耐へたり性や疲労強度を有する。
また、本発明の硬引き線の製造方法によれば、オイルテンパー処理を行うことなく、オイルテンパー線と同等以上の耐へたり性や疲労強度を有する硬引き線を得ることができる。
以下、本発明の実施の形態を説明する。まず、硬引き線の構成について説明し、その後、硬引き線の製造方法及びばねについて順次説明する。なお、化学成分の含有量は、全て質量%で示している。
〔硬引き線〕
{化学成分}
(C:0.50〜0.70%)
Cは鋼の引張強さを決定する重要な元素であり、その含有量を0.50%以上とすることで十分な強度が得られやすい。また、Cの含有量を0.70%以下とすることで、硬引き線を伸線する際の加工性が低下したり、硬引き線の疵感受性が高くなり、疲労限が低下することを抑制している。
(Si:1.00-2.50%)
Siは溶解精錬時に脱酸剤として使用される。また、Siはフェライト中に固溶して耐熱性を向上させ、硬引き線のばね加工後の歪取り焼鈍や窒化処理などの熱処理による線内部の硬度低下を防ぐ効果がある。耐熱性を保持するためには1.00%以上が必要であり、靭性を低下させないために2.50%以下とする必要がある。特に、Siの含有量が1.5%以上、さらには1.95%超であれば、一層耐熱性が高く高強度の硬引き線を得やすい。
(Mn:0.50-1.00%)
MnはSiと同様に溶解精錬時の脱酸剤として使用される。そのため、脱酸剤に必要な添加量として下限を0.50%とする。また、上限を1.00%とすることで、パテンティング時にマルテンサイトが生成し難く、伸線時の断線の発生原因を低減できる。より好ましいMnの含有量は、下限が0.55%、上限が0.80%である。
(Cr:0.50〜2.00%)
Crはパーライトラメラを微細にし、熱処理(パテンティング)後や、伸線加工後の強度を向上させる。また、軟化抵抗を増加させるため、ばね加工後の歪取り焼鈍や窒化処理などの熱処理時の軟化防止に有効である。これらの効果が十分に得られるように、Crの含有量の下限を0.50%としている。また、上限を2.00%とすることで、パテンティング時にマルテンサイトが生成し難く、伸線時の断線の発生原因を抑制すると共に、靭性の低下を防止する。より好ましいCrの含有量は、下限が0.70%、上限が1.50%である。
(V:0.05〜0.50%)
Vは炭化物を形成し、硬引き線の軟化抵抗を増加させる効果がある。硬引き線をばね加工した後の歪取り焼鈍や窒化処理などの熱処理によるばねの軟化防止に有効である。下限を0.05%とすることで、上記の効果が得られやすく、上限を0.50%とすることで、靭性を確保できる。より好ましいVの含有量は、下限が0.05%、上限が0.20%である。
(Co:0.02-1.00%)
Coは鋼に少量含有させることにより耐熱性を向上させる効果があり、硬引き線をばね加工した後の歪取り焼鈍や窒化処理などの熱処理によるばねの軟化防止に効果がある。この効果を得られやすくするために下限を0.02%とし、上限を1.00%とすることで、上記の効果のさらなる向上が期待できないような過剰なCoの添加を抑制する。より好ましいCoの含有量は、下限が0.05%、上限が0.50%である。
(Ni:0.10〜1.00%)
Niは、耐食性及び靭性を向上させる効果がある。下限を0.10%とすることで、前記の効果を得られやすくし、上限を1.00%とすることで、材料コストを低減し、靭性のさらなる向上の効果が得られないような過剰なNiの添加を抑制する。より好ましいNiの含有量は、下限が0.10%、上限が0.50%である。
(Mo:0.05-0.50%)
Moは炭化物を形成し、硬引き線の軟化抵抗を増加させる効果がある。硬引き線をばね加工した後の歪取り焼鈍や窒化処理などの熱処理によるばねの軟化防止に有効である。下限を0.05%とすることで、上記の効果が得られやすく、上限を0.50%とすることで、靭性を確保できる。より好ましいMoの含有量は、下限が0.05%、上限が0.25%である。
{伸線後のブロック径}
硬引き線の疲労破壊は、外部から加えられる繰り返し応力によって局所的・集中的なすべり変形が生じ、歪が蓄積されることによって生じる。伸線後ブロック粒界は、局所的なすべり変形を抑制する効果がある。硬引き線の横断面の伸線後ブロック径が2.0μm以下であれば、伸線後ブロック粒界が十分に存在し、高い耐久性のばねが得られる。特に、伸線後ブロック径を2.0μm以下とするための条件及び伸線後ブロック径の測定方法については、後述する。
{降伏応力}
硬引き線の耐へたり性を向上させるためには、降伏応力を向上させることが有効である。一般に降伏応力は結晶粒の微細化、固溶強化、析出強化により向上する。本発明では、ブロック径を微細化することで、降伏応力を向上させ、高い耐へたり性を有する硬引き線が得られる。
{線径}
本発明の硬引き線の線径は、例えば6.0mm以下が挙げられる。より細径の線径としては、2.0mm以下、さらには1.5mm以下、特に1.2mm以下が挙げられる。
{球状炭化物}
従来から、パテンティング時に粗大な球状炭化物が残存すると、伸線後においてもマトリックス(フェライト相)の強度を低下させる要因となり、硬引き線の耐久性が低下すると考えられている。そのため、例えば特許文献2では、円相当径で100nm(0.1μm)以上の球状炭化物が5個/100μm2以下であれば、高い耐へたり性と疲労強度が得られるとされる。しかし、本発明の硬引き線によれば、伸線後ブロック径を小さく制御することで、上記球状炭化物の数にほぼ関係なく十分な耐へたり性と疲労強度が得られる。具体的には、硬引き線の縦断面において、円相当径が100nm以上の球状炭化物が5個/100μm2以下の場合はもちろん、この個数が5個超、特に10個以上存在しても、十分な耐へたり性と疲労強度が得られる。
〔硬引き線の製造方法〕
上記の硬引き線は、例えば、以下の準備工程、パテンティング工程、伸線工程を経ることで得られる。
{準備工程}
準備工程は、上述した化学成分の鋼材を用意する工程である。具体例としては、溶製材を圧延して、得られた圧延材を上記鋼材として用意する。
{パテンティング工程}
パテンティング工程では、準備工程で用意した鋼材を加熱して一旦オーステナイト化し、これを恒温変態させてパーライト組織にする。好適なオーステナイト化条件と恒温変態条件の各々は、次の通りである。
(オーステナイト化条件)
パテンティング時にオーステナイト化するための加熱温度(オーステナイト化温度)は、A3変態点以上で860℃以下とする。この加熱温度は、高いと伸線後ブロック径が粗大化する傾向にあるため、低い方が好ましい。このオーステナイト化温度は、ハイシリコン材であっても上述の低い温度で構わない。但し、A3変態点以上であっても加熱温度が低すぎると、かえって疲労強度が低下する傾向にあり、さらに場合によっては十分に鋼材をオーステナイト化できなかったりするため、下限は800℃程度とすることが好ましい。耐へたり性と疲労強度の両立の観点から、好ましいオーステナイト化温度は820〜840℃程度である。
また、オーステナイト化温度での保持時間は、オーステナイト粒が粗大化しすぎない程度に短いことが好ましい。具体的には、この保持時間は60秒以下程度が好ましい。この程度の保持時間であれば、特にオーステナイト化が完了した後の保持時間を短くでき、オーステナイト粒の粗大化を抑制し易い。また、A3変態点を超えてから恒温変態温度への冷却開始までの総保持時間は、鋼材のオーステナイト化が十分にできる範囲で短いことが好ましい。
(恒温変態条件)
恒温変態温度は、630℃以下が好ましい。この変態温度が低いほど伸線後ブロック径は小さくなる傾向にある。但し、この変態温度が低すぎるとマルテンサイトが生成する場合があるため、下限は580℃程度とすることが好ましい。
恒温変態温度での保持時間は、熱処理材の線径などにもよるが、十分に線材の内部までパーライトに変態できる程度の保持時間とする。具体的には、この保持時間は、10〜240秒程度が好ましい。
{伸線工程}
伸線工程では、パテンティング工程で得られたパテンティング材に伸線加工(仕上げ伸線)を施して伸線材とする。この伸線加工は、伸線後ブロック径を小さくするために、80%以上の加工度(減面率)で行う。この加工度は、好ましくは83%以上、より好ましくは86%以上である。実用的な伸線加工を考慮すれば、この加工度の上限は95%程度である。この伸線加工は、冷間にて行うことができる。特に、常温にて伸線を行えば、伸線対象の線材を加熱する必要がなく好適である。
{その他}
さらに、以下に述べる各工程の一つ以上を行うことが好ましい。
(皮剥ぎ)
皮剥ぎは、圧延時に圧延材の表面に生じた脱炭層を除去する。この皮剥ぎは、例えば皮剥ぎダイスを用いて行えばよい。皮剥ぎする深さは、200〜500μm程度が好適である。下限を下回ると十分に脱炭層を除去できず、上限を超えると線材の無駄が増加する。
(焼鈍)
この焼鈍は、皮剥ぎによって線材の表層に生成したマルテンサイトをなます。焼鈍の好ましい温度は550〜650℃である。また、好ましい焼鈍時間は120〜240分である。
(下引き伸線)
圧延後、パテンティング前には、下引き伸線を行ってもよい。特に、最終製品の線径が細い場合(例えば5.0mm以下程度)は、下引き伸線を行うことで仕上げ伸線の伸線加工度を調整し易くできる。
[ばね]
一方、本発明のばねは、本発明の硬引き線をばね加工することで得られる。ばね加工後に、公知の条件にて歪取り焼鈍を行ったり、ショットピーニングを行ってばねの表層に圧縮残留応力を付与したり、窒化処理を行ってばねの表層に窒化層を生成しても良い。
表1に示す化学成分の鋼を真空溶解炉で溶製し、熱間鍛造、熱間圧延によりφ6.5mmの線材とした。次に、この圧延材に、皮剥ぎ、焼鈍、下引き伸線を順に行ってφ3.7mmの下引き線材とした。皮剥ぎは皮剥ぎダイスにより圧延材の表面を厚さ300μm分除去した。皮剥ぎ材に対する焼鈍は600℃×120分とした。その後、この下引き線材にパテンティング、仕上げ伸線を順に行うことによってφ1.4mmの硬引き線を得た。パテンティング条件は、オーステナイト化温度860℃、同温度の保持時間60秒、恒温変態温度(鉛温度)630℃、同変態温度の保持時間60秒とした。この仕上げ伸線の減面率は約85.7%である。
Figure 0005597115
次に、得られた硬引き線の伸線後ブロック径を測定した。具体的には、硬引き線の横断面組織における8μm×8μmの領域に対して、EBSD(Electron Back Scattering Diffraction Pattern)法を用いて結晶方位解析を行い、伸線後ブロックのブロック径の分布を求めた。伸線後ブロック径の測定に際して、傾角9°を境界閾値として、この境界で囲まれた領域を一つの伸線後ブロックと定義し、その同一面積の円相当径を伸線後ブロック径として算出した。そして、その伸線後ブロック径の最大値を求めた。
次に、得られた硬引き線に400℃×20分の低温焼鈍を施し、この低温焼鈍後の硬引き線に引張試験を行って、降伏応力を測定した。降伏応力は耐へたり性の評価基準であり、この値が大きいほど耐へたり性に優れる。
さらに、上記低温焼鈍後の硬引き線に疲労試験(ハンタ−式回転曲げ疲労試験:1×107回)を行って疲労限を調べた。
そして、得られた硬引き線を試料として耐へたり性も調べた。具体的には、硬引き線をコの字型に加工した後、400℃の雰囲気加熱炉に20分保持し冷却した。得られた試料に、室温で1000MPaのせん断応力が負荷されるようにねじりを加え、このねじりを保持した状態で120℃の雰囲気加熱炉に24時間保持した後、残留したせん断歪み(へたり量)を測定した。このへたり量の値は、小さい方が耐へたり性に優れることを示す。なお、上記120℃×24時間、負荷有り、との条件は、ばねの実際の使用環境を模擬した条件である。
各試験結果を表2に示す。
Figure 0005597115
表2に示すように、発明鋼A〜Hを用いた硬引き線は、伸線後ブロック径が2.0μm以下であり、高い降伏応力と疲労限を示した。特に、V、Co、Mo、Niの少なくとも一種を含む発明鋼A〜D、G、Hを用いた硬引き線は、降伏応力、疲労限共に高い値となっている。一方、比較鋼I、Jを用いた硬引き線は、伸線後ブロック径が2.0μm超であり、降伏応力・疲労限共に低い結果となった。
なお、硬引き線の断面における球状炭化物の数も測定したところ、試料A〜Hの中には、単位面積当たりに存在する円相当径100nm以上の球状炭化物の個数が5個以上の試料があった。この炭化物の数の測定は、硬引き線の縦断面を得て、その縦断面をSEMで1万倍の倍率で撮影し、得られた画像を画像処理ソフトImageJにて画像処理して、100μm2当たりに存在する円相当径100nm以上の球状炭化物の個数を算出することで行った。
次に、「実施例1」の「発明鋼C」を用いて、パテンティング時のオーステナイト化温度を800〜950℃まで変化させて硬引き線を得た。他の製造条件は「実施例1」と同様である。
そして、得られた硬引き線の伸線後ブロック径、低温焼鈍を施した硬引き線の降伏応力、疲労限及び耐へたり性も測定した。低温焼鈍条件、並びに伸線後ブロック径、降伏応力、疲労限及び耐へたり性の測定条件は「実施例1」と同様である。その結果を表3に示す。
Figure 0005597115
表3に示すように、オーステナイト化温度が低いほど伸線後ブロック径が小さくなることがわかる。具体的には、オーステナイト化温度を860℃以下とすることで、伸線後ブロック径を2μm以下とできる。また、伸線後ブロック径が2μm以下の試料は、同ブロック径が2μm超の試料に比べて、降伏応力、疲労限共に優れることがわかる。さらに、伸線後ブロック径が小さくなるほど降伏応力が大きくなり、耐へたり性が向上する傾向にあるが、疲労限はオーステナイト化温度が820℃前後、伸線後ブロック径が1.0μm前後においてピークを有することがわかる。
なお、硬引き線の球状炭化物の数も「実施例1」と同様に測定したところ、単位面積当たりに存在する円相当径100nm以上の球状炭化物の個数は、オーステナイト化温度が低いほど多い傾向にあった。さらに、オーステナイト化温度の保持時間を変えて本例と同様に得られた試料についても球状炭化物の測定を行ったところ、オーステナイト化温度の保持時間が短いほど球状炭化物の個数が多い傾向にあった。また、伸線後ブロック径が2μm以下の試料の中には、円相当径100nm以上の球状炭化物の個数が5個以上の試料があり、さらには10個以上の試料もあった。
本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、適宜変更を加えることができる。
本発明の硬引き線は、自動車用の各種ばね、より具体的には、エンジンの弁ばね、クラッチ用のばねなどに好適に利用することができる。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.50〜0.70%、Si:1.00〜2.50%、Mn:0.50〜1.00%、Cr:0.50〜2.00%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、
    横断面の伸線後ブロック径の最大値が円相当径で2.0μm以下であることを特徴とする硬引き線。
  2. さらに質量%で、V:0.05〜0.50%、Co:0.02〜1.00%、Ni:0.02〜1.00%、及びMo:0.05〜0.50%よりなる群から選択された少なくとも一種を含むことを特徴とする請求項1に記載の硬引き線。
  3. 請求項1又は2に記載の硬引き線を用いて作製したことを特徴とするばね。
  4. 質量%で、C:0.50〜0.70%、Si:1.00〜2.50%、Mn:0.50〜1.00%、Cr:0.50〜2.00%を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる鋼材を用意する準備工程と、
    前記鋼材を次の条件でパテンティングするパテンティング工程と、
    オーステナイト化するための加熱温度:860℃以下
    前記加熱温度で実質的に均一に保持する保持時間:60秒以下
    前記パテンティング工程で得たパテンティング材に、減面率80〜95%の伸線加工を施す伸線工程とを含み、横断面の伸線後ブロック径の最大値が円相当径で2.0μm以下である硬引き線を製造することを特徴とする硬引き線の製造方法。
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