JP5591606B2 - 二酸化炭素の還元,固定方法 - Google Patents

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Description

本発明は、二酸化炭素の還元,固定方法に関する。すなわち二酸化炭素を、例えば蟻酸,酢酸,メタノール,エタノール等の有用物質に、変換して有効利用する、二酸化炭素の還元,固定方法に関する。
《技術的背景》
二酸化炭素は、周知のように、炭素,炭素化合物,有機化合物の燃焼のほか、生物の呼吸,腐敗,その他各種の酸化反応によって発生する。
そして、石油,石炭等の化石燃料の消費に伴い、大気中への排出,蓄積量が近年急増しており、温室効果ガスとして地球温暖化要因とされ、その対策が急務となっている。
このような二酸化炭素対策としては、排出規制策,隔離策(地中貯留,海洋隔離),有効利用策,等が代表的であり、それぞれ、各種の技術が研究,開発,実施されつつある。
上記有効利用策の従来技術としては、例えば、次の特許文献1に示されたものが挙げられる。
特開2006−150232号公報
さて、有効利用策の従来技術については、次の課題が指摘されていた。有効利用策では、温室効果ガスとして排出される二酸化炭素を、削減しつつ他の有用物質に変換して有効利用するが、その技術は、まだ研究段階に留まっている。
すなわち、石炭火力発電所,工場,その他で大量発生,大量排出される二酸化炭素を、化学的,物理的方法により、削減しつつ他の有用物質へと変換,固定化せしめる有効利用策に関しては、種々の検討,研究がなされている。例えば、触媒を用いて還元反応させる技術が、種々報告されている。
しかしながら、大規模処理,大容量処理用の有効利用策は、未だ開発,実用化段階には達していない。特に、処理が確実性を欠き安定しないと共に、高温高圧のもとエネルギー消費量が過大となる、等々の難点が指摘されていた。
本発明の二酸化炭素の還元,固定方法は、このような実情に鑑み、上記従来技術の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、二酸化炭素が削減されると共に、第2に、二酸化炭素を他の有用物質に変換して、有効利用でき、第3に、しかもこれらが簡単容易に、コスト面にも優れて実現される、二酸化炭素の還元,固定方法を提案することを、目的とする。
《請求項について》
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、特許請求の範囲に記載したように、次のとおりである。
請求項1については、次のとおり。
この二酸化炭素の還元,固定方法は、水溶液中に溶存する二酸化炭素を還元,固定する。そしてまず、次の酸化剤生成工程と還元剤生成工程と還元工程とを、有している。
該酸化剤生成工程では、フェントン法に基づきOHラジカル(・OH)が生成され、該還元剤生成工程では、水分子が該OHラジカルにて酸化分解され、もって、発生期の水素(H+e)が生成される。
該還元工程では、該二酸化炭素について、その一方のカルボニル基(C=O)が分極してカチオン化した炭素原子(C)に対し、該発生期の水素に基づき生成された水素アニオン(H+2e)が、求核剤となって付加反応し、又、アニオン化した酸素原子(O)に対し、プロトン(H)が求電子剤となって付加反応する。もって、蟻酸(H−COOH)が生成される。
そして、更なる還元工程を有しており、この還元工程では、前述により生成された該蟻酸について、前述と同様な付加反応が進行し、もって、ホルムアルデヒド(H−CHO)、そしてメタノール(CH−OH)が生成される。
そして更に、メチル基遊離工程と次の還元工程とを、有しており、該メチル基遊離工程では、前述により生成された該メタノールが、該OHラジカルにて酸化分解され、もって、メチル基(・CH)が生成される。
この還元工程では、該二酸化炭素について、該メチル基と該発生期の水素とに基づき生成されたメチル・アニオン(・CH+e)が、求核剤となり、プロトン(H)が求電子剤となって前述に準じた付加反応が進行し、もって、酢酸(CH−COOH)が生成される。
更に事後の還元工程では、該酢酸について、該水素アニオンが求核剤となった場合は、プロトンを求電子剤として前述に準じた付加反応が進行し、もって、アセトアルデヒド(CH−CHO)が生成される。
生成された該アセトアルデヒドについて、該水素アニオンが求核剤となった場合は、プロトンを求電子剤として前述に準じた付加反応が進行し、もって、エタノール(CH−CH−OH)が生成される。
これに対し、事後の還元工程において、該酢酸について、該メチル・アニオンが求核剤となった場合は、プロトンを求電子剤として、前述に準じた付加反応が進行し、もってアセトン(CH−CO−CH)が生成される。
そして、生成された該アセトンについて、該水素アニオンが求核剤となった場合は、プロトンを求電子剤として前述に準じた反応が進行し、もってイソプロピルアルコール((CHCH−OH)が生成される。
これに対し、生成された該アセトンについて、該メチル・アニオンが求核剤となった場合は、プロトンを求電子剤として前述に準じた反応が進行し、もって第3ブチルアルコール((CH)C−OH)が生成されること、を特徴とする。
請求項2については、次のとおり。
該二酸化炭素は、該水溶液中に飽和状態で溶存する。又、該水溶液は、常温常圧下に置かれると共に、求電子剤としてのプロトンが多数存在すべく、必要に応じ硫酸やカセイソーダが添加されて弱酸性に調整される一方で、還元反応促進のため、必要に応じ次亜燐酸化合物や磁鉄鉱等の還元剤が添加されること、を特徴とする。
《作用等について》
本発明に係る二酸化炭素の還元,固定方法は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)フェントン法では、二酸化炭素溶存水がフェントン処理槽に供給される。
(2)そして、まずOHラジカルが生成され、水分子が酸化分解されて、発生期の水素が還元剤として生成される。
(3)なお、このようなフェントン法に対し、光触媒担持マイクロリアクターを利用する光酸化法では、二酸化炭素溶存水がマイクロ流路に供給される。そして、光触媒への紫外線照射や水分子のラジカル分裂に基づき、OHラジカルが生成され、水分子が酸化分解されて、発生期の水素が還元剤として生成される。
なお、この光酸化法は、本発明には属さない参考例である。
(4)それから、二酸化炭素の一方のカルボニル基が分極してカチオン化した炭素原子に対し、発生期の水素に基づき生成された水素アニオンが、求核剤となって付加反応する。又、アニオン化した酸素原子に対し、プロトンが、求電子剤となって付加反応する。もって、まず蟻酸が生成される。
(5)そして、前述と同様な付加反応が更に進行して、まずホルムアルデヒド、そしてメタノールが生成される。
(6)ここで、メタノールがOHラジカルにて酸化分解されて、メチル基が生成,遊離される。そして二酸化炭素に対し、メチル基と発生期の水素とに基づいて生成されたメチル・アニオンが、求核剤となり、プロトンが求電子剤となって、前述に準じた付加反応により、酢酸が生成される。
(7)しかる後、水素アニオン又はメチル・アニオンが求核剤となり、プロトンが求電子剤となって、前述に準じた付加反応が進行して行く。
もって、アセトアルデヒド,エタノール,アセトン,イソプロピルアルコール,第3ブチルアルコール等の生成へと進む。
(8)以上のように本発明では、二酸化炭素を蟻酸,その他の有機化合物へと、遂時的,連鎖的に確実に固定化可能である。
(9)又、本発明では、二酸化炭素を蟻酸,ホルムアルデヒド,メタノール,酢酸,アセトアルデヒド,エタノール,アセトン,イソプロピルアルコール,第3ブチルアルコール等、利用価値の高い有機化合物,有用物質へと変換可能である。
(10)更に本発明では、フェントン法を利用した簡単な工程により、所定の求核剤や求電子剤を得て、安定的に二酸化炭素の還元,固定が進行する。代表的には、常温常圧下で処理が進行する。
しかもフェントン法では、2価の鉄イオン,3価の鉄イオン間での電子の放出,捕捉により、発生期の水素の水素分子化も抑制され、この面からも処理がスムーズに進行する。
《第1の効果》
第1に、二酸化炭素が削減される。すなわち、本発明の二酸化炭素の還元,固定方法では、水素アニオンやメチル・アニオン等を求核剤と、プロトンを求電子剤とすることにより、二酸化炭素を、付加反応,還元反応せしめる。
活性源を求核剤とする構造に基づき、二酸化炭素を蟻酸,メタノール,酢酸,各種アルコール等の有機化合物に変換する。
このように本発明では、温室効果ガスとなり地球温暖化要因される二酸化炭素を、確実に他の物質へと固定化する。石炭火力発電所,工場,その他で大量排出される二酸化炭素を、確実に固定化処理可能である。
《第2の効果》
第2に、二酸化炭素を他の有用物質に変換して、有効利用することができる。すなわち、本発明の二酸化炭素の還元,固定方法では、活性源を求核剤とする構造に基づき、二酸化炭素を、蟻酸,ホルムアルデヒド,メタノール,酢酸,アセトアルデヒド,エタノール,アセトン,イソプロピルアルコール,第3ブチルアルコール等の有用物質に、変換,固定化する。
このように本発明では、二酸化炭素を資源化し、工業的価値の高い有機化合物,炭素含有資源,有用物質へと変換して、有効利用可能である。例えば、蟻酸や酢酸は、工業上重要な原料として知られており、メタノールやエタノールは、最近需要ニーズが高まっている。
《第3の効果》
第3に、しかもこれらは簡単容易に、コスト面にも優れて実現される。すなわち、本発明の二酸化炭素の還元,固定方法では、フェントン処理装置を利用して、求核剤や求電子剤を生成する。そして、活性源を求核剤とする構造に基づき、二酸化炭素を付加反応,還元反応させる。
このようにフェントン法を利用した簡単な工程により、安定的に処理が進行し、代表的には常温常圧下で処理が進行する。しかもフェントン法では、2価の鉄イオンと3価の鉄イオンにより、発生期の水素の水素分子化が抑制されるので、この面からも処理が無駄なくスムーズに進行する。
もって本発明は、前述したこの種従来技術に比し、有用物質への変換に要するエネルギー消費量も極めて少なく、イニシャルコストやランニングコスト等のコスト面に優れており、二酸化炭素の大規模処理,大容量処理へとスケールアップ可能である。
このように、この種従来技術に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
本発明に係る二酸化炭素の還元,固定方法について、発明を実施するための形態の説明に供し、構成ブロック図である。 同発明を実施するための形態の説明に供し、工程ブロック図であり、メタノール生成工程までを示す。 本発明を実施するための形態の説明に供し、工程ブロック図であり、図2以降の工程を示す。 本発明には属さない参考例の説明に供し、光触媒担持マイクロリアクターを示す。そして(1)図は、要部を拡大した断面説明図、(2)図は、分解した斜視説明図である。
以下、本発明を実施するための形態について、詳細に説明する。
すなわち、本発明の二酸化炭素の還元,固定方法について、まず、前提となるOHラジカル生成工程,発生期の水素の生成工程等について、説明する。
それから、蟻酸生成工程,ホルムアルデヒド生成工程,メタノール生成工程について説明する。
次に、メチル基遊離工程,酢酸生成工程,アセトアルデヒド生成工程,エタノール生成工程,アセトン生成工程,イソプロピルアルコール生成工程,第3ブチルアルコール生成工程、等の順に説明する。それから、表(データテーブル),作用等,実施例等について、説明する。
《OHラジカル生成工程:その1》
まず図1を参照して、後述する各工程の前提となるフェントン法に基づくOHラジカル生成工程(酸化剤生成工程)について、説明する。
本発明の二酸化炭素の還元,固定方法では、まず、活性化学種のOHラジカルを酸化剤として生成し、水分子を酸化分解して、発生期の水素を生成する。そして、水素アニオンとプロトンとを連鎖生成して、二酸化炭素を還元,固定する。
OHラジカルの生成法としては、フェントン法が代表的であるので、フェントン法に基づき以下説明する。図示したフェントン処理装置1は、原水槽2,フェントン処理槽3,回収槽4を順に備えており、フェントン処理槽3には、過酸化水素添加手段5,鉄イオン添加手段6,pH調整手段7,還元剤添加手段8、等が付設されている。
原水槽2には、常時連続的に水(HO)が溶媒として導入されると共に、二酸化炭素(CO)が溶質として溶存すべく注入され、もって二酸化炭素溶存水が、原水として形成される。炭酸イオン水ではなく炭酸ガス入り水溶液つまり炭酸水が、原水となる。
代表的には、二酸化炭素が飽和状態で溶存すると共に、常温常圧下に置かれる。すなわち二酸化炭素の注入は、気体である二酸化炭素の溶解度を上げるべく、常温又は常温以下で1気圧又は1気圧以上(ヘンリーの法則)の分圧下で行われる。
フェントン処理槽3は、pH調整手段7にて、硫酸(HSO)やカセイソーダ(NaOH)が必要に応じ添加され、もって常時pH3〜5程度の弱酸性に調整されている。そして、フェントン処理槽3に供給された原水である二酸化炭素溶存水に対し、反応当初において、過酸化水素添加手段5から過酸化水素(H)の水溶液が、フェントン試薬として全量添加される。
それから、過酸化水素が添加されたフェントン処理槽3に対し、間欠的に複数サイクル繰り返して、鉄イオン添加手段6から2価の鉄イオン(Fe2+)溶液が、フェントン試薬として分割添加される。
すなわち、液中で2価の鉄イオンを生じる物質、例えば硫酸第一鉄7水和物(FeSO・7HO)が、このような鉄塩として代表的に使用されるが、その他の無水塩や含水塩、例えば塩化鉄(FeCl)やその水和物も使用可能である。なお、鉄イオン添加手段6から添加される鉄イオンとしては、2価の鉄イオン(Fe2+)が代表的であるが、これに代え3価の鉄イオン(Fe3+)も使用可能である。
フェントン処理槽3内では、供給された原水について、添加された過酸化水素と鉄イオンにて、まずOHラジカル(・OH)が、酸化剤として生成される。OHラジカルつまりヒドロキシラジカルは、周知のごとく強力な電子奪取力,酸化力,分解力を有すると共に、ラジカルで反応性に富んでおり、反応が激しいだけに存在時間が瞬間的であり、寿命の短い化学種でもある。
OHラジカル生成工程:その1については、以上のとおり。
《OHラジカル生成工程:その2》
次に、このようなフェントン法に基づくOHラジカル生成工程における、OHラジカル生成反応について、説明しておく。
第1に、フェントン処理槽3内では、まず、添加された過酸化水素が、添加された鉄イオンにて還元されて、OHラジカルが生成される。次の化1,化2の反応式を参照。化1と化2の反応式を合成すると、化3の反応式となる。これがフェントン主反応である。
Figure 0005591606
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第2に、上記第1のようにOHラジカルが生成されると共に、上記化2の反応式の過酸化水素の還元反応にて生成された水酸化イオン(OH)が、上記化1の反応式の2価の鉄イオンの酸化反応にて生成された3価の鉄イオンにて酸化されて、OHラジカルが生成される。次の化4,化5の反応式を参照。このように、付随的,副次的,連鎖的な、OHラジカル生成も可能である。
Figure 0005591606
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第3に、更に前記化3(化1,化2)や上記化4,化5の反応式にて生成されたOHラジカルが、溶媒の水と反応して、新たなOHラジカルと水とを生成する反応も、付随的,副次的,連鎖的に可能である。次の化6,化7の反応式を参照。
Figure 0005591606
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第4に、前記化3(化1)の反応式の2価の鉄イオンの酸化反応にて生成される3価の鉄イオンと、過酸化水素とが反応して、新たにOHラジカルを生成する反応も付随的,副次的,連鎖的に繰り返して可能である。次の化8,化9の反応式を参照。
すなわち、原水をpH調整手段7にてアルカリ化し、もって化8の反応式にて、過酸化水素がプロトン(H)を遊離し、3価の鉄イオンが2価の鉄イオンに還元されると共に、酸素分子に電子が付加されているスーパーオキシドアニオン(・O )が生成される。そして化9の反応式により、このスーパーオキシドアニオンが、過酸化水素と反応して、OHラジカルを生成する。
Figure 0005591606
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フェントン法では、このようにフェントン処理槽3において、主反応や各付随的,副次的,連鎖的反応によって、酸化剤であるOHラジカルが生成される。
OHラジカル生成工程:その2については、以上のとおり。
《発生期の水素の生成工程》
次に、次の前提となる発生期の水素の生成工程(還元剤生成工程)について、図2のステップ(1),(2)も参照して、説明する。
この工程では、水分子が前述により生成されたOHラジカルにて酸化分解され、もって発生期の水素が、還元剤として生成される。
すなわち、フェントン処理槽3内では、次の化10の反応式のように、OHラジカルは、水分子(HO)から水素原子を奪って酸化分解し、自身は水に回帰すると共に、酸素分子(O)を発生させつつ、発生期の水素(H+e)(発生期の原子状水素,水素ラジカルとも称される)を、生成する。還元剤として機能する発生期の水素が、生成されて水相に遊離する。
Figure 0005591606
なお、生成された発生期の水素が、水素分子(H)化することは、鉄が触媒的に作用することにより、抑制される。
すなわちフェントン法では、フェントン処理槽3内に、前述したように2価の鉄イオンや3価の鉄イオンが存在する(化1,化5の反応式を参照)。
そして、2価の鉄イオン(Fe2+)の3価の鉄イオン(Fe3+)への酸化時に、電子が放出され、3価の鉄イオンの2価の鉄イオンへの還元時に、電子が捕捉されることに基づき、発生期の水素(H+e)の水素分子(H)化が抑制される。一旦捕捉されていた電子が放出され、もってプロトン(H)と共に、発生期の水素(H+e)そして水素アニオン(H+2e)となって、所期のとおり、二酸化炭素に付加反応するようになる。
発生期の水素の生成工程については、以上のとおり。
《光酸化工程について》
ここで、図4を参照して、光触媒10を利用した光酸化工程について説明しておく。なお、この光酸化工程は、本発明には属さない参考例である。
光触媒10担持マイクロリアクター(MR)9を利用した光酸化工程では、紫外線照射により光触媒10に形成された正孔(hole)が、水分子を酸化しラジカル分裂させることに基づき、発生期の水素(H+e)が、還元剤として生成される。
この光触媒10を担持したマイクロリアクター9を利用した光酸化工程について、更に詳述する。二酸化炭素(CO)が溶質として溶存した水溶液が、原水として原水槽2から、ポンプ11やマイクロチューブ12を経由して、例えば3枚重ねのガラスプレート13製のマイクロリアクター9に形成されたマイクロ流路14に、圧入供給される。もって微細構造のマイクロ流路14内を、層流となって流れる。
これと共に、マイクロ流路14に対しては、紫外線照射手段15から紫外線(光量子hν)が照射される。もって、マイクロ流路14に付着コートされた例えば二酸化チタンよりなる光触媒10は、表面の原子構造の外殻軌道(定常軌道)の電子(e)が、光励起されて励起軌道に移るので、外殻軌道には、電子欠損空孔である正孔(hole)が形成される。次の化11の反応式を参照。
Figure 0005591606
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すると、原水である二酸化炭素溶存水の溶媒である水分子(HO)は、接触する光触媒10の正孔にて電子(e)が引き抜かれ,収奪されて酸化され、もって、プロトン(H)とOHラジカル(・OH)とにラジカル分裂する。上記化12の反応式を参照。
そして、水相に生成された酸化剤であるOHラジカルは、溶媒の水分子を酸化分解し、もって酸素分子(O)を生成,遊離しつつ、還元剤として機能する発生期の水素(H+e)を生成せしめ、自らは水に回帰する。図2のステップ(1),(2)、および上記化13の反応式を参照。化11,12,13の反応式を合成すると、化14の反応式となる。
なお、生成されて水相に遊離された発生期の水素(H+e)は、光触媒10に形成された正孔に一旦吸着されるか、その電子(e)が一旦引き抜かれた後に放電されるので、その水素分子(H)化は抑制され、水相にプロトン(H)が遊離する。
光酸化工程については、以上のとおり。
《蟻酸生成工程》
次に、蟻酸生成工程(還元工程)について、図2のステップ(2),(3),(4)も参照して、説明する。
二酸化炭素は、極めて安定した化学物質ではあるが、電子対を受容できる一種のルイス酸(対電子受容体)としての特徴を持ち、分子としての骨格を保持したまま、求核剤(対電子供給剤)とは容易に反応する。
そこで、この蟻酸生成工程では、二酸化炭素について、その一方のカルボニル基が分極してカチオン化した炭素原子に対し、発生期の水素に基づき生成された活性化学種である水素アニオンが、求核剤となって付加反応する。これと共に、アニオン化した酸素原子に対し、プロトンが、求電子剤となって付加反応する。
これらにより、蟻酸(H−COOH)が生成される。次の化16は、その反応式の構造模式図である。
Figure 0005591606
このような蟻酸生成工程について、更に詳述する。フェントン処理装置1のフェントン処理槽3内において、溶存二酸化炭素(CO)(O=C=O)の(共鳴的に移動する)いずれか一方のカルボニル基(C=O)は、分子中の炭素原子と酸素原子間の電気陰性度(電子を引きつける度合い)の差異に基づき、炭素原子より電気陰性度が強い酸素原子の影響で、分極し電離状態となっている。C=O結合の電子は、酸素原子側に引きつけられることで、結合が強く分極化している(C=O→C−O)。
そして、分極してプラス電荷を帯びカチオン化した炭素原子(カルボカチオン,C)に対し、前述した発生期の水素生成工程又は光酸化工程にて生成,遊離,供給される発生期の水素(H+e)に基づき生成された水素アニオン(H+2e)が、求核剤(求核性を持ち電子対を供給する対電子供給剤)となって、付加反応により化合する。
これと共に、マイナス電荷を帯びアニオン化した酸素原子(O)に対し、上記発生期の水素(H+e)に基づき水素アニオンの残りとして供給されるプロトン(H)や、弱酸性の水溶液中に多数存在するプロトン(H)が、求電子剤(求電子性をもつ対電子受容剤)となって、付加反応により化合する。
このように、発生期の水素は、求核剤としての水素アニオンと、求電子剤としてのプロトンとの供給源となり、両者に連鎖的に弁別されて、分極状態の二酸化炭素に取り付いて反応する。
このようにして、蟻酸(H−COOH)が、遂時的,連鎖的に生成される。蟻酸生成工程については、以上のとおり。
《ホルムアルデヒド生成工程、およびメタノール生成工程》
次に、ホルムアルデヒド生成工程(還元工程)、およびエタノール生成工程(還元工程)について、図2のステップ(4)〜(6)も参照して、説明する。
この工程では、前述により生成された蟻酸について、前述と同様な付加反応が進行し、もって、ホルムアルデヒド(H−CHO)そしてメタノール(メチルアルコール,CH−OH)が生成される。次の化16は、その反応式の構造模式図である。
Figure 0005591606
このようなホルムアルデヒドおよびメタノールの生成工程について、更に詳述する。フェントン処理槽3内又はマイクロ流路14内においては、前述したように、蟻酸が生成される。
そして、生成された蟻酸(H−COOH)も、カルボニル基(C=O)を有しており、カルボニル基は、電気陰性度が強い酸素原子の影響で、分極している(C=O→C−O)。
そして、カチオン化した炭素原子(C)に対し、前述したところに準じ水素アニオン(H+2e)が、求核剤となって付加反応により化合する。これと共に、アニオン化した酸素原子(O)に対し、前述したところに準じプロトン(H)が、求電子剤となって付加反応により化合する。
もって、脱水過程を経て、遂時的,連鎖的にホルムアルデヒド(H−CHO)が生成される。
そして、更に生成されたホルムアルデヒドも、カルボニル基を有し、電気陰性度が強い酸素原子の影響で分極している。
そして、カチオン化した炭素原子に対し、前述したところに準じ水素アニオンが、求核剤となって付加反応,化合する。これと共に、アニオン化した酸素原子に対し、前述したところに準じプロトンが、求電子剤となって付加反応,化合する。このようにして、遂時的,連鎖的にメタノール(CH−OH)が生成される。
すなわち、カチオン化した炭素原子およびアニオン化した酸素原子は、上述した各工程毎にその都度遂時新しく生成されるが、求核剤は一貫して水素アニオンであり、求電子剤も一貫してプロトンであり、連鎖的に生成される発生期の水素から弁別生成される。従って、メタノールの生成で、カルボニル基の生成がなくなるまで連鎖反応が続き、一気にメタノールが生成されると考えられる。
ホルムアルデヒド生成工程およびメタノール生成工程については、以上のとおり。
《メチル基遊離工程》
次に、メチル基遊離工程について、図3のステップ(1),(2)も参照して、説明する。
このメチル基遊離工程では、上述により生成されたメタノールが、OHラジカルにて酸化分解されて、メチル基(・CH)が生成される。次の化17は、その反応式である。
Figure 0005591606
このようなメチル基遊離工程について、更に詳述する。フェントン処理槽3内又はマイクロ流路14においては、前述したようにメタノール(CH−OH)が生成される。
他方、フェントン処理槽3内では、前述によりOHラジカルが生成される(前記化1〜化9の反応式を参照)。マイクロ流路14内でも、前述によりOHラジカルが生成される(前記化12の反応式を参照)。
そこで、前述したOHラジカルによる水分子の酸化分解による発生期の水素生成(前記化10や化13の反応式を参照)に類似した反応が、惹起,進行すると考えられる。
すなわち、OHラジカルによるメタノールの酸化分解により、酸素ガス(1/2O)が生成されると共に、メチル基(・CH)が生成されて、水相に遊離される。
メチル基遊離工程については、以上のとおり。
《酢酸生成工程》
次に、酢酸生成工程(還元工程)について、図3のステップ(3),(4)も参照して、説明する。
この酢酸生成工程では、二酸化炭素について、メチル基と発生期の水素とに基づいて生成されたメチル・アニオンが、求核剤となり、プロトンが求電子剤となって、前述に準じた付加反応が進行する。もって、酢酸(CH−COOH)が生成される。次の化18は、その反応式の構造模式図である。
Figure 0005591606
このような酢酸生成工程について、更に詳述する。フェントン処理槽3内又はマイクロ流路14内においては、前述によりメタノールが生成され、メタノールにはカルボニル基は存在しないが、引き続きカルボニル基を有した二酸化炭素の溶存水が、例えば飽和状態の原水として、引き続き供給され続ける。又、発生期の水素も供給され続ける。そして、前述によりメチル基も生成される。
さて、溶存二酸化炭素(CO)のカルボニル基(C=O)は、電気陰性度が強い酸素原子の影響で、分極している(C=O→C−O)。
そして、カチオン化した炭素原子(C)に対し、生成,遊離されて共存する発生期の水素(H+e)とメチル基(・CH)に基づき生成されたメチル・アニオン(・CH+e)が、求核剤となって付加反応により化合する。これと共に、アニオン化した酸素原子(O)に対し、発生期の水素に基づき供給されるプロトン(H)や弱酸性の水溶液中に多数存在するプロトン(H)が、求電子剤となって付加反応により化合する。
このように、発生期の水素とメチル基とは、求核剤としてのメチル・アニオンと、求電子剤としてのプロトンとに弁別されて、分極状態の二酸化炭素と反応する。
酢酸が遂時的,連鎖的に生成される酢酸生成工程については、以上のとおり。
《アセトアルデヒド,エタノール,アセトン,イソプロピルアルコール,第3ブチルアルコール等の生成工程》
次に、アセトアルデヒド,エタノール,アセトン,イソプロピルアルコール,第3ブチルアルコール等の生成工程(還元工程)について、図3のステップ(4)〜(9)も参照して、説明する。
前述した酢酸生成工程後の還元工程では、水素アニオン又はメチル・アニオンが求核剤となり、プロトンが求電子剤となって、前述に準じた付加反応が進行する。もって、アセトアルデヒド,エタノールや、アセトン,イソプロピルアルコール,第3ブチルアルコール等、各種アルコール類等が、順次生成される可能性が大である。次の化19,20,21,22は、各反応式の構造模式図である。
Figure 0005591606
Figure 0005591606
Figure 0005591606
Figure 0005591606
このような各還元工程について、更に詳述する。フェントン処理槽3内又はマイクロ流路14内においては、前述したように酢酸(CH−COOH)が生成される。
そして、分極によりカチオン化した炭素原子(C)に対し、水素アニオン(H+2e)が求核剤となって付加反応した場合は、脱水過程を経て、アセトアルデヒド(CH−CHO)が生成される。メチルアニオン(・CH+e)が求核剤となって付加反応した場合は、脱水過程を経て、アセトン(CH−CO−CH)が、生成される(化19の反応式を参照)。
生成されたアセトンアルデヒドについて、分極によりカチオン化した炭素原子(C)に対し、水素アニオン(H+2e)が求核剤として付加反応すると、エタノール(エチルアルコール,CH−CH−OH)が生成される(化20の反応式を参照)。
他方、上述により生成されたアセトンについて、分極によりカチオン化した炭素原子(C)に対し、水素アニオン(H+2e)が求核剤として付加反応すると、イソプロピルアルコール(IPA,イソプロパノール,(CHCH−OH)が、生成される(化21の反応式を参照)。
これに対し、メチルアニオン(・CH+e)が求核剤となって付加反応すると、第3ブチルアルコール(t−ブタノール,(CHC−OH)が、生成される(化22の反応式を参照)。
なお、いずれの還元反応に関しても、アニオン化した酸素原子(O)に対しては、プロトン(H)が求電子剤となって、付加反応する。
アセトアルデヒド,エタノール,アセトン,イソプロピルアルコール,第3ブチルアルコール等が、遂時的,連鎖的に生成される生成工程については、以上のとおり。
《表1,表2について》
次に、表1および表2について、説明する。次の表1および表2は、以上説明した還元反応のデータテーブルである。
表1および表2中、通し番号1〜9の各欄において、それぞれ反応式欄中の左辺に対し、その求核剤欄の求核剤と求電子剤欄の求電子剤とが、それぞれ付加反応すると、反応式欄中の右辺(名称欄参照)が生成される。
Figure 0005591606
Figure 0005591606
表1,表2については、以上のとおり。
《表3について》
次に、表3について説明する。上述により生成されたエタノールが、OHラジカルにて酸化分解されて、エチル基(・C)が、次の化23の反応式にて生成,遊離される可能性がある。
その場合は、エチル基と発生期の水素とに基づいて、エチルアニオン(・C+e)が求核剤となる。次の表3は、このような場合についてのデータテーブルである。
Figure 0005591606
Figure 0005591606
まず、表3の見方に関しては、表1,表2に準じる。そして、この表3に示したように、各種アルコール類等の還元,生成反応が考えられる。
すなわち表3中、通し番号10欄で、二酸化炭素について、エチル・アニオンが求核剤となって、プロピオン酸(C−COOH)が生成される。そして更に、水素アニオンが求核剤となることにより、通し番号11欄そして12欄で、プロピオンアルデヒドそしてプロパノールが、順次生成される。
これに対し、プロピオン酸についてエチル・アニオンが求核剤となると、通し番号13欄のように、2−エチルケトンが生成される。そして2−エチルケトンについて、水素アニオンが求核剤となると、通し番号14欄のように、2−エチル−メタノールが生成される。エチル・アニオンが求核剤となると、通し番号15欄のように、3エチル−メタノールが、それぞれ生成されることが考えられる。
表3については、以上のとおり。
《作用等》
本発明の二酸化炭素の還元,固定方法は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
(1)フェントン法のフェントン処理装置1では、二酸化炭素(CO)の溶存水が、原水槽2からフェントン処理槽3に供給される(図1を参照)。
(2)フェントン処理槽3内では、まず、前提となるOHラジカル生成工程(酸化剤生成工程)において、OHラジカル(・OH)が生成される(図1,化1〜化9の反応式を参照)。
それから、次の前提となる発生期の水素生成工程(還元剤生成工程)において、水分子(HO)が、OHラジカルにて酸化分解される。もって、発生期の水素(H+e)が、還元剤として生成される(図1,図2のステップ(1),(2)、および化10の反応式等を参照)。
(3)なお、本発明には属さない参考例である光触媒10担持マイクロリアクター9を利用した光酸化法については、次のとおり。
光酸化法の光酸化工程では、まず、二酸化炭素溶存水が、原水槽2からマイクロ流路14へと供給される。もって光触媒10への紫外線照射、そして水分子のラジカル分裂等に基づき、OHラジカルが生成される。そして水分子が酸化分解されて、発生期の水素(H+e)が、還元剤として生成される(図4,図2のステップ(1),(2)、および化11〜化14の反応式等を参照)。
(4)それから、フェントン処理装置1のフェントン処理槽3内や、光触媒10担持マイクロリアクター9のマイクロ流路14内では、蟻酸生成工程(二酸化炭素の還元工程)において、蟻酸(H−COOH)が生成される(図2のステップ(2)〜(4)、および化15の反応式等を参照)。
すなわち、二酸化炭素(CO)の一方のカルボニル基(C=O)が分極してカチオン化した炭素原子に対し、発生期の水素(H+e)に基づき生成された水素アニオン(H+2e)が、求核剤となって付加反応する。これと共に、アニオン化した酸素原子(O)に対し、プロトン(H)が、求電子剤となって付加反応する。もって、蟻酸が生成される。
(5)フェントン処理槽3内やマイクロ流路14内では、この項目(5)〜以降の項目(7)のように、上述に準じた付加反応が、更に遂時的,連鎖的に、進行して行く可能性が大である。
まず、ホルムアルデヒド生成工程(蟻酸の還元工程)において、ホルムアルデヒド(H−CHO)が生成される。メタノール生成工程(ホルムアルデヒドの還元工程)において、メタノール(CH−OH)が生成される(図2のステップ(4)〜(6)、および化16の反応式を参照)。
(6)さてここで、フェントン処理槽3内やマイクロ流路14内では、上述により生成されたメタノールが、メチル基遊離工程において、OHラジカルにて酸化分解されて、メチル基(・CH)が、生成される工程が介在する(図3のステップ(1),(2)、および化17の反応式を参照)。
それから、酢酸生成工程へと進み、供給され続ける溶存二酸化炭素に対し、メチル基と発生期の水素とに基づいて生成されたメチル・アニオン(・CH+e)が、求核剤となり、プロトン(H)が求電子剤となる。もって、前述に準じた付加反応が進行して行き、酢酸(CH−COOH)が生成される(図3のステップ(2)〜(4)、および化18の反応式を参照)。
(7)酢酸生成工程後、フェントン処理槽3内では、水素アニオン(H+2e),メチル・アニオン(・CH+e),又はエチル・アニオン(・C+e)等が、求核剤となり、プロトン(H)が求電子剤となって、前述に準じた付加反応が進行して行く。
すなわち、アセトアルデヒド(CH−CHO),エタノール(CH−CH−OH),アセトン(CH−CO−CH),イソプロピルアルコール((CHCH−OH),第3ブチルアルコール((CHC−OH)等の生成工程(還元工程)へと、進行して行く(図3のステップ(4)〜(9)、および化19〜22の反応式を参照)。更には、プロピオン酸以下の生成へと進む可能性もある(表3を参照)。
(8)以上のように、本発明の二酸化炭素の還元,固定方法では、フェントン処理装置1を利用して、二酸化炭素を還元する。
フェントン処理槽3において、水素アニオンやメチル・アニオン等を求核剤とし、プロトンを求電子剤とすることにより、二酸化炭素に付加反応し、もって、温室効果ガスとなる二酸化炭素を、蟻酸,ホルムアルデヒド,メタノール,酢酸,アセトアルデヒド,エタノール,アセトン,イソプロピルアルコール,第3ブチルアルコール等の有機化合物へと、遂時的,連鎖的に確実に固定化処理する。
(9)又、本発明の二酸化炭素の還元,固定方法では、二酸化炭素を、蟻酸,ホルムアルデヒド,メタノール,酢酸,アセトアルデヒド,エタノール,アセトン,イソプロピルアルコール,第3ブチルアルコール等、各種アルコール類その他の有機化合物に、還元,固定化する。
そして、これらの有機化合物は、フェントン処理槽3から回収槽4へと回収,貯留された後、分離膜等を利用して分離される。このように本発明は、二酸化炭素を、工業的利用価値の高い有機化合物,有用物質へと、遂時的,連鎖的に変換可能である。
(10)そして、本発明の二酸化炭素の還元,固定方法は、フェントン処理装置1を利用して、水素アニオンやメチル・アニオン等を求核剤とし、プロトンを求電子剤として生成して、二酸化炭素を還元,固定化する。
フェントン法を利用した簡単な工程により、安定的に処理が進行する。代表的には、常温常圧下で処理が進行する。
しかもフェントン法では、2価の鉄イオン,3価の鉄イオン間での電子の放出,捕捉により(前記化1,化5の反応式を参照)、発生期の水素の水素分子化も抑制される。もってこの面からも、水素アニオンを求核剤とした二酸化炭素の固定化処理が、所期のとおり無駄なくスムーズに進行する。
本発明の作用等については、以上のとおり。
次に、本発明の実施例について、説明する。
この実施例では、本発明の二酸化炭素の還元,固定方法に関し、フェントン処理装置1を使用した実験結果について、説明する(図1を参照)。
実験では、二酸化炭素(CO)が飽和状態(500mg/L〜700mg/L)で溶存している原水を、常温常圧下でフェントン処理槽3に供給した。
そして、フェントン法においてOHラジカルの発生源となる過酸化水素(H),触媒となる硫酸第一鉄7水和物(FeSO・7HO),pH調整用の硫酸(HSO)やカセイソーダ(NaOH)等の各薬品を、適宜添加した。pHは約3程度、反応時間は約5分程度であった。
なお本実験では、更に次亜燐酸化合物例えば次亜燐酸ナトリウム(NaHPOO)、又は酸化鉄例えば磁鉄鉱(Fe)等の還元剤も、還元反応促進のため添加した。
このような条件下で実験した所、下記の表4に示した実験結果が得られた。すなわち、対象中に含有されたTOC(全有機体炭素),蟻酸(H−COOH),酢酸(CH−COOH)等の分析項目毎の含有量を、本発明による還元,固定処理前(実験前のサンプル)と、本発明による還元,固定処理後(実験1,実験2,実験3の各サンプル)について、それぞれ計測した。その結果、下記の表4の実験結果が得られた。
なお、各分析項目の計測,分析方法については、次のとおり。
・TOC(全有機体炭素)=TC(全炭素)−IC(無機体炭素)=NPOC(スパージ処理してから測定)。すなわち、このTOCは、NPOC(NonPurgeable Organic Carbon):酸性(2N HCLにてpH2〜pH3)通気(スパージ)処理を行ってから測定し、通常、100mL/min×2分処理で、IC(無機体炭素)を系外の大気へ放出する。pH3以下の酸性試料(酸の種類に関係なく)では、系外に出たIC(CO,HCO ,CO 2−等)を、ほとんど含まない。
・蟻酸および酢酸については、イオンクロマトグラフ+陰イオンガードカラム、サプレッサカラム、陰イオンカラムで、計測した。
Figure 0005591606
表4に示した実験結果により、次の点がデータ的に確認された。すなわち、本発明の二酸化炭素の還元,固定方法を、フェントン処理装置1に適用して処理した実験1,実験2,実験3のサンプルによると、実験前のサンプルの二酸化炭素(無機体炭素)について、蟻酸,酢酸,その他の各種アルコール類等の有機体炭素への還元反応が、進行していることがデータ的に裏付けられた。TOCの値が、350mg/L〜391mg/Lと激増した。
このTOC(全有機体炭素)の値には、蟻酸や酢酸の値が勿論含まれているが、二酸化炭素が還元,固定化された前述した各種アルコール類等も、多く含まれていると判断される。特に、蟻酸に比し還元方向へ進んだ物資である酢酸の生成率の方が高かった点から、前述した還元反応の進展が裏付けられた。
勿論、フェントン処理槽3内では、生成有機化合物間の反応によって、TOCの値が若干増加した可能性も否定できない。又、フェントン処理槽3内では当然、上述した各還元反応(原系から生成系に向かう正反応)と同時に、それぞれ対応する酸化反応(生成系から原系へと向かう逆反応)も進行し、両反応が繰り返られるが、トータル的には所期のとおり、還元反応の方が多く生起され、効率良く進行した認識される。
実施例については、以上のとおり。
1 フェントン処理装置
2 原水槽
3 フェントン処理槽
4 回収槽
5 過酸化水素添加手段
6 鉄イオン添加手段
7 pH調整手段
8 還元剤添加手段
9 マイクロリアクター
10 光触媒
11 ポンプ
12 マイクロチューブ
13 ガラスプレート
14 マイクロ流路
15 紫外線照射手段

Claims (2)

  1. 水溶液中に溶存する二酸化炭素を還元,固定する方法であって、まず、次の酸化剤生成工程と還元剤生成工程と還元工程とを、有しており、
    該酸化剤生成工程では、フェントン法に基づきOHラジカル(・OH)が生成され、該還元剤生成工程では、水分子が該OHラジカルにて酸化分解され、もって、発生期の水素(H+e)が生成され、
    該還元工程では、該二酸化炭素について、その一方のカルボニル基(C=O)が分極してカチオン化した炭素原子(C)に対し、該発生期の水素に基づき生成された水素アニオン(H+2e)が、求核剤となって付加反応し、又、アニオン化した酸素原子(O)に対し、プロトン(H)が求電子剤となって付加反応し、もって、蟻酸(H−COOH)が生成され、
    そして、更なる還元工程を有しており、この還元工程では、前述により生成された該蟻酸について、前述と同様な付加反応が進行し、もって、ホルムアルデヒド(H−CHO)、そしてメタノール(CH−OH)が生成され、
    そして更に、メチル基遊離工程と次の還元工程とを、有しており、該メチル基遊離工程では、前述により生成された該メタノールが、該OHラジカルにて酸化分解され、もって、メチル基(・CH)が生成され、
    この還元工程では、該二酸化炭素について、該メチル基と該発生期の水素とに基づき生成されたメチル・アニオン(・CH+e)が、求核剤となり、プロトン(H)が求電子剤となって前述に準じた付加反応が進行し、もって、酢酸(CH−COOH)が生成され、
    更に事後の還元工程では、該酢酸について、該水素アニオンが求核剤となった場合は、プロトンを求電子剤として前述に準じた付加反応が進行し、もって、アセトアルデヒド(CH−CHO)が生成され、
    生成された該アセトアルデヒドについて、該水素アニオンが求核剤となった場合は、プロトンを求電子剤として前述に準じた付加反応が進行し、もって、エタノール(CH−CH−OH)が生成されるが、
    これに対し、事後の還元工程において、該酢酸について、該メチル・アニオンが求核剤となった場合は、プロトンを求電子剤として前述に準じた付加反応が進行し、もってアセトン(CH−CO−CH)が生成され、
    そして、生成された該アセトンについて、該水素アニオンが求核剤となった場合は、プロトンを求電子剤として前述に準じた反応が進行し、もってイソプロピルアルコール((CHCH−OH)が生成されるのに対し、
    生成された該アセトンについて、該メチル・アニオンが求核剤となった場合は、プロトンを求電子剤として前述に準じた反応が進行し、もって第3ブチルアルコール((CH)C−OH)が生成されること、を特徴とする二酸化炭素の還元,固定方法。
  2. 請求項1において、該二酸化炭素は、該水溶液中に飽和状態で溶存し、該水溶液は、常温常圧下に置かれると共に、求電子剤としてのプロトンが多数存在すべく、必要に応じ硫酸やカセイソーダが添加されて弱酸性に調整される一方で、還元反応促進のため、必要に応じ次亜燐酸化合物や磁鉄鉱等の還元剤が添加されること、を特徴とする二酸化炭素の還元,固定方法。
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