JP4846683B2 - 二酸化炭素処理装置 - Google Patents
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Description
すなわち二酸化炭素は、元々、空気中に約0.036%程度存在しているが、石油,石炭等の化石燃料の消費に伴い近年急増しつつあり、温室効果ガス,地球温暖化ガスとして、その対策が急務とされている。
このような二酸化炭素については、その排出規制対策が、目下各種検討,研究されると共に、開発,実施されている。
すなわち、工場その他で大量発生して排出される二酸化炭素を、化学的,物理的方法で効率的に固定化処理したり、更に有用物質へと合成,活用する技術に関しては、経済性の観点からも種々検討,研究されてはいるが、その大規模処理用,大容量処理用の技術は、まだ開発,実施されてはいない。
この種の二酸化炭素の固定化技術としては、例えば次の特許文献1に示したものが挙げられる。
本発明の二酸化炭素処理装置は、このような実情に鑑み、上記従来例の課題を解決すべくなされたものである。
そして本発明は、第1に、二酸化炭素を固定化できると共に、第2に、しかもこれが効率的に,無駄なく,簡単容易に,コスト面にも優れつつ実現され、第3に、更に有用物質への合成,活用も可能な、二酸化炭素処理装置を提案することを、目的とする。
このような課題を解決する本発明の技術的手段は、次のとおりである。まず、請求項1については次のとおり。
請求項1の二酸化炭素処理装置は、二酸化炭素をフェントン法に基づき固定化処理する。そして処理槽と、該処理槽に付設された二酸化炭素注入手段,過酸化水素添加手段,鉄イオン添加手段,pH調整手段とを、備えている。
該処理槽は、水が溶媒として存している。該二酸化炭素注入手段は、該処理槽に対し二酸化炭素を注入して、該処理槽内を二酸化炭素溶存水化する。
該過酸化水素添加手段は、該処理槽の二酸化炭素溶存水に過酸化水素を添加する。該鉄イオン添加手段は、該処理槽の二酸化炭素溶存水に2価の鉄イオンを添加する。該pH調整手段は、該処理槽の二酸化炭素溶存水にpH調整剤を添加して、二酸化炭素溶存水を所定の弱酸性に維持すること、を特徴とする。
該過酸化水素添加手段は、反応当初に過酸化水素水を全量添加する。該鉄イオン添加手段は、過酸化水素水の添加後に間欠的に複数サイクル繰り返して、2価の鉄イオン溶液を分割添加する。
そして該pH調整手段は、過酸化水素水の添加前に酸pH調整剤を添加すると共に、過酸化水素水の添加後において2価の鉄イオン溶液の分割添加毎に、アルカリpH調整剤を添加すること、を特徴とする。
請求項3については、次のとおり。請求項3の二酸化炭素処理装置では、請求項2において、該鉄イオン添加手段は、硫酸第一鉄の水溶液を添加する。
そして該pH調整手段は、硫酸又はカセイソーダを添加し、もって二酸化炭素溶存水をpH4程度に維持して、添加される過酸化水素の水と酸素への分解反応を抑制すること、を特徴とする。
そして、生成されたOHラジカルが、二酸化炭素溶存水の水と反応して、水素ラジカルを生成し、もって、二酸化炭素溶存水の二酸化炭素が、この水素ラジカルにて還元されて少なくとも蟻酸を生成すること、を特徴とする。
請求項5については、次のとおり。請求項5の二酸化炭素処理装置では、請求項4において、該処理槽内では更に、過酸化水素の還元反応にて生成された水酸化イオンが、2価の鉄イオンの酸化反応にて生成された3価の鉄イオンにて酸化されて、OHラジカルを生成する。
そして、生成されたOHラジカルが、二酸化炭素溶存水の水と反応して水素ラジカルを生成し、もって、二酸化炭素溶存水の二酸化炭素が、この水素ラジカルにて還元されて少なくとも蟻酸を生成すること、を特徴とする。
そして、このように繰り返し新たに生成されるOHラジカルが、二酸化炭素溶存水の水と反応して、水素ラジカルを生成し、もって、二酸化炭素溶存水の二酸化炭素が、この水素ラジカルにて還元されて少なくとも蟻酸を生成すること、を特徴とする。
請求項7については、次のとおり。請求項7の二酸化炭素処理装置では、請求項4又は5に記載した二酸化炭素処理装置において、更に、2価の鉄イオンの酸化反応にて生成された3価の鉄イオンと過酸化水素とが反応して、少なくとも新たなOHラジカルを生成する反応が、連鎖的に繰り返される。
そして、このように繰り返し新たに生成されるOHラジカルが、二酸化炭素溶存水の水と反応して、水素ラジカルを生成し、もって、二酸化炭素溶存水の二酸化炭素が、この水素ラジカルにて還元されて少なくとも蟻酸を生成すること、を特徴とする。
請求項8については、次のとおり。請求項8の二酸化炭素処理装置では、請求項4,5,6又は7において、二酸化炭素は、OHラジカルを触媒とした還元反応に基づき、蟻酸,ホルムアルデヒド,メタノール,又は酢酸として固定されること、を特徴とする。
本発明は、このような手段よりなるので、次のようになる。
(1)この処理装置は、その処理槽に、二酸化炭素注入手段,過酸化水素添加手段,鉄イオン添加手段,pH調整手段等が、付設されている。
(2)処理槽には水が導入されると共に、二酸化炭素注入手段から二酸化炭素が注入され、もって、二酸化炭素溶存水として溶液化される。
(3)そして二酸化炭素溶存水は、まず、pH調整手段から硫酸等が添加されて、pH4程度の弱酸性とされる。
(4)それから、過酸化水素添加手段から過酸化水素水が、全量添加される。
(5)そして二酸化炭素溶存水に対して、鉄イオン添加手段から2価の鉄イオン溶液が、分割添加されるが、その分割添加毎に、pH調整手段からカセイソーダ等が添加されて、弱酸性が維持される。
(7)又、OHラジカルは、前記反応で生成された3価の鉄イオンと水酸化イオンの反応によっても、効率良く生成される。
(8)更にOHラジカルは、次の反応により、連鎖的に繰り返して生成される。すなわち、上記反応により生成されたOHラジカルが、二酸化炭素溶存水の水と反応することにより、新たなOHラジカルが生成される。他方、上記反応により生成された3価の鉄イオンと過酸化水素とが反応することによっても、新たなOHラジカルが生成される。
OHラジカルは、このように上記(6)で述べたフェントン主反応以外の付随的,副次的,連鎖的反応によっても、効率良く生成される。
(10)更に蟻酸が、ホルムアルデヒド,メタノール,メタン,酢酸等々へと順次、還元,合成されて行く可能性もある。
(11)処理槽では、このようにフェントン法等に基づき、二酸化炭素が固定化される。
(12)この処理装置は、このように二酸化炭素を固定化するが、これは簡単容易に実現される。すなわち、その薬品添加量は反応理論値から容易に算出され、その構成も比較的簡単であり、安定的な処理も可能である。
(13)さてそこで、本発明の二酸化炭素処理装置は、次の効果を発揮する。
第1に、二酸化炭素を固定化可能である。すなわち、本発明の二酸化炭素処理装置は、地球温暖化原因とされる二酸化炭素を、フェントン法等を利用して蟻酸,その他の有機高分子化合物として、固定化することができる。
この種従来例の排出規制対策とは異なり、固定化そして有効利用への道が開ける。
第2に、しかもこれは、効率的に,無駄なく,簡単容易に,コスト面にも優れつつ、実現される。
まず、本発明の二酸化炭素処理装置では、2価の鉄イオン分割添加と弱酸性維持とにより、過酸化水素と鉄イオンによるOHラジカル生成が、効率的に無駄なく実施される。
そして、このようなフェントン主反応に加え、OHラジカルは、3価の鉄イオンと水酸化イオンとが反応することによって、更に、生成されたOHラジカルが二酸化炭素溶存水の水と反応することによって、又、3価の鉄イオンと過酸化水素が反応することによっても、それぞれ連鎖的に繰り返して生成される。このようにOHラジカルは、フェントン主反応に加え、その付随的,副次的,連鎖的反応によっても生成され、高効率で生成される。
他方、過酸化水素,鉄イオン,pH調整剤等の添加使用量も、反応理論値から容易に算出され、過不足のない添加が可能となり、自動制御も容易である。そこで、過酸化水素の浪費,過剰添加,多量残存等の虞がなくなり、中和剤による後処理コストも削減される等、薬品コストが低減される。
しかも、これらは比較的簡単な構成により、安定的に実現され、この面からもイニシャルコストやランニングコストに優れている。これらにより、二酸化炭素の大規模処理,大容量処理へのスケールアップへの道が開ける。
第3に、更に有用物質への合成,活用も可能である。すなわち、本発明の二酸化炭素処理装置によると、二酸化炭素を、蟻酸,ホルムアルデヒド,メタノール,メタン,酢酸等々へと、固定可能である。二酸化炭素は、蟻酸,その他の有用な有機化合物へと合成され、その工業的利用価値は計り知れない。
このように、この種従来例に存した課題がすべて解決される等、本発明の発揮する効果は、顕著にして大なるものがある。
以下、本発明の二酸化炭素処理装置を、図面に示した発明を実施するための最良の形態に基づいて、詳細に説明する。
図1は、本発明を実施するための最良の形態の説明に供し、構成フロー図である。
この二酸化炭素の処理装置1は、二酸化炭素(CO2)を、改良したフェントン法の処理プロセスに基づいて、固定化処理する。例えば、石油,石炭等の化石燃料の消費に伴い、工場その他で大量発生する二酸化炭素や、大気中から濃縮採取された二酸化炭素を、蟻酸(HCOOH),その他の高分子有機化合物に合成,固定化する。
すなわち処理装置1では、フェントン試薬の過酸化水素(H2O2)と2価の鉄イオン(Fe2+)を用いて、OHラジカル(・OH)を生成すると共に、このOHラジカルが、二酸化炭素溶存水2等の水と反応して水素ラジカル(H・)を生成する。そして、この水素ラジカルが、二酸化炭素溶存水2の二酸化炭素を還元して、少なくとも蟻酸を生成せしめる。なおOHラジカルは、このようなフェントン主反応に加え、更に、その付随的,副次的,連鎖的反応や連鎖反応によっても生成される。
そして処理装置1は、処理槽3と、処理槽3に付設された水供給手段4,二酸化炭素注入手段5,過酸化水素添加手段6,鉄イオン添加手段7,pH調整手段8,後処理槽9等とを、備えている。
以下、これらについて詳細に説明する。
まず、処理槽3について説明する。この処理装置1の処理槽3は、水が溶媒として存しており、図示例では、注入槽10とpH調整槽11と本処理槽12とから、構成されている。
まず注入槽10には、多くの場合、常時連続的に水供給手段4から水が、溶媒として導入されると共に、二酸化炭素注入手段5から二酸化炭素が、媒質として注入され、もって二酸化炭素溶存水2が、溶液として形成される。このように炭酸イオン水ではなく、炭酸ガス入りの水つまり炭酸水が形成される。
二酸化炭素注入手段5からの注入は、気体である二酸化炭素の溶解度を上げるべく、なるべく低温かつ高圧(ヘンリーの法則)の分圧のもとで行われる。つまり常温以下であると共に、1気圧又は1気圧以上の加圧状態のもとで行われる。例えば、1.713L−CO2/L−H2O(0℃,1気圧)や、1.194L−CO2/L−H2O(10℃,1気圧)や、0.878L−CO2/L−H2O(20℃,1気圧)のもとで、行われる。
pH調整槽11では、付設されたpH調整手段8から、pH調整剤が添加される。pH調整手段8は、注入槽10から本処理槽12に供給される途中の二酸化炭素溶存水2に対し、pH調整剤を添加して、二酸化炭素溶存水2を所定の弱酸性にpH調整してから、本処理槽12に供給する。
すなわち二酸化炭素溶存水2は、例えばpH6以上であることが多いので、これをpH3〜pH5程度、代表的にはpH4程度に調整すべく、pH調整剤として硫酸等の酸pH調整剤が用いられる。このように事前にpH調整しておく理由は、後述するように、過酸化水素と2価の鉄イオンによるOHラジカルの生成反応が、所期の通り効率良く行われるようにする為、等々である。
なお、このように処理槽3を、注入槽10,pH調整槽11,本処理槽12から構成するのは、例えば、二酸化炭素の大規模処理,大容量処理,連続処理,高濃度処理等を行う場合である。これに対し、pH調整槽11を使用せず、注入槽10において代用的,兼用的に、上述したpH調整を実施することも可能である。更に、注入槽10,pH調整槽11を共に使用せず、本処理槽12のみで、二酸化炭素溶存水2の生成や事前のpH調整を行うようにすることも可能である。
処理槽3は、このようになっている。
次に、処理装置1の処理槽3に付設された過酸化水素添加手段6について、説明する。過酸化水素添加手段6は、前述により弱酸性にpH調整された、処理槽3の本処理槽12の二酸化炭素溶存水2に対し、その反応当初において、過酸化水素の水溶液を、フェントン試薬として全量添加する。過酸化水素は、OHラジカルの発生源となる。
過酸化水素の一回の反応当たりの添加量は、その二酸化炭素溶存水2中に含有される二酸化炭素の含有量,濃度次第であるが、その反応理論値を基準として多目に算出された実際必要量(必要モル数)が、反応当初に一度に全量添加される。次回の添加は、二酸化炭素溶存水2中から二酸化炭素がなくなった時、つまり次の反応時であり、この次の反応時に同様に、その全量が添加されることになる。
このように、この明細書において全量添加とは、反応に必要な薬剤量を1回に100%全量一括添加すること、を意味する。
このように過酸化水素添加手段6から、過酸化水素が全量添加される。
次に、鉄イオン添加手段7について説明する。鉄イオン添加手段7は、このように過酸化水素が添加された後、処理槽3つまり本処理槽12の二酸化炭素溶存水2に対し、間欠的に複数サイクル繰り返して、2価の鉄イオン溶液を、フェントン試薬として分割添加する。
すなわち、液中で2価の鉄イオンを生じる物質、例えば硫酸第一鉄7水和物(FeSO4・7H2O)が、このような鉄塩として代表的に使用されるが、その他の無水塩や含水塩、例えば塩化鉄(FeCl2)やその水和物も使用可能である。そして2価の鉄イオンは、過酸化水素のOHラジカル生成反応の触媒として機能する。
この鉄イオンの1回の反応当たりの添加量は、反応理論値を基準として実際必要量が算出されるが、例えば、過酸化水素の1モルに対し0.5モル程度とされる。
そして鉄イオンは、複数回に分けて分割添加される。すなわち、1回の反応について必要量が、全量添加されずに3〜7回程度に分けて、例えば5回に分けて順次添加される。各回毎の添加タイミングは、前回添加したものがなくなった段階で、次回分が添加されて行くことになる。このように、この明細書において分割添加とは、反応に必要な薬剤量を複数回に分けて添加すること、を意味する。
又b.OHラジカルは存在時間が瞬間的,超短寿命であるので、全量添加より分割添加した方が、その都度OHラジカルが生成されて、本処理槽12内の二酸化炭素溶存水2の隅々まで行き渡り、もって、水素ラジカルの生成そして二酸化炭素の還元が、より確実化,効率化,迅速化されるようになる。
更にc.分割添加すると、全量添加に比し残存する過酸化水素が少なくなるので、その分、中和剤による後処理コストも低減される。
このように鉄イオン添加手段7から、2価の鉄イオンが分割添加される。
次に、pH調整手段8について、説明する。pH調整手段8は、前述したように処理槽3の本処理槽12に供給される前の二酸化炭素溶存水2、および本処理槽12に供給された後の二酸化炭素溶存水2に対し、pH調整剤を添加して、二酸化炭素溶存水2を、例えばpH4程度の弱酸性に維持する。
すなわちpH調整手段8は、過酸化水素の添加前には、硫酸等の酸pH調整剤を添加し、過酸化水素の添加後は、上述した鉄イオンの添加毎に、カセイソーダ等のアルカリpH調整剤を添加する。
二酸化炭素溶存水2を、pH3〜pH5程度代表的にはpH4程度に維持することは、まずa.過酸化水素の水と酸素への分解反応を、抑制すべく機能する。これと共にb.2価の鉄イオンの過酸化水素への電子供与を、促進すべく機能する。更にc.後述する付随的,副次的,連鎖的に繰り返されるOHラジカル生成反応を、促進,確実化すべく機能する。もって、これらa,b,cにより、OHラジカルの生成が、効率良く進行するようになる。
これに対し、まず、水供給手段4から導入される水、そして注入槽10からの二酸化炭素溶存水2は、例えばpH6以上であることが多いので、前述したようにpH調整槽11において、pH調整手段8から例えば硫酸が添加されて、例えばpH4程度にpH調整される。又、本処理槽12において、2価の鉄イオンが添加されると、そのままでは二酸化炭素溶存水2のpHが例えば2.8程度まで低下し酸性度が過度に上がるので、2価の鉄イオンの分割添加毎にその都度、例えばカセイソーダが添加され、もって例えばpH4程度へと二酸化炭素溶存水2がpH調整される。
pH調整手段8は、このようになっている。
次に、処理槽3内における化学反応(その1)について、説明する。処理装置1の処理槽3の本処理槽12内では、まず第1に、二酸化炭素溶存水2が攪拌,流下されると共に、添加された過酸化水素が、触媒として添加された2価の鉄イオンにて還元されて、OHラジカルを生成する。
更に第2に、本処理槽12内では、過酸化水素の還元反応にて生成された水酸化イオンが、2価の鉄イオンの酸化反応にて生成された3価の鉄イオンにて酸化されて、OHラジカルを生成する。
そこで、化2の反応式において、過酸化水素添加手段6から最初に全量添加された過酸化水素は、化1の反応式に基づき電子が順次供与され、もってその都度、OHラジカル(・OH)と水酸化イオン(OH−)が生成される。化1と化2の反応式をまとめて合成すると、化3の反応式となる。
なお、これらに際し、二酸化炭素溶存水2が弱酸性雰囲気に維持されているので、過酸化水素が水と酸素に分解され、浪費されてしまうことは抑制される。これに対し、もしも弱酸性雰囲気に維持されないと、次の化4の反応式により、過酸化水素は、発生期の酸素(O)を発生しつつ水分子になり、所期の化2(化3)の反応式によりOHラジカルを生成することなく浪費されてしまうことになる。なお、この発生期の酸素は、その酸化対象がない場合、溶存酸素分子(O2)となって系外にでる。
すなわち、化1の反応式で生成された3価の鉄イオンは、化2の反応式で生成された水酸化イオンから、化5,化6の反応式により、電子を奪ってOHラジカルを生成させ、自らは2価の鉄イオンに還元されて戻る。このように、化3(化1,化2)の反応式と化5,化6の反応式とが、連鎖的にバランス良く起こることにより、OHラジカルがより効率的に生成される。
処理槽3の本処理槽12内では、まずこの第1,第2のように、OHラジカルが生成される。
次に、処理槽3における化学反応(その2)について、説明する。処理槽3の本処理槽12内では、更に、上述した第1,第2に加え、第3,第4として、次の2つの反応により、付随的,副次的,連鎖的に、新たなOHラジカルが生成される。
まず第3に、次の反応にて新たにOHラジカルが生成される。すなわち、前記化3(化1,化2)や化5,化6の反応式にて生成されたOHラジカルが、二酸化炭素溶存水2等の水と反応して、新たなOHラジカルと水とを生成する反応が、次の化7,化8の反応式により、連鎖的に繰り返される。
これに対し酸性雰囲気下では、化7の反応式により、OHラジカルは、水分子(H2O)から電子(e−)を引き抜き、自身は水酸化イオン(OH−)になるが、この引き抜き反応が、水分子をラジカル分裂させ活性化されて、新たなOHラジカル(・OH)とプロトン(H+)を生成される。生成された水酸化イオンとプロトンは、化8の反応式にて、新たな水を生成して消滅する。
本処理槽12の二酸化炭素溶存水2は、弱酸性雰囲気に維持されているので、このようにして新たなOHラジカルが生成されるが、更にこのように生成されたOHラジカルを基に、再びこのような一連の反応が連鎖的に起き、事後も同様に連鎖的に繰り返される。
つまり、前記化3等の反応式にてOHラジカルが一旦生成されると、これを開始反応,反応開始剤として、事後は連鎖的反応により、半永続的にOHラジカルが得られることになる。二酸化炭素の還元過程において触媒として消費された分を除いたOHラジカルが、プロトンの連鎖的な生成・消滅と共存的に、生成・消滅を繰り返す。OHラジカルは超短寿命であることに鑑み、このような繰り返し生成の意義は大きい。
第3として、このような反応により、OHラジカルが生成される。
すなわち、前記化3(化2)の反応式にてOHラジカル生成の源泉となっていた過酸化水素が残ってさえいれば、例え二酸化炭素の還元過程でOHラジカルが触媒として消費尽くされてしまった場合においても、余剰に存在する過酸化水素を基に、新たなOHラジカルが、連鎖的に半永続的に生成され続けられることになる。OHラジカルは超短寿命であることに鑑み、このような生成継続の意義は大きい。
但し、化11(化9,化10)の反応式が確実に起こるためには、過酸化水素が水と溶存酸素に分解(前記化4の反応式を参照)しない程度の弱酸性雰囲気まで、pH調整手段8にてカセイソーダ等を、本処理槽12の二酸化炭素溶存水2に加える等、pH操作が必要であり、そのpH値をアルカリ側に移動させておくことが必要である。
更に、化9(化11)の反応式で生じた2価の鉄イオンは、pHを下げるが、上述により弱酸性雰囲気で安定存在する過酸化水素との共存を図るべく、必要なpH操作を実施しておけば、前記化3等の反応式のフェントン主反応によるOHラジカルの生成も見込めるようになる。
処理槽3の本処理槽12内では、このようにOHラジカルが生成される。
次に、処理槽3内における化学反応(その3)について、説明する。処理槽3の本処理槽12内では、このようにフェントン主反応,その他にて生成されたOHラジカルを、酸化剤として触媒として、二酸化炭素が還元,固定化される。
これらについて、更に詳細に説明する。まず、OHラジカルつまりヒドロキシラジカル(・OH)は、極めて強力な電子奪取力,酸化力,つまり活性力,分解力を有し、ラジカルで反応性に富んでおり、反応が激しいだけに、その存在時間はほんの瞬間的で、寿命の短い化学種である。
そして、生成されたOHラジカルが、次の化12の反応式により、二酸化炭素溶存水2の水と反応して、水素ラジカルを生成する。
そして、このように生成され高い電子供与性を備えた水素ラジカルが、過酸化水素溶存水2の二酸化炭素(CO2)と、次の化13の反応式にて反応して、蟻酸(HCOOH)つまりカルボン酸(R−COOH)を生成する。
なお、この化13の反応に際し、水素ラジカルの電子供与性は、前述により生成されていたOHラジカルが、酸化触媒として機能,貢献することにより高められる。すなわち、二酸化炭素の2個の2重結合はそれぞれ1個のπ電子結合を持つが、OHラジカルが酸化触媒となって、π電子を引きずり出そうと引き抜きにかかっている途中で、1個のπ電子結合の対電子の両端に、それぞれ電子供与性の高い水素ラジカルの2原子が入り込んで取り付き,付加される。
このようにして二酸化炭素は、無機化合物としての炭酸塩ではなく、有機化合物として合成され固定化される。
なお、このような二酸化炭素の蟻酸への固定は、下記の化14の反応式のようにも、表現可能である。すなわち化13の反応式において、1モルの蟻酸は、1モルの二酸化炭素が2モルの水素ラジカルと反応することにより合成されるが、この2モルの水素ラジカルは、前述した化12の反応式に基づき、触媒である2モルのOHラジカルにて生成される。従って、蟻酸を生成する反応式は、化13の反応式と化12の反応式の倍数とを合成した、次の化14の反応式として表現することもできる。
そして事後、このように生成された蟻酸が、後で詳述するように、ホルムアルデヒド,メタノール,メタンへと、OHラジカルや水素ラジカルにて合成されて行くことも考えられる。そして更に、酢酸,アセトアルデヒド,エタノール,エタンと、合成されて行くことも可能である。なお、その還元合成反応に際しては、前述したところに準じ、それぞれOHラジカルが触媒機能を発揮する。
処理槽3の本処理槽12では、このように二酸化炭素が還元,固定される。
次に、後処理槽9等について説明する。処理槽3の本処理槽12には、後処理槽9が付設されている。
後処理槽9には、前述により、二酸化炭素が固定化された蟻酸、更にはホルムアルデヒド,メタノール,メタン,酢酸等と、水とが、本処理槽12から排出される。二酸化炭素溶存水2は、有機化合物の生成物質と水となって、後処理槽9に排出される。
そして、これらの固定化物資つまり生成物質が、水と分離されて、後処理槽9から生成物槽13へと排出,供給される。残った水は、後処理槽9から中和槽14を経由して、外部排水される。中和槽14では、このような水に対し必要に応じpH調整剤が添加され、もって外部排水用にpH調整される。又、その水中に僅かでも過酸化水素が残留している場合は、水質汚濁を回避すべくカタラーゼ等の中和剤が添加される。
後処理槽9は、このようになっている。
本発明の二酸化炭素の処理装置1は、以上説明したように構成されている。そこで、以下のようになる。
(1)この処理装置1は、フェントン法に基づく処理槽3を備えており、処理槽3には、水供給手段4,二酸化炭素注入手段5,過酸化水素添加手段6,鉄イオン添加手段7,pH調整手段8,後処理槽9等が、順に付設されている。図示の処理槽3は、注入槽10,pH調整槽11,本処理槽12等からなっている。
そして、このような鉄イオンの分割添加毎に、pH調整手段8から例えばカセイソーダ等のpH調整剤が添加され、もって二酸化炭素溶存水2は、例えばpH4程度の弱酸性を維持する。つまり、OHラジカル生成に最適なpHへと、調整される。
まず第1に、前記化3(化1,化2)の反応式のフェントン主反応により、2価の鉄イオンが、過酸化水素に電子を供与して3価の鉄イオンになり、電子を供与された過酸化水素が、OHラジカルを生成する。
このOHラジカルは、2価の鉄イオンが分割添加されるので、OHラジカルそして2価の鉄イオンが浪費される反応が起こる虞もなく、分割添加の都度、無駄なく効率良く生成される。
これに加え、このフェントン主反応によるOHラジカルの生成は、pH4程度の弱酸性雰囲気下に維持されていることによっても、一段と効率良く確実に実施される。すなわち、このように弱酸性雰囲気であることにより、まず、2価の鉄イオンの電子供与が促進されると共に、過酸化水素が、前記化4の反応式により水と酸素に分解,浪費される反応が回避され、能力いっぱいのOHラジカルを効率良く生成するようになる。
すなわち第3に、前記化3等により生成されたOHラジカルが、前記化7,化8の反応式により、二酸化炭素溶存水の水と反応することにより、新たなOHラジカルが、連鎖的に繰り返し生成される。このような一連のOHラジカル生成反応が、繰り返される。
第4に、前記化3(化1)の反応式で生成された3価の鉄イオンと、過酸化水素とが、前記化11(化9,化10)の反応式により反応することによっても、新たにOHラジカルが、連鎖的に繰り返し生成される。このような一連のOHラジカル生成反応が、繰り返される。
なお、このようなOHラジカルの生成は、本処理槽12内でフェントン試薬の過酸化水素が、使い尽くされてなくなった時に終了する。
本処理槽12内では、このように生成された水素ラジカルが、前記化13等の反応式により、二酸化炭素溶存水2の二酸化炭素と反応して、蟻酸を合成する。つまり、二酸化炭素は還元されて、蟻酸として固定される。
なお、進行が途中で止まる可能性や、全く進行しない可能性もある。又、カルボン酸,アルデヒド,アルコール,炭化水素(アルカン)の連鎖ステップの高次化の繰り返しも考えられる。
そして、蟻酸等の固定化物質、つまり有用な有機化合物に合成された生成物質は、処理槽3の本処理槽12から後処理槽9を経由した後、生成物槽13へと供給される。水は、中和槽14から外部排水される。
なお過酸化水素は、前述によりOHラジカル生成に無駄なく有効使用されるので、その残存量が僅かであり、中和槽14におけるその中和剤の使用も極く僅か又は皆無となる(例えば、残存過酸化物イオン濃度は、使用過酸化水素の0%〜3%以下程度となる)。
すなわち、過酸化水素,2価の鉄イオン,pH調整剤等のフェントン試薬等の薬品添加量は、反応理論値から実際必要量が容易に算出される。反応理論値より多目の例えば数倍程度が、実際必要量として添加され、もって添加量の最適化が実現される。
又、この処理装置1は、処理槽3を中心に、図示例では注入槽10,pH調整槽11,本処理槽12よりなる処理槽3を中心に、水供給手段4,二酸化炭素注入手段5や、過酸化水素添加手段6,鉄イオン添加手段7,pH調整手段8等が、付設された構成よりなる。つまり、比較的簡単な構成よりなり、安定的な処理が可能である。
本発明の作用等は、このようになっている。
以下、蟻酸以下の還元反応等について、説明しておく。
前述したように、二酸化炭素は蟻酸(HCOOH)として固定されるが、生成された蟻酸が、事後、ホルムアルデヒド(HCHO)に、更に、ホルムアルデヒドがメタノール(CH3OH)に、メタノールがメタン(CH4)、メタン(CH4)が酢酸(CH3COOH)、・・・へと、次の化15の反応式に示した連鎖ステップを順次辿り、OHラジカルや水素ラジカルの作用に基づく還元反応等にて、合成されて行くことも考えられる。
これらについて更に詳述する。
次でステップ(3)で、ホルムアルデヒドのアルデヒド基(-CHO)の炭素原子と酸素原子の二重結合に、OHラジカルが干渉して、その両端に水素ラジカル2原子を付加させることにより、メタノール(CH3OH)が生成される。それからステップ(4)で、OHラジカルがメタノールのアルコールOH基の水素原子を奪い、自身は水分子になると共に、酸素分子(O2)と、残基のメチル基(CH3-)を遊離する。そしてステップ(5)で、これに水素ラジカルが取り付いて、メタン(CH4)が生成される。
そして、その還元合成反応に際しては、それぞれOHラジカルが触媒機能を発揮している。又、上述した連鎖ステップは、発生しない可能性や、途中で止まる可能性もある。
なお、上記化15の反応式に示されたホルムアルデヒド,メタノール,メタンの各生成反応を、前記化13の二酸化炭素を出発物質とした蟻酸生成の反応式をも含めつつ、順次各々についてまとめて合成すると、次の化16の反応式中のステップ(1),(2),(3)のようになる。
前者については、前記化13の反応式をも含めて合成すると、次の化17の反応式で表現可能である。
2 二酸化炭素溶存水
3 処理槽
4 水供給手段
5 二酸化炭素注入手段
6 過酸化水素添加手段
7 鉄イオン添加手段
8 pH調整手段
9 後処理槽
10 注入槽(処理槽)
11 pH調整槽(処理槽)
12 本処理槽(処理槽)
13 生成物槽
14 中和槽
Claims (8)
- 二酸化炭素をフェントン法に基づき固定化処理する処理装置であって、処理槽と、該処理槽に付設された二酸化炭素注入手段,過酸化水素添加手段,鉄イオン添加手段,pH調整手段とを、備えており、
該処理槽は、水が溶媒として存しており、該二酸化炭素注入手段は、該処理槽に対し二酸化炭素を注入して、該処理槽内を二酸化炭素溶存水化し、
該過酸化水素添加手段は、該処理槽の二酸化炭素溶存水に過酸化水素を添加し、該鉄イオン添加手段は、該処理槽の二酸化炭素溶存水に2価の鉄イオンを添加し、該pH調整手段は、該処理槽の二酸化炭素溶存水にpH調整剤を添加して、二酸化炭素溶存水を所定の弱酸性に維持すること、を特徴とする二酸化炭素処理装置。 - 請求項1に記載した二酸化炭素処理装置において、該二酸化炭素注入手段は、二酸化炭素を常時注入し、
該過酸化水素添加手段は、反応当初に過酸化水素水を全量添加し、該鉄イオン添加手段は、過酸化水素水の添加後に間欠的に複数サイクル繰り返して、2価の鉄イオン溶液を分割添加し、
該pH調整手段は、過酸化水素水の添加前に酸pH調整剤を添加すると共に、過酸化水素水の添加後において2価の鉄イオン溶液の分割添加毎に、アルカリpH調整剤を添加すること、を特徴とする二酸化炭素処理装置。 - 請求項2に記載した二酸化炭素処理装置において、該鉄イオン添加手段は、硫酸第一鉄の水溶液を添加し、
該pH調整手段は、硫酸又はカセイソーダを添加し、もって二酸化炭素溶存水をpH4程度に維持して、添加される過酸化水素の水と酸素への分解反応を抑制すること、を特徴とする二酸化炭素処理装置。 - 請求項2に記載した二酸化炭素処理装置において、該処理槽内では、全量添加された過酸化水素が、触媒として分割添加される2価の鉄イオンにて、分割添加の都度還元されてOHラジカルを生成すると共に、
生成されたOHラジカルが、二酸化炭素溶存水の水と反応して、水素ラジカルを生成し、もって、二酸化炭素溶存水の二酸化炭素が、この水素ラジカルにて還元されて少なくとも蟻酸を生成すること、を特徴とする二酸化炭素処理装置。 - 請求項4に記載した二酸化炭素処理装置において、該処理槽内では更に、過酸化水素の還元反応にて生成された水酸化イオンが、2価の鉄イオンの酸化反応にて生成された3価の鉄イオンにて酸化されて、OHラジカルを生成すると共に、
生成されたOHラジカルが、二酸化炭素溶存水の水と反応して、水素ラジカルを生成し、もって、二酸化炭素溶存水の二酸化炭素が、この水素ラジカルにて還元されて少なくとも蟻酸を生成すること、を特徴とする二酸化炭素処理装置。 - 請求項4又は5に記載した二酸化炭素処理装置において、更に、生成されたOHラジカルが二酸化炭素溶存水の水と反応して、新たなOHラジカルと水とを生成する反応が、連鎖的に繰り返されると共に、
このように繰り返し新たに生成されるOHラジカルが、二酸化炭素溶存水の水と反応して、水素ラジカルを生成し、もって、二酸化炭素溶存水の二酸化炭素が、この水素ラジカルにて還元されて少なくとも蟻酸を生成すること、を特徴とする二酸化炭素処理装置。 - 請求項4又は5に記載した二酸化炭素処理装置において、更に、2価の鉄イオンの酸化反応にて生成される3価の鉄イオンと過酸化水素とが反応して、少なくとも新たなOHラジカルを生成する反応が、連鎖的に繰り返されると共に、
このように繰り返し新たに生成されるOHラジカルが、二酸化炭素溶存水の水と反応して、水素ラジカルを生成し、もって、二酸化炭素溶存水の二酸化炭素が、この水素ラジカルにて還元されて少なくとも蟻酸を生成すること、を特徴とする二酸化炭素処理装置。 - 請求項4,5,6又は7に記載した二酸化炭素処理装置において、二酸化炭素は、OHラジカルを触媒とした還元反応に基づき、蟻酸,ホルムアルデヒド,メタノール,又は酢酸として固定されること、を特徴とする二酸化炭素処理装置。
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