JP5590927B2 - 自動二輪車用空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、自動二輪車用空気入りタイヤ、特には、サーキット等で安心してスポーティな走行ができるグリップ性能と、一般道でも、安心して走行できるウェット性能とを両立させた自動二輪車用空気入りタイヤに関する。
従来、一般道の走行において、ドライ路面およびウェット路面での操縦安定性を確保するため、トレッド部に多数の傾斜溝を配置したパターンを有する自動二輪車用空気入りタイヤが知られている(例えば、特許文献1参照)。
ここで、特に昨今、一般道走行用の自動二輪車用空気入りタイヤをサーキット走行にも使用したいとのニーズが高まっており、上記のような従来タイヤをこの目的のために用いた場合、サーキット走行等でスポーティな走行に必要なグリップ力が十分ではなく、グリップ性能を向上させる必要があった。
特に、駆動輪となる後輪タイヤのグリップ力を高めることにより、直進時のトラクション及びブレーキング力と旋回時の横力を向上させたタイヤが望まれている。
一方、サーキット走行専用の自動二輪車用空気入りタイヤとして、図1に示すようなパターンを有する自動二輪車用空気入りタイヤも提案されている(例えば、特許文献2参照)。
規定リムに規定内圧を充填したタイヤを規定荷重下で直進走行させた際にタイヤ接地面となる領域を直進時接地域と呼ぶとき、図1に示したパターンは、トレッド部の、直進時接地域の範囲Q1内に、赤道面CLを横切って傾斜する第1の傾斜溝91と、第1の傾斜溝91の各々に対応して赤道面CLを横切らないように設けられる第2の傾斜溝92とがそれぞれ多数、間隔をおいて周方向に配置されている。
第1の傾斜溝91とこれに対応する第2の傾斜溝92とは、互いに離隔し、しかも、赤道面CLに対して互いに反対向きに傾斜して設けられている。
このパターンは、サーキット走行に要求されるグリップ性能を高めるために、トレッド部全面積に占める溝部面積の割合(ネガティブ率)を極めて低く抑えている。
特開2007−331596号公報 意匠登録第1312918号公報
しかしながら、特許文献2に記載のタイヤは、ネガティブ率が小さいため、排水性が悪く、ウェット時の性能が十分ではなく、一般道を安全に走ることができないという問題があった。
さらに、このようにネガティブ率を小さくすると面外曲げ剛性が上がり、旋回時において接地面積が低下し、グリップ性能の向上が妨げられるという問題もあった。
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、サーキット等で安心してスポーティな走行ができるグリップ性能と、一般道でも、安心して走行できるウェット性能とを両立させることのできる自動二輪車用空気入りタイヤを提供することを目的とする。
発明者は、前記課題を解決すべく、鋭意究明を重ねた。
その結果、トレッドに適切な配置、形状とした主溝を設けることで、グリップ性能とウェット性能とを両立させることができることの新規知見を得た。
本発明にかかる空気入りタイヤの要旨構成は、以下の通りである。
(1)一対のビード部と、該ビード部に連なる一対のサイドウォール部と、両サイドウォール部間にトロイダル状に跨るトレッドとを備え、車両装着時の回転方向が指定される自動二輪車用空気入りタイヤにおいて、
前記トレッド踏面の直進時接地域内にて前記指定タイヤ回転方向に向かってトレッド幅方向外側に傾斜して延びる第1の溝と、前記第1の溝の前記指定タイヤ回転方向の逆回転方向端部から、トレッド幅方向外側に向かって斜めに前記指定タイヤ回転方向の逆回転方向に延びる第2の溝とからなる屈曲した主溝を備え、
前記第1の溝の前記傾斜角は5°〜20°であり、
前記主溝のトレッド周方向長さLは、車両直進時の接地長lより大きく、且つ前記主溝のトレッド幅方向の長さWは、車両直進時の接地幅wの2倍より大きいことを特徴とする、自動二輪車用空気入りタイヤ。
(2)前記主溝は、タイヤ赤道面から離間していることを特徴とする、上記(1)に記載の自動二輪車用空気入りタイヤ。
本発明によれば、トレッドにおける溝の形状、配置を適切化することによって、グリップ性能とウェット性能とを高い次元で両立させた自動二輪車用空気入りタイヤを提供できる。
従来のタイヤのトレッドを示す展開図である。 本発明の二輪自動車用タイヤを示す断面図である。 (a)本発明の二輪自動車用タイヤのトレッドを示す展開図である。(b)接地長l及び接地幅wを示す図である。
以下、図面を参照して、本発明を詳細に説明する。
図2は、本発明の一実施形態に従う自動二輪車用タイヤ(以下「タイヤ」という)を示す断面図である。
図2に示すように、本実施形態のタイヤは、慣例に従い、一対のビード部1と該ビード部1に連なる一対のサイドウォール部2と、両サイドウォール部2にトロイダル状に跨るトレッド3とを備えている。
ビード部1は、ビードコア1aを有し、ビードコア1a間にはカーカス4がトロイダル状に延在し、該カーカス4のタイヤ径方向外側にベルト5を有する。
図3(a)は、本発明の一実施形態のタイヤのトレッド3の接地面Qを展開して示す図である。
まず、図3(a)に示すように、トレッド3の接地域Qは、車両の直進時接地域Q1とQ1よりトレッド幅方向外側の外側接地域Q2とに分けられる。「直進時接地域」とは、規定リムに規定内圧を充填したタイヤを規定荷重下で直進走行させた際にタイヤ接地面となる領域のことをいう。
本実施形態のタイヤは、トレッド3の直進時接地域Q1内で指定タイヤ回転方向に対してトレッド幅方向外側に傾斜して延びる第1の溝6と、第1の溝6の指定タイヤ回転方向の逆回転方向の端部からトレッド幅方向外側に向かって斜めに、指定タイヤ回転方向の逆回転方向に、外側接地域Q2で延びる第2の溝7とを有する。
第1の溝6と第2の溝7とは、連結して主溝8を形成している。
また、図3(a)に示すように、主溝8は、タイヤ周方向に間隔を置いて、タイヤ赤道面CLを挟む一方側と他方側のトレッド面に交互に配置したパターンを形成しており、第1の溝6の指定タイヤ回転方向の端部側の部分が、指定タイヤ回転方向前方の主溝8の第2の溝7の少なくとも部分と、タイヤ幅方向に投影した際に重なるように(図3(a)の斜線部分が重なる部分である)配置されている。
ここで、指定タイヤ回転方向とは、タイヤの車両装着時のタイヤ回転方向に指定された方向をいい、図3(a)のRの矢印の方向である。逆回転方向とは、指定タイヤ回転方向を順方向としたときの、逆方向をいう。
なお、「第1の溝が直進時接地域内で延びる」とは、第1の溝6の溝面積の70%以上が直進時接地域Q1内にあることを意味し、第1の溝6を、部分的には外側接地域Q2にまたがって配置してもよい。また、「第2の溝が外側接地域で延びる」とは、第2の溝7の溝面積の50%以上が外側接地域Q2内にあることを意味し、部分的には直進時接地域内Q1にまたがって配置しても良い。
本発明の目的であるグリップ性能とウェット性能とを向上させるためには、路面からの入力(外力)に対するトレッドの引張り剛性を維持して、外力による陸部の変形をできるだけ抑え、接地面積を確保しつつ、その一方で、溝により接地面Q内の排水性を向上させる必要がある。
そのためには、トレッドにおける溝は外力の方向に沿った配置とすることが必要である。すなわち、かような配置とすることで、陸部が最も変形しづらくなり、外力に対する引張り剛性が維持されるからであり、また、外力の向きに発生する陸部のすべりは、溝内の水と相対的な動きをするため、排水性が向上するからである。
本発明のタイヤでは、第1の溝6を、直進時接地域Q1内でトレッド周方向、すなわち、直進時におけるトラクション及びブレーキング力に沿う方向に配置している。
これにより、車両の直進時において、外力による陸部の変形が抑えられて、直進時接地域Q1における接地面積が確保されるため、グリップ力が向上する。また、上述のように直進時接地域Q1内における排水性も向上する。
また、第2の溝7は、外側接地域Q2内で、第1の溝6の指定タイヤ回転方向の逆回転方向の端部からトレッド幅方向外側に向かって斜めに、指定タイヤ回転方向の逆回転方向に延びている。すなわち、第2の溝7を、車両旋回時の接地面内で、旋回時の入力に沿う方向に設けている。
これにより、車両の旋回時において、外力による陸部の変形が抑えられて、外側接地域Q2における接地面積が確保されるため、グリップ力が向上する。また、上述のように外側接地域内Q2における排水性も向上する。
ここで、リア用タイヤは、駆動輪であることからタイヤ赤道面付近に非常に大きな前後力が発生するため、この部分の接地面積を増加させることが有効である。
そのため、第1の溝は、図3(a)に示すように指定タイヤ回転方向側をトレッド外側に若干傾けることが肝要である。
直進時接地域Q1内のトレッドの面外曲げ剛性を低減させて、接地面積を確保することができるからである。
具体的には、第1の溝のトレッド周方向に対する傾斜角度をθ1とするとき、
5°≦θ1≦20°
の範囲とすることが肝要である。
5°未満だと上記の効果が十分に得られず、20°より大きいと排水性が大きく低下するからである。
また、図3(a)に示すように、第2の溝7の配置については、第1の溝6との連結部側における、トレッド周方向に対する傾斜の角度をθ2とするとき、
10°≦θ2≦50°
の範囲とするのが好ましい。
10°未満だと旋回時における外力(横力)による陸部の変形が十分に抑えられないからであり、一方で50°より大きいと排水性が大きく低下するからである。
ここで、図3(a)に示すように、第2の溝7は、トレッド外側にいくにつれ、トレッド周方向に対する角度が漸増する形状とすることが好ましい。
自動二輪車では、走行状態が変化するにつれて、接地点の位置が変化し、要求される性能も異なってくる。すなわち、キャンバー角が大きくなるほど、接地点はトレッド幅方向外側となり、横方向のグリップ性能がより重要となるため、溝7のトレッド幅方向外側ほど、よりトレッド幅方向に沿う形状とする必要があるからである。
さらに、本発明のタイヤは、第1の溝6と第2の溝7とが連結し、排水経路として連続しているため、トレッドの排水性が向上し、結果としてタイヤのウェット性能が向上する。
また、主溝8は、タイヤ赤道面CLから離間させることが好ましい。すなわち、主溝8の最もタイヤ赤道側の点のタイヤ赤道面CLからのトレッド幅方向の距離をAとするとき、
A>0
とすることが好ましい。
特に、駆動輪となる後輪用のタイヤでは、直進時接地域Q1には、非常に大きな前後力が加わり、このため、直進時接地域Q1は、入力に対する引張り剛性を確保する必要があるからである。
特に、図3(b)に示すように、規定リムに規定内圧を充填したタイヤを規定荷重下で直進走行させた際のトレッドの接地面の接地長をl、接地幅をwとしたとき、図3(a)に示す、主溝8のトレッド周方向長さL、トレッド幅方向長さWは、
L≧l且つW≧2w
を満たすようにすることが好ましい。
L<l又はW<2wである場合、主溝8による排水効果が十分でなく、溝6と溝7とを連結させた効果が十分でなくなるからである。
ここで、上記のL、Wとするために、具体的には、第1の溝のトレッド周方向の長さは、l×0.7以上とし、第2の溝のトレッド周方向の長さは、l×0.5以上とすることが好ましい。
次に、本発明のタイヤが従来例とグリップ性能及び排水性に差があることを確認するため、ドライバーによるドライ路面及びウェット路面のテスト走行を実施した。
ここで、発明例1〜6及び比較例1〜3及び参考例1〜4として、図3(a)に示すタイプのトレッドを有する、タイヤサイズがMCR190/50ZR17/Cの後輪タイヤを試作した。
また、従来例として、図1に示すタイプのトレッドを有する、タイヤサイズがMCR190/50ZR17/Cの後輪タイヤを用意した。
前輪タイヤは、タイヤサイズMCR120/70ZR17/Cの汎用品タイヤを共通して用いた。
ここで、発明例1〜3に係るタイヤは、主溝がタイヤ赤道から離間しているのに対し、発明例4〜6に係るタイヤは、主溝がタイヤ赤道にまたがっている。
また、発明例1〜3に係るタイヤは、主溝のトレッド周方向長さLが接地長lより大きく、且つ主溝のトレッド幅方向長さWが接地幅wの2倍より大きいのに対し、参考例1〜4に係るタイヤは、そのような関係を満たしていない。
なお、接地長l及び接地幅wは、後述の適用リム及び内圧としたときの値であり、具体的には、接地長lは、105mm、接地幅wは、28mmである。
各タイヤの諸元は表1に示している。
Figure 0005590927
これらのタイヤを、リムサイズMT6.0×17のリムに装着し、内圧を290kPaとして、1000ccのモーターサイクルの前輪と後輪に取り付け、グリップ性能及びウェット性能を評価する試験を行った。
グリップ性能は、ドライ路面をドライバーがテスト走行したときのフィーリングを官能評価により採点したもので絶対レベルとして満足できるレベルを100として指数化することで評価した。
同様に、ウェット性能は、ウェット路面をドライバーがテスト走行したときのフィーリングを官能評価により採点したもので絶対レベルとして満足できるレベルを100として指数化することで評価した。
なお、これらの指数は、数値が大きいほうが、性能が優れていることを表す。
試験結果を以下の表2に示す。
Figure 0005590927
表2に示すように、従来例タイヤ、比較例タイヤは、グリップ性能とウェット性能との少なくともいずれかが絶対レベルを満足していないのに対し、本発明に係る、発明例1〜6のタイヤはいずれもグリップ性能とウェット性能が共に絶対レベルを満足していることがわかる。
また、発明例1〜6の比較により、主溝がタイヤ赤道から離間している発明例1〜3は、主溝がタイヤ赤道に跨る発明例4〜6と比較してグリップ性能が特に優れていることがわかる。
さらに、発明例2と参考例1,2及び発明例5と参考例3,4の比較により、主溝のトレッド幅方向の長さLが接地長lより大きく且つ主溝のトレッド幅方向の長さWが接地幅wより大きい、発明例2、5は、それぞれ上記比較対象のタイヤよりウェット性能が特に優れていることがわかる。
サーキット等で安心してスポーティな走行ができるグリップ性能と、一般道でも、安心して走行できるウェット性能とを両立させた二輪自動車用空気入りタイヤを製造して、市場に提供できる。
1 ビード部
1a ビードコア
2 サイドウォール部
3 トレッド
4 カーカス
5 ベルト
6 第1の溝
7 第2の溝
8 主溝
91 傾斜溝
92 傾斜溝
A 主溝のタイヤ赤道面からの離間距離
L 主溝のトレッド周方向長さ
W 主溝のトレッド幅方向長さ
l タイヤの接地長
w タイヤの接地幅
Q 接地域
Q1 直進時接地域
Q2 外側接地域
R タイヤ回転方向
CL タイヤ赤道
θ1 第1の溝のトレッド周方向に対する角度
θ2 第2の溝のトレッド周方向に対する角度

Claims (2)

  1. 一対のビード部と、該ビード部に連なる一対のサイドウォール部と、両サイドウォール部間にトロイダル状に跨るトレッドとを備え、車両装着時の回転方向が指定される自動二輪車用空気入りタイヤにおいて、
    前記トレッド踏面の直進時接地域内にて前記指定タイヤ回転方向に向かってトレッド幅方向外側に傾斜して延びる第1の溝と、前記第1の溝の前記指定タイヤ回転方向の逆回転方向端部から、トレッド幅方向外側に向かって斜めに前記指定タイヤ回転方向の逆回転方向に延びる第2の溝とからなる屈曲した主溝を備え、
    前記第1の溝の前記傾斜角は5°〜20°であり、
    前記主溝のトレッド周方向長さLは、車両直進時の接地長lより大きく、且つ前記主溝のトレッド幅方向の長さWは、車両直進時の接地幅wの2倍より大きいことを特徴とする、自動二輪車用空気入りタイヤ。
  2. 前記主溝は、タイヤ赤道面から離間していることを特徴とする、請求項1に記載の自動二輪車用空気入りタイヤ。
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