JP5590573B2 - 酸素センサー - Google Patents

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Description

本発明は、遅延蛍光材料を用いた酸素センサーに関する。
気体や液体中に存在する酸素を検出する酸素センサーとして、これまでに様々な機器や装置が提案されている。その中に光学式酸素センサーと呼ばれるものがある。光学式酸素センサーは、発光材料の発光強度が酸素の存在により変化することを利用するものであり、構造がシンプルで容易に製造することができるものである。光学式酸素センサーは、使用時に酸素を消費することがなく、簡単に結果を表示させることができる点で優れている。
光学式酸素センサーとして、これまでに種々の発光材料を利用したものが提案されている。例えば特許文献1には、白金族金属の多環芳香族キレート蛍光材料を用いた酸素センサーが提案されている。また、特許文献2には、イリジウム錯体を酸素センサーに応用することが記載されている。さらに、非特許文献1には、C60やC70フラーレンを含む遅延蛍光材料を酸素センサーに利用することが記載されている。
米国特許第6664111号公報 国際公開WO2011/024737号公報
Ann. N.Y. Acad. Sci. 1130, 224-234 (2008)
特許文献1や特許文献2に記載されているように、これまでに提案されている多くの光学式酸素センサーの発光材料は貴金属を含むものである。しかしながら、貴金属を含む酸素センサーは製造コストが高くて、工業的に利用しにくいという問題がある。また、毒性や環境への影響が懸念されるものもあるため、積極的に利用しにくい側面もある。このため、貴金属を用いない光学式酸素センサーを提供することが望まれている。
また、光学式酸素センサーに用いられる発光材料は、通常は蛍光発光材料かリン光発光材料であるが、蛍光発光材料には発光寿命が短いという問題があり、リン光発光材料には発光強度が弱いという問題がある。このため、ほとんどの光学式酸素センサーは発光寿命か発光強度のいずれかが不十分であるという問題を抱えている。蛍光発光材料の寿命を改善するために、非特許文献1に記載されるように遅延蛍光材料を酸素センサーに用いることが提案されている。しかしながら、非特許文献1に記載される材料は室温で十分な発光がみられないため、その利用範囲が極めて限られてしまうという問題がある。
本発明者らはこれらの従来技術の課題を考慮して、貴金属を含まない新たな遅延蛍光材料を用いた実用性のある酸素センサーを提供することを目的として鋭意検討を進めた。特に、室温において十分な発光強度を有しており、発光寿命が長くて感度も良好なものも含む新たな酸素センサーを提供することを目的として鋭意検討を進めた。
上記の目的を達成するために鋭意検討を進めた結果、本発明者らは、遅延蛍光を示すスピロ化合物を酸素センサーに応用可能であることを見出した。特に、特定の骨格を有するスピロ化合物の中に、優れた酸素センサーを作製できる遅延蛍光材料があることを明らかにした。本発明者らは、この知見に基づいて、上記の課題を解決する手段として、以下の本発明を提供するに至った。
[1] スピロ化合物からなる遅延蛍光材料を含むことを特徴とする酸素センサー。
[2] 前記スピロ化合物が、アクリジン骨格、フルオレン骨格およびアントロン骨格からなる群より選択される少なくとも1つの骨格を含む化合物であることを特徴とする[1]に記載の酸素センサー。
[3] 前記スピロ化合物が下記一般式(1)で表される化合物であることを特徴とする[2]に記載の酸素センサー。
[一般式(1)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR17は、各々独立に水素原子または電子供与基であって、少なくとも1つは電子供与基を表す。R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、各々独立に水素原子またはα位に非共有電子対を持たない電子吸引基である。Zは、単結合またはカルボニル基を表す。ただし、Zが単結合であるとき、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16の少なくとも1つはα位に非共有電子対を持たない電子吸引基である。]
[4] 一般式(1)のZが単結合であることを特徴とする[3]に記載の酸素センサー。
[5] 一般式(1)のR17がアリール基であることを特徴とする[3]または[4]に記載の酸素センサー。
[6] 一般式(1)のR9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16の少なくとも1つが、シアノ基、または下記一般式(6)〜(9)のいずれかで表される構造を有することを特徴とする[3]〜[5]のいずれか一項に記載の酸素センサー。
[上式において、R61およびR62は、各々独立に置換もしくは無置換のアリール基を表す。R71およびR72は、各々独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表し、R71およびR72は一緒になって環構造を形成していてもよい。R81、R82およびR83は、各々独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表し、R81およびR82は一緒になって環構造を形成していてもよく、R82およびR83は一緒になって環構造を形成していてもよい。R91は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表し、Zはヘテロ芳香環を形成するのに必要な連結基を表す。]
[7] 一般式(1)のR9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16の少なくとも1つが、下記のいずれかの構造を有することを特徴とする[3]〜[5]のいずれか一項に記載の酸素センサー。
[8] 前記スピロ化合物が下記一般式(21)で表される化合物であることを特徴とする[2]に記載の酸素センサー。
[一般式(21)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、各々独立に水素原子または電子供与基であって、少なくとも1つは電子供与基を表す。R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、各々独立に水素原子または電子吸引基であって、少なくとも1つは電子吸引基を表す。]
[9] 一般式(21)のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8の少なくとも2つが電子供与基であることを特徴とする[8]に記載の遅延蛍光材料。
[10] 一般式(21)のR1、R2、R3およびR4の少なくとも1つが電子供与基であって、R5、R6、R7およびR8の少なくとも1つが電子供与基であることを特徴とする[8]に記載の遅延蛍光材料。
[11] 一般式(21)のR2およびR3の少なくとも1つが電子供与基であって、R6およびR7の少なくとも1つが電子供与基であることを特徴とする[8]に記載の遅延蛍光材料。
[12] 一般式(21)のR2またはR3が電子供与基であって、R6またはR7が電子供与基であることを特徴とする[8]に記載の遅延蛍光材料。
[13] R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8の少なくとも1つは、下記一般式(22)〜(24)のいずれかで表される骨格を含む電子供与基であることを特徴とする[8]〜[12]のいずれか一項に記載の遅延蛍光材料。
[一般式(22)において、Z1は窒素原子、酸素原子、硫黄原子または珪素原子を表し、A1およびA2として各々独立に芳香環、ヘテロ芳香環、脂肪環または非芳香族ヘテロ環を形成していてもよい。一般式(23)において、R20は水素原子、アリール基またはA4で表される環構造を形成するのに必要な原子群を表し、A3およびA4として各々独立に、ヘテロ芳香環または非芳香族ヘテロ環を形成していてもよい。一般式(24)において、 2 、Z 3 、Z 4 およびZ 5 は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表す。]
[14] 一般式(21)のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8の少なくとも1つは、下記のいずれかの骨格を含む電子供与基であることを特徴とする[8]〜[12]のいずれか一項に記載の遅延蛍光材料。
[15] 一般式(21)のR9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16の少なくとも2つが電子吸引基であることを特徴とする[8]〜[14]のいずれか一項に記載の遅延蛍光材料。
[16] 一般式(21)のR9、R10、R11およびR12の少なくとも1つが電子吸引基であって、R13、R14、R15およびR16の少なくとも1つが電子吸引基であることを特徴とする[8]〜[14]のいずれか一項に記載の遅延蛍光材料。
[17] 一般式(21)のR10またはR11が電子吸引基であって、R14またはR15が電子吸引基であることを特徴とする[8]〜[14]のいずれか一項に記載の遅延蛍光材料。
[18] 一般式(21)のR10またはR11がシアノ基であって、R14またはR15がシアノ基であることを特徴とする[8]〜[14]のいずれか一項に記載の遅延蛍光材料。
本発明によって、遅延蛍光を示すスピロ化合物を用いた新しい酸素センサーが提供される。本発明の酸素センサーは、貴金属を含まないために安価に提供することが可能である。また、本発明によれば、室温において十分な発光強度を有しており、発光寿命が長くて感度も良好な酸素センサーを提供することが可能である。
実施例1の酸素センサー中央部に窒素ガスを吹き付けた状態を示す概略図である。 実施例1の酸素センサー中央部に窒素ガスを吹き付けたときの写真である。 実施例1の酸素センサーの量子効率−波長特性を示すグラフである。 実施例1の酸素センサーのPL過渡減衰を示すグラフである。 実施例2における共蒸着膜の発光スペクトルである。 実施例2における共蒸着膜のPL過渡減衰を示すグラフである。 実施例3における共蒸着膜の発光スペクトルである。 実施例3における共蒸着膜のPL過渡減衰を示すグラフである。
以下において、本発明の内容について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施態様や具体例に限定されるものではない。なお、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
[酸素センサー]
(遅延蛍光材料)
本発明の酸素センサーは、スピロ化合物からなる遅延蛍光材料を含むことを特徴とする。ここでいうスピロ化合物とは、化合物中に存在する2個の環骨格が互いに1つの原子を共有していて、その2個の環骨格は前記1つの共有原子以外の連結基や単結合によって互いに結合していない構造を含む化合物を意味する。本発明では、特に芳香環を有するスピロ化合物からなる遅延蛍光材料を用いることが好ましく、芳香環を4つ以上有するスピロ化合物からなる遅延蛍光材料を用いることがより好ましく、アクリジン骨格、フルオレン骨格およびアントロン骨格からなる群より選択される少なくとも1つの骨格を含むスピロ化合物からなる遅延蛍光材料を用いることがさらに好ましい。そのようなスピロ化合物として、スピロ[アクリジン−9,9’−フルオレン]骨格を有する化合物、スピロ[アクリジン−9,9’−アントロン]骨格を有する化合物、スピロビフルオレン骨格(スピロ[フルオレン−9,9’−フルオレン]骨格)を有する化合物などを挙げることができる。なかでも、後述する一般式(1)で表される構造を有する化合物からなる遅延蛍光材料や、一般式(21)で表される構造を有する化合物からなる遅延蛍光材料を好ましく用いることができる。
(形態)
本発明の酸素センサーは、スピロ化合物からなる遅延蛍光材料を用いて様々な形態に構成することができる。
典型的な酸素センサーは、スピロ化合物からなる遅延蛍光材料を含む薄膜を有する酸素センサーである。例えば、そのような薄膜は基材上に形成することが可能であり、蒸着法や塗布法などにより薄膜を形成することができる。これらの蒸着法や塗布法については、通常用いられている方法を適宜アレンジすることにより実施することができる。形成する薄膜は、スピロ化合物からなる遅延蛍光材料以外の材料を含むものであってもよい。例えば、ホスト材料やバインダーなどを適宜選択して使用することができる。遅延蛍光材料以外の材料も使用して薄膜を形成する場合、薄膜中には遅延蛍光材料を0.01重量%以上含有させることが好ましく、0.1重量%以上含有させることがより好ましい。例えば、1〜10重量%の範囲内で遅延蛍光材料を用いる態様を例示することができる。
薄膜を形成する際に用いる基材としては、シリコン系の基材や石英系の基材を用いることが好ましいが、本発明で用いることができる基材はこれらに限定されるものではない。厚みやサイズは、本発明の酸素センサーの使用態様や使用目的に応じて適宜決定することができ、その範囲は制限されない。例えば、板状の基材の片面にスピロ化合物からなる遅延蛍光材料を含む薄膜を形成する態様や、板状の基材の両面にスピロ化合物からなる遅延蛍光材料を含む薄膜を形成する態様や、酸素検出が必要とされるチャンバ−内に出し入れ可能な部材を基材として、その表面にスピロ化合物からなる遅延蛍光材料を含む薄膜を形成する態様を挙げることができる。また、可撓性のあるフィルム状基材の上にスピロ化合物からなる遅延蛍光材料を含む薄膜を形成する態様も挙げることができる。可撓性のあるフィルム状基材の上にスピロ化合物からなる遅延蛍光材料を含む薄膜を形成した酸素センサーは、例えば、酸素検出が必要とされている場に存在する壁面や部材上に貼り付けて使用することが可能である。このとき、壁面や部材の表面状態に応じてフレキシブルに酸素センサーの形状を適合させて貼り付けることが可能である。さらに他の態様として、ビーズ状や小片状の基材にスピロ化合物からなる遅延蛍光材料を薄膜状に形成しておき、それをチューブや容器中に多数充填しておいてその空隙にガスや液体を流通させることにより酸素を検出することも可能である。
スピロ化合物からなる遅延蛍光材料を含む薄膜の上には、酸素透過性の透明な保護膜を形成することが可能である。そのような保護膜は、フィルム状または網目状であることが好ましい。例えば、酸素透過性の透明な樹脂保護フィルムを用いることが可能である。
また、スピロ化合物からなる遅延蛍光材料を含む薄膜と基材との間には、スピロ化合物からなる遅延蛍光材料を含まない中間層を設けることも可能である。そのような中間層は、例えば外部からの物理的な衝撃を和らげるためのクッション層の機能を持つものであってもよいし、基材表面の凹凸を平坦化するための平坦化層であってもよい。
本発明の酸素センサーは、流動性のある状態で用いることもできる。例えば、スピロ化合物からなる遅延蛍光材料を溶液状態にしておいて、その中にガスを吹き込むことによりガス中の酸素を検出するために用いることが可能である。また、ガスの入った容器中に、スピロ化合物からなる遅延蛍光材料の溶液を導入してガス中の酸素を検出してもよい。
(酸素検出)
本発明の酸素センサーにより酸素を検出する際には、励起光を照射することが好ましい。例えば、紫外線などの励起光を連続的に酸素センサーに照射し、その発光強度の強弱により酸素を検出することができる。本発明の酸素センサーは、大気中において励起光を照射すると図2に示すように例えば緑色の蛍光を発光する。図2では、酸素センサーの中央部に窒素ガスを吹き付けているが、窒素ガスを吹き付けた中央部では発光強度が高くなって明るく見える。これは窒素ガスを吹き付けることにより酸素濃度を下げた部位では明るくなり、酸素濃度が高い部位では暗く発光することを示している。このため、本発明の酸素センサーを用いれば、発光強度により酸素を検出することができる。
本発明の酸素センサーに、発光強度を測定する機器をとりつけておけば、発光強度に応じて酸素濃度を測定することが可能である。すなわち、あらかじめ酸素濃度と発光強度の関係を調べておき、その相関関係を明らかにしておけば、測定対象物を測定した際の発光強度から酸素濃度を知ることができる。このような発光強度測定機器としては、蛍光測定に通常用いられている機器を採用することができる。また、自動計算機能や自動画像処理機能を持たせたデータ処理装置を接続することにより、自動化することもできる。
本発明によれば、従来よりも発光寿命が長い発光材料を用いた酸素センサーを提供することが可能である。例えば、米国特許第6664111号公報や国際公開WO2011/024737号公報に記載されているようなルテニウム錯体に比べて、本発明では例えば30倍以上の発光寿命を有する発光材料を用いて酸素センサーを作製することが可能である。発光寿命が長ければ消光を受けやすくなるため、本発明によれば従来よりも低酸素濃度でも検出できる高感度な酸素センサーを提供することが可能である。
また本発明によれば、室温でも効果的に酸素を検出することができる酸素センサーを提供することが可能である。例えば、C60やC70フラーレンを用いた従来の遅延蛍光材料は、ΔESTが大きいために室温では高効率で発光させることができないが、本発明によればΔESTが小さくて室温でも高効率で発光する遅延蛍光材料により酸素センサーを作製することが可能である。ここでいうΔESTとは、発光ピーク波長で規定される励起一重項エネルギーと励起三重項エネルギーとのエネルギー差である。
(応用)
本発明の酸素センサーは、酸素の検出や濃度測定が必要とされる様々なガスや液体に用いることが可能である。例えば、工業的な用途に限らず、食品や環境や医療や研究の分野においても応用することが可能であり、その対象は極めて広い。また、本発明の酸素センサーは、酸素濃度の経時的な変化を検出したり測定したりすることにも利用することが可能であり、検出や測定が必要なときに限って励起光を照射して記録すれば、効率良く検出や測定を行うことができる。さらに、本発明の酸素センサーは設置場所を移動させながら検出や測定を行うことも可能である。
以下において、本発明の酸素センサーに用いる典型的な遅延蛍光材料について詳しく説明する。
[一般式(1)で表される化合物]
本発明の酸素センサーには、下記一般式(1)で表される遅延蛍光材料を好ましく用いることができる。
一般式(1)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR17は、各々独立に水素原子または電子供与基であって、少なくとも1つは電子供与基を表す。R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、各々独立に水素原子またはα位に非共有電子対を持たない電子吸引基であるZは、単結合またはカルボニル基を表す。ただし、Zが単結合であるとき、R9〜R16の少なくとも1つはα位に非共有電子対を持たない電子吸引基である。
一般式(1)のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR17は、各々独立に水素原子または電子供与基であって、少なくとも1つは電子供与基を表す。これらの2つ以上が電子供与基を表すとき、2つ以上の電子供与基は同一であっても異なっていてもよい。好ましいのは、同一である場合である。R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8のうち、電子供与基を表すものはR2、R3、R4、R5、R6、R7およびR17のいずれかであることが好ましく、R2、R3、R6、R7およびR17のいずれかであることがより好ましい。さらに好ましくは、R17であるか、あるいは、R2、R3、R6およびR7のいずれか1つまたは2つであり、2つである場合はR2およびR3のいずれか1つと、R6およびR7のいずれか1つであることが好ましい。
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR17が表す電子供与基は、スピロ環に結合したときに電子をこれらの環に対して供与する性質を有する基である。電子供与基は、芳香族基、ヘテロ芳香族基、脂肪族基のいずれであってもよく、これらの2つ以上が複合した基であってもよい。電子供与基の例として、アルキル基(直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよく、好ましくは炭素数1〜6であり、より好ましくは炭素数1〜3であり、具体例としてメチル基、エチル基、プロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基を挙げることができる)、アルコキシ基(直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよく、好ましくは炭素数1〜6であり、より好ましくは炭素数1〜3であり、具体例としてメトキシ基を挙げることができる)、アミノ基または置換アミノ基(好ましくは芳香族基で置換されたアミノ基であり、具体例としてジフェニルアミノ基、アニリル基、トリルアミノ基を挙げることができる)、アリール基(単環でも融合環でもよいし、さらにアリール基で置換されていてもよく、具体例としてフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基を挙げることができる)、複素環構造を含む電子供与基(好ましくは窒素原子または硫黄原子を含む複素環構造を含む電子吸引基であり、具体例として、チオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、ジュロリジル基、ピロリル基、インドリル基、カルバゾリル基を挙げることができる)等を挙げることができる。電子供与基は、例えばσp値が−0.06以下であるものが好ましく、−0.14以下であるものがより好ましく、−0.28以下であるものがさらに好ましい。
これらの中で、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、水素原子、または電子供与基で置換されたアリール基であることが好ましい。ここでいうアリール基は、1つの芳香環からなるものであってもよいし、2以上の芳香環が融合した構造を有するものであってもよい。アリール基の炭素数は、6〜22であることが好ましく、6〜18であることがより好ましく、6〜14であることがさらに好ましく、6〜10であること(すなわちフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基)がさらにより好ましく、フェニル基が最も好ましい。また、アリール基に置換する電子供与基は、上記のσp値を有するものであることが好ましい。
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、水素原子または下記一般式(2)で表される基であることがより好ましい。
一般式(2)において、R21、R22、R23、R24およびR25は、各々独立に水素原子または電子供与基を表す。ただし、これらの少なくとも1つは電子供与基を表す。ここでいう電子供与基は、上記のσp値を有するものであることが好ましい。R21、R22、R23、R24およびR25の中では、R22およびR24が電子供与基であるか、R23が電子供与基であることが好ましく、R23が電子供与基であることがより好ましい。
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、水素原子または下記一般式(3)〜(5)のいずれかで表される構造を有するものであることがさらに好ましい。
上式において、R31およびR32は、各々独立に置換もしくは無置換のアリール基を表し、R31が表すアリール基とR32が表すアリール基は連結していてもよい。R41、R42およびR43は、各々独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表し、R41およびR42は一緒になって環構造を形成していてもよく、R42およびR43は一緒になって環構造を形成していてもよい。R51、R52およびR53は、各々独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表し、R51およびR52は一緒になって環構造を形成していてもよく、R52およびR53は一緒になって環構造を形成していてもよい。
41およびR42、R42およびR43、R51およびR52、ならびにR52およびR53が一緒になって形成する環構造は、芳香環、ヘテロ芳香環、脂肪環のいずれであってもよいが、芳香環またはヘテロ芳香環であることが好ましく、芳香環であることがより好ましい。環構造の具体例として、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環などを挙げることができる。
本明細書でいうアリール基は、1つの芳香環からなるものであってもよいし、2以上の芳香環が融合した構造を有するものであってもよい。アリール基の炭素数は、6〜22であることが好ましく、6〜18であることがより好ましく、6〜14であることがさらに好ましく、6〜10であること(すなわちフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基)がさらにより好ましい。
本明細書でいうアルキル基は、直鎖状であっても、分枝状であっても、環状であってもよい。好ましいのは直鎖状または分枝状のアルキル基である。アルキル基の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜3であること(すなわちメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基)がさらにより好ましい。環状のアルキル基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基を挙げることができる。
アリール基やアルキル基の置換基としては、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基を挙げることができる。置換基として採用しうるアルキル基とアリール基の説明と好まし範囲は、上記と同じである。また、置換基として採用しうるアルコキシ基は、直鎖状であっても、分枝状であっても、環状であってもよい。好ましいのは直鎖状または分枝状のアルコキシ基である。アルコキシ基の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜3であること(すなわちメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基)がさらにより好ましい。環状のアルコキシ基としては、例えばシクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基を挙げることができる。また、置換基として採用しうるアリールオキシ基は、1つの芳香環からなるものであってもよいし、2以上の芳香環が融合した構造を有するものであってもよい。アリールオキシ基の炭素数は、6〜22であることが好ましく、6〜18であることがより好ましく、6〜14であることがさらに好ましく、6〜10であること(すなわちフェニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基)がさらにより好ましい。
一般式(3)〜(5)中のアルキル基とアリール基の置換基としては、電子供与性を示す基も挙げることができる。
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8が表す電子供与基の好ましい具体例を以下に列挙する。ただし、一般式(1)において採用することができる電子供与基は、これらの具体例によって限定的に解釈されることはない。
一般式(1)のR9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、各々独立に水素原子またはα位に非共有電子対を持たない電子吸引基を表す。ただし、Zが単結合であるとき、これらの少なくとも1つはα位に非共有電子対を持たない電子吸引基を表す。これらの2つ以上が電子吸引基を表すとき、2つ以上の電子吸引基は同一であっても異なっていてもよい。好ましいのは、同一である場合である。R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16のうち、電子吸引基を表すものはR10、R11、R12、R13、R14およびR15のいずれかであることが好ましく、R10、R11、R14およびR15のいずれかであることがより好ましい。さらに好ましくは、R10、R11、R14およびR15のいずれか1つまたは2つであり、2つである場合はR10およびR11のいずれか1つと、R14およびR15のいずれか1つであることが好ましい。
一般式(1)のR9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16が表す電子吸引基は、スピロ環に結合したときに電子をスピロ環から吸引する性質を有する基である。ただし、α位に非共有電子対を持つ電子吸引基(例えばハロゲン原子)は除かれる。電子吸引基は、芳香族基、ヘテロ芳香族基、脂肪族基のいずれであってもよく、これらの2つ以上が複合した基であってもよい。電子吸引基の例として、ニトロ基、パーフルオロアルキル基(好ましくは炭素数1〜6であり、より好ましくは炭素数1〜3であり、具体例としてトリフルオロメチル基を挙げることができる)、スルホニル基、複素環構造を含む電子吸引基(好ましくは窒素原子または硫黄原子を含む複素環構造を含む電子吸引基であり、具体例として、オキサジアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、テトラゾリル基、チアゾリル基、イミダゾリル基等を挙げることができる)、フォスフィンオキシド構造を含む基、シアノ基等を挙げることができる。電子吸引基の群として、例えば上記の電子吸引基の具体例からシアノ基を除いた群を挙げることができる。電子吸引基は、例えばσp値が0.02以上であるものが好ましく、0.34以上であるものがより好ましく、0.62以上であるものがさらに好ましい。
9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16のうちの少なくとも1つは、シアノ基、または下記一般式(6)〜(9)のいずれかで表される構造を有することが好ましい。
上式において、R61およびR62は、各々独立に置換もしくは無置換のアリール基を表す。R71およびR72は、各々独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表し、R71およびR72は一緒になって環構造を形成していてもよい。R81、R82およびR83は、各々独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表し、R81およびR82は一緒になって環構造を形成していてもよく、R82およびR83は一緒になって環構造を形成していてもよい。R91は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表し、Zはヘテロ芳香環を形成するのに必要な連結基を表す。Zの連結鎖は炭素原子のみからなるものであってもよいし、ヘテロ原子のみからなるものであってもよいし、炭素原子とヘテロ原子が混在しているものであってもよい。ヘテロ原子としては、窒素原子が好ましい。また、連結鎖は2〜4原子長であることが好ましく、2または3原子長であることがより好ましい。
ここでいうアリール基とアルキル基の説明と好ましい範囲については、R41、R42、R43、R51、R52およびR53が採りうるアリール基とアルキル基の説明と好ましい範囲を参照することができる。ただし、一般式(6)〜(9)におけるアリール基やアルキル基の置換基としては、アルキル基、アリール基、アルキルオキシ基、アリールオキシ基の他に、電子吸引性を示す基も挙げることができる。
9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16が表す電子吸引基の好ましい具体例を以下に列挙する。ただし、一般式(1)において採用することができる電子吸引基は、これらの具体例によって限定的に解釈されることはない。
一般式(1)におけるR17は、水素原子または電子供与基を表し、R17の電子供与基については、上記のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8における電子供与基の説明と好ましい範囲を参照することができる。ただし、R17の電子供与基は、無置換のアリール基であることも好ましく、その中では無置換のフェニル基であることがより好ましい。R17の電子供与基は、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8における電子供与基と同一であっても異なっていてもよい。
一般式(1)におけるZは、単結合またはカルボニル基である。いずれも好ましい。発光効率の観点からは、例えば、R17がアリール基であって、Zがカルボニル基である化合物群などが、より好ましい。
一般式(1)で表される化合物の分子量は、例えば該化合物を含む有機層を蒸着法により製膜して利用することを意図する場合には、1500以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましく、800以下であることがさらにより好ましい。分子量の下限値については、例えば350以上とすることができる。
以下において、一般式(1)で表される化合物の具体例を例示するが、本発明において用いることができる一般式(1)で表される化合物はこれらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。なお、表中において、D1〜D3は上記の電子供与基で置換されたアリール基を表し、A1〜A5は上記の電子吸引基を表し、Hは水素原子を表し、Phはフェニル基を表す。
一般式(1)で表される化合物の合成法は特に制限されない。一般式(1)で表される化合物の合成は、既知の合成法や条件を適宜組み合わせることにより行うことができる。
例えば、好ましい合成法として、下記のスキームで表される合成法を挙げることができる。ここでは、アクリジン骨格に電子供与基Dが1つ置換し、アクリジン骨格の窒素原子にR17が置換し、フルオレン骨格に電子吸引基Aが1つ置換した一般式(15)の化合物の合成法を典型例として挙げている。
上記のスキームでは、まず一般式(11)で表されるハロゲン置換ジフェニルアミンに対して、n−ブチルリチウムを反応させ、さらに一般式(12)で表されるフルオレンを反応させる。これによって得られる一般式(13)で表されるフルオレン誘導体に、酢酸と濃塩酸を添加して加熱することにより閉環反応を行い、一般式(14)で表される目的生成物を得ることができる。一般式(11)におけるXはハロゲン原子を表す。具体的にはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができ、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、臭素原子がより好ましい。一般式(11)、(13)および(14)におけるDは電子供与基を表し、一般式(12)、(13)および(14)におけるAは電子吸引基を表す。第1ステップのカップリング反応と、第2ステップの閉環反応には、同種のカップリング反応や閉環反応に通常用いられている反応条件を採用することができる。
一般式(14)以外の一般式(1)で表される化合物の合成法は、上記のスキームの方法に準じて合成することができる。例えば、一般式(1)で表される化合物のうち、アントロン骨格を有するものについては、上記スキームの一般式(12)で表される化合物の代わりに、電子吸引基Aで置換されたアントラキノン(アントラセン−9,10−キノン)を用いることにより、同様に合成することができる。また、スピロ環に導入しようとしている電子供与基Dの種類や電子吸引基Aの種類によっては、その置換基に特有の反応を利用することも可能である。例えば、電子吸引基としてシアノ基を導入しようとする場合は、シアノ基を導入しようとしている位置にハロゲン原子が置換したスピロ化合物を合成しておいて、次いでCuCNとハロゲン原子を反応させることによってハロゲン原子をシアノ基へ変換することができる。
これらの反応の詳細については、後述の合成例を参考にすることができる。また、一般式(1)で表される化合物は、その他の公知の合成反応を組み合わせることによっても合成することができる。
[一般式(21)で表される化合物]
本発明の酸素センサーには、下記一般式(21)で表される遅延蛍光材料を好ましく用いることもできる。
一般式(21)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、各々独立に水素原子または電子供与基であって、少なくとも1つは電子供与基を表す。R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、各々独立に水素原子または電子吸引基であって、少なくとも1つは電子吸引基を表す。
一般式(21)のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、各々独立に水素原子または電子供与基を表す。ただし、これらの少なくとも1つは電子供与基を表す。これらの2つ以上が電子供与基を表すとき、2つ以上の電子供与基は同一であっても異なっていてもよい。好ましいのは、同一である場合である。R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8のうち、電子供与基を表すものはR2、R3、R4、R5、R6およびR7のいずれか1つ以上、望ましくは2つ以上であることが好ましく、R2、R3、R6およびR7のいずれか1つ以上、望ましくは2つ以上であることがより好ましい。さらに好ましくは、R2、R3、R6およびR7のいずれか1つ以上、望ましくは2つ以上であり、2つである場合はR2およびR3のいずれか1つと、R6およびR7のいずれか1つであることが好ましい。
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8が表す電子供与基は、スピロビフルオレン環に結合したときに電子をスピロビフルオレン環に対して供与する性質を有する基である。電子供与基は、芳香族基、ヘテロ芳香族基、脂肪族基のいずれであってもよく、これらの2つ以上が複合した基であってもよい。電子供与基の例として、アルキル基(直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよく、好ましくは炭素数1〜6であり、より好ましくは炭素数1〜3であり、具体例としてメチル基、エチル基、プロピル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基を挙げることができる)、アルコキシ基(直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよく、好ましくは炭素数1〜6であり、より好ましくは炭素数1〜3であり、具体例としてメトキシ基を挙げることができる)、アミノ基または置換アミノ基(好ましくは芳香族基で置換されたアミノ基であり、具体例としてジフェニルアミノ基、アニリル基、トリルアミノ基を挙げることができる)、アリール基(単環でも融合環でもよいし、さらにアリール基で置換されていてもよく、具体例としてフェニル基、ビフェニル基、ターフェニル基を挙げることができる)、複素環構造を含む電子供与基(好ましくは窒素原子または硫黄原子を含む複素環構造を含む電子供与基である。具体例として、チオフェニル基、ベンゾチオフェニル基、ジュロリジル基、ピロリル基、インドリル基、カルバゾリル基を挙げることができる。)等を挙げることができる。電子供与基は、例えばσp値が−0.06以下であるものが好ましく、−0.14以下であるものがより好ましく、−0.28以下であるものがさらに好ましい。
1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8のうちの少なくとも1つは、下記一般式(22)〜(24)のいずれかで表される骨格を含む電子供与基であることが好ましい。
一般式(22)において、Z1は窒素原子、酸素原子、硫黄原子または珪素原子を表す。また、一般式(22)におけるA1およびA2は、各々独立に芳香環、ヘテロ芳香環、脂肪環または非芳香族ヘテロ環を形成していてもよいし、これらの環を形成していなくてもよい。例えば、Z1が窒素原子であるとき、A1およびA2が両方ともベンゼン環を形成している場合は、一般式(22)はカルバゾール骨格を表す。また、A1がベンゼン環を形成していて、A2が環構造を形成していない場合は、一般式(22)はインドール骨格を表す。さらに、A1およびA2が両方とも環構造を形成していない場合は、一般式(22)はピロール骨格を表す。他の例として、Z1が珪素原子であるとき、A1およびA2が両方ともベンゼン環を形成している場合は、一般式(22)はシラフロオレン骨格を表す。また、Z1が硫黄原子であるとき、A1がベンゼン環を形成していて、A2が環構造を形成していない場合は、一般式(22)はベンゾチオフェン骨格を表す。
一般式(22)のA1およびA2が環構造を形成しているとき、その環構造は複数の環が融合した融合環構造であってもい。そのような融合環は、芳香環どうしが融合したものであってもよいし、ヘテロ芳香環どうしが融合したものであってもよいし、脂肪環どおりが融合したものであってもよいし、さらには芳香環とヘテロ芳香環のように異なる種類の環が融合したものであってもよく、特に制限されない。また、融合する環どうしは同一であっても異なっていてもよい。例えば、Z1が硫黄原子であるとき、A1がフラン環がベンゼン環に融合した環構造を形成していて、A2が環構造を形成していない場合は、一般式(22)はベンゾジフラン骨格を表す。
一般式(22)のA1およびA2が形成しうる環構造は、芳香環または複素芳香環であることが好ましく、芳香環であることがより好ましい。
1およびA2が形成しうる芳香環はベンゼン環である。A1およびA2が形成しうるヘテロ芳香環としては、例えばフラン環、チオフェン環、ピロール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、イソチアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、フラザン環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環を挙げることができる。A1およびA2が形成しうる脂肪環として、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロヘプテン環、シクロペンタジエン環、シクロヘキサジエン環、シクロヘプタジエン環、シクロヘプタトリエン環を挙げることができる。A1およびA2が形成しうる非芳香族ヘテロ環として、例えば、ピロリン環、イミダゾリン環、ピラゾリン環を挙げることができる。A1およびA2が形成しうる融合環としては、例えば、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、インドール環、イソインドール環、インダゾール環、クロメン環、キノリン環、イソキノリン環、シンノリン環、キナゾリン環、キノキサリン環、フタラジン環、プテリジン環、キサンテン環、カルバゾール環、フェナントリジン環、アクリジン環、フェナジン環、フェナントロリン環等を挙げることができる。
一般式(23)において、R20は水素原子、アリール基またはA4で表される環構造を形成するのに必要な原子群を表す。また、一般式(23)におけるA3およびA4は、各々独立にヘテロ芳香環または非芳香族ヘテロ環を形成していてもよいし、これらの環を形成していなくてもよい。A3およびA4が形成しうるヘテロ芳香環または非芳香族ヘテロ環の具体例については、上記のA1およびA2が形成しうるヘテロ芳香環または非芳香族ヘテロ環の具体例を参照することができる。また、R20が採りうるアリール基は、1つの芳香環からなるものであってもよいし、2以上の芳香環が融合した構造を有するものであってもよい。アリール基の環構成炭素数は、6〜22であることが好ましく、6〜18であることがより好ましく、6〜14であることがさらに好ましく、6〜10であること(すなわちベンゼン環、ナフタレン環)がさらにより好ましく、フェニル基が最も好ましい。
一般式(23)で表される構造の例として、例えば、R20が水素原子で、A3が環構造を形成していない場合は、一般式(23)はアニリン骨格を表す。また、R20がベンゼン環で、A3が環構造を形成していない場合は、一般式(23)はジフェニルアミン骨格を表す。さらに、R20がピペリジン環を形成するのに必要な原子群であり、A3がピペリジン環を形成している場合は、一般式(23)はジュロリジン骨格を表す。
一般式(24)において、 2 、Z 3 、Z 4 およびZ 5 は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表す。これらの原子は同一であっても異なっていてもよいが、好ましいのは同一である場合である。
以下に一般式(22)〜(24)で表される環構造の好ましい具体例を例示する。ただし、本発明において採用することができる環構造は、これらの具体例によって限定的に解釈されることはない。
一般式(22)〜(24)で表される骨格に結合する原子または原子群は、置換基全体が電子供与性を示すように選択することができる。これらの骨格に結合することができる典型的な置換基として、アルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基を挙げることができる。また、電子供与基を置換基として採用することも好ましい。
本明細書でいうアルキル基は、直鎖状であっても、分枝状であっても、環状であってもよい。好ましいのは直鎖状または分枝状のアルキル基である。アルキル基の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜3であること(すなわちメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基)がさらにより好ましい。環状のアルキル基としては、例えばシクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基を挙げることができる。
本明細書でいうアリール基は、1つの芳香環からなるものであってもよいし、2以上の芳香環が融合した構造を有するものであってもよい。アリール基の環構成炭素数は、6〜22であることが好ましく、6〜18であることがより好ましく、6〜14であることがさらに好ましく、6〜10であること(すなわちフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基)がさらにより好ましく、フェニル基が最も好ましい。
本明細書でいうアルコキシ基は、直鎖状であっても、分枝状であっても、環状であってもよい。好ましいのは直鎖状または分枝状のアルコキシ基である。アルコキシ基の炭素数は、1〜20であることが好ましく、1〜12であることがより好ましく、1〜6であることがさらに好ましく、1〜3であること(すなわちメトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基)がさらにより好ましい。環状のアルコキシ基としては、例えばシクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基を挙げることができる。
本明細書でいうアリールオキシ基は、1つの芳香環からなるものであってもよいし、2以上の芳香環が融合した構造を有するものであってもよい。アリールオキシ基の炭素数は、6〜22であることが好ましく、6〜18であることがより好ましく、6〜14であることがさらに好ましく、6〜10であること(すなわちフェニルオキシ基、1−ナフチルオキシ基、2−ナフチルオキシ基)がさらにより好ましい。
一般式(21)のR9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、各々独立に水素原子または電子吸引基を表す。ただし、これらの少なくとも1つは電子吸引基を表す。これらの2つ以上が電子吸引基を表すとき、2つ以上の電子吸引基は同一であっても異なっていてもよい。好ましいのは、同一である場合である。R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16のうち、電子吸引基を表すものはR10、R11、R12、R13、R14およびR15のいずれか1つ以上、望ましくは2つ以上であることが好ましく、R10、R11、R14およびR15のいずれか1つ以上、望ましくは2つ以上であることがより好ましい。さらに好ましくは、R10、R11、R14およびR15のいずれか1つ以上、望ましくは2つ以上であり、2つである場合はR10およびR11のいずれか1つと、R14およびR15のいずれか1つであることが好ましい。
一般式(21)のR9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16が表す電子吸引基は、スピロビフルオレン環に結合したときに電子をスピロビフルオレン環から吸引する性質を有する基である。電子吸引基は、芳香族基、ヘテロ芳香族基、脂肪族基のいずれであってもよく、これらの2つ以上が複合した基であってもよい。電子吸引基の例として、ニトロ基、パーフルオロアルキル基(好ましくは炭素数1〜6であり、より好ましくは炭素数1〜3であり、具体例としてトリフルオロメチル基を挙げることができる)、スルホニル基、複素環構造を含む電子吸引基(そのような電子吸引基群として例えばトリアジノ基以外の電子吸引基群を挙げることができ、好ましくは窒素原子または硫黄原子を含む複素環構造を含む電子吸引基であり、具体例として、オキサジアゾリル基、ベンゾチアジアゾリル基、テトラゾリル基、チアゾリル基、イミダゾリル基等を挙げることができる)、フォスフィンオキシド構造を含む基、シアノ基等を挙げることができる。電子吸引基は、例えばσp値が0.02以上であるものが好ましく、0.34以上であるものがより好ましく、0.62以上であるものがさらに好ましい。また、好ましい電子吸引基として、シアノ基またはシアノ基よりも電子吸引性が大きな基(例えばニトロ基)を挙げることができる。
一般式(21)で表される化合物の集合体として、種々の化合物群を規定することが可能である。例えば、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8の少なくとも1つが電子供与基で置換されていてもよいジアリールアミノ基であって、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16の少なくとも1つがシアノ基である化合物群や、一般式(21)からその化合物群を除いた化合物群などを挙げることができる。
一般式(21)で表される化合物の別の集合体として、例えば、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16のうちの11〜14個が水素原子である化合物群を挙げることもできる。このとき、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8のうちの4〜7個が水素原子であることが好ましく、6または7個が水素原子であることがより好ましい。また、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16のうちの4〜7個が水素原子であることが好ましく、6または7個が水素原子であることがより好ましい。好ましい例として、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8のうちの7個が水素原子であって、なおかつR9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16のうちの7個が水素原子である化合物や、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8のうちの6個が水素原子であって、なおかつR9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16のうちの6個が水素原子である化合物を挙げることができる。
一般式(21)で表される化合物のさらに別の集合体として、例えば、モノスピロビフルオレン化合物群を挙げることもできる。この化合物群では、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16が、スピロビフルオレン環を含む基であることはない。
一般式(21)で表される化合物の分子量は、例えば該化合物を含む有機層を蒸着法により製膜して利用することを意図する場合には、1500以下であることが好ましく、1200以下であることがより好ましく、1000以下であることがさらに好ましく、800以下であることがさらにより好ましい。分子量の下限値については、例えば350以上とすることができる。
以下において、一般式(21)で表される化合物の具体例を例示するが、本発明において用いることができる一般式(21)で表される化合物はこれらの具体例によって限定的に解釈されるべきものではない。なお、表中において、D1〜D10は上記の骨格を有する無置換の電子供与基を表し、CNはシアノ基を表し、Hは水素原子を表す。
上記化合物209は公知化合物であり、既知の化合物合成法を組み合わせることにより合成することが可能である。例えば、化合物209は、2,7−ジシアノスピロビフルオレンをヨウ化剤でジヨード化することにより、2’、7’−ジヨウ化−2,7−ジシアノスピロビフルオレンとし、さらにジフェニルアミンと反応させることによって合成することができる。各ステップの反応条件は、公知の反応条件を選択して採用することができる。
また、他の好ましい合成法として、以下のスキームで表される合成法も挙げることができる。
上記のスキームでは、まず一般式(31)で表されるジハロゲノスピロビフルオレンに対して一般式(32)で表されるボロン酸を反応させる。一般式(31)におけるXはハロゲン原子を表す。具体的にはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を挙げることができ、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、臭素原子がより好ましい。一般式(32)におけるDは、電子供与基を表す。この反応では、一般式(32)で表される化合物が一般式(31)の一方のXに対してだけ反応するように条件を制御する。例えば、一般式(32)で表される化合物の使用量を少量に抑えることにより、二置換体の生成を抑えることができる。この反応により得られた一般式(33)で表される化合物を、さらに一般式(34)で表されるボロン酸と反応させる。一般式(34)におけるAは電子吸引基を表す。この反応によって、一般式(35)で表される目的生成物を得ることができる。第1ステップと第2ステップにおけるハロゲノスピロビフルオレンとボロン酸との反応には、通常用いられている反応条件を採用することができる。
上記のスキームの第1ステップと第2ステップで用いるボロン酸は、入れ替えてもよい。すなわち、第1ステップにおいて一般式(34)で表されるボロン酸を反応させ、第2ステップにおいて一般式(32)で表されるボロン酸を反応させてもよい。
一般式(35)以外の一般式(21)で表される化合物の合成法は、上記のスキームの方法に準じて合成することができる。また、ハロゲノスピルビフルオレンに導入しようとしている置換基の種類によっては、その置換基に特有の反応を利用することも可能である。例えば、ジフェニルホスフィニル基を導入しようとする場合は、ハロゲノスピルビフルオレンとクロロジフェニルホスフィンを反応させてまずジフェニルホスフィノ基を導入し、次いで過酸化水素などを用いて酸化することによってジフェニルホスフィノ基をジフェニルホスフィニル基へ変換することができる。
以下に合成例、試験例および製造例を挙げて本発明の特徴をさらに具体的に説明する。以下に示す材料、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
(合成例1)
本合成例において、以下のスキームにしたがって化合物1を合成した。
2−ブロモトリフェニルアミン6.0g(18.5mmol、100mL、化合物101)を三つ口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換し、テトラヒドロフラン(THF)50mLを加えて攪拌した。攪拌後、この溶液を−78℃に冷却して20分攪拌した。攪拌後、n−ブチルリチウムヘキサン溶液11.2mL(18.5mmol)をシリンジにより加え、−78℃で2時間攪拌した。次に、この溶液を、2,7−ジブロモ−9−フルオレノン5.0g(14.8mmol、化合物102)とテトラヒドロフラン200mLの混合物へ滴下ロートを用いて加えた。この混合物を室温で20時間攪拌した。攪拌後、この溶液へ水を加えて30分攪拌した。この混合物に酢酸エチルを加えて抽出した。有機層と水層を分離し有機層に硫酸ナトリウムを加えて乾燥した。この混合物を吸引ろ過してろ液を得た。得られたろ液を濃縮し、そのまま次の反応に用いた。
2,7−ジブロモ−9−(2−(ジフェニルアミノ)フェニル)−9H−フルオレン−9−オール(14.8mmol、化合物103)を300mLナスフラスコに入れ、酢酸100mL、濃塩酸3.0mLを加え、130℃で加熱攪拌した。反応終了後、この混合物を吸引ろ過して固体を得た。得られた固体をメタノールおよび水で洗浄し、得られた固体をテトラヒドロフラン1Lに溶解し、シリカゲルを用いてろ過を行った。得られたろ液を濃縮して得た固体をアセトンおよび酢酸エチルの混合溶媒で洗浄したところ、粉末状白色固体を収量4.26g、収率51%で得た。
2’,7’−ジブロモ−10−フェニル−10H−スピロ[アクリジン−9,9’−フルオレン]2.00g(3.53mmol、化合物104)、シアン化銅(I)0.792g(8.84mmol)を100mL三つ口フラスコに入れ、フラスコ内を窒素置換した。この混合物へ、N−メチル−2−ピロリジノン50mLを加えた。この混合物を170℃で20時間攪拌した。次に、この混合物を水酸化ナトリウム水溶液に加えて攪拌し、次亜塩素酸ナトリウム水溶液を加えてさらに30分間攪拌した。この混合物をトルエンに溶解した後、水層と有機層を分離し、有機層を水で洗浄した。この有機層を硫酸マグネシウムにより乾燥した。得られた混合物を吸引ろ過してろ液を得た。さらに、得られたろ液を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製した。カラムクロマトグラフィーは、トルエン:ヘキサン=1:2を展開溶媒として用い、次いでトルエン、トルエン:酢酸エチル=50:1の混合溶媒を展開溶媒として用いることにより行った。得られたフラクションを濃縮して得た固体をクロロホルムに溶解し、GPCを用いて分離した。得られたフラクションを濃縮して得た固体をアセトンとメタノールの混合溶媒で再結晶し、針状黄色固体(化合物1)を収量0.81g、収率50%で得た。化合物の同定は1H−NMR,13C−NMR,TOF−Massおよび元素分析により行った。
1H-NMR (500 MHz, CDCl3, TMS, δ): 6.26 (dd, J=7.8Hz, 1.5Hz, 2H), 6.42 (dd, J=8.4Hz, 0.8Hz, 2H), 6.62 (td,J=7.4Hz, 1.1Hz, 2H), 7.01 (td, J=7.8Hz, 1.5Hz, 2H), 7.49 (d, J=7.8Hz, 2H), 7.61 (t, J=7.5Hz, 1H), 7.73-7.76 (m, 6H), 7.94 (d, J=8.3Hz, 2H)
13C-NMR (125MHz, CDCl3, δ): 157.49, 141.50, 141.12, 140.30, 132.20, 131.32, 130.91, 129.97, 128.87, 128.36, 127.11, 121.62, 121.29, 120.96, 118.72, 115.48, 113.20, 57.25
TOF-Mass [M+]: Anal. Calcd for C33H19N3: 458.16, found: 458.24
元素分析: Anal. Calcd for C33H19N3:C 86.63, H 4.19, N 9.18%; found:C 86.82, H 4.23, N 9.16%.
(実施例1)
本実施例において、合成例1で合成した化合物1を用いて酸素センサーを作製し、評価した。
45mm四方のシリコン基板上に、6重量%の化合物1とTPSi−Fを共蒸着することによって発光層を80nmの厚さで製膜し、酸素センサーを作製した。
図1に示すように、この酸素センサー1を25℃の大気が入っているチャンバ−2内に入れ、チャンバ−の外に設置したUVランプ3から254nmの紫外線を連続的に照射した。酸素センサー1は緑色に発光した。次に窒素ボンベ4に接続した窒素導入ノズル5から窒素ガスを酸素センサー1の中央部に向けて吹き付けた。その結果、図2に示すように酸素センサーの中央部の発光強度が高くなることが確認された。この結果は、窒素ガスを吹き付けることにより、酸素センサー中央部の酸素が除去されたため、遅延蛍光が効率良く起こるようになって、発光強度が高まったことを示している。逆に、窒素ガスを吹き付けていない周縁部は、酸素により発光が消光されているため発光強度が低くなっている。このことは、発光強度(発光の明暗)により、チャンバ−内の酸素の存在を検出できることを示している。
図3に、窒素ガスを吹き付けた場合と吹き付けなかった場合の量子効率−波長特性を示す。窒素ガスを吹き付けた場合は量子効率が最大67.3%であり、窒素ガスを吹き付けなかった場合は量子効率が最大9.7%であり、その差が大きいことが確認された。
また、ストリークカメラを用いてPL過渡減衰を測定した結果を図4に示す。2〜5Paの減圧下では発光寿命が3ms以上であり、大気中でも発光寿命が400μsもの長さになっていることが確認された。
(実施例2)
本実施例において、化合物141を用いて試験を行った。
10重量%の化合物141とDPEPOまたはUGH2を共蒸着することにより石英基板上に製膜し、PL発光スペクトル、PL量子収率、PL過渡減衰を測定した。図5に励起波長339nmにおけるPL発光スペクトルを示し、図6にPL過渡減衰曲線を示す。化合物141によって、短寿命の蛍光に加え、長寿命成分に由来する遅延蛍光が観測された。PL量子収率はDPEPOと共蒸着した場合が74%、UGH2と共蒸着した場合が80%と高いことが確認された。遅延蛍光を示す化合物141を用いて、実施例1と同様に酸素センサーを作製し、窒素ガスを吹き付けた場合と吹き付けなかった場合の発光強度の違いを確認することができる。
(実施例3)
本実施例において、化合物201を用いて試験を行った。
6重量%の化合物201とmCPを共蒸着することにより石英基板上に製膜し、PL発光スペクトル、PL量子収率、PL過渡減衰を測定した。図7に励起波長339nmにおけるPL発光スペクトルを示し、図8にPL過渡減衰曲線を示す。化合物201によって、短寿命の蛍光に加え、長寿命成分に由来する遅延蛍光が観測された。PL量子収率は27%であることが確認された。遅延蛍光を示す化合物201を用いて、実施例1と同様に酸素センサーを作製し、窒素ガスを吹き付けた場合と吹き付けなかった場合の発光強度の違いを確認することができる。
本発明の酸素センサーは、貴金属を含まないために安価に提供することが可能である。また、本発明によれば、室温において十分な発光強度を有しており、発光寿命が長くて感度も良好な酸素センサーを提供することが可能である。本発明の酸素センサーは、酸素の検出や濃度測定が必要とされる様々なガスや液体に用いることが可能である。その適用分野は、工業、食品、環境、医療、研究など多岐にわたる。このため、本発明の産業上の利用可能性は高い。
1 酸素センサー
2 チャンバ−
3 UVランプ
4 窒素ボンベ
5 窒素導入ノズル

Claims (16)

  1. 記一般式(1)で表されるスピロ化合物からなる遅延蛍光材料を含むことを特徴とする酸素センサー。
    [一般式(1)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8およびR17は、各々独立に水素原子または電子供与基であって、少なくとも1つは電子供与基を表す。R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、各々独立に水素原子またはα位に非共有電子対を持たない電子吸引基である。Zは、単結合またはカルボニル基を表す。ただし、Zが単結合であるとき、R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16の少なくとも1つはα位に非共有電子対を持たない電子吸引基である。]
  2. 一般式(1)のZが単結合であることを特徴とする請求項に記載の酸素センサー。
  3. 一般式(1)のR17がアリール基であることを特徴とする請求項またはに記載の酸素センサー。
  4. 一般式(1)のR9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16の少なくとも1つが、シアノ基、または下記一般式(6)〜(9)のいずれかで表される構造を有することを特徴とする請求項のいずれか一項に記載の酸素センサー。
    [上式において、R61およびR62は、各々独立に置換もしくは無置換のアリール基を表す。R71およびR72は、各々独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表し、R71およびR72は一緒になって環構造を形成していてもよい。R81、R82およびR83は、各々独立に水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表し、R81およびR82は一緒になって環構造を形成していてもよく、R82およびR83は一緒になって環構造を形成していてもよい。R91は水素原子、置換もしくは無置換のアルキル基、または置換もしくは無置換のアリール基を表し、Zはヘテロ芳香環を形成するのに必要な連結基を表す。]
  5. 一般式(1)のR9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16の少なくとも1つが、下記のいずれかの構造を有することを特徴とする請求項のいずれか一項に記載の酸素センサー。
  6. 記一般式(21)で表されるスピロ化合物からなる遅延蛍光材料を含むことを特徴とする酸素センサー。
    [一般式(21)において、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、各々独立に水素原子または電子供与基であって、少なくとも1つは電子供与基を表す。R9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16は、各々独立に水素原子または電子吸引基であって、少なくとも1つは電子吸引基を表す。]
  7. 一般式(21)のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8の少なくとも2つが電子供与基であることを特徴とする請求項に記載の酸素センサー。
  8. 一般式(21)のR1、R2、R3およびR4の少なくとも1つが電子供与基であって、R5、R6、R7およびR8の少なくとも1つが電子供与基であることを特徴とする請求項に記載の酸素センサー。
  9. 一般式(21)のR2およびR3の少なくとも1つが電子供与基であって、R6およびR7の少なくとも1つが電子供与基であることを特徴とする請求項に記載の酸素センサー。
  10. 一般式(21)のR2またはR3が電子供与基であって、R6またはR7が電子供与基であることを特徴とする請求項に記載の酸素センサー。
  11. 1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8の少なくとも1つは、下記一般式(22)〜(24)のいずれかで表される骨格を含む電子供与基であることを特徴とする請求項10のいずれか一項に記載の酸素センサー。
    [一般式(22)において、Z1は窒素原子、酸素原子、硫黄原子または珪素原子を表し、A1およびA2として各々独立に芳香環、ヘテロ芳香環、脂肪環または非芳香族ヘテロ環を形成していてもよい。一般式(23)において、R20は水素原子、アリール基またはA4で表される環構造を形成するのに必要な原子群を表し、A3およびA4として各々独立に、ヘテロ芳香環または非芳香族ヘテロ環を形成していてもよい。一般式(24)において、 2 、Z 3 、Z 4 およびZ 5 は各々独立に酸素原子または硫黄原子を表す。]
  12. 一般式(21)のR1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8の少なくとも1つは、下記のいずれかの骨格を含む電子供与基であることを特徴とする請求項10のいずれか一項に記載の酸素センサー。
  13. 一般式(21)のR9、R10、R11、R12、R13、R14、R15およびR16の少なくとも2つが電子吸引基であることを特徴とする請求項12のいずれか一項に記載の酸素センサー。
  14. 一般式(21)のR9、R10、R11およびR12の少なくとも1つが電子吸引基であって、R13、R14、R15およびR16の少なくとも1つが電子吸引基であることを特徴とする請求項12のいずれか一項に記載の酸素センサー。
  15. 一般式(21)のR10またはR11が電子吸引基であって、R14またはR15が電子吸引基であることを特徴とする請求項12のいずれか一項に記載の酸素センサー。
  16. 一般式(21)のR10またはR11がシアノ基であって、R14またはR15がシアノ基であることを特徴とする請求項12のいずれか一項に記載の酸素センサー。
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