JP2008096360A - 酸素分子検出方法、酸素分子検出プローブおよびバイオイメージング方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、酸素分子検出方法、酸素分子検出プローブおよびバイオイメージング方法に関する。
酸素分子検出方法、特に酸素分子を定量することが可能な検出方法(酸素分子定量法)は、生化学、生理学、医学、化学など多くの分野において、研究や実務で必要とされる重要な技術である。
従来、酸素分子検出方法あるいは酸素分子定量法として、酸素電極を用いた方法(酸素電極法)が広く一般に用いられてきた。しかし、この方法は、酸素電極という特別な装置が必要であること、および、測定準備や測定自体にかかる手間が煩雑であることが問題であった。そのため、酸素電極法に代わる酸素分子検出方法の開発が望まれていた。特に、近年、生体内の酸素分子検出方法あるいは酸素分子定量法として、酸素分子との反応性を有する蛍光分子の発光強度及び発光寿命を利用する方法が注目されている(非特許文献1等)。
しかし、蛍光分子を利用したこのような酸素分子検出方法には、光ファイバーや蛍光装置などの高価な装置が必要不可欠であるという問題があった。このため、この方法は、酸素電極法の問題点を根本的に解決する方法とはなっておらず、広く一般に普及するには至っていない。
また、蛍光分子を利用した酸素分子検出方法のもう一つの問題点として、蛍光分子の酸素に対する反応選択性の問題がある。具体的には、蛍光分子は必ずしも酸素と選択的な反応性を持つとは限らず、金属イオンや酸化還元補酵素とも反応する可能性があることが指摘されている。そのため、蛍光分子の発光強度は、前記金属イオンや酸化還元補酵素によっても変化し得る。すなわち、蛍光分子を利用した酸素分子検出方法では、金属イオンや酸化還元補酵素をも検出してしまい、酸素分子を選択的に検出できないおそれや、酸素分子を正確に定量できないおそれがある。
Xu, W.; Kneas, K. A.; Demas, J. N.; DeGraff, B. A. Anal. Chem. 1996, 68, 2605.
したがって、本発明は、酸素分子を選択的に検出可能であり、簡便に行うことができる酸素分子検出方法の提供を目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために、酸素分子に対する反応選択性が高く、酸素分子検出に適した物質を種々検討した。その結果、下記式(I)で表されるピリジニルピラジンと下記式(II)で表されるメタロセニウムイオンを組み合わせて用いることを見出し、本発明に到達した。
前記式(I)中、
Rは、それぞれ、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基(ニトリル基)、置換基を有するか有しない芳香環もしくは複素芳香環、またはペルフルオロアルキル基であり、各Rは、互いに同一でも異なっていても良く、
Xは、N、CH、または酸素(O)であり、
Yは、任意の原子団であり、各Yは、互いに同一でも異なっていても良く、
前記式(II)中、
Cpは、シクロペンタジエニル基(C5H5)を表し、環上の各水素原子は、それぞれ置換基で置換されていても良く、置換されていなくても良く、前記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていても良く、
Mは、金属である。
Rは、それぞれ、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基(ニトリル基)、置換基を有するか有しない芳香環もしくは複素芳香環、またはペルフルオロアルキル基であり、各Rは、互いに同一でも異なっていても良く、
Xは、N、CH、または酸素(O)であり、
Yは、任意の原子団であり、各Yは、互いに同一でも異なっていても良く、
前記式(II)中、
Cpは、シクロペンタジエニル基(C5H5)を表し、環上の各水素原子は、それぞれ置換基で置換されていても良く、置換されていなくても良く、前記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていても良く、
Mは、金属である。
すなわち、本発明の酸素分子検出方法は、下記(1)の反応工程と、下記(2)の検出工程を含む酸素分子検出方法である。
(1) 前記式(I)で表されるピリジニルピラジン、その立体異性体および互変異性体、およびそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一つの物質と、前記式(II)で表されるメタロセニウムイオンと酸素分子(O2)とを反応させる反応工程。
(2) 前記反応工程の生成物を検出することで間接的に酸素分子を検出する検出工程。
(1) 前記式(I)で表されるピリジニルピラジン、その立体異性体および互変異性体、およびそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一つの物質と、前記式(II)で表されるメタロセニウムイオンと酸素分子(O2)とを反応させる反応工程。
(2) 前記反応工程の生成物を検出することで間接的に酸素分子を検出する検出工程。
本発明の酸素分子検出方法は、前記(1)の反応工程において、前記式(I)で表されるピリジニルピラジンと前記式(II)で表されるメタロセニウムイオンとを組み合わせて用いるため、酸素分子に対する反応選択性が高い。このため、本発明の酸素分子検出方法によれば、酸素分子を選択的に検出可能である。このように、酸素分子に対する反応選択性が高いことは、被検試料が比較的少量であっても有効に酸素分子を検出可能であることにもつながる。また、本発明の酸素分子検出方法は、過度に高価な装置や煩雑な操作を必要とせず、簡便に行うことができるため、汎用的な酸素分子検出方法となり得る。
前記式(I)および(II)において、好ましい構造は、特に限定されないが、例えば以下の通りである。
すなわち、まず、前記式(I)中、各Yは、例えば、水素原子、アルキル基、置換基を有するか有しない芳香環もしくは複素芳香環、またはハロゲン原子であることが好ましく、前記アルキル基が、炭素数1〜6の直鎖または分枝アルキル基であることがより好ましく、前記ハロゲン原子は、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり、塩素または臭素がより好ましい。また、前記Yにおいて、前記芳香環または複素芳香環が、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、ピリジン環、ピロール環、チオフェン環、フラン環、ベンゾピリジン環、ベンゾピロール環、ベンゾチオフェン環、またはベンゾフラン環であることがより好ましい。前記Yにおける前記芳香環または複素芳香環上の置換基は、例えばアルキル基であることがより好ましく、前記アルキル基が炭素数1〜6の直鎖または分枝アルキル基であることがさらに好ましい。さらに、前記式(I)中のRにおいて、前記アルキル基が、炭素数1〜6の直鎖または分枝アルキル基であることが好ましく、前記ハロゲン原子は、例えば、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり、塩素または臭素が好ましい。また、前記Rにおいて、前記アルコキシ基が炭素数1〜6の直鎖または分枝アルコキシ基であることが好ましく、前記ペルフルオロアルキル基は、炭素数1〜6の直鎖または分枝ペルフルオロアルキル基であることが好ましい。そして、前記Rにおいて、前記芳香環もしくは複素芳香環が、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、ピリジン環、ピロール環、チオフェン環、フラン環、ベンゾピリジン環、ベンゾピロール環、ベンゾチオフェン環、またはベンゾフラン環であることが好ましく、前記芳香環または複素芳香環上の置換基は、例えばアルキル基であることが好ましく、炭素数1〜6の直鎖または分枝アルキル基であることがより好ましい。さらに、例えば、前記式(I)で表される化合物の入手容易性、前記(1)の反応工程における反応効率等の観点から、前記式(I)中、各Rが全て水素原子であることが特に好ましい。また、前記R、XおよびYが分子内の共役を妨げないことが好ましい。
また、前記式(I)で表されるピリジニルピラジンは、下記式(III)で表される構造を有することが好ましい。
前記式(III)中、各Rは、前記式(I)のRと同じであり、互いに同一でも異なっていても良い。なお、前記式(III)中、Rが全て水素原子であるものは、テトラ-2-ピリジニルピラジン(Tetra-2-pyridinylpyrazine, tppz)と呼ばれる。前記一般式(I)または(III)で表されるピリジニルピラジンにおいて、具体的な化合物は、特に限定されないが、例えば、下記表1中の化合物番号1〜21で表される化合物が挙げられる。下記表1中、化合物番号1〜21の右横に付した(I)または(III)の符号は、それぞれの化合物が前記一般式(I)または(III)のいずれで表されるかを示す。化合物番号1〜21の個々の化合物の構造は、前記式(I)中のR、XおよびYの組み合わせ、または前記式(III)中のRおよびXの組み合わせで表している。なお、下記表1中の化合物5は、テトラ-2-ピリジニルピラジン(tppz)である。また、下記表1は、各Rおよび各Yが全て同一の化合物について記しているが、前記の通り、各Rは互いに同一でも異なっていても良く、各Yは互いに同一でも異なっていても良い。さらに、下記表1中の化合物は、全て、当業者であれば、本発明の属する技術分野の常識に基づいて過度の試行錯誤をすることなく容易に製造可能であるか、または、市販品として入手可能である。
次に、前記式(II)中のCpにおいて、前記環上の置換基が、例えばアルキル基であることが好ましく、前記アルキル基が、炭素数1〜6の直鎖または分枝アルキル基であることがより好ましい。また、例えば、前記式(II)中、Mは、メタロセニウムイオン(II)を形成可能であれば特に限定されないが、遷移金属が好ましく、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Ru(ルテニウム)、またはOs(オスミウム)がより好ましく、前記式(II)で表される化合物の入手容易性、前記(1)の反応工程における反応効率等の観点から、MがFeであることが特に好ましい。また、前記式(II)中、シクロペンタジエニル基(C5H5)の環上の水素原子が置換基で置換されていないことが特に好ましいが、前記の通りアルキル基等で置換されていても良い。前記式(II)で表されるメタロセニウムイオンとしては、具体的には、例えば、フェロセン、1,1-ジメチルフェロセン、デカメチルフェロセン等のメタロセンから誘導されるメタロセニウムイオンが挙げられる。
また、前記式(II)で表されるメタロセニウムイオンは、例えば、カウンターイオンとともに、塩または塩基の形態で存在していても良い。前記カウンターイオンは、特に限定されないが、例えば、六フッ化リン酸イオン(PF6 -)、水酸化物イオン(OH-)、リン酸イオン、硫酸イオン、硝酸イオン、ハロゲン化物イオン(例えばフッ化物イオン(F-)、塩化物イオン(Cl-)、臭化物イオン(Br-)、ヨウ化物イオン(I-)等)、次亜ハロゲン酸イオン(例えば次亜フッ素酸イオン、次亜塩素酸イオン、次亜臭素酸イオン、次亜ヨウ素酸イオン等)、亜ハロゲン酸イオン(例えば亜フッ素酸イオン、亜塩素酸イオン、亜臭素酸イオン、亜ヨウ素酸イオン等)、ハロゲン酸イオン(例えばフッ素酸イオン、塩素酸イオン、臭素酸イオン、ヨウ素酸イオン等)、過ハロゲン酸イオン(例えば過フッ素酸イオン、過塩素酸イオン、過臭素酸イオン、過ヨウ素酸イオン等)、およびトリフラートイオン(OSO2CF3 -)、テトラキスペンタフルオロフェニルボレートイオン[B(C6F5)4 -]等が挙げられる。
また、前記式(I)で表されるピリジニルピラジンを塩の形態で用いる場合は、前記塩は特に限定されず、例えば酸付加塩でも塩基付加塩でも良く、さらに、前記酸付加塩を形成する酸は無機酸でも有機酸でも良く、前記塩基付加塩を形成する塩基は無機塩基でも有機塩基でも良い。前記無機酸としては、特に限定されないが、例えば、硫酸、リン酸、塩酸、臭化水素酸および、ヨウ化水素酸等があげられる。前記有機酸も特に限定されないが、例えば、p−トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、p−ブロモベンゼンスルホン酸、炭酸、コハク酸、クエン酸、安息香酸および酢酸等があげられる。前記無機塩基としては、特に限定されないが、例えば、水酸化アンモニウム、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、炭酸塩および炭酸水素塩等があげられ、より具体的には、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、水酸化カルシウムおよび炭酸カルシウム等があげられる。前記有機塩基も特に限定されないが、例えば、エタノールアミン、トリエチルアミンおよびトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン等があげられる。
なお、本発明において、アルキル基としては、特に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基およびtert-ブチル基等が挙げられる。アルキル基を構造中に含む基またはアルキル基から誘導される基(アルコキシ基、ペルフルオロアルキル基等)についても同様である。また、本発明において、「ハロゲン」とは、任意のハロゲン元素を指すが、例えば、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素が挙げられる。
次に、本発明の酸素分子検出方法について、例を挙げて詳しく説明する。
本発明の酸素分子検出方法において、前記(1)の反応工程における生成物が、下記式(IV)で表される錯体を含み、前記(2)の検出工程において、下記式(IV)で表される錯体を検出することが好ましい。
前記式(IV)中、
各Rは、前記式(I)のRと同じであり、互いに同一でも異なっていても良く、
各Xは、前記式(I)のXと同じであり、互いに同一でも異なっていても良く、
各Yは、前記式(I)のYと同じであり、互いに同一でも異なっていても良く、
Mは、前記式(II)のMと同じである。また、Mは、前記(1)の反応工程における三価から二価への酸化状態変化の容易性、前記錯体(IV)形成の容易性、前記錯体(IV)が有する吸光度の強さ等の観点から、遷移金属が好ましく、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Ru(ルテニウム)、またはOs(オスミウム)がより好ましく、前記式(II)で表される化合物の入手容易性、前記(1)の反応工程における反応効率等の観点から、MがFeであることが特に好ましい。また、前記式(IV)で表される錯体は、例えば、カウンターイオンとともに、塩または塩基の形態で存在していても良い。前記式(IV)で表される錯体のカウンターイオンも、特に限定されないが、例えば、前記式(II)で表されるメタロセニウムイオンのカウンターイオンと同様である。
各Rは、前記式(I)のRと同じであり、互いに同一でも異なっていても良く、
各Xは、前記式(I)のXと同じであり、互いに同一でも異なっていても良く、
各Yは、前記式(I)のYと同じであり、互いに同一でも異なっていても良く、
Mは、前記式(II)のMと同じである。また、Mは、前記(1)の反応工程における三価から二価への酸化状態変化の容易性、前記錯体(IV)形成の容易性、前記錯体(IV)が有する吸光度の強さ等の観点から、遷移金属が好ましく、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Ru(ルテニウム)、またはOs(オスミウム)がより好ましく、前記式(II)で表される化合物の入手容易性、前記(1)の反応工程における反応効率等の観点から、MがFeであることが特に好ましい。また、前記式(IV)で表される錯体は、例えば、カウンターイオンとともに、塩または塩基の形態で存在していても良い。前記式(IV)で表される錯体のカウンターイオンも、特に限定されないが、例えば、前記式(II)で表されるメタロセニウムイオンのカウンターイオンと同様である。
また、前記式(I)で表されるピリジニルピラジンが、前記式(III)で表される構造を有する場合、前記(1)の反応工程における生成物が、下記式(V)で表される錯体を含み、前記(2)の検出工程において、下記式(V)で表される錯体を検出することがより好ましい。
前記式(V)中、各Rは、前記式(III)のRと同じであり、互いに同一でも異なっていても良い。
なお、前記式(III)中、Rが全て水素原子であるものは、前述の通り、テトラ-2-ピリジニルピラジン(Tetra-2-pyridinylpyrazine, tppz)と呼ばれる。そして、前記式(V)中、Rが全て水素原子であり、MがFe(鉄)であるものを、本発明においては、Fe(tppz)2 2+錯体と呼ぶ。Fe(tppz)2 2+錯体は、下記式(VI)で表される。Fe(tppz)2 2+錯体は、紫外可視吸収スペクトル法による測定において、強い吸収帯が観測されることが知られている。Fe(tppz)2 2+錯体等、前記式(IV)または(V)で表される錯体が有する強い吸収帯は、公知文献の記載等によれば、MLCT(metal-to-ligand charge transfer, 金属から配位子への電荷移動)に由来すると考えられる。しかし、この見解は、推定される機構の一例を示すに過ぎず、本発明を何ら限定するものではない。なお、前記吸収帯がMLCTに由来する場合、前記式(I)におけるYがピリジニルピラジン(I)の共役系を拡張することで、前記吸収帯の吸光度がさらに強くなると考えられる。
tppzまたはその誘導体とメタロセニウムイオンを酸素と選択的に反応させて前記式(VI)で表される錯体を生成させ、酸素分子の選択的な検出に利用することは、本発明者らが初めて見出した。
本発明の酸素分子検出方法において、前記錯体(IV)の検出方法は特に限定されないが、例えば、紫外可視(UV-vis)吸収スペクトル法、NMR、X線結晶構造解析法、質量分析法、および肉眼による観察からなる群から選択される少なくとも一つの方法により検出することが、より好ましい。これらの方法のうち、紫外可視吸収スペクトル法は、各種物質の検出に広く用いられており、物質を精度良く検出することができるため、定量分析等に適する。また、前記錯体(IV)、例えばFe(tppz)2 2+錯体等は、特徴的な吸収帯を有するため、紫外可視吸収スペクトル法による分析に適している。なお、紫外可視吸収スペクトル法は、可視・紫外線吸収スペクトル法、UV-vis吸収スペクトル法、UV-visスペクトル法、VIS・UV吸収スペクトル法、または単にUVなどとも呼ばれることがある。そして、前記方法のうち、肉眼による観察は、非常に簡便に行うことができるという観点から好ましい。例えば、前記錯体(IV)が、Fe(tppz)2 2+錯体のように可視光領域に特徴的な吸収帯を有する場合、前記(1)の反応工程前後における反応系(例えば溶液)の色の変化を肉眼により観察することで、前記錯体(IV)を検出できる。
また、前記方法のうち、NMR(核磁気共鳴スペクトル法)は、分子骨格、結合状態等を正確に分析することができるため、前記錯体(IV)の構造の確認に適している。NMRには、1HNMR、13CNMR等があるが、例えば1HNMRが特に好ましい。また、前記方法のうち、質量分析法としては、特に限定されないが、例えば、ESI-MS、FAB-MS、TOF-MSからなる群から選択される少なくとも一つがさらに好ましい。
なお、前記錯体(IV)の検出方法として、例えば、必要に応じ、紫外可視吸収スペクトル法とNMRを併用しても良い。また、前述の通り、前記錯体(IV)の検出方法は特に限定されず、必要であれば前記各方法以外の方法を用いても良い。
前記錯体(IV)において、吸収帯は特に限定されない。しかし、前記錯体(IV)が可視光領域に吸収帯を有すると、肉眼で前記錯体(IV)を検出することも可能となる。すなわち、酸素分子を肉眼で簡便に検出可能であり好ましい。
また、本発明の酸素分子検出方法において、例えば、前記(1)の反応工程における生成物が、過酸化物を含み、前記(2)の検出工程において、過酸化物を検出することがより好ましい。なお、本発明において、「過酸化物」とは、過酸化物イオン(O2 2-)を含む化合物をいう。過酸化物は簡便に検出でき、定量もしやすいため、前記(2)の検出工程における検出に適している。
前記過酸化物の検出方法は特に限定されないが、例えば、前記過酸化物をヨウ化物イオン(I-)で処理し、形成された三ヨウ化物イオン(I3 -)を検出することで間接的に前記過酸化物を検出する方法が、簡便かつ精度が良いため好ましい。前記三ヨウ化物イオン(I3 -)を定量することで、間接的に前記過酸化物を定量し、さらに酸素分子を定量することも可能である。なお、この検出方法を、以下、単に「ヨウ素滴定」という場合がある。
本発明の酸素分子検出方法における前記(2)の検出工程において、前記(1)の反応工程における生成物を定量することが可能であると、本発明の酸素分子検出方法を酸素分子定量法として用いることができるため好ましい。例えば、紫外可視吸収スペクトル法は、前述の通り、物質を精度良く検出することができるため、前記錯体(IV)の定量分析に適している。また、ヨウ素滴定は、過酸化物イオンの定量に適する。このように前記錯体(IV)や過酸化物イオンを定量することで、間接的に酸素イオンを定量することが可能である。
本発明の酸素分子検出方法は、さらに具体的には、例えば以下のようにして行うことができる。
すなわち、まず、前記ピリジニルピラジン(I)と前記メタロセニウムイオン(II)を、溶媒に溶かし、溶液とする。このとき、溶液中に酸素分子が存在すると、その酸素分子に影響され、被検試料中の酸素分子を正確に検出あるいは定量できない場合がある。そのような場合は、前記溶液中からなるべく酸素分子を除くことが好ましい。そのための方法は特に限定されないが、例えば、前記溶媒からあらかじめ酸素分子を除いておく方法、前記溶液作製を脱酸素雰囲気中で行う方法等があり、具体的には、例えば、公知の方法にしたがって適宜行うことができる。
次に、前記溶液に、被検試料を添加する。前記被検試料中に酸素分子が存在すると、前記ピリジニルピラジン(I)および前記メタロセニウムイオン(II)と反応し、例えば前記錯体(IV)が生成する。このようにして、本発明の酸素分子検出方法における前記(1)の反応工程を行うことができる。前記被検試料は、特に限定されないが、例えば、ヒトの体液、動物の体液、淡水、海水、水溶液、有機溶媒溶液、動物細胞の細胞液、植物細胞の細胞液、空気、および酸素ガス等が挙げられる。前記ヒトまたは動物の体液としては、特に限定されないが、例えば、血液、唾液、尿、汗、等が挙げられ、これらをそのまま被検試料としても良いし、適宜希釈して被検試料としても良い。
そして、前記(1)の反応工程における生成物、例えば前記錯体(IV)を、前記(2)の検出工程で検出する。検出方法は特に限定されないが、例えば、前述の通り、紫外可視吸収スペクトル法が好ましい。より具体的には、例えば、紫外可視吸収スペクトル法により測定された吸光度から前記錯体(IV)を定量し、間接的に、前記被検試料中に存在していた酸素分子を定量することができる。
なお、前記ピリジニルピラジン(I)と前記メタロセニウムイオン(II)を、溶媒に溶かし、溶液とする際、前記溶媒は、特に限定されない。しかし、なるべく、前記ピリジニルピラジン(I)と前記メタロセニウムイオン(II)の溶解度に優れたものが好ましい。また、なるべく、前記(2)の検出工程において用いる検出方法の妨げとならない溶媒が好ましい。例えば、前記(2)の検出工程において、前記錯体(IV)を紫外可視吸収スペクトル法により検出する場合は、前記溶媒の吸収帯が、前記錯体(IV)の特徴的な吸収帯となるべく重ならないことが好ましい。また、例えば、前記(2)の検出工程において1HNMRを用いる場合は、前記溶媒として、重水素化溶媒を用いることも好ましい。前記溶媒は、例えば、水でも有機溶媒でも良く、前記有機溶媒としては、例えば、ベンゾニトリル、アセトニトリル、ブチロニトリル、プロピオニトリル等のニトリル、クロロホルム、ジクロロメタン、等のハロゲン化溶媒、THF(テトラヒドロフラン)、テトラメチルTHF等のエーテル、DMF(ジメチルホルムアミド)、等のアミド、DMSO(ジメチルスルホキシド)、等のスルホキシド、アセトン等のケトン、メタノール、エタノール等のアルコール等が挙げられる。これら溶媒は、単独で用いても二種類以上併用しても良い。前記溶媒としては、例えば、溶解度等の観点からアセトニトリルが特に好ましい。
以上のようにして本発明の酸素分子検出方法を行うことができるが、本発明はこれに限定されず、種々の変更が可能である。例えば、前記ピリジニルピラジン(I)と前記メタロセニウムイオン(II)は、それ自体を準備する代わりに、前駆体を準備し、反応系中で発生させても良い。具体的には、例えば、前記メタロセニウムイオン(II)に代えて、その前駆体として対応するメタロセン[Cp2M]を準備し、さらに、酸化剤およびルイス酸を準備する。そして、それらと前記ピリジニルピラジン(I)を溶媒に溶かし、溶液とする。そうすると、前記メタロセン[Cp2M]、酸化剤およびルイス酸が反応して前記メタロセニウムイオン(II)が発生する。そこに酸素分子を含む被検試料を添加すると、前記ピリジニルピラジン(I)と前記メタロセニウムイオン(II)と酸素分子(O2)とを反応させる前記(1)の反応工程を行うことができ、その生成物を、前記(2)の検出工程により検出可能である。なお、前記メタロセンにおいて、CpおよびMは、前記メタロセニウムイオン(II)と同じである。前記メタロセンは、特に限定されないが、例えば、フェロセン、1,1-ジメチルフェロセン、デカメチルフェロセン等が挙げられる。また、前記酸化剤は、特に限定されないが、例えば、ベンゾキノン等のパラキノン、9,10-フェナントラキノン、1,10-フェナントロリン-5,6-ジオン等のオルトキノンが挙げられる。さらに、前記ルイス酸は、特に限定されないが、例えば、Sc3+、Y3+、Mg2+等の金属イオンでも良いし、また、たとえば、過フッ素酸、過塩素酸、過臭素酸、過ヨウ素酸、塩酸、硫酸等のブレンステッド酸でも良い。なお、ルイス酸はブレンステッド酸の上位概念である。また、メタロセン[Cp2M]、酸化剤およびルイス酸存在下で、メタロセニウムイオン(II)が生成することは、Yuasa, J.; Suenobu, T.; Fukuzumi, S. J. Phys. Chem. A 2005, 109, 9356.により報告されている。
さらに、本発明は、本発明の酸素分子検出方法に用いる酸素分子検出プローブをも提供する。より具体的には、本発明の酸素分子検出プローブは、本発明の酸素分子検出方法に用いる酸素分子検出プローブであって、前記式(I)で表されるピリジニルピラジン、その立体異性体および互変異性体、およびそれらの塩、およびそれらの前駆体からなる群から選択される少なくとも一つの物質を含み、さらに、前記式(II)で表されるメタロセニウムイオンまたはその前駆体を含む酸素分子検出プローブである。本発明の酸素分子検出プローブは、前記式(I)で表されるピリジニルピラジンまたはその前駆体と、前記式(II)で表されるメタロセニウムイオンまたはその前駆体以外の他の物質を適宜含んでいても良いし、含んでいなくても良い。前記他の物質としては、例えば、前記メタロセニウムイオン(II)のカウンターイオン、前記酸化剤、前記ルイス酸等が挙げられ、また、それ以外の適宜な物質でも良い。また、本発明の酸素分子検出プローブを含むキットを適宜構築して酸素分子検出キットを構成することができる。前記酸素分子検出キットが含むその他の構成要素は特に限定されず、どのような構成要素でも良い。
さらに、本発明の酸素分子検出方法は、前記の通り、酸素分子を選択的に検出することができるため、例えば、生体内の酸素をイメージングするバイオイメージング方法への応用に適している。また、本発明の酸素分子検出プローブを含むキットを適宜構築してバイオイメージング用キットを構成することもできる。本発明のバイオイメージング方法は、具体的には、前記本発明の酸素分子検出プローブを用いるバイオイメージング方法であって、下記(3)〜(5)の工程を含む。
(3) 前記本発明の酸素分子検出プローブを細胞内に浸透させる浸透工程。
(4) 前記(1)の反応工程であって、前記式(I)で表されるピリジニルピラジン、その立体異性体および互変異性体、およびそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一つの物質と、前記式(II)で表されるメタロセニウムイオンと、前記細胞内の酸素分子(O2)とを反応させる反応工程。
(5) 前記(2)の検出工程であって、前記細胞内における前記反応工程の生成物の分布を画像化することで間接的に前記細胞内の酸素分子分布を画像化し、その画像を観察することで前記酸素分子を検出する検出工程。
(3) 前記本発明の酸素分子検出プローブを細胞内に浸透させる浸透工程。
(4) 前記(1)の反応工程であって、前記式(I)で表されるピリジニルピラジン、その立体異性体および互変異性体、およびそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一つの物質と、前記式(II)で表されるメタロセニウムイオンと、前記細胞内の酸素分子(O2)とを反応させる反応工程。
(5) 前記(2)の検出工程であって、前記細胞内における前記反応工程の生成物の分布を画像化することで間接的に前記細胞内の酸素分子分布を画像化し、その画像を観察することで前記酸素分子を検出する検出工程。
前記(3)の浸透工程において、「細胞内に浸透させる」という状態は、特に限定されず、細胞における任意の箇所に本発明の酸素分子検出プローブを浸透させれば良い。例えば、細胞質、核等、細胞内部まで本発明の酸素分子検出プローブを浸透させても良いが、これに限定されず、細胞膜、細胞壁等の細胞の表面部分のみに浸透させても良い。また、前記(5)の検出工程における画像化の方法は特に限定されないが、例えば以下のような方法が挙げられる。すなわち、まず、前記反応工程後の前記細胞をそのまま肉眼で観察して前記反応工程生成物の分布を観察できる場合は、それをもって前記検出工程(5)における画像化としても良い。また、例えば、蛍光センサーを用いる方法等、従来のバイオイメージング方法に用いられる画像化方法を適宜用いても良い。前記(4)の反応工程における生成物も特に限定されないが、例えば、Fe(tppz)2 2+錯体のように、可視光領域に吸収帯を有するために肉眼で検出可能な生成物であっても良い。また、肉眼で検出可能でなくても、前記のような各種画像化方法により検出可能な生成物でも良い。
さらに、本発明の酸素分子検出方法は、例えば、臨床分析への応用にも適する。具体的には、例えば、本発明の酸素分子検出方法を用いてヒトまたは動物の体液中の酸素分子を検出し、臨床分析に応用することができる。前記ヒトまたは動物の体液としては、特に限定されないが、例えば前記の通りであり、そのまま被検試料としても良いし、適宜希釈して用いても良い。また、本発明の酸素分子検出プローブを含むキットを適宜構築して臨床分析用キットとすることができる。この臨床分析用キットが含むその他の構成要素は特に限定されず、どのような構成要素でも良い。さらに、本発明の酸素分子検出方法および酸素分子検出プローブの用途は、前記の用途に限定されず、生化学、生理学、医学、化学など多くの分野であらゆる用途に使用可能である。具体的な用途としては、例えば、汚染海域での海水中の酸素濃度の決定、反応溶液として用いられる有機溶媒中の酸素濃度の決定等が挙げられる。
次に、本発明の実施例について説明する。しかし、本発明は、下記実施例に限定されない。なお、下記実施例における参考文献は以下の通りである。
(参考文献1)Pflaum, R. T.; Smith, C. J.; Buchanan, E. B.; Jensen, R. E. Anal. Chim. Acta. 1964, 31, 341-347.
(参考文献2)Campos-Fernandez C. S.; Smucker, B. W.; Clerac, R.; Dunbar, K. R. Isr. J. Chem. 2001, 41, 207.
(参考文献3)Yuasa, J.; Suenobu, T.; Fukuzumi, S. J. Phys. Chem. A 2005, 109, 9356.
(参考文献4)Mair, R. D.; Graupner, A. J. Analytical Chemistry Vol 36, No. 1, January 1964, 194-204.
(参考文献1)Pflaum, R. T.; Smith, C. J.; Buchanan, E. B.; Jensen, R. E. Anal. Chim. Acta. 1964, 31, 341-347.
(参考文献2)Campos-Fernandez C. S.; Smucker, B. W.; Clerac, R.; Dunbar, K. R. Isr. J. Chem. 2001, 41, 207.
(参考文献3)Yuasa, J.; Suenobu, T.; Fukuzumi, S. J. Phys. Chem. A 2005, 109, 9356.
(参考文献4)Mair, R. D.; Graupner, A. J. Analytical Chemistry Vol 36, No. 1, January 1964, 194-204.
[測定条件等]
下記実施例において、テトラ-2-ピリジニルピラジン(tppz)およびヘキサフルオロリン酸フェロセニウム(Fc+)は、Aldrich社から入手した。ヨウ化ナトリウム(NaI)は、和光純薬工業株式会社から入手した。フェロセンおよびp-ベンゾキノンは、和光純薬工業株式会社から入手した。Sc3+塩は、Aldrich社から入手した。溶媒として用いたアセトニトリル(MeCN)およびプロピオニトリル(EtCN)は、定法にしたがって精製し、乾燥した。紫外可視吸収スペクトル(UV-visスペクトル)測定は、Hewlett Packard社の8453 diode array spectrophotometer(商品名)を用いて行った。ESI-MSデータは、API 365 triple quadrupole mass spectrometer(PE-Sciex社の商品名)を用い、イオンスプレーインターフェースを装備してpositive detection modeで収集した。スプレー装置は、電圧を+5.0kVに保ち、液体噴霧の補助には、加圧N2を用いた。X線解析に用いた[Fe(tppz)2](PF6)2錯体の紫色結晶は、tppzおよびFc+のMeCN/ベンゼン(1:1 v/v)溶液から得た。測定は、株式会社リガクのMSC Mercury CCD diffractometer(商品名)を用い、グラファイト単斜結晶系Mo K放射(=0.7107Å)により行った。なお、1Åは10-10mに等しい。データは、株式会社リガクのCrystal Clear program(商品名)を用いて収集し、加工した。X線結晶構造解析における全ての計算は、Molecular Structure Corporation社のteXsan crystallographic software package(商品名)を用いて行った。
下記実施例において、テトラ-2-ピリジニルピラジン(tppz)およびヘキサフルオロリン酸フェロセニウム(Fc+)は、Aldrich社から入手した。ヨウ化ナトリウム(NaI)は、和光純薬工業株式会社から入手した。フェロセンおよびp-ベンゾキノンは、和光純薬工業株式会社から入手した。Sc3+塩は、Aldrich社から入手した。溶媒として用いたアセトニトリル(MeCN)およびプロピオニトリル(EtCN)は、定法にしたがって精製し、乾燥した。紫外可視吸収スペクトル(UV-visスペクトル)測定は、Hewlett Packard社の8453 diode array spectrophotometer(商品名)を用いて行った。ESI-MSデータは、API 365 triple quadrupole mass spectrometer(PE-Sciex社の商品名)を用い、イオンスプレーインターフェースを装備してpositive detection modeで収集した。スプレー装置は、電圧を+5.0kVに保ち、液体噴霧の補助には、加圧N2を用いた。X線解析に用いた[Fe(tppz)2](PF6)2錯体の紫色結晶は、tppzおよびFc+のMeCN/ベンゼン(1:1 v/v)溶液から得た。測定は、株式会社リガクのMSC Mercury CCD diffractometer(商品名)を用い、グラファイト単斜結晶系Mo K放射(=0.7107Å)により行った。なお、1Åは10-10mに等しい。データは、株式会社リガクのCrystal Clear program(商品名)を用いて収集し、加工した。X線結晶構造解析における全ての計算は、Molecular Structure Corporation社のteXsan crystallographic software package(商品名)を用いて行った。
下記実施例では、テトラ-2-ピリジニルピラジン(Tetra-2-pyridinylpyrazine, tppz)と、ヘキサフルオロリン酸フェロセニウム(Ferrocenium hexafluorophosphate、以下「Fc+」と記すことがある)と酸素分子とを反応させ、本発明の酸素分子検出方法における反応工程を行った。そして、種々の検出方法により前記式(VI)で表されるFe(tppz)2 2+錯体の生成(下記スキーム1)を確認し、本発明の酸素分子検出方法における検出工程を行った。さらに、下記スキーム1の反応が、酸素1分子に対して0.67等量のFe(tppz)2 2+錯体を与えることを確認した。そして、生成したFe(tppz)2 2+錯体の濃度をFe(tppz)2 2+錯体のモル吸光係数を用いて決定することにより、未知濃度の酸素溶液の酸素濃度を決定(定量)することができた。なお、Fe(tppz)2 2+錯体のモル吸光係数は公知であり、可視光領域における極大吸収波長で、約10000M-1cm-1という高いモル吸光係数を有することが知られている(前記参考文献1等)。
[実施例1]
まず、脱酸素アセトニトリルを準備し、さらに、ヘキサフルオロリン酸フェロセニウム(Fc+)[1.6×10-4M]とテトラ-2-ピリジニルピラジン(tppz)[5.6×10-4M]を溶解させて脱酸素混合アセトニトリル溶液を調整した。この溶液は、Fc+に由来する薄青色を呈した。この溶液を酸素バブリングすると、酸素との反応により、色が薄青色から濃紫色へと変化した。このようにして、本発明の酸素分子検出方法における反応工程を行うことができた。図1は、前記Fc+(1.6×10-4M)およびtppz(5.6×10-4M)のアセトニトリル溶液(298K、25℃)を示す図である。図1(a)は、前記反応工程前の脱酸素溶液を示し、図1(b)は、前記反応工程後の酸素分子(O2)飽和溶液を示す。
まず、脱酸素アセトニトリルを準備し、さらに、ヘキサフルオロリン酸フェロセニウム(Fc+)[1.6×10-4M]とテトラ-2-ピリジニルピラジン(tppz)[5.6×10-4M]を溶解させて脱酸素混合アセトニトリル溶液を調整した。この溶液は、Fc+に由来する薄青色を呈した。この溶液を酸素バブリングすると、酸素との反応により、色が薄青色から濃紫色へと変化した。このようにして、本発明の酸素分子検出方法における反応工程を行うことができた。図1は、前記Fc+(1.6×10-4M)およびtppz(5.6×10-4M)のアセトニトリル溶液(298K、25℃)を示す図である。図1(a)は、前記反応工程前の脱酸素溶液を示し、図1(b)は、前記反応工程後の酸素分子(O2)飽和溶液を示す。
前記アセトニトリル溶液について、前記反応工程前および前記反応工程後の紫外可視吸収スペクトルを測定した。図2は、前記Fc+(1.6×10-4M)およびtppz(5.6×10-4M)のアセトニトリル溶液について、298K(25℃)で測定した紫外可視吸収スペクトルを示すグラフである。図2下側の曲線は、前記反応工程前における脱酸素アセトニトリル溶液のスペクトルであり、上側の曲線は、前記反応工程後におけるO2分子飽和のアセトニトリル溶液のスペクトルである。同図下側の曲線に示す通り、前記反応工程前の脱酸素アセトニトリル溶液は、長波長領域に弱くて幅広い吸収を示した。この吸収は、Fc+に由来すると考えられる。すなわち、Fc+は、前記脱酸素アセトニトリル溶液中では、tppzと反応しなかったことを示唆している。これに対し、同図上側の曲線に示す通り、前記反応工程後(酸素バブリング後)は、λmax=568nmに吸収極大を有する新しい吸収帯の増大が観測された。この吸収帯は、前記参考文献1に記載されているFe(tppz)2 2+錯体の吸収帯と良い一致を示した。すなわち、Fc+とtppzの前記脱酸素混合アセトニトリル溶液に酸素をバブリングすると、酸素分子との反応によりFe(tppz)2 2+錯体が生成したことが確認された。なお、図3に、前記参考文献1から引用したFe(tppz)2 2+錯体の紫外可視吸収スペクトルを、Fe(tppz)2 2+錯体の化学構造式と併せて示す。また、前記λmax=568nmの吸収帯は、前記参考文献1によれば、Fe(tppz)2 2+錯体のMLCT(metal-to-ligand charge transfer, 金属から配位子への電荷移動)に由来すると考えられている。
すなわち、Fc+およびtppzを含む溶液をプローブとして用い、酸素分子と反応させてFe(tppz)2 2+錯体を生成させ、本発明の酸素分子検出方法における反応工程を行うことができた。さらに、生成したFe(tppz)2 2+錯体を紫外可視吸収スペクトル法により検出して前記酸素分子を間接的に検出し、本発明の酸素分子検出方法における検出工程を行うことができた。また、前記溶液の色が前記反応工程の前後で変化することから、肉眼による観察によっても前記検出工程を行うことができた。
[実施例2]
実施例1と同様にして前記反応工程を行った。そして、前記反応工程後の反応溶液のESI-MSスペクトルを測定した。測定はポジティブイオンモードで行い、測定溶媒はアセトニトリル(CH3CN)を用いた。その結果、(m/z=977.2)にピークが観測された。図4に、そのESIマススペクトル図を示す。同図におけるm/z 977.2のシグナルは、{[Fe(tppz)2]-PF6}+に対応する。また、図4挿入図において、(a)は、m/z 977.2のシグナルの拡大図であり、(b)は、(a)のシグナルについて計算した同位体分布図である。この同位体分布図は、{[Fe(tppz)2]-PF6}+の特徴的な同位体パターンと良い一致を示した。すなわち、質量分析により、Fc+とtppzと酸素との反応によるFe(tppz)2 2+錯体の生成が確認された。このように、質量分析によっても本発明の酸素分子検出方法における検出工程を行うことができた。
実施例1と同様にして前記反応工程を行った。そして、前記反応工程後の反応溶液のESI-MSスペクトルを測定した。測定はポジティブイオンモードで行い、測定溶媒はアセトニトリル(CH3CN)を用いた。その結果、(m/z=977.2)にピークが観測された。図4に、そのESIマススペクトル図を示す。同図におけるm/z 977.2のシグナルは、{[Fe(tppz)2]-PF6}+に対応する。また、図4挿入図において、(a)は、m/z 977.2のシグナルの拡大図であり、(b)は、(a)のシグナルについて計算した同位体分布図である。この同位体分布図は、{[Fe(tppz)2]-PF6}+の特徴的な同位体パターンと良い一致を示した。すなわち、質量分析により、Fc+とtppzと酸素との反応によるFe(tppz)2 2+錯体の生成が確認された。このように、質量分析によっても本発明の酸素分子検出方法における検出工程を行うことができた。
[実施例3]
NMRチューブを用いて本発明の酸素分子検出方法における反応工程および検出工程を行った。具体的には以下の通りである。まず、大気圧の酸素雰囲気下、Fc+のCD3CN溶液(3.4×10-2M、 600μL)を含むNMRチューブ中に、tppz(3.4×10-2M濃度相当分)を、加えた。そうすると、tppzがCD3CN溶液に完全に溶解せずに沈殿した。なお、tppzのCD3CNへの溶解度(飽和濃度)は約5.6×10-4Mである。この溶液に酸素をバブリングすると、Fc+とtppzと酸素分子が反応してFe(tppz)2 2+錯体を生じ、CD3CNに溶解して濃紫色を呈した。5分間経過して反応が終了した後、前記反応溶液を、JEOL JNM-GSX-400(300MHz)スペクトロメータを用いて1HNMRにより分析した。以下に、この1HNMR分析結果を示す。なお、Fc+のCD3CN溶液濃度を3.9×10-2Mとし、tppz添加量を3.9×10-2M濃度相当分としても、同じ結果が得られた。
NMRチューブを用いて本発明の酸素分子検出方法における反応工程および検出工程を行った。具体的には以下の通りである。まず、大気圧の酸素雰囲気下、Fc+のCD3CN溶液(3.4×10-2M、 600μL)を含むNMRチューブ中に、tppz(3.4×10-2M濃度相当分)を、加えた。そうすると、tppzがCD3CN溶液に完全に溶解せずに沈殿した。なお、tppzのCD3CNへの溶解度(飽和濃度)は約5.6×10-4Mである。この溶液に酸素をバブリングすると、Fc+とtppzと酸素分子が反応してFe(tppz)2 2+錯体を生じ、CD3CNに溶解して濃紫色を呈した。5分間経過して反応が終了した後、前記反応溶液を、JEOL JNM-GSX-400(300MHz)スペクトロメータを用いて1HNMRにより分析した。以下に、この1HNMR分析結果を示す。なお、Fc+のCD3CN溶液濃度を3.9×10-2Mとし、tppz添加量を3.9×10-2M濃度相当分としても、同じ結果が得られた。
1HNMR(CD3CN, 298K); δ(Me4Si, ppm): δ8.78(d, J=4.5Hz, 4H), δ 8.46(d, J=7.8Hz, 4H), δ8.28(t, J=7.8Hz, 4H), δ7.78(t, J=4.8Hz, 4H), δ7.63(m, 8H), δ7.44(d, J=5.4Hz, 4H), δ7.14(td, J=5.4Hz, 3.0Hz, 4H).
上記1HNMRから、前記反応溶液中には、Fc+とtppzと酸素分子が反応して生成したFe(tppz)2 2+錯体が存在することが確認できた。すなわち、1HNMRを用いて本発明の酸素分子検出方法における検出工程を行うことができた。
[実施例4]
実施例3における前記NMRチューブ中の反応終了後の溶液を用いて結晶化を行うと、反応生成物に由来する紫色の結晶を得ることができた。この結晶のX線結晶構造解析を行ったところ、Fe(tppz)2 2+錯体の結晶構造(参考文献2)と良く一致する結晶構造を得ることが出来た。すなわち、X線結晶構造解析によっても、本発明の酸素分子検出方法における検出工程を行うことができた。なお、図5に、本実施例における[Fe(tppz)2](PF6)2のX線結晶構造解析図を示す。
実施例3における前記NMRチューブ中の反応終了後の溶液を用いて結晶化を行うと、反応生成物に由来する紫色の結晶を得ることができた。この結晶のX線結晶構造解析を行ったところ、Fe(tppz)2 2+錯体の結晶構造(参考文献2)と良く一致する結晶構造を得ることが出来た。すなわち、X線結晶構造解析によっても、本発明の酸素分子検出方法における検出工程を行うことができた。なお、図5に、本実施例における[Fe(tppz)2](PF6)2のX線結晶構造解析図を示す。
[実施例5]
本実施例では、前記スキーム1の反応におけるFc+とtppzと酸素との反応の物質量比を、滴定により確認した。さらに、それをもとに、各種試料中における酸素分子の濃度(各試料中に存在する酸素分子の物質量)を定量した。
本実施例では、前記スキーム1の反応におけるFc+とtppzと酸素との反応の物質量比を、滴定により確認した。さらに、それをもとに、各種試料中における酸素分子の濃度(各試料中に存在する酸素分子の物質量)を定量した。
すなわち、まず、過剰のtppz存在下、酸素によるFc+溶液の吸収スペクトルの滴定を行った。次に、酸素存在下、Fc+によるtppz溶液の吸収スペクトルの滴定を行った。その結果、Fc+は0.75等量の酸素と、tppzは1等量のFc+と反応することが確認された。より詳しくは、以下の通りである。
まず、脱酸素アセトニトリルにFc+(4.8×10-3Mまたは9.4×10-3M濃度相当分)およびtppz(3.9×10-2M濃度相当分)を加え、混合液を調製した。この混合液を用い、298K(25℃)で酸素分子(O2)によりFc+を滴定した。滴定の際、反応の確認は、紫外可視吸収スペクトルにより吸光度(波長500nm、光路長1mm)を測定して行った。図6(a)に、この滴定曲線を示す。同図中、縦軸は吸光度であり、横軸は[O2]/[Fc+]濃度比である。また、図6(a)中、(●)は、Fc+濃度4.8×10-3Mにおける滴定曲線であり、(■)は、Fc+濃度9.4×10-3Mにおける滴定曲線である。図示の通り、Fc+は0.75等量の酸素と反応することが確認された。
次に、酸素飽和アセトニトリルにtppz(8.8×10-3M濃度相当分)を加え、298K(25℃)でFc+によりtppzを滴定した。滴定の際、反応の確認は、紫外可視吸収スペクトルにより吸光度(波長500nm、光路長1mm)を測定して行った。図6(b)に、この滴定曲線を示す。図中、縦軸は吸光度であり、横軸は[Fc+]/[tppz]濃度比である。図示の通り、tppzは1等量のFc+と反応することが確認された。
また、上記反応における過酸化物(ペルオキシド)の生成を、ヨウ素滴定で確認し、さらに前記過酸化物を定量した。具体的には以下の通りである。すなわち、まず、Fc+(5.4×10-5M)およびtppz(5.4×10-5M)の脱酸素アセトニトリル溶液に酸素ガスをバブリングし、反応させた。反応後のアセトニトリル溶液の一定量を、298Kにおいて過剰のNaIで処理した。具体的には、まず前記反応後のアセトニトリル溶液3mLに4.5mgのNaIの粉末を溶解させた。そして、このNaI溶液を25℃で10分間放置して過酸化物とNaIを完全に反応させた。そして、このNaI処理により形成されたI3 -の量を、紫外可視吸収スペクトル(λmax=365nm, εmax=28000M-1cm-1)により確認した。前記紫外可視吸収スペクトル(UV-visibleスペクトル)測定は、石英キュベット(光路長1cm)を用い、298Kで行った。図7に、この紫外可視吸収スペクトル図を示す。図中、上側の曲線はNaI存在下のスペクトルを示し、下側の曲線は、NaI非存在下のスペクトルを示す。また、図7挿入図は、図7上側の曲線(NaI存在下)と下側の曲線(NaI非存在下)の差スペクトルを示す。図示の通り、NaI存在下ではλmax=365nmの吸収が増大していることから、過酸化物の生成が確認された。なお、本発明で用いるヨウ素滴定法は、上記の方法に限定されず、例えば公知の種々の方法等、あらゆる方法を適宜使用可能である。種々のヨウ素滴定法については、例えば、前記参考文献4等に詳しく記載されている。
さらに、前記ヨウ素滴定を、Fc+添加量とtppz添加量をいずれも3.3×10-2M濃度相当分に代えて同じように行ったところ、3.4×10-3Mの過酸化物が検出された。
前記O2滴定およびFc+滴定、またはヨウ素滴定により確認された反応量論比を用いて、種々の試料溶液中の酸素分子存在量(酸素分子濃度)を定量することができた。
[実施例6]
本実施例では、ヘキサフルオロリン酸フェロセニウム(Fc+)に代えて、フェロセン、p-ベンゾキノンおよびSc3+を用い、実施例1〜5と同様の結果を得た。具体的には以下の通りである。
本実施例では、ヘキサフルオロリン酸フェロセニウム(Fc+)に代えて、フェロセン、p-ベンゾキノンおよびSc3+を用い、実施例1〜5と同様の結果を得た。具体的には以下の通りである。
すなわち、まず、テトラ-2-ピリジニルピラジン(tppz)、p-ベンゾキノン(1.0×10-2M)、フェロセン[Fc](1.0×10-2M)、及びSc3+(1.0×10-2M)を脱酸素アセトニトリルに溶かしたところ、この混合溶液は薄青色を呈した。なお、前記Sc3+源としては、スカンジウムトリフラートを用いた。この脱酸素混合溶液の薄青色は、下記スキーム3のようにフェロセンからp-ベンゾキノンへの電子移動によって生成するフェリセニウムイオン(Fc+)に由来することが知られている(前記参考文献3参照)。そして、この脱酸素混合溶液を酸素バブリングして酸素分子(O2)で飽和させると、前記溶液の色が薄青色から濃青色へと変化した。図8に、298K(25℃)における前記混合溶液を示す。図8(a)は脱酸素溶液を示し、図8(b)は酸素分子(O2)飽和後溶液を示す。
また、図9に、前記溶液の紫外可視吸収スペクトルの変化を示す。図9中、下側の曲線(a)は脱酸素溶液を示し、上側の曲線(b)は酸素分子(O2)飽和後溶液を示す。図9の曲線(a)に示す通り、脱酸素アセトニトリル溶液中、Fc+はtppz存在下で長波長領域に弱くて幅広い吸収帯を与えた。しかしながら、この溶液を酸素バブリングすると、同図中の曲線(b)に示す通り、600nm付近に新しい吸収帯の増大が観測された。この新しい吸収帯は、これまでに報告されているFe(tppz)2 2+錯体の吸収帯と良い一致を示した(前記参考文献1)。このことは、フェロセンからp-ベンゾキノンへの電子移動によって生成したFc+とtppz及び酸素との反応によってFe(tppz)2 2+錯体が生成することを示す(前記スキーム1)。また、Fe(tppz)2 2+錯体の生成は、1HNMRによっても確認した。さらに、前記と同様、質量分析またはX線結晶構造解析によってもFe(tppz)2 2+錯体の生成を確認できた。また、ヨウ素滴定によっても前記と同様の結果が得られた。
すなわち、フェロセン、p-ベンゾキノンおよびSc3+を含む溶液をプローブとして用い、かつ、紫外可視吸収スペクトル法、1HNMR等の方法を用いて、本発明の酸素分子検出方法における反応工程および検出工程を行うことができた。また、前記溶液の色が前記反応工程の前後で変化することから、肉眼による観察によっても前記検出工程を行うことができた。さらに、フェロセンに代えて1,1-ジメチルフェロセンまたはデカメチルフェロセンを用いても同様の結果が得られた。
以上の通り、実施例により、酸素存在下でFc+とtppzとが反応し、可視光領域に強い吸収帯を有するFe(tppz)2 2+錯体(モル吸光係数約10000M-1cm-1)が生成することを確認した。このFe(tppz)2 2+錯体を肉眼で観察することで、間接的に、各種試料中の酸素分子の存在を肉眼で確認することができた。さらに、前記反応の生成物であるFe(tppz)2 2+錯体を定量することで、各種試料中の酸素分子を可視分光分析により定量することができた。また、副生成物である過酸化物を定量することによっても、各種試料中の酸素分子の定量分析ができた。
以上説明した通り、本発明の酸素分子検出方法は、酸素分子に対する反応選択性が高い。このため、本発明の酸素分子検出方法によれば、酸素分子を選択的に検出可能である。このように、酸素分子に対する反応選択性が高いことは、被検試料が比較的少量であっても有効に酸素分子を検出可能であることにもつながる。また、本発明の酸素分子検出方法は、過度に高価な装置や煩雑な操作を必要とせず、簡便に行うことができるため、汎用的な酸素分子検出方法となり得る。本発明の酸素分子検出方法は、例えば、バイオイメージングまたは臨床分析に用いることができる。また、前記式(I)で表されるピリジニルピラジンまたはその前駆体と、前記式(II)で表されるメタロセニウムイオンまたはその前駆体とを含む本発明の酸素分子検出プローブを用いて、バイオイメージング用キット、臨床分析用キット等を構築することが可能である。さらに、本発明の酸素分子検出方法および酸素分子検出プローブの用途は、前記の用途に限定されず、生化学、生理学、医学、化学など多くの分野であらゆる用途に使用可能である。
Claims (15)
- 下記(1)の反応工程と、下記(2)の検出工程を含む酸素分子検出方法。
(1) 下記式(I)で表されるピリジニルピラジン、その立体異性体および互変異性体、およびそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一つの物質と、下記式(II)で表されるメタロセニウムイオンと酸素分子(O2)とを反応させる反応工程。
(2) 前記反応工程の生成物を検出することで間接的に酸素分子を検出する検出工程。
Rは、それぞれ、水素原子、アルキル基、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基(ニトリル基)、置換基を有するか有しない芳香環もしくは複素芳香環、またはペルフルオロアルキル基であり、各Rは、互いに同一でも異なっていても良く、
Xは、N、CH、または酸素(O)であり、
Yは、任意の原子団であり、各Yは、互いに同一でも異なっていても良く、
前記式(II)中、
Cpは、シクロペンタジエニル基(C5H5)を表し、環上の各水素原子は、それぞれ置換基で置換されていても良く、置換されていなくても良く、前記置換基は、複数の場合は同一でも異なっていても良く、
Mは、金属である。 - 前記式(I)中、各Yが、水素原子、アルキル基、置換基を有するか有しない芳香環もしくは複素芳香環、またはハロゲン原子である請求項1記載の酸素分子検出方法。
- 紫外可視(UV-vis)吸収スペクトル法、NMR、X線結晶構造解析法、質量分析法、および肉眼による観察からなる群から選択される少なくとも一つの方法により前記錯体(IV)を検出する請求項4または5記載の酸素分子検出方法。
- 前記(1)の反応工程における生成物が、過酸化物を含み、前記(2)の検出工程において、過酸化物を検出する、請求項1〜6のいずれかに記載の酸素分子検出方法。
- 前記過酸化物をヨウ化物イオン(I-)で処理し、形成された三ヨウ化物イオン(I3 -)を検出することで間接的に前記過酸化物を検出する請求項7記載の酸素分子検出方法。
- 前記(2)の検出工程において、前記(1)の反応工程における生成物を定量することが可能である請求項1〜8のいずれかに記載の酸素分子検出方法。
- 前記式(I)中、各Rが全て水素原子である請求項1〜9のいずれかに記載の酸素分子検出方法。
- 前記式(II)中、Mが、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Ru(ルテニウム)、またはOs(オスミウム)である請求項1〜10のいずれかに記載の酸素分子検出方法。
- 前記式(II)中、シクロペンタジエニル基(C5H5)の環上の水素原子が置換基で置換されていない請求項1〜11のいずれかに記載の酸素分子検出方法。
- 被検試料が、ヒトの体液、動物の体液、動物細胞の細胞液、植物細胞の細胞液、淡水、海水、水溶液、有機溶媒溶液、空気、または酸素ガスである請求項1〜12のいずれかに記載の酸素分子検出方法。
- 請求項1〜13のいずれかに記載の酸素分子検出方法に用いる酸素分子検出プローブであって、前記式(I)で表されるピリジニルピラジン、その立体異性体および互変異性体、およびそれらの塩、およびそれらの前駆体からなる群から選択される少なくとも一つの物質を含み、さらに、前記式(II)で表されるメタロセニウムイオンまたはその前駆体を含む酸素分子検出プローブ。
- 請求項14記載の酸素分子検出プローブを用いるバイオイメージング方法であって、下記(3)〜(5)の工程を含むバイオイメージング方法。
(3) 請求項14記載の酸素分子検出プローブを細胞内に浸透させる浸透工程。
(4) 前記(1)の反応工程であって、前記式(I)で表されるピリジニルピラジン、その立体異性体および互変異性体、およびそれらの塩からなる群から選択される少なくとも一つの物質と、前記式(II)で表されるメタロセニウムイオンと、前記細胞内の酸素分子(O2)とを反応させる反応工程。
(5) 前記(2)の検出工程であって、前記細胞内における前記反応工程の生成物の分布を画像化することで間接的に前記細胞内の酸素分子分布を画像化し、その画像を観察することで前記酸素分子を検出する検出工程。
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