JP5590316B2 - オリーブ果実及びオリーブ葉から得られるオリーブ抽出油の製造方法、該製造方法で製造されたオリーブ抽出油並びにオリーブ果実及びオリーブ葉から得られるオリーブ抽出油におけるオリーブ葉に由来する青臭さを低減させる方法 - Google Patents
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Description
一方、オリーブ葉は、オリーブ果実に比して遥かに高い含有率でビタミンAを有し、また、酸化防止剤であるビタミンEや抗炎症作用や消臭、抗菌作用を有するクロロフィル等を豊富に含んでいるにも拘わらず、必ずしも十分に利用されているとはいえないものであった。
また、当然のことではあるが、オリーブ葉の比率を増やせば、それだけ、抽出油中に含まれるビタミンA、ビタミンE及びクロロフィル等の優れた成分の含有率を上げることができる。
しかし、オリーブ葉の比率を増やしていくと、少量の添加量では、さほど感じられなかった臭い、特にオリーブ葉が有する青臭さが強くなり、化粧品、食品、医薬品等の成分として使用する上で問題となることが判った。
従って、本発明は、オリーブ葉を多量、例えば、全質量の5質量%を超える量使用しても、化粧品、食品、医薬品等の成分として使用する上で、問題とならない程度にオリーブ葉由来の臭い(青臭さ)を低減し得るオリーブ抽出油の製造方法、該製造方法により得られるビタミンA、ビタミンE及びクロロフィル等の優れた効果を有する成分を高含有率で含むオリーブ抽出油、並びに、オリーブ葉を多量、例えば、全質量の5質量%を超える量使用しても、化粧品、食品、医薬品等の成分として使用する上で、問題とならない程度にオリーブ葉由来の臭い(青臭さ)を低減する方法の提供を課題とする。
(1)
a)オリーブ果実、及び
b)前記オリーブ果実との合計質量に基き、5質量%を超え且つ30質量%以下となる量のオリーブ葉を共存下で一緒に、
乳酸発酵させた後に粉砕するか、粉砕中に乳酸発酵させるか、又は、粉砕後に乳酸発酵させる発酵工程と、
得られたペースト状物から油分を抽出する抽出工程とを含む、
オリーブ抽出油の製造方法、
(2)
a)オリーブ果実、及び
b)前記オリーブ果実との合計質量に基き、5質量%を超え且つ30質量%以下となる量のオリーブ葉
の混合物を、乳酸発酵させた後に粉砕するか、粉砕中に乳酸発酵させるか、又は、粉砕後に乳酸発酵させる発酵工程と、
得られたペースト状物から油分を抽出する抽出工程とを含む、
オリーブ抽出油の製造方法、
(3)前記乳酸発酵が、オリーブ果実およびオリーブ葉を塩水中に浸漬して行われる前記(1)又は(2)記載の方法、
(4)前記塩水が1〜10%の塩分濃度である前記(3)記載の方法、
(5)前記(1)ないし(4)のいずれか1つに記載の方法により製造される、クロロフィルを100ppm以上含有するオリーブ抽出油、
(6)オリーブ果実又はその粉砕物を乳酸発酵させ、得られたペースト状物から油分を抽出してオリーブ抽出油を製造するにあたり、
前記オリーブ果実との合計質量に基き、5質量%を超え且つ30質量%以下となる量のオリーブ葉又はその粉砕物を、前記オリーブ果実との共存下で一緒に乳酸発酵させることを特徴とする、オリーブ抽出油におけるオリーブ葉に由来する青臭さを低減させる方法、
に関する。
得られたオリーブ抽出油は、優れた性能を有する、化粧品、医薬品、食品等の成分として有効に使用することができる。
また、本発明のオリーブ抽出油におけるオリーブ葉に由来する青臭さを低減させる方法により、オリーブ果実及びオリーブ葉からオリーブ抽出油を得るにあたり、多量のオリーブ葉を用いた場合においても、得られる抽出油におけるオリーブ葉に由来する青臭さを、容易に低減することができる。
本発明のオリーブ抽出油の製造方法は、
a)オリーブ果実、及び
b)前記オリーブ果実との合計質量に基き、5質量%を超え且つ30質量%以下となる量のオリーブ葉を共存下で一緒に、
乳酸発酵させた後に粉砕するか、粉砕中に乳酸発酵させるか、又は、粉砕後に乳酸発酵させる発酵工程と、
得られたペースト状物から油分を抽出する抽出工程とを含むものである。
本発明に使用し得る具体的なオリーブ果実の品種としては、例えば、アメレンケ(Amellenque)、アルベキナ(Arbequina)、アスコラーナ・テレナ(Ascolana Terena)、アスコラノ(Ascolano)、アザパ(Azapa)、バーネア(Barnea)、バロウニ(Barouni)、ビアンコリッラ(Biancolilla)、ビーデル・ハマン(Bidh El Hamman)、ブランケッタ(Blanqueta)、カイエ・ブラン(Caillet Blane)、カロレア(Carolea)、カヨンヌ(Cayonne)、ケムラリ(Chemilali)、チトーニ(Chitoni)、チプレッシーノ(Cipressino)、コラティーナ(Coratina)、コルニカブラ(Cornicabra)、コレッジョラ(Correggiola)、クッコ(Cucco)、ギガンテ・ディ・チェリニョーラ(Gigante di Cerignola)、フラントイオ(Frantoio)、グラッポロ(Glappolo)、ゴルダル(Gordal)、ハーディーズ・マンモス(Hardy's Mammoth)、オヒブランカ(Hojiblanca)、イトラーナ(Itrana)、ジャンボ・カラマタ(Jumbo Kalamata)、カラマタ(Kalamata)、コロネイキ(Koroneiki)、レッチーノ(Leccino)、レッチオ・デル・コルノ(Leccio del Corno)、リャニ
(Liani)、ルッカ(Lucca)、ルッケス(Lucques)、マンザニリャ(Manzanilla)、マンザニロ(Manzanillo)、マウリーノ(Maurino)、ミシェレンケ(Michellenque)、ミッション(Mission)、モロイオロ(Moraiolo)、ナバリ・モハサン(Nabali Mohassan)、ナブ・タムリ(Nab Tamri)、ネグラル(Negral)、ネバディロ・ブランコ(Nevadillo
Blanco)、ノッチェラーラ・デル・ベリチェ(Nocellara del Belice)、オブリザ(Obliza)、オブロンガ(Oblonga)、パラゴン(Paragon)、ペンドリーノ(Pendolino)、ピクアル(Picual)、レッディング・ピショリン(Redding picholine)、レドゥナ(Redounan)、ソウリン(Saurin 大葉)、ソウリン(Saurin 中葉)、ソウリン(Saurin 小葉)、セビラノ(Sevillano)、ソラニ(Sorani)、サウス・オーストラリアン・ベルダル(South Australian Verdale)、セント・キャサリン(St. Catherin)、タジャスカ(Taggiasca)、タンシェ(Tanche)、ティニイ・オイル・カラマタ(Tiny Oil Kalamata)、ツナーティ(Tsunati)、ベルダル(Verdale)、ワッガ・ベルダル(Wagga Verdale)、サルサ(Zarza)、オリヴェール、FS17、等が挙げられる。
これらの品種はそれぞれ果実の平均質量および含油率が異なり、果実加工用種、油用種、兼用種等、適した用途も異なるが、本発明のオリーブ抽出油の製造方法においては、何れの品種のオリーブ果実も使用し得る。
上記のオリーブ果実は、1種類を単独で使用することもできるが、2種以上の混合物として使用することもできる。
またオリーブ果実の収穫時期は、例えば、日本のような北半球にある地域においては、オリーブ果実が多量の油分を含有するようになる12月頃が好ましく、また、完熟したオリーブ果実を用いるのが好ましい。
また、上記で示したオリーブの種々な品種の1種又は2種以上を混合して使用することもできる。
オリーブ葉の使用量は、オリーブ果実とオリーブ葉の合計質量に基づいて、5質量%を超え且つ30質量%以下となる量となる。
好ましくは、10質量%を超え且つ20質量%以下となる量である。
また、オリーブ果実及びオリーブ葉の混合物を、乳酸発酵させた後に粉砕するか、粉砕中に乳酸発酵させるか、又は、粉砕後に乳酸発酵させることによっても達成される。
乳酸発酵は、具体的には、例えば、塩水を満たした発酵容器中にオリーブ果実及びオリーブ葉を浸漬して一定期間の間放置することによって行われ、塩水中でのオリーブ果実及びオリーブ葉の浸漬により徐々にオリーブ果実及びオリーブ葉が乳酸発酵し、そして腐敗へと進む。
また、発酵工程として、オリーブ果実及びオリーブ葉を粉砕した後に、上記と同様の乳酸発酵を行うこともでき、また、上記の発酵工程の途中でオリーブ果実及びオリーブ葉を粉砕してから発酵が完了するまで継続して行うこともできる。
そしてこの発酵工程によりオリーブ葉に由来する青臭さを低減することができる。
特に、塩水の濃度が高いと発酵の進行速度が遅く、極端な場合には発酵が進行しなくなり、他方、塩水の濃度が低いと発酵の進行速度が速いので、塩水の濃度を適切に制御することが好ましい。しかし、塩水を使用せずに、通常の水中において発酵を行った場合でも、本発明では相当時間に及び腐敗に至ることはなく、発酵工程の管理がより簡便である。
発酵の終点は嗅覚により確認でき、オリーブ葉の青臭さが薄く感じられる時点で発酵を終了する。塩水中での発酵ではオリーブ果実が引き締まった状態に保たれるので、オリーブ果実の外観上の変化は少なく、目視により発酵の終点を判断することは困難である。通常1〜10%、好ましくは3〜5%、特に4%の濃度の塩水中で発酵は行われ、例えば、発酵を4%食塩水中で行う場合、通常、発酵に要する期間は2〜10日程度となる。
また、発酵容器には、樹脂製の容器、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン製容器等を採用することができるが、木製容器は雑菌が混入する惧れがあるので好ましくない。
しかし、粉砕中に乳酸発酵させた場合及び粉砕後に乳酸発酵させた場合においては、発酵が終了した時点で既にペースト状物となっているので、更なる粉砕を行う必要は無い。
図1は、上記のオリーブ抽出油の製造方法の1態様を図示する流れ図である。以下、図1に沿って、オリーブ抽出油の製造方法における各工程を説明する。
次に収穫したオリーブ果実を選別する。選別は病気の果実や未熟の果実が混入して製造されるオリーブ抽出油の特性を損なうことを防ぐ目的で行われる。通常は目視により不良な果実を選択し、手で除去することにより行われる。
また、オリーブ葉は別途に収穫し、選別しておく。
続いて選別されたオリーブ果実およびオリーブ葉を乳酸発酵させる。前記発酵は例えば、塩水を満たした発酵容器中にオリーブ果実を浸漬して一定期間の間放置することによって行われ、塩水中でのオリーブ果実の浸漬により徐々にオリーブ果実が乳酸発酵し、そして腐敗へと進む。該発酵によりオリーブ葉の有する青臭さを弱めることができる。このように本発明の製造方法は、発酵の進行段階でオリーブ果実を取り出し、そして搾油することを特徴とし、一方、従来のオリーブ油の製造には係る発酵の工程は存在せず、選別後のオリーブ果実から直接に搾油するものであった。
発酵終了後、オリーブ果実およびオリーブ葉を洗浄して食塩水由来の塩分を除去し、次いで粉砕する。粉砕は通常の方法で行うことができ、粉砕によりオリーブ果実およびオリーブ葉はペースト状物となる。
次に、ペースト状物について固液分離および油水分離を行う。この固液分離によりペースト状物が固形分と液分に分離され、さらに液分について油水分離を行うことにより水分と粗オリーブ抽出油とに分離される。分離に蒸留等の手段を用い加熱を行うとペースト状物中に含まれる有効成分の分解が生じる惧れがあるので、該分離は双方共に加熱を伴わない方法、例えば遠心分離法、圧搾法またはパーコレーション法等に従って行う。
こうして得られた粗オリーブ抽出油を濾過して夾雑物を濾過除去し、オリーブ抽出油を得る。該濾過は重力濾過で行うことが好ましいが、濾過時間の短縮化を図るために。加圧濾過で行ってもよい。
上ではオリーブ果実の選別後に発酵を行う例を説明したが、当該発酵はオリーブ果実およびオリーブ葉の濾過前に行えばよく、例えば、オリーブ果実およびオリーブ葉を粉砕してペースト状物としたものを発酵させたり、粉砕中に発酵させたりすることもできる。
オリーブの果実および葉の発酵は図2に示す装置を用いて行った。
ミッション種のオリーブより12月中旬に収穫し選別を行った30kgのオリーブ果実2(平均果実質量は2.7g、含油率は18%)および同種の1.6kgのオリーブ葉2´を、50Lポリスチレン製の発酵容器1中に入れ、発酵容器1に4%食塩水5を注入し、全てのオリーブ果実2およびオリーブ葉2´を完全に水没させた。注入後、発酵容器1にビニールシート3を被せ、ビニールシート3を発酵容器1にロープ4でロープ締めして固定した。そして、ビニールシート3上にさらに水6を溜めて重しを載せて放置し発酵させた。
5日後、オリーブ果実の芳香がオリーブ臭から果実臭へと変化したことを確認し、この時点で発酵を終了した。
発酵終了後のオリーブ果実2およびオリーブ葉2´を水洗後に破砕し、得られたペースト状物に対して遠心分離を行って先ず固形分と液分を分離し、次いで得られた液分を水分と油分に分離した。得られた油分を孔径1.5μmの濾紙(アドバンテック社製)を用いて重力濾過して目的のオリーブ抽出油5.1kgを得た。得られたオリーブ抽出油は、オリーブ葉に由来する青臭さをほとんど有さず、果実臭を有していた。
一方、脂肪酸の構成には殆ど差は無かった。
以上のことから、実施例1で得たオリーブ抽出油は、比較例1で得たオリーブ抽出油に比して、抗酸化作用、抗炎症作用、消臭、抗菌作用等に優れることが期待される。
実施例1におけるオリーブ葉の量3.4kgとした以外は実施例1と同様の操作を行いオリーブ抽出油を得た。得られたオリーブ抽出油は、オリーブ葉に由来する青臭さをほとんど有さず、果実臭を有していた。
実施例1におけるオリーブ葉の量5kgとした以外は実施例1と同様の操作を行いオリーブ抽出油を得た。得られたオリーブ抽出油は、オリーブ葉に由来する青臭さをほとんど有さず、果実臭を有していた。
実施例1におけるオリーブ葉の量7.5kgとした以外は実施例1と同様の操作を行いオリーブ抽出油を得た。得られたオリーブ抽出油は、オリーブ葉に由来する青臭さをほとんど有さず、果実臭を有していた。
実施例1におけるオリーブ葉の量9kgとした以外は実施例1と同様の操作を行いオリーブ抽出油を得た。得られたオリーブ抽出油は、オリーブ葉に由来する青臭さが僅かに残存していたものの、実用上問題となるものではなかった。
発酵を行わなかったこと以外は、実施例1と同様の操作を行って、オリーブ抽出油を得た。
化粧かぶれを起こしやすい敏感肌を有する被験者(女性)を集め、実施例1〜5及び比較例1,2で得たオリーブ抽出油を10日間、1日1回手に塗布し、肌の状態を評価した
。
その結果、比較例2のオリーブ抽出油は、臭いが気になるため、途中で評価を中止した。
また、実施例1〜5で得たオリーブ抽出油を用いた場合、比較例1で得たオリーブ抽出油を使用した場合に比べて、全例において、肌の状態が良好(肌荒れの有無、肌のきめ、なめらかさ等)であった。
2.オリーブ果実
2´.オリーブ葉
3.ビニールシート
4.ロープ
5.食塩水
6.水
Claims (6)
- a)オリーブ果実、及び
b)前記オリーブ果実とオリーブ葉との合計質量に基き、160/31.6ないし900/39質量%となる量のオリーブ葉を共存下で一緒に、
乳酸発酵させた後に粉砕するか、粉砕中に乳酸発酵させるか、又は、粉砕後に乳酸発酵させる発酵工程と、
得られたペースト状物から油分を抽出する抽出工程とを含む、
オリーブ抽出油の製造方法。 - a)オリーブ果実、及び
b)前記オリーブ果実とオリーブ葉との合計質量に基き、160/31.6ないし900/39質量%となる量のオリーブ葉
の混合物を、乳酸発酵させた後に粉砕するか、粉砕中に乳酸発酵させるか、又は、粉砕後に乳酸発酵させる発酵工程と、
得られたペースト状物から油分を抽出する抽出工程とを含む、
オリーブ抽出油の製造方法。 - 前記乳酸発酵が、オリーブ果実およびオリーブ葉を塩水中に浸漬して行われる請求項1又は2記載の方法。
- 前記塩水が1〜10%の塩分濃度である請求項3記載の方法。
- 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法により製造される、クロロフィルを100ppm以上含有するオリーブ抽出油。
- オリーブ果実又はその粉砕物を乳酸発酵させ、得られたペースト状物から油分を抽出してオリーブ抽出油を製造するにあたり、
前記オリーブ果実とオリーブ葉との合計質量に基き、160/31.6ないし900/39質量%となる量のオリーブ葉又はその粉砕物を、前記オリーブ果実との共存下で一緒に乳酸発酵させることを特徴とする、オリーブ抽出油におけるオリーブ葉に由来する青臭さを低減させる方法。
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