以下に、本発明に係る補機駆動装置の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
〔実施形態1〕
図1は、実施形態1に係る補機駆動装置を備える車両の概略図である。本実施形態1に係る補機駆動装置2は、車両1に搭載されている。この車両1は、走行時における動力源として内燃機関であるエンジン10が設けられており、エンジン10の運転時における回転時であるクランクシャフト12の一端には、クランクシャフト12と一体となって回転するドライブプレート14が接続されている。このドライブプレート14は、エンジン10で発生した動力を外部に出力する出力手段として設けられている。出力手段として設けられているドライブプレート14は、略円板状の形状で形成されており、円板の中心軸がクランクシャフト12の回転軸と一致する向きでクランクシャフト12に接続されている。
また、ドライブプレート14の外周には、リングギア16が形成されており、このリングギア16には、エンジン10の始動時に用いるエンジン始動手段であるスタータ20のピニオンギア22が噛み合っている。スタータ20は、車両1に搭載される各電気機器(図示省略)の電源であるバッテリ(図示省略)に接続されており、バッテリから供給される電気で駆動することにより、エンジン10を始動可能に設けられている。このように、ドライブプレート14のリングギア16は、スタータ20で発生する駆動力の入力部となっている。
また、エンジン10には、エンジン10の運転時にのみ駆動させる補助装置が設けられており、その一例としては、運転時におけるエンジン10の冷却に用いる冷却水を循環させるウォータポンプ30が設けられている。このウォータポンプ30は、エンジン10で発生する動力で駆動可能になっている。詳しくは、クランクシャフト12におけるドライブプレート14が設けられている側の端部の反対側の端部にエンジンプーリ24が設けられ、ウォータポンプ30にはポンププーリ32が設けられている。さらに、これらのエンジンプーリ24とポンププーリ32とには、ファンベルト34が巻き掛けられており、ウォータポンプ30には、このファンベルト34を介して、エンジン10で発生する動力が伝達可能になっている。これにより、ウォータポンプ30は、エンジン10で発生する動力で駆動可能になっている。このように、エンジンプーリ24は、エンジン10で発生した動力を補助装置に伝達する補助装置駆動手段として設けられている。
このように設けられるエンジン10は、運転時に発生した動力を、ドライブプレート14を介して出力可能になっており、ドライブプレート14に接続されるトルクコンバータ40に対して出力可能になっている。詳しくは、トルクコンバータ40は、エンジン10から伝達された動力の流体伝達が可能なポンプ42とタービン44とを有しており、ドライブプレート14は、このように設けられるトルクコンバータ40のポンプ42が接続されている。これにより、エンジン10の運転時には、ドライブプレート14は、トルクコンバータ40のポンプ42に対して回転トルクを伝達することが可能になっており、即ち、エンジン10の運転時に発生した動力をトルクコンバータ40に対して出力可能になっている。また、トルクコンバータ40は、エンジン10から伝達された動力の機械的な伝達が可能なロックアップ機構46も備えており、ドライブプレート14から伝達された回転トルクを、機械的にタービン44に対して伝達することが可能になっている。
また、トルクコンバータ40のタービン44は、エンジン10で発生した動力を駆動輪56側に伝達する動力伝達経路50側に接続されているが、この動力伝達経路50には、接合状態と開放状態とを切り替えることにより、動力の伝達と遮断とを切り替えることができるクラッチ54が設けられている。このクラッチ54は、例えば、前後進切替機構(図示省略)を構成する部材の一部として設けられている。なお、クラッチ54は、前後進切替機構以外によって設けられていてもよく、動力伝達経路50上においてクラッチ54が設けられる形態は問わない。
さらに、動力伝達経路50には、クラッチ54と駆動輪56との間には、エンジン10で発生した動力を駆動輪56側に伝達可能に設けられると共に、車両1の走行状態に応じて変速比を切り替えることにより、エンジン10で発生した動力の回転数を切り替えて、回転トルクを駆動輪56側に伝達する変速機(図示省略)が設けられている。
また、車両1には、走行時に駆動させる補機が複数搭載されており、これらの補機は、エンジン10で発生した動力や、車両1の走行時における運動エネルギを用いて駆動可能になっている。
まず、この補機について説明すると、補機の一例としては、車内の空調装置(図示省略)で用いられるコンプレッサ80、変速機を制御する際における油圧を発生する油圧源であるメカポンプ82、運転者が制動操作を行った場合において制動装置で用いる負圧を発生させる負圧ポンプ84、入力される機械的エネルギを用いてバッテリに充電する電気を発電するオルタネータ86等が、補機として設けられている。これらの補機は、エンジン10や駆動輪56からの回転トルクが、それぞれの補機の入力軸88に入力されることにより、駆動可能になっている。
詳しくは、エンジン10や駆動輪56と、コンプレッサ80等の補機との間には、エンジン10や駆動輪56からの回転トルクを補機に伝達することができる補機駆動軸70が設けられている。即ち、補機駆動軸70は、動力伝達経路50におけるクラッチ54よりも駆動輪56側における位置と、ドライブプレート14とから回転トルクを受けることが可能に設けられていると共に、回転トルクによって車両1の補機を駆動可能な補機駆動手段として設けられており、これらのように受けた回転トルクを、補機に伝達可能になっている。補機駆動手段として設けられる補機駆動軸70には、エンジン10からの回転トルクの入力部である駆動軸側ギア72と、駆動輪56側からの回転トルクの入力部である駆動軸側プーリ76とが設けられている。
このうち、駆動軸側ギア72は、一方向に回転する場合には駆動軸側ギア72と補機駆動軸70とを一体となって回転させることができ、他方向に回転する場合には駆動軸側ギア72と補機駆動軸70とを相対的に空転させることができるワンウェイクラッチ74を介して補機駆動軸70に接続されている。このように設けられる補機駆動軸70は、ドライブプレート14のリングギア16に噛み合っており、エンジン10からの回転トルクは、このドライブプレート14のリングギア16から駆動軸側ギア72に伝達されることにより、補機駆動軸70に入力される。ドライブプレート14は、エンジン10で発生した動力を、このようにリングギア16を用いて補機駆動軸70側に出力することにより、補機駆動軸70に対して回転トルクの伝達を行う。
ここで、駆動軸側ギア72は、ワンウェイクラッチ74を介して補機駆動軸70に接続されているが、ワンウェイクラッチ74を介して駆動軸側ギア72と補機駆動軸70との間で回転トルクを伝達することができる方向は、エンジン10で発生した動力によって回転するドライブプレート14から回転トルクが駆動軸側ギア72に伝達され、補機駆動軸70に入力される方向になっている。ワンウェイクラッチ74は、このように補機駆動軸70が受ける回転トルクの方向を規制する回転方向規制手段として設けられており、このワンウェイクラッチ74は、ドライブプレート14と補機駆動軸70との間に配設されている。
また、駆動軸側プーリ76は、補機駆動軸70と一体となって回転可能になっており、動力伝達経路50から伝動ベルト78を介して回転トルクが伝達されることにより、駆動輪56側からの回転トルクを補機駆動軸70に伝達可能になっている。即ち、動力伝達経路50に設けられる回転軸である動力伝達軸52には、動力伝達軸52の回転トルクを補機駆動軸70側に出力することができる駆動輪側プーリ60が設けられており、伝動ベルト78は、この駆動輪側プーリ60と、補機駆動軸70に設けられる駆動軸側プーリ76とに巻き掛けられている。
また、駆動輪側プーリ60は、動力伝達軸52が一方向に回転する場合には動力伝達軸52と共に駆動輪側プーリ60を回転させ、他方向に回転する場合には動力伝達軸52と共には回転させず、動力伝達軸52と駆動輪側プーリ60とを相対的に空転させることができるワンウェイクラッチ62を介して動力伝達軸52に接続されている。このワンウェイクラッチ62が動力伝達軸52と共に駆動輪側プーリ60を回転させることができる方向は、車両1の走行時における駆動輪56からの回転トルクによって回転する動力伝達軸52から駆動輪側プーリ60に回転トルクが伝達される方向になっている。
このワンウェイクラッチ62も、駆動軸側ギア72と補機駆動軸70との間に設けられるワンウェイクラッチ74と同様に、補機駆動軸70が受ける回転トルクの方向を規制する回転方向規制手段として設けられており、このワンウェイクラッチ62は、動力伝達経路50におけるクラッチ54よりも駆動輪56側の位置と、補機駆動軸70との間に配設されている。補機駆動軸70は、これらのようにワンウェイクラッチ62、74を介して回転トルクを受けることにより、所定の方向の回転トルクのみ受けることが可能になっている。
この実施形態1に係る補機駆動装置2は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。まず、停止しているエンジン10を始動する場合には、バッテリから供給される電気によってスタータ20を駆動する。この駆動によって発生した回転トルクは、スタータ20のピニオンギア22から、ドライブプレート14のリングギア16に伝達される。これによりドライブプレート14は、スタータ20から伝達された回転トルクによって回転し、さらに、このドライブプレート14の回転と共にクランクシャフト12も一体となって回転する。エンジン10の始動時には、このようにスタータ20を駆動させることによってクランクシャフト12を回転させつつ、燃料の噴射制御や点火時期の制御を行うことにより、エンジン10を始動する。
このように始動したエンジン10で発生する動力による車両1の走行時には、エンジン10で発生した動力は、クランクシャフト12と一体となって回転するドライブプレート14からトルクコンバータ40に伝達される。トルクコンバータ40に伝達されたエンジン10からの動力は、トルクコンバータ40のポンプ42とタービン44との間の流体伝達、または、ロックアップ機構46による機械的な伝達によって、回転トルクとしてタービン44に伝達される。このタービン44は、動力伝達経路50に接続されているため、トルクコンバータ40に伝達された回転トルクは、さらにタービン44から動力伝達経路50に伝達される。
動力伝達経路50に回転トルクが伝達された場合、この回転トルクは、動力伝達経路50を伝わって駆動輪56側に伝達されるが、動力伝達経路50には、クラッチ54が設けられている。このため、動力伝達経路50に伝達された回転トルクは、クラッチ54の状態に応じて駆動輪56への伝達状態が切り替えられ、トルクコンバータ40側からの回転トルクは、クラッチ54が接合状態になっている場合に、駆動輪56側に伝達される。
ここで、クラッチ54の接合と開放との切り替えについて説明をすると、車両1の通常の走行時や停車時には、クラッチ54は接合し、動力の伝達を行うことが可能になっている。また、本実施形態1にかかる補機駆動装置2を備える車両1は、車両1の走行時に所定の条件が満たされた場合に、エンジン10を停止させる自動停止の制御を行うことが可能になっており、エンジン10の自動停止を行う場合には、クラッチ54は開放する。この自動停止の条件としては、例えば、車両1の走行中に、変速機のレンジを切り替えるシフトレバー(図示省略)によって選択されるシフトレンジがN(ニュートラル)レンジに切り替えられること等が挙げられ、この場合には、運転者は駆動力を要求していないと判断することができる。このように、車両1の走行中に、運転者は駆動力を要求していないと判断することができる場合には、エンジン10を停止すると共に、クラッチ54を開放する。
これらのように、クラッチ54は、車両1の通常の走行時や停車時は接合し、エンジン10の自動停止を行う場合には開放する。クラッチ54は、このように制御されるため、車両1の通常の走行時には接合状態になり、トルクコンバータ40側からの回転トルクを駆動輪56側に伝達する。駆動輪56側に伝達された回転トルクは、動力伝達経路50が有する動力伝達軸52や変速機等を介して駆動輪56に伝達され、駆動輪56で駆動力を発生することにより車両1は走行する。
車両1の走行時は、このようにエンジン10を運転し、エンジン10で発生した動力を駆動力として用いることによって走行するが、エンジン10で発生した動力は、車両1の走行時における駆動力以外の用途にも使用される。例えば、エンジン10の運転時にはエンジン10は発熱をするため、冷却媒体である冷却水を、エンジン10に対して循環させる。このため、エンジン10の運転時には、ウォータポンプ30を駆動することにより冷却水を循環させるが、このウォータポンプ30の駆動を、エンジン10で発生する動力によって行う。具体的には、ウォータポンプ30に設けられるポンププーリ32と、クランクシャフト12に設けられるエンジンプーリ24とには、ファンベルト34が巻き掛けられているため、エンジン10の運転時には、エンジン10で発生する動力の一部が、このファンベルト34を介してウォータポンプ30に伝達される。これにより、ウォータポンプ30は駆動する。
また、エンジン10で発生した動力は、このウォータポンプ30の駆動以外にも用いられ、コンプレッサ80やメカポンプ82等の補機の駆動にも用いられ、これらの補機に対しては、エンジン10の動力は、補機駆動軸70を介して伝達される。具体的には、エンジン10の運転時には、クランクシャフト12と一体となって回転をするドライブプレート14から補機駆動軸70に対して回転トルクが伝達される。この場合における回転トルクの伝達は、ドライブプレート14に形成されるリングギア16と、補機駆動軸70に設けられる駆動軸側ギア72とによって行われる。即ち、ドライブプレート14に形成されるリングギア16と駆動軸側ギア72とは噛み合っているため、車両1の走行状態に関わらず、エンジン10の運転を行うことによってドライブプレート14が回転した場合には、回転トルクはリングギア16から駆動軸側ギア72に伝達される。
また、駆動軸側ギア72は、ワンウェイクラッチ74を介して補機駆動軸70に接続されているが、回転トルクをワンウェイクラッチ74によって伝達することができる方向は、エンジン10の動力によって回転するドライブプレート14及び駆動軸側ギア72から、補機駆動軸70に入力される回転トルクの回転方向になっている。このため、ドライブプレート14から補機駆動軸70に対して伝達された回転トルクは、補機駆動軸70に伝達され、補機駆動軸70は、この回転トルクによって回転をする。
このように、エンジン10で発生する動力によって補機駆動軸70が回転をした場合、補機駆動軸70の回転トルクは、各補機、つまり、コンプレッサ80、メカポンプ82、負圧ポンプ84、オルタネータ86のそれぞれの入力軸88に伝達される。これにより、コンプレッサ80やメカポンプ82等の各補機は、入力軸88から入力された回転トルクによって駆動し、それぞれ所定の動作を行う。
即ち、コンプレッサ80は、入力軸88から入力された回転トルクによって駆動することにより、空調装置で用いる冷媒を圧縮する。また、メカポンプ82は、入力軸88から入力された回転トルクによって駆動することにより、変速機の変速制御を行う場合に制御する各部を作動させるために必要な油圧を発生する。また、負圧ポンプ84は、入力軸88から入力された回転トルクによって駆動することにより、運転者が制動操作を行った場合における運転者の操作力の補助に用いる負圧を発生する。また、オルタネータ86は、入力軸88から入力された回転トルクによって駆動することにより電気を発電し、発電した電気をバッテリに充電する。
また、補機駆動軸70には、駆動軸側プーリ76も設けられており、駆動軸側プーリ76は、動力伝達軸52に設けられる駆動輪側プーリ60に、伝動ベルト78を介して回転トルクを伝達する。また、駆動輪側プーリ60は、ワンウェイクラッチ62を介して動力伝達軸52に接続されているが、回転トルクをワンウェイクラッチ62によって伝達することができる方向は、駆動輪56からの回転トルクによって回転する動力伝達軸52から駆動輪側プーリ60に入力される回転トルクの回転方向になっている。このため、エンジン10で発生した動力が、駆動軸側プーリ76側から伝動ベルト78を介して駆動輪側プーリ60に伝達された場合における回転トルクの回転方向に対しては、ワンウェイクラッチ62は、この回転トルクを伝達せず、空転をする。従って、この場合は、駆動輪側プーリ60は補機駆動軸70に対して回転トルクを伝達せず、駆動輪側プーリ60は補機駆動軸70に対して空転する。
これらに対し、エンジン10の自動停止を行う場合には、補機駆動軸70に関わる部分は、エンジン10で発生した動力が動力伝達経路50に対して伝達される場合とは異なる動作を行う。具体的には、エンジン10の自動停止を行う場合には、エンジン10を停止させると共に、クラッチ54を開放させる。この場合、動力伝達経路50においてクラッチ54よりも駆動輪56側に位置する動力伝達軸52には、エンジン10側からの回転トルクは伝達されなくなり、走行中の車両1の運動エネルギによる回転トルクが、駆動輪56側から伝達される。これにより、駆動輪側プーリ60が設けられる動力伝達軸52から当該駆動輪側プーリ60に対して、ワンウェイクラッチ62を介して回転トルクが伝達される。
このワンウェイクラッチ62が、動力伝達軸52側から駆動輪側プーリ60に対して伝達できる回転トルクの回転方向は、車両1の走行時における運動エネルギによって駆動輪56側から動力伝達軸52に伝達されて駆動輪側プーリ60に入力される回転トルクの回転方向になっている。このため、車両1の走行時における運動エネルギによって駆動輪56から動力伝達軸52に対して伝達された回転トルクは、ワンウェイクラッチ62を介して駆動輪側プーリ60に伝達され、駆動輪側プーリ60は、動力伝達軸52と共に回転をする。これにより、駆動輪56から動力伝達軸52に対して伝達された回転トルクは、伝動ベルト78を介して駆動輪側プーリ60から駆動軸側プーリ76に伝達され、補機駆動軸70は、この回転トルクによって回転をする。
このように、駆動輪56側から入力される回転トルクによって補機駆動軸70が回転をした場合には、エンジン10で発生する動力によって補機駆動軸70が回転をした場合と同様に、コンプレッサ80やメカポンプ82等の各補機は、入力軸88から入力された回転トルクによって駆動し、それぞれ所定の動作を行う。
また、このように、駆動輪56側から入力される回転トルクによって補機駆動軸70が回転する場合は、補機駆動軸70と駆動軸側ギア72との間に介在するワンウェイクラッチ74は、補機駆動軸70から駆動軸側ギア72への伝達は行わず、これらは相対的に空転する。つまり、補機駆動軸70と駆動軸側ギア72との間に介在するワンウェイクラッチ74によって伝達することができる回転トルクの回転方向は、エンジン10の動力によって回転するドライブプレート14側から、補機駆動軸70に入力される回転トルクの回転方向になっている。このため、駆動輪56側から補機駆動軸70に対して入力される回転トルクの回転方向に対しては、ワンウェイクラッチ74は、この回転トルクを伝達せず、空転をする。従って、この場合は、補機駆動軸70は駆動軸側ギア72に対して回転トルクを伝達せず、補機駆動軸70は駆動軸側ギア72に対して空転する。
以上の補機駆動装置2は、コンプレッサ80やメカポンプ82等の補機を駆動可能な補機駆動軸70が設けられており、補機駆動軸70は、動力伝達経路50におけるクラッチ54よりも駆動輪56側における位置と、ドライブプレート14とから回転トルクを受けることが可能になっており、この回転トルクによって補機を駆動可能になっている。動力伝達経路50におけるクラッチ54よりもエンジン10側と駆動輪56側とでは、クラッチ54の状態やエンジン10の運転状態によって回転トルクの発生状態が変化し、動力伝達経路50におけるクラッチ54よりもエンジン10側では、車両1の走行状態に関わらず、エンジン10が運転していれば、回転トルクが発生する。また、動力伝達経路50におけるクラッチ54よりも駆動輪56側では、エンジン10の運転状態に関わらず、車両1が走行していれば、回転トルクが発生する。このため、動力伝達経路50におけるクラッチ54よりも駆動輪56側における位置と、ドライブプレート14とから回転トルクを受けることが可能に補機駆動軸70を設けることにより、エンジン10の運転状態や車両1の走行状態に関わらず、補機を駆動させることができる。
また、エンジン10で発生した動力のうち、補機の駆動に用いる動力は、ドライブプレート14から補機駆動軸70に対して出力するため、エンジン10から補機駆動軸70へ動力を伝達する構成にする際に、新たに追加する部品の数を減らすことができる。これにより、補機駆動軸70を設ける場合における構成の簡略化を図ることができ、また、新たに追加する部品が少ないため、部品点数の増加に伴って、エンジン10で発生した動力をクラッチ54に伝達するまでの軸長が長くなることを抑制することができる。これらの結果、部品点数の低減を図ると共に小型化を図ることができる。
また、エンジン10で発生した動力をクラッチ54に伝達するまでの軸長の短縮化を図ることにより、質量を低減したり、イナーシャを低減したりすることができる。この結果、車両1の走行時における燃費やドライバビリティを向上させることができる。
また、動力伝達経路50におけるクラッチ54よりも駆動輪56側の部分やドライブプレート14と補機駆動軸70の間には、ワンウェイクラッチ62、74が設けられているため、補機駆動軸70は、ワンウェイクラッチ62、74を介して回転トルクを受けることにより、所定の方向の回転トルクのみ受けることが可能になっている。これにより、補機駆動軸70から補機に回転トルクを伝達することによって補機を駆動させる場合に、適切な回転トルクを伝達することができる。この結果、部品点数を低減しつつ、より確実に補機を駆動させることができる。
また、エンジン10で発生した動力を補機駆動軸70に伝達における出力手段として、トルクコンバータ40が用いられる車両1において通常使用されるドライブプレート14を用いるため、新たな部材を使用することなく、より容易に、補機駆動軸70に回転トルクを伝達することを可能にすることができる。この結果、より確実に、部品点数の低減を図ると共に小型化を図ることができる。
また、ドライブプレート14は、リングギア16を用いて、エンジン10で発生した動力を補機駆動軸70側に出力することにより回転トルクの伝達を行うため、より容易に、補機駆動軸70に回転トルクを伝達可能にすることができる。つまり、ドライブプレート14には、スタータ20で発生する駆動力の入力部であるリングギア16が予め形成されているため、このリングギア16を用いて回転トルクの伝達を行うことにより、回転トルクの伝達用の加工を新たに施すことなく、補機駆動軸70側への回転トルクの伝達を可能にすることができる。この結果、より容易に、部品点数の低減を図ると共に小型化を図ることができる。
また、エンジン10で発生した動力を補機駆動軸70に伝達における出力手段としてドライブプレート14を用いるため、補機の応答性を向上させることができる。つまり、エンジン10で発生した動力を補機駆動軸70に伝達する場合に、動力伝達経路50におけるトルクコンバータ40とクラッチ54との間の部分から伝達する場合において、ロックアップ機構46が開放状態になっている場合、トルクコンバータ40は、エンジン10の動力を、流体伝達によって動力伝達経路50側に伝達する。この場合、ポンプ42とタービン44との間の流体を介して動力の伝達が行われるため、エンジン10で発生する動力の変化に対して、動力伝達経路50に伝達される動力は、変化に対する応答性が低くなる。このため、補機駆動軸70を介して補機に伝達される回転トルクの応答性も低くなり、例えば、メカポンプ82の応答性も低くなる。これに対し、ドライブプレート14は、クランクシャフト12に機械的に接合されているため、エンジン10で発生する動力が変化した場合、補機駆動軸70に伝達する動力も、その動力の変化に応じて直ちに変化する。この結果、補機の応答性を向上させることができる。
また、このように補機の応答性を向上させることができるため、メカポンプ82の応答性を向上させることができ、メカポンプ82で発生する油圧の応答性を向上させることができる。この結果、車両1の再発進時の応答性を向上させることができる。
[実施形態2]
実施形態2に係る補機駆動装置100は、実施形態1に係る補機駆動装置2と略同様の構成であるが、エンジン10で発生した動力を補機駆動軸70に伝達する出力手段として、エンジンプーリ24を用いる点に特徴がある。他の構成は実施形態1と同様なので、その説明を省略すると共に、同一の符号を付す。
図2は、実施形態2に係る補機駆動装置を備える車両の概略図である。実施形態1に係る補機駆動装置2では、エンジン10で発生した動力を補機駆動軸70側に伝達する場合には、ドライブプレート14によって行っていたが、本実施形態2に係る補機駆動装置100では、この伝達を行う出力手段としてエンジンプーリ24を用いる。詳しくは、補機駆動軸70には、実施形態1に係る補機駆動装置2における駆動軸側ギア72に代わって、駆動軸エンジン側プーリ110が設けられている。また、エンジンプーリ24にはファンベルト34が巻き掛けられているが、このファンベルト34は駆動軸エンジン側プーリ110にも巻き掛けられており、エンジン10で発生した動力は、ファンベルト34を介して駆動軸エンジン側プーリ110に伝達可能になっている。
また、駆動軸エンジン側プーリ110は、一方向に回転する場合には駆動軸エンジン側プーリ110と補機駆動軸70とを一体となって回転させることができ、他方向に回転する場合には駆動軸エンジン側プーリ110と補機駆動軸70とを相対的に空転させることができるワンウェイクラッチ112を介して補機駆動軸70に接続されている。このように設けられる駆動軸エンジン側プーリ110には、エンジンプーリ24と共にファンベルト34が巻き掛けられており、エンジン10からの回転トルクは、ファンベルト34を介してエンジンプーリ24から駆動軸エンジン側プーリ110に伝達されることにより、補機駆動軸70に入力される。
ここで、駆動軸エンジン側プーリ110は、ワンウェイクラッチ112を介して補機駆動軸70に接続されているが、ワンウェイクラッチ112を介して駆動軸エンジン側プーリ110と補機駆動軸70との間で回転トルクを伝達することができる方向は、エンジン10で発生した動力によって回転するエンジンプーリ24から回転トルクがファンベルト34を介して駆動軸エンジン側プーリ110に伝達され、補機駆動軸70に入力される方向になっている。ワンウェイクラッチ112は、このように補機駆動軸70が受ける回転トルクの方向を規制する回転方向規制手段として設けられており、このワンウェイクラッチ112は、エンジンプーリ24と補機駆動軸70との間に配設されている。
この実施形態2に係る補機駆動装置100は、以上のごとき構成からなり、以下、その作用について説明する。本実施形態2に係る補機駆動装置100を備える車両1では、車両1の走行状態に関わらず、エンジン10が運転している場合には、エンジン10で発生した動力による回転トルクの一部が、エンジンプーリ24及びファンベルト34を介して、補機駆動軸70の駆動軸エンジン側プーリ110に伝達される。
また、駆動軸エンジン側プーリ110は、ワンウェイクラッチ112を介して補機駆動軸70に接続されているが、回転トルクをワンウェイクラッチ112によって伝達することができる方向は、エンジン10の動力によって回転するエンジンプーリ24及び駆動軸エンジン側プーリ110から、補機駆動軸70に入力される回転トルクの回転方向になっている。このため、エンジンプーリ24からファンベルト34を介して補機駆動軸70に対して伝達された回転トルクは、補機駆動軸70に伝達され、補機駆動軸70は、この回転トルクによって回転をする。
このように、エンジン10で発生する動力によって補機駆動軸70が回転をした場合には、補機駆動軸70の回転トルクは、各補機のそれぞれの入力軸88に伝達され、コンプレッサ80やメカポンプ82等の各補機は、入力軸88から入力された回転トルクによって駆動し、それぞれ所定の動作を行う。
以上の補機駆動装置100は、エンジン10で発生した動力を補機駆動軸70に伝達する際における出力手段として、ウォータポンプ30等の補助装置を駆動させるために通常使用されるエンジンプーリ24を用いるため、新たな部材を使用することなく、より容易に、補機駆動軸70に回転トルクを伝達することを可能にすることができる。この結果、より確実に、部品点数の低減を図ると共に小型化を図ることができる。
また、補機の駆動に用いる回転トルクをエンジン10から補機駆動軸70に伝達する際に、ファンベルト34を用いて伝達するため、回転トルクの伝達時における振動や騒音を低下させることができる。この結果、エンジン10の運転時における静粛性を向上させることができる。
なお、上述した補機駆動装置2、100では、補機の一例として、コンプレッサ80、メカポンプ82、負圧ポンプ84、オルタネータ86を用いて説明しているが、補機は、これら以外のものであってもよい。同様に、補助装置の一例として、ウォータポンプ30を用いて説明しているが、補助装置は、ウォータポンプ30以外のものであってもよい。補機は、車両1の運転時には、エンジン10の運転状態に関わらず駆動させる必要がある装置であればよく、補助装置は、エンジン10の運転時にのみ駆動させる必要がある装置であればよい。
また、上述した補機駆動装置2、100では、動力伝達経路50におけるクラッチ54よりも駆動輪56側の位置と補機駆動軸70との間に配設されるワンウェイクラッチ62は、動力伝達軸52と駆動輪側プーリ60との間に設けられているが、このワンウェイクラッチ62は、補機駆動軸70と駆動軸側プーリ76との間に設けられていてもよい。動力伝達経路50におけるクラッチ54よりも駆動輪56側の位置と補機駆動軸70との間に配設されるワンウェイクラッチ62は、双方の間で伝達することができる回転トルクの方向を規制することができるように設けられていれば、その位置は問わない。
また、実施形態1に係る補機駆動装置2では、エンジン10で発生した動力を外部に出力する出力手段としてドライブプレート14を用いており、実施形態2に係る補機駆動装置100ではエンジンプーリ24を用いているが、出力手段は、これら以外のものを用いてもよい。出力手段は、例えば、変速機が手動変速機の場合に使用されるフライホイールであってもよい。フライホイールもドライブプレート14と同様に、周囲にリングギアが形成されているため、このリングギアを用いることにより、補機駆動軸70に対して回転トルクを伝達することが可能になる。このように、出力手段は、他の用途にも使用され、エンジン10で発生した動力を外部に出力することができる部材であれば、ドライブプレート14やエンジンプーリ24以外のものでもよい。