JP5589262B2 - 断熱鋼板及び金属製真空二重容器 - Google Patents

断熱鋼板及び金属製真空二重容器 Download PDF

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本発明は、金属製真空二重容器に用いることのできる、又は、引っ張り変形を伴う加工用途に用いることのできる断熱鋼板及び金属製真空二重容器に関するものである。
魔法瓶などの金属製真空二重容器は、内瓶と外瓶とで構成され、両瓶間の内部空間は真空引きされている。二重容器とすることで容器の内外間の熱伝導を抑え、内瓶と外瓶の間の空間を真空引きすることで対流熱伝達を抑え、内瓶と外瓶それぞれ、内部空間に面する面を鏡面仕上げすることによって輻射熱伝達を抑えている。内瓶及び外瓶を構成する金属として、耐食性、耐摩耗性に優れ、割れる心配のないステンレス鋼が用いられることが多い。
安価な材料を用いる目的で、特許文献1においては、内瓶及び外瓶の口部をステンレス鋼、外瓶の他の部分をアルミメッキ鋼でそれぞれ構成する真空二重容器が記載されている。内瓶及び外瓶の口部が熱伝導率の低いステンレス鋼で構成されているため、保温性に優れており、外瓶のアルミメッキ層は耐食性、耐摩耗性、耐熱性に優れ、多少傷付いたとしても、その下には鉄・アルミ合金の被膜が形成されているので、心材である炭素鋼まではいたらず、錆が発生する心配もないとしている。同文献に記載の容器では、内瓶と外瓶いずれも、胴部と底部を別々に形成し、溶接により一体化している。
特許文献2には、内筒及び外筒をアルミニウムあるいはアルミニウム合金によりそれぞれ形成し、内外筒間に真空空間を形成した金属製真空二重容器が記載されている。これにより、軽量で加工性に優れた金属製真空二重容器が得られるとしている。
特許文献3には、Alを含有する耐熱ステンレス鋼箔であって、箔の内部に孤立した空隙を有する箔が記載されている。ステンレス鋼箔の表面にAl合金を被覆し、熱処理によって表面のAlをステンレス鋼箔中に拡散させるに際し、カーケンダルボイドを形成させるものである。ステンレス鋼箔の内部に孤立した空隙を有することにより、ステンレス鋼箔の熱伝導率が低下し、この箔を用いたハニカム構造体によって内燃機関の排気ガス浄化用触媒担体を構成した場合、エンジン始動初期において浄化性能に優れる。
特許文献4には、Al含有量が6.5質量%以上であって、αFe結晶の、鋼板面に対する{222}面集積度が60%以上の高Al含有鋼板が記載されている。Alを3.5質量%以上含有する母材鋼板の表面にAlを付着させ、冷間圧延で加工歪を付与してから、付着させたAlの拡散熱処理を行って製造する。これにより、従来困難であったAl含有量6.5質量%以上の高Al鋼板の加工性を向上でき、加工を低コストでできる。
特開平9−28586号公報 特開2001−25441号公報 特開2004−169113号公報 特開2006−144116号公報
金属製真空二重容器の側面及び底面については、前述のとおり容器壁を通しての伝熱は極めて小さくすることができる。一方、二重容器の口部については、そこで内瓶と外瓶とを接合しているため、接合部を通じて内瓶と外瓶との間で熱伝導が可能である。例えば容器内に高温の液体を収納した場合、内瓶が液体によって熱せられ、口部の接合部を通して熱が内瓶から外瓶に伝わり、外瓶が熱せられ、外瓶から周辺の雰囲気に熱が放散することになる。特許文献2に記載のものは、素材として熱伝導率の高いアルミニウムを用いているので、特に口部の接合部を通じての熱放散が大きい。
内瓶と外瓶にステンレス鋼を用いる場合、ステンレス鋼は炭素鋼やアルミニウムに比較すると熱伝導率が低いので、炭素鋼を用いた場合よりは上記口部を通じての熱放散を少なくすることができる。特許文献1に記載の場合も同様である。しかし、ステンレス鋼は、炭素鋼に比較して熱伝導率が低いといっても、金属であるから熱の伝導は避けられず、口部の接合部を通じての熱ロスを十分に低減することはできない。
また、金属製真空二重容器の製造に当たっては、特許文献1に記載のようにステンレス鋼製の内瓶とアルミメッキ構成の外瓶をいずれも胴部と底部を別々に形成し溶接で一体化するのではなく、1枚の鋼板を絞り加工して胴部と底部を一体で成形できれば好ましい。そのため、金属製真空二重容器素材について、断熱特性を確保しつつ、従来より優れた加工性を有する金属素材が要求されている。
本発明は、金属製真空二重容器の製造に用いることのできる、又は、引っ張り変形を伴う加工用途に用いることのできる、断熱性に優れかつ加工性に優れる断熱鋼板及び断熱性に優れる金属製真空二重容器を提供することを目的とする。
金属製真空二重容器において、口部に内瓶と外瓶の接合部が存するため、容器内部と外部との間で熱伝導が生じる。この熱伝導を遮断するためには、容器を構成する材料自体に熱伝導率の低い材料を用いれば好ましいが、材料として炭素鋼やステンレス鋼を用いる限り熱伝導率の低減には限界がある。一方、内瓶の表面(容器の内側に接する側)の熱伝導率を低くすることができれば、容器内部と外部との間の熱伝導を低減することが可能である。
前述のとおり、特許文献3には、Alを含有する耐熱ステンレス鋼箔であって、箔の内部に孤立した空隙を有する箔が記載されている。ステンレス鋼箔の表面にAl合金を被覆し、熱処理によって表面のAlをステンレス鋼箔中に拡散させるに際し、カーケンダルボイドを形成させるものである。ステンレス鋼箔の内部に孤立した空隙を有することにより、ステンレス鋼箔の熱伝導率が低下する。
しかし、特許文献3に記載の方法を適用して鋼板表面付近の内部に孤立した空隙を形成し、この鋼板に塑性加工を伴う加工を施すと、例えば、この鋼板を用いて金属製真空二重容器の内瓶と外瓶をそれぞれ一体成形で加工成形すると、素材鋼板に比較して熱伝導性が著しく増加して、これを用いた真空二重容器には十分な断熱性が付与できなった。塑性加工に伴い、鋼板表面付近の内部に形成した空隙が加工時につぶれてしまい、成形後の内瓶と外瓶は熱伝導率の低下効果を失ってしまう。これでは、金属製真空二重容器の断熱性を向上することができない。
特許文献4には、Alを3.5質量%以上含有する母材鋼板の表面にAlを付着させ、冷間圧延で加工歪を付与してから拡散熱処理を行って製造することにより、Al含有量が6.5質量%以上であって、αFe結晶の、鋼板面に対する{222}面集積度が60%以上の高Al含有鋼板が得られることが記載されている。これにより、高Al含有量鋼板であっても加工性不良が軽減される。
本発明者らは、Al含有量が3.5質量%未満の母材鋼板を用い、母材鋼板の表面にAlを付着させ、冷間圧延で加工歪を付与してから拡散熱処理を行って製造することにより、鋼板表面付近の内部にカーケンダルボイドを形成して、前記カーケンダルボイドが内部に孤立した空隙となるとともに、αFe結晶の鋼板面に対する{222}面集積度を高めた断熱鋼板を形成できることを見いだした。そして、この断熱鋼板を用いて金属製真空二重容器の内瓶を一体成形で形成した場合には、内部の孤立した空隙がつぶれることがなく成形できることを見出し、成形後の内瓶は熱伝導率の低下効果を失わないようにできた。
本発明は上記知見に基づいてなされたものであり、その要旨とするところは以下のとおりである。
(1)鋼板厚みをtとし、鋼板面の表面から1/7tの間に孤立した空隙を有し、1/7t〜1/2tの間のいずれかの板厚部分においてαFe相の鋼板面に対する{222}面集積度が20〜99%であり、
鋼板のAl含有量は、鋼板面の表面から1/7t間のAl濃度の最大値をA1/7t(質量%)とし、1/7tから1/2t間のAl濃度の最小値をA1/2t(質量%)としたとき、A1/7tの範囲が0.8質量%以上10.5質量%以下であり、A1/2tの範囲が9.8質量%以下であり、
鋼板はさらにC:0.001〜0.002質量%、Si:0.1〜0.2質量%、Mn:0.10〜0.15質量%を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、
金属製真空二重容器に用いることを特徴とする断熱鋼板。
(2)鋼板はさらにCr:10〜13質量%を含有することを特徴とする(1)に記載の断熱鋼板。
(3)前記空隙のサイズが、平均で0.5μm〜50μmであることを特徴とする(1)又は(2)に記載の断熱鋼板。
(4)A1/7tの範囲が5.0質量%以上10質量%以下であり、A1/2tの範囲が2.0質量%以下であることを特徴とする(1)乃至(3)のいずれかに記載の断熱鋼板。
(5)前記1/7t〜1/2tの間のいずれかの板厚部分において、αFe相の鋼板面に対する{222}面集積度が60〜99%であることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の断熱鋼板。
(6)前記鋼板の厚みtが、10μm以上3mm以下であることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載の断熱鋼板。
(7)金属製真空二重容器に代え、引っ張り変形を伴う加工用途に用いることを特徴とする(1)乃至(6)のいずれかに記載の断熱鋼板。
(8)(1)乃至(6)のいずれかに記載の断熱鋼板を用いてなることを特徴とする金属製真空二重容器。
(9)前記二重容器が内瓶と外瓶とからなり、少なくとも内瓶は単一の断熱鋼板を一体成形してなることを特徴とする(8)に記載の金属製真空二重容器。
本発明は、鋼板厚みをtとし、表面から1/7tの間に孤立した空隙を有し、1/7t〜1/2tの間においてαFe相の鋼板面に対する{222}面集積度が20〜99%である断熱鋼板とすることにより、この断熱鋼板を材料として成形加工した場合にも空隙がつぶれることがない。よって、本発明の断熱鋼板は、成形加工しても、断熱性が確保され、特に金属製真空二重容器の素材として用いたときに良好な断熱性を有する金属製真空二重容器を形成することができる。
本発明の断熱鋼板は、第1に、鋼板厚みをtとし、表面から1/7tの間に孤立した空隙を有することを特徴とする。孤立した空隙を有するため、鋼板の断熱効果を高めることができる。このような空隙が鋼板内部に形成された結果としてその部位近傍の熱伝導率が低下する。孤立した空隙の存在位置を表面から1/7tの間に規定したのは、この領域に空隙がないと鋼板の断熱性を十分に確保することができないからである。1/7tより内側に空隙が存在してもかまわないが、断熱効果の向上を認めることはできない。
本発明の断熱鋼板は、第2に、1/7t〜1/2tの間においてαFe相の鋼板面に対する{222}面集積度が20〜99%であることを特徴とする。
図1、図2には、本発明例の鋼板と比較例の鋼板において引っ張り試験を行い、板厚み方向に測定した空隙のサイズと引っ張り伸びの関係、熱伝導率と引っ張り伸びの関係を示した。これらの鋼板は何れも厚みが1.0mmであり、表面から1/7tの間に孤立した空隙を有しており、1/7t〜1/2tの間におけるαFe相の鋼板面に対する{222}面集積度が本発明例では50%であり、比較例では11%であった。熱伝導率評価方法として、光交流法(ACカロリメトリー)を採用した。試料上にマスクを置き、マスク上面から交流熱を光照射によって試料表面に加える。マスクの端から十分離れた位置の試料面方向の交流温度振幅を測定して熱伝導率を求める。引っ張り変形を行っていない場合の熱伝導率を基準とし、熱伝導率の増加代を百分率表示した。
図1に示すように、引っ張り伸びが増加すると、比較例の鋼板では板厚み方向に測定した空隙のサイズが小さくなっていき、徐々につぶれていった。そして、引っ張り伸びが40%に達したとき、ぺしゃんこにつぶれて空隙は無くなった。これに対して、本発明の鋼板では引っ張り伸びを増加させても、空隙の板厚み方向のサイズはほとんど変化せず、引っ張り伸びが40%に達しても、サイズの減少は数%程度であった。
また、図2に示すように、本発明例では引っ張り伸び後でも熱伝導率がほとんど変化しないのに対し、比較例では引っ張り伸びと熱伝導率との間に相関が見られた。図1の結果と併せ考察すると、これらの熱伝導率の変化は空隙の板厚み方向のサイズの変化に相関し、つぶれが大きくなるほど、熱伝導率は増加したと考えられる。比較例の鋼板では、引っ張り伸びが40%に達したときほぼ倍の熱伝導率が観察された。本発明の鋼板では、引っ張り伸びが40%に達しても、熱伝導率は引っ張り変形前に比べて数%程度の増加に留まり、優れた特性を維持していた。
本発明では、1/7t〜1/2tの間におけるαFe相の鋼板面に対する{222}面集積度を20%以上とすることにより、断熱鋼板に塑性加工を施しても、板厚み方向へ空隙がつぶれることがなく、断熱特性が良好に確保できる。一方、{222}面集積度が99%を越えても断熱特性の向上効果は飽和し、製造の困難性も伴うので、上限を99%とする。{222}面集積度を60%以上とすると、塑性加工後の断熱特性をより改善することができるので好ましい。鋼板の{222}面集積度が高いことに起因し、鋼板の加工性が向上する効果を得ることもできる。
{222}面集積度を1/7t〜1/2tの間において規定したのは、この範囲内において高い{222}面集積度とすれば、特に引っ張り変形させたときに空隙の板厚み方向に測定したサイズの変化が小さく、熱伝導度の上昇が極めて低く抑制できるからである。1/7t〜1/2tの間のいずれかの板厚部分において、{222}面集積度が20〜99%であればよい。また、αFe相について規定したのは、特に熱伝導性が低い相であり、断熱容器へ好適であるからである。
ここで、面集積度の測定は、MoKα線によるX線回折で行うことができる。αFe相の{222}面集積度は以下のように求める。試料表面に対して平行なFeのα結晶11面{110}、{200}、{211}、{310}、{222}、{321}、{411}、{420}、{332}、{521}、{442}の積分強度を測定し、その測定値それぞれをランダム方位である試料の理論積分強度で除した後、{200}強度の比率を百分率で求めた。{222}強度比率は以下の式(1)で表される。
{222}面集積度
=[{i(222)/I(222)}/Σ{i(hkl)/I(hkl)}]×100 … (1)
ただし、記号は以下の通りである。
i(hkl):測定した試料における{hkl}面の実測積分強度
I(hkl):ランダム方位をもつ試料における{hkl}面の理論積分強度
Σ :α−Fe結晶11面についての和
本発明の断熱鋼板は、上記のようにαFeの{222}面集積度を高めることによって加工後の断熱特性を実現しているので、αFeを主体とする結晶組成であると好ましい。αFeを主体とするとは、αFe相が面積率で50%以上であればよい。αFe相に加え、セメンタイト、パーライト、γFe相などを有することができる。αFe相のみで構成される鋼板を用いても良い。
鋼板面の表面から1/7tの間に形成する孤立した空隙は、小さすぎると断熱特性を十分に確保することができない場合がある。空隙のサイズが0.5μmより大きければ、十分な断熱特性を確保できるので好ましい。一方、空隙のサイズが50μmを超えて大きすぎると加工時に割れの起点となり割れやすくなる場合がある。よって、より好ましい空隙のサイズは、0.5μm〜50μmである。なお、空隙のサイズとは、鋼板の断面撮像画像で観察される空隙の円換算径の平均値を意味する。また、孤立した空隙とは、空隙(細孔)同士が連結しないでそれぞれ独立した細孔として、鋼中に分散しているものである。更に、鋼板面の表面から1/7tの間に存在する前記独立した空隙の存在量は、鋼板面の表面から1/7tまでの断面撮像画像で観察される視野において、単位面積当たりの空隙数として、500個/mm2以上であることが好ましい。
鋼板中のAl含有量が高くなると、鋼板の鋼自体の熱伝導率を低減することができるので、断熱特性を向上する上で好ましい。一方、鋼板中のAl含有量が高くなると鋼板の加工性が低下する傾向が現れる。ここにおいて、鋼板の表面付近を高いAl含有量とし、鋼板の中心部分を低いAl含有量とすれば、鋼板表面付近の鋼自体の熱伝導率を低下して鋼板の断熱特性を改善し、一方、鋼板の中心部分は低Al含有量であって鋼板の加工性を確保することができる。即ち、本発明の断熱鋼板において、鋼板面の表面から1/7t間のAl濃度の最大値をA1/7t(質量%)とし、1/7tから1/2t間のAl濃度の最小値をA1/2t(質量%)としたとき、A1/7tを5.0質量%以上とすることによって断熱鋼板の断熱特性をさらに良好に実現することができる。また、A1/7tを10質量%以下とすることにより、加工性を低下させることがない。さらに、A1/2tの範囲が2.0質量%以下であれば、断熱鋼板の加工性をさらに良好に保持することができる。1/2tの位置(板厚中心)で、Alが含有されていなくてもよい。したがって、A1/2tの下限値は、0質量%(分析限界以下のAl含有量)となる。
本発明の断熱鋼板の厚みにおいて、厚みが薄すぎると金属製真空二重容器の強度を確保することができない場合があるが、厚みtが10μm以上であれば十分な強度を確保することができる。また、厚みが厚すぎると真空二重容器の質量が大きくなりすぎ実用的ではなくなる場合があるが、厚みtが3mm以下であれば質量が大きすぎないのでより好ましい。
本発明の断熱鋼板は、鋼板面の表面から1/7tの間に孤立した空隙を有するので高い断熱特性を有する。また、αFe相の鋼板面に対する{222}面集積度が20〜99%であるので、引っ張り変形を伴う塑性加工を行っても空隙がつぶれることがなく断熱特性を維持できるとともに、優れた加工性を具備する。従って、本発明の断熱鋼板を金属製真空二重容器に用いることとすると、断熱特性の高い真空二重容器を形成することができるので好ましい。また、本発明の断熱鋼板を、引っ張り変形を伴う加工用途に用いることにより、加工性に優れ、断熱特性に優れた加工製品を製造することができる。
また、本発明の断熱鋼板を用いてなる金属製真空二重容器は、鋼板面の表面から1/7tの間に孤立した空隙を有し、容器加工時に空隙がつぶれていないので、容器形成後において高い断熱特性を得ることができる。
特に、本発明の断熱鋼板を用いてなる金属製真空二重容器が内瓶と外瓶とからなり、少なくとも内瓶が単一の断熱鋼板を一体成形してなる場合には、鋼板に絞り加工を施して複雑形状とするに際し、鋼板に引張変形が加えられる。従来の空隙を有する鋼板では、引張変形時に空隙がつぶれて断熱特性が損なわれていたが、本発明の断熱鋼板は引張変形時に空隙がつぶれないので、一体成形後の内瓶は断熱性の優れた空隙を有し、真空二重容器の断熱特性を良好に確保することができる。内瓶に加えて外瓶も本発明の断熱鋼板を一体成形して製造すると好ましい。
以下、本発明の断熱鋼板の製造方法について説明する。
本発明の断熱鋼板は、板厚が10μm以上10mm以下、Al含有量が3.5質量%未満の母材鋼板を準備し、母材鋼板の表面にAlを主成分とする金属からなる第二層を付着させ、第二層を付着させた母材鋼板を圧延し、その後熱処理によって再結晶させることによって製造できる。
まず、表面から1/7tの間に孤立した空隙を形成する方法について説明する。
母材鋼板の表面にAlを主成分とする金属からなる第二層を付着させ、圧延後に熱処理することによって第二層のAlを母材鋼板中に拡散させる場合に、合金組成をうまく組み合わせることによって拡散後の鋼板内部に空隙を効率よく形成させることができる。この空隙は、母材鋼板と第二層のAl合金を構成している各元素の拡散速度の相違によって形成されるものであり、母材鋼板と第二層Al合金との接合界面付近に形成されるカーケンダルボイド(Kirkendall void)と呼ばれているものである。この空隙の形成を制御することにより、上記本発明の内部に孤立した空隙を有する断熱鋼板を製造することができる。
母材鋼板の表面に付与する第二層の成分としては、次の考え方に基づいて選定する。即ち、拡散熱処理中において、母材鋼板を構成する各原子の鋼板表面側への外方拡散速度と第二層を構成する各原子の箔内部への内方拡散速度ができるだけ異なる第二層組成を用いれば効果的に本発明の空隙を形成させることができる。この際、より断熱鋼板の表面に近い側に空隙を形成させる場合には、前記内方拡散速度を前記外方拡散速度より大きくすれば良い。そのためには、表面の第二層をAlを主成分とする金属とする。ここでAlを主成分とは、第二層中のAl含有量が80質量%以上であることを意味する。第二層は純Alで形成しても良いが、さらにAlとともに、第二層中にAlの中で比較的高速で拡散する元素であって、母材鋼板中においても偏析が少なく比較的均一に混じり合う元素を含有させるとより好ましい。例えば、Si、Be、Co、Cr、Mg、Zrなどが本発明の空隙を形成させるのに効果が大きい。
断熱鋼板の厚み方向で空隙を形成させる位置は、母材鋼板と第二層との界面付近となるため、母材鋼板の厚みと付与する第二層の厚みを制御することによって調整が可能である。空隙の位置を鋼板表面近傍に配置させる場合には、付与する第二層厚みを薄くすればよい。また、第二層付与と拡散熱処理を交互に繰り返す処理を実施することによって、板厚方向における空隙層の厚みも制御可能となる。こうして、前述のとおりの板厚方向に好ましい位置に空隙を有する断熱鋼板を製造することができる。鋼板面の表面から1/7tの間に孤立した空隙を形成するためには、第二層の厚みを0.5mm以下とすればよい。一方、第二層の厚みが薄すぎると空隙の形成が困難となるが、第二層の厚みが0.1μm以上であれば良好に空隙を形成することができる。
本発明の空隙は、母材鋼板に第二層を付与した後の熱処理によって形成させるが、この際、熱処理の温度と時間によって空隙のサイズを制御する。付与した第二層を構成する各原子の内方拡散速度が母材鋼板を構成する各元素の外方拡散速度より大きくなる温度領域で熱処理すれば空隙のサイズは熱処理時間によって比較的容易に制御することが可能となる。より微細な空隙を形成させる場合には、前記内方拡散速度と前記外方拡散速度のサイズを近づけるようにすれば、より制御が容易になる。空隙の間隔や存在量は、主に熱処理時間によって制御する。間隔を狭くする場合や存在量を多くする場合には、熱処理時間を短くし、広くする場合や存在量を少なくする場合には、熱処理時間を長くすれば良い。好適な熱処理条件について具体的には、{222}面集積度向上のための条件と併せ、後述する。
次に、本発明の断熱鋼板の1/7t〜1/2tの間においてαFe相の鋼板面に対する{222}面集積度を20〜99%とする方法について説明する。
Alを主成分とする金属からなる第二層を鋼板に付着させたまま冷間圧延を施し、その後に熱処理で鋼板を再結晶させることによって{222}面集積度が向上する。この現象は、冷延の際に鋼中に形成される特別な転位組織によって発現されるものである。熱処理により該転位組織から{222}面集合組織を発達させるような再結晶核が発生するようになるのである。さらに、再結晶後の鋼板のAl含有量が6.5質量%未満となるような成分系であると上記再結晶核の発生頻度が高くなる傾向にあり、結果としてより高い{222}面集積度を有する鋼板が得られるようになる。第二層を付着させる母材鋼板のAl含有量を3.5質量%未満とすることにより、再結晶後の鋼板のAl含有量が6.5質量%未満である鋼板製造を可能とした。母材鋼板のAl濃度が3.5質量%以上であり、Alを主成分とする第二層を付着したまま熱処理すると、熱処理中に収縮を起こして寸法精度が著しく低下する。したがって、本発明では母材鋼板のAl含有量は3.5質量%未満とした。
母材鋼板のその他成分については、C含有量が2.0質量%以下であり、不純物として、微量のMn、P、S等を含むものである。例えば、炭素鋼は、本発明の母材鋼板に含まれる。さらに、Cの他、NiやCrなどの合金元素を含有する合金鋼も、本発明の母材鋼板に含まれる。特に、含有させるCrが10質量%以上であると、耐さび性が優れるため製品において表面処理を必要としなくなるために好適となる。その他、母材鋼板が含有し得る合金元素は、Si、Al、Mo、W、V、Ti、Nb、B、Cu、Co、Zr、Y、Hf、La、Ce、N、O等である。
母材鋼板への第二層の付着方法は、溶融めっき、電解めっき、粉末塗布、ドライプロセスなどの方法から選択することができる。
母材鋼板の板厚は10μm以上10mm以下とする。板厚が10μm未満では続く冷間圧延で十分な圧下率を確保することができない。一方、母材鋼板の板厚が10mmを超えると、断熱鋼板の{222}面集積度が低下してしまう。
さらに第二層を付着した母材鋼板に冷間圧延を施す。圧延率は30%以上95%以下が望ましい。圧延率が低すぎると、熱処理工程後に得られる鋼板の{222}面集積度が十分に得られない場合があるが、30%以上であれば十分な{222}面集積度を得ることができる。圧延率が95%超では{222}面集積度の増加は飽和し、圧延コストが増加することになるので、工業的メリットが低下する場合がある。冷間圧延では歪エネルギーの蓄積が高くなるため、その後の熱処理工程における再結晶が効果的に進行する。
冷間圧延後の工程において、熱処理を施す。Alを主成分とする金属からなる第二層が母材鋼板表面に付着し、その状態で冷間圧延を行い、さらに熱処理によって再結晶させた結果として、鋼板のαFe相が、高い{222}面集積度となる。その際には前述の独立した空隙を形成する効果も含んでいる。第二層に含まれている元素が鋼中に拡散することによって、より高い{222}面集積度が得られる傾向もあり、かつ、高温耐酸化性や機械的特性も向上する。鋼板の結晶組織を再結晶させる目的を担う熱処理工程は、真空雰囲気、Ar雰囲気、H2雰囲気、ヘリウム雰囲気といった非酸化性雰囲気で行うことができる。
熱処理工程は、鋼板面の表面から1/7tの間に孤立した空隙を形成する機能と、1/7t〜1/2tの間においてαFe相の鋼板面に対する{222}面集積度を20〜99%とする機能とを併せて発揮する必要がある。空隙は、熱処理温度が高いほど発生しやすくなる。熱処理温度が1000℃以上であれば、良好に空隙を形成することができるので好ましい。また、熱処理温度1000℃以上において、熱処理時間の制限はなく高い{222}面密度が得られる。特に1000℃以上であると30秒以下の熱処理時間であっても{222}面集積度は容易に増加させられる。なお、熱処理温度が1200℃超であると熱処理設備費用が高くなり、工業的メリットが薄れる。
また、熱処理開始時の昇温速度が速いほど、空隙の発生が顕著になる。昇温速度が10℃/分以上であれば、良好に空隙を形成することができるので好ましい。また、昇温速度10℃/分以上において高い{222}面集積度を実現することができる。昇温速度を1000℃/分以下にすると、より高い{222}面集積度が容易に得られるようになる。
さらに優れた本発明の効果を発現させるためには、第二層を付着させる前の母材鋼板に予備熱処理を施すと良い。この予備熱処理は、母材鋼板の製造過程で蓄積された転位構造を再配列させるもので、再結晶を起こさせることが望ましいが、必ずしも再結晶を起こさせる必要はない。
ここで、望ましい予備熱処理温度は700℃以上1100℃以下である。700℃未満であると、より優れた本発明の効果を得るための転位組織の変化が起こりにくい。1100℃超にすると、鋼板表面に好ましくない酸化皮膜が形成され、その後の第二層の付着および、冷間圧延に悪影響を及ぼす場合があるため1100℃以下とした。この予備熱処理の雰囲気は、真空中、不活性ガス雰囲気中、水素雰囲気中、弱酸化性雰囲気中のどの条件においても、上述した効果を得ることができるが、予備熱処理後の第二層の付着および、その後の冷間圧延に悪影響を及ぼすような鋼板表面の酸化膜を形成しない条件が求められる。予備熱処理の時間は特別限定する必要はないが、鋼板の製造性等を考慮すると数秒から数時間以内が適当である。
母材鋼板に第二層を付着し、冷間圧延し、熱処理を行って本発明の断熱鋼板を製造した。予備熱処理を実施する場合の雰囲気は窒素に微量水素を混合させたものであり、冷間圧延後の熱処理雰囲気は真空とした。
断熱鋼板の断面顕微鏡写真を撮影し、断面に存在する孤立した空隙の状況を観察した。空隙の存在域を表面からの距離(厚みtとの関係)で評価し、空隙の平均直径(円相当径で、数平均値)、空隙存在域における空隙密度(単位面積あたりの空隙個数)を評価した。
鋼板断面のAl濃度分布について、鋼板面の表面から1/7t間のAl濃度の最大値であるA1/7t(質量%)と、1/7tから1/2t間のAl濃度の最小値であるA1/2t(質量%)とを評価した。A1/7tとA1/2tとの差をΔAとして計算した。
熱処理までを完了した断熱鋼板について、板厚中心の{222}面集積度、{200}面集積度の評価を行った。面集積度の測定は、MoKα線によるX線回折により、前述のとおりの手順を用いて行った。
製造した断熱鋼板の熱伝導度評価方法として、光交流法(ACカロリメトリー)を採用した。試料上にマスクを置き、マスク上面から交流熱を光照射によって試料表面に加える。マスクの端から十分離れた位置の試料面方向の交流温度振幅を測定して熱伝導率を求める。熱容量を別の実験で求め、それらの積である熱伝導度を求めた。製造した断熱鋼板について、30%引っ張り変形を加えた。熱伝導度は、製造したままの断熱鋼板と、30%引っ張り変形を加えた後の鋼板の両方で行い、両者を比較した。
(実施例1)
母材鋼板として、成分が質量%でC:0.0010%、Si:0.1%、Mn:0.15%、Al:0.001%、残部がFeである炭素鋼による熱延鋼板を用いた。第二層として、Al:90質量%、Si:10質量%のAl−Si合金を溶融めっき法によって付着した。表1に、母材鋼板のAl濃度、厚み、予備熱処理の有無と予備熱処理温度、第二層の片面付着厚み、冷間圧延の圧下率、熱処理の昇温速度、温度、時間、製品厚みを示す。
また、表1には、製品の品質評価結果として、空隙の存在域、平均粒径及び密度、Al濃度分布としてA1/7t、A1/2t及びΔA、面集積度評価として{222}面集積度(%)と{200}面集積度(%)、引っ張り変形前後の熱伝導度と両者の比較(劣化率(%))を示した。
表1に示す本発明例1〜15は本発明例であり、いずれも表面付近の内部に空隙が形成され、鋼板は高い{222}面集積度を実現し、引っ張り変形の前後ともに熱伝導度が低い。塑性加工を行っても断熱性能が損なわれない断熱鋼板であることがわかる。
表1に示す比較例1〜3は比較例である。比較例1、2はいずれも鋼板表面付近に空隙が形成されなかった。そのため、引っ張り変形の前後いずれも、熱伝導度が高く断熱特性を有しない結果となった。比較例1は第二層を付着せず、比較例2は熱処理における昇温速度が遅かったことに起因する。比較例3は第二層塗布と熱処理の間の冷間圧延を実施しなかったので、空隙は形成されたものの{222}面集積度が低く、引っ張り変形後に熱伝導度が大幅に上昇して断熱特性が損なわれる結果となった。
Figure 0005589262
(実施例2)
母材鋼板として、成分が質量%でC:0.002%、Si:0.2%、Mn:0.1%、Cr:13%、Al:0.002%、残部がFeであるステンレス鋼からなる熱延鋼板を用いた。第二層として、金属AlをAlクラッド法によって付着した。表2に、母材鋼板のAl濃度、厚み、予備熱処理の有無と予備熱処理温度、第二層の片面付着厚み、冷間圧延の圧下率、熱処理の昇温速度、温度、時間、製品厚みを示す。
また表2には、製品品質評価結果として、空隙の存在域、平均粒径及び密度、Al濃度分布としてA1/7t、A1/2t及びΔA、面集積度評価として{222}面集積度(%)と{200}面集積度(%)、引っ張り変形前後の熱伝導度と両者の比較(劣化率(%))を示した。
表2に示す本発明例16〜30は本発明例であり、いずれも表面付近の内部に空隙が形成され、鋼板は高い{222}面集積度を実現し、引っ張り変形の前後ともに熱伝導度が低い。塑性加工を行っても断熱性能が損なわれない断熱鋼板であることがわかる。ステンレス鋼を素材に用いたので、引っ張り変形前後とも、特に熱伝導度が低く高い断熱特性を有している。
表2に示す比較例4〜6は比較例である。比較例4、5はいずれも鋼板表面付近に空隙が形成されなかった。そのため、引っ張り変形の前後いずれも、熱伝導度が高く断熱特性を有しない結果となった。比較例4は第二層を付着せず、比較例5は熱処理における昇温速度が遅かったことに起因する。比較例6は第二層塗布と熱処理の間の冷間圧延を実施しなかったので、空隙は形成されたものの{222}面集積度が低く、引っ張り変形後に熱伝導度が大幅に上昇して断熱特性が損なわれる結果となった。
Figure 0005589262
(実施例3)
母材鋼板として、異なる5種類のAl濃度の熱延鋼板と、異なる4種類の厚みの熱延鋼板をそれぞれ用意した。異なるAl濃度の熱延鋼板は、Al濃度が質量%で0.002、0.5、1.0、3.0、3.5、4.0%であり、その他が質量%でC:0.002%、Si:0.2%、Mn:0.1%、残部が不可避不純物及びFeの成分系である。また、異なる厚みの熱延鋼板は、質量%でC:0.1%、Si:0.1%、Mn:0.05%、Al:0.005%、残部が不可避不純物及びFeの成分系である。
異なる5種類のAl濃度の熱延鋼板には、第二層として、Al:94.2質量%、Si:5.0質量%、Mg:0.8質量%のAl−Si−Mg合金(めっき種A)を溶融めっき法によって付着した。異なる厚みの熱延鋼板には、第二層として、Al:80.0質量%、Si:20.0質量%のAl−Si合金(めっき種B)を溶融めっき法によって付着した。
表3に、母材鋼板のAl濃度、厚み、第二層のめっき種、第二層の片面付着厚み、冷間圧延の圧下率、熱処理の昇温速度、温度、時間、製品厚みを示す。
また、表3には、製品の品質評価結果として、空隙の存在域、平均粒径及び密度、Al濃度分布としてA1/7t、A1/2t及びΔA、面集積度評価として{222}面集積度(%)と{200}面集積度(%)、引っ張り変形前後の熱伝導度と両者の比較(劣化率(%))を示した。
表3に示す本発明例31〜35は本発明例であり、いずれも表面付近の内部に空隙が形成され、鋼板は高い{222}面集積度を実現し、引っ張り変形の前後ともに熱伝導度が低い。塑性加工を行っても断熱性能が損なわれない断熱鋼板であることがわかる。なお、本発明例31では、母材鋼板のAl濃度が3.5%であり、熱処理時にやや収縮を発生したが、塑性加工前後の断熱性能は優れていた。
表3に示す比較例7は比較例であり,母材鋼板のAl濃度が4.0%であり,熱処理時に収縮を発生した。収縮に伴うしわの発生で{222}面集積度は著しく低下し,引っ張り変形時の前後で熱伝導度が著しく劣化してしまうようになってしまった。
Figure 0005589262
(実施例4)
実施例2に示した比較例6と発明例22の鋼板を使用して、金属製真空二重容器を試作し、断熱性能を比較した。
試作手順の概要について図3に模式図を示した。試作した容器は厚さ1.2mmの普通鋼からなる外瓶と、比較例あるいは発明例の鋼板からなる内瓶がロウ付けによって一体化されたものであり、外瓶と内瓶の間の空間が真空引きされている。
図3(イ)に示したように、比較例あるいは発明例の鋼板に深絞り加工を施して有底円筒状の円筒中間体1を成形した。また、図3(ロ)に示すように、普通鋼からなる外瓶胴部用薄板材に円筒加工を施すことにより円筒状の外瓶胴部中間体2を成形した。さらに、図3(ハ)に示すように、普通鋼からなる外瓶用底部用薄板材にプレス加工を施すことにより皿状の外瓶底部中間体3を成形した。
ついで、図3(ニ)に示すように、前記内瓶中間体1の上部にしごき加工を施すことにより、首部を有する内瓶4を成形した。このように形成した内瓶4について、発明例と比較例それぞれ、断面の空隙状況を観察した。深絞りされた部分において、発明例では空隙の板厚方向のサイズ減少が少なかったが、比較例では空隙が板厚方向でつぶれていた。
また、図3(ホ)に示すように、前記外瓶胴部中間体2の上部にしごき加工を施すことにより、首部を有する外瓶胴部5を成形した。さらに、図3(ヘ)に示すように、前記外瓶底部中間体3の上部にしごき加工を施すことにより、段部を有する外瓶底部6を成形した。
つぎに、図3(ト)に示すように、外瓶胴部5内に内瓶4を下から挿入し、外瓶の首部の上端を外向きにフランジ加工することにより形成された鍔部を外瓶胴部5の首部の上端に載置して内瓶4を位置決めした後、外瓶底部6の段部に外瓶胴部5の下端を載置して、内外瓶4、5の仮組付品10が仮組付した。この状態においては、内瓶4の上端部と外瓶胴部5の上端部とは接合部7となり、外瓶胴部5の下端部と外瓶底部6の上端部とは接合部8となるが、仮組付時には接合部7、8には、真空排気を行うに十分な隙間を形成させた。なお、この仮組付の前に予め外瓶底部6にゲッター9を取り付けた。また、前記接合部7、8においては、外瓶胴部5の上下端部内面に内外瓶4、5の鋼板より融点の低いNi系合金からなるシート状のロウ材が予め貼り付けられた。
上記仮組付品10を加温炉に入れ、約300℃に加温して前記接合部7、8から真空排気を行い、その後950℃に加温すると、ロウ材が溶融して接合部7、8がロウ付けされた。
以上の試作手順で得られた比較例と発明例の金属製真空二重容器に、90℃のお湯を入れて蓋をし、48時間後の温度変化を比較した。お湯は内瓶の首部の上まで入れた。外気温は20℃であった。比較例の容器では、温度低下は46℃であり44℃になっていた。発明例の容器では、温度低下は13℃であり77℃になっていた。この結果から、本発明の断熱鋼板を使用した金属製真空二重容器は比較例の容器に比べて断熱性に優れており、より長時間の保温が可能であることが確認できた。
{222}面集積度が50%の発明例と{222}面集積度が11%の比較例に関し、引っ張り伸びに対する、厚み方向で測定した空隙のサイズの変化率である。 {222}面集積度が50%の発明例と{222}面集積度が11%の比較例に関し、引っ張り伸びに対する、熱伝導率の変化率である。 金属製真空二重容器の製造手順を示す図であり、(イ)は内瓶中間体、(ロ)は外瓶胴部中間体、(ハ)は外瓶底部中間体、(ニ)は内瓶、(ホ)は外瓶胴部、(ヘ)は外瓶底部、(ト)は仮組み付け品を示す。
符号の説明
1:内瓶中間体
2:外瓶胴部中間体
3:外瓶底部中間体
4:内瓶
5:外瓶胴部
6:外瓶底部
7:内瓶−外瓶胴部ロウ付け部
8:外瓶胴部−外瓶底部ロウ付け部
9:ゲッター
10:仮組み付け品

Claims (9)

  1. 鋼板厚みをtとし、鋼板面の表面から1/7tの間に孤立した空隙を有し、1/7t〜1/2tの間のいずれかの板厚部分においてαFe相の鋼板面に対する{222}面集積度が20〜99%であり、
    鋼板のAl含有量は、鋼板面の表面から1/7t間のAl濃度の最大値をA1/7t(質量%)とし、1/7tから1/2t間のAl濃度の最小値をA1/2t(質量%)としたとき、A1/7tの範囲が0.8質量%以上10.5質量%以下であり、A1/2tの範囲が9.8質量%以下であり、
    鋼板はさらにC:0.001〜0.002質量%、Si:0.1〜0.2質量%、Mn:0.10〜0.15質量%を含有し、残部Fe及び不可避不純物からなり、
    金属製真空二重容器に用いることを特徴とする断熱鋼板。
  2. 鋼板はさらにCr:10〜13質量%を含有することを特徴とする請求項1に記載の断熱鋼板。
  3. 前記空隙のサイズが、平均で0.5μm〜50μmであることを特徴とする請求項1又は2に記載の断熱鋼板。
  4. 1/7tの範囲が5.0質量%以上10質量%以下であり、A1/2tの範囲が2.0質量%以下であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の断熱鋼板。
  5. 前記1/7t〜1/2tの間のいずれかの板厚部分において、αFe相の鋼板面に対する{222}面集積度が60〜99%であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の断熱鋼板。
  6. 前記鋼板の厚みtが、10μm以上3mm以下であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の断熱鋼板。
  7. 金属製真空二重容器に代え、引っ張り変形を伴う加工用途に用いることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の断熱鋼板。
  8. 請求項1乃至6のいずれかに記載の断熱鋼板を用いてなることを特徴とする金属製真空二重容器。
  9. 前記二重容器が内瓶と外瓶とからなり、少なくとも内瓶は単一の断熱鋼板を一体成形してなることを特徴とする請求項8に記載の金属製真空二重容器。
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