JP5587963B2 - ピーク電流補正機能を有したワイヤ放電加工機 - Google Patents
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Description
印加されるパルスが高周波であるため、給電線は等価的にインダクタンス成分を持ち、さらに給電線の姿勢等によって変化する。また、ワイヤ電極と被加工物の相対位置によって給電部から放電点までの距離が異なり、それにより抵抗成分も異なる。これらの放電経路のインピーダンスの変化により、電流の流れ方が異なる。電流の流れ方が異なることは、そのまま加工速度、加工精度へ影響を及ぼすという問題があった。
これらの、ワイヤ電極と被加工物の相対位置、あるいは、被加工物の状態により電流の流れ方が変わるという問題に対し、特許文献1や特許文献2には、ピーク電流や出力電圧等を検出して基準値と比較し、比較結果に応じて出力電圧を調整する技術が開示されている。
さらに、特許文献4には、複数の加工状態下で加工をし、それぞれの加工条件における加工情報を実測し、加工条件とその加工条件における実測加工情報とから放電加工機の加工特性を求め、加工条件や加工情報を補正する技術が開示されている。
また、特許文献3に開示された技術では、ワイヤ放電加工における開放電圧だけを制御して、実際に加工に寄与する電流を補正していない。そのため、実際の加工において所望の加工結果を得ることができない場合がある。
特許文献4に開示された技術では、実際に加工における加工情報を実測することで、放電加工機の加工特性を求めて、加工条件や加工情報を補正はしているものの、被加工物の状態やジグによる影響についての補正をすることができないという問題がある。
これにより、判定部における助走経路かどうかの判断を容易に行うことができる。
本願の請求項3に係る発明では、判定部により、助走経路の加工と判断した場合に、助走経路用の専用制御が有効ではない区間を測定区間としている。
これにより、本加工前の助走期間には、加工スタート時期や、助走期間から本加工に移行する時期に専用制御を有効とする期間が必要であるが、それらの専用制御を有効にする期間以外の期間を測定区間とすることによって、十分な長さの測定区間を確保することができる。
これにより、加工時のピーク電流の演算を平易に行うことができる。
本願の請求項5及び6に係る発明では、電圧補正部における電源電圧の補正値の決定方法として、基準となるピーク電流値と演算部により演算されたピーク電流値の比や差に基づいて、電源電圧の補正値を決定している。
(第1の実施形態)
ワイヤ放電加工機の加工例を図1及び図2に示す。図1において、41は加工開始点、42は助走経路、43は本加工開始点、44は切り落とし部分、45は加工製品形状、46は切り落とし部分である。また、図2において、51は加工開始点、52は助走経路、53は本加工開始点、54は加工製品形状、55は切り落とし部分である。それぞれ、図1はパンチ、図2はダイと呼ばれる加工内容で、加工経路の内側を加工製品として用いるか、加工経路の外側を加工製品として用いるかの違いである。パンチについては、予め切落とし部分44及び46を設けておいて、切落とした後に加工製品形状45と切り落とし部分44との境界部分を研磨等で仕上げるのが一般的である。
ワイヤ放電加工機では、標準加工条件が搭載されているのが一般的である。これらの加工条件はワイヤ放電加工機メーカが試験用に被加工物を加工し、所望の加工結果を得られるよう加工条件を調整した結果である。予め、標準の加工条件を取得した際の加工に寄与する電流を数値制御装置内の記憶部に記憶しておく。
加工電源の電圧変更するための値を補正値として、数値制御装置内の記憶部に記憶するとともに、本加工開始前に加工電圧の補正値として設定する。
これにより、本加工開始前までには補正値が設定された状態となり、本加工開始時に設定されている標準条件に対して、補正値を適用し、本加工を行う。1つの形状の本加工を行う間は同じ補正値を用いる。
・(ステップSA1)加工開始にあたり、加工開始点が本加工開始前かどうかを判定する。本加工開始前の場合(YES)は、ステップSA2に進み、本加工開始後の場合(NO)は、ステップSA9に進み、補正値の演算及び入力を行うことなく本加工を開始する。なお、本加工開始前かどうかの具体的な判断手法については後述する。
・(ステップSA2)助走経路であるものと判断し、本加工開始点前までの助走経路において、特殊な専用制御が必要とされる区間を除いた区間に測定区間を設定する。
・(ステップSA3)設定された測定区間に、加工が到達したかどうかを判定し、到達していない場合(NO)は、到達するまでステップSA3を繰り返し、到達した場合(YES)は、ステップSA4に進む。
・(ステップSA4)測定区間において、加工時の電流と放電回数を測定する。
・(ステップSA5)測定が完了したかどうかを判定する。完了していない場合(NO)は、ステップSA6に進み、完了した場合(YES)は、ステップSA7に進む。
・(ステップSA6)所定時間待機し、その後ステップSA5に戻る。
・(ステップSA7)測定区間における測定結果から、加工に寄与する電流を演算する。
・(ステップSA8)測定区間における測定結果から、加工に寄与する補正値を演算する。ステップSA7及びSA8における電流や補正値の演算の手法の一例については後述する。
・(ステップSA9)本加工を開始する。
例えば、図8に示すプログラムのように、プログラム開始から本加工開始までの間に本加工を開始することを表すコードを挿入しておき、そのコードよりも前か後かによって、本加工前の助走経路であるか、本加工中であるかの判断を行う。
別の方法として、図9に示すプログラムのように、プログラム開始からオフセット無効のブロック、オフセット有効のブロックがあるとする。助走経路の加工においては加工中のオフセットを無効にしておくのが一般的なので、オフセットが無効であるか無効であるかどうかで判断を行う方法がある。
専用制御有効区間81及び83について、ワイヤ放電加工機では図1の加工開始点41、あるいは、図2の加工開始点51において、ワイヤ電極の断線を防ぐ目的で加工速度を低下させた専用の制御を有効にする場合がある。また、図2の本加工開始点53においても加工製品にダメージを与えないために、専用の制御を有効にする場合がある。上述の図6の測定区間82については、これらの助走経路の専用制御が有効でない区間とする。
測定区間82における測定は時間で管理して行う。測定区間82内であっても、必要なデータの収集が完了すれば、測定区間82全域において測定する必要はない。測定が完了するまで所定時間ごとに測定完了か否かの判断を行い、必要なデータが収集できた時点で測定完了とする。
第2の実施形態は、第1の実施形態とほぼ同様であるが、加工電源の電圧の補正の演算方法が異なる。
式(2)において求めたIpと記憶部に記憶されている機械の標準条件を決定した際の電流Ip(std)との差を求め、以下のようにΔIを求める。
また、これらの実施形態は、簡単のためにパルス電流の値を一定値としているが、一定値とせずに演算を行うこともできる。
2 被加工物
3 加工電源
4 給電線
5 給電部
8 ワイヤ電極支持部
21 直流電圧源
22 スイッチング素子
31a、31b 被加工物設置場所
32 被加工物設置用テーブル
41 加工開始点
42 助走経路
43 本加工開始点
44 切り落とし部分
45 加工製品形状
46 切り落とし部分
51 加工開始点
52 助走経路
53 本加工開始点
54 加工製品形状
61a,61b,61c,61d,61e 加工形状
62 被加工物
71 数値制御装置
72 演算部
73 記憶部
74 比較部
75 平均加工電流検出部
76 放電回数検出部
77 判定部
81 専用制御有効区間
82 測定区間
83 専用制御有効区間
Claims (6)
- ワイヤ電極と被加工物との極間に電圧を印加して放電を起こすと同時に、ワイヤ電極と被加工物の相対位置を変化させ、被加工物を所望の形状に加工するワイヤ放電加工機において、
平均電流を検出する検出部と、
放電回数を検出する検出部と、
加工開始時に、製品として必要とする形状までの助走経路の加工かどうかを判定する判定部と、
該判定部により助走経路と判定した場合に、該助走経路中に加工時の平均電流と放電回数を測定する測定区間を設定し、該測定区間を加工した際の平均電流と放電回数から加工時のピーク電流を演算する演算部と、
基準となるピーク電流を記憶する記憶部と、
前記演算部による演算で求められた加工時のピーク電流と前記基準となるピーク電流を比較する比較部と、
該比較結果に基づいて、前記加工形状の加工を行う部分のピーク電流を補正するための加工電源の電圧を算出する補正電圧算出部、
とを有することを特徴とするワイヤ放電加工機。 - 前記判定部は、ワイヤ放電加工機のNCプログラム中のコードにより、助走経路かどうかを判断することを特徴とする請求項1に記載のワイヤ放電加工機。
- 前記判定部により、助走経路の加工と判断した場合に、助走経路用の専用制御が有効ではない区間を測定区間とすることを特徴とする請求項1に記載のワイヤ放電加工機。
- 前記演算部は、平均電流と放電回数を測定した際のピーク電流値が一定であるとして、平均電流の積分値から加工時のピーク電流を演算することを特徴とする請求項1に記載のワイヤ放電加工機。
- 前記電圧補正部は、基準となるピーク電流値と演算部により演算されたピーク電流値の比に基づいて、電源電圧の補正値を決定することを特徴とする請求項1に記載のワイヤ放電加工機。
- 前記電圧補正部は、基準となるピーク電流値と演算部により演算されたピーク電流値の差に基づいて、電源電圧の補正値を決定することを特徴とする請求項1に記載のワイヤ放電加工機。
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