JP5586881B2 - フレキシブル色素増感太陽電池モジュール - Google Patents
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Description
このような色素増感太陽電池の基本原理は、特許文献1に開示されているように、以下の通りである。まず、色素増感太陽電池に光が照射されると、金属酸化物半導体多孔質層表面に吸着された増感色素が光を吸収し、色素分子内の電子が励起され、電子が半導体層へ渡される。これにより、光電極側で電子が発生し、この電子が電気回路を通じて、正電極に移動する。そして、正電極に移動した電子は、電解質層の酸化還元反応を通じて光電極に戻る。このような過程が繰り返されることで、電気エネルギーが生じる。
しかしながら、従来型のシリコン太陽電池では、発電層がシリコン等の固体半導体から構成されるため、金属配線により補助電極を形成して、単一セルの面積を比較的に大きくすることができ、複数のセルを平面的に配置して配線接続することにより、簡単にモジュールを組み立てることができるのに対して、色素増感太陽電池の場合には、セル内部の電解液が腐食性であるため、単純な金属配線による補助電極が使用できず、耐食性の金属配線や耐食保護膜で被覆した補助電極を形成することが必要があり、セルの特性(性能と耐久性)を維持しながら、セルの面積を大きくすることは、技術的に困難である。
そこで、色素増感太陽電池モジュールとしては、複数のセルを同一基板上に短冊状に形成した一体型モジュールや、別々の基板からなる短冊状の複数セルを連結した連結モジュールが提案されている。
連結型モジュールの具体例として、例えば、特許文献5には、複数の色素増感太陽電池セルの端子を導電接着剤等によって電気的に接続する方法が開示されている。しかしながら、このような方法で接続されたモジュールは、色素増感太陽電池セル自体の剛性に加えて、色素増感太陽電池セル間の接合部が硬いために、色素増感太陽電池モジュールを緩やかな曲率で折り曲げたり、曲面の基材に設置したりすることが困難であった。
更に、色素増感太陽電池については、そのデザイン性や価格面から、移動型の太陽電池としてモバイル用途への応用が期待されているが、このような分野では特にフレキシブル性に対する要請が大きくなっていた。
これにより、色素増感太陽電池モジュールを折り曲げたりした場合でも、色素増感太陽電池モジュールが破損することなく、継続して発電を行うことができることから、緩やかな曲率で屈曲させたり、曲面の基材に設置したりすることが可能となり、モバイル用途や衣料への取り付け等の様々な用途に好適に使用することができる。
図7に示すように、色素増感太陽電池モジュール70は、透明基板2、色素担持多孔質層3及び電解質層4を有する色素増感太陽電池セル1が、接合部5を介して複数連結した構造となっている。しかしながら、色素増感太陽電池モジュール70では、色素増感太陽電池セル1の接続部5に導電性接着剤等が用いられているため、剛直な構造となり、色素増感太陽電池モジュール70を緩やかな曲率で折り曲げたり、屈曲させたりする場合に対応できず、色素増感太陽電池モジュール70の破損等を招くことがあった。
図1aに示すように、色素増感太陽電池モジュール10は、透明基板2、色素担持多孔質層及び電解質層を有する色素増感太陽電池セル1が、フレキシブルコネクタ6を介して複数連結した構造となっている。なお、図1では、色素担持多孔質層及び電解質層の記載を省略する。
図1bは、フレキシブルコネクタ6の拡大断面図である。図1bに示すように、フレキシブルコネクタ6は、可撓性絶縁被覆層6aと導電層6bとを有し、両先端部の近傍に、電気的に接続可能な端子部6cが形成されている。
このようなフレキシブルコネクタ6を介して色素増感太陽電池セル1を連結することにより、図1cに示すように、色素増感太陽電池モジュール10を折り曲げた場合であっても、色素増感太陽電池セル1や連結部分が破損することがなくなるため、色素増感太陽電池モジュールを緩やかな曲率で折り曲げたり、屈曲させたりすることが可能となる。
図2aに示すように、色素増感太陽電池モジュール20は、透明基板2、色素担持多孔質層及び電解質層を有する色素増感太陽電池セル1が、フレキシブルコネクタ7を介して複数連結した構造となっている。なお、図2では、色素担持多孔質層及び電解質層の記載を省略する。
図2bは、フレキシブルコネクタ7の拡大断面図である。図2bに示すように、フレキシブルコネクタ7は、可撓性絶縁被覆層7aと導電層7bとを有し、両先端部の近傍に、電気的に接続可能な端子部7cが形成されている。また、フレキシブルコネクタ7は、折り曲げ部を有する構造となっている。これにより、色素増感太陽電池モジュール20のフレキシブル性を更に向上させ、色素増感太陽電池モジュール20をより多様な形状にさせることが可能となり、例えば、衣料等に取り付けた場合は、身体の動きに合わせて形状を変化させることができる。
また、上記光電極は、透明基板上に透明電極及び色素担持多孔質層が積層された構造であることが好ましい。
特に、本発明では、上記樹脂フィルム基板を用いることで、色素増感太陽電池モジュールの特徴部分であるフレキシブル性を更に向上させることが可能となる。
上記樹脂フィルム基板の厚みの好ましい下限は20μm、好ましい上限は1mmである。厚みを上記範囲内とすることで、適当な剛性と柔軟性をもたせることが可能となる。
上記有機色素としては、上記金属酸化物半導体多孔質層と強固に吸着させるための官能基を有するものが好ましい。上記官能基としては例えば、カルボン酸基、カルボン酸無水基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、ヒドロキシアルキル基、スルホン酸基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基等が挙げられる。
上記金属酸化物半導体多孔質層が形成された樹脂フィルム基板を浸漬する際の浸漬時間の好ましい下限は5分、好ましい上限は5時間である。5分未満であると、色素溶液が金属酸化物半導体多孔質層の内部まで充分に浸透しないことがあり、5時間を超えると、金属酸化物半導体多孔質層への増感色素の吸着量が多くなりすぎ、増感色素の積層吸着が発生し、金属酸化物半導体多孔質層への電子の流れを阻害してセル特性の低下や劣化を招いたりすることがある。
また、上記電解質層としては、半導電性のイオン導電層やホール輸送性の半導体材料が使用することができる。上記イオン導電層は、イオンを媒体として電子やホールを輸送できる物質であれば特に限定されず、例えば、ヨウ素/ヨウ化物、臭素/臭化物等の酸化還元物質を有機溶媒に溶解した溶液を用いることができる。上記ホール輸送性の半導体材料としては、例えば、CuI,CuSCN,NiO,Cu2O,KI等の無機系p型半導体や銅フタロシアニン色素、ポリチオフェン等の導電性ポリマー等の有機系ホール輸送材料を用いることができる。
上記有機溶媒としては、例えば、ニトリル系のアセトニトリル、メトキシプロピオニトリルや炭化水素系のプロピレンカルボナート、ジエチルカルボナート、γ―ブチロラクタンやポリエチレングリコール等の多価アルコール、イミダゾリウム塩等のイオン液体が挙げられる。
これらの中では、金属酸化物半導体多孔質層の内部に浸透して増感色素と反応しやすいことから、酸化還元電解質を有機溶媒に溶解した溶液が好ましい。
なお、上記正電極の基板及び電極には、光電極に使用する樹脂フィルム基板や透明導電層と異なり、必ずしも透明性は必要とされないので、ニッケル、チタン、タングステン等の耐食性のある金属や、カーボン、グラファイト等の炭素材料を用いることができる。
上記触媒層の材料には、白金、カーボン、ポリチオフェン系等の導電性ポリマーを用いることができる。
なお、本発明において、「可撓性」とは、外力により撓み変形し、外力の除去により元に戻る性質のことをいう。上記フレキシブルコネクタは、このような外力が付与された場合でも、電気的な接続が維持されている必要がある。具体的には例えば、JIS P 8115に準拠した折り曲げ試験機を用いてストレスクラック試験を行った場合に、電気的な断線が起こるまでの折り曲げ回数が20回以上であることが好ましい。
具体的には例えば、上記色素増感太陽電池セルの端子部とフレキシブルコネクタの端子部とを導電性接着剤、異方性導電シート、ヒートシール等を用いて接続して、複数の色素増感太陽電池セルを連結させる方法等が挙げられる。
上記異方性導電シートとしては、例えば、上記導電性接着剤を固形化したシート等を用いることができる。
上記ヒートシールを用いる方法としては、例えば、熱可塑性樹脂からなるフィルムに銀やカーボン等を含有する導電ペーストを印刷、製膜したシートを介して加熱シールする方法等が挙げられる。
(1)透明電極基板の形成
厚さ200μmのPENフィルム基板(帝人デュポン社製、Q−65F)の両面にUV硬化アクリル樹脂を2〜5μmの厚みでグラビアコートすることにより、ハードコート層を形成した後、DCスパッタリングによって100〜200nmのITO膜を製膜した。なお、DCスパッタリングは、アルゴンガス流量50sccm、酸素ガス流量1.5sccm、電圧380V、電流2A、成膜時間20分で行った。
得られた透明電極基板を、有機溶剤中で超音波洗浄して脱脂した。次いで、ITO膜面に10×20mmの矩形上の開口部を設けたマスキングを施した後、回転電極装置を使用し、厚み5μm程度の酸化亜鉛多孔膜を電析成膜した。なお、上記電析成膜は、KCl、ZnCl及びエオシンY色素を含有する溶液中で、−1.0Vの電位で30分間電析することにより行った。
更に、pH10.5のアルカリ水にフィルム基板を一晩浸漬してエオシンY色素を脱色することにより、10×20mmの矩形状の酸化亜鉛多孔膜を形成した。
得られた酸化亜鉛多孔膜形成基板を、有機色素(ケミクレア製、D149)0.037重量部とコール酸0.04重量部とをアセトニトリルとt−ブタノールとの混合溶剤に溶解した溶液に30分浸漬した後、取り出した基板を溶剤で洗浄して乾燥することにより、光電極を得た。
ITO膜を形成した透明電極フィルムにDCスパッタリングによって白金層を製膜し、対極基板を作製した。なお、DCスパッタリングのスパッタリング条件は、電圧620V、電流3A,成膜時間60秒とした。次いで、光電極基板と対極基板とを、アイオノマー樹脂フィルム(三井化学製、ハイミラン)を介して熱圧着した。
なお、得られた色素増感太陽電池セル1は、図6に示すように、透明基板2(光電極側)の3辺の周縁部が負極8、透明電極2’(対抗電極側)の1辺の周縁部が正極9となる構造とした。また、基板の配線抵抗を下げるために、正極及び負極の端子部分に導電性銀ペーストを塗布した。
電解銅箔(福田金属箔粉製、厚み35μm)を、粘着付きPETテープ(厚み50μm)で両面ラミネートした。次いで、得られたフィルムを20×10mmの大きさに切り出した後、二つ折にすることで、図2bに示すような折り曲げ部を有するフレキシブルコネクタを作製した。
導電性銀ペースト(ドータイト D−723SAとD−723SB)を、折りたたみコネクタの両端の端子部に塗布した後、一方の端子部に得られた色素増感太陽電池セルの正極、他方の端子部に他の色素増感太陽電池セルの負極を貼り合わせて、色素増感太陽電池セルを接続し、一晩乾燥した。この方法で、色素増感太陽電池セル4個を直列に接続した色素増感太陽電池モジュールを作製した。
実施例1の(1)〜(5)と同様にして色素増感太陽電池セル及びフレキシブルコネクタを作製した。
導電性銀ペースト(ドータイト D−723SAとD−723SB)を、折りたたみコネクタの両端の端子部に塗布した後、一方の端子部に得られた色素増感太陽電池セルの正極、他方の端子部に他の色素増感太陽電池セルの負極を貼り合わせて、色素増感太陽電池セルを接続し、一晩乾燥した。この方法で、色素増感太陽電池セル6個を直列に接続した色素増感太陽電池モジュールを作製した。
実施例1の(1)〜(4)と同様にして色素増感太陽電池セルを作製した。
得られた一の色素増感太陽電池セルの正極、及び、他の色素増感太陽電池セルの負極に導電性銀ペースト(ドータイト D−723SA、D−723SB)を塗布した後、正極と負極とを貼り合わせて、色素増感太陽電池セルを接続し、一晩乾燥した。この方法で、色素増感太陽電池セル4個を直列に接続した色素増感太陽電池モジュールを作製した。
(1)光電変換特性
実施例1及び比較例1で得られた色素増感太陽電池セル及び色素増感太陽電池モジュールについて、JIS C8911記載の基準太陽光AM1.5のソーラーシミュレータを用い、光電変換効率を測定した。結果を表1に示した。また、色素増感太陽電池モジュールについては、AM1.5及び照度300lxの室内光の光照射条件で開放電圧、短絡電流及びFF値についても測定した。
実施例1及び比較例1で得られた色素増感太陽電池モジュールについて、JIS−P8115に準拠した折り曲げ試験機(東洋精機製作所製、MIT耐揉疲労試験機)を用いて、幅10mm、加重25gの張架の下で、色素増感太陽電池セルの接続部を左右に各々135°に曲げ、電気的に断線するまでの折り曲げ回数を測定した。
(3−1)トレーニングウェアの側面部への取り付け
実施例1及び比較例1で得られた色素増感太陽電池モジュールを、ケーブルを介して5個並列に接続することにより、色素増感太陽電池ユニット30を作製した。次いで、トレーニングウェアの両腕の側面ライナー部に幅50mm程度の透明フィルムによるポケットを作製し、図3に示すように、左右両腕の該透明ポケット部に色素増感太陽電池ユニット30を挿入した。
そして、2個の色素増感太陽電池ユニット30を、逆流防止のダイオードを介して、電気二重層キャパシタ(4.7F)及び単四電池駆動の音楽プレーヤーに接続した。
一方、比較例1で得られた色素増感太陽電池モジュールを用いた場合は、実際に着用して両腕を動かすと、身体の動きに適応せず、無理な力がかかることで、色素増感太陽電池セルの接続部が破損した。
実施例1及び比較例1で得られた色素増感太陽電池モジュールを、ケーブルを介して12個並列に接続することにより、色素増感太陽電池ユニット40を作製した。次いで、防寒ベストの背面部に20×30cm程度の透明フィルムによるポケットを作製した。その後、図4に示すように、該透明ポケット部に色素増感太陽電池ユニット40を挿入した。
そして、色素増感太陽電池ユニット40を、逆流防止のダイオードを介して、電気二重層キャパシタ(4.7F)及び単四電池駆動の音楽プレーヤーに接続した。
一方、比較例1で得られた色素増感太陽電池モジュールを用いた場合は、実際に着用して両腕を動かすと、身体の動きに適応せず、無理な力がかかることで、色素増感太陽電池セルの接続部が破損した。
実施例1〜2及び比較例1で得られた色素増感太陽電池モジュールを、ケーブルを介して8個並列に接続することにより、色素増感太陽電池ユニット50を作製した。次いで、防寒ベストの背面部に20×30cm程度の透明フィルムによるポケットを作製した。その後、図5に示すように、該透明ポケット部に色素増感太陽電池ユニット50を挿入した。そして、色素増感太陽電池ユニット50を、逆流防止のダイオードを介して、並列で電気二重層キャパシタ(4.7F)及びLEDの夜間点灯回路に接続した。
一方、比較例1で得られた色素増感太陽電池モジュールを用いた場合は、実際に着用して両腕を動かすと、身体の動きに適応せず、無理な力がかかることで、色素増感太陽電池セルの接続部が破損した。
2 透明基板
3 色素担持多孔質層
4 電解質層
5 接続部
7 フレキシブルコネクタ
8 負極
9 正極
10、20、70 色素増感太陽電池モジュール
30、40、50 色素増感太陽電池ユニット
Claims (4)
- 複数の色素増感太陽電池セルが連続的に接続されたフレキシブル色素増感太陽電池モジュールであって、
複数の色素増感太陽電池セルは、可撓性を有するフレキシブルコネクタによって電気的に接続されており、
前記フレキシブルコネクタは、折り曲げ部を有する構造である
ことを特徴とするフレキシブル色素増感太陽電池モジュール。 - 色素増感太陽電池セルは、透明基板上に透明電極及び色素担持多孔質層が積層された光電極と、電解質層と、正電極とを有することを特徴とする請求項1記載のフレキシブル色素増感太陽電池モジュール。
- フレキシブルコネクタは、導電層と前記導電層を挟持する可撓性絶縁被覆層とからなり、かつ、前記導電層が露出した端子部を有することを特徴とする請求項1又は2記載のフレキシブル色素増感太陽電池モジュール。
- 透明基板は、樹脂フィルム基板であることを特徴とする請求項2記載のフレキシブル色素増感太陽電池モジュール。
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