JP5582851B2 - 地盤掘削混合装置 - Google Patents

Description

本発明は、地盤改良工事において地盤を掘削し、現状土とセメントミルクとを混合するために用いられる地盤掘削混合装置に関するものである。

軟弱な地盤を強固な地盤に改良するための工法として、地盤を所定の深さの円柱状に掘削しながらセメントミルク等の固化材を流し込んで攪拌、混合し、そのセメントミルクで湿潤した掘削土を固化させてソイルセメント柱（柱状改良体）を造成する方法が知られている。また、そのような柱状改良体の造成工事に用いられる地盤掘削混合装置として、管本体の先端に、掘削爪を付設してなる２つの棒状の掘削翼を、管本体の外周から放射方向に一直線状に突出するように設け、それらの掘削翼の上側に、２つの棒状の攪拌羽根を、管本体の外周から放射方向に一直線状に突出するように設けるとともに、セメントミルクを吐出させるための吐出口を、一対の掘削翼の基端に設けたものが知られている（特許文献１）。

特開２００１−３２３４５５号公報

しかしながら、上記従来の地盤掘削混合装置は、地盤を掘削する際に、掘削手段としての掘削翼が高い推進力を発生させることができず、掘削翼が瓦礫等に衝突して掘削できなくなる事態が生じ易いため、柱状改良体の造成工事を効率的に行うことができなかった。

本発明の目的は、上記従来の地盤掘削混合装置が有する問題点を解消し、地盤を掘削する際に高い推進力を発生させることが可能であるとともに、セメントミルクで湿潤した掘削土を十分に攪拌することができ、柱状改良体の造成工事を短時間の内に効率的に行うことが可能な地盤掘削混合装置を提供することにある。

本発明の内、請求項１に記載された発明は、長尺な管本体の先端部に、鋭角状の掘削爪が下向きに設けられているとともに、その掘削爪の上方に、棒状の混合翼が、管本体の外周から放射方向に突出するように設けられた地盤掘削混合装置であって、前記管本体の先端際に、板状体を螺旋状に１回転半捲回させてなる螺旋翼が、先端側から基端側にかけて外周縁が円弧を描きながら次第に幅広になるように設けられているとともに、前記管本体の先端のみに前記掘削爪が２個一対で設けられており、かつ、それらの掘削刃は、先端を鋭角状に尖らせた板状に形成されたものであって、切っ先の前後位置がずれた状態になるように、管本体の中心に対して対称に配置されており、前記混合翼が、管本体の異なる高さ位置において複数設けられているとともに、それらの混合翼の間に、管本体から独立して管本体の回転速度と異なる回転速度で回転可能な棒状の直進補助翼が設けられており、なおかつ、その直進補助翼は、管本体の外周から放射方向へ一直線状に突出したアーム部の両先端に、アーム部の厚みより横幅が広くアーム部の上下幅より上下幅が広い直方体状の錐体を固着させたものであることを特徴とするものである。

請求項２に記載された発明は、請求項１に記載された発明において、前記混合翼の幅が前記螺旋翼の幅以下であることを特徴とするものである。

請求項３に記載された発明は、請求項１、または請求項２に記載された発明において、長尺状の管本体の先端部に、軸方向と直交する方向へ固化材を吐出するための吐出手段が設けられており、前記掘削爪および前記螺旋翼による地盤の掘削と、前記混合翼による現状土および固化材の混合とを同時に実行可能であることを特徴とするものである。

請求項１に記載の地盤掘削混合装置は、地盤を効率良く掘削することが可能な螺旋翼と、掘り起こされた現状土とセメントミルクとを効率良く混合可能な混合翼とを備えているので、均一性が高く強度の高い柱状改良体を短時間の内に効率良く造成することができる。また、請求項１に記載の地盤掘削混合装置は、複数の混合翼の間に設けられた直進補助翼によって、正確に直進することができるため、軸が正確な直線状で強度の高い柱状改良体を容易に形成することができる。

請求項２に記載の混合翼の幅が前記螺旋翼の幅以下であるため、螺旋翼によって掘り起こされていない地盤を混合翼が混合するという事態が生じないので、穴径の拡大により単位改良体の体積当たりの固化材（セメントミルク等）の含有量が低下する、という事態の発生を防止することができる。

請求項３に記載の地盤掘削混合装置は、地盤を掘削するための掘削爪および螺旋翼と、掘り起こされた現状土と固化材とを混合するための混合翼とが設けられており、掘削爪および螺旋翼による地盤の掘削と、混合翼による現状土および固化材の混合とを同時に実行可能であるので、均一性が高く強度の高い柱状改良体を短時間の内に効率良く造成することができる。

地盤掘削混合装置の正面図である。 地盤掘削混合装置の右側面図である。 螺旋翼を管本体の先端側から見た状態を示す説明図である。 図１におけるＡ−Ａ線断面図である。 螺旋翼（変更例）を管本体の先端側から見た状態を示す説明図である。

以下、本発明に係る地盤掘削混合装置を、図面に基づいて詳細に説明する。図１、図２は、それぞれ、地盤掘削混合装置の正面図、右側面図である。地盤掘削混合装置１は、管本体２、掘削爪３，３、螺旋翼４、第一混合翼５，５、直進補助翼（自由回転翼）６，６、第二混合翼７，７、第三混合翼８，８等を組み付けることによって一体的に構成されている。

管本体２は、厚さ約２５ｍｍの鉄によって直径約８９．１ｍｍの中空の円柱状に形成されており、先端部分に、先端を鋭角状に尖らせた２つの掘削爪３，３が溶接されている。また、管本体２の基端には、掘削機械（図示せず）に結合させるための肉厚な円筒状の結合部１１が設けられており、当該結合部１１の内部には、水平断面が六角形状の結合孔２０が形成されている。一方、先端際には、吐出手段として機能する円形の吐出口１０が穿設されており、内部を流下したセメントミルクを吐出させることができるようになっている（すなわち、管本体の内部は、セメントミルクを流下させるための流下路９として機能する）。なお、結合孔２０の下端と流下路９の基端とは連通した状態になっている。さらに、吐出口１０の外側には、合成樹脂製の逆止弁１８が固着されている。

上記した管本体２の先端際には、掘削手段として機能する厚さ約４．５ｍｍの鉄板からなる螺旋翼４が、外径約３５０ｍｍの円形フランジ状に、溶接によって一体的に取り付けられている。かかる螺旋翼４の先端には、超硬合金（タングステン合金等）によって先端を鋭角に形成してなる２つの超硬ビット１９，１９が、所定の距離を隔てて固着されており、それぞれ、螺旋翼４の先端縁に対して直交した状態になっている。なお、図３は、螺旋翼４を管本体２の先端側から見た状態を示したものであり、螺旋翼４は、管本体２の外周を、約２００ｍｍの間隔で、右向きに（すなわち、上から見た場合に上端から下端にかけて右方向に回転する向きに）、約一半周捲回した状態になっている。

さらに、螺旋翼４の上側（約３０ｍｍ上方）に位置した部分には、混合手段として機能する一対の第一混合翼５，５が固着されている。各第一混合翼５，５は、横長な長方形の板状に形成されており、厚さ２５ｍｍ×横方向の長さ３５０ｍｍ×幅１０５ｍｍの大きさを有している。また、基端から先端にかけて次第に狭幅になっている。さらに、各第一混合翼５，５は、管本体２と直交し、板面が水平面に対して２０°の角度を成すように、管本体２に傾斜状に固着（溶接）されており、管本体２の外周から放射方向に一直線状に突出した状態になっている。

また、第一混合翼５，５の上側（約１２０ｍｍ上方）には、一対の直進補助翼６，６が管本体２から独立して回転自在に設けられている。図４は、直進補助翼６，６の設置部分の水平断面の様子を示したものであり、直進補助翼６，６の設置部分には、上下一対のフランジ１２，１２が約１２０ｍｍの距離を隔てて固着されている。

各直進補助翼６，６は、鉄によって同一形状に形成されており、それぞれ、厚さが２２ｍｍで内径の曲率半径が９０ｍｍの扁平な半円筒状のベース部１４と、当該ベース部分１４の中央から突出した幅×長さ（高さ）×厚み＝８０ｍｍ×１２０ｍｍ×２２ｍｍの板状のアーム部１５とを有している。ベース部１４の左右両端には、矩形の螺着板１６，１６が設けられており、それらの螺着板１６，１６には、ネジ孔が穿設されている。また、アーム部１５の先端には、幅×長さ（高さ）×厚み＝８０ｍｍ×１２０ｍｍ×２２ｍｍの錘体１７が固着されている。２つの直進補助翼６，６は、それぞれのアーム部１５，１５が管本体２の外周から放射方向へ一直線状に突出し、それぞれのベース部１４，１４の内面が管本体２の薄肉部分を覆うように配置させ、その状態で、当接し合った螺着板１６，１６同士をボルトによって締着することによって、管本体２に対して回転自在に固着されている。

また、直線補助翼６の上側（約１４０ｍｍ上方）に位置した部分には、混合手段として機能する一対の第二混合翼７，７が固着されている。各第二混合翼７，７は、第一混合翼５，５と同様に、横長な長方形の板状に形成されている。そして、厚さ２５ｍｍ×横方向の長さ３５０ｍｍ×幅１０５ｍｍの大きさを有しており、基端から先端にかけて次第に狭幅になっている。さらに、管本体２と直交し、板面が水平面に対して２０°の角度を成すように、管本体２に傾斜状に固着（溶接）されており、管本体２の外周から放射方向に一直線状に突出した状態になっている。加えて、第二混合翼７，７は、第一混合翼５，５の伸長方向と直交した方向に伸長した状態になっている。

さらに、それらの第二混合翼７，７の上側（約１００ｍｍ上方）に位置した部分には、混合手段として機能する一対の第三混合翼８，８が固着されている。各第三混合翼８，８も、第一混合翼５，５、第二混合翼７，７と同様に、横長な長方形の板状に形成されており、厚さ２５ｍｍ×横方向の長さ３５０ｍｍ×幅１０５ｍｍの大きさを有しており、基端から先端にかけて次第に狭幅になっている。さらに、管本体２と直交し、板面が水平面に対して２０°の角度を成すように、管本体２に傾斜状に固着（溶接）されており、管本体２の外周から放射方向に一直線状に突出した状態になっている。加えて、第三混合翼８，８は、第二混合翼７，７の伸長方向と直交した方向に伸長し、第一混合翼５，５の伸長方向と平行になっている。

［地盤掘削混合装置の使用方法］
上記の如く構成された地盤掘削混合装置１は、軟弱な地盤における柱状改良体の造成工事等に好適に用いることができる。地盤掘削混合装置１を用いて柱状改良体の造成工事を実施する場合には、地盤掘削混合装置１を地面に突き立てて、圧力を加えて回転させながら地中に押し込む。また、かかる回転とともに管本体２の内部（流下路９）にセメントミルクを圧入して吐出口１０から外部に吐出させる。

上記の如く地盤掘削混合装置１を回転させると、管本体２の先端際に設けられた螺旋翼４によって、高い推進力で地盤が掘削される。また、地盤掘削混合装置１の回転に伴って、管本体２に固着された第一混合翼５，５、第二混合翼７，７、第三混合翼８，８により、セメントミルクで湿潤した現状土（掘削土）が効率的に混合、攪拌される。加えて、地盤の掘削中には、一対の直進補助翼６，６が、必要に応じて管本体２と独立して管本体２の回転速度より遅い回転速度で回転することにより、鉛直方向に対して傾斜した方向への掘削を効果的に防止する。それゆえ、軸が正確な直線状の柱状改良体（ここでは、正確に鉛直下方を向いた柱状改良体）を形成することが可能となる。

そして、十分な深さまで地盤掘削混合装置１を回転させて立て込み、セメントミルクによって湿潤した円柱状の土壌（すなわち、ソイルセメント柱）を形成した後には、地盤掘削混合装置１を逆回転させながら引き抜き、十分に時間をかけて養生させることによって、ソイルセメント柱を固化させる。

［地盤掘削混合装置の効果］
地盤掘削混合装置１は、上記の如く、地盤を効率良く掘削することが可能な螺旋翼４と、掘り起こされた現状土とセメントミルクとを効率良く混合可能な混合翼（第一混合翼５，５、第二混合翼７，７、第三混合翼８，８）とを備えているので、均一性が高く強度の高い柱状改良体を短時間の内に効率良く造成することができる。

また、地盤掘削混合装置１は、混合翼（第一混合翼５，５、第二混合翼７，７、第三混合翼８，８）の幅が螺旋翼４の幅と同一であるため、螺旋翼４によって掘り起こされていない地盤を混合翼が混合するという事態が生じないので、穴径の拡大により柱状改良体の体積当たりのセメントミルクの含有量が低下する、という事態の発生を防止することができる。

さらに、地盤掘削混合装置１は、混合翼（第一混合翼５，５、第二混合翼７，７、第三混合翼８，８）が、管本体２の異なる高さ位置において複数設けられているとともに、それらの混合翼の間に、管本体２から独立して管本体２の回転速度より遅い回転速度で回転可能な棒状の直進補助翼６，６が設けられているため、正確に直進することができるため、軸が正確な直線状で強度の高い柱状改良体を容易に形成することができる。

［地盤掘削混合装置の変更例］
なお、本発明に係る地盤掘削混合装置の構成は、上記実施形態の態様に何ら限定されるものではなく、管本体、掘削爪、螺旋翼、混合翼（第一混合翼、第二混合翼、第三混合翼）、直進補助翼等の材質、形状、構造等の構成を、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、必要に応じて適宜変更することができる。

たとえば、地盤掘削混合装置は、上記実施形態の如く、混合翼として、第一〜第三混合翼という３種類の混合翼を設けたものに限定されず、１，２種類あるいは４種類以上の混合翼を設けたものに変更することも可能である。また、上記実施形態の如く、先端側から基端側まで同一幅の螺旋翼を設けたものに限定されず、図５の如く、先端側から基端側にかけて次第に（外周縁が円弧を描くように）幅広になる螺旋翼を設けたもの等でも良い。加えて、上記実施形態の如く、管本体を約一周半捲回した螺旋翼を設けたものに限定されず、螺旋翼の捲回回数を必要に応じて適宜変更することができる。さらに、地盤掘削混合装置は、上記実施形態の如く、先端に錘体を付設した直進補助翼を設けたものに限定されず、単純な棒状あるいは板状の直進補助翼を設けたもの等に変更することも可能である。

また、地盤掘削混合装置は、上記実施形態の如く、鋼鉄製の螺旋翼を管本体の先端に溶接したものに限定されず、鋳鉄製等の螺旋翼を管本体の先端にネジ等で螺着したもの等でも良い。また、上記実施形態の如く、管本体の先端のみに掘削爪を設けたものに限定されず、螺旋翼の下面（先端側の面）に掘削爪を設けたもの等に変更することも可能である。

本発明の地盤掘削混合装置は、上記の如く優れた効果を奏するものであるから、柱状改良体の造成工事用の装置として好適に用いることができる。

１・・地盤掘削混合装置
２・・管本体
３・・掘削爪
４・・螺旋翼（掘削手段）
５・・第一混合翼（混合手段）
６・・直進補助翼
７・・第二混合翼（混合手段）
８・・第三混合翼（混合手段）
１０・・吐出口（吐出手段）

Claims (3)

1. 長尺な管本体の先端部に、鋭角状の掘削爪が下向きに設けられているとともに、その掘削爪の上方に、棒状の混合翼が、管本体の外周から放射方向に突出するように設けられた地盤掘削混合装置であって、
   前記管本体の先端際に、板状体を螺旋状に１回転半捲回させてなる螺旋翼が、先端側から基端側にかけて外周縁が円弧を描きながら次第に幅広になるように設けられているとともに、
   前記管本体の先端のみに前記掘削爪が２個一対で設けられており、かつ、
   それらの掘削刃は、先端を鋭角状に尖らせた板状に形成されたものであって、切っ先の前後位置がずれた状態になるように、管本体の中心に対して対称に配置されており、
   前記混合翼が、管本体の異なる高さ位置において複数設けられているとともに、
   それらの混合翼の間に、管本体から独立して管本体の回転速度と異なる回転速度で回転可能な棒状の直進補助翼が設けられており、なおかつ、
   その直進補助翼は、管本体の外周から放射方向へ一直線状に突出したアーム部の両先端に、アーム部の厚みより横幅が広くアーム部の上下幅より上下幅が広い直方体状の錐体を固着させたものであることを特徴とする地盤掘削混合装置。
2. 前記混合翼の幅が前記螺旋翼の幅以下であることを特徴とする請求項１に記載の地盤掘削混合装置。
3. 長尺状の管本体の先端部に、軸方向と直交する方向へ固化材を吐出するための吐出手段が設けられており、
   前記掘削爪および前記螺旋翼による地盤の掘削と、前記混合翼による現状土および固化材の混合とを同時に実行可能であることを特徴とする請求項１、または請求項２に記載の地盤掘削混合装置。

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