JP5581920B2 - ゴムホースおよびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、ゴムホースおよびその製造方法に関し、さらに詳しくは、補強層を構成するスチールワイヤとゴム層のゴムとの接着性を向上させることができるゴムホースおよびその製造方法に関するものである。
高圧仕様のゴムホースでは、スチールワイヤを編組して巻き付けて形成した補強層、或いは、スパイラル状に巻き付けて形成した補強層を、内面ゴム層と外面ゴム層との間に介在させている。補強層の構成部材であるスチールワイヤは、強度を向上させるため、例えば、図3に示すようにスチールワイヤ母材6をダイス8に挿通させる伸線加工が施されている。
伸線加工の工程では、スチールワイヤ母材6を円滑に縮径変形させるために、潤滑剤が使用される。伸線加工したスチールワイヤ7の表面には潤滑剤が残存しているので、潤滑剤を除去したスチールワイヤ7がゴムホースの製造に用いられる。
スチールワイヤ7とゴム層を構成するゴムとは加硫接着されるが、図4に例示するようにスチールワイヤ7の表面粗さがある程度大きい場合は、成形工程においてスチールワイヤ7の表面の凹凸に未加硫ゴムRが十分に追従できなくなり、両者の密着が不十分になる。これに起因して、スチールワイヤと加硫した後のゴム層のゴムとの接着不良が発生することがある。特に、加硫函を用いたゴムホースの加硫工程では、ホース成形体に積極的に圧力を負荷する訳ではないので、成形工程におけるスチールワイヤと未加硫ゴムとの密着性が加硫後の両者の接着性に大きく影響する。
タイヤ等のゴム製品に使用するスチールワイヤについては、ゴムとの接着性を向上させるために表面粗さをRaで4nm〜12nmにすることが提案されている(特許文献1参照)。しかしながら、算術平均Raのみを接着性の判断指標にすると、局部的に表面の凹凸が大きい部分が存在しても見過ごされることがあるため、良好な接着性を確保するには十分な指標ではなかった。また、ゴムホースに使用するスチールワイヤのゴムとの接着性については、加硫時に内側および外側から圧力が負荷されるタイヤ等に使用するスチールワイヤと同列に判断することができない。
特開2007−9343号公報
本発明の目的は、補強層を構成するスチールワイヤとゴム層のゴムとの接着性を向上させることができるゴムホースおよびその製造方法を提供することにある。
上記目的を達成するため本発明のゴムホースは、内面ゴム層と外面ゴム層の間に、スチールワイヤを構成部材とする補強層を介在させたゴムホースにおいて、前記スチールワイヤの表面の粗さが、JIS B0601で規定される最大高さRyで130nm以下であることを特徴とする。
本発明のゴムホースの製造方法は、伸線加工したスチールワイヤを構成部材とする補強層を、マンドレルの外周面に積層した内面ゴム層を構成する未加硫ゴム部材の外周側に積層し、この補強層の外周側に外面ゴム層を構成する未加硫ゴム部材を積層してホース成形体を成形し、次いで、このホース成形体の外周面を被覆部材で覆った状態にして加硫函の内部でスチーム加硫するゴムホースの製造方法において、前記補強層の構成部材として、表面粗さが、JIS B0601で規定される最大高さRyで130nm以下のスチールワイヤを使用することを特徴とする。
本発明によれば、補強層を構成するスチールワイヤの表面の粗さを、JIS B0601で規定される最大高さRyで130nm以下にしたので、従来に比して、局部的に表面の凹凸が大きくなる部分がなくなる。そのため、スチールワイヤの表面の凹凸に対して未加硫ゴムが追従し易くなり、両者の密着性が向上する。これに伴って、スチールワイヤと加硫後のゴム層のゴムとの接着性向上には有利になる。
本発明において、前記スチールワイヤの表面の表面粗さを、JIS B0601で規定される算術平均粗さRaで20nm以下にすることが好ましい。これにより、スチールワイヤの表面の凹凸が全般的に小さくなるので、スチールワイヤと未加硫ゴムとの密着性が向上し、スチールワイヤと加硫後のゴム層のゴムとを強固に接着するには一段と有利になる。
前記スチールワイヤの外径が0.20mm〜0.80mmの場合は、ゴムホースに高い耐圧性が求められるので、スチールワイヤと加硫後のゴム層のゴムとの接着性が一段と重要になる。そのため、本発明を適用して両者の接着性を向上させることが特に好ましい。
本発明のゴムホースを、一部を切り裂いて例示する説明図である。 本発明の別のゴムホースを、一部を切り裂いて例示する説明図である。 伸線加工してスチールワイヤを製造する工程を例示する説明図である。 スチールワイヤと未加硫ゴムとの密着状態を例示する説明図である。 外周面を被覆部材によって覆ったホース成形体を例示する横断面図である。 JIS B0601で規定される最大高さRyの説明図である。 JIS B0601で規定される算術平均粗さRaの説明図である。
以下、本発明のゴムホースおよびその製造方法を図に示した実施形態に基づいて説明する。
図1に例示するように、本発明のゴムホース1は、内面ゴム層2の外周側に、順に、補強層3、中間ゴム層4、補強層3、外面ゴム層5を積層して構成されている。補強層3は、単線のスチールワイヤ7を所定の編組角度で編組して形成されている。スチールワイヤ7の外径は例えば、0.2mm〜0.8mm程度である。
補強層の数は2層に限らず、単層、或いは3層以上の場合もある。また、図2に例示するように、補強層3は、スチールワイヤ7をスパイラル状に巻き付けて形成される場合もある。隣り合う補強層3では、スチールワイヤ7が交差するように巻き付けられている。
本発明で使用するスチールワイヤ7は、図3に例示したように伸線加工されていて、伸線加工後の表面に残存する潤滑剤を除去したものである。スチールワイヤ7の表面にはブラスめっきが施されている。そして、その表面粗さ(めっき表面粗さ)がJIS B0601で規定される最大高さRyで130nm以下になっている。
JIS B0601で規定される最大高さRyとは、図6に示すように、粗さ曲線から、その平均線mの方向に基準長さLだけ抜き取り、この抜き取り部分の山頂線と谷底線との間隔を粗さ曲線の縦倍率の方向に測定した値をいう。
尚、本発明における表面粗さは、スチールワイヤ7の表面に残存する潤滑剤を除去した後に測定した値である。潤滑剤の除去は、例えば、アセトン中にスチールワイヤ7を浸漬させ、超音波洗浄機で洗浄した後、乾燥させることにより行なう。
このゴムホース1を製造するには、図5に例示するように、マンドレル9の外周面に順次、内面ゴム層2を構成する未加硫ゴムR、補強層3を構成するスチールワイヤ7、中間ゴム層4を構成する未加硫ゴムR、補強層3を構成するスチールワイヤ7、外面ゴム層5を構成する未加硫ゴムRを積層してホース成形体1Aを成形する。次いで、ホース成形体1Aの外周面を樹脂製の被覆部材10で覆った状態にする。
次いで、被覆部材10で覆ったホース成形体1Aを加硫函の内部に配置して、所定温度で所定時間、スチーム加硫する。その後、被覆部材10およびマンドレル9を除去することによりゴムホース1が完成する。加硫温度と加硫時間はゴムホース1の仕様等によって異なるが、加硫温度は130℃〜160℃程度、加硫時間は45分〜120分程度である。
本発明では、スチールワイヤ7とゴムとの接着性を向上させるためには、スチールワイヤ7の表面が平均的に平滑であることよりも、局部的に表面の凹凸が大きくなる部分がないことを重視している。そこで、Ryを第1の判断指標として、伸線加工後の表面に残存する潤滑剤を除去した後の表面粗さが、Ryで130nm以下のスチールワイヤ7を使用している。
これにより、ホース成形工程において、スチールワイヤ7の表面の凹凸に対して未加硫ゴムRが追従できない部分が少なくなる。即ち、スチールワイヤ7の表面の凹凸に未加硫ゴムRが追従し易くなり、両者の密着性を向上させることができる。これに伴って、スチールワイヤ7と加硫後のゴム層2、4、5のゴムとの接着性向上には有利になる。スチールワイヤ7とゴムとの接着性向上にはRyの値が小さい程、好ましいが、実用的にはRyは80〜130nm程度となる。
さらに、伸線加工後の表面に残存する潤滑剤を除去した後の表面粗さが、JIS B0601で規定される算術平均粗さRaで20nm以下のスチールワイヤ7を使用するとよい。
JIS B0601で規定される算術平均粗さRaとは、図7に示すように、粗さ曲線から、その平均線mの方向に基準長さLだけ抜き取り、この抜き取り部分の平均線mの方向にX軸を、縦倍率の方向にY軸を取り、粗さ曲線をY=f(X)で表したときに、以下の(1)式によって求められる値をいう。(1)式の積分区間は0〜Lである。
Ra=(1/L)∫|f(X)|dx ・・・(1)
Raを20nm以下にすることで、スチールワイヤ7の表面の凹凸が全般的に小さくなる。したがって、判断指標としてRyおよびRaを用いることにより、スチールワイヤ7と未加硫ゴムRとの密着性が一段と向上し、スチールワイヤ7と加硫後のゴム層2、4、5のゴムとを強固に加硫接着するには一段と有利になる。スチールワイヤ7とゴムとの接着性向上にはRaの値が小さい程、好ましいが、実用的にはRaは10〜20nm程度となる。
スチールワイヤ7の外径が0.20mm〜0.80mmの場合は、ゴムホース1に高い耐圧性が求められるので、スチールワイヤ7とゴム層2、4、5のゴムとの接着性が一段と重要になる。そのため、このような仕様のゴムホース1には、本発明を適用してスチールワイヤ7とゴムとの接着性を向上させることが特に好ましい。
外径(0.40mm)および表面めっき厚さ(0.37μm)を共通にして、表面粗さRy、Raのみが表1のように異なる7種類のスチールワイヤ(実施例1〜4、比較例1〜3)を用いて、3種類のゴム(NBR、CR、SRとSBRのブレンド)を加硫接着したホース状試験体を作製して、ゴム接着性を評価し、その結果を表1に示す。ゴム接着性の評価は、常態と湿熱状態の2つ状態で行なった。湿熱状態の評価は、ホース状試験体を温度50℃、相対湿度95%の条件下に168時間放置した直後に行なった。
ブラスめっきを施したスチールワイヤからなる補強層と、各ゴム組成物からなるゴム外層とを有するホース状試験体は、以下に示すように作製した。まず、外径34mmのマンドレル上に、スチールワイヤをスパイラル状に巻き付け、補強層を形成した。ついで、補強層の上に、各ゴム組成物を調製した厚さ2.5mmの未加硫のシートを貼り合わせ、ナイロンラッパーで外層をラッピングしたホース状試験成形体を作成した後、加硫してホース状試験体を作製した。尚、加硫は、ホース状試験成形体に大きな圧力を負荷することの出来るプレスではなく、殆ど圧力が負荷されないスチーム加硫にて行なった。
得られた各ホース状試験体は、剥離スピード50mm/minで所定の幅(25mm)のゴム外層を剥離した後のゴム付き(ゴムが剥がれず、補強層に残留している面積比)を測定することにより、ゴム接着性を評価した。数値が大きい程、ゴム接着性が良好であることを示し、90%以上であれば優れていると評価できる。
Figure 0005581920
表1の結果から、スチールワイヤの表面粗さRyを130nm以下にした実施例1〜4は、すべての条件でゴム接着性が90%以上であり、スチールワイヤとゴムとの接着が優れていることが分かる。
1 ゴムホース
1A ホース成形体
2 内面ゴム層
3 補強層
4 中間ゴム層
5 外面ゴム層
6 スチールワイヤ母材
7 スチールワイヤ
8 ダイス
9 マンドレル
10 被覆部材
R 未加硫ゴム

Claims (5)

  1. 内面ゴム層と外面ゴム層の間に、スチールワイヤを構成部材とする補強層を介在させたゴムホースにおいて、前記スチールワイヤの表面の粗さが、JIS B0601で規定される最大高さRyで130nm以下であることを特徴とするゴムホース。
  2. 前記スチールワイヤの表面の表面粗さが、JIS B0601で規定される算術平均粗さRaで20nm以下である請求項1に記載のゴムホース。
  3. 前記スチールワイヤの外径が0.20mm〜0.80mmである請求項1または2に記載のゴムホース。
  4. 伸線加工したスチールワイヤを構成部材とする補強層を、マンドレルの外周面に積層した内面ゴム層を構成する未加硫ゴム部材の外周側に積層し、この補強層の外周側に外面ゴム層を構成する未加硫ゴム部材を積層してホース成形体を成形し、次いで、このホース成形体の外周面を被覆部材で覆った状態にして加硫函の内部でスチーム加硫するゴムホースの製造方法において、前記補強層の構成部材として、表面粗さが、JIS B0601で規定される最大高さRyで130nm以下のスチールワイヤを使用することを特徴とするゴムホースの製造方法。
  5. 前記補強層の構成部材として、表面粗さが、JIS B0601で規定される算術平均粗さRaで20nm以下のスチールワイヤを使用する請求項4に記載のゴムホースの製造方法。
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