JP5581472B2 - 結晶粒子形状を制御したチタン酸バリウムの製造方法 - Google Patents
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しかし、通常のチタン酸バリウムは圧電係数がPZT系のそれと比較して非常に低く、そのままでは優れた圧電材料になり得ない。
そこで、チタン酸バリウムの圧電係数を改善するために、種々の工夫が試みられており、特許文献1には、チタン酸バリウムの結晶粒子形状を制御した結晶軸配向性板状粒子を製造する技術が開発されている。
具体的には、特許文献1には、酸化チタン、水酸化カリウム、水酸化リチウムを混合し撹拌しながら水熱条件下で反応させて層状チタン酸カリウムリチウムの板状粒子を合成し、この板状粒子を硝酸水溶液中において室温で処理して板状の層状チタン酸水和物に転換し、この板状の層状チタン酸水和物を水酸化バリウム溶液中で水熱条件下で反応させることによって、チタン酸バリウムの板状粒子を合成する方法が開示されている。
しかも、特許文献1の製造方法では、層状チタン酸水和物からチタン酸バリウムを合成する過程において、層状チタン酸水和物を長い時間水溶液中に浸漬した状態となるので、合成過程で層状チタン酸水和物の溶解析出反応による板状粒子形状の破壊が生じ易く、これを抑止することは容易ではない。
第2発明の結晶粒子形状を制御したチタン酸バリウムの製造方法は、第1発明において、前記チタン酸バリウム原料混合物を、マイクロ波を照射して、60〜200℃に加熱することを特徴とする。
第3発明の結晶粒子形状を制御したチタン酸バリウムの製造方法は、第1または第2発明において、前記チタン酸水和物が、チタン、カリウムおよびリチウム源原料と水系媒体とを混合してチタン酸カリウムリチウム原料混合物を形成し、該チタン酸カリウムリチウム原料混合物にマイクロ波を照射することによって得られたチタン酸カリウムリチウムを、酸性溶液中において水和物に転換したものであることを特徴とする。
第4発明の結晶粒子形状を制御したチタン酸バリウムの製造方法は、第1、第2または第3発明において、マイクロ波が照射される、水系媒体からなるチタン酸バリウム生成反応域に対して、前記チタン酸バリウム原料混合物を連続的に供給し、前記チタン酸バリウム生成反応域からチタン酸バリウムを含む水系媒体を連続的に排出することを特徴とする。
第5発明の結晶粒子形状を制御したチタン酸バリウムの製造方法は、第3発明において、マイクロ波が照射される、水系媒体からなるチタン酸カリウムリチウム合成反応域に対して、前記チタン酸カリウムリチウム原料混合物を連続的に供給し、前記チタン酸カリウムリチウム合成反応域からチタン酸カリウムリチウムを含む反応物含有水系媒体を連続的に排出し、排出された該反応物含有水系媒体を、酸性溶液からなる水和物転換反応域に連続的に供給し、該水和物転換反応域からチタン酸水和物を含有する酸性溶液を排出して、前記チタン酸バリウム生成反応域に連続的に供給することを特徴とする。
第2発明によれば、低温かつ短時間でチタン酸水和物を合成できるので、合成過程におけるチタン酸水和物の溶解析出反応による結晶粒子形状の破壊を防ぐことができる。したがって、チタン酸水和物の結晶粒子形状を維持したチタン酸バリウムを製造することができる。
第3発明によれば、チタン酸水和物の合成時間も短くできるので、チタン酸バリウムの合成をより一層短い時間で行うことができる。
第4発明によれば、通常の水熱反応と比べ、マイクロ波照射条件下ではチタン酸バリウムが生成しやすいので、チタン酸バリウム生成反応域における、水系媒体中のチタン酸バリウム原料混合物の濃度を低くできるから、チタン酸バリウム生成反応域における液体の流動性を高くできる。すると、チタン酸バリウム生成反応域からチタン酸バリウムを含む水系媒体を連続的に排出することが可能となる。よって、チタン酸バリウムの合成を、バッチ処理でなく、連続して行うことができるから、チタン酸バリウムの合成効率を向上させることができる。
第5発明によれば、通常の水熱反応と比べ、マイクロ波照射条件下ではチタン酸バリウムが生成しやすいので、チタン酸カリウムリチウム合成反応域における、水系媒体中のチタン酸カリウムリチウム原料混合物の濃度を低くできるから、チタン酸カリウムリチウム合成反応域における液体の流動性を高くできる。すると、チタン酸カリウムリチウム合成反応域からチタン酸カリウムリチウムを含む反応物含有水系媒体を連続的に排出することが可能となるから、チタン酸カリウムリチウムを連続合成することができる。また、チタン酸カリウムリチウムを含む反応物含有水系媒体を水和物転換反応域に供給すれば、チタン酸水和物を連続的に合成でき、合成されたチタン酸水和物を連続的に水和物転換反応域から排出して、連続的にチタン酸バリウム生成反応域に供給することができる。つまり、チタン酸水和物の合成からチタン酸バリウムの合成まで、バッチ処理でなく、連続して処理することができるので、チタン酸バリウムの合成効率をより一層向上させることができる。
本発明の結晶粒子形状を制御したチタン酸バリウムの製造方法(以下、単に本発明の方法という)は、チタン酸水和物からチタン酸バリウムを製造する方法であって、チタン酸水和物からチタン酸バリウムを合成する時間を短くでき、しかも、チタン酸バリウムがチタン酸水和物の結晶粒子形状を維持できるようにしたことに特徴を有している。
例えば、バリウム源原料は、水酸化バリウムや塩化バリウム、硝酸バリウム等を使用できるが、これらに限定されるものではない。
また、チタン酸水和物も、板状または針状の結晶粒子形状を有するものであればとくに限定されない。
つぎに、本発明のチタン酸バリウムの製造方法について説明する。
以下では、チタン、カリウムおよびリチウム源原料からチタン酸カリウムリチウム原料混合物を合成し、このチタン酸カリウムリチウム原料混合物を水和物に転換して、このチタン酸水和物からチタン酸バリウムを製造するまでの一連の製造工程を順を追って説明する。
Ti、KあるいはLi源化合物は特に限定されることはないが、例えばTi源としてはチタンの酸化物、塩あるいはアルコキシド等が、またKとLi源に関してはこれらの水酸化物や塩等は通常の方法で容易に入手可能であるので、特に好ましい。Ti、KおよびLi源化合物の混合比は本発明において限定されることはないが、化学量論比に対してK源化合物の添加量を多めにすることは反応速度の向上に効果的である。
加熱処理における加熱条件は任意であるが、電気炉やガス加熱等の通常の加熱手段を用いた場合では反応温度200〜300℃、反応時間12〜30h程度が一般的である。
一方、電子レンジとして一般家庭にも広く普及しているマイクロ波を加熱手段に用いることも可能である。このマイクロ波は、X線、紫外線や可視光線と同様に電磁波の一種であり、通常は波長が1mmから1mの範囲のものを指し、赤外線と同様に物質を加熱する能力を有している。かかるマイクロ波を加熱源として使用すると、通常加熱に比較して反応条件が飛躍的に改善されるので、チタン酸カリウムリチウムの合成時間を短くできるという利点が得られる。例えば、マイクロ波を加熱源とした場合、反応温度150〜250℃、反応時間0.5〜3h程度で所望の板状または針状の結晶構造を有するチタン酸カリウムリチウムの合成反応を完了させることができる。
そして、調製されたチタン酸バリウム原料混合物は、耐圧性の反応容器内にて加熱処理される。このとき、本発明の方法では、チタン酸バリウム原料混合物に対して、マイクロ波を照射することによって加熱処理される。すると、チタン酸水和物とバリウムイオンと反応し、チタン酸水和物の板状または針状の結晶粒子形状を維持したチタン酸バリウムが合成される。例えば、チタン酸水和物に対してマイクロ波を照射することによって加熱処理した場合、温度60〜200℃、時間0.1〜1h程度でチタン酸バリウムを合成することができる。
しかも、短時間でチタン酸バリウムが合成されるので、合成過程におけるチタン酸水和物の溶解析出反応による結晶粒子形状の破壊を防ぐことができ、チタン酸水和物の結晶粒子形状を維持したチタン酸バリウムを合成することができる。
また、本発明の方法によってチタン酸バリウムを合成する場合には、各反応を回分反応によって行う場合でも十分な効果(合成時間の短縮等)を得ることができるが、チタン酸バリウムを合成する際に、通常の水熱反応と比べ、マイクロ波照射条件下ではチタン酸バリウムが生成しやすい。このため、水系媒体中のチタン酸バリウム原料混合物の濃度を低くできるから、チタン酸バリウムを含む液体の流動性を高くできる。すると、チタン酸バリウム原料混合物を水系媒体に連続的に供給しながら、合成されたチタン酸バリウムを水系媒体とともに排出することが可能となる。
同様に、チタン酸カリウムリチウムを合成する際に、マイクロ波による加熱を行う場合には、通常の水熱反応と比べ、マイクロ波照射条件下ではチタン酸バリウムが生成しやすい。このため、水系媒体中のチタン酸カリウムリチウム原料混合物の濃度を低くできるから、チタン酸カリウムリチウムを含む液体の流動性を高くできる。すると、チタン酸カリウムリチウム原料混合物を水系媒体に連続的に供給しながら、合成されたチタン酸カリウムリチウムを水系媒体とともに排出することが可能となる。
すると、チタン酸バリウムの合成およびチタン酸カリウムリチウムの合成を、バッチ処理でなく、連続して行うことができる。よって、Ti、KおよびLi源化合物からチタン酸バリウムを合成するまでの全工程を連続反応方式で行うようにすれば、更にチタン酸バリウムの合成効率を向上させることができるので、望ましい。
図9において、符号SE1は、チタン酸カリウムリチウムの合成を行う装置(第一合成装置)を示している。この第一合成装置SE1は、水系媒体を収容できるタンク等の収容部T1と、この収容部T1に対して、チタン酸カリウムリチウム原料混合物を供給する供給部F1とを備えている。また、収容部T1の周囲には、収容部T1内の水系媒体に対してマイクロ波を照射し得るマイクロ波照射手段M1が設けられている。つまり、第一合成装置SE1は、収容部T1において、収容部T1内に収容されている水系媒体をマイクロ波によって加熱して、チタン酸カリウムリチウム原料混合物からチタン酸カリウムリチウムを合成できるようになっているのである。
そして、収容部T1には、収容部T1内から、チタン酸カリウムリチウムを含有する水系媒体を排出する配管P1の一端が連結されている。
なお、供給部F1から収容部T1に対して供給する物質は、スラリーや液体状に調整されたチタン酸カリウムリチウム原料混合物でもよいし、スラリーや液体状に調整される前の原料でもよい。
そして、収容部T2には、収容部T2内から、チタン酸水和物を含有する水系媒体を排出する配管P2の一端が連結されている。
また、第二合成装置SE2は、収容部T3内の水系媒体に対して、バリウム源原料を供給する供給部F3が設けられている。また、収容部T3の周囲には、収容部T3内の水系媒体に対してマイクロ波を照射し得るマイクロ波照射手段M2が設けられている。つまり、第二合成装置SE2は、収容部T3において、収容部T3内に収容されている水系媒体をマイクロ波によって加熱して、バリウム源原料とチタン酸水和物からチタン酸バリウムを合成できるようになっているのである。
そして、収容部T3には、収容部T3内から水系媒体を排出する配管P3の一端が連結されており、合成されたチタン酸バリウムを、水系媒体とともに回収することができるようになっている。
合成されたチタン酸カリウムリチウムは、第一合成装置SE1の収容部T1から、配管P1によって水系媒体とともに連続的に排出され、水和物転換装置CEの収容部T2に対して供給される。
チタン酸水和物は、水和物転換装置CEの収容部T2から、配管P2によって水系媒体とともに連続的に排出され、第二合成装置SE2の収容部T3に対して供給される。
そして、合成されたチタン酸バリウムは、第二合成装置SE2の収容部T3から、配管P3によって水系媒体とともに連続的に排出されるので、連続的にチタン酸バリウムを合成し回収することができるのである。
また、連続反応方式は、全工程で採用する必要はなく、チタン酸バリウム原料混合物からチタン酸バリウムを合成する工程のみを連続反応方式としてもよいし、チタン酸カリウムリチウム原料混合物らチタン酸カリウムリチウムを合成する工程のみを連続反応方式としてもよい。
チタン酸水和物からのチタン酸バリウム合成反応を、マイクロ波照射により加熱した場合(本実施例)と、ニクロム線によって加熱した場合(比較例)について、生成物を比較した。
なお、本実施例と比較例とは、加熱方法以外の条件は全て同じ条件とした。
Ti、KおよびLi源として二酸化チタン、水酸化カリウムおよび水酸化リチウムを使用し、Ti:K:Liが原子比で1:1:0.3になると共に二酸化チタン1モル当たり水の使用量が0.3リットルになるように各原料を秤量、混合して原料スラリーを調製した。調製後の原料スラリーは、ニクロム線加熱方式のオートクレーブに充填し、温度250℃で24h反応させてチタン酸カリウムリチウム(K0.8Li0.27Ti1.73O4)を合成した。図2(B)に示すように、生成物のXRDチャートから、生成物がチタン酸カリウムリチウム(K0.8Li0.27Ti1.73O4)であることが確認できる。そして、合成した生成物の走査型電子顕微鏡(SEM)写真を図2(A)に示すが、綺麗な板状粒子形状を呈していることが分かる。
チタン酸水和物からのチタン酸バリウム合成反応を、マイクロ波照射によってでは無く、ニクロム線加熱方式のオートクレーブによって行った以外は実施例1と同様の原料、手法によってチタン酸バリウムの合成を試みた。その結果、最終生成物中に目的生成物であるチタン酸バリウムは殆ど認められず、反応が進行していないことが判明した。
そこで、ここでの反応時間を0.5hから12hに変更して合成を再度試みた。その結果、生成物は漸くチタン酸バリウムに転換された。しかしながら、この生成物をSEM観察したところ(図8)、チタン酸水和物の板状粒子形状のほとんどが破壊、微細化してしまっていることが判明した。
生成物のX線回折図およびSEM写真を図7に示すが、これより生成物は原料の針状粒子形状を維持したチタン酸バリウムであることが分かる。
Claims (5)
- 板状または針状の結晶粒子形状を有しているチタン酸水和物から板状または針状のチタン酸バリウムを製造する方法であって、
前記チタン酸水和物とバリウム源原料と水系媒体とを混合してチタン酸バリウム原料混合物を形成し、該チタン酸バリウム原料混合物に対してマイクロ波を照射する
ことを特徴とする結晶粒子形状を制御したチタン酸バリウムの製造方法。 - 前記チタン酸バリウム原料混合物を、
マイクロ波を照射して、60〜200℃に加熱する
ことを特徴とする請求項1記載の結晶粒子形状を制御したチタン酸バリウムの製造方法。 - 前記チタン酸水和物が、
チタン、カリウムおよびリチウム源原料と水系媒体とを混合してチタン酸カリウムリチウム原料混合物を形成し、該チタン酸カリウムリチウム原料混合物にマイクロ波を照射することによって得られたチタン酸カリウムリチウムを、酸性溶液中において水和物に転換したものである
ことを特徴とする請求項1または2記載の結晶粒子形状を制御したチタン酸バリウムの製造方法。 - マイクロ波が照射される、水系媒体からなるチタン酸バリウム生成反応域に対して、前記チタン酸バリウム原料混合物を連続的に供給し、前記チタン酸バリウム生成反応域からチタン酸バリウムを含む水系媒体を連続的に排出する
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の結晶粒子形状を制御したチタン酸バリウムの製造方法。 - マイクロ波が照射される、水系媒体からなるチタン酸カリウムリチウム合成反応域に対して、前記チタン酸カリウムリチウム原料混合物を連続的に供給し、前記チタン酸カリウムリチウム合成反応域からチタン酸カリウムリチウムを含む反応物含有水系媒体を連続的に排出し、
排出された該反応物含有水系媒体を、酸性溶液からなる水和物転換反応域に連続的に供給し、該水和物転換反応域からチタン酸水和物を含有する酸性溶液を排出して、前記チタン酸バリウム生成反応域に連続的に供給する
ことを特徴とする請求項3記載の結晶粒子形状を制御したチタン酸バリウムの製造方法。
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