本発明に係る車両用駆動装置は、電動機を車輪駆動用の駆動源とするものであり、例えば、図1に示すような駆動システムの車両に用いられる。以下の説明では車両用駆動装置を後輪駆動用として用いる場合を例に説明するが、前輪駆動用に用いてもよい。
図1に示す車両3は、内燃機関4と電動機5が直列に接続された駆動装置6(以下、前輪駆動装置と呼ぶ。)を車両前部に有するハイブリッド車両であり、この前輪駆動装置6の動力がトランスミッション7を介して前輪Wfに伝達される一方で、この前輪駆動装置6と別に車両後部に設けられた駆動装置1(以下、後輪駆動装置と呼ぶ。)の動力が後輪Wr(RWr、LWr)に伝達されるようになっている。前輪駆動装置6の電動機5と後輪Wr側の後輪駆動装置1の第1及び第2電動機2A、2Bは、バッテリ9に接続され、バッテリ9からの電力供給と、バッテリ9へのエネルギー回生が可能となっている。図1中、符号8は車両全体を制御するための制御装置である。
先ず、本発明に係る一実施形態の車両用駆動装置について、図2〜図12に基づいて説明する。図2は、後輪駆動装置1の全体の縦断面図を示すものであり、図3は、図2の上部部分拡大断面図である。同図において、符号11は、後輪駆動装置1のケース(筐体)であり、ケース11は、車幅方向略中央部に配置される中央ケース11Mと、中央ケース11Mを挟むように中央ケース11Mの左右に配置される側方ケース11A、11Bと、から構成され、全体が略円筒状に形成される。ケース11の内部には、後輪Wr用の車軸10A、10Bと、車軸駆動用の左及び右電動機としての第1及び第2電動機2A、2Bと、この電動機2A、2Bの駆動回転を減速する左及び右変速機としての第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bとが、同一軸線上にそれぞれ並んで配置されている。この車軸10A、第1電動機2A及び第1遊星歯車式減速機12Aは左後輪LWrを駆動制御する左車輪駆動装置の一部を構成し、、車軸10B、第2電動機2B及び第2遊星歯車式減速機12Bは右後輪RWrを駆動制御する右車輪駆動装置の一部を構成する。車軸10A、第1電動機2A及び第1遊星歯車式減速機12Aと、車軸10B、第2電動機2B及び第2遊星歯車式減速機12Bは、ケース11内で車幅方向に左右対称に配置されている。左後輪LWrは、第1電動機2Aに対して第1遊星歯車式減速機12Aと反対側に位置し、右後輪RWrも、第2電動機2Bに対して第2遊星歯車式減速機12Bと反対側に位置する。すなわち、第1電動機2Aと第1遊星歯車式減速機12Aとは車両3の車幅方向外側からこの順序で配置され、且つ、第2電動機2Bと第2遊星歯車式減速機12Bとは車両3の車幅方向外側からこの順序で配置されることにより、第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bは第1及び第2電動機2A、2Bの間に配置される。
側方ケース11A、11Bの中央ケース11M側には、それぞれ径方向内側に延びる隔壁18A、18Bが設けられ、側方ケース11A、11Bと隔壁18A、18Bとの間には、それぞれ第1及び第2電動機2A、2Bが配置される。また、中央ケース11Mと隔壁18A、18Bとに囲まれた空間には、第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bが配置されている。なお、図2に示すように、本実施形態では、左側方ケース11Aと中央ケース11Mは、第1電動機2A及び第1遊星歯車式減速機12Aを収容する第1ケース11Lを構成し、また、右側方ケース11Bと中央ケース11Mは、第2電動機2B及び第2遊星歯車式減速機12Bを収容する第2ケース11Rを構成している。そして、第1ケース11Lは、第1電動機2Aと動力伝達経路の少なくとも一方の潤滑及び/又は冷却に供される液状流体としてのオイルを貯留する左貯留部RLを有し、第2ケース11Rは、第2電動機2Bと動力伝達経路の少なくとも一方の潤滑及び/又は冷却に供されるオイルを貯留する右貯留部RRを有する。そして、ケース11は、図4に示すように、車両3の骨格となるフレームの一部であるフレーム部材13の支持部13a、13bと、不図示の駆動装置1のフレームで支持されている。支持部13a、13bは、車幅方向でフレーム部材13の中心に対し左右に設けられている。また、図2〜図11中の矢印は、後輪駆動装置1が車両に搭載された状態における位置関係を示している。
後輪駆動装置1には、ケース11の内部と外部を連通するブリーザ装置40が設けられ、内部の空気が過度に高温・高圧とならないように内部の空気をブリーザ室41を介して外部に逃がすように構成される。ブリーザ室41は、ケース11の鉛直方向上部に配置され、中央ケース11Mの外壁と、中央ケース11M内に左側方ケース11A側に略水平に延設された第1円筒壁43と、右側方ケース11B側に略水平に延設された第2円筒壁44と、第1及び第2円筒壁43、44の内側端部同士をつなぐ左右分割壁45と、第1円筒壁43の左側方ケース11A側先端部に当接するように取り付けられたバッフルプレート47Aと、第2円筒壁44の右側方ケース11B側先端部に当接するように取り付けられたバッフルプレート47Bと、により形成された空間により構成される。
ブリーザ室41の下面を形成する第1及び第2円筒壁43、44と左右分割壁45は、第1円筒壁43が第2円筒壁44より径方向内側に位置し、左右分割壁45が、第2円筒壁44の内側端部から縮径しつつ屈曲しながら第1円筒壁43の内側端部まで延設され、さらに径方向内側に延設されて略水平に延設された第3円筒壁46に達する。第3円筒壁46は、第1円筒壁43と第2円筒壁44の両外側端部より内側に且つその略中央に位置している。
中央ケース11Mには、バッフルプレート47A、47Bが、第1円筒壁43と中央ケース11Mの外壁との間の空間又は第2円筒壁44と中央ケース11Mの外壁との間の空間を第1遊星歯車式減速機12A又は第2遊星歯車式減速機12Bからそれぞれ区画するように固定されている。
また、中央ケース11Mには、ブリーザ室41と外部とを連通する外部連通路49がブリーザ室41の鉛直方向上面に接続される。外部連通路49のブリーザ室側端部49aは、鉛直方向下方を指向して配置されている。従って、オイルが外部連通路49を通って外部に排出されるのが抑制される。
第1及び第2電動機2A、2Bは、ステータ14A、14Bがそれぞれ側方ケース11A、11Bに固定され、このステータ14A、14Bの内周側に環状のロータ15A、15Bが回転可能に配置されている。ロータ15A、15Bの内周部には車軸10A、10Bの外周を囲繞する円筒軸16A、16Bが結合され、この円筒軸16A、16Bが車軸10A、10Bと同軸上に相対回転可能となるように側方ケース11A、11Bの端部壁17A、17Bと隔壁18A、18Bに軸受19A、19Bを介して支持されている。また、円筒軸16A、16Bの一端側の外周であって端部壁17A、17Bには、ロータ15A、15Bの回転位置情報を第1及び第2電動機2A、2Bの制御コントローラ(図示せず)にフィードバックするためのレゾルバ20A、20Bが設けられている。ステータ14A、14B、及びロータ15A、15Bを含む第1及び第2電動機2A、2Bは、同一半径を有し、第1及び第2電動機2A、2Bは互いに鏡面対称に配置される。また、車軸10A及び円筒軸16Aは、第1電動機2A内を貫通して、第1電動機2Aの両端部から延出しており、車軸10B及び円筒軸16Bも、第2電動機2B内を貫通して、第2電動機2Bの両端部から延出している。
また、第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bは、サンギヤ21A、21Bと、このサンギヤ21に噛合される複数のプラネタリギヤ22A、22Bと、これらのプラネタリギヤ22A、22Bを支持するプラネタリキャリア23A、23Bと、プラネタリギヤ22A、22Bの外周側に噛合されるリングギヤ24A、24Bと、を備え、サンギヤ21A、21Bから第1及び第2電動機2A、2Bの駆動力が入力され、減速された駆動力がプラネタリキャリア23A、23Bを通して車軸10A、10Bに出力されるようになっている。
サンギヤ21A、21Bは円筒軸16A、16Bに一体に形成されている。また、プラネタリギヤ22A、22Bは、サンギヤ21A、21Bに直接噛合される大径の第1ピニオン26A、26Bと、この第1ピニオン26A、26Bよりも小径の第2ピニオン27A、27Bを有する2連ピニオンであり、これらの第1ピニオン26A、26Bと第2ピニオン27A、27Bが同軸にかつ軸方向にオフセットした状態で一体に形成されている。このプラネタリギヤ22A、22Bはニードルベアリング31A、31Bを介してプラネタリキャリア23A、23Bのピニオンシャフト32A、32Bに支持され、プラネタリキャリア23A、23Bは、軸方向内側端部が径方向内側に伸びて車軸10A、10Bにスプライン嵌合され一体回転可能に支持されるとともに、軸受33A、33Bを介して隔壁18A、18Bに支持されている。
リングギヤ24A、24Bは、その内周面が小径の第2ピニオン27A、27Bに噛合されるギヤ部28A、28Bと、ギヤ部28A、28Bより小径でケース11の中間位置で互いに対向配置される小径部29A、29Bと、ギヤ部28A、28Bの軸方向内側端部と小径部29A、29Bの軸方向外側端部を径方向に連結する連結部30A、30Bと、を備えて構成されている。連結部30A、30Bと、プラネタリキャリア23A、23Bと、の軸方向における間には、リングギヤ24A、24B及びプラネタリキャリア23A、23Bを互いに相対回転可能に支承するスラストニードル軸受25A、25Bが配置されている。
ギヤ部28A、28Bは、中央ケース11Mの左右分割壁45の内径側端部に形成された第3円筒壁46を挟んで軸方向に対向している。小径部29A、29Bは、その外周面がそれぞれ後述する一方向クラッチ50のインナーレース51とスプライン嵌合し、リングギヤ24A、24Bは一方向クラッチ50のインナーレース51と一体回転するように互いに連結されて構成されている。
第2遊星歯車式減速機12Bの径方向外側、より詳細には、ケース11を構成する中央ケース11Mの第2円筒壁44とリングギヤ24Bのギヤ部28Bとの間には、リングギヤ24Bに対する回転規制手段を構成する油圧ブレーキ60が第1ピニオン26Bと径方向でオーバーラップし、第2ピニオン27Bと軸方向でオーバーラップするように配置されている。油圧ブレーキ60は、第2円筒壁44の内周面にスプライン嵌合された複数の固定プレート35と、リングギヤ24Bのギヤ部28Bの外周面にスプライン嵌合された複数の回転プレート36が軸方向に交互に配置され、これらのプレート35、36が環状のピストン37によって締結(作動)及び解放(非作動)操作されるようになっている。ピストン37は、中央ケース11Mの左右分割壁45と第3円筒壁46間に形成された環状のシリンダ室に進退自在に収容されており、さらに第3円筒壁46の外周面に設けられた受け座38に支持される弾性部材39によって、常時、固定プレート35と回転プレート36とを解放する方向に付勢される。
また、さらに詳細には、左右分割壁45とピストン37の間はオイルが直接導入される作動室Sとされ、作動室Sに導入されるオイルの圧力が弾性部材39の付勢力に勝ると、ピストン37が前進(右動)し、固定プレート35と回転プレート36とが相互に押し付けられて締結することとなる。また、弾性部材39の付勢力が作動室Sに導入されるオイルの圧力に勝ると、ピストン37が後進(左動)し、固定プレート35と回転プレート36とが離間して解放することとなる。なお、油圧ブレーキ60は液状流体供給装置としての電動オイルポンプ70(図4参照)に接続されている。
この油圧ブレーキ60の場合、固定プレート35がケース11を構成する中央ケース11Mの左右分割壁45から伸びる第2円筒壁44に支持される一方で、回転プレート36がリングギヤ24Bのギヤ部28Bに支持されているため、両プレート35、36がピストン37によって押し付けられると、両プレート35、36間の摩擦締結によってリングギヤ24Bに制動力が作用し固定される。その状態からピストン37による締結が解放されると、リングギヤ24Bの自由な回転が許容される。なお、上述したように、リングギヤ24A、24Bは互いに連結されているため、油圧ブレーキ60が締結することによりリングギヤ24Aにも制動力が作用し固定され、油圧ブレーキ60が解放することによりリングギヤ24Aも自由な回転が許容される。
また、軸方向で対向するリングギヤ24A、24Bの連結部30A、30B間にも空間部が確保され、その空間部内に、リングギヤ24A、24Bに対し一方向の動力のみを伝達し他方向の動力を遮断する回転規制手段としての一方向クラッチ50が配置されている。一方向クラッチ50は、インナーレース51とアウターレース52との間に多数のスプラグ53を介在させたものであって、そのインナーレース51がスプライン嵌合によりリングギヤ24A、24Bの小径部29A、29Bと一体回転するように構成されている。またアウターレース52は、第3円筒壁46により位置決めされるとともに、回り止めされている。
一方向クラッチ50は、車両3が第1及び第2電動機2A、2Bの動力で前進する際に係合してリングギヤ24A、24Bの回転をロックするように構成されている。より具体的に説明すると、一方向クラッチ50は、第1及び第2電動機2A、2B側の順方向(車両3を前進させる際の回転方向)の回転動力が車輪Wr側に入力されるときに係合状態(作動状態)となるとともに第1及び第2電動機2A、2B側の逆方向の回転動力が後輪Wr側に入力されるときに非係合状態(非作動状態)となり、後輪Wr側の順方向の回転動力が電動機2A、2B側に入力されるときに非係合状態となるとともに後輪Wr側の逆方向の回転動力が電動機2A、2B側に入力されるときに係合状態となる。
このように本実施形態の後輪駆動装置1では、第1及び第2電動機2A、2Bと後輪Wrとの動力伝達経路上に一方向クラッチ50と油圧ブレーキ60とが並列に設けられている。なお、油圧ブレーキ60は、車両3の走行状態や一方向クラッチ50の係合・非係合状態に応じて、オイルポンプ70から供給されるオイルの圧力により、解放状態、弱締結状態、締結状態に制御される。例えば、車両3が第1及び第2電動機2A、2Bの力行駆動により前進する時(低車速時、中車速時)は、一方向クラッチ50が締結するため動力伝達可能な状態となるが油圧ブレーキ60が弱締結状態に制御されることで、第1及び第2電動機2A、2B側からの順方向の回転動力の入力が一時的に低下して一方向クラッチ50が非係合状態となった場合にも、第1及び第2電動機2A、2B側と車輪Wr側とで動力伝達不能になることが抑制される。また、車両3が内燃機関4及び/又は電動機5の力行駆動により前進する時(高車速時)は、一方向クラッチ50が非係合となりさらに油圧ブレーキ60が解放状態に制御されることで、第1及び第2電動機2A、2Bの過回転が防止される。一方、車両3の後進時や回生時には、一方向クラッチ50が非係合となるため油圧ブレーキ60が締結状態に制御されることで、第1及び第2電動機2A、2B側からの逆方向の回転動力が後輪Wr側に出力され、又は後輪Wr側の順方向の回転動力が第1及び第2電動機2A、2B側に入力される。
また、図5、図8、及び図9に示すように、中央ケース11Mの第1及び第2円筒壁43、44と左右分割壁45の外周面は、ブリーザ室41を形成する以外の部分において外部に露出しており、第1及び第2円筒壁43、44と左右分割壁45の外周面には、その軸方向両端部から半径方向に張り出した一対の張り出し部101,102が形成されている。
そして、第1及び第2円筒壁43、44と左右分割壁45の周囲で、斜め前方且つ下方には、一対の張り出し部101,102と、底壁103と、上壁104と、によって環状、より具体的には略四角筒状の堤部100が画成される。堤部100の先端面は、後述の蓋部材72が当接して固定される蓋部材固定部105bをなし、外側に向かって開口する前方開口部105aの外縁を形成する。そして、第1及び第2円筒壁43、44と左右分割壁45の外周面と、堤部100と、蓋部材72と、によって、後述の流体流路部材としてのストレーナ71を収容し、オイルを貯留する容積室としてのストレーナ収容室105が形成される。
ストレーナ収容室105の下方は、電動機2A、2Bのロータ15A、15Bの下端が油没しない程度の油面高さ(図2中、Hで示されている。)となるようにして、第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bの潤滑及び/又は冷却に供されるオイルを貯留する貯留部となっている。
ストレーナ収容室105を形成する一対の張り出し部101,102には、左貯留部RLとストレーナ収容室105とを連通する貫通孔107a,107bと、右貯留部RRとストレーナ収容室105とを連通する貫通孔(図示せず)と、がそれぞれ形成されている。これにより、左貯留部RLと右貯留部RRは、ストレーナ収容室105を介して連通する。
また、前方開口部105aは、このストレーナ収容室105の貯留部と重なる位置に形成される。ストレーナ収容室105の前方開口部105aは、電動オイルポンプ70が取り付けられる別体部材である蓋部材72によって塞がれている。
図6に示すように、蓋部材72には、ケース11の蓋部材固定部105bと対応するように、略四角形状の端面を有するケース固定部72aが設けられる。図5、図6、及び図10に示すように、電動オイルポンプ70は、蓋部材72に形成されたケース固定部72aと、ストレーナ収容室105の前方開口部105aに形成された蓋部材固定部105bと、を複数のボルト106により締結固定することで、ストレーナ収容室105の前方開口部105aに取り付けられる。
従って、ケース11に取り付けられた電動オイルポンプ70は、図5に示すように、第1及び第2電動機2A、2Bの軸方向と直交し、第1及び第2電動機2A、2Bから等距離に位置する仮想平面Pと交差する位置に配置される。また、電動オイルポンプ70は、第1及び第2電動機2A、2Bの軸方向において、第1及び第2電動機2A、2Bに対して第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bと同じ中央側(一方側)に配置される。さらに、電動オイルポンプ70は、第1及び第2電動機2A、2Bの軸方向において第1及び第2円筒壁43、44とオーバーラップしており、従って、電動オイルポンプ70と第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bの少なくとも一部(本実施形態では、リングギヤ24A、24B及び第2ピニオン27A、27B)が第1及び第2電動機2A、2Bの軸方向においてオーバーラップする。
図6及び図7に示すように、電動オイルポンプ70は、いわゆる、トロコイドポンプであり、位置センサレス・ブラシレス直流モータからなる電動機90によって駆動され、高圧モードと低圧モードの少なくとも2つのモードで運転可能となっており、PID制御で制御されている。そして、吸引部93に設けられた図示しないインナーロータまたはアウターロータを回転することで吐出量を調整しながら、ストレーナ71から電動オイルポンプ70及び蓋部材72に設けられたオイル吸入路94に流入したオイルを電動オイルポンプ70及び蓋部材72に設けられたオイル吐出路95に吐出する。
図6に示すように、蓋部材72には、ケース固定部72aより内側に、オイル吸入路94の一部を構成するストレーナ挿入孔94aと、後述するオイルセンサ80を挿入するセンサ挿入孔82と、が穿設されてストレーナ収容室105の内部側と外部側とを連通する。そして、センサ挿入孔82が蓋部材72の車幅方向略中央に形成されることで、センサ挿入孔82に挿入されるオイルセンサ80は、ストレーナ収容室105の車幅方向略中央に配置されることになる。
ストレーナ71は、その一端側である下面に設けられ、オイルを吸入可能な吸入口71aと、他端側に設けられ、オイルが排出される排出口71bと、を有する。そして、ストレーナ71は、排出口71bが蓋部材72のストレーナ挿入孔94aに挿入され、油路形成カバー96を蓋部材72に締結するボルト69で共締めされることで、蓋部材72のみに着脱可能に固定される。また、ストレーナ71は、吸入口71aから吸入されたオイルの異物を除去し、異物が除去されたオイルは、電動オイルポンプ70へと送られる。電動オイルポンプ70及び蓋部材72とともにオイル吸入路94を構成する他の別体部材であるストレーナ71は、蓋部材72のケース固定部72aよりもケース11側に延出しており、ストレーナ71の吸入口71aは、蓋部材72がケース11に固定された取付状態において、ストレーナ収容室105の貯留部内に位置する。
図11に示すように、蓋部材72の外部側面には、オイル吸入路94及びオイル吐出路95よりも下方に、後方側に凹状に窪んだセンサ収容空間SSが確保されている。センサ収容空間SSには、オイル温度を検出するオイルセンサ80が蓋部材72にボルト(不図示)で外部(前方)側から固定され、オイルセンサ80のセンサ基部80aが蓋部材72から外部側に露出し、先端側に位置する検温部80bが蓋部材72のセンサ挿入孔82を通ってストレーナ収容室105に位置している。なお、ケース11には、外部に露出するセンサ基部80aの前方及び下方を覆うセンサカバー130で取り付けられている。
ストレーナ収容室105に位置するオイルセンサ80の検温部80bは、ストレーナ71の下方で、且つ、ストレーナ71の下面前方に形成された凹部71c内に一部が位置すると共に、ストレーナ71の下面に設けられた吸入口71aに近接して配置される。また、オイルセンサ80の検温部80bの最下部と貯留部の底壁103との距離t1と、吸入口71aの最下部と貯留部の底壁103との距離t2と、が略等しくなっている。
吸入口71a及び検温部80bは、底壁103に近すぎると底壁103と干渉するおそれがあるとともに、抵抗が増加して吸引性能が悪化したり、底壁103の温度の影響を受けやすくなる。一方で、底壁103から遠すぎると油面上に露出するおそれが高くなる。しかしながら、蓋部材72に予めオイルセンサ80とストレーナ71を取り付けることで、底壁103に対するこれらの相対的な位置ずれが発生しづらくなり、これらの部材を適切な位置に配置することが可能となる。
このように蓋部材72には、外部側にオイルセンサ80が固定されるとともに、内部側にストレーナ71が固定される。そして、オイルセンサ80とストレーナ71とは、鉛直方向視で互いにオーバーラップするように配置され、且つ、水平方向視で互いにオーバーラップするように配置される。これらストレーナ71及びオイルセンサ80は、図6に示すように、前後方向視で、蓋部材72のケース固定部72aを投影した外縁投影領域内に納まるように形成されている。
また、ストレーナ71の吸入口71aは、図11に示すように、オイルセンサ80よりも鉛直方向視で貯留部の中央部寄りに位置する。貯留部の中央部は、周縁部に比べ油面変動が相対的に小さいため、中央部寄りにストレーナ71を配置することでエアの噛み込みが抑制される。なお、オイルセンサ80も油面から露出することは好ましくないため底壁103近傍に配置されているが、露出に対する耐性は吸入口71aよりも高い。
また、図6に示すように、蓋部材72の内部側には、蓋部材72とともに、後述する油圧回路99の油路の一部を画成する油路形成カバー96がボルト69によって固定されている。蓋部材72には、蓋部材72と油路形成カバー96との間に位置するよう、下から順に、後述する弁部材としての低圧油路切替弁73、ブレーキ油路切替弁74、リリーフ弁84が設けられている。図10に示すように、蓋部材72を介して油路形成カバー96の反対側には、ソレノイド弁83が取り付けられており、通電によって、低圧油路切替弁73とブレーキ油路切替弁74との間に設けられた後述するパイロット油路81の連通・遮断を行う。
油路形成カバー96には、ストレーナ収容室105内で、中央ケース11Mの外周面に形成された、後述するブレーキ油路77の作動室用ポート108aと、第1及び第2電動機2A、2B及び第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bの冷却/潤滑用ポート108bと、にそれぞれ接続される、2つの出口パイプ97a、97bが取り付けられている。
これら出口パイプ97a、97bは、上述したように、電動オイルポンプ70が取り付けられた蓋部材72がストレーナ収容室105の前方開口部105aに取り付けられた状態において、作動室用ポート108aと、冷却/潤滑用ポート108bと、にそれぞれ接続される。また、同時に、ストレーナ収容室105の貯留部と重なる位置に形成された前方開口部105aは蓋部材72によって閉塞され、油路形成カバー96を含む蓋部材72の内壁面は、ストレーナ収容室105の壁面を構成する。
また、ケース11には、図12に示すように、作動室用ポート108aから作動室Sまで連通するブレーキ油路77が形成されるとともに、図8及び図9に示すように、冷却/潤滑用ポート108bから中央ケース11Mの前部で鉛直方向に延びる前方鉛直油路109と、前方鉛直油路109から左右に分岐し、各ケース11A,11B,11Mの前方を水平方向にそれぞれ延びる前方水平油路110A、110Bと、が形成されている。これにより、第1及び第2電動機2A、2Bへオイルを供給するとともに、車軸10A、10B内を経由して第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bにオイルを供給する。
ここで、本実施形態の後輪駆動装置1では、図9に示すように、中央ケース11Mの外周面の下方に、堤部100に取り囲まれるように、中央ケース11Mの内部と外部とを連通する連通穴としての内部確認穴140が設けられている。
図2には、内部確認穴140を介してケース11外部から視認可能な範囲が140Sとして破線で示されている。内部確認穴140は、第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bのうち、油圧ブレーキ60がその径方向外側に配置されていない変速機、すなわち、第1遊星歯車式減速機12Aの径方向外側に配置されている。また、内部確認穴140は、油面高さHよりも下方に配置されて、ストレーナ収容室105の貯留部と連通しており、当該内部確認穴140を介してケース11内外のオイル流動が許容されている。
さらに、内部確認穴140は、蓋部材72と共に電動オイルポンプ70及びストレーナ71を堤部100の先端面(蓋部材固定部105b)から外した状態で、すなわち図9に示すような状態で、ケース11の外部から、一方向クラッチ50や、第1遊星歯車式減速機12Aのリングギヤ24A及びプラネタリキャリア23A、左右分割壁45、第3円筒壁46等を視認可能な位置に配置される。
したがって、ケース11に内部部品を組み付けた後であっても、蓋部材72を電動オイルポンプ70やストレーナ71と共に蓋部材固定部105bから外すだけで、内部確認穴140を介して、第1遊星歯車式減速機12Aの誤組立や、内部部品のクリアランス不良等を確認することが可能である。また、第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bのリングギヤ24A、24B同士が連結されているので、内部確認穴140を介して直接視認することができない第2遊星歯車式減速機12Bの不具合も認知することが可能である。
なお、内部確認穴140を、径方向外側に油圧ブレーキ60が配置されている第2遊星歯車式減速機12Bの径方向外側に配置する構成は、油圧ブレーキ60の径方向外側からリングギヤ24B等を視認することが困難であることから望ましくない。
次に、図12を参照して、上述した電動機2A、2Bの冷却及び/または潤滑と、変速機12A、12Bの潤滑とを行う油圧回路99について説明する。
油圧回路99は、ストレーナ収容室105に配設したストレーナ71から吸入され、電動オイルポンプ70から吐出されるオイルを低圧油路切替弁73とブレーキ油路切替弁74とを介して油圧ブレーキ60の作動室Sに給油可能に構成されるとともに、低圧油路切替弁73を介して第1及び第2電動機2A、2B及び第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12B(以下、「被潤滑・冷却部」とも称す)に供給可能に構成される。なお、油圧回路99には、ブレーキ油路77の油圧及び温度等を検出するセンサ92(図5及び図6参照)が設けられている。
低圧油路切替弁73は、ライン油路75を構成する電動オイルポンプ70側の第1ライン油路75aと、ライン油路75を構成するブレーキ油路切替弁74側の第2ライン油路75bと、被潤滑・冷却部に連通する第1低圧油路76aと、被潤滑・冷却部に連通する第2低圧油路76bと、に接続される。また、低圧油路切替弁73は、第1ライン油路75aと第2ライン油路75bとを常時連通させるとともにライン油路75を第1低圧油路76a又は第2低圧油路76bに選択的に連通させる弁体73aと、弁体73aをライン油路75と第1低圧油路76aとを連通する方向(図12において右方)へ付勢するスプリング73bと、弁体73aをライン油路75の油圧によってライン油路75と第2低圧油路76bとを連通する方向(図12において左方)へ押圧する油室73cと、を備える。従って、弁体73aは、スプリング73bによってライン油路75と第1低圧油路76aとを連通する方向(図12において右方)へ付勢されるとともに、図中右端の油室73cに入力されるライン油路75の油圧によってライン油路75と第2低圧油路76bとを連通する方向(図12において左方)へ押圧される。
ここで、スプリング73bの付勢力は、電動オイルポンプ70が低圧モードで運転中に油室73cに入力されるライン油路75の油圧では、弁体73aが移動せずライン油路75を第2低圧油路76bから遮断し第1低圧油路76aに連通させるように設定され(以下、この弁体73aの位置を低圧側位置と呼ぶ。)、電動オイルポンプ70が高圧モードで運転中に油室73cに入力されるライン油路75の油圧では、弁体73aが移動してライン油路75を第1低圧油路76aから遮断し第2低圧油路76bに連通させるように設定されている(以下、この弁体73aの位置を高圧側位置と呼ぶ。)。
ブレーキ油路切替弁74は、ライン油路75を構成する第2ライン油路75bと、油圧ブレーキ60に接続されるブレーキ油路77と、ハイポジションドレン78を介して貯留部79と、に接続される。また、ブレーキ油路切替弁74は、第2ライン油路75bとブレーキ油路77とを連通・遮断させる弁体74aと、弁体74aを第2ライン油路75bとブレーキ油路77とを遮断する方向(図12において右方)へ付勢するスプリング74bと、弁体74aをライン油路75の油圧によって第2ライン油路75bとブレーキ油路77とを連通する方向(図12において左方)へ押圧する油室74cと、を備える。従って、弁体74aは、スプリング74bによって第2ライン油路75bとブレーキ油路77とを遮断する方向(図12において右方)へ付勢されるとともに、油室74cに入力されるライン油路75の油圧によって第2ライン油路75bとブレーキ油路77とを連通する方向(図12において左方)へ押圧可能にされる。
スプリング74bの付勢力は、電動オイルポンプ70が低圧モード及び高圧モードで運転中に、油室74cに入力されるライン油路75の油圧で、弁体74aを閉弁位置から開弁位置に移動させて、ブレーキ油路77をハイポジションドレン78から遮断し第2ライン油路75bに連通させるように設定されている。即ち、電動オイルポンプ70が低圧モードで運転されても高圧モードで運転されても、油室74cに入力されるライン油路75の油圧がスプリング74bの付勢力を上回り、ブレーキ油路77をハイポジションドレン78から遮断し第2ライン油路75bに連通させる。
第2ライン油路75bとブレーキ油路77とを遮断した状態においては、油圧ブレーキ60はブレーキ油路77とハイポジションドレン78を介して貯留部79に連通される。ここで、貯留部79は、ストレーナ収容室105よりも鉛直方向で高い位置、より好ましくは、貯留部79の鉛直方向最上部が、油圧ブレーキ60の作動室Sの鉛直方向最上部と鉛直方向最下部との中分点よりも鉛直方向で高い位置となるように配設される。従って、ブレーキ油路切替弁74が閉弁した状態においては、油圧ブレーキ60の作動室Sに貯留していたオイルが直接ストレーナ収容室105に排出されず、貯留部79に排出されて蓄えられるように構成される。なお、貯留部79から溢れたオイルは、ストレーナ収容室105に排出されるように構成される。また、ハイポジションドレン78の貯留部側端部78aは、貯留部79の底面に接続される。
ブレーキ油路切替弁74の油室74cは、パイロット油路81とソレノイド弁83を介してライン油路75を構成する第2ライン油路75bに接続可能にされている。ソレノイド弁83は、ECU(図示せず)によって制御される電磁三方弁で構成されており、ECUによるソレノイド弁83の非通電時に第2ライン油路75bをパイロット油路81に接続し、油室74cにライン油路75の油圧を入力する。
また、ソレノイド弁83は、通電状態において、油室74cに貯留していたオイルが、排出油路83aを介してストレーナ収容室105に排出され、第2ライン油路75bとパイロット油路81とが遮断される。
また、油圧回路99では、第1低圧油路76aと第2低圧油路76bは下流側で合流して共通の低圧共通油路76cを構成しており、合流部には、低圧共通油路76cのライン圧が所定圧以上になった場合に低圧共通油路76c内のオイルをリリーフドレン86を介して貯留部79に排出させ、油圧を低下させるリリーフ弁84が接続されている。なお、リリーフドレン86の油貯留部側端部86aは貯留部79の鉛直方向最上部よりも高い位置に配置される。
ここで、第1低圧油路76aと第2低圧油路76bには、それぞれ流路抵抗手段としてのオリフィス85a、85bが形成されており、第1低圧油路76aのオリフィス85aが第2低圧油路76bのオリフィス85bよりも大径となるように構成されている。従って、第2低圧油路76bの流路抵抗は第1低圧油路76aの流路抵抗よりも大きく、電動オイルポンプ70を高圧モードで運転中における第2低圧油路76bでの減圧量が、電動オイルポンプ70を低圧モードで運転中における第1低圧油路76aでの減圧量よりも大きくなって、高圧モード及び低圧モードにおける低圧共通油路76cの油圧は略等しくなっている。
このように第1低圧油路76aと第2低圧油路76bとに接続された低圧油路切替弁73は、電動オイルポンプ70が低圧モードで運転中においては、油室73c内の油圧よりもスプリング73bの付勢力が勝りスプリング73bの付勢力により弁体73aが低圧側位置に位置して、ライン油路75を第2低圧油路76bから遮断し第1低圧油路76aに連通させる。第1低圧油路76aを流れるオイルは、オリフィス85aで流路抵抗を受けて減圧され、低圧共通油路76cを経由して被潤滑・冷却部に至る。一方、電動オイルポンプ70が高圧モードで運転中においては、スプリング73bの付勢力よりも油室73c内の油圧が勝りスプリング73bの付勢力に抗して弁体73aが高圧側位置に位置して、ライン油路75を第1低圧油路76aから遮断し第2低圧油路76bに連通させる。第2低圧油路76bを流れるオイルは、オリフィス85bでオリフィス85aよりも大きな流路抵抗を受けて減圧され、低圧共通油路76cを経由して被潤滑・冷却部に至る。
従って、電動オイルポンプ70が低圧モードから高圧モードに切り替わると、ライン油路75の油圧の変化に応じて自動的に流路抵抗の小さい油路から流路抵抗の大きい油路に切り替わるので、高圧モードのときに被潤滑・冷却部に過度のオイルが供給されることが抑制される。
また、低圧共通油路76cから被潤滑・冷却部に至る油路には、他の流路抵抗手段としての複数のオリフィス85cが設けられている。複数のオリフィス85cは、第1低圧油路76aのオリフィス85aの最小流路断面積の方が複数のオリフィス85cの最小流路断面積よりも小さくなるように設定されている。即ち、複数のオリフィス85cの流路抵抗よりも第1低圧油路76aのオリフィス85aの流路抵抗の方が大きく設定されている。このとき、複数のオリフィス85cの最小流路断面積は、各オリフィス85cの最小流路断面積の総和である。これにより、第1低圧油路76aのオリフィス85aと第2低圧油路76bのオリフィス85bで所望の流量を流すことが調整可能になっている。
以上説明したように、本実施形態の後輪駆動装置1によれば、第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bのリングギヤ24A、24B同士が互いに連結されるので、両方のリングギヤ24A、24Bに油圧ブレーキ60を設ける必要がなく、何れか一方に単一の油圧ブレーキ60を設けるだけで良い。したがって、油圧ブレーキ60を、第2遊星歯車式減速機12Bの径方向外側に配置すると共に、ケース11に、第1遊星歯車式減速機12Aの径方向外側に配置されて、ケース11の内部と外部とを連通する内部確認穴140を設けることができる。そして、当該内部確認穴140を介して第1遊星歯車式減速機12Aの誤組立やクリアランス不良などを、ケース11を分解せずに確認することが可能となる。
また、上述したように第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bのリングギヤ24A、24B同士が互いに連結されるので、内部確認穴140が配置されない第2遊星歯車式減速機12Bの不具合も認知することが可能である。
また、内部確認穴140が、互いに連結されたリングギヤ24A、24Bのうち、一方のリングギヤ24Aを視認可能な位置に配置されるので、他方のリングギヤ24Bの不具合を認知することが容易となる。
また、内部確認穴140を直接閉塞するのではなく、堤部100と蓋部材72とで閉塞するので、ケース11の外周面と堤部100と蓋部材72とによって形成される空間を活用可能となる。
また、ケース11の外周面と堤部100と蓋部材72とによって形成されるストレーナ収容室105を、第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bの冷却若しくは潤滑のための貯留部として活用可能である。また、ストレーナ収容室105がケース11内部と直接連通せず、内部確認穴140によってのみケース11内部と連通するので、過剰なケース11内外のオイル流動を抑制可能である。
また、蓋部材72には、電動オイルポンプ70、ストレーナ71、低圧油路切替弁73、ブレーキ油路切替弁74、リリーフ弁84、オイルセンサ80等の各部材が取り付けられる。したがって、内部確認穴140を介してケース11の内部を視認する際に、ケース11から蓋部材72と共に各部材を取り外すことが可能であり、作業が簡便となる。また、蓋部材72をケース11に固定する際も、各部材を前もって蓋部材72に取付けることが可能なので、ケース11に対する各部材の相対的な位置ずれの発生を抑制することができる。
また、第1遊星歯車式減速機12Aに加えて、一方向クラッチ50も視認可能とすることで、一方向クラッチ50の状態もケース11を分解せずに確認可能となる。
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。
例えば、上述の実施形態においては、第2遊星歯車式減速機12Bの径方向外側に油圧ブレーキ60が配置され、軸方向で対向するリングギヤ24A、24Bの連結部30A、30B間の空間部内に一方向クラッチ50が配置されていたが(図2及び図3参照)、この構成に限定されず、第2遊星歯車式減速機12Bの径方向外側に一方向クラッチ50が配置され、連結部30A、30B間の空間部内に油圧ブレーキ60が配置される構成でも構わない。このように構成した場合、ケース11に設けられる内部確認穴140は、径方向外側に一方向クラッチ50が配置されない第1遊星歯車式減速機12Aの径方向外側に配置される。そして、当該内部確認穴140を介して第1遊星歯車式減速機12Aの誤組立やクリアランス不良などを、ケース11を分解せずに確認することが可能である。
例えば、図13及び図14に示すように、第2遊星歯車式減速機12Bの径方向外側とケース11との間の空間に油圧ブレーキ60が設けられ、第1遊星歯車式減速機12Aの径方向外側とケース11との間の空間に一方向クラッチ50が設けられる後輪駆動装置1にも、本発明は適用可能である。なお、図13及び図14中、第1実施形態と同一の部材には、同一符号を付している。
この後輪駆動装置1では、第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bのリングギヤ24A、24Bの小径部29A、29Bが止め輪244により連結され、連結されたリングギヤ24A、24Bはケース11の円筒状支持部242に軸受243を介して回転自在に支持されている。円筒状支持部242は、ケース11の略中央部で第1遊星歯車式減速機12A側に偏奇した位置から径方向内側に伸びる支持壁239の内径側端部から第1遊星歯車式減速機12A側に延設されている。
また、第2遊星歯車式減速機12Bのリングギヤ24Bの径方向外側には油圧ブレーキ60が設けられ、油圧ブレーキ60及び一方向クラッチ50の軸方向における間であって、軸受243の外径側には油圧ブレーキ60を作動するピストン37が配置されている。
油圧ブレーキ60は、ケース11の内周面にスプライン嵌合された複数の固定プレート35と、リングギヤ24Bの外周面にスプライン嵌合された複数の回転プレート36が軸方向に交互に配置され、これらのプレート35、36が環状のピストン37によって係合及び開放操作されるようになっている。ピストン37は、ケース11と支持壁239と円筒状支持部242間に形成された環状のシリンダ室238に進退自在に収容されており、シリンダ室238への高圧オイルの導入によってピストン37を前進させ、シリンダ室238からオイルを排出することによってピストン37を後退させる。
また、さらに詳細には、ピストン37は、軸方向前後に第1ピストン壁263と第2ピストン壁264を有し、これらのピストン壁263,264が円筒状の内周壁265によって連結されている。したがって、第1ピストン壁263と第2ピストン壁264の間には径方向外側に開口する環状空間が形成されているが、この環状空間は、シリンダ室238の外壁内周面に固定された仕切部材266によって軸方向前後に仕切られている。ケース11の支持壁239と第2ピストン壁264の間は高圧オイルが直接導入される第1作動室とされ、仕切部材266と第1ピストン壁263の間は、内周壁265に形成された貫通孔を通して第1作動室と導通する第2作動室とされている。第2ピストン壁264と仕切部材266の間は大気圧に導通している。
この油圧ブレーキ60では、第1作動室と第2作動室に高圧オイルが導入され、両プレート35、36がピストン37によって押し付けられると、両プレート35、36間の摩擦係合によって互いに連結されたリングギヤ24A、24Bに制動力が作用し固定され、その状態からピストン37による係合が開放されると、連結されたリングギヤ24A、24Bの自由な回転が許容される。
第1遊星歯車式減速機12Aのリングギヤ24Aの径方向外側には一方向クラッチ50が設けられる。一方向クラッチ50は、インナーレース51とアウターレース52との間に多数のスプラグ53を介在させたものであって、そのインナーレース51がリングギヤ24Aのギヤ部28Aと一体に構成されている。またアウターレース52は、ケース11の内周面により位置決めされるとともに、回り止めされている。そして、一方向クラッチ50は、車両3が第1及び第2電動機2A、2Bの動力で前進する際に係合してリングギヤ24A、24Bの回転をロックするように構成されている。
また、中央ケース11Mの外周面の下方には、中央ケース11Mの内部と外部とを連通する連通穴としての内部確認穴140(図9参照)が設けられている。図13には、内部確認穴140を介してケース11外部から視認可能な範囲が140S´として破線で示されている。
内部確認穴140は、第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bのうち、その径方向外側に油圧ブレーキ60が配置されておらず、一方向クラッチ50が配置されている第1遊星歯車式減速機12Aの径方向外側に配置されている。より詳細に、内部確認穴140は、ケース11の外部から、一方向クラッチ50や、第1遊星歯車式減速機12Aのリングギヤ24A及びプラネタリキャリア23A、支持壁239、円筒状支持部242、軸受243等を視認可能な位置に配置される。
なお、本変形例のように内部確認穴140を、径方向外側に一方向クラッチ50が配置されている第1遊星歯車式減速機12Aの径方向外側に配置する場合であっても、油圧ブレーキ60のように固定プレート35及び回転プレート36等が密に配置された構成でないため、内部確認穴140を介して一方向クラッチ50よりも径方向内側に位置するリングギヤ24A等の部材を視認することが可能である。
以上説明したように、本変形の後輪駆動装置1によれば、上述の実施形態と同様の効果を奏することが可能である。
また、上述の実施形態及び変形例では、内部確認穴140は、互いに連結されたリングギヤ24A、24Bのうち、一方を視認可能な位置に配置されるとしたが、第1及び第2遊星歯車式減速機12A、12Bのうち、油圧ブレーキ60がその径方向外側に配置されていない変速機の径方向外側に配置される限り、任意の部材を視認可能な位置に設けてよい。例えば、内部確認穴140は、リングギヤ24A、24B及びプラネタリキャリア23A、23Bを互いに相対回転可能に支承するスラストニードル軸受25A、25Bや、プラネタリキャリア23A、23Bを隔壁18A、18Bに支持する軸受33A、33Bを視認可能な位置に設けても構わない。
また、堤部100の先端(蓋部材固定部105b)に当接して、固定される蓋部材72は、電動オイルポンプ70が別体の蓋部材72に取り付けられる構成に限定されるものでなく、電動オイルポンプ70の一側面が蓋部材72をなしてストレーナ収容室105の前方開口部105aを閉塞するような構成としてもよい。
また、上記実施形態では、冷却、潤滑に供される液状流体としてオイルを用いたが、他の液状流体を用いてもよい。また、液状流体の性状を検出する液状流体センサとしてオイル温度を検出するオイルセンサ80を例示したが、これに限らずオイル粘度、オイル劣化、オイルレベルを検出するオイルセンサを用いてもよい。
また、前輪駆動装置6は内燃機関4を用いずに電動機5を唯一の駆動源とするものでもよい。