JP5577563B2 - 亜鉛系めっき鋼材、亜鉛系めっき鋼材用の表面被覆処理剤、及び亜鉛系めっき鋼材の表面被覆処理方法 - Google Patents

亜鉛系めっき鋼材、亜鉛系めっき鋼材用の表面被覆処理剤、及び亜鉛系めっき鋼材の表面被覆処理方法 Download PDF

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Description

本発明は、表面の少なくとも一部に防錆皮膜が被覆形成された金属部材、防錆皮膜を被覆形成するための表面被覆処理剤、及び、防錆皮膜を被覆形成する表面被覆処理方法に関する。
各種金属材料の耐食性を改良するため、多くの場合、無機系、有機系、又は、両者を組み合せた防錆皮膜で金属表面を被覆するが、200℃を超える高温環境下でも長時間使用できる皮膜としては、耐熱性の観点から無機系皮膜、耐熱有機成分からなる皮膜、又は、両者を組み合せた無機-耐熱有機複合皮膜である。これらの内、耐熱有機成分(例えば、芳香族系の耐熱樹脂や有機化合物等)を含むものは、金属表面への皮膜形成材料となる防錆処理液や樹脂フィルム等が高価であったり、高温でないと皮膜形成反応や金属への融着等が困難であったりするものが殆どで、実用上は、金属材料の耐熱性防錆皮膜として無機系皮膜に限定される。
そして、工業的に広く活用されている無機系防錆処理としては、クロメート又はリン酸塩による化成処理が代表的である。特に、クロメート処理は、金属材料表面に形成された6価クロムを含む不働態皮膜が、腐食因子に対する優れた遮蔽性と皮膜損傷に対する自己修復機能とを発揮するため、非常に有効な防錆処理であり、家電、建材、自動車部品等の分野で広く用いられている。さらに、鋼板メーカのめっきラインでクロメート処理する場合、十分な防錆性を発揮する皮膜付着量(膜厚)を得るまでの処理時間が数秒〜数十秒と短いため、通常のラインスピードでの連続短時間処理が可能なことも大きな利点である。
ところで、近年の地球環境問題に対する関心の高まりを背景に、6価及び3価クロム(特に、環境負荷性の高い6価クロム)を全く含まない防錆皮膜で被覆された金属材料が求められており、クロメートを含まない、6価及び3価クロムフリー防錆皮膜で被覆された金属材料の開発が進められている。6価及び3価クロムを含まない無機系化合物の中には、ある程度の腐食抑制機能を持つ皮膜を金属材料表面に形成するものが既に見出されており、クロメート処理液の主成分であるクロム酸塩と同様に、古くから金属材料の防錆皮膜の主成分として利用されている。
例えば、クロメート処理と並ぶ代表的な無機系処理であるリン酸塩処理では、6価及び3価クロムを含まないリン酸亜鉛、リン酸マンガン等を主成分とする化成処理皮膜を金属表面に形成する。これらの多くは、自動車外板、家電ハウジング等の金属材料表面の下地処理として広く用いられており、上塗り塗装後の耐食性や上塗り塗膜の密着性を高める。また、リン酸マンガン系の皮膜は、耐摩耗性を有するため、金属加工時の潤滑用途や摺動部材としても用いられている。
しかしながら、リン酸亜鉛等のリン酸塩系皮膜は、結晶性でポーラスなため、腐食因子に対するバリア性に劣り、防錆力はクロメート皮膜のそれに全く及ばない。また、リン酸塩結晶を金属表面上に均一にかつ速やかに析出させるため、結晶核形成剤(例えば、チタンコロイド)で予め金属表面調整を実施したり、リン酸塩処理液の成分濃度や温度を結晶析出の最適状態に制御したりしなければならない。
このため、リン酸塩処理は、1工程処理で非晶質皮膜を形成できるクロメート処理に比べ、基本的に金属表面調整とリン酸塩皮膜形成との2工程処理が必要で、かつ操業管理が煩雑となる問題点を有している。さらに、皮膜の形成性、摺動性、上塗り塗膜の耐水二次密着性等を高めるため、リン酸塩処理液には、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(以下、化学物質管理促進法又はPRTR法と称す)の対象となる第一種指定化学物質を含む場合が多い(例えば、耐摩耗性の皮膜形成剤としてリン酸マンガン、皮膜の結晶核形成剤としてニッケルイオンやマンガンイオン、金属表面エッチング剤としてフッ化水素酸、等)。この化学物質管理促進法の対象となる第一種指定化学物質は、取り扱いに当たり、環境への排出量の届け出や製品安全データシート(以下、MSDS(Material Safety Data Sheet)と称す)の交付等が義務付けられており、環境負荷物質として、工業的な製造、管理面から大きな制約を受ける問題点を有している。
また、PRTR法の指定化学物質を使わないようにする動きの例として、ニッケルイオンを含まないリン酸塩処理液による化成処理方法が開示されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この特許文献1に記載の構成では、従来技術と同様、金属表面調整後にリン酸塩化成処理が続く煩雑な2工程処理であり、改良技術としては不十分である。
また、他の無機系処理の例として、酸化力の強い過マンガン酸塩をベースとした処理液で金属表面を処理すると、生成する防錆皮膜は金属材料の腐食をかなり軽減することが知られている(例えば、非特許文献1及び非特許文献2参照)。しかしながら、これら非特許文献1及び非特許文献2に記載の構成でも、安定性や効力においてクロム酸塩には及ばない。また、バナジン酸塩、モリブデン酸塩、タングステン酸塩等は、クロム酸塩と同様のオキソ酸化合物であり、多くの金属面を不働態化するが、単独使用ではクロム酸塩による皮膜の防錆力には及ばない。また、タングステン酸塩を除くこれらの金属系化合物の多くは、6価クロムほどではないものの環境負荷性、安全性の面からも問題があり、例えば、バナジン酸塩には毒性がある。さらに、過マンガン酸塩、モリブデン酸塩は、6価及び3価クロム化合物と同様、PRTR法の対象となる第一種指定化学物質に該当し、環境負荷物質として、工業的な製造や管理面から大きな制約を受ける問題点を有している。
さらに、他の無機系防錆処理の例として、シリカコロイドを主体とする水性処理液を用いた6価及び3価クロムフリー防錆処理技術が開示されている(例えば、特許文献2参照)。しかしながら、この特許文献2に記載の構成では、金属表面を処理して得た皮膜にクロメート処理に匹敵する防錆力を発現させるためには、PRTR法の第一種指定化学物質であるコバルト化合物の処理液への添加が必須であり、環境負荷物質を含む処理液として、工業的な製造、管理面から大きな制約を受ける。一方、有害性が殆どない無機系防錆処理の例として、ポリリン酸塩、ポリけい酸塩等の無機系高分子で金属表面に安定な保護皮膜を形成する技術が知られている(例えば、非特許文献2及び非特許文献3参照)。しかしながら、これら非特許文献2及び非特許文献3に記載の構成では、得られた皮膜はクロメート処理皮膜の防錆力に及ばないのが現状である。
一方、金属製の自動車部材、家電・オフィスオートメーション機器部材、部品類等の製造は、金属板に潤滑油又は潤滑性を有する薄い皮膜を被覆してから、所望の形状に加工するプレス成形工程を経る場合が多い。特に、鋼製の部材、部品類の製造では、多くの場合、防錆性を高めるために亜鉛又は亜鉛系合金めっきを施した亜鉛系めっき鋼板を原板とし、これらに潤滑油又は潤滑性を有する薄い皮膜を被覆してから、所望の形状にプレス成形する。このような金属板のプレス成形では、組立工程数の削減のために複雑形状を持つ部材を一体成形したり、高い加工精度を得るために、[(原板厚-金型のポンチとダイ間のクリアランス)/原板厚]×100で表せる成形時の扱き率を高めて絞り成形するニーズが高まってきており、近年では特に、生産性を高め、製造コストを削減するために、前記の一体成形や絞り成形を高速で行ったり、何百、何千回もの連続成形を行う場合が増えている。
金属板に潤滑油を塗布してプレス成形する方法は最も一般的に行なわれているが、前記のような過酷なプレス成形環境では、高面圧、高扱き摺動下で潤滑油が押し退けられたり、連続成形中の温度上昇で潤滑油の粘度が低下することにより、原板と金型の摺動面に十分な潤滑油が保持できない。そのため、潤滑性が不足して、原板と金型の間にかじりが生じて成形不能になったり、原板表面を損傷し、成形後の表面外観を損なうと言う問題があった。特に、プレス成形の原板が前記の亜鉛系めっき鋼板の場合、鋼板と金型との潤滑性が不足すると、鋼板のめっき層と金型の間に著しいかじりが生じて成形不能になったり、めっき層が摺動で損傷するため、成形後の表面外観や耐食性が著しく損なわれる。
そこで、有機系又は無機系薄膜を被覆保護した金属板を、無塗油又は塗油状態でプレス成形する方法が開発された。有機系皮膜を用いる方法では、クロメート下地処理した金属板の上層に樹脂系潤滑皮膜を被覆した金属板を原板として、無塗油でプレス成形するのが一般的であり、クロメート下地処理は、金属板の耐食性を高め、かつ、金属面と上層の樹脂系潤滑皮膜との密着性を確保するために必要であった。
ところが、このような樹脂系潤滑皮膜を用いる方法は、前記の扱き率が0〜数%と低い軽度の扱き加工の場合、原板厚が金型のポンチとダイ間のクリアランスより薄く扱き加工でない場合、成形速度が高くない場合等、過酷でないプレス成形環境では潤滑効果を十分に発揮し、原板の表面外観や耐食性をあまり損なわずに成形できるが、前記のような過酷なプレス成形環境では、樹脂系皮膜が高面圧や高扱き摺動で損傷したり、連続成形による金型温度上昇で軟化し、少なくとも一部が剥離して粘着性の皮膜滓となる。これらの皮膜滓は、成形材に付着してその外観を損なったり、プレス金型表面に付着して以後の成形材に表面疵を付けることがあった。特に、プレス成形の原板が前記の亜鉛系めっき鋼板の場合、剥離した樹脂系皮膜は、プレス成形で生じた亜鉛系めっきの剥離粉を取り込んで粘着性の黒滓となり、成形材表面を黒化させて成形材の外観を著しく損なったり、黒滓が金型表面に付着して以後の成形材に表面疵を付けることが多かった。
また、無機系皮膜を用いる方法では、クロメート処理した金属板を原板として塗油状態でプレスする方法があり、クロメート皮膜が薄膜であるため、複雑形状を持つ部材の一体成形や高い扱き率での絞り成形を、高速、連続で行う等の過酷な成形環境でも皮膜滓の発生が少なく、成形後の成形材の耐食性も比較的良好であった。
しかしながら、前述したように、近年の地球環境問題に対する関心の高まりと共に、皮膜に6価及び3価クロム(特に環境負荷性の高い6価クロム)を含むクロメート処理金属板の使用を控えようとする動きが顕著になってきており、6価及び3価クロムフリーの皮膜で、かつ、前記のような過酷なプレス成形環境でプレス成形しても損傷し難く皮膜滓の発生が少ない、プレス成形後も比較的良好な耐食性を保てる新しい潤滑性防錆皮膜が求められていた。特に、プレス成形の原板が前記の亜鉛系めっき鋼板の場合、6価及び3価クロムフリーの皮膜で、かつ、前記のような過酷なプレス成形環境でプレス成形しても損傷し難く、表面黒化や黒滓発生が少ない、プレス成形後も比較的良好な耐食性を保てる新しい皮膜が求められていた。
クロメート処理した亜鉛系めっき鋼板を用いないようにする動きに呼応して、クロメート下地処理層を設けず、6価及び3価クロムフリーの樹脂系潤滑皮膜を被覆した潤滑性の亜鉛系めっき鋼板の開発が進められているが、複雑形状を持つ部材の一体成形や高い扱き率での絞り成形を、高速、連続で行う等の過酷な成形環境でプレス成形する場合、成形材の表面黒化や黒滓発生を抑え、かつ、成形後の耐食性を確保できる樹脂系皮膜は未だ見出されていない。何故なら、皮膜損傷による黒滓発生を極少にするため樹脂系皮膜を薄くすると、めっき面を覆う樹脂系皮膜の被覆率が低下し、優れた防錆皮膜であるクロメート下地処理がないため十分な耐食性を確保できず、一方、耐食性を高めるために樹脂系皮膜を厚くすると、プレス成形時の表面黒化や黒滓発生が顕著になるからである。
6価及び3価クロムフリーの樹脂系潤滑皮膜を被覆した亜鉛系めっき鋼板の具体例として、特定のポリオレフィン系共重合樹脂に、シリカ、及び防錆剤としてタンニン酸又はバナジン酸アンモニウムを含む皮膜で被覆された、耐食性や深絞り加工性等に優れた溶融亜鉛系めっき鋼板が開示されている(例えば、特許文献3及び特許文献4参照)。また、特定の樹脂化合物やシランカップリング剤等からなる下地処理皮膜の上に、特定の樹脂や防錆剤等からなる樹脂系皮膜を被覆した、プレス成形性と耐食性に優れた亜鉛系めっき鋼板が開示されている(例えば、特許文献5参照)。
しかしながら、有機樹脂は、摺動に対する抗張力や凝集力が金型材料に比べはるかに低いため、めっき面への密着性に優れていたとしても、前記のような過酷なプレス成形環境では、皮膜が容易に損傷し剥離してしまう。そのため、そもそも樹脂を多く含む特許文献3、特許文献4及び特許文献5のような皮膜構成では、前記のような過酷なプレス成形環境でプレス成形すると、他の樹脂系潤滑皮膜を被覆した亜鉛系めっき鋼板の場合と同様に、皮膜が損傷して顕著な表面黒化や黒滓が発生し、成形後の外観が甚だしく損なわれるだけでなく、皮膜損傷部の耐食性が著しく低下する、黒滓が金型表面に付着して以後の成形材に表面疵を付ける、と言う問題が生じる。
6価及び3価クロムフリーの無機系潤滑皮膜処理としては、前述したリン酸塩処理が古くから知られている。亜鉛系めっき鋼板のリン酸塩処理では、6価及び3価クロムを含まないリン酸亜鉛、リン酸マンガン等を主成分とする化成処理皮膜を亜鉛系めっき表面に形成する。これらのリン酸塩処理した亜鉛系めっき鋼板に潤滑油を塗布してからプレス成形すると、リン酸塩の結晶間に潤滑油を保持できるため良好な潤滑性が得られ、特に、リン酸マンガン系の皮膜を形成したものは耐摩耗性のため、潤滑性や摺動性に優れる。無機リン酸塩は、一般に樹脂の場合より高弾性率で、プレス成形時の摺動に対する抗張力や凝集力が樹脂より高いため、複雑形状を持つ部材の一体成形や高い扱き率での絞り成形を、高速、連続で行う等の過酷な成形環境でプレス成形しても、6価及び3価クロムフリーの樹脂系潤滑皮膜を被覆した亜鉛系めっき鋼板の場合より表面黒化や黒滓発生が少ない。
しかしながら、リン酸塩系皮膜の殆どは結晶性で、多くの場合、結晶サイズが1μm以上と大きく、皮膜がポーラスなため、腐食因子に対するバリア性に劣り、防錆力はクロメート皮膜のそれに全く及ばない。そのため、皮膜損傷による表面黒化や黒滓発生を抑えるためリン酸塩皮膜を薄くすると、耐食性が劣悪となり、一方、耐食性を高めるために皮膜を厚くすると、硬くて脆いリン酸塩皮膜がプレス成形で破壊され易くなり、表面黒化や黒滓発生が顕著になってしまう。このことは、発明者らが既に実験にて検証済みである。
6価及び3価クロムフリーのリン酸塩皮膜を被覆した亜鉛系めっき鋼板の具体例として、リン酸亜鉛を主体とするリン酸塩結晶が、めっき表面の30〜80面積%の範囲でめっき面上に微視的に点在する亜鉛系めっき鋼板が開示されている(例えば、特許文献6参照)。リン酸塩結晶を不連続に存在させることにより、リン酸塩結晶間に空隙が生じて潤滑油保持能が高まり、また、プレス成形時の結晶個々の変形自由度が高まってリン酸塩皮膜が破壊され難くなる、とされている。ところが、リン酸塩結晶を不連続に存在させることにより、そうでない場合よりもさらに耐食性が低下するため、前記のような過酷なプレス成形環境での成形性と耐食性を到底両立できない。
以上、複雑形状を持つ部材の一体成形や高い扱き率での絞り成形を、高速、連続で行う等の過酷なプレス成形に用いられている金属板の代表例として、これまでに実用あるいは提案されている種々の潤滑性皮膜を被覆した亜鉛系めっき鋼板を挙げ、その特徴を説明したが、過酷なプレス成形環境でも表面黒化や黒滓発生が極少で、かつ、良好な耐食性を保持するものはこれまでに見当たらなかった。
特開2001-49451号公報 特開2000-328271号公報 特開2003-342746号公報 特開2004-176092号公報 特開2004-18887号公報 特開2005-23336号公報 前田重義、表面、21、37(6)、1999年発行 腐食防食協会編、金属防蝕技術便覧(新版4版)、551頁、日刊工業新聞社1977年発行 腐食防食協会編、防食技術便覧(初版)、652頁、日刊工業新聞社1986年発行
上述したように、上記従来の無機系防錆皮膜被覆金属の問題点、即ち皮膜へのPRTR法に指定された化学物質の含有や、防錆皮膜の防錆力不足、あるいは煩雑な皮膜形成工程を生じる等の問題点がある。
そこで、本発明の第一の目的は、上述したような問題点に鑑み、加熱負荷に対しても安定した防錆性が得られ簡便に低環境負荷性の防錆皮膜が形成された金属部材、その防錆皮膜を形成するための表面被覆処理剤、及び、その防錆皮膜を形成する表面被覆処理方法を提供することにある。
また、上述したように、上記従来の6価及び3価クロムフリーの潤滑表面処理皮膜を被覆した金属板の問題点、即ち、複雑形状を持つ部材の一体成形や高い扱き率での絞り成形を、高速、連続で行う等の過酷な成形環境で前記金属板をプレス成形する際、被覆皮膜が剥離して成形後の成形材の外観が損なわれると言う問題点、特に、前記金属板が亜鉛系めっき鋼板の場合、被覆皮膜が剥離して亜鉛系めっき剥離粉を取り込んで表面黒化や黒滓が生じ、成形後の成形材の外観が著しく損なわれると言う問題点、さらに、金属板の皮膜損傷部の耐食性が低下すると言う問題点、皮膜滓が金型表面に付着して以後の成形材に表面疵を付けると言う問題点がある。
そこで、本発明の第二の目的は、これらの問題点を一挙に解決するだけでなく、更に、PRTR法に抵触する化学物質を含まず、金属板表面への成膜工程が簡便、と言う利点を有する皮膜を被覆した金属部材、及び、その皮膜を形成するための表面被覆処理剤、及び、その皮膜を形成する表面被覆処理方法を提供することにある。
本発明者らは、前記第一の目的を達成するための課題を解決するために種々の検討を行った結果、例えばPRTR法の指定化学物質を含まない特定の防錆皮膜を被覆した金属部材が前記課題を全て解決するものであり、十分な耐食性や、例えば200℃を超える高温加熱後も十分な耐食性を発現することを見出した。
また、本発明者らは、前記第二の目的を達成するための課題を解決するために種々の検討を行った結果、上記の防錆皮膜を被覆した金属部材である金属板が意外にも、複雑形状を持つ部材の一体成形や高い扱き率での絞り成形を、高速、連続で行う等の過酷な成形環境でプレス成形を行なっても、表面に皮膜滓が殆ど発生せず、従来の潤滑性皮膜を被覆した金属板に比べ、プレス成形前だけでなく成形後も良好な耐食性を発現することを見出した。
本発明は、このような知見を基にして完成されたものであり、その要旨は、以下のとおりである。
(1)表面の少なくとも一部が防錆皮膜で被覆された亜鉛系めっき鋼材であって、
前記防錆皮膜は、
水に対し難溶性又は不溶性で、かつ酸解離定数pKa≦3の酸に溶解性を有し、ベリリウム(Be)、硼素(B)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、砒素(As)、セレン(Se)、モリブデン(Mo)、カドミウム(Cd)、アンチモン(Sb)、水銀(Hg)、鉛(Pb)、インジウム(In)及びテルル(Te)を除く元素(以下、選択元素Eとする)であるCa、Fe、Zn、Mgの内の少なくともいずれか1種におけるリン酸塩、縮合リン酸塩、及び、亜リン酸塩の内の少なくともいずれか1種(以下、(P)成分とする)と、
酸解離定数pKa≦3の無機酸(HnA(Aは単一原子又は多原子からなる原子団、Hは水素原子、nは1以上の整数))、及び、水素脱離した前記無機酸の残基(Hn-1A、Hn-2A、Hn-3A、・・・、Hn-(n-1) A、A)の内の少なくともいずれか一方(以下、HnA、Hn-1A、Hn-2A、Hn-3A、・・・、Hn-(n-1) A、Aを総称し(HA)成分とする)と、
前記選択元素Eであるニオブ(Nb)、錫(Sn)、セリウム(Ce)のいずれか一種以上の酸化物のコロイド粒子(以下、(C)成分とする)と、を構成成分とし、前記(P)成分に含まれる前記選択元素Eと、前記(HA)成分に含まれる単一原子又は原子団Aとの質量比が、E:A=75:25〜1:99で、かつ、
前記選択元素E及び前記(HA)成分に含まれる単一原子又は原子団Aの合計と、前記(C)成分との質量比が、(E+A):C=99.5:0.5〜55:45である
ことを特徴とする亜鉛系めっき鋼材。
(2)前記(P)成分は、Ca、Fe、Zn、Mgの少なくともいずれか1種における正リン酸塩、リン酸一水素塩、及び、正亜リン酸塩の内の少なくともいずれか1種である(1)に記載の亜鉛系めっき鋼材。
(3)前記(P)成分は、リン酸三カルシウム(Ca3 (PO4)2)、リン酸第二鉄(FePO4)、リン酸亜鉛(Zn3 (PO4) 2)、リン酸一水素カルシウム(CaHPO4)、リン酸一水素マグネシウム(MgHPO4)、及び、亜リン酸カルシウム(CaPHO3)の内の少なくともいずれか1種である(1)又は(2)に記載の亜鉛系めっき鋼材。
(4)前記(P)成分は、非晶体、0.2μm未満の結晶サイズの微結晶体、及び、非晶体と0.2μm未満の結晶サイズの微結晶体との混合構造体の内のいずれか1種である(1)〜(3)のいずれかに記載の亜鉛系めっき鋼材。
(5)前記(P)成分は、25℃における水への溶解度が0.5g/(水100g)以下である(1)〜(4)のいずれかに記載の亜鉛系めっき鋼材。
(6)前記無機酸(HnA)は、オルトリン酸(H3PO4)、亜リン酸(H2PHO3)、次亜リン酸(HPH2O2)、ポリリン酸、メタリン酸、及び、硝酸(HNO3)の内の少なくともいずれか1種である(1)〜(5)のいずれかに記載の亜鉛系めっき鋼材。
(7)前記防錆皮膜は、コロイダルシリカ、二次凝集シリカ、及び、金属の次亜リン酸塩の内の少なくとも1種(以下、(S)成分とする)を更に含有し、
前記(P)成分に含まれる前記選択元素Eと、前記(HA)成分に含まれる単一原子又は原子団Aとの質量比が、E:A=75:25〜1:99で、かつ、
前記選択元素E及び前記(HA)成分に含まれる単一原子又は原子団Aの合計と、前記(C)成分との質量比が、(E+A):C=99.5:0.5〜55:45で、かつ、
前記選択元素E、前記(HA)成分に含まれる単一原子又は原子団A及び前記(C)成分の合計と前記(S)成分との質量比が、(E+A+C):S=99.5:0.5〜55:45
である(1)〜(6)のいずれかに記載の亜鉛系めっき鋼材。
(8)前記防錆皮膜は、付着量が0.02g/m2以上5g/m2以下である(1)〜(8)のいずれかに記載の亜鉛系めっき鋼材。
(9)前記亜鉛系めっき鋼材が亜鉛系めっき鋼板である(1)〜(8)のいずれかに記載の亜鉛系めっき鋼材。
(10)ベリリウム(Be)、硼素(B)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、砒素(As)、セレン(Se)、モリブデン(Mo)、カドミウム(Cd)、アンチモン(Sb)、水銀(Hg)、鉛(Pb)、インジウム(In)及びテルル(Te)を除く元素(以下、選択元素Eとする)であるCa、Fe、Zn、Mgの内の少なくともいずれか1種のリン酸塩、縮合リン酸塩、及び、亜リン酸塩の内の少なくともいずれか1種(以下、(P)成分とする)と、
酸解離定数pKa≦3の無機酸(HnA(Aは単一原子又は多原子からなる原子団、Hは水素原子、nは1以上の整数))、及び、水素脱離した前記無機酸の残基(Hn-1A、Hn-2A、Hn-3A、・・・、Hn-(n-1) A、A)の内の少なくともいずれか一方(以下、HnA、Hn-1A、Hn-2A、Hn-3A、・・・、Hn-(n-1) A、Aを総称し(HA)成分とする)と、
前記選択元素Eであるニオブ(Nb)、錫(Sn)、セリウム(Ce)のいずれか一種以上の酸化物のコロイド粒子(以下、(C)成分とする)と、
を成分とする亜鉛系めっき鋼材用の表面被覆処理剤であって、
前記(P)成分に含まれる前記選択元素Eと、前記(HA)成分に含まれる単一原子又は原子団Aとの質量比が、E:A=75:25〜1:99で、かつ、
前記選択元素E及び前記(HA)成分に含まれる単一原子又は原子団Aの合計と、前記(C)成分との質量比が、(E+A):C=99.5:0.5〜55:45
であることを特徴とする亜鉛系めっき鋼材用の表面被覆処理剤。
(11)ベリリウム(Be)、硼素(B)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、砒素(As)、セレン(Se)、モリブデン(Mo)、カドミウム(Cd)、アンチモン(Sb)、水銀(Hg)、鉛(Pb)、インジウム(In)及びテルル(Te)を除く元素(以下、選択元素Eとする)であるCa、Fe、Zn、Mgの内の少なくともいずれか1種のリン酸塩、縮合リン酸塩、及び、亜リン酸塩の内の少なくともいずれか1種(以下、(P)成分とする)と、
酸解離定数pKa≦3の無機酸(HnA(Aは単一原子又は多原子からなる原子団、Hは水素原子、nは1以上の整数))、及び、水素脱離した前記無機酸の残基(Hn-1A、Hn-2A、Hn-3A、・・・、Hn-(n-1) A、A)の内の少なくともいずれか一方(以下、HnA、Hn-1A、Hn-2A、Hn-3A、・・・、Hn-(n-1) A、Aを総称し(HA)成分とする)と、
前記選択元素Eであるニオブ(Nb)、錫(Sn)、セリウム(Ce)のいずれか一種以上の酸化物のコロイド粒子(以下、(C)成分とする)と、
コロイダルシリカ、二次凝集シリカ、及び金属の次亜リン酸塩の内の少なくとも1種(以下、(S)成分とする)と、
を成分する亜鉛系めっき鋼材用の表面被覆処理剤であって、前記(P)成分に含まれる前記選択元素Eと、前記(HA)成分に含まれる単一原子又は原子団Aとの質量比が、E:A=75:25〜1:99で、かつ、
前記選択元素E及び前記(HA)成分に含まれる単一原子又は原子団Aの合計と、前記(C)成分との質量比が、(E+A):C=99.5:0.5〜55:45で、かつ、
前記選択元素E、前記(HA)成分に含まれる単一原子又は原子団A及び前記(C)成分の合計と前記(S)成分との質量比が、(E+A+C):S=99.5:0.5〜55:45
であることを特徴とする亜鉛系めっき鋼材用の表面被覆処理剤。
(12)(10)又は(11)に記載の表面被覆処理剤を、亜鉛系めっき鋼材の表面の少なくとも一部に塗布して乾燥し、防錆皮膜を形成することを特徴とする亜鉛系めっき鋼材の表面被覆処理方法。
本発明によれば、防錆皮膜は、例えばPRTR法における環境負荷物質を含まず、かつ、クロメート処理材レベルの優れた耐食性及び加熱後の耐食性を有するため、家電機器やオフィスオートメーション機器、又は建築や土木、あるいは自動車や車輌分野等で広く用いられている金属部材として好適である。また、本発明の金属部材の内、金属板(強しごき加工用金属板)は、めっき面を被覆する皮膜がPRTR法に抵触する環境負荷物質を含まず、複雑形状の一体成形や強扱き加工を行っても、金属板表面の皮膜剥離による滓発生が少ない美麗な外観が得られ、かつ、成形後も優れた耐食性を有する。これらの外観や耐食性は、従来のクロメート処理した金属板を同一条件でプレス成形した場合と遜色ないため、環境負荷の大きいクロメート処理材を代替する強しごき加工用途の6価及び3価クロムフリ−金属板として、家電機器やオフィスオートメーション機器、又は建築や土木、あるいは自動車や車輌分野等で好適に用いることができる。
また、本発明に係る表面被覆処理剤で金属表面を被覆処理することにより、クロメート処理材レベルの優れた耐食性及び加熱後の耐食性を有する金属部材を安価な防錆処理コストで提供することができる。また、本発明に係る表面被覆処理剤で金属部材である金属板を表面被覆処理することにより、複雑形状の一体成形や強扱き加工を行っても、クロメート処理材レベルの優れた外観や耐食性を有する金属板を、安価な処理コストで提供することができる。
以下、本発明の実施の形態を詳細に説明する。
[防錆皮膜被覆金属製品の構成]
(防錆皮膜及び防錆処理剤の構成)
本発明における金属部材である防錆皮膜被覆金属製品は、金属素材である金属製品の表面の少なくとも一部に、環境負荷物質を含まない防錆皮膜が、付着量で例えば0.02g/m2以上5g/m2以下で被覆形成されている。
この防錆皮膜は、ベリリウム(Be)、硼素(B)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、ヒ素(As)、セレン(Se)、モリブデン(Mo)、カドミウム(Cd)、アンチモン(Sb)、水銀(Hg)、鉛(Pb)、インジウム(In)及びテルル(Te)を除く元素(以下、選択元素Eと称す)におけるリン酸塩、縮合リン酸塩、及び、亜リン酸塩の内の少なくともいずれか1種(以下、(P)成分と称す)と、酸解離定数pKa≦3の無機酸(HnA(Aは単一原子又は多原子の原子団、Hは水素原子、nは1以上の整数))、及び、この無機酸(HnA)の水素脱離した残基(Hn-1A、Hn-2A、Hn-3A、…、Hn-(n-1)A、A)の内の少なくともいずれか1種(以下、無機酸HnAとその残基を(HA)成分と総称す)と、選択元素Eであるニオブ(Nb)、錫(Sn)、セリウム(Ce)のいずれか一種以上の酸化物のコロイド粒子(以下、(C)成分と称す)を、主たる構成成分としている。
(P)成分は、水に難溶性又は不溶性である必要があり、金属面上の防錆皮膜中では緻密なバリア層を形成し、水性腐食因子の金属面への進入を抑制する。さらに、(P)成分は、従来公知のリン酸塩処理により生成するリン酸塩結晶の場合と同様、プレス成形時の摺動に対する抗張力や凝集力が高いため、前記(P)成分を主成分として含む皮膜を被覆した本発明の金属板を、複雑形状を持つ部材の一体成形や高い扱き率での絞り成形を、高速、連続で行う等の過酷な成形環境でプレス成形しても、皮膜が損傷し難く、剥がれ難く、皮膜滓の発生を抑制する。前記金属板が亜鉛系めっき鋼板の場合は、前記のような過酷な成形環境でプレス成形しても、皮膜が損傷し難く、剥がれ難く、成形材の表面黒化や黒滓の発生を抑制する。
(HA)成分は、防錆皮膜中ではリン酸塩や、縮合リン酸塩あるいは亜リン酸塩のバインダとして機能するだけでなく、金属面をエッチングして防錆皮膜と金属面との密着性を高めたり、前記のような過酷なプレス成形環境下でも、皮膜を剥がれ難くする。また、金属面と反応して皮膜の一部となり、その耐食性や密着性を高める。
また、(C)成分は、防錆皮膜中に、分散又は少なくとも一部が凝集し、無機防錆剤として機能する。さらに、(C)成分は、皮膜の構成成分となるだけでなく、単一コロイド粒子又はそれらの凝集体が金属面とイオン結合、水素結合、配位結合等により連結して、防錆皮膜と金属面との密着性を高めたり、前記のような過酷なプレス成形環境下でも、皮膜を剥がれ難くする。
本発明において、十分な耐食性を発現し、さらに、前記のような過酷なプレス成形条件下でも皮膜剥離や皮膜滓発生を抑止し、過酷なプレス成形後も良好な耐食性を発現する防錆皮膜を得るための大きな技術上のポイントは、(P)成分を強くバインドし、金属面との反応性が高い酸解離定数pKa≦3の(HA)成分を選択して、金属面への皮膜密着力や、プレス成形時の摺動に抗する皮膜抗張力を高めることと、防錆皮膜の緻密性、腐食因子バリア性、保水性、皮膜損傷部の自己修復性等を高めると考えられるコロイドレベルの大きさの(C)成分を選択することである。
ここで、本発明におけるリン酸塩とは、酸化数5のリン(P)を中心原子とするリン酸イオン(PO4 3-)の塩の総称で、中和が完全で解離性水素を含まない正リン酸塩(例えば、Mg3(PO4)2、Ca3(PO4)2等)、水素が1個残る一水素塩(MgHPO4、CaHPO4等)、水素が2個残る二水素塩(例えば、Mg(H2PO4)2、Ca(H2PO4)2等)を指す。また、縮合リン酸塩とは、オルトリン酸(H3PO4)の脱水縮合により生じる縮合リン酸の正塩(中和が完全で解離性水素を含まない塩)、水素塩(未中和の解離性水素が残る塩)の総称で、2個以上のリン酸根(PO4)が酸素原子を共有した直鎖状、環状あるいは両者が混在する構造を取るものを指す。
また、本発明における亜リン酸塩とは、酸化数3のPを中心原子とする亜リン酸イオン(PHO3 2-)の正塩、一水素塩の総称で、中和が完全で解離性水素を含まない正亜リン酸塩(例えば、MgPHO3、CaPHO3等)、水素を1個含む一水素塩(例えば、Mg(HPHO3)2、Ca(HPHO3)2等)を指す。
そして、防錆皮膜被覆金属製品は、表面被覆処理剤としての防錆処理剤が金属製品の表面の少なくとも一部に塗布され、加熱乾燥されることにより、金属製品に耐食性を付与し、あるいはさらに強扱き加工に耐える防錆皮膜が形成されている。この防錆処理剤は、詳細は後述するが、水に対し難溶性又は不溶性の(P)成分を酸解離定数pKa≦3の無機酸(HnA)で溶解し、さらに(C)成分を分散させることにより、環境負荷物質を含まない水性防錆処理剤として調製される。
本発明において、防錆皮膜被覆金属製品の防錆皮膜、あるいはさらに強扱き加工に耐える金属板の被覆皮膜、及び、金属板の表面上に前記皮膜を形成するために用いる防錆処理剤は、PRTR法の対象となる指定化学物質を含んでいない。従って、防錆皮膜及び防錆処理剤の構成成分の1つである(P)成分も、PRTR法の指定化学物質を含んでいない。
そのため、PRTR法の第一種指定化学物質の中で、Be、B、Cr、Mn、Co、Ni、As、Se、Mo、Cd、Sb、Hg又はPbを含み、水に対し難溶性又は不溶性のリン酸塩、縮合リン酸塩又は亜リン酸塩、及び、第二種指定化学物質の中で、In又はTeを含み、水に対し難溶性又は不溶性のリン酸塩、縮合リン酸塩又は亜リン酸塩は、(P)成分から除外される。例えば、リン酸コバルト、リン酸マンガン、リン酸ニッケル、亜リン酸コバルト等は除外される。
また、本発明において、防錆皮膜及び防錆処理剤の構成成分の1つである(P)成分は、水に対し難溶性又は不溶性、具体的には、25℃における水への溶解度が0.5g/(水100g)以下であることが好ましい。
ここで、防錆皮膜を構成する(P)成分の25℃における水への溶解度が0.5g/(水100g)を超える場合、防錆皮膜の保湿性が高まるため、湿気、及び湿気と共に防錆皮膜に侵入する親水性の腐食因子により、防錆皮膜のバリア性が低下し、防錆性が不十分になる惧れがある。また、防錆処理剤中の(P)成分の25℃における水への溶解度も同様に、0.5g/(水100g)を超える場合、防錆処理剤を用いて金属表面上に形成した防錆皮膜の保湿性が高まるため、湿気、及び湿気と共に防錆皮膜に侵入する親水性の腐食因子により皮膜のバリア性が低下し、防錆性が不十分になる惧れがある。
そして、防錆皮膜及び防錆処理剤の構成成分の1つである(P)成分は、上述した2条件、即ち、
(i) PRTR法の指定化学物質でない、
(ii) 25℃における水への溶解度が0.5g/(水100g)以下である、
と言う条件を満たした上で、2価又は3価の金属の正リン酸塩(Mが2価金属の場合はM3(PO4)2、Mが3価金属の場合はMPO4)、リン酸一水素塩(Mが2価金属の場合はMHPO4、Mが3価金属の場合はM2(HPO4)3)又は正亜リン酸塩(Mが2価金属の場合はMPHO3、Mが3価金属の場合はM2(PHO3)3)の1種又は2種以上の混合物であることが好ましい。
また、防錆皮膜及び防錆処理剤の構成成分の1つである(P)成分の中で、後述する非晶体として防錆皮膜中に存在する可能性が高いものとしては、上述した好ましいリン酸塩の内、リン酸第二鉄(FePO4)、リン酸三カルシウム(Ca3(PO4)2)や、リン酸第一錫(Sn3(PO4)2)等が挙げられる。
また、皮膜形成条件により、後述する非晶体や0.2μm未満の結晶サイズの微結晶体として防錆皮膜中に存在可能なものとしては、上述した好ましいリン酸塩又は亜リン酸塩の内、リン酸亜鉛(Zn3(PO4)2)、リン酸マグネシウム(Mg3(PO4)2)、リン酸第一鉄(Fe3(PO4)2)、リン酸マグネシウムアンモニウム(Mg(NH4)PO4)、リン酸第一セリウム(CePO4)、リン酸第二鉄(FePO4)、リン酸ビスマス(BiPO4)等の正リン酸塩、リン酸一水素カルシウム(CaHPO4)、リン酸一水素第一錫(SnHPO4)、リン酸一水素マグネシウム(MgHPO4)等のリン酸一水素塩、亜リン酸カルシウム(CaPHO3)、亜リン酸マグネシウム(MgPHO3)、亜リン酸第一鉄(FePHO3)等の正亜リン酸塩が挙げられる。
これらの(P)成分は、非晶性、結晶性に関わらず、1種又は2種以上の混合物として用いてもよいが、後述するように、防錆皮膜中で0.2μm以上のサイズの粗い結晶が生じないよう、防錆皮膜形成条件に留意する必要がある。また、これらの好ましい例の内、リン酸三カルシウム(Ca3(PO4)2)、リン酸第二鉄(FePO4)、リン酸亜鉛(Zn3(PO4)2)、リン酸一水素カルシウム(CaHPO4)、リン酸一水素マグネシウム(MgHPO4)、亜リン酸カルシウム(CaPHO3)の1種又は2種以上の混合物が、コストや性能の点等から、特に好ましい。
また、防錆皮膜及び防錆処理剤の構成成分の1つである(P)成分として、2価又は3価金属以外のリン酸塩で水に対し難溶性のもの、例えば、1価金属の難溶性リン酸塩であるリン酸リチウム(Li3PO4)も用いることができる。リン酸リチウム(Li3PO4)は、結晶性のため、後述するように、防錆皮膜中で0.2μm以上のサイズの粗い結晶がなるべく生じないよう、皮膜形成条件に留意する必要がある。
一方、防錆皮膜被覆金属製品の防錆皮膜、及び、金属表面上に防錆皮膜を形成するために用いる防錆処理剤を構成する成分の1つである無機酸(HnA)は、水溶液とした場合に酸解離定数pKa≦3の無機酸で、かつ、PRTR法の指定化学物質以外のものでなければならない。
ここで、炭素原子を含む有機酸では、200℃を超える高温環境下での長期使用に耐えることができないものが多く、有機酸を用いると防錆皮膜の加熱後の防錆性が著しく低下する。また、複雑形状を持つ部材の一体成形や、高い扱き率での絞り成形等の過酷な成形環境で連続的にプレス成形すると、金型が100℃〜150℃程度に昇温し、炭素原子を含む有機酸には、このような高温環境下での長期使用に耐えることができないものが多い。
このため、炭素原子を含まない無機酸(HnA)を用いる必要がある。そして、酸解離定数pKa>3の酸では、防錆皮膜中で、水に対し難溶性又は不溶性の(P)成分に対する作用が弱いため、(P)成分を有効にバインドできないか、又は、バインドできても多量の酸が必要な場合が多く、防錆皮膜中の(P)成分のバインダとしては不適である。また、酸解離定数pKa>3の酸は、防錆処理剤中で、水に対し難溶性又は不溶性の(P)成分を溶解できないか、又は、溶解するために多量の酸が必要な場合が多く、防錆処理剤中の(P)成分の溶解剤としては不適である。
ここで、酸解離定数pKaとは、水溶液中でのn塩基酸の解離平衡[化1]において、Ka=[H3O+][Hn-1A-]/[HnA]([ ]内は各成分の濃度を表す)、pKa=-logKaのことである。
Figure 0005577563
そして、防錆皮膜及び防錆処理剤を構成する成分の1つである無機酸(HnA)は、水溶液中で酸解離定数pKa≦3を示す無機酸で、かつ、PRTR法の指定化学物質以外のものとして、例えば、オルトリン酸(H3PO4)、亜リン酸(H2PHO3)、次亜リン酸(HPH2O2)、ポリリン酸(オルトリン酸の直鎖状重合体:Hx+2PxO3x+1(xは2〜6の自然数)の単体又はこれらの2種以上の混合物)、メタリン酸(オルトリン酸の環状重合体:(HPO3)y(yは3〜6の整数)の単体又はこれらの2種以上の混合物)、硝酸(HNO3)、硫酸(H2SO4)、亜硫酸(H2SO3)、過塩素酸(HClO4)、塩素酸(HClO3)、亜塩素酸(HClO2)、臭素酸(HBrO3)、ヨウ素酸(HIO3)、過酸化水素(H2O2)等のオキソ酸、又は塩酸(HCl)、臭化水素酸(HBr)、ヨウ化水素酸(HI)等の水素酸、あるいはチオ硫酸(H2S2O3)等のチオ酸等を用いることができる。これらの中で、オルトリン酸(H3PO4)、亜リン酸(H2PHO3)、次亜リン酸(HPH2O2)、ポリリン酸(オルトリン酸の直鎖状重合体:Hx+2PxO3x+1(xは2〜6の自然数)の単体又はこれらの2種以上の混合物)、メタリン酸(オルトリン酸の環状重合体:(HPO3)y(yは3〜6の整数)の単体又はこれらの2種以上の混合物)、硝酸(HNO3)、又は、これらの2種以上の混合物が、コストや性能等の点から好ましい。
また、無機酸(HnA)は、本発明の防錆皮膜中では、共存する(P)成分又は(C)成分の一方又は双方と結合して、種々の塩、それらの架橋体や複合体を形成したり、防錆皮膜で被覆された金属表面と結合して、その金属の種々の塩、それらの架橋体や複合体を形成したり、無機酸(HnA)自身が脱水縮合したり、無機酸(HnA)がそのまま固化したりして、いずれの場合でも防錆皮膜の構成成分の一部となっている。防錆皮膜中で、無機酸(HnA)が(P)成分、(C)成分、又は金属表面を構成する金属と種々の塩やそれらの架橋体あるいは複合体を形成する場合、反応に関与した無機酸(HnA)は、防錆皮膜中で、HnAの形で存在せず、HnAから水素が1個又は2個以上脱離した無機酸残基(Hn-1A、Hn-2A、Hn-3A、…、Hn-(n-1)A又はA)の1種以上の形で、種々の塩、それらの架橋体あるいは複合体の構成成分の一部として存在する。
これらの塩、架橋体あるいは複合体の殆どは、水に対し難溶性又は不溶性である。
ロリン酸は、本発明における多価無機酸の一般表現HnAに当てはめると、A=P2O7、n=4に相当し、HnA=H4A=H4P2O7となる。また、Znとピロリン酸から生じる架橋性の難溶性塩に含まれるピロリン酸残基は、上述の例では、H3P2O7とH2P2O7であり、これらを本発明における無機酸残基の一般表現に当てはめると、Hn-1A=H3A=H3P2O7、Hn-2A=H2A=H2P2O7である。なお、水溶液中でのピロリン酸の解離1段目の解離平衡(H4P2O7+H2O→H3O++H3P2O7-)の解離定数pKa=0.8(25℃)、また、解離2段目の解離平衡(H3P2O7-+H2O→H3O++H2P2O72-)の解離定数pKa=2.2(25℃)であり、H4P2O7、H3P2O7-のいずれの場合も、酸解離定数pKa≦3の酸である。
そして、防錆処理剤中では、無機酸(HnA)の多くは解離し、HnAから水素が1個又は2個以上脱離した無機酸残基のイオン(Hn-1A-、Hn-2A2-、Hn-3A3-、…、Hn-(n-1)A(n-1)-、An-)の形で、HnAと共存している。無機酸(HnA)及び無機酸残基のイオンの少なくとも一部は、防錆処理剤中で、共存する(P)成分を溶解したり、溶解した(P)成分やコロイド状の(C)成分と弱く相互作用して、強酸に可溶又は分散可能な塩や錯イオン、それらの架橋体、複合体等を形成している。
また、無機酸又は無機酸残基の一方又は双方からなる(HA)成分から生じた皮膜成分は、後述するように、(P)成分の場合と同様、0.2μm以上のサイズの粗い結晶が生じないよう、皮膜形成条件に留意する必要がある。
そして、防錆皮膜被覆金属製品の防錆皮膜、及び、金属表面上に防錆皮膜を形成するために用いる防錆処理剤を構成する成分の1つである(C)成分は、PRTR法の指定化学物質以外のものでなければならない。したがって、化学物質管理促進法の第一種指定化学物質の中で、Be、B、Cr、Mn、Co、Ni、As、Se、Mo、Cd、Sb、Hg、Pbの酸化物、及び、第二種指定化学物質の中でIn、Teの酸化物は、本発明の(C)成分から除外される。例えば、酸化アンチモン(Sb2O5)や酸化モリブデン(MoO3)等は除外される。
また、(C)成分は、それらのコロイド粒子中、及び、粒子表面に、PRTR法の指定酸化物以外の第一種指定化学物質及び第二種指定化学物質も含んでいてはならない。例えば、PRTR法の第一種指定化学物質の中で、Be、B、Cr、Mn、Co、Ni、Se、Mo、Cd、Sb、Hg又はPbの単体又は化合物(酸化物を除く)、As単体又はその無機化合物(酸化物を除く)、銀(Ag)又はバリウム(Ba)の単体又は水溶性化合物、及び、第二種指定化学物質の中で、In単体又はその化合物(酸化物を除く)、Te単体又はその化合物(酸化物を除く)、タリウム(Tl)単体又はその水溶性化合物等は、本発明の(C)成分のコロイド粒子中、及び粒子表面に含まれていてはならない。
また、(C)成分は、防錆皮膜及び防錆処理剤において、コロイド粒子である。本発明において、防錆皮膜中又は防錆処理剤中に存在するコロイド粒子は、上述した選択元素Eの酸化物の集合体であり、大きさが1〜1000nm、好ましくは1〜300nmであり、これらは防錆皮膜中又は防錆処理剤中に分散しており、少なくとも一部が凝集している場合もある。そして、粒子の大きさ1nm未満では、防錆皮膜の単位体積又は防錆処理剤の単位容積中に存在する粒子数、及び、防錆皮膜の単位体積又は防錆処理剤の単位容積中に存在する粒子の総表面積が非常に大きくなり、粒子を互いに架橋、固定するための反応点が非常に多くなる。このため、防錆皮膜の被覆形成工程において、粒子同士の直接バインドや、粒子と共存する(HA)成分との架橋反応等を介したバインドが不十分になり、強固なネットワーク構造が形成されない惧れがある。
一方、粒子の大きさ1000nmを超えると、粒子同士が接触又は近接することにより、最密充填又はそれに準ずる密な粒子凝集構造を取る場合でも、粒子間に大きな隙間が生じ、例え粒子間の架橋が十分でも、緻密なネットワーク構造が形成されない惧れがある。このため、粒子の大きさは、1〜1000nm、好ましくは1〜300nmに設定される。
そして、(C)成分は、防錆皮膜及び防錆処理剤において、上述した選択元素Eであるニオブ(Nb)、錫(Sn)、セリウム(Ce)のいずれか一種以上の酸化物あれば、特に制限はない。
また、防錆処理剤に用いる(C)成分のコロイド粒子は、上述の選択元素Eであるニオブ(Nb)、錫(Sn)、セリウム(Ce)のいずれか一種以上の酸化物であれば、特に制限はないが、コロイド粒子を構成する元素が、上記酸化物である場合には上述の選択元素Eの内、Al、Si、Ti、Fe、Y、Zr、Nb、Sn又はCeから選ばれる1種又は2種以上であることが特に好ましい。
これらの内、上記酸化物の殆どについては、水中で粒子が電荷を失うpH(≒等電点)が中性付近(pHが5〜9の間)にあり、このような中性付近では、コロイド粒子同士の静電的反発が弱くなる。このため、凝集したり、ゲル化して安定な処理液が得られない。ところが、本発明の防錆処理液は、強酸の無機酸(HnA)が溶液中に存在するため、酸性液であり、Nb、Sn、Ceの酸化物のコロイド粒子が十分に正に帯電している。このため、静電反発力が大きく安定となる
さらに、(C)成分のコロイド粒子は、防錆皮膜及び防錆処理剤において、その形状に制限はなく、球状、棒状、板状、糸まり状等のいずれの形状でもよい。また、このコロイド粒子は、粗粒子を細分する分散法、又は分子分散系の分子又はイオンを凝集させる凝集法によって製造でき、公知のどのような製造方法で製造しても良い。
分散法としては、例えば、コロイドミル、ホモジナイザ等を用いる粒子の機械的粉砕方法、凝集法としては、例えば、高温で気化した酸化物を気相中で核生成、凝縮させる方法や、上述した選択元素Eの塩化物を揮発させ、酸素、水素の混合炎中で加水分解する方法等を用いることができる。
そして、防錆皮膜被覆金属製品は、防錆皮膜中で、(P)成分に含まれる選択元素Eと、(HA)成分に含まれる単一原子又は原子団Aとの質量比は、E:A=75:25〜1:99の範囲になければならず、好ましくは75:25〜5:95あるいは60:40〜1:99、特に60:40〜5:95の範囲が好ましい。
ここで、前記(P)成分に含まれる選択元素Eの質量比が1%未満の場合、金属面上の形成皮膜中のバリア層構成成分が少なく、防錆効果が不十分になる。また、被覆皮膜中で、抗張力や凝集力が高い耐摺動成分である(P)成分が僅少のため、複雑形状を持つ部材の一体成形や高い扱き率での絞り成形を、高速、連続で行う等の過酷な成形環境下でのプレス成形に耐えることができず、皮膜の多くが剥離し、金属板の表面に皮膜滓が多量に発生し、成形材の外観を損なったり、皮膜滓が金型表面に付着して以後の成形材に表面疵を付ける。
特に、プレス成形の原板が亜鉛系めっき鋼板の場合、剥離した皮膜は、プレス成形で生じた亜鉛系めっきの剥離粉を取り込んで粘着性の黒滓となり、成形材表面を黒化させて成形材の外観を著しく損なったり、黒滓が金型表面に付着して以後の成形材に表面疵を付ける。一方、選択元素Eの質量比が75%を超える場合、防錆皮膜中の(HA)成分が(P)成分に比べ相対的に少な過ぎるため、(P)成分を十分にバインドできないだけでなく、(HA)成分による金属面のエッチングが不十分となり、皮膜密着性が不足する。そのため、防錆皮膜を形成できないか、又は、防錆皮膜を形成できてもバインドされていない(P)成分の割合が多く、緻密性に欠け、金属面との密着性も不足となるため、防錆効果が不十分になり、また、このような皮膜は前記のような過酷なプレス成形に耐えられない。このため、E:A=75:25〜1:99、好ましくは75:25〜5:95あるいは60:40〜1:99、より好ましくは60:40〜5:95の範囲に設定する。
また、防錆皮膜被覆金属製品は、防錆皮膜中で、(P)成分に含まれる選択元素E、及び(HA)成分に含まれる単一原子又は原子団Aの合計と、(C)成分との質量比は、(E+A):C=99.5:0.5〜55:45、好ましくは99.5:0.5〜70:30あるいは97:3〜55:45、より好ましくは97:3〜70:30の範囲になければならない。(C)成分は、防錆皮膜の緻密性、腐食因子バリア性、保水性、皮膜損傷部の自己修復性等を高めると考えられるコロイドレベルの大きさの無機防錆剤である。
ここで、(C)成分の質量比が皮膜質量の0.5%未満の場合、量が少な過ぎて防錆効果が不十分になる。一方、(C)成分の質量比が45%を超える場合、防錆皮膜中で(C)成分が相対的に多くなるため、コロイド粒子同士が直接あるいは共存成分を介して十分にバインドされない。そのため、このような皮膜は緻密性に欠け、防錆効果が不十分になり、また、このような皮膜は前記のような過酷なプレス成形に耐えられない。このため、(E+A):C=99.5:0.5〜55:45、好ましくは99.5:0.5〜70:30あるいは97:3〜55:45、より好ましくは97:3〜70:30の範囲に設定する。
一方、防錆処理剤は、この防錆処理剤中の(P)成分に含まれる選択元素Eと、(HA)成分に含まれる単一原子又は原子団Aとの質量比は、E:A=75:25〜1:99の範囲になければならず、好ましくは75:25〜5:95あるいは60:40〜1:99、特に60:40〜5:95の範囲が好ましい。
ここで、選択元素Eの質量比が1%未満の場合、防錆処理剤を金属表面に塗布、乾燥することにより形成した防錆皮膜中のバリア層構成成分が少なく、防錆効果が不十分になる。また、抗張力や凝集力が高い耐摺動成分である(P)成分が僅少のため、複雑形状を持つ部材の一体成形や高い扱き率での絞り成形を、高速、連続で行う等の過酷な成形環境下でのプレス成形に耐えることができず、皮膜の多くが剥離し、金属板の表面に皮膜滓が多量に発生し、成形材の外観を損なったり、皮膜滓が金型表面に付着して以後の成形材に表面疵を付ける。
特に、プレス成形の原板が亜鉛系めっき鋼板の場合、剥離した皮膜は、プレス成形で生じた亜鉛系めっきの剥離粉を取り込んで粘着性の黒滓となり、成形材表面を黒化させて成形材の外観を著しく損なったり、黒滓が金型表面に付着して以後の成形材に表面疵を付ける。一方、選択元素Eの質量比が75%を超える場合、防錆処理剤中の(HA)成分が(P)成分に比べ少な過ぎるため、(P)成分を(HA)成分で完全溶解できず防錆処理剤を調製できないか、又は、防錆処理剤を調製できても、(HA)成分(無機酸(HnA)、及び、処理剤調製や防錆処理剤の金属表面への塗布過程で生成する無機酸(HnA)の残基)の合計が(P)成分に比べ少な過ぎるため、皮膜中で、(HA)成分による(P)成分のバインドや金属面のエッチングが不十分となり、皮膜の凝集力や金属面との密着性が不足して皮膜を形成できないか、又は、防錆皮膜を形成できてもバインドされていない(P)成分の割合が多く、緻密性に欠け、防錆効果が不十分で、さらに前記のような過酷なプレス成形に耐えられない皮膜になる。このため、防錆処理液は、E:A=75:25〜1:99、好ましくは75:25〜5:95あるいは60:40〜1:99、より好ましくは60:40〜5:95の範囲に設定する。
また、防錆処理剤は、この防錆処理剤中で、(P)成分に含まれる選択元素E、及び(HA)成分に含まれる単一原子又は原子団Aの合計と、(C)成分との質量比は、(E+A):C=99.5:0.5〜55:45、好ましくは99.5:0.5〜70:30あるいは97:3〜55:45、より好ましくは97:3〜70:30の範囲になければならない。
ここで、(C)成分の質量比が皮膜質量の0.5%未満の場合、量が少な過ぎるため、防錆処理剤を金属表面に塗布、乾燥することにより形成した防錆皮膜の防錆効果が不十分になる。一方、(C)成分の質量比が45%を超える場合、防錆処理剤中で(C)成分が相対的に多くなるため、防錆処理剤を金属表面に塗布、乾燥する過程で、コロイド粒子同士が直接あるいは共存成分を介して十分にバインドされない。そのため、形成した防錆皮膜は、緻密性に欠け、防錆効果が不十分になり、また、前記のような過酷なプレス成形に耐えられない。このため、防錆処理剤は、(E+A):C=99.5:0.5〜55:45、好ましくは99.5:0.5〜70:30あるいは97:3〜55:45、より好ましくは97:3〜70:30の範囲に設定する。
そして、防錆皮膜被覆金属製品では、金属表面上に形成された防錆皮膜に、(P)成分が、非晶体、0.2μm未満の結晶サイズの微結晶体、又は、両者の混合構造体の状態で存在するのが好ましい。
ここで、(P)成分が0.2μm以上の結晶サイズの結晶粒を含む場合、防錆皮膜はポーラスとなり、(P)成分が、非晶構造、0.2μm未満の結晶サイズの微結晶構造又は両者の混合構造のみからなる場合に比べ、腐食因子のバリア性に劣る。このため、優れた防錆性が得られない惧れがある。したがって、結晶サイズの結晶粒を含む場合には、0.2μm未満となるように設定する。
なお、ここで言う非晶体とは、いかなる既存の分析法によっても結晶を確認できないアモルファス、無定形構造体のことである。また、ここで言う微結晶体とは、単一結晶あるいは2種以上の混合晶の存在を確認できるが結晶の最大長さがいずれも0.2μm未満である構造体のことである。非晶体と微結晶体の混合構造体とは、上述した非晶構造と微結晶構造とが混在した構造体のことである。
また、防錆処理剤の1成分である無機酸(HnA)は、防錆処理剤を調製し、それを金属面に塗布し、加熱乾燥するいずれかの過程で、(P)成分、被塗金属面又は(C)成分の少なくとも一部と反応して、種々の塩、それらの架橋体や複合体を形成する。加熱乾燥時には、前記の種々の塩、架橋体、複合体が析出したり、無機酸(HnA)自身が脱水縮合したり、そのまま固化したりして、防錆皮膜成分の一部となるが、このように無機酸(HnA)から生じた皮膜成分も、(P)成分の場合と同様に、防錆皮膜中で、非晶体、0.2μm未満の結晶サイズの微結晶体、又は、両者の混合構造体であることが好ましい。
ここで、0.2μm以上の結晶サイズの結晶粒を含む場合、防錆皮膜はポーラスとなり、非晶構造、0.2μm未満の結晶サイズの微結晶構造又は両者の混合構造からなる防錆皮膜に比べ、腐食因子のバリア性に劣るため、優れた防錆性が得られない可能性がある。このため、結晶サイズの結晶粒を含む場合には、0.2μm未満となるように設定する。
そして、防錆皮膜被覆金属製品は、金属表面上への防錆皮膜の付着量が、0.02g/m2以上5g/m2以下であり、好ましくは0.05g/m2以上5g/m2以下あるいは0.02g/m2以上2g/m2以下、より好ましくは0.05g/m2以上2g/m2以下の範囲である。また、特に、強扱き加工用の金属板においては、金属表面上への皮膜付着量は、好ましくは0.02g/m2 以上2g/m2 以下、より好ましくは0.05g/m2以上2g/m2以下である。
ここで、0.02g/m2未満では、腐食因子の透過抑止効果が小さく十分な防錆性が得られない。また、皮膜が薄過ぎて強扱き加工に対する潤滑性が不十分で、成形できない惧れがある。一方、5g/m2を超えると、腐食因子の透過抑止効果は優れるが、皮膜コストが大幅に上昇し、かつ成形加工性も劣るため実用的でない。また、2g/m2 を超える厚膜では、腐食因子の透過をかなり抑止するため防錆効果は優れるが、複雑形状を持つ部材の一体成形や高い扱き率での絞り成形を高速、連続して行う等の過酷なプレス成形環境下でプレス成形する場合、皮膜が厚過ぎるため皮膜が著しく損傷し、剥離して皮膜滓の発生が多くなる惧れがある。金属板が亜鉛系めっき鋼板の場合は、皮膜滓が亜鉛系めっきの剥離粉を取り込んで黒化し、成形後の成形材の表面黒化や、黒滓発生が顕著になる惧れがある。
このため、付着量を0.02g/m2以上5g/m2以下、好ましくは0.05g/m2以上5g/m2以下あるいは0.02g/m2以上2g/m2以下、より好ましくは0.05g/m2以上2g/m2以下の範囲に設定する。また、特に、強扱き加工用の金属板においては、金属表面上への皮膜付着量は、好ましくは0.02g/m2 以上2g/m2 以下、より好ましくは0.05g/m2以上2g/m2以下の範囲に設定する。
(添加剤)
なお、本発明において、防錆皮膜被覆金属製品の防錆皮膜、及び、金属表面上に防錆皮膜を形成するために用いる防錆処理剤には、(P)成分、(HA)成分(防錆処理剤の場合は、(HA)成分でなく無機酸(HnA))及び(C)成分以外に、無機防錆添加剤をさらに含有していてもよい。
本発明に用いることができる無機防錆添加剤の例としては、タングステン酸塩、アルミナ、チタニア、ジルコニア、イットリア、セリア、シリカ等の無機系ゾル、防錆顔料、シロキサン結合を有する化合物、シランカップリング剤、チタンカップリング剤、次亜リン酸塩等が挙げられるが、コロイダルシリカ、二次凝集シリカ又は金属の次亜リン酸塩の少なくとも1種(以下、(S)成分と称す)が好ましい。コロイダルシリカや二次凝集シリカは、その優れた保水性に基づく金属の腐食抑制機能に加え、皮膜強度を高めたり、金属表面と防錆皮膜との密着性を高めたりする機能もある。これらの機能を効果的に発揮するためには、一次粒子径は2〜30nm、二次凝集シリカの場合は、さらに二次凝集粒子径が200nm以下であることが好ましい。次亜リン酸塩としては、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カルシウムが特に好ましい。
そして、防錆皮膜被覆金属製品の防錆皮膜中に、(P)成分、(HA)成分、(C)成分以外に、無機防錆添加剤である(S)成分がさらに含まれる場合、(S)成分が含まれない場合と同様に、防錆皮膜中で、(P)成分に含まれる選択元素Eと、(HA)成分に含まれる単一原子又は原子団Aの質量比は、E:A=75:25〜1:99(特に好ましくは60:40〜5:95)でなければならず、かつ、防錆皮膜中で、(P)成分に含まれる選択元素E、及び(HA)成分に含まれる単一原子又は原子団Aの合計と、(C)成分との質量比は、(E+A):C=99.5:0.5〜55:45(特に好ましくは97:3〜70:30)でなければならない。さらに、選択元素E、A、(C)成分の合計と(S)成分との質量比は、(E+A+C):S=99.5:0.5〜55:45が好ましく、より好ましくは99.5:0.5〜70:30あるいは97:3〜55:45、特に97:3〜70:30の範囲が好ましい。
ここで、(S)成分の質量比が0.5%未満の場合、防錆皮膜中の(S)成分が少な過ぎて(S)成分による防錆効果が有効に発揮されない惧れがある。45%を超える場合、防錆皮膜中の(S)成分が、(P)成分、(HA)成分、(C)成分に比べ相対的に多過ぎるため、(P)成分や(C)成分が(HA)成分等の共存成分を介して十分にバインドされない可能性があり、皮膜の緻密性が低下し易く、防錆皮膜の本来のバリア効果が十分に発揮できない惧れがある。また、複雑形状を持つ部材の一体成形や高い扱き率での絞り成形を、高速、連続で行う等の過酷な成形環境下でのプレス成形に耐えられない惧れがある。このため、(E+A+C):S=99.5:0.5〜55:45、好ましくは99.5:0.5〜70:30あるいは97:3〜55:45、より好ましくは97:3〜70:30の範囲に設定する。
一方、防錆処理剤中に、(P)成分、(HA)成分、(C)成分以外に、(S)成分をさらに添加する場合、(S)成分は、防錆処理剤に直接添加しても、予め水に溶解、分散あるいは懸濁させてから防錆処理剤に添加してもよい。防錆処理剤中に(S)成分が含まれる場合、(S)成分が含まれない場合と同様に、(P)成分に含まれる選択元素Eと、(HA)成分に含まれる単一原子又は原子団Aとの質量比は、E:A=75:25〜1:99(特に好ましくは60:40〜5:95)でなければならず、かつ、防錆処理剤中で、(P)成分に含まれる選択元素E及び(HA)成分に含まれる単一原子又は原子団Aの合計と、(C)成分との質量比は、(E+A):C=99.5:0.5〜55:45(特に好ましくは97:3〜70:30)でなければならない。防錆処理剤中において、選択元素E、A、(C)成分の合計と(S)成分との質量比は、(E+A+C):S=99.5:0.5〜55:45が好ましく、より好ましくは99.5:0.5〜70:30あるいは97:3〜55:45、特に97:3〜70:30の範囲が好ましい。
ここで、(S)成分の質量比が0.5%未満の場合、防錆皮膜中の(S)成分が少な過ぎて、防錆処理剤を金属表面に塗布、乾燥することにより形成した防錆皮膜において、(S)成分による防錆効果が有効に発揮されない。45%を超える場合、防錆皮膜中の(S)成分が、(P)成分、(HA)成分、(C)成分に比べ、相対的に多過ぎるため、防錆処理剤を金属面に塗布、乾燥することにより形成した防錆皮膜中で、(P)成分や(C)成分が十分にバインドされない可能性があり、皮膜の緻密性が低下し易く、皮膜の本来のバリア効果が十分に発揮できない惧れがあり、また、複雑形状を持つ部材の一体成形や高い扱き率での絞り成形を、高速、連続で行う等の過酷な成形環境下でのプレス成形に耐えられない惧れがある。このため、防錆処理剤では、(E+A+C):S=99.5:0.5〜55:45、好ましくは99.5:0.5〜70:30あるいは97:3〜55:45、より好ましくは97:3〜70:30の範囲に設定する。
また、防錆処理剤には、上述した無機防錆添加剤以外にも、発明の目的を損なわない範囲で、PRTR法の指定化学物質以外の各種の無機系あるいは有機系の化合物を含んでいても差し支えない。これらは、防錆処理液に直接添加しても、予め水に溶解、分散あるいは懸濁させてから防錆処理剤に添加してもよい。このような化合物の例としては、上述した選択元素Eの酸化物からなる大きさ1nm未満の微粒子又は1000nmを超える粒子、(C)成分以外の無機系又は有機系コロイド粒子、無機系又は有機系防錆添加剤、各種の無機酸や有機酸、無機系又は有機系潤滑剤、無機系又は有機系顔料、有機樹脂等が挙げられる。しかしながら、(C)成分のコロイド粒子と水との濡れ性を高めるため湿潤剤を用いたり、防錆処理液中での(C)成分の分散性を高めるため分散剤(界面活性剤)を用いたり、湿潤剤と分散剤を併用したり、粒子の沈降を防ぐため増粘剤を添加したりする場合は、これらの薬剤が加熱により容易に劣化する有機化合物である場合が多いため、必要最小限の使用量に抑え、防錆皮膜が長時間加熱後も劣化せずに緻密性、防錆性を保持するよう留意する必要がある。
さらに、防錆処理剤には、上述した(C)成分の分散安定性を高めるため、25℃における水溶液中の酸解離定数が1≦pKa≦6の範囲にある酸をさらに含有していてもよい。このような酸は、本発明の防錆処理剤を金属製品に塗布乾燥する際に揮発したり、又は、(P)成分や金属面と反応し、皮膜構造の一部となることが期待できる水溶性の低級カルボン酸であることが好ましく、さらに、(C)成分のコロイド粒子の解膠剤であることがより好ましい。解膠とは、分散媒中で電荷を失って凝析しているコロイド粒子凝集体(沈殿、ゲル、二次粒子等)に電荷を与え、個々のコロイド粒子を分散媒中に分散させる操作又は現象のことであり、このような解膠機能を持つ電解質が解膠剤である。解膠過程では、電荷を失って凝析しているコロイド粒子凝集体に解膠剤のイオンが選択的に吸着して電荷を与えるため、個々のコロイド粒子間に静電反発力が生じ、コロイド粒子間の引力が低下し、コロイド粒子が分散媒中に分散する。
上述した水溶性の低級カルボン酸は有機化合物であり、防錆皮膜中での含有量が多いと、防錆皮膜は、200℃を超える高温環境下での長期使用に耐えることができず、また、過酷な連続プレス成形による高温環境に耐えることができず、さらに、防錆皮膜の加熱後の防錆性が低下するため、本発明で用いる防錆処理剤の不揮発分全体の20質量%以下に含有量を制限するのがよい。このようなカルボン酸の例としては、例えば、蟻酸(H-COOH)、酢酸(CH3-COOH)、プロピオン酸(C2H5-COOH)、酪酸(C3H7-COOH)、蓚酸(HOOC-COOH)、マロン酸(HOOC-CH2-COOH)、コハク酸(HOOC-(CH2)2-COOH)、グルタル酸(HOOC-(CH2)3-COOH)、アジピン酸(HOOC-(CH2)4-COOH)、クロトン酸(CH3-CH=CH-COOH)、マレイン酸(cis-HOOC-CH=CH-COOH)、グリコール酸(CH2(OH)-COOH)、乳酸(CH3CH(OH)-COOH)、グリセリン酸(CH2(OH)-CH(OH)-COOH)、クエン酸(HOOC-CH2-C(OH)(COOH)-CH2-COOH)、酒石酸(HOOC-CH(OH)-CH(OH)-COOH)、リンゴ酸(HOOC-CH(OH)-CH2-COOH)、ピルビン酸(CH3CO-COOH)、又は、グリオキシル酸(CHO-COOH)の内の1種又は2種以上が挙げられる。
(被防錆処理される金属)
一方、防錆皮膜被覆金属製品の形状は、特に限定せず、板状、棒状、線状、管状、環状、塊状、種々の金型加工、曲げ加工、切削加工、鋳鍛造等で得られた形状等、どのような形状であってもよいが、強扱き加工用途に用いる場合は、板状のものを用いる。また、防錆皮膜を被覆形成させる金属としては、例えば、アルミニウム、チタン、亜鉛、銅、ニッケル、そして鋼等が適用可能である。これらの金属の成分は特に限定せず、例えば、鋼を使用する場合には、普通鋼であっても、クロム等の添加元素含有鋼であってもよい。ただし、本発明の金属板を強扱き加工用途に用いる場合は、いずれの金属の場合も、強扱き加工や深絞り加工に適するように、添加元素の種類と添加量、及び金属組織を適正に制御したものが好ましい。また、防錆皮膜を被覆形成させる金属として鋼を使用する場合、その表面には被覆めっき層があってもよいが、その種類は特に限定されず、適用可能なめっき層としては、例えば、亜鉛、アルミニウム、コバルト、錫、ニッケルの内のいずれか1種からなるめっき、及び、これらの金属元素やさらに他の金属元素、非金属元素を含む合金めっき等が挙げられる。特に、亜鉛系めっき層としては、例えば、亜鉛からなるめっき、亜鉛と、アルミニウム、コバルト、錫、ニッケルの少なくとも1種との合金めっき、又は、さらに他の金属元素、非金属元素を含む種々の亜鉛系合金めっきが挙げられるが、亜鉛以外の合金成分を特に限定しない。めっき層の形成方法も特に限定せず、例えば、電気めっき、無電解めっき、溶融めっき、気相めっき等を用いることができる。めっき処理方法は、連続式、バッチ式のいずれでもよく、例えば、溶融めっきでは、連続式は主に薄板材、線材類に用いられ、バッチ式のめっきは、管類、圧延材、加工品、ボルト・ナット類、鋳鍛造品類等の最終製品に成形した後に溶融めっき浴に浸漬することによる(いわゆる後めっき)。また、鋼板を使用する場合、めっき後の処理として、溶融めっき後の外観均一処理であるゼロスパングル処理、めっき層の改質処理である焼鈍処理、表面状態や材質調整のための調質圧延等があり得るが、本発明においては特にこれらを限定せず、いずれを適用することも可能である。
プレス成形の原板が、鋼板表面に亜鉛又は亜鉛系合金めっきを施した亜鉛系めっき鋼板に従来の潤滑性皮膜を被覆形成させたものである場合、複雑形状を持つ部材の一体成形や高い扱き率での絞り成形を、高速、連続で行う等の過酷な成形環境でプレス成形すると、潤滑性皮膜が損傷して剥離し、プレス成形で生じた亜鉛系めっきの剥離粉を取り込んで粘着性の黒滓となり、成形材表面を黒化させて成形材の外観を著しく損なったり、黒滓が金型表面に付着して以後の成形材に表面疵を付けることが多い。しかしながら、本発明の防錆皮膜で被覆した亜鉛系めっき鋼板をプレス成形原板として用いると、前記のような過酷な成形環境でプレス成形しても皮膜が剥離し難いため、成形材表面の黒化や黒滓発生が僅少となる。
本発明において、防錆皮膜と金属との界面に、PRTR法の指定化学物質を含有しない下地処理皮膜を設けてもよい。この下地処理皮膜の組成は特に限定しないが、金属面と上層の防錆皮膜とのそれぞれに対し密着性に優れ、腐食抑制能を有し、又は、さらに強扱きにかなり耐える化合物により形成されることが好ましい。例えば、ジルコニウム、タングステン又は希土類元素の1種又は2種以上を含む金属系化合物、これら金属系化合物以外のリン酸塩、亜リン酸塩、シロキサン結合を有する化合物、シランカップリング剤、チタンカップリング剤等から選ばれた1種又は2種以上の化合物が挙げられる。
[防錆処理]
(防錆処理剤の調製)
また、防錆処理剤を製造する際に、(C)成分を含むコロイド水溶液を用いる場合、そのコロイド水溶液は、粗粒子又はコロイド凝集体を細分して水に分散する分散法、又は、水溶液中の化学反応で生成した分子又はイオンの核生成、凝集を経てコロイド粒子に成長させる凝集法で製造でき、適用可能であれば、公知のどのような分散法又は凝集法を用いてもよい。
ここで、本発明におけるコロイド水溶液とは、上述の大きさ1〜1000nmのコロイド粒子が分散媒である水に分散している系のことである。そして、分散法としては、例えば、コロイドミル、ホモジナイザ等による粒子粉砕を水中で行う方法、コロイド粒子を水に入れ、超音波や解膠剤等を用いて分散させる方法(解膠剤を用いる方法は解膠剤添加法)、水中で凝析状態にあるコロイド粒子を水洗し、コロイド粒子を凝集させていた凝析剤を除去することによってコロイド粒子を再分散させる方法(洗出法)等を用いることができる。凝集法としては、例えば、水中で、上述した選択元素Eの酸性塩又は塩基性塩の中和反応や、塩基性塩の加水分解反応等で酸化物からなるコロイド粒子を合成し、得られたコロイド粒子凝集体と副生塩類、イオン類の混合物から副生塩類やイオンを水洗やイオン交換樹脂等で除去する方法を用いることができる。不要な塩類やイオンを除去後、コロイド粒子が水中に分散しない場合は、上述した解膠剤添加法等で分散させるとよい。
(防錆処理)
そして、金属表面又は金属表面に設けた下地処理皮膜上への防錆皮膜の被覆形成方法は、(P)成分、(HA)成分、(C)成分を含む種々の塩、それらの架橋体や複合体を有する防錆性に優れた防錆皮膜を形成する方法であれば、特に限定しない。このような方法としては、例えば、水や水性溶媒、極性有機溶媒等で希釈した無機酸(HnA)と(P)成分とを混合して、(P)成分を溶解、あるいはそれら溶媒中に微細分散し、(C)成分をさらに添加して防錆処理剤を調製し、これを金属に塗布し加熱乾燥する方法、又は、(HA)成分を介して少なくとも一部が相互に架橋し連結した(P)成分、(C)成分を主成分とするフィルムを金属面に貼付する方法等があるが、他の方法で皮膜形成させてもよく、ここで掲げた方法に限定されない。
なお、これらの方法の中で、防錆処理剤を塗布する方法が、防錆皮膜を被覆する金属の表面形状や粗度等に関わらず、防錆皮膜を形成でき、また、容易にかつ安価に防錆皮膜を形成できるため、好ましい。この防錆処理剤に用いる溶媒は、防錆皮膜被覆金属製品を製造する際の現場環境や大気汚染への配慮から、有機溶媒でなく、水や水性溶媒を用い、水性防錆処理剤とするのが好ましい。防錆処理剤の塗布方法としては、例えば、防錆処理浴への金属のディップ、防錆処理剤のロールコート、バーコート、刷毛塗り、あるいはスプレー等の後、熱風等で加熱乾燥すれば良いが、他の方法で塗布、皮膜形成させてもよく、ここで掲げた方法に限定されない。塗布後の加熱乾燥は、安定した防錆皮膜形成の観点から、塗布後30秒以内で金属表面到達温度が60℃以上になるようにすることが好ましく、100℃以上になるようにすることがより好ましい。
また、上述したリン酸塩の中で、リン酸第二鉄は、水和水の数により結晶体(2水和物)と非晶体との2種が得られるが、非晶体が得られるように皮膜乾燥条件を工夫すれば良く、例えば、リン酸第二鉄を含む防錆処理剤を金属表面に塗布直後に、30秒以内で金属表面到達温度が100℃以上になるように加熱乾燥する。また、リン酸三カルシウム(Ca3(PO4)2)やリン酸第一錫(Sn3(PO4)2)は、基本的に非晶性であるが、余分な水和水を皮膜形成と同時に除くため、防錆処理剤を金属表面に塗布し、30秒以内で金属表面到達温度が60℃以上になるように加熱乾燥すればよい。また、結晶体を形成し易いリン酸塩又は亜リン酸塩の場合、0.2μm以上の結晶サイズのリン酸塩結晶又は亜リン酸塩結晶が生じない皮膜乾燥条件を選ぶ必要がある。例えば、結晶性リン酸塩又は結晶性亜リン酸塩を含む処理剤を金属表面に塗布した直後に、0.2μm以上のサイズの粗い結晶が生じないように、急速に加熱乾燥すればよい。最適な乾燥条件は、結晶性リン酸塩又は亜リン酸塩の種類により異なるが、防錆処理剤を金属表面に塗布した直後に30秒以内で金属表面到達温度が100℃以上になるように加熱乾燥すれば、大抵のリン酸塩、亜リン酸塩の場合、0.2μm以上のサイズの粗い結晶は生じない。このような乾燥条件で0.2μm以上のサイズの粗い結晶が生じる場合は、金属表面の昇温速度をさらに速めたり、金属表面到達温度を高めたりすればよい。
そして、上述した防錆処理剤を塗布する方法では、防錆処理剤を調製し、それを金属に塗布し、加熱乾燥するいずれかの過程で、無機酸(HnA)の少なくとも一部と、(P)成分、金属表面、(C)成分の少なくとも一部が共有結合、イオン結合又は配位結合し、種々の塩、それらの架橋体や複合体を形成する。加熱乾燥後の防錆皮膜は、前記の種々の塩、それらの架橋体や複合体の他に、未反応の(P)成分や(C)成分の固化物、無機酸(HnA)の脱水縮合体、無機酸固化物、金属表面からの溶出金属等から構成される。
[防錆皮膜、潤滑性防錆皮膜、及び、防錆処理剤の確認方法]
ここで、金属板を含む皮膜被覆金属製品の表面に設けられている皮膜の構成成分とそれらの質量比とが、本発明の範囲に含まれるかどうか確認する方法としては、例えば、以下のように確認すればよい。
1. 本発明に必須の無機酸(HnA)の有無確認と定量
調査対象の皮膜で被覆された金属板から当該皮膜を削り取り、皮膜に含まれる水可溶分を純水で抽出し、抽出化合物の同定を行う。抽出物には、本発明に示す無機酸(HnA)や、水可溶性の無機酸残基(Hn-1A等)が含まれる可能性がある。例えば、オルトリン酸やポリリン酸の有無確認や定量は、抽出物をモリブデン酸と反応させ、生成したりんモリブデン酸を還元して得られる青色物質を比色定量することによる。
2. 本発明に必須の選択元素E、(P)成分、(C)成分の有無確認と定量
前記1.にて被験皮膜に含まれる水可溶分を純水で抽出した後の残渣(水不溶分)には、水に対し難溶性又は不溶性の(P)成分(前記の選択元素Eのリン酸塩、縮合リン酸塩、亜リン酸塩)や(C)成分(前記の選択元素Eの酸化物、水酸化物のコロイド粒子)が含まれる可能性がある。
(1) コロイド粒子の有無確認
前記の水不溶分の電子顕微鏡観察により、1〜1000nmの大きさのコロイド粒子が存在するかどうか調べる。コロイド粒子群が確認できたら、EPMA(電子プローブ・マイクロアナライザー)で該コロイド粒子群の特性X線分析を行い、粒子を構成する元素の種類を調べ、また、酸素を多量に含むかどうか調べる。該コロイド粒子が特定の元素と酸素を多く含むなら、該粒子は、主にその元素の酸化物で構成されると推定できる。
(2) (C)成分の有無確認と定量
前記の水不溶分に含まれる元素を蛍光X線分析や原子吸光分析等で同定し、選択元素Eの有無を調べる。選択元素Eが水不溶分に含まれる場合、水不溶分の広角X線回折スペクトルから、それらの元素の酸化物が水不溶分に含まれるか確認する。選択元素Eの酸化物が水不溶分に相当量含まれる場合、その元素の種類が、前記(1)で調べたコロイド粒子の構成元素の種類と一致すれば、被験皮膜に含まれるコロイド粒子は、主にその元素の酸化物で構成される(C)成分であると結論付けられる。その場合、その元素の皮膜中の含有量を、蛍光X線分析や原子吸光分析、又は下記(4)の方法等で調べ、(C)成分の定量を行う。
(3) (P)成分の有無確認と定量
前記(2)において、選択元素Eが水不溶分に含まれる場合、水不溶分の広角X線回折スペクトルから、選択元素Eのリン酸塩、縮合リン酸塩、亜リン酸塩が存在するかどうか調べる。これらの塩が存在すれば、被験皮膜に(P)成分が含まれると結論付けられ、また、(P)成分に含まれる選択元素Eの種類が判る。その場合、これらの元素の皮膜中の含有量を、蛍光X線分析や原子吸光分析、又は下記(4)の方法等で調べ、(P)成分の定量を行う。リン酸塩の存在は、水不溶分の赤外吸収スペクトルから確認することもできる。
(4) (P)成分、(C)成分の他の定量方法
硫酸で水不溶分を処理する。得られた硫酸可溶分には、(P)成分、あるいはさらに(C)成分が含まれる。酸化物が硫酸可溶性の場合、硫酸可溶分には(P)、(C)成分の両方が含まれる。硫酸可溶分の元素分析により、(P)成分由来の選択元素Eと(C)成分をそれぞれ定量する。(C)成分が硫酸不溶性(例えば、酸化ニオブ(V)(Nb2O5))の場合、硫酸可溶分の元素分析により、(P)成分由来の選択元素Eを定量する。さらに、硫酸不溶分の金属分析により(C)成分を定量する。
また、処理剤の構成成分とそれらの不揮発分質量比が、本発明の範囲に含まれるかどうか確認する方法としては、上述した皮膜被覆金属製品の表面皮膜分析法に準じて、処理剤の各構成成分の同定、定量を行えばよい。例えば、処理剤に無機酸(HnA)が含まれるかどうか分析した後、処理剤の溶媒を蒸発させ、乾固物の分析を、上述した皮膜分析法に準じて行う。
なお、本発明は前述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
以下、本発明を実施例及び比較例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
[実施例1]
(金属の種類)
EG:電気亜鉛めっき鋼板(板厚0.8mm)
GI:溶融亜鉛めっき鋼板(板厚0.8mm)
GA:合金化溶融亜鉛めっき鋼板(板厚0.8mm)
ZL:Zn-Ni系合金めっき鋼板(板厚0.8mm)
SD:Zn-11%Al-3%Mg-Si合金めっき鋼板(板厚0.8mm)
Pan:縦250mm、横170mm、深さ55mmの鋼製角筒成形容器を溶融亜鉛めっき浴に浸漬し、亜鉛めっき層を形成しためっき部材(成形前の板厚1.2mm)
(防錆皮膜被覆金属の作製)
水に対し難溶又は不溶で、酸解離定数pKa≦3の強酸に溶解するリン酸塩又は亜リン酸塩((P)成分)と、酸解離定数pKa≦3の強酸性の無機酸(HnA)、コロイド粒子((C)成分)を必須成分とし、さらに(P)成分、無機酸(HnA)、(C)成分以外の無機防錆添加剤((S)成分)を必要に応じて含有する水性防錆処理剤を作製した。これらを上述しためっき鋼板にバーコータにより塗布し、直ちに、金属表面到達温度が150℃になるように250℃の熱風炉内に約20秒間静置し、乾燥、成膜後、直ちに水冷して被験材とした。角筒成形容器Panの被覆は、水性防錆処理剤へのディップにより行い、直ちに、金属表面到達温度が150℃になるように250℃の熱風炉内に約20秒間静置し、乾燥、成膜後、直ちに水冷して被験材とした。また、水溶性リン酸塩や酸解離定数pKa>3の無機酸を用いた処理剤を作製し、前記と同様に塗布、加熱乾燥し、金属面に成膜したものを用いた。リン酸塩の結晶は、走査型電子顕微鏡で皮膜表面を観察することにより確認した。これら各処理剤の作製に用いた薬品類を表1及び表2に示す。また、用いた金属種類、各皮膜の構成成分、それらの質量比、皮膜付着量等を表3〜表8に示す。
Figure 0005577563
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(比較材の作製)
比較材として、日本パーカライジング(株)製の塗布クロメート処理剤ZM1300-ANを用いて前記金属を処理し、Cr付着量30mg/m2の塗布型クロメート処理皮膜を形成したものを用い、前記の皮膜被覆金属と耐食性を相対比較する実験を実施した。
以下に、その実験方法を説明する。
(耐食性の評価(加熱処理なし))
(1) 平板耐食性
前記の皮膜被覆金属及び比較クロメート材について、JIS-Z-2371に準拠した塩水噴霧試験を行い、120時間後の白錆発生面積を測定し、皮膜被覆金属と対応する比較クロメート材の白錆発生面積を相対比較することにより、耐食性の合否を判定した。角筒成形容器Panについては、角筒側面の平坦部を切出して試験に供した。皮膜被覆金属、比較クロメート材の白錆発生面積率をそれぞれX%、Y%とすると、判定基準は、
評点4:X<Y
3:X≒Y
2:Y<X<2Y
1:2Y≦X
とし、評点3以上を合格とした。
(2) 加工部耐食性
前記の皮膜被覆金属及び比較クロメート材に7mmのエリクセン加工を施し、JIS-Z-2371に準拠した塩水噴霧試験を行い、120時間後の加工部における白錆発生面積を測定し、皮膜被覆金属と対応する比較クロメート材の白錆発生面積を相対比較することにより、加工部耐食性の合否を判定した。角筒成形容器Panについては、角筒側面の平坦部を切出し、7mmエリクセン加工を施し、試験に供した。判定基準は上記(1)の平板耐食性の場合と同じで、
評点4:X<Y
3:X≒Y
2:Y<X<2Y
1:2Y≦X
とし、評点3以上を合格とした。
(耐食性の評価(加熱処理後))
(1) 加熱処理後の平板耐食性
前記の皮膜被覆金属及び比較クロメート材の内、EGをベースとしたもの以外について、大気雰囲気下、熱風炉で300℃、5時間加熱処理し、放冷した。また、EGベースの皮膜被覆金属及びクロメート材は、大気雰囲気下、熱風炉で200℃、24時間加熱処理し、放冷した。これらを被験材として、JIS-Z-2371に準拠した塩水噴霧試験を行い、120時間後の白錆発生面積を測定し、皮膜被覆金属と対応する比較クロメート材の白錆発生面積を相対比較することにより、耐食性の合否を判定した。判定基準は、加熱処理なしの耐食性評価の場合と同じである。
(2) 加熱処理後の加工部耐食性
上述した方法と同様に、加熱処理した皮膜被覆金属及び比較クロメート材に7mmのエリクセン加工を施し、JIS-Z-2371に準拠した塩水噴霧試験を行い、120時間後の白錆発生面積を測定し、皮膜被覆金属と対応する比較クロメート材の白錆発生面積を相対比較することにより、耐食性の合否を判定した。判定基準は、加熱処理なしの耐食性評価の場合と同じである。
以上の各評価結果をまとめて、表3〜表8に示す。
Figure 0005577563
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これら表3〜表8に示す実験結果から、本発明の要件を満たす構成成分を有する防錆処理剤を金属面に塗布後、急速加熱乾燥処理した実施例では、クロメート処理材のレベルに匹敵する十分な耐食性、及び加熱処理後の耐食性を発現する防錆皮膜被覆金属製品が得られることが判る。これらの防錆処理剤は、化学物質管理促進法の指定化学物質を含まず、低環境負荷性であり、かつ、金属表面の1工程処理で皮膜形成できる。
一方、本発明の(P)成分の代わりに、水溶性リン酸塩を用いて処理液を調製した比較例(No.31、32、71、72)、また、本発明の(C)成分の代わりに、コロイドより大きな金属酸化物粒子を用いた比較例(No.37〜39)は、皮膜を形成した金属製品の耐食性がクロメート処理材のレベルに全く及ばなかった。
また、本発明の無機酸(HnA)の代わりに、酸解離定数pKa>3の無機酸を用いた比較例(No.77〜79)は、水に対し難溶又は不溶の(P)成分を殆ど溶解できないため、均一な処理剤を調製できず、金属面に皮膜形成できなかった。本発明の(P)成分と無機酸(HnA)を用いていても、無機酸(HnA)に含まれる単一原子又は原子団Aに対する選択元素Eの不揮発分質量比が本発明で許容する範囲より大きい比較例(No.3、11、19、22、25、28、50、58、62、65、68、74、76)は、リン酸塩を完全溶解できず、金属面に皮膜形成できなかった。本発明の(P)成分、無機酸(HnA)、(C)成分を用いていても、選択元素E、無機酸(HnA)に含まれる単一原子又は原子団Aの合計に対する(C)成分の不揮発分質量比が本発明で許容する範囲より大きい比較例(No.6、14、34、36、53、84)は、皮膜を形成した金属製品の耐食性は、クロメート処理材のレベルに全く及ばなかった。
[実施例2]
次に、本発明の防錆皮膜被覆金属製品を強扱き加工用途に使用する場合の、金属板の防錆皮膜、及び、金属表面上に前記皮膜を形成するために用いる防錆処理剤に関する実施例を示す。
(金属の種類)
金属板としては、金属板を成形する際の扱き率([(原板厚-金型のポンチとダイ間のクリアランス)/原板厚]×100)を各板間で合わせるため、板厚を±0.001mm(±1μm)の精度で調整した亜鉛系めっき鋼板を用いた。
EG-UD:深絞り加工用の電気亜鉛めっき鋼板(板厚0.800±0.001mm)
ZL-UD:深絞り加工用の亜鉛-ニッケル系合金めっき鋼板(板厚0.800±0.001mm)
GI-UD:深絞り加工用の溶融亜鉛めっき鋼板(板厚0.800±0.001mm)
GA-UD:深絞り加工用の合金化溶融亜鉛めっき鋼板(板厚0.800±0.001mm)
(防錆皮膜被覆金属板の作製)
水に対し難溶又は不溶で、酸解離定数pKa≦3の強酸に溶解するリン酸塩又は亜リン酸塩(P)、酸解離定数pKa≦3の強酸性の無機酸HnA、コロイド粒子(C)を必須成分とし、さらに(P)成分、HnA、(C)成分以外の無機防錆添加剤(S)を必要に応じて含有する水性防錆処理剤を作製した。これらを前記の金属板表面にバーコータにより塗布し、直ちに、金属板の表面到達温度が70℃になるように250℃の熱風炉内に約6秒間静置し、乾燥後、放冷するか、あるいは、金属板の表面到達温度が150℃になるように250℃の熱風炉内に約20秒間静置し、乾燥後、水冷して、被験金属板とした。また、水溶性リン酸塩を用いた処理剤を作製し、前記と同様に金属板に塗布、加熱乾燥し、前記金属板上に成膜したものも用いた。皮膜中のリン酸塩の結晶状態は、走査型電子顕微鏡で皮膜表面を観察することにより確認した。各処理剤の作製に用いた薬品類を表1、表2に示す。用いた金属板の種類、各被覆皮膜の構成成分とそれらの質量比、皮膜付着量等を表9〜表13に示す。
(比較材の作製)
比較材として、日本パーカライジング(株)製の塗布クロメート処理剤ZM1300-ANで前記金属板を処理し、Cr付着量35mg/m2の塗布型クロメート処理皮膜を形成したものを用いた。
(強扱き加工後の成形材表面外観の評価)
ポンチ径26.56mm、ダイ径28.00mm、[(原板厚-金型のポンチとダイ間のクリアランス)/原板厚]×100 で表せる成形時の扱き率10%、ダイ肩半径2mmの金型を用い、前記皮膜を形成した亜鉛系めっき鋼板に高粘度潤滑油を塗布した状態で、成形速度60mm/秒で円筒深絞り加工を行い、成形後、成形材表面と金型ダイ表面に付着した黒い皮膜滓を清浄なウエスで拭き取り、黒滓発生の程度を目視評価した。ウエスに付着した黒い汚れの程度を判定基準として用い、
評点3 : 明らかに、被験材からの黒滓量<比較クロメート処理材からの黒滓量、と判別できる
2 : 被験材からの黒滓量≒比較クロメート処理材からの黒滓量
1 : 明らかに、被験材からの黒滓量>比較クロメート処理材からの黒滓量、と判別できる
とし、評点2以上を合格とした。
(強扱き加工後の耐食性の評価)
前記の円筒深絞り加工後の成形材について、JIS-Z2371に準拠した塩水噴霧試験を行い、円筒の外側面部について、24時間後の白錆発生面積率を測定し、同一条件で加工、塩水噴霧試験後のクロメート処理材の白錆発生面積率と相対比較することにより、耐食性の合否を判定した。被験材、比較クロメート材の白錆発生面積率をそれぞれX%、Y%とすると、判定基準は、
評点3 : X<Y
2 : X≒Y
1 : X>Y
とし、評点2以上を合格とした。
以上の評価結果をまとめて、表9〜13に示す。
Figure 0005577563
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Figure 0005577563
Figure 0005577563
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本発明の要件を満たす防錆処理剤で処理した金属板を強扱き加工した場合、被覆皮膜の剥離による皮膜滓が発生し難く、かつ、扱き後の防錆性に優れる成形材が得られ、これらの性能レベルは、クロメート処理板を強扱き加工した場合と同等以上であることが判る。前記の防錆処理剤、及び金属板の被覆皮膜は、いずれもPRTR法の指定化学物質を含まず低環境負荷性であり、かつ、前記金属板の被覆皮膜は、前記の防錆処理剤で金属表面を1工程処理することにより、容易に形成できる。
一方、本発明の(P)成分の代わりに水溶性リン酸塩を用いて処理剤を調製した場合(No.112、113、143、144)、また、本発明の(C)成分の代わりにコロイドより大きな金属酸化物粒子を用いた場合(No.117〜119)、皮膜を形成した金属板を強扱き加工した際に発生する皮膜滓の量が多く、また、強扱き加工後の成形材の耐食性は、同一条件で加工後のクロメート処理材のレベルに全く及ばなかった。本発明の(P)成分、無機酸HnA、(C)成分を用いていても、(P)成分に含まれる選択元素Eと、無機酸HnAに含まれる単一原子又は原子団Aの合計に対する(C)成分の不揮発分質量比が本発明で許容する範囲より大きな場合(No.95、101、115、116、129)、皮膜を形成した金属板を強扱き加工した際に発生する皮膜滓の量が多く、また、強扱き加工した後の成形材の耐食性は、同一条件で加工後のクロメート処理材のレベルに全く及ばなかった。

Claims (12)

  1. 表面の少なくとも一部が防錆皮膜で被覆された亜鉛系めっき鋼材であって、
    前記防錆皮膜は、
    水に対し難溶性又は不溶性で、かつ酸解離定数pKa≦3の酸に溶解性を有し、ベリリウム(Be)、硼素(B)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、砒素(As)、セレン(Se)、モリブデン(Mo)、カドミウム(Cd)、アンチモン(Sb)、水銀(Hg)、鉛(Pb)、インジウム(In)及びテルル(Te)を除く元素(以下、選択元素Eとする)であるCa、Fe、Zn、Mgの内の少なくともいずれか1種におけるリン酸塩、縮合リン酸塩、及び、亜リン酸塩の内の少なくともいずれか1種(以下、(P)成分とする)と、
    酸解離定数pKa≦3の無機酸(HnA(Aは単一原子又は多原子からなる原子団、Hは水素原子、nは1以上の整数))、及び、水素脱離した前記無機酸の残基(Hn-1A、Hn-2A、Hn-3A、・・・、Hn-(n-1) A、A)の内の少なくともいずれか一方(以下、HnA、Hn-1A、Hn-2A、Hn-3A、・・・、Hn-(n-1) A、Aを総称し(HA)成分とする)と、
    前記選択元素Eであるニオブ(Nb)、錫(Sn)、セリウム(Ce)のいずれか一種以上の酸化物のコロイド粒子(以下、(C)成分とする)と、を構成成分とし、前記(P)成分に含まれる前記選択元素Eと、前記(HA)成分に含まれる単一原子又は原子団Aとの質量比が、E:A=75:25〜1:99で、かつ、
    前記選択元素E及び前記(HA)成分に含まれる単一原子又は原子団Aの合計と、前記(C)成分との質量比が、(E+A):C=99.5:0.5〜55:45である
    ことを特徴とする亜鉛系めっき鋼材。
  2. 前記(P)成分は、Ca、Fe、Zn、Mgの少なくともいずれか1種における正リン酸塩、リン酸一水素塩、及び、正亜リン酸塩の内の少なくともいずれか1種である請求項1に記載の亜鉛系めっき鋼材。
  3. 前記(P)成分は、リン酸三カルシウム(Ca3 (PO4)2)、リン酸第二鉄(FePO4)、リン酸亜鉛(Zn3 (PO4) 2)、リン酸一水素カルシウム(CaHPO4)、リン酸一水素マグネシウム(MgHPO4)、及び、亜リン酸カルシウム(CaPHO3)の内の少なくともいずれか1種である請求項1又は請求項2に記載の亜鉛系めっき鋼材。
  4. 前記(P)成分は、非晶体、0.2μm未満の結晶サイズの微結晶体、及び、非晶体と0.2μm未満の結晶サイズの微結晶体との混合構造体の内のいずれか1種である請求項1〜請求項3のいずれかに記載の亜鉛系めっき鋼材。
  5. 前記(P)成分は、25℃における水への溶解度が0.5g/(水100g)以下である請求項1〜請求項4のいずれかに記載の亜鉛系めっき鋼材。
  6. 前記無機酸(HnA)は、オルトリン酸(H3PO4)、亜リン酸(H2PHO3)、次亜リン酸(HPH2O2)、ポリリン酸、メタリン酸、及び、硝酸(HNO3)の内の少なくともいずれか1種である請求項1〜請求項5のいずれかに記載の亜鉛系めっき鋼材。
  7. 前記防錆皮膜は、コロイダルシリカ、二次凝集シリカ、及び、金属の次亜リン酸塩の内の少なくとも1種(以下、(S)成分とする)を更に含有し、
    前記(P)成分に含まれる前記選択元素Eと、前記(HA)成分に含まれる単一原子又は原子団Aとの質量比が、E:A=75:25〜1:99で、かつ、
    前記選択元素E及び前記(HA)成分に含まれる単一原子又は原子団Aの合計と、前記(C)成分との質量比が、(E+A):C=99.5:0.5〜55:45で、かつ、
    前記選択元素E、前記(HA)成分に含まれる単一原子又は原子団A及び前記(C)成分の合計と前記(S)成分との質量比が、(E+A+C):S=99.5:0.5〜55:45
    である請求項1〜請求項6のいずれかに記載の亜鉛系めっき鋼材。
  8. 前記防錆皮膜は、付着量が0.02g/m2以上5g/m2以下である請求項1〜請求項7のいずれかに記載の亜鉛系めっき鋼材。
  9. 前記亜鉛系めっき鋼材が亜鉛系めっき鋼板である請求項1〜請求項8のいずれかに記載の亜鉛系めっき鋼材。
  10. ベリリウム(Be)、硼素(B)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、砒素(As)、セレン(Se)、モリブデン(Mo)、カドミウム(Cd)、アンチモン(Sb)、水銀(Hg)、鉛(Pb)、インジウム(In)及びテルル(Te)を除く元素(以下、選択元素Eとする)であるCa、Fe、Zn、Mgの内の少なくともいずれか1種のリン酸塩、縮合リン酸塩、及び、亜リン酸塩の内の少なくともいずれか1種(以下、(P)成分とする)と、
    酸解離定数pKa≦3の無機酸(HnA(Aは単一原子又は多原子からなる原子団、Hは水素原子、nは1以上の整数))、及び、水素脱離した前記無機酸の残基(Hn-1A、Hn-2A、Hn-3A、・・・、Hn-(n-1) A、A)の内の少なくともいずれか一方(以下、HnA、Hn-1A、Hn-2A、Hn-3A、・・・、Hn-(n-1) A、Aを総称し(HA)成分とする)と、
    前記選択元素Eであるニオブ(Nb)、錫(Sn)、セリウム(Ce)のいずれか一種以上の酸化物のコロイド粒子(以下、(C)成分とする)と、
    を成分とする亜鉛系めっき鋼材用の表面被覆処理剤であって、
    前記(P)成分に含まれる前記選択元素Eと、前記(HA)成分に含まれる単一原子又は原子団Aとの質量比が、E:A=75:25〜1:99で、かつ、
    前記選択元素E及び前記(HA)成分に含まれる単一原子又は原子団Aの合計と、前記(C)成分との質量比が、(E+A):C=99.5:0.5〜55:45
    であることを特徴とする亜鉛系めっき鋼材用の表面被覆処理剤。
  11. ベリリウム(Be)、硼素(B)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、砒素(As)、セレン(Se)、モリブデン(Mo)、カドミウム(Cd)、アンチモン(Sb)、水銀(Hg)、鉛(Pb)、インジウム(In)及びテルル(Te)を除く元素(以下、選択元素Eとする)であるCa、Fe、Zn、Mgの内の少なくともいずれか1種のリン酸塩、縮合リン酸塩、及び、亜リン酸塩の内の少なくともいずれか1種(以下、(P)成分とする)と、
    酸解離定数pKa≦3の無機酸(HnA(Aは単一原子又は多原子からなる原子団、Hは水素原子、nは1以上の整数))、及び、水素脱離した前記無機酸の残基(Hn-1A、Hn-2A、Hn-3A、・・・、Hn-(n-1) A、A)の内の少なくともいずれか一方(以下、HnA、Hn-1A、Hn-2A、Hn-3A、・・・、Hn-(n-1) A、Aを総称し(HA)成分とする)と、
    前記選択元素Eであるニオブ(Nb)、錫(Sn)、セリウム(Ce)のいずれか一種以上の酸化物のコロイド粒子(以下、(C)成分とする)と、
    コロイダルシリカ、二次凝集シリカ、及び金属の次亜リン酸塩の内の少なくとも1種(以下、(S)成分とする)と、
    を成分する亜鉛系めっき鋼材用の表面被覆処理剤であって、前記(P)成分に含まれる前記選択元素Eと、前記(HA)成分に含まれる単一原子又は原子団Aとの質量比が、E:A=75:25〜1:99で、かつ、
    前記選択元素E及び前記(HA)成分に含まれる単一原子又は原子団Aの合計と、前記(C)成分との質量比が、(E+A):C=99.5:0.5〜55:45で、かつ、
    前記選択元素E、前記(HA)成分に含まれる単一原子又は原子団A及び前記(C)成分の合計と前記(S)成分との質量比が、(E+A+C):S=99.5:0.5〜55:45
    であることを特徴とする亜鉛系めっき鋼材用の表面被覆処理剤。
  12. 請求項10又は請求項11に記載の表面被覆処理剤を、亜鉛系めっき鋼材の表面の少なくとも一部に塗布して乾燥し、防錆皮膜を形成することを特徴とする亜鉛系めっき鋼材の表面被覆処理方法。
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