JP5572634B2 - 高エネルギー密度ウルトラキャパシタ用活性炭材料 - Google Patents

高エネルギー密度ウルトラキャパシタ用活性炭材料 Download PDF

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Description

関連出願の説明
本出願は、2008年12月15日に出願された、名称を「高エネルギー密度ウルトラキャパシタ用活性炭材料(Activated Carbon Materials For High Energy Density Ultracapacitors)」とする、米国特許出願第12/335044号の優先権を主張する。
本発明は炭素系電極に関し、さらに詳しくは、そのような電極に使用するための多孔質活性炭材料に関する。本発明は炭素系電極を有する大電力密度エネルギー貯蔵デバイスにも関する。
地球温暖化、環境におけるCOレベルの増加及び全世界石油埋蔵量のおこり得る枯渇への危惧が、ハイブリッド自動車及び電気自動車のような低CO放出技術の開発への関心を促してきた。この点に関し、比較的低コストで高い性能を提供する能力が潜在する、リチウムイオン蓄電池及び電気化学キャパシタがそのような技術に対して、また太陽光及び風力のような再生可能エネルギー源に対しても、次世代エネルギー貯蔵デバイスと見なされている。
電気化学キャパシタは、例えば、電気化学二重層キャパシタ(EDLC)、ウルトラキャパシタまたはスーパーキャパシタとしても知られている。これらのエネルギー貯蔵デバイスは一般に、有機電解質内の多孔質セパレータで隔てられた電極(例えば炭素系電極)対を有する。電荷は、活性炭のような、電気伝導性で大表面積の材料である、電極における可逆的イオン吸着によって電気化学的に蓄積される。電荷蓄積機構に酸化還元反応は関与しないから、電気化学キャパシタは高速で、また数100万回は、充放電を行うことができる。
ウルトラキャパシタの重要な特性は、キャパシタが提供できるエネルギー密度である。エネルギー密度はE=(1/2)CVで与えられ、Cはファラッド単位の電極の静電容量であり、Vはセル電圧である。したがって、エネルギー密度は電極の静電容量またはセル電圧のいずれを高めることによっても高めることができる。しかし、ほとんどの電気化学キャパシタにおいて、セル電圧は電解質分解によって制限される。例えば、ほとんどの有機電解質では、約2.7Vのセル電圧を達成することが可能である。これを基にして、電極の静電容量を高めることによりエネルギー密度をほぼ正比例して高めることができる。
電気化学キャパシタは構造が比較的簡単であるが、その性能は電荷を蓄える電極の特性でほとんど決定される。したがって、電気化学キャパシタ電極に使用するための、静電容量が大きく、コストが低い材料の開発を目指して多大の研究開発がなされている。目標静電容量の達成に加えて、細孔径分布及び導電度のような、他の特性の最適化も要求される。表面官能基及びバルク不純物の制御も要求される。例えば、大静電容量を与え、高速イオン拡散を可能にするように細孔径分布は最適化されるべきである。導電度は、原子的構造を誂製し、窒素のようなドーパントを用いることで高めることができる。電解質の浸潤を促進するために表面官能基の導入を用いることができ、長時間性能を劣化させ得るであろうファラデー電流反応を最小限に抑えるために不純物(特に遷移金属)を制御することができる。
上述から推論され得るように、電極性能は表面積だけの関数ではない。とはいえ、電気化学セル電極に用いられる材料については、上述した特性に加えて、接触表面積が重要な属性である。
高エネルギー密度デバイスへの組込みに適する炭素系電極が知られている。例えば、そのような電極の基本をなす高性能炭素材料は、合成フェノール樹脂前駆体から作成することができる。しかし、合成樹脂のコストが高いことから、そのような炭素系電極のコストは高い。
したがって、エネルギー密度がさらに高いデバイスを可能にする炭素系電極を形成するために用いることができる、より経済的な炭素材料を提供することが有益であろう。
本発明の一態様は、ウルトラキャパシタ及びその他の大電力密度エネルギー貯蔵デバイスに使用するための炭素系電極への組込みに適する、活性炭材料である。そのような材料は、例えば天然非リグノセルロース材料の炭化及び活性化によって、得ることができる。多孔質活性炭材料のための前駆体として非リグノセルロース材料を用いることにより、経済的に成り立つ、大電力高エネルギー密度デバイスを形成することができる。本明細書で定められるように、別途に明示的に定められない限り、「天然非リグノセルロース炭素前駆体」は少なくとも1つの天然非リグノセルロース炭素前駆体を意味する。同様に、例えば「無機化合物」への言及は少なくとも1つの無機化合物を意味する。
本発明のさらなる特徴及び利点は以降の詳細な説明に述べられ、ある程度は、当業者にはその説明から容易に明らかであろうし、あるいは以降の詳細な説明及び添付される特許請求の範囲を含み、また添付図面も含む、本明細書に説明されるように本発明を実施することによって認められるであろう。
上述の全般的説明及び以降の詳細な説明がいずれも本発明の実施形態を提示し、特許請求されるような本発明の本質及び特質の理解のための概要または枠組みの提供が目的とされていることは当然である。添付図面は本発明のさらに深い理解を与えるために含められ、本明細書に組み入れられて本明細書の一部をなす。図面は本発明の様々な実施形態を示し、記述とともに本発明の原理及び動作の説明に役立つ。
図1は、一実施形態にしたがう、自立炭素電極の電気抵抗を測定するために用いた試験装置の略図である。 図2はボタン型セルキャパシタの略図である。 図3Aは、リグノセルロース炭素前駆体から得られた対照炭素材料を示すSEM顕微鏡写真である。 図3Bは、リグノセルロース炭素前駆体から得られた対照炭素材料を示すSEM顕微鏡写真である。 図4は、天然非リグノセルロース炭素前駆体から得られた本発明の炭素材料を示すSEM顕微鏡写真である。 図5Aは様々な活性炭材料についての小角X線回折走査結果である。 図5Bは様々な活性炭材料についての小角X線回折走査結果である。
一実施形態において、例えば非リグノセルロース炭素前駆体の炭化及び活性化によって得られる活性炭材料は、0.08以下の構造秩序比を有し、窒素含有量が0.2重量%より大きい。そのような活性炭材料は、300m/g以上の比表面積を有し、高エネルギーデバイスに用いるための改善された炭素系電極の形成に適する。そのような活性炭材料は、炭素系電極に組み込まれると、70F/cm以上の体積比静電容量及び/または0.1Ω-cm以下の面積比抵抗を有することができる。
活性炭材料を含む炭素系電極はさらに、結合剤または導電性炭素材料のような、少なくとも1つの添加剤を含有することができる。炭素系電極は導電性基板(例えば電流コレクタ)上に形成して電気化学セルに組み込むことができる。
そのような活性炭材料を作成するための方法は、例えば、天然非リグノセルロース炭素前駆体と無機化合物の水性混合物を形成する工程、炭素前駆体を炭化させるために水性混合物を不活性雰囲気内または還元性雰囲気内で加熱する工程、及び炭化された炭素前駆体から無機化合物を除去する工程を含む。
そのような活性炭材料を作成するための別の方法は、第1の炭素材料を形成するために天然非リグノセルロース炭素前駆体を不活性雰囲気内または還元性雰囲気内で加熱する工程、混合物を形成するために第1の炭素材料を無機化合物と混合する工程、無機化合物を第1の炭素材料に取り込むために混合物を加熱する工程、及び第1の炭素材料から無機化合物を除去する工程を含む。有益な態様において、混合する工程は第1の炭素材料を無機化合物の水性混合物と混合する工程を含むことができる。
混合する工程中に、無機化合物は天然非リグノセルロース炭素前駆体の構造または第1の炭素材料の構造に取り込まれ得る。混合を容易にするため、無機化合物は初めに水のような溶媒に溶解させることができる。この手法においては、無機化合物の溶液を天然非リグノセルロース炭素前駆体または第1の炭素材料と混合して、有機化合物が天然非リグノセルロース炭素前駆体または第1の炭素材料に取り込まれるに有効な時間ねかしておくことができる。混合物は、0.5,1,2,4,8時間ないしさらに長時間ねかしておくことができる(例えば0.5〜8時間ねかしておくことができる)。
非リグノセルロース炭素前駆体と無機化合物は適するいかなる比でも組み合わせることができる。無機化合物に対する天然非リグノセルロース炭素前駆体の重量%で表した比は約10:1〜1:10の範囲にすることができる。比の、非限定的な、例には、9:1,8:1,7:1,6:1,5:1,4:1,3:1,2:1,1:1,1:2,1:3,1:4,1:5,1:6,1:7,1:8及び1:9がある。一実施形態にしたがえば、天然非リグノセルロース炭素前駆体に対する無機化合物の比は1以上(例えば、10:1,9:1,8:1,7:1,6:1,5:1,4:1,3:1,2:1または1:1)である。
同様に、第1の炭素材料と無機化合物は適するいかなる比でも組み合わせることができる。無機化合物に対する第1の炭素材料の重量%で表した比は約10:1〜1:10の範囲(例えば、9:1,8:1,7:1,6:1,5:1,4:1,3:1,2:1,1:1,1:2,1:3,1:4,1:5,1:6,1:7,1:8または1:9)の範囲にすることができる。
無機化合物が天然非リグノセルロース炭素前駆体に取り込まれる実施形態においては、(必要に応じてねかされた)混合物が炭素前駆体を炭化させるに有効な温度に加熱される。混合物は不活性雰囲気内または還元性雰囲気内で加熱されることが好ましい。混合物は、約600℃〜900℃の温度(例えば600℃,650℃,700℃,750℃,800℃,850℃または900℃)で、あらかじめ定められた時間(例えば、0.5,1,2,4,8時間ないしさらに長時間)加熱し、次いで冷却することができる。加熱する工程中に、天然非リグノセルロース炭素前駆体は分解し、炭素を形成する。
無機化合物が第1の炭素材料に取り込まれる実施形態において、混合物は無機化合物が第1の炭素材料に取り込まれるに有効な温度に加熱される。混合物は、約300℃〜850℃の温度で、あらかじめ定められた時間(例えば、0.5,1,2,4,8時間ないしさらに長時間)加熱し、次いで冷却することができる。
冷却後、無機化合物が取り込まれている炭素材料は無機化合物を除去するために溶剤内でリンスされる。無機化合物の溶出に好ましい溶剤は水である。必要に応じて、溶出剤は酸を含有することができる。無機化合物を除去するためのプロセスの1つは、炭素材料を水と酸で順次にリンスする工程を含む。無機化合物を除去するための別のプロセスは水性酸混合物(例えば酸と水の混合物)で炭素材料をリンスする工程を含む。溶出中に用いられる酸には塩酸を含めることができる。無機化合物を溶出させるプロセスにより、多孔質活性炭材料が形成され、細孔は先に無機化合物で埋められていた空間によって定められる。本発明は、上述した方法のいずれか1つにしたがって作成された多孔質活性炭材料にも関する。
本発明にしたがう活性炭材料を用いて炭素系電極を作成することができる。炭素系電極を作成するための方法は、天然非リグノセルロース炭素前駆体と無機化合物の水性混合物を形成する工程、炭素前駆体を炭化させるために水性混合物を不活性雰囲気内または還元性雰囲気内で加熱する工程、炭化前駆体から無機化合物を除去する工程、及び得られた多孔質活性炭材料で炭素系電極を形成する工程を含む。
炭素系電極を作成するための別の方法は、第1の炭素材料を形成するために天然非リグノセルロース炭素前駆体を不活性雰囲気内または還元性雰囲気内で加熱する工程、混合物を形成するために第1の炭素材料を無機化合物と混合する工程、無機化合物を第1の炭素材料に取り込むために加熱する工程、多孔質活性炭材料を作成するために第1の炭素材料から無機化合物を除去する工程、及び多孔質活性炭材料で炭素系電極を形成する工程を含む。
炭素系電極を作成するためのまた別の方法は、中間炭素材料を形成するために天然非リグノセルロース炭素前駆体を不活性雰囲気内または還元性雰囲気内で加熱する工程、中間炭素材料を酸化性雰囲気内で加熱する工程、及び得られた多孔質活性炭材料で炭素系電極を形成する工程を含む。いずれの方法で形成された炭素材料も、電極形成前に粉砕して粒径をさらに細かくすることができる。
必要に応じて、炭素系電極を作成するための上記の方法とともに、多孔質活性炭材料を、カーボンブラック及び/またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のような高分子結合剤またはその他の適する結合剤と混合し、圧縮して、炭素系電極を形成することができる。
例として、60〜90重量%の活性炭材料、5〜20重量%のカーボンブラック及び5〜20重量%のPTFEを含有する混合物を圧延することにより、厚さが約100〜300μmの範囲にあるカーボン紙を作成することができる。カーボン紙からカーボンシートを打ち抜くかまたは別の手段でパターン成形し、導電性電流コレクタに貼り合わせて、炭素系電極を形成することができる。
高エネルギー密度デバイスには、ウルトラキャパシタを含めることができる。ウルトラキャパシタは、ゼリーロール構造、角柱構造、ハニカム構造またはその他の適する形状を有することができる。本発明にしたがって作成された炭素系電極は、炭素−炭素ウルトラキャパシタまたはハイブリッドウルトラキャパシタに組み込むことができる。炭素−炭素ウルトラキャパシタでは、いずれの電極も炭素系電極である。他方でハイブリッドウルトラキャパシタでは、電極の一方が炭素系であり、他方の電極は、酸化鉛、酸化ルテチウムまたは水酸化ニッケルのような擬容量性材料あるいは導電性高分子材(例えばパラフルオロフェニル-チオフェン)のような別の材料とすることができる。
本発明の炭素系電極を用いて作成されたウルトラキャパシタは、市販の炭素材料から得られる電極を用いて作成されたウルトラキャパシタのエネルギー密度より大きい(例えば、10%,20%,30%,40%または50%大きい)エネルギー密度を示すことから、有益である。
本発明にしたがって用いられる無機化合物には、水酸化アルカリ金属または塩化アルカリ金属(例えば、NaOH,KOH,NaCl,KCl)、リン酸塩、またはCaCl,ZnClのような、別の適する塩を含めることができる。
炭素前駆体は非リグノセルロース材料とすることができる。本明細書で定められるように、セルロースとリグニンのいずれをも含有する物質はリグノセルロースであり、例えば、セルロースが密にリグニンに結びついている植物の木質細胞壁の基礎部分を構成している、いくつかの近縁物質のいずれをも含めることができる。本発明とともに用いられる非リグノセルロース炭素前駆体はリグニン及びセルロースの少なくとも一方を実質的に含有していない。「実質的に含有していない」とは、リグニン及びセルロースの少なくとも一方は炭素前駆体の組成の、例えば多くとも0.5重量%,1重量%または2重量%でしかないことを意味する。
一実施形態において、天然非リグノセルロース炭素前駆体はセルロースを含有し、リグニンは実質的に含有していない。別の実施形態において、天然非リグノセルロース炭素前駆体はリグニンを含有しているが、セルロースは実質的に含有していない。また別の実施形態において、天然非リグノセルロース炭素前駆体はリグニン及びセルロースのいずれをも実質的に含有していない。天然非リグノセルロース炭素前駆体は、合成樹脂のような合成材料ではない。
「木」を意味するラテン語である、リグニンは、植物に剛性を与える化合物である。リグニンは非晶質構造及び高分子量を有する三次元高分子である。植物繊維の主要な3つの構成要素の内で、リグニンの親水性は最も弱い。さらに、リグニンは熱可塑性である(すなわち、リグニンは比較的低い温度で軟化し始め、温度が高くなるにつれて容易に流動するであろう)。
セルロースは植物繊維の基本構造成分である。セルロース分子は、例えば、相互に連結して長鎖をなすグルコース単位を含むことができ、この長鎖は続いて相互に連結して超微小繊維と呼ばれる束をなす。植物繊維内にはヘミセルロースも見られる。ヘミセルロースは一般に、相互に結合して比較的短い有枝鎖をなす、多糖類である。一般に親水性である、ヘミセルロースは通常、セルロース超微小繊維と密に結び付けられ、マトリックス内にセルロースを埋め込んでいる。
一般に農作物からのリグノセルロース繊維は、例えば、藁、麻、亜麻、サイザル麻、ジュート、ココナツ椰子殻粉、木粉、等に見られる。他方で、非リグノセルロース繊維は実質的にリグニン及び/またはセルロースを含有しない。
天然非リグノセルロース炭素前駆体は、コムギ粉、クルミ粉、トウモロコシ粉、トウモロコシデンプン、米粉及びジャガイモ粉のような、食用穀物から得ることができる。他の天然非リグノセルロース炭素前駆体には、ビート、キビ、ダイズ、オオムギ及びワタがある。非リグノセルロース材料は、遺伝子工学によっていてもいなくても差し支えない、農作物または植物から得ることができる。
非リグノセルロース炭素前駆体の例はコムギ粉である。コムギ粉は、コムギの種である、コムギの実を粉に碾くことで得られる。コムギの実には、胚乳、胚及び殻の3つの主要部がある。全粒コムギ粉は実のこれらの3つの部分の全てを含むが、精白粉は胚だけから粉に碾かれる。
組成上、精白粉はほとんどデンプンからなるが、当然、別の成分が存在する。精白粉の主要成分は、大体の百分率を括弧内に示して、デンプン(68〜76%)、タンパク質(6〜18%)、水分(11〜14%)、ゴム質(2〜3%)、脂質(1〜1.5%)、灰分(<0.5%)及び糖質(<0.5%)である。
デンプンは精白粉の大部分を構成する。デンプンが「少ない」とされる強力粉でさえ、他の成分を全て合わせたよりも多くのデンプンを含有する。デンプンは一般に小粒または細粒としてコムギ粉内に存在する。タンパク質塊がデンプン粒を結合して、胚内の所定の位置に保持する。グルテニン及びグリアジン−グルテン形成タンパク質−が一般に胚内のタンパク質の約80%を構成する。精白粉内の他のタンパク質には、アミラーゼ、プロテアーゼ及びリパーゼのような、酵素がある。デンプン以外のコムギ粉内の炭水化物にはゴム質、特にペントサンゴムがある。ペントサンゴムは可溶性食物繊維源である。脂質には油脂及び乳化剤があり、灰分には、鉄、銅、カリウム、ナトリウム及び亜鉛を含むことができる、無機物(無機塩類)がある。
一般的な電気二重層キャパシタ(EDLC)においては、一対の炭素系電極が多孔質セパレータで隔てられ、電極/セパレータ/電極スタックが液体の無機電解質または有機電解質で浸潤される。電極は、他の添加物(例えば結合剤)と混合され、圧縮されて薄いシートにされて、支持体の導電性金属電流コレクタに貼り合わされた、活性炭粉末を含む。
使用中、対向する電極上に蓄えられる蓄積電荷によって電気二重層が形成され得る。電気二重層に蓄えられる電荷量はキャパシタの達成し得るエネルギー密度及び電力密度に大きく影響する。
ウルトラキャパシタの性能(エネルギー密度及び電力密度)は電極を構成する活性炭材料の特性に強く依存する。活性炭材料の特性は、続いて、炭素原子の構造秩序、材料の多孔度及び細孔径分布、窒素含有量、及び炭素系電極に組み込まれたときの活性炭材料の電気特性を評価することによって、測ることができる。該当する電気特性には面積比抵抗及び比静電容量がある。
炭素構造秩序は小角X線回折(XRD)を用いて粉末試料から決定することができる。XRD用試料を作成するため、粉末試料をメノウの乳鉢及び乳棒で軽く粉砕し、粉砕試料をBruker-AXS粉末試料ホルダに押し込んだ。X線回折結果は、Bruker-AXS D4 Endeaver X線回折計により0.02°ステップ及び1秒の滞留時間で0.5°〜20°の2θ角度範囲にかけて、CuKα線(1.5406Å)を用いて、得た。
炭素構造比は60ÅにおけるX線の規格化反射強度として計算した。詳しくは、60Åのd-間隔における回折ビームの強度(I60)を176Åのd-間隔における強度(I176)と15Åのd-間隔における強度(I15)の正の差で割り算した。すなわち、炭素構造比はSOR=I60/|I176−I15|と定義される。
活性炭材料の電気特性は、炭素系電極の特性を測定することによって評価することができる。本明細書で評価した炭素系電極は、85重量%の活性炭材料、5重量%の導電性炭素(例えば、米国マサチューセッツ州ボストンのCabot Corporationから市販されている、Black Pearls(登録商標))及び10重量%のTefron(登録商標)(PTFE)を含む。
図1に簡略に示される試験装置400を用いて自立炭素電極の厚さ方向電気抵抗を測定した。試験装置400は、それぞれが直径1インチ(25.4mm)であり、25μm厚銀ホイルで覆われている、2枚のセラミックディスク412,414を備える。セラミックディスク412,414は、上部プラテン422及び下部プラテン424を有する、Instron(登録商標)電気化学試験システム(モデル4202)に取り付けた。上部プラテン422に力Fを印加することにより、セラミックディスク412,414を介して試料430にあらかじめ定められた荷重をかけることができる。
試験にかけられる炭素電極430の直径の測定値は1.1インチ(27.94mm)であり、セラミックディスク412,414の間に中心を合わせておかれる。銀ホイルが標準の4線構成でデジタルマルチメータ(ケイスレー,モデル2700)440に接続される。100ポンド(45.36kg)の荷重が炭素電極にかけられて、マルチメータ440が外側の2本のリード線446a446bに既知の大きさの電流(i)を印加し、その結果生じる内側の2本のリード線448aと448bの間の電圧(V)を測定する。

測定された電圧は電気抵抗値に変換される。無試料時の銀ホイル間の電気抵抗に相当するバックグラウンド電気抵抗値が測定された電気抵抗値から差し引かれる。マルチメータは1μΩの分解能で電気抵抗を測定することができる。報告される値は、同じ電極材料の少なくとも3つの異なる試料からの測定値の平均値を表す。
それぞれの電極の電気抵抗測定値(R:Ω単位)は、電極材料の比抵抗(ρ:Ω-cm単位)、電極厚(l:cm単位)及び銀ホイルに接している電極の幾何学的面積(A:cm単位)と既知の関係式(1):
Figure 0005572634
によって関係付けることができる。
したがって、電極の面積比抵抗(Rsp:Ω-cm単位)は式(2):
Figure 0005572634
で与えられる。
面積比抵抗と同様に、活性炭材料の体積比静電容量も材料を炭素系電極につくることによって測定することができる。図2を参照すれば、電極材料シートから直径が0625インチ(15.88mm)の炭素電極532,534を打ち抜くことにより、ボタン型セル500を形成した。同等の炭素電極523,534の間にセパレータ540をおき、続いて、この炭素電極/セパレータ/炭素電極スタックを2つの導電性炭素被覆アルミニウム電流コレクタ512,514の間に挟み込んだ。セル500を封止するために、炭素電極532,534の周縁を巡って熱硬化性高分子材リング522,524を形成し、アセトニトリル中1.5Mテトラエチルアンモニウム-テトラフルオロボレート(TEA-TFB)溶液のような有機電解質でセルを満たした。
別の実施形態にしたがえば、電気化学セルは、活性炭材料を含む第1の電極、多孔質セパレータ及び一対の導電性基板を有し、多孔質セパレータは第1の電極と第2の電極の間に配置され、第1の電極及び第2の電極はそれぞれ導電性基板のそれぞれと電気的に接触している。
セルの静電容量(Cセル)は定電流放電によって測定した。始めにセルを定電流(i充電)で所望の電圧(例えば2.7V)まで充電し、続いて定電流(i放電)で放電させた。オームの法則によれば、キャパシタ電流(i)は、式(3):
Figure 0005572634
にしたがい、キャパシタ電圧の時間微分に比例する。ここで、Cは静電容量、Vはセル電圧(V単位)、tは時間(秒単位)である。
定電流放電曲線(セル電圧対時間)の勾配を測定することにより、式(4):
Figure 0005572634
としてセル静電容量(ファラッド単位)を計算することができる。
セル静電容量は、炭素電極のそれぞれの電気化学的二重層静電容量によって表される2つの個別静電容量の調和総和(直列キャパシタの静電容量)である。この関係は式(5):
Figure 0005572634
と表すことができる。ここで、C及びCはセル500のそれぞれの炭素電極532,534の二重層静電容量である。
そのような静電容量の大きさは炭素電極の体積比静電容量と、式(6):
Figure 0005572634
及び式(7):
Figure 0005572634
として、関係付けることができる。ここで、Csp,1及びCsp,2はそれぞれの炭素電極の比静電容量(ファラッド単位)であり、V及びVは対応する電極体積である。試験セルは寸法及び組成が同じ電極を有するから、C=C,Csp,1=Csp,2(=Csp)及びV=V(=V総計/2;ここでV総計はセルの炭素電極の総体積(cm))である。したがって、式(5),(6)及び(7)は、体積比静電容量,Cspを与えるために式(8):
Figure 0005572634
のように組み合わせることができ、よって式(9):
Figure 0005572634
が得られる。
選ばれた試料の窒素含有量(原子重量%)は、サーモフラッシュ(Thermo Flash)アナライザを用いて決定した。この手法は、熱伝導度検出(TCD)を用いる古典的デュマ(Dumas)法であり、ASTM D5373及びASTM D5291に説明されている。
重量を測定した試料を酸素中950℃で燃焼させた。ヘリウムキャリアガスを用いて、(N及びNOを含む)燃焼生成物を燃焼触媒及びスクラバーを通し、還元銅で満たしたチューブを通して、掃き出した。次いで、クロマトグラフのカラムでNを他のガスから分離し、TCDで測定した。
炭素材料は、約300m/gより大きい、すなわち、350m/g,400m/g,500m/gまたは1000m/gより大きい、比表面積を有することができる。
以下の実施例によって本発明はさらに明解になるであろう。
実施例1
初めに、窒素流中800℃で2時間、コムギ粉を炭化させた。得られた炭化前駆体を、次いで、KOH溶液(水中46重量%)と1:5の炭素:KOH比(重量/重量)で混合した。混合物を窒素中800℃で2時間加熱し、室温まで冷却させた。冷却した混合物を水で洗い、次いで、カリウムを除去するために希HClで洗浄した。カリウム除去の完了は溶離液のpHをモニタすることで確認した。得られた炭素粉末を乾燥させ、粉砕して微細(〜10μm)粉末にした。
80gの炭素粉末を10gのカーボンブラック及び10gのPTFEと混合して十分に混合された集塊を得た。この混合物を次いでロールミルで圧延して厚さが約100μmの十分に結合したフィルムを得た。このフィルムを打ち抜くことにより、炭素系電極を作成した。
炭素系電極をアセトニトリル中1.5Mテトラエチルアンモニウム-テトラフルオロボレート(TEA-TFB)溶液に浸した。多孔質セパレータも電解質溶液に浸し、電極/セパレータ/電極スタックを対向するアルミニウム電流コレクタと集成してボタン型セルにした。セルの性能を測定するためにボルタンメトリ試験及び定電流試験をともに行った。活性炭電極の体積比静電容量は96F/cmであった。
実施例2
コムギ粉をトウモロコシ粉で置き換えたことを除いて、実施例1の実験を繰り返した。活性炭電極の体積比静電容量は97F/cmであった。
実施例3(比較例)
対照例として、樹脂系炭素材料を、KOHの水溶液(45重量%)を水性フェノール樹脂(Georgia Pacific GP(登録商標) 510D34)と重量で3:1の比で組み合わせることで、作成した。混合物をオーブン内125℃で24時間加熱することで硬化させ、次いで175℃で24時間加熱して黄褐色を帯びた気泡体状固体を得た。硬化した混合物を機械力で砕いて小さくし、炭化/活性化のために、黒鉛るつぼに入れてレトルト炉(CM Furnaces, モデル1216FL)に装填した。
炉温を200℃/時間の昇温速度で800℃まで挙げ、800℃に2時間保持し、次いで自然冷却した。加熱サイクルを通して、炉を窒素ガスでパージした。
室温まで冷却した後、炭素材料をDI(脱イオン)水に数分間浸し、濾過し、既知の量の37%HCl溶液(炭素1g毎に2ミリリットル)に1時間浸し、濾過し、次いで溶離液のpHが洗浄前DI水と同じになるまでDI水洗浄を繰り返した。炭素を最終的に真空オーブン内110℃で一晩乾燥させ、次いで粉砕して所望の粒径にした。
実施例1で述べた手順を用いて測定した体積比静電容量は105F/cmであった。
実施例4(比較例)
ウルトラキャパシタで用いるために開発された、(リグノセルロース材料から得られた)市販のPICA炭素で本発明の炭素を置き換えて、実施例1に説明したボタン型電池処方を用いて試験した。体積比静電容量は45F/cmであった。図3A及び3Bは、ブロック様細粒構造を有する、この材料のSEM顕微鏡写真を示す。BET表面積は1800m/gであった。
実施例5(比較例)
別の市販のクラレ炭素−(リグノセルロース材料から得た)YP50も、実施例1にしたがうボタン型セル処方を用いて炭化させた。体積比静電容量は65F/cmであった。
実施例6
コムギ粉をKOH溶液(水中46重量%)と混合して、1:3のコムギ粉:KOH(重量/重量)比を得た。混合物を1時間ねかせて、KOHをコムギ粉構造に取り込ませた。次いで混合物を雰囲気制御炉に入れ、窒素流中800℃で4時間加熱し、窒素内で室温まで冷却した。
冷却後、混合物を初めは水で洗い、次いでカリウムを除去するためにHClで洗った。カリウム除去の完了は溶離液のpHをモニタすることで確認した。炭素材料を乾燥させ、粉砕して微細(〜10μm)粉末にした。
この炭素材料のSEM顕微鏡写真を図4に示す。実施例4の対照PICA炭素とは異なり、本発明の炭素は炭素材料の薄片を含む。この構造が電極作成中の炭素材料の充填を容易にすると考えられる。
実施例1の処方によってボタン型電池を集成した。体積比静電容量は95F/cmであった。
実施例7(比較例)
コムギ粉をクルミ殻粉で置き換えたことを除いて、実施例6の実験を繰り返した。体積比静電容量は59F/cmであった。本実施例はリグノセルロース前駆体では得られる体積比静電容量が小さくなることを示す。
実施例8
トウモロコシ粉を用い、粉:KOH比が1:5であり、試料を700℃に設定した炉内で加熱したことを除いて、実施例6の実験を繰り返した。
実施例9
米粉を用いて実施例6の実験を繰り返した。炭素を結合剤と混合し、実施例1に説明される処方にしたがって電極を作成した。体積比静電容量は80F/cmであった。
実施例10
粉対KOH比を1:1に変更したことを除いて、実施例6の実験を繰り返した。炭素を結合剤と混合し、実施例1に説明されるように電極を作成した。体積比静電容量は88F/cmであった。
実施例11
初めに、窒素流中800℃で4時間、コムギ粉を炭化させた。得られた炭化前駆体材料をKOH溶液(水中46重量%)と1:3の炭素:KOH比(重量/重量)で混合した。次いで混合物を窒素中800℃で4時間加熱し、窒素内で室温まで冷却させた。冷却後、混合物を水で洗い、最後に、カリウムを除去するために希HClで洗浄した。カリウム除去の完了は溶離液のpHをモニタすることで確認した。次いで、炭素粉末を乾燥させ、粉砕して微細(〜10μm)粉末にし、結合剤と混合し、実施例1に説明されるように電極を作成した。体積比静電容量は94F/cmであった。
実施例12
トウモロコシ粉を用いて実施例11の実験を繰り返した。炭素を結合剤と混合し、実施例1に説明されるように電極を作成した。体積比静電容量は91F/cmであった。
実施例13
コムギ粉を初めに窒素中850℃で炭化させ、続いて二酸化炭素で活性化した。こうして得られた炭素を結合剤と混合し、実施例1に説明されるように電極を作成した。体積比静電容量は80F/cmであった。
本発明の実施形態にしたがう非リグノセルロース誘導活性炭と樹脂系及びリグノセルロース(ココナツ椰子殻)系の対照炭素のそれぞれについてのX線回折曲線が、図5A〜5Bに示される。図5AはX線強度対2θのプロットであり、図5Bは、d-間隔に対する、対応するプロットである。
図5A及び5Bにおいて、曲線310及び312は、本発明の実施形態にしたがう、非リグノセルロース(それぞれコムギ粉及びトウモロコシ粉)から得られた活性炭に対応する。詳しくは、曲線310は実施例1の材料に相当するコムギ粉から得られた活性炭を表し、曲線312は実施例2の材料に相当するトウモロコシ粉から得られた活性炭を表す。
曲線320,330及び332は対照試料の活性炭に対応する。曲線320は比較例3の材料に相当する樹脂から得られた活性炭を表す。曲線330及び332はそれぞれ実施例4及び5の市販のPICA活性炭及びクラレYP-50活性炭に対応する。クラレYP-50材料及びPICA材料はリグノセルロース(ココナツ椰子殻)から得られる活性炭である。
図5A及び5Bを参照して分かるように、市販のPICA活性炭材料及びクラレYP-50活性炭材料は、ドメイン及びサブドメイン結晶秩序に対応する1つないしさらに多くの顕著な小角反射を示すが、非リグノセルロース活性炭には実質的にそのような反射がない。小角結晶秩序の不在に関連付けられる、この効果は、上で定義した、炭素構造秩序比に関して定量化される。
構造秩序比、電気データ及び組成データの摘要が表1に与えられている。一実施形態にしたがえば、活性炭材料は0.08以下の構造秩序比及び0.2重量%より大きい窒素含有量を有することができる。別の実施形態において、活性炭材料は0.07,0.06,0.05,0.04,0.03,0.02または0.01以下の構造秩序比を有することができる。活性炭材料を含む炭素系電極は0.1Ω-cm以下(例えば、0.09,0.08,0.07,0.06,0.05,0.04,0.03,0.02または0.01Ω-cm以下)の面積比抵抗を有することができる。さらに、本発明にしたがう炭素系電極は、70F/cm以上(例えば、75,80,85,90または95F/cm以上)の体積比静電容量を有することができる。
表1に示されるように、非リグノセルロース前駆体から得られる活性炭材料は樹脂から得られる活性炭の窒素含有量より大きい窒素含有量を有する。本発明にしたがう活性炭材料は0.2重量%より大きく、例えば約5重量%になる、(例えば、0.2,0.5,1,1.5,2,2.5,3,3.5,4または4.5重量%の)原子窒素含有量を有することができる。
理論に束縛されることは望まずに、活性炭への窒素の取り込みは、電気抵抗を下げて静電容量を大きくし、よってそのような活性炭の、EDLCのような電気化学セルにおける炭素系電極の形態で用いられたときの、効率を向上させると考えられる。窒素は炭化/活性化中に本発明の炭素材料に取り込まれ、追加のプロセス工程は必要とされないことが有利である。
Figure 0005572634
本発明の精神及び範囲を逸脱することなく本発明に様々な改変及び変形がなされ得ることが当業者には明らかであろう。本発明の精神及び実体を取り入れている開示された実施形態の改変、組合せ、補助組合せ及び変形が当業者に思い浮かび得るから、本発明は添付される特許請求項及びそれらの等価物の範囲内にある全てを含むと解されるべきである。
400 試験装置
412,414 セラミックディスク
422,424 プラテン
430 試料
440 デジタルマルチメータ
446a,446b,448a,448b リード線
500 ボタン型セル
512,514 電流コレクタ
522,524 高分子材リング
532,534 炭素電極
540 セパレータ

Claims (4)

  1. 活性炭材料において、
    該活性炭材料は、リグニンおよびセルロースを含有していない非リグノセルロース炭素前駆体から形成され、
    60Åのd−間隔における回折ビームの強度をI 60 、176Åのd−間隔における強度をI 176 、15Åのd−間隔における強度をI 15 としたとき、I 60 /|I 176 −I 15 |で定義される構造秩序比(SOR)が0.05以下であり
    0.2重量%より大きい窒素含有量を有する
    ことを特徴とする活性炭材料。
  2. 前記窒素含有量が1重量%より大きいことを特徴とする請求項1に記載の活性炭材料。
  3. 前記活性炭材料が70F/cm以上の体積比静電容量を有することを特徴とする請求項1に記載の活性炭材料。
  4. 電気化学セルにおいて、
    請求項1に記載の活性炭材料を含む第1の電極、
    多孔質セパレータ、及び
    一対の導電性基板、
    を有し、
    前記多孔質セパレータが前記第1の電極と第2の電極の間に配され、
    前記第1の電極及び前記第2の電極がそれぞれ、前記導電性基板のそれぞれと電気的に接触している、
    ことを特徴とする電気化学セル。
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