JP5572403B2 - 多孔質プラチナ粒子の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、多孔質プラチナ粒子の製造方法に関する。
プラチナは高い触媒能を有し、石油精製、石油化学、自動車および工場の排ガス浄化、医農薬製造、化成品製造などの幅広い分野で極めて重要な触媒として知られている。
プラチナ触媒は、旧来から金属酸化物または活性炭担体上に担持した複合粒子の形態で反応に供されている。この場合、担体上に担持されたプラチナ粒子のサイズの最適値は反応ごとに異なり(非特許文献1)、しかも担持触媒の調製法によってプラチナ粒子サイズは異なるため(非特許文献2)、各反応に特化された担持型プラチナ触媒製造法の最適化が広く検討されている。
一方、プラチナ粒子の形状と触媒活性との間に何らかの関係があることが明らかになりつつある。例えば非特許文献3では、ヘキサシアノ鉄(III)とチオ硫酸イオンとの反応におけるプラチナ触媒の活性は、粒子形状に依存することが明らかにされた。
そこで、異なる形状を有するナノ構造、特に大きな比表面積が期待できる多孔質ナノ構造、を有するプラチナの合成法の提供が渇望される。
多孔質ナノ構造を有する粒子は、例えばテンプレート合成法(非特許文献4)、一次ナノ粒子の位置選択的付着法(非特許文献5)などの方法により合成される。しかしこれらのうちの前者は反応のスケールアップが困難であることから工業的実施は事実上不可能であり、一方後者は表面が互いに類似の原子配置をとっている一次ナノ粒子の組み合わせにのみ適用可能であるため適用範囲が極めて狭いとの指摘がなされている。
近年、プラチナ錯化合物を特定の界面活性を含有する水溶液中で水素化ホウ素ナトリウムによって還元することによってスポンジ状のプラチナ粒子を製造する方法が提案された(特許文献1)。この技術は、大粒径であって多孔質ナノ構造を有する大表面積のプラチナ粒子を容易に製造しうるものであるが、本技術によって得られる多孔質プラチナ粒子は、一次微粒子がゆるく凝集した凝集体であり、分散媒中における分散安定性に乏しく、保存中にさらなる凝集が起こるとの欠点を有する。
特開2006−45582号公報
荒井ら、「超微粒子−その化学と機能」、朝倉書店、124(1993) 内田ら、触媒、22、310(1977) Nano. Lett., 4, 1343(2004) Science, 278, 838(1997) Chem. Mater., 18, 2468(2006) J. Am. Chem. Soc., 82,2141(1960) J. Chem. Soc., 3742(1963) J. Am. Chem. Soc., 113 , 8183(1991)
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、各種の反応において従来のプラチナ触媒よりも有意に高い活性を示し、しかも分散媒中における分散安定性に優れる粒径の大きな多孔質プラチナ粒子を製造する方法を提供することにある。
本発明によると、本発明の上記目的および利点は、
結晶性プラチナ粒子と、
アミン化合物および水素化アルミニウムの錯体と
を50〜300℃において接触させて少なくともプラチナおよびアルミニウムからなる複合粒子を形成し、
該複合粒子を酸または塩基と接触させて該複合粒子中のアルミニウムを溶出させる工程を経る、多孔質プラチナ粒子の製造方法によって達成される。
本発明によると、非常に高い活性を示し、分散媒中における分散安定性に優れる多孔質プラチナ粒子を製造する方法が提供される。
本発明の方法によって製造された多孔質プラチナ粒子は、例えば燃料電池の電極触媒、車輌排気ガスの除害化触媒、各種化学反応の触媒(例えば石油化学工業におけるクラッキング触媒など)などの用途に好適に使用することができる。
本発明の方法によって製造された多孔質プラチナ粒子のそれぞれは、大粒径であって分散媒中に独立して存在しうるから互いに接着して凝集することがなく、分散媒中の分散安定性に優れるから、該分散媒中における反応を均一且つ高効率で触媒することができるほか、該分散物を用いて多孔質プラチナ粒子を任意の形状に加工して使用に供することも容易且つ安価に行うことができる。またこの多孔質プラチナ粒子は、微細なナノ構造を有して比表面積が極めて大きく、これにより各種の反応において従来のプラチナ触媒よりも有意に高い活性を示すから、高価なプラチナの使用量を顕著に減ずることができ、触媒反応を利用して製造される各種化学工業製品の製造コストないし触媒反応を利用して行う各種製品の運転コストの著しい削減に資する。
合成例1で得られた結晶性プラチナ粒子のTEM像である。 実施例1および2ならびに比較例1で得られたサイクリックボルタモグラムである。 実施例3で得られた複合粒子のTEM像である。 実施例3で得られた多孔質プラチナ粒子のTEM像である。
本発明の多孔質プラチナ粒子の製造方法は、
結晶性プラチナ粒子と、
アミン化合物および水素化アルミニウムの錯体と
を50〜300℃において接触させて少なくともプラチナおよびアルミニウムからなる複合粒子を形成し、
該複合粒子を酸または塩基と接触させて該複合粒子中のアルミニウムを溶出させる工程を経ることを特徴とする。
以下、本発明について詳細に説明する。
<結晶性プラチナ粒子>
本発明に使用される結晶性プラチナ粒子としては、その粒径が大きいものを使用することが、得られる多孔質プラチナ粒子の粒径を大きくしうる点で好ましい。本発明に使用される結晶性プラチナ粒子は、その平均粒径が10nmを超えることが好ましく、15nm以上であることがより好ましく、特に30〜50nmであることが好ましい。本明細書における「粒子」とは、球形および略球形のほか、キューボクタヘドロン(cuboctahedron=立方八面体)に結晶成長した結晶性固体、かかる立方体の頂点近傍において結晶が過成長した略octapod状の結晶性固体およびこれらの形状の頂点および辺のうちの少なくとも1つが丸みを帯びた如き形状を有する固体をも含む概念である。
本発明に使用される結晶性プラチナ粒子としては、面心立方晶系をとる略立方体状または略octapod状の単結晶のプラチナ粒子であることが好ましい。この場合における平均粒径とは、結晶性プラチナ粒子の透過型電子顕微鏡像から算出された一辺の長さ(略octapod形状の場合には隣接する頂点間の距離)の平均値であるものとして理解されるべきである。
このような結晶性プラチナ粒子は、例えば
プラチナ錯化合物と
酸と
炭素数2〜12の1級アルコールと
脂肪族1級アミンと
を、有機溶媒中で接触させることにより製造することができる。
以下、本発明における好ましい結晶性プラチナ粒子の製造に使用される各成分について説明する。
[プラチナ錯化合物]
本発明における好ましい結晶性プラチナ粒子の製造に用いられるプラチナ錯化合物としては、後述の有機溶媒に溶解し、後述の1級アルコールにより還元されることによって金属プラチナとなりうる錯化合物であれば制限なく使用することができる。ここで「錯化合物」とは、錯体および化合物の双方を包含する概念であり、特に下記に例示されるものを包含する概念である。
本発明におけるプラチナ錯化合物としては、プラチナ(II)またはプラチナ(IV)の錯化合物であることが好ましく、下記式(P1)〜(P5)
(式(P1)中、Rは、それぞれ、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシル基、炭素数1〜6のフルオロアルキル基または炭素数1〜6のフルオロアルコキシル基であり、Rは、それぞれ、水素原子または炭素数1〜6のアルキル基である。)
PtX・D (P2)
(式(P2)中、Xはハロゲン原子であり、Dはモノエン配位子、ジエン配位子、炭素数1〜6のアルキル基を有するチオエーテル配位子、トリアリールホスフィンまたは芳香族配位子であり、aは1または2である。)
Pt(CO) (P3)
(式(P3)中、Xはハロゲン原子であり、bは0または2であり、cは2または4である。)
Pt(NH (P4)
(式(P4)中、Yはハロゲン原子、水酸基または硝酸イオン(NO )であり、Zは水配位子であり、dは0または1である。)
のそれぞれで表される錯化合物、ビス(ジベンジリデンアセトン)プラチナ、トリス(ジベンジリデンアセトン)ジプラチナ、HPtCl、[Pt(NH][PtCl]、Pt(NHClおよびPt(NH(OCOCHよりなる群から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。上記HPtClは、カリウム塩、ナトリウム塩などの塩の形態で使用してもよい。
上記式(P1)におけるRの炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、i−プロピル基、t−ブチル基などを;
の炭素数1〜6のアルコキシル基としては、例えばメトキシル基、エトキシル基、i−プロポキシル基、t−ブトキシル基などを;
の炭素数1〜6のフルオロアルキル基としては、例えばトリフルオロメチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、パーフルオロエチル基などを;
の炭素数1〜6のフルオロアルコキシル基としては、例えばトリフルオロメトキシル基、2,2,2−トリフルオロエトキシル基、パーフルオロエトキシル基などを、それぞれ挙げることができる。Rとしては、炭素数1〜6のアルキル基またはフルオロアルキル基であることが好ましく、メチル基またはトリフルオロメチル基であることがより好ましい。上記式(P1)におけるRの炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、2−プロピル基、t−ブチル基などを挙げることができる。Rとしては、水素原子であることが好ましい。
上記式(P1)で表される錯化合物の具体例としては、例えばプラチナビス(アセチルアセトナート)、プラチナビス(1,1,1,5,5,5−ヘキサフルオロアセチルアセトナート)などを挙げることができる。
上記式(P2)におけるXのハロゲン原子としては、例えば塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などを挙げることができる。Dのモノエン配位子としては、例えばエチレン、プロピレンなどを;
ジエン配位子としては、例えば1,5−ヘキサジエン、ノルボルナ−2,5−ジエン、1,3−シクロペンタジエン、1,5−シクロオクタジエン、ビシクロペンタジエンなどを;
炭素数1〜6のアルキル基を有するチオエーテル配位子としては、例えばジメチルチオエーテル、ジエチルチオエーテル、ジイソプロピルチオエーテルなどを;
トリアリールホスフィンとしては、トリフェニルホスフィン、トリトリルホスフィンなどを;
芳香族配位子としては、例えばピリジン、ピリミジン、トリアジン、シアノベンゼンなどを、それぞれ挙げることができる。上記式(P2)において、cが4であるとき、bは0であることが好ましい。
上記式(P2)で表される錯化合物の具体例としては、例えばPtCl(C、PtCl(1,5−ヘキサジエン)、PtCl(ノルボルナジエン)、PtCl(1,3−シクロペンタジエン)、PtCl(1,5−シクロオクタジエン)、PtBr(1,5−シクロオクタジエン)、PtI(1,5−シクロオクタジエン)、PtCl(ビシクロペンタジエン)、PtCl(S(C、PtCl(ピリジン)、PtCl(シアノベンゼン)などを挙げることができ、これらのうちPtCl(ビシクロペンタジエン)が好ましい。
上記式(P3)におけるXのハロゲン原子としては、例えば塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などを挙げることができる。
上記式(P3)で表される錯化合物の具体例としては、例えばPt(CO)Cl、Pt(CO)Br、Pt(CO)、PtCl、PtBr、PtI、PtClなどを挙げることができる。
上記式(P4)におけるXのハロゲン原子としては、例えば塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などを挙げることができる。
上記式(P4)で表される錯化合物の具体例としては、例えばPt(NHCl(HO)、Pt(NH(OH)(HO)、Pt(NH(NOなどを挙げることができる。
本発明におけるプラチナ錯化合物としては、プラチナ(II)の錯化合物であることが好ましく、特に上記式(P1)で表される錯化合物、上記式(P2)で表される化合物のうちのDがジエン配位子である錯化合物、ビス(ジベンジリデンアセトン)プラチナおよびトリス(ジベンジリデンアセトン)ジプラチナよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。
[酸]
本発明における好ましい結晶性プラチナ粒子の製造に用いられる酸は、上記プラチナ錯化合物から配位子を脱離させ、プラチナ原子を後述の1級アルコールによる還元反応に対して活性化する機能を有する成分であり、例えば無機酸および有機酸よりなる群から選択される少なくとも1種を使用することができる。上記無機酸の具体例としては、例えば塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などを;
上記有機酸の具体例としては、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、2−メチル酪酸、カプロン酸、3,3−ジメチル酪酸、2−エチル酪酸、4−メチルペンタン酸、n−ヘプタン酸、2−メチルヘキサン酸、n−オクタン酸、2−エチルヘキサン酸、安息香酸、グリコ−ル酸、乳酸、グリオキシル酸、3−ヒドロキシ酢酸、2−ヒドロキシ酢酸、ヒドロアクリル酸、ピルビン酸、クロトン酸、グルコン酸、マンデル酸、グリセリン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、フタル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸などを、それぞれ挙げることができる。
これらのうち、有機酸を使用することが好ましく、脂肪族モノカルボン酸を使用することがより好ましく、炭素数2〜6の脂肪族モノカルボン酸を使用することがさらに好ましく、特に酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸およびカプロン酸よりなる群から選択される少なくとも1種を使用することが好ましい。
[炭素数2〜12の1級アルコール]
本発明における好ましい結晶性プラチナ粒子の製造に用いられる1級アルコールは、上記の酸によって活性化された上記プラチナ錯化合物のプラチナ原子を還元する機能を有する成分である。この1級アルコールは、1級水酸基を有するアルコール化合物であればよく、2価アルコール、1級水酸基のほかに2級または3級水酸基を有する多価アルコールなどをも包含する概念である。
かかる1級アルコールの炭素数としては、2〜10であることが好ましい。このような1級アルコールの具体例としては、例えばエタノール、1−プロパノール、1−ブタノール、1−ペンタノール、1−ヘキサノール、1−ヘプタノール、1−オクタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリンなどを挙げることができ、これらのうち、1−ブタノール、1−ヘキサノール、1−オクタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールおよびグリセリンよりなる群から選択される少なくとも1種を使用することが好ましい。
[脂肪族1級アミン]
本発明における好ましい結晶性プラチナ粒子の製造に用いられる脂肪族1級アミン(以下、単に「1級アミン」ともいう。)は、上記プラチナ錯化合物中のプラチナ原子が上記酸および1級アルコールの作用によって還元されて成長した結晶性粒子の有機キャップ層(保護コロイド)として機能するとともに、該キャップ層を通してプラチナ前駆体である上記プラチナ錯化合物を運搬し、さらなる還元反応によって結晶性粒子を成長させる役割を具備する成分である。
かかる1級アミンとしては、炭素数8〜22の脂肪族1級アミンであることが好ましく、炭素数8〜20の脂肪族1級アミンであることがより好ましく、特に下記式(1)
NH (1)
(式(1)中、Rは炭素数8〜20の直鎖のアルキル基または炭素数8〜20の直鎖のアルケニル基である。)
で表される化合物であることがより好ましい。上記式(1)におけるアルケニル基中の二重結合の数は、1個であっても2個以上であってもよい。上記式(1)で表される化合物の具体例としては、Rが直鎖のアルキル基であるものとして例えばn−オクチルアミン、n−ノニルアミン、n−デシルアミン、n−ウンデシルアミン、n−ドデシルアミン、セチルアミンなどを;
が直鎖のアルケニル基であるものとして例えばオレイルアミン、パルミチルアミン、エライジルアミン、バクセニルアミン、エイコセニルアミンなどを、それぞれ挙げることができる。これらのうち、n−オクチルアミン、n−ドデシルアミン、セチルアミン、オレイルアミン、パルミチルアミンおよびエイコセニルアミンよりなる群から選択される少なくとも1種を使用することが好ましい。
[有機溶媒]
本発明における好ましい結晶性プラチナ粒子の製造に用いられる有機溶媒は、上記プラチナ錯化合物、酸、1級アルコールおよび1級アミンを溶解することができ、これらの反応により生成する、1級アミンからなる有機キャップ層に保護された結晶性プラチナ粒子を分散することができ、且つこれらと反応せず、後述の反応温度および反応圧力において液体状態であるものであれば好適に使用することができ、単一種の溶媒のみからなっていても複数種類の混合物であってもよい。
かかる有機溶媒としては、例えば脂肪族炭化水素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、ケトン溶媒、エーテル溶媒、エステル溶媒、非プロトン性極性溶媒などを挙げることができる。上記脂肪族炭化水素溶媒の具体例としては例えばn−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、n−デカンなどを;
上記芳香族炭化水素溶媒の具体例としては例えばベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、インダン、テトラリンなどを;
上記ハロゲン化炭化水素溶媒の具体例としては例えばジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,4−ジクロロブタン、トリクロロエタン、クロルベンゼン、o−ジクロルベンゼンなどを;
上記ケトン溶媒の具体例としては例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、アセトフェノンなどを;
上記エステル溶媒の具体例としては例えば乳酸エチル、乳酸ブチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルメトキシプロピオネート、エチルエトキシプロピオネート、シュウ酸ジエチル、マロン酸ジエチルなどを、それぞれ挙げることができる。
上記非プロトン性極性溶媒としては、例えばアミド溶媒、スルホキシド溶媒、エーテル溶媒、ニトリル溶媒などを挙げることができ、こららの具体例としては、アミド溶媒として例えばγ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N,N−ジブチルホルムアミド、ヘキサメチルホスホルアミド、テトラメチル尿素などを;
スルホキシド溶媒として例えばジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどを;
上記エーテル溶媒としては例えばジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどを;
上記ニトリル溶媒として、例えばアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリルなどを、それぞれ挙げることができる。
本発明における好ましい結晶性プラチナ粒子の製造に用いられる有機溶媒としては、上記に例示した有機溶媒の2種以上からなる混合物であって、これらが互いに反応せず、且つこれらのうちのいずれもが上記の酸、1級アルコールおよび1級アミンと反応しないものであれば好ましく使用することができ、芳香族炭化水素溶媒と非プロトン性極性溶媒との混合溶媒を使用することがより好ましく、特に芳香族炭化水素溶媒とアミド溶媒との混合溶媒を使用することが好ましい。この場合、非プロトン性極性溶媒(好ましくはアミド溶媒)の使用割合としては、混合溶媒の全量に対して、5〜95重量%とすることが好ましく、20〜80重量%とすることがより好ましい。かかる有機溶媒を使用することにより、溶媒の極性的な効果を十分に享受することができ、反応系が相分離することなく反応が進行することとなる点で好ましい。
[接触条件]
本発明によれば、上記の如きプラチナ錯化合物と、酸と、1級アルコールと、1級アミンとを、有機溶媒中で接触させることにより、結晶性プラチナ粒子を製造することができる。このとき、各成分を混合する順序は問わない。
酸の使用割合としては、上記プラチナ錯化合物中のプラチナ原子1モルに対して、1.5〜3.0モルとすることが好ましく、1.8〜2.2モルとすることがより好ましい。酸の使用割合をこの範囲とすることにより、反応が均一な状態で進行することとなる点で好ましい。
上記の如き1級アルコールの使用割合としては、プラチナ錯化合物中のプラチナ原子1モルに対して、10〜100モルとすることが好ましく、15〜80モルとすることがより好ましい。1級アルコールの使用割合をこの範囲とすることにより、反応系が相分離することなく、プラチナ原子の還元が均一に進行することなどの点で好ましい。
上記の如き1級アミンの使用割合としては、プラチナ錯化合物中のプラチナ原子1モルに対して、0.1〜10モルとすることが好ましく、0.5〜5モルとすることがより好ましい。1級アミンの使用割合をこの範囲とすることにより、反応系が相分離することなく、得られる結晶性プラチナ粒子の分散安定性をより高くすることができる点で好ましい。
本発明における有機溶媒の使用割合としては、反応系の初期固形分濃度(上記プラチナ錯化合物、酸、1級アルコールおよび1級アミンの仕込みベースの合計重量が反応溶液の全量に対して占める割合)として、5〜50重量%となる割合とすることが好ましく、10〜30%となる割合とすることがより好ましい。
上記の各成分を接触させる温度は、25〜250℃とすることが好ましく、100〜200℃とすることがより好ましい。接触時間は5〜50時間とすることが好ましく、10〜20時間とすることがより好ましい。
接触は、撹拌下に行ってもよく、あるいは撹拌せずに反応系を静置して行ってもよい。
接触時の圧力としては、接触温度において上記各成分、特に有機溶媒が液相となる圧力とすることが好ましく、例えば0.1〜10MPaとすることができる。
かくして結晶性プラチナ粒子を含有する反応混合物が得られる。
この反応混合物は、これをそのままアミン化合物および水素化アルミニウムの錯体との接触に供してもよく、あるいは該反応混合物から結晶性プラチナ粒子を単離、回収のうえ、アミン化合物および水素化アルミニウムの錯体との接触に供してもよい。この場合、結晶性プラチナ粒子は、前記反応混合物から例えばろ取、遠心分離などの適当な方法により有機溶媒から分離し、好ましくはエタノール、イソプロパノールなどの適当な溶媒で洗浄後、溶媒を除去することにより、例えば粉末として回収することができる。
<アミン化合物および水素化アルミニウムの錯体>
水素化アルミニウム(しばしば慣用的にアランと呼ばれる)はアルミニウムと水素原子とからなる化合物であり、一般的にはAlHで表される示性式を持つと信じられている。
本発明におけるアミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体を構成するアミン化合物は下記式(2)で表される。
NR (2)
(式(2)中、Rは水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、環式アルキル基またはアリール基であり、3個存在するRは互いに同一であっても相異なっていてもよい。)
式(2)中のRの具体例としては、水素、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基の如き飽和アルキル基、メタアリル基の如き不飽和基を有するアルケニル基、フェニルエチニル基の如きアルキニル基、シクロプロピル基の如き環式アルキル基、フェニル基、ベンジル基の如きアリール基を有する基などを好適に使用することができる。またこれらアルキル基、アルケニル基、アルキニル基は直鎖状でもよく環状でもよくまた分岐していてもよい。
式(2)で示されるアミン化合物の具体例としては、アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−イソプロピルアミン、トリシクロプロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリイソブチルアミン、トリ−t−ブチルアミン、トリ−2−メチルブチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリシクロヘキシルアミン、トリ(2−エチルヘキシル)アミン、トリオクチルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、ジメチルフェニルアミン、ジエチルフェニルアミン、ジイソブチルフェニルアミン、メチルジフェニルアミン、エチルジフェニルアミン、イソブチルジフェニルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジ−n−プロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジシクロプロピルアミン、ジ−n−ブチルアミン、ジイソブチルアミン、ジ−t−ブチルアミン、メチルエチルアミン、メチルブチルアミン、ジ−n−ヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、ジ(2−エチルヘキシル)アミン、ジオクチルアミン、ジフェニルアミン、ジベンジルアミン、メチルフェニルアミン、エチルフェニルアミン、イソブチルフェニルアミン、メチルメタクリルアミン、メチル(フェニルエチニル)アミン、フェニル(フェニルエチニル)アミン、メチルアミン、エチルアミン、n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、シクロプロピルアミン、n−ブチルアミン、イソブチルアミン、t−ブチルアミン、2−メチルブチルアミン、n−ヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、2−エチルヘキシルアミン、オクチルアミン、フェニルアミン、ベンジルアミン、エチレンジアミン、1−アザ−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、1−アザ−ビシクロ[2.2.2]オクタン(キヌクリジン)、1−アザシクロヘキサン、1−アザ−シクロヘキサン−3−エン、N−メチル−1−アザシクロヘキサン−3−エン、モルホリン、N−メチルモルホリン、N−エチルモルホリン、ピペラジンなどを用いることができる。これらのうち、炭素数1〜8のアルキル基を有するアミン化合物が好ましく、特にトリエチルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミンまたはトリ−n−オクチルアミンを使用することが好ましい。これらのアミン化合物は、単独でも、あるいは2種以上の化合物を混合して使用することができる。
本発明におけるアミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体は、上記の如きアミン化合物を用いて、例えば非特許文献6(J. Am. Chem. Soc., 82,2141(1960))、非特許文献7(J. Chem. Soc., 3742(1963)、非特許文献8(J. Am. Chem. Soc., 113 , 8183(1991))などの方法に準じて合成することができる。
例えば、上記の如きアミン化合物を酸塩とし、該酸塩とリチウムアルミニウムハイドライドとを、好ましくはエーテル溶媒中で反応させることにより、アミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体を得ることができる。アミン化合物の酸塩に使用される酸としては、例えば塩化水素酸、臭化水素酸などを挙げることができる。アミン化合物の酸塩の使用割合は、リチウムアルミニウムハイドライド1モルに対して、好ましくは1〜5モルであり、より好ましくは1〜3モルである。
アミン化合物の酸塩とリチウムアルミニウムハイドライドとを接触する際に好ましく使用されるエーテル溶媒としては、例えばジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジイソプロピルエーテル、エチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどを挙げることができる。
溶媒の使用割合は、反応液中の固形分濃度(反応液中のアミン化合物の酸塩とリチウムアルミニウムハイドライドとの合計重量が反応液の全重量に占める割合)として、好ましくは1〜50重量%であり、より好ましくは1〜20重量%である。反応温度は、25〜200℃とすることが好ましく、50〜150℃とすることが好ましい。反応時間は、0.1〜10時間とすることが好ましく、0.5〜5時間とすることが好ましい。
かくしてアミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体を含有する反応混合物が得られる。この反応混合物は、副生物であるリチウム塩を除いた後に溶液状態で結晶性プラチナ粒子との接触に供してもよく、あるいはアミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体を単離したうえで結晶性プラチナ粒子との接触に供してもよい。
なお、アミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体は、下記式(3)
AlH・(NR (3)
(式(3)中、Rは上記式(2)におけるのと同義である。)
においてnが1である1付加体とnが2である2付加体との混合物として存在し、両者が平衡状態にあるものと信じられており、当業者はしばしば下記式(3’)
AlH・(NR 1.x (3’)
(式(3’)中、Rは上記式(2)におけるのと同義であり、「1.x」は1〜2の範囲の不特定の数値を表す。)
と表記する。本発明におけるアミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体としては、上記式(3)における数値nが特定されない、1付加体と2付加体との混合物として使用すれば足りる。以下、本明細書においてはかかる態様を包含するアミン化合物と水素化アルミニウムとの錯体一般につき、「アラン錯体」と略称することがある。
<プラチナおよびアルミニウムからなる複合粒子の形成>
本発明の多孔質プラチナ粒子の製造方法においては、先ず、上記の如き結晶性プラチナ粒子とアラン錯体とを、50〜300℃において接触させて、少なくともプラチナおよびアルミニウムからなる複合粒子を形成する。ここで、「少なくともプラチナおよびアルミニウムからなる」とは、該複合粒子がプラチナおよびアルミニウム以外に、分散媒中への分散を安定化するための保護コロイド、該複合粒子表面のアルミニウムが酸化されてなる酸化物層などを、さらに有していてもよいとの趣旨である。
上記結晶性プラチナ粒子とアラン錯体との接触は、好ましくは長鎖アミンの存在下、適当な極性溶媒中で行われる。
ここで使用されるアラン錯体の割合は、結晶性プラチナ粒子に含まれるプラチナ原子の1モルに対して、1〜50モルとすることが好ましく、5〜30モルとすることがより好ましい。
上記長鎖アミンは、特に炭素数がおおむね4以下のアルキル基を有するアミン化合物を用いて調製されたアラン錯体を用いた場合に、結晶性プラチナ粒子とアラン錯体との接触の際の加熱によってアミン化合物が脱離したアラン錯体が重合して不活性化することを回避する目的のほか、得られる複合粒子の保護コロイドを形成して該複合粒子の分散安定性を向上する目的で使用される成分である。
かかる長鎖アミンとしては、下記式(4)
NRIIIII (4)
(式(4)中、RIIは炭素数6〜15のアルキル基であり、RIIIは水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である。)
で表される化合物を使用することが好ましい。このような長鎖アミンの例としては、例えばN,N−ジメチルオクチルアミン、N,N−ジメチルデシルアミン、N,N−ジメチルドデシルアミン、N,N−ジメチルセチルアミン、N,N−ジエチルオクチルアミン、N,N−ジエチルオレイルアミンなどを挙げることができ、これらのうちから選択される少なくとも1種を使用することが好ましい。
かかる長鎖アミンの使用割合は、アラン錯体の1モルに対して、10モル以下とすることが好ましく、0.1〜5モルとすることがより好ましく、特に0.5〜3モルとすることが好ましい。
上記極性溶媒としては、例えば沸点150℃以上のエーテル化合物を好適に使用することができ、その具体例として例えばメチルアニソール、エチルアニソール、n−プロピルアニソール、n−ブチルアニソール、フェニルアニソール、エチルフェニルエーテル、ブチルフェニルエーテル、ジフェニルエーテルなどを挙げることができ、これらのうちから選択される1種以上を使用することが好ましい。
かかる極性溶媒の使用割合としては、接触時の反応液における固形分濃度(反応液中の溶媒以外の成分の合計重量が反応液の全重量に占める割合)として、好ましくは0.1〜50重量%であり、より好ましくは1〜20重量%である。
本発明における結晶性プラチナ粒子とアラン錯体との接触の際の温度は50〜300℃であるが、この温度は80〜250℃であることが好ましく、100〜170℃であることがより好ましく、特に120〜150℃であることが好ましい。接触時間は、好ましくは0.1〜12時間であり、より好ましくは1〜5時間である。
上記の如き接触により、少なくともプラチナおよびアルミニウムからなる複合粒子が得られる。この複合粒子は、プラチナ−アルミニウム合金からなる粒子であるか、あるいはプラチナ−アルミニウム合金からなる表層と結晶性プラチナからなるコアとを有する粒子であり、好ましい条件下で合成された場合は粒子の外部にさらに保護コロイドを有するものと考えられる。
かかる複合粒子が得られる機構につき、本発明者らは以下のように推察している。すなわち、上記反応液中においてアラン錯体が結晶性プラチナ粒子と接触することによって、プラチナの触媒作用によりアラン錯体中のアルミニウムイオンが還元されて金属アルミニウムとなり、結晶性プラチナ粒子表面に析出する。ここで、結晶性プラチナ粒子は好ましくは保護コロイドに覆われているが、アラン錯体は該保護コロイド層を通過して結晶性プラチナ粒子表面に到達し、反応することができる。そして反応が進んで相当量の金属アルミニウムが結晶性プラチナ粒子表面に析出したとしても、驚くべきことに表層のプラチナ−アルミニウム合金層は成長を続けることができるのである。その理由は、プラチナ原子がアルミニウム層中を拡散して粒子表面に到達して、常にプラチナ原子が粒子表面に一定割合で存在することとなり、該プラチナ原子がさらに新たなアラン錯体と反応することによるものと推察される。
このような機構により、使用するアラン錯体の相対量が少ない場合にはプラチナ−アルミニウム合金からなる表層と結晶性プラチナからなるコアとを有する粒子を得ることができ、アラン錯体の相対量が十分に多い場合にはプラチナ−アルミニウム合金からなる粒子とすることができるものと考えられるのである。
かかる複合粒子の大きさ(球換算の平均粒径)は、原料として用いる結晶性プラチナ粒子よりも大きくすることができ、該結晶性プラチナ粒子の粒径の1.1〜10倍の粒径とすることができる。複合粒子の好ましい粒径は5nm以上であり、より好ましくは10〜100nmであり、さらに好ましくは20〜50nmである。
かかる複合粒子は、これをそのまま次工程の酸または塩基との接触に供することができるが、任意的に加熱処理(アニーリング)を施した後に酸または塩基との接触に供することとしてもよい。このような加熱処理を施すことにより、複合粒子が結晶性プラチナからなるコアを有する場合であっても粒子の全体にわたって合金化が進み、より表面積が大きく高活性の多孔質プラチナ粒子とすることができる利点を有する。
この加熱処理は、好ましくは200〜600℃、より好ましくは250〜500℃の温度において、好ましくは1〜60分間、より好ましくは5〜30分間行うことができる。
この加熱処理を行う際の雰囲気としては、不活性雰囲気(例えば窒素、アルゴンなどの不活性気体中)または還元性雰囲気(例えば水素などの還元性気体と上記の如き不活性気体徒からなる混合気体)とすることが好ましい。加熱処理を行う際の圧力は任意であり、特に加圧または減圧とする必要はなく、1気圧下における加熱で足りる。
<酸または塩基との接触>
上記の如き複合粒子を次いで酸または塩基と接触することにより、該複合粒子からアルミニウムが(該複合粒子が酸化物層を有する場合には該酸化物層も)溶解・除去されて多孔質プラチナ粒子を得ることができる。この接触は、好ましくは適当な溶媒の存在下に行われる。
ここで使用することのできる酸としては、pKa≦0.5の酸であれば無機酸でも有機酸でもよい。このような無機酸の例としては、例えば塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸などを;
有機酸の例としては例えばトリフルオロ酢酸、ベンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸などを、それぞれ挙げることができる。
ここで使用することのできる塩基としては、pKa≧10の塩基であれば無機塩基でも有機塩基でもよく、無機塩基として例えば水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどを;
有機塩基として例えば水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウムなどを、それぞれ挙げることができる。
複合粒子と酸または塩基との接触に使用することのできる溶媒としては、例えば親水性溶媒、親水性溶媒と水との混合溶媒などを挙げることができる。
上記親水性溶媒としては、例えば親水性のアルコール、親水性のエーテルなどを挙げることができる。上記親水性のアルコールとしては、炭素数1〜4のアルキル基を有するアルコールが好ましく、その具体例として例えばエタノール、n−プロパノール、イソプロパノールなどを挙げることができる。
上記親水性のエーテルとしては、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコール、ジメチルエーテルなどを挙げることができる。
複合粒子と酸または塩基との接触に使用される溶媒としては、親水性溶媒と水との混合溶媒が好ましく、特にアルコールと水との混合溶媒が好ましい。
酸を使用する場合、接触の際に使用される酸の使用割合は、溶液のpHが5以下となる割合とすることが好ましく、pHが0.5〜3となる割合とすることがより好ましい。一方、塩基を使用する場合、接触の際に使用される塩基の使用割合は、溶液のpHが8以上となる割合とすることが好ましく、pHが9〜11となる割合とすることがより好ましい。ここで、接触中に溶液のpHが上記範囲内に維持されるよう、必要に応じて酸または塩基を適時に追加することが好ましい。
溶媒の使用割合としては、接触時の反応液中の固定分濃度(反応液中の溶媒以外の成分の合計重量が反応液の全重量に占める割合)として、好ましくは5〜50重量%であり、より好ましくは10〜30重量%である。
接触時の温度としては、好ましくは5〜100℃であり、より好ましくは10〜50℃である。接触時間は、好ましくは10〜120分であり、より好ましくは20〜80分である。
この接触は、撹拌下に行うことが好ましく、撹拌方法としては、例えば機械的撹拌、超音波の印加、気体のバブリングおよびこれらのうちの2つ以上の組み合わせなどを挙げることができる。
接触後、粒子を接触反応液から回収し、好ましくはエタノール、イソプロパノールなどのアルコール、これらアルコールと水との混合溶媒などの適当な溶媒で洗浄した後に乾燥することにより、多孔質プラチナ粒子を得ることができる。
<多孔質プラチナ粒子>
このようにして得られる多孔質プラチナ粒子は、粒径が大きい。多孔質プラチナ粒子の粒径は、原料として用いた結晶性プラチナ粒子(好ましくは大粒径のもの)の粒径よりもさらに大きいものであり、例えば5nm以上であることができ、さらには10〜100nmであることができ、特に20〜50nmであることができる。本発明の方法によって製造された多孔質プラチナ粒子は、大粒径であっても分散媒中に独立して存在しうるから互いに接着して凝集することがなく、分散媒中の分散安定性に優れる。従って該多孔質プラチナ粒子は、該分散媒中における反応を均一に触媒することができるほか、該分散物を用いて多孔質プラチナ粒子を任意の形状の成形体に加工して使用に供することも容易且つ安価に行うことができる。
またこの多孔質プラチナ粒子は、微細なナノ構造を有して比表面積が極めて大きいものであり、各種の反応において従来のプラチナ触媒よりも有意に高い活性を示すから、高価なプラチナの使用量を顕著に減ずることができ、触媒反応を利用して製造される各種化学工業製品の製造コストないし触媒反応を利用して行う各種製品の運転コストの著しい削減に資する。
本発明の方法によって製造された多孔質プラチナ粒子(またはこれから得られる成形体)は、例えば燃料電池の電極触媒、車輌排気ガスの除害化触媒、各種化学反応の触媒(例えば石油化学工業におけるクラッキング触媒など)などの用途に好適に使用することができる。
合成例1(結晶性プラチナ粒子の合成例)
テフロン(登録商標)でライニングした10mLのステンレス製オートクレーブ中で、プラチナ(II)アセチルアセトナート(Pt(acac))を10mmol/L含有するトルエン溶液2mL、酢酸80mmol/L含有するトルエン溶液0.5mL、オレイルアミンを0.1mol/L含有するトルエン溶液1mL、1−ブタノール1mLおよびN,N−ジメチルホルムアミド2.5mLを混合した。このオートクレーブを炉中に設置し、撹拌せずに185℃にて16時間加熱した後、室温まで放冷した。得られた反応混合物を遠心分離して、沈殿を回収した。該沈殿をエタノールで2回洗浄することにより、オレイルアミンからなる保護コロイド層を有する結晶性プラチナ粒子を黒色の粉末として2mg得た(収率約50%)。
上記で得られた結晶性プラチナ粒子につき、高解像度透過型電子顕微鏡(HRTEM、H9000NAR、300kV、(株)日立ハイテクノロジーズ製)を用いて撮影したTEM像を図1(a)に、この結晶性プラチナ粒子の1個について撮影した高解像度TEM像を図1(b)に、それぞれ示した。図1(a)から調べた結晶性プラチナ粒子の平均粒径は約35nmであった。図1(b)を見ると、この結晶性プラチナ粒子は立方八面体の頂点近傍において結晶が過成長した略octapod状の形状をとっていることが分かる。
また、この結晶性プラチナ粒子の超高解像度TEM像および電子線回折像を調べたところ、この粒子は単結晶状態にあることが分かった。
この合成例を上記のスケールで繰り返すことにより、以下の実施例における結晶性プラチナ粒子の必要量を確保した。なお合成バッチにより、結晶性プラチナ粒子の平均粒径は29〜40nmの範囲で若干変動した。
合成例2(アラン錯体の合成例)
非特許文献2(J. Am. Chem. Soc., 82,2141(1960))に記載の方法に従って、アラン錯体を合成した。
乾燥窒素で満たしたフラスコに、リチウムアルミニウムハイドライド4.0gおよび乾燥ジエチルエーテル150mLを仕込んだ後、さらにトリエチルアミンの塩化水素酸塩8.0gを2回に分けて加えた。得られた混合物を室温で20分間撹拌し、反応を行った。反応系からの気体の発生が終了した後、ろ過によって不溶分を除去してアラン錯体のジエチルエーテル溶液が得られた。この溶液から、減圧にて溶媒を除去することにより、無色透明液体状のアラン錯体が7.3g得られた(収率88%)。このアラン錯体につきH−NMR分析を行うことにより、このものが水素化アルミニウムのトリエチルアミン錯体(N/Al=1.1(原子比))であることを確認した。
実施例1
<複合粒子の合成>
4−メチルアニソール中に、上記合成例1で得た結晶性プラチナ粒子10mgを超音波を印加して分散した。酸素濃度2.0ppm以下に調整した窒素を満たしたグローブボックス中で、上記分散液に上記合成例2で得たアラン錯体0.2mLおよびN,N−ジメチルオクチルアミン0.2mLを加えた。次いで分散液を加熱した。分散液の温度が100℃付近となったとき、気泡が発生した。110〜120℃の温度を2時間維持して反応を行った。反応混合物を室温まで放冷した後、生成した沈殿を脱水トルエンおよびエタノールで順次に洗浄し、さらに乾燥することにより、複合粒子12gを得た。
<複合粒子の加熱処理>
この複合粒子につき、1気圧の窒素気流中で、500℃にて5分の加熱処理を行った。
<多孔質プラチナ粒子の合成例:複合粒子と塩基との接触>
上記で得た複合粒子10mgを、超音波印加下エタノール5mL中に分散し、該分散液に濃度2モル/LのNaOH水溶液5mLを加えた。NaOH水溶液を加えた直後より気泡の発生が見られた。引き続き室温(25℃)において1時間、無撹拌の条件下で接触を行った。
その後、遠心分離により反応混合物から沈殿を回収し、過剰のエタノール/水混合物(混合比1:1(体積比))で洗浄し、乾燥することにより、多孔質プラチナ粒子を8.0g得た。
この多孔質プラチナ粒子につき、上記合成例1におけるのと同じ装置を用いて撮影したTEM像から算出した平均粒径は約40nmであった。
<触媒活性の試験>
上記で得られた多孔質プラチナ粒子を用いて、メタノール酸化反応に対する電気触媒性能を調べた。
Nafion(登録商標)溶液(Aldrich製の市販品、製品番号「527084」。低級アルコールおよび水からなる混合溶媒中に5重量%のNafionを含有する。)をエタノールで希釈してNafion含量2.5重量%の溶液を調製した。この希釈Nafion溶液3mL中に上記多孔質プラチナ粒子3mgを投入し、超音波印加下で1時間分散して分散液を得た。この分散液12μLをガラス状炭素電極上に滴下し、真空オーブン中室温で1時間加熱することにより、試験用作用電極を調製した。
上記作用電極につき、窒素ガスで1分間パージし、高速スキャン速度において電気化学的クリーニングを行った後に、0.5モル/LのHSOおよび2モル/LのCHOHを含有する電解質溶液中、スキャン速度50mV/sにてサイクリックボルタンメトリーを行った。カウンタ電極および参照電極としては、それぞれ、プラチナワイヤおよび飽和カロメル電極(SCE)を用いた。
このときのサイクリックボルタモグラムを図2に示した。本実施例において電流密度は4.7mA/cmに達した。
実施例2
上記実施例1において、複合粒子合成後の加熱処理を行わず、複合粒子と塩基との接触を、実施例1における無撹拌条件下、1時間の接触から、接触液中に空気を3〜10mL/分の流速でバブリングしつつ一晩の接触としたほかは実施例1と同様にして結晶性プラチナ粒子を合成した。
このプラチナ粒子につき、上記実施例1におけるのと同様にして調べた平均粒径は45nmであった。
ここで合成した多孔質プラチナ粒子を用いて、実施例1と同様にしてメタノール酸化反応に対する電気触媒性能を調べた。
このときのサイクリックボルタモグラムを図2に示した。本実施例において電流密度は10.2mA/cmに達した。
比較例1
上記実施例1において、多孔質プラチナ粒子の代わりに市販のプラチナ黒(Aldrich社製、“Fuel Cell Grade”平均粒径=4.0nm)を使用したほかは、実施例1と同様にしてメタノール酸化反応に対する電気触媒性能を調べた。
このときのサイクリックボルタモグラムを図2に示した。本比較例において到達した電流密度の値は約2mA/cmにすぎなかった。
参考例1
本参考例では、プラチナ−アルミニウム合金からなる層の成長の様子を調べた。
上記実施例1における複合粒子の合成と同じ条件で反応を行い、ただし反応開始後1時間および2時間のときにそれぞれ複合粒子をサンプリングし、上記合成例1におけると同じ装置を用いてTEM観察を行って粒子の直径およびコア部の直径をそれぞれ調べ、原料として使用した結晶性プラチナ粒子の値と比較した。結果を表1に示した。なお、本参考例において原料として使用した結晶性プラチナ粒子の平均粒径は約29nmであった。
表1を見ると、複合粒子の直径は、原料結晶性プラチナ粒子における29nmから、1時間後には35nmに、2時間後には52nmに、それぞれ増加した。一方、コア部の直径は、原料結晶性プラチナ粒子における29nmから、1時間後には16nmに、2時間後には12nmに、それぞれ減少した。このことから、原料結晶性プラチナ粒子のプラチナ原子は、シェル層(プラチナ−アルミニウム合金からなる層)に徐々に拡散しつつシェル層が成長する機構であると考えられる。
実施例3
本実施例では、複合粒子および多孔質プラチナ粒子につき、上記合成例1におけると同じ装置を用いてTEM観察を行って両粒子の構造を調べた。
上記実施例1と同様にして得られた複合粒子のTEM像を図3(a)に、この複合粒子の1個について撮影した高解像度TEM像を図3(b)に、それぞれ示した。
図3(a)から、この複合粒子の平均直径は53nmであることが分かった。また、図3(b)を見ると、この複合粒子は、中心部に直径約10nmの暗色のコア部、該コア部を被覆する厚さ約17nmの灰色のシェル部および該シェル部の外側の厚さ約5nmの層からなることが理解される。このコア部は結晶性プラチナ粒子の残滓であり、灰色のシェル部はプラチナ−アルミニウム合金からなる層であり、最外層は複合粒子表面のアルミニウム原子が空気中の酸素および/または水と反応して生成した酸化物層であると考えられる。
上記複合粒子につき、上記合成例1におけるのと同様にして塩基との接触を行い、多孔質プラチナ粒子を得た。
この多孔質プラチナ粒子につき、上記合成例1におけると同様の装置を用いてTEM観察を行った。ここで得られた多孔質プラチナ粒子のTEM像を図4(a)に、単一の多孔質プラチナ粒子の高解像度TEM像を図4(b)に、それぞれ示した。図4(a)および(b)から、スポンジ状の多孔質粒子が確認できる。

Claims (3)

  1. 結晶性プラチナ粒子と、
    アミン化合物および水素化アルミニウムの錯体と
    を50〜300℃において接触させて少なくともプラチナおよびアルミニウムからなる複合粒子を形成し、
    該複合粒子を酸または塩基と接触させて該複合粒子中のアルミニウムを溶出させる工程を経ることを特徴とする、多孔質プラチナ粒子の製造方法。
  2. 上記結晶性プラチナ粒子が、
    プラチナ錯化合物と
    酸と
    炭素数2〜12の1級アルコールと
    脂肪族1級アミンと
    を有機溶媒中で接触させて得られたものである、請求項1に記載の多孔質プラチナ粒子の製造方法。
  3. 上記複合粒子を形成後、酸またはアルカリと接触させる前に、該複合粒子を200〜600℃において加熱する工程をさらに経るものである、請求項1または2に記載の多孔質プラチナ粒子の製造方法。
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