JP5571281B2 - 全固体型ポリマー電池およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、ドライポリマー電解質を用いた全固体型ポリマー電池およびその製造方法に関する。
非水電解質電池は、正極と負極との間に液状電解質を含むセパレータを介在させたタイプの電池と、正極と負極との間に固体電解質を介在させたタイプの電池(以下、全固体型電池とする)とに大別することができる。全固体型電池は、液漏れのおそれがないため、電池の安全性や信頼性が高く、また電池の薄型化や積層化が可能であるという長所を有する。
全固体型電池に使用される固体電解質としては、無機材料や有機材料が用いられる。無機材料からなる固体電解質は、イオン伝導性が高いが、脆性が高いために可撓性を有する膜に加工することが困難である。一方、有機材料からなる固体電解質には、例えば、有機高分子からなるドライポリマー電解質が用いられる。ドライポリマー電解質は、無機材料と比較して柔軟性が高く、薄膜の形成が可能である点から、薄型で高エネルギー密度を有する電池の固体電解質材料として期待されている。
ドライポリマー電解質としては、ポリエチレンオキサイドと、リチウム塩またはナトリウム塩のような支持塩とを複合化したドライポリマー電解質が知られている。しかし、このドライポリマー電解質を用いた場合、室温でのイオン伝導率が10-4〜10-7S・cm-1と低いため、高負荷放電時に得られる電池容量が低下する。
これに対しては、例えば、非特許文献1記載の、短いエチレンオキサイド鎖を側鎖に配することで分子配列を無定形化した、室温で10-4S・cm-1以上のイオン伝導率を有するドライポリマー電解質を用いることが考えられる。しかしながら、このドライポリマー電解質を全固体型電池に用いた場合、保存後に内部抵抗が大きくなり、電池容量が減少する。
また、ドライポリマー電解質を用いた全固体型ポリマー電池は、液状電解質やゲルポリマー電解質を用いた電池と比較して、保存時に内部抵抗が増大し、電池特性が劣化しやすい。これは、活物質とドライポリマー電解質との反応性が高いことが原因であると考えられる。特に、負極活物質にリチウムまたはリチウム合金を用いた場合、ドライポリマー電解質の分解が起こりやすく、負極活物質と電解質との界面部に絶縁性被膜が生成しやすい。負極界面部に絶縁性被膜が生成すると、活物質と電解質との接触面積が減少し、負極界面部の抵抗が大きくなる。その結果、電池の内部抵抗が増大する。
ところで、特許文献1では、内部短絡のない高信頼性の電池を得るために、リチウム負極のドライポリマー電解質との対向面に、結晶性窒化リチウム(Li3N)からなる薄層(厚み5〜10μm)を設けることが提案されている。結晶性Li3Nに関して、非特許文献2では、窒素とリチウムの直接反応によって生成し、単結晶ではc軸と垂直な方向で1.2×10-3S・cm-1、c軸と平行な方向で1×10-5S・cm-1、また多結晶では7×10-4S・cm-1と比較的高いイオン伝導率を示すことが報告されている。しかし、特許文献1記載の方法でも、保存時の内部抵抗の上昇を抑制することは困難である。
特開昭63―298980号公報 ポリマーバッテリーの最新技術II、金村聖志監修、p113、シーエムシー出版 固体アイオニクス、工藤徹一、苗木和夫著、p76、講談社
そこで、本発明は、上記従来の問題を解決するため、ドライポリマー電解質を用いた場合でも、保存時の内部抵抗の増大が抑制され、高率放電特性に優れた全固体型ポリマー電池を提供することを目的とする。
本発明の全固体型ポリマー電池は、正極層、リチウムを含む負極層、および前記正極層と前記負極層との間に配されたドライポリマー電解質層を備えた全固体型ポリマー電池であって、前記負極層と前記電解質層との間に非晶質のリチウム窒化物層が設けられていることを特徴とする。
前記リチウム窒化物層の表面をXPS分析した際に得られるNの1sスペクトルが、結合エネルギー390.0〜396.0eVの範囲において、393.5〜394.5eVのみに極大ピークを有するのが好ましい。
本発明の第1の全固体型ポリマー電池の製造方法は、
(1)正極集電層の片面に正極層を配置し、正極積層体を得る工程、
(2)負極集電層の片面にリチウムを含む負極層を配置し、負極積層体を得る工程、
(3)前記負極積層体における前記負極層上に、ドライポリマー電解質の溶液を塗布した後、乾燥させて溶媒を除去し、前記負極層上にドライポリマー電解質層を形成し、中間積層体を得る工程、
(4)前記正極層と前記電解質層が対向するように、前記正極積層体と前記中間積層体とを重ね合わせ、電極複合体を得る工程、および
(5)前記電極複合体を密封する工程を含み、
前記工程(2)〜(5)を、窒素含有量0.1〜10体積%の雰囲気下で実施することにより、前記電解質層と前記負極層との間に非晶質のリチウム窒化物層を形成することを特徴とする。
本発明の第2の全固体型ポリマー電池の製造方法は、
(A)基材上にドライポリマー電解質の溶液を塗布した後、乾燥させて溶媒を除去し、基材上にドライポリマー電解質層を形成する工程、
(B)正極集電層の片面に正極層を配置し、正極積層体を得る工程、
(C)負極集電層の片面にリチウムを含む負極層を配置し、負極積層体を得る工程、
(D)前記基材からドライポリマー電解質層を剥離し、前記負極積層体における前記負極層上にドライポリマー電解質層を配置して中間積層体を得る工程、
(E)前記正極層と前記電解質層が対向するように、前記正極積層体と前記中間積層体とを重ね合わせ、電極複合体を得る工程、および
(F)前記電極複合体を密封する工程を含み、
前記工程(A)を純窒素雰囲気下で実施し、前記工程(B)〜(F)を窒素含有量10体積%以下の雰囲気下で実施することにより、前記電解質層と前記負極層との間に非晶質のリチウム窒化物層を形成することを特徴とする。
本発明によれば、保存時の内部抵抗の増大を抑制することができ、保存後の高率放電特性に優れた全固体型ポリマー電池を提供することができる。
本発明は、正極層、リチウムを含む負極層、および前記正極層と前記負極層との間に配されたドライポリマー電解質層を備えた全固体型ポリマー電池に関し、前記負極層と前記電解質層との間、すなわち負極界面部に非晶質のリチウム窒化物層が設けられた点に特徴を有する。
これにより、ドライポリマー電解質を用いた場合でも、保存時の負極界面部の抵抗(以下、界面抵抗とする。)の増大を抑制することができる。このため、保存時の電池の内部抵抗の増大が抑制され、保存後の高率放電特性に優れた全固体型ポリマー電池が得られる。
上記リチウムを含む負極層は、例えば、リチウムまたはリチウム合金の活物質(以下、リチウム系活物質とする。)の層からなる。
リチウム系活物質に対して、リチウム窒化物はドライポリマー電解質より安定であるため、保存時の負極界面部におけるドライポリマー電解質の分解を抑制することができる。また、リチウム窒化物が非晶質であるため、界面抵抗を低減することができる。リチウム窒化物層が非晶質であると、窒素イオンと結合するリチウムイオンの状態が変化し、リチウム窒化物層内でリチウムイオンが拘束されにくくなり、イオン伝導性が向上する。このため、負極界面部(リチウム窒化物層)内におけるリチウムイオンの移動が速くなり、界面抵抗が小さくなると考えられる。
本発明の第1の全固体型ポリマー電池の製造方法は、ドライポリマー電解質層の作製およびドライポリマー電解質層を用いた電池組立てを、窒素含有量0.1〜10体積%の雰囲気下で行う点に特徴を有する。すなわち、
(1)正極集電層の片面に正極層を配置し、正極積層体を得る工程、
(2)負極集電層の片面にリチウムを含む負極層を配置し、負極積層体を得る工程、
(3)前記負極積層体における前記負極層上に、ドライポリマー電解質の溶液を塗布した後、乾燥させて溶媒を除去し、前記負極層上にドライポリマー電解質層を形成し、中間積層体を得る工程、
(4)前記正極層と前記電解質層が対向するように、前記正極積層体と前記中間積層体とを重ね合わせ、電極複合体を得る工程、および
(5)前記電極複合体を密封する工程を含み、
前記工程(2)〜(5)を、窒素含有量0.1〜10体積%の雰囲気下で実施することにより、前記電解質層と前記負極層との間に非晶質のリチウム窒化物層を形成する。
上記方法により、負極層における電解質層との接触面(負極界面部)に非晶質のリチウム窒化物層を確実かつ容易に形成することができる。工程(2)〜(5)において、雰囲気中の窒素含有量が10体積%を超えると、負極界面部に結晶質のリチウム窒化物が生成しやすい。また、工程(2)〜(5)において、雰囲気中の窒素含有量が0.1体積%未満であると、リチウム窒化物層を確実に形成するのが困難である。
工程(1)は、工程(2)〜(5)と同様の雰囲気で実施してもよく、異なる雰囲気で実施してもよいが、作業効率の観点から、工程(1)も工程(2)〜(5)と同様の雰囲気で実施するのが好ましい。
本発明の第2の固体型ポリマー電池の製造方法は、電解質層の作製を純窒素雰囲気で行い、電解質層を用いた電池組立てを、窒素含有量10体積%以下の雰囲気で行う点に特徴を有する。すなわち、
(A)基材上にドライポリマー電解質の溶液を塗布した後、乾燥させて溶媒を除去し、基材上にドライポリマー電解質層を形成する工程、
(B)正極集電層の片面に正極層を配置し、正極積層体を得る工程、
(C)負極集電層の片面に負極層を配置し、負極積層体を得る工程、
(D)前記基材からドライポリマー電解質層を剥離し、前記負極積層体における前記負極層上にドライポリマー電解質層を配置して中間積層体を得る工程、
(E)前記正極層と前記電解質層が対向するように、前記正極積層体と前記中間積層体とを重ね合わせ、電極複合体を得る工程、および
(F)前記電極複合体を密封する工程を含み、
前記工程(A)を純窒素雰囲気下で実施し、前記工程(C)〜(F)を窒素含有量10体積%以下の雰囲気下で実施することにより、前記電解質層と前記負極層との間に非晶質のリチウム窒化物層を形成する。
上記方法により、負極層における電解質層との接触面(負極界面部)に非晶質のリチウム窒化物層を確実かつ容易に形成することができる。工程(C)〜(F)において、雰囲気中の窒素含有量が10体積%を超えると、負極界面部に結晶質のリチウム窒化物が生成しやすい。
窒素含有量10体積%以下の雰囲気としては、例えば、純アルゴン雰囲気が挙げられる。
工程(B)は、工程(A)と同様の雰囲気で実施してもよく、工程(C)〜(F)と同様の雰囲気で実施してもよいが、作業効率の観点から、工程(B)は工程(C)〜(F)と同様の雰囲気で実施するのが好ましい。
上記製造方法で得られたリチウム窒化物が非晶質であることは、例えばXPS分析により確認することができる。リチウム窒化物が非晶質である場合、XPS分析により得られるNの1sスペクトルは、結合エネルギー390.0〜396.0eVの範囲において、393.5〜394.5eVのみに極大のピークを有する。これに対して、リチウム窒化物が結晶質Li3Nである場合、XPS分析により得られるNの1sスペクトルは、結合エネルギー390.0〜396.0eVの範囲において、393.5〜394.5eVおよび391.5〜392.5eVに極大のピークを有する。
負極界面部におけるリチウムイオン伝導性の向上効果および保存時の内部抵抗上昇の抑制効果が顕著に得られるため、上記製造方法で得られる非晶質のリチウム窒化物層の厚みは、50〜1000nmが好ましい。
また、保存時の内部抵抗上昇の抑制効果が顕著に得られるため、負極層における上記非晶質のリチウム窒化物層の被覆率は、30〜100%が好ましい。
上記製造方法で得られた非晶質のリチウム窒化物層は、負極層がリチウム合金活物質層からなる場合、リチウムおよび窒素以外にリチウム合金中に含まれる元素を含んでいてもよい。
上記製造時の窒素を含む雰囲気としては、例えば窒素およびアルゴンガス等の不活性ガスの混合雰囲気が挙げられる。
以下、本発明の一実施の形態として扁平形全固体型ポリマー電池を、図9を参照しながら説明する。図9は、本発明の扁平型全固体型ポリマー電池の概略縦断面図である。
図9に示すように、電池は、負極積層体11、ドライポリマー電解質層1、および正極積層体12からなる電極複合体を含む。負極積層体11は、負極層(リチウム系活物質層)2(例えば、厚み1〜300μm)および負極集電層4(例えば、厚み5〜200μm)からなる。正極積層体12は、正極層3(例えば、厚み1〜100μm)および正極集電層5(例えば、厚み5〜200μm)からなる。負極層2と正極層3とが対向するように、負極積層体11と正極積層体12とがドライポリマー電解質層1(例えば、厚み10〜200μm)を介して配されている。すなわち、負極層2と正極層3との間にドライポリマー電解質層1が配されている。ドライポリマー電解質層1と負極層2との間に非晶質のリチウム窒化物層7が形成されている。電極複合体を構成する各層は円板状であり、正極集電層5および負極集電層4は、正極層3、負極層2、および電解質層1よりも径が大きい。正極集電層5の周縁部と負極集電層4の周縁部との間に、正極3、負極層2および電解質層1を囲むようにシール材6が配されている。このようにシール材6を用いることにより電極複合体が密封されている。
図9に示す構造の全固体型ポリマー電池は、例えば、以下の2つの方法により作製することができる。
本発明の第1の製造方法の一例を以下に示す。窒素含有量0.1〜10体積%の雰囲気下で以下の工程(電解質層1の作製および電解質層1を用いた電池の組立て)を実施する。負極集電層4の片面に負極層2を圧着し、負極積層体11を得る。ついで、負極層2の上にドライポリマー電解質の溶液をキャストし、溶媒を乾燥除去して、電解質層1を得る。このようにして、負極積層体11と電解質層1の中間積層体を得る。その後、正極集電層5の片面に正極層3を被着させて正極積層体12を得る。正極層3と電解質層1とが対向するように、正極積層体12と中間積層体とを重ね合わせて、正極積層体12、負極積層体11、および両層間に配されたドライポリマー電解質層1からなる電極複合体を得る。電極複合体の周縁部にシール材6を配して電極複合体を密封する。このようにして、全固体型ポリマー電池21を組立てる。より具体的には、図9では、正極集電層5および負極集電層4が、正極層3、負極層2、および電解質層1よりも径が大きいため、正極集電層5の周縁部と、負極集電層4の周縁部との間に、シール材6を配する。正極集電層5、負極集電層4、およびシール部材6により、正極層3、負極層2、および電解質層1を封止する。
上記製造方法で、リチウム窒化物層が形成される理由としては、以下の2つが考えられる。
1つは、電解質層1を窒素含有雰囲気で作製する際、ドライポリマー電解質の溶液中に窒素が溶存する。その後、負極層2上にドライポリマー電解質の溶液をキャストした際、電解質層1中に溶存する窒素が電解質層1と接触する負極層2中のリチウム系活物質と反応して、リチウム窒化物が生成するためと考えられる。もう一つは、雰囲気中の窒素とリチウム系活物質が直接反応して、負極層2の表面にリチウム窒化物が生成するためと考えられる。
次に、本発明の第2の製造方法の一例を以下に示す。純窒素雰囲気において、ポリエチレンテレフタレート(PET)のフィルム等からなる基材上にドライポリマー電解質の溶液をキャストし、その後溶媒を乾燥除去して、基材上にドライポリマー電解質層1を形成する。その後、基材上に形成されたドライポリマー電解質層1を純アルゴン雰囲気下に移動させる。これ以降の工程(上記ドライポリマー電解質層の作製以外の工程)は、すべて純アルゴン雰囲気にて実施する。負極集電体4の片面に負極層2を圧着して、負極積層体11を得る。ついで、ドライポリマー電解質層1を基材から剥離し、負極層2の上に載置する。このようにして、負極積層体11とドライポリマー電解質層1からなる中間積層体を得る。その後、正極集電層5の片面に正極層3を被着させて正極積層体12を得る。正極層3と電解質層1とが対向するように、正極積層体12と中間積層体とを重ね合わせて、正極積層体12、負極積層体11、および両層間に配されたドライポリマー電解質層1からなる電極複合体を得る。上記と同様に電極複合体の周縁部にシール材6を配置して、電極複合体を封止する。このようにして、全固体型ポリマー電池21を組立てる。
上記2つの方法のいずれにおいても、負極界面部に確実に非晶質のリチウム窒化物層を形成することができる。負極界面部に非晶質のリチウム窒化物層を効率よく形成することができる点で、上記方法による電池組立て後にエージングを行うのが好ましい。
ドライポリマー電解質層1は、例えばエーテル酸素やエステル酸素など電子供与性を有する酸素原子を分子内に含むポリマー(以下、単に酸素含有ポリマーとする)と、ポリマー中に溶解するリチウム塩とからなる。このようなドライポリマー電解質では、エーテル酸素やエステル酸素がリチウムイオンに配位する。酸素含有ポリマーとしては、例えば、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共重合体、エチレンオキサイド単位もしくはプロピレンオキサイド単位からなるポリマー、またはポリカーボネートが用いられる。
リチウム塩がポリマー骨格に溶解・解離するためには、リチウムイオンと対アニオン間の相互作用に匹敵するリチウムイオンとポリマー骨格間の強い相互作用が必要となる。上述したように、酸素含有ポリマーでは、酸素がリチウムイオンに配位可能なため、ドライポリマー電解質中においてリチウム塩は解離し溶解する。ポリマー鎖(骨格)のセグメント運動により、この解離したリチウムイオンはポリマー内を移動可能なため、ドライポリマー電解質はイオン伝導性を有する。
リチウム塩としては、例えば、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiAlCl4、LiSbF6、LiSCN、LiCF3SO3、LiAsF6、低級脂肪族カルボン酸リチウム、LiCl、LiBr、LiI、クロロボランリチウム、四フェニルホウ酸リチウム、LiN(CF3SO22、またはLiN(C25SO22が挙げられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。上記リチウム塩の中でも、LiN(CF3SO22、LiN(C25SO22、またはLiClO4が好ましい。これらのリチウム塩を用いた場合、ドライポリマー電解質のリチウム系活物質に対する安定性が向上し、良好な負極界面部を実現することができる。
ドライポリマー電解質に、その目的を損なわない限りにおいて他の成分を添加してもよい。例えば、強度や膜質の均一性を向上させる目的で、各種無機フィラーを添加してもよい。添加によりイオン伝導性をさらに向上させることも可能である。上記無機フィラーとしては、例えば、アルミナやシリカなどの微粒子が挙げられる。ドライポリマー電解質は、リチウム塩とグライム類の固体の結晶性錯体を含んでいてもよい。
ドライポリマー電解質の支持体に多孔質シートを用いてもよい。多孔質シートには、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、もしくはポリフェニレンサルファイドなどの不織布、またはポリプロピレンもしくはポリエチレンの微多孔性フィルムが用いられる。
正極層3は、例えば、正極活物質、導電材、および結着剤の混合物(正極合剤)からなる。
正極積層体12は、例えば、正極集電層5の片面に、正極活物質、導電材、及び結着剤を混練して得られた正極合剤からなる正極層3を圧着させることにより得られる。また、正極積層体12は、例えば、正極集電層5の片面に、正極合剤を脱水N−メチル−2−ピロリドン、エチレングリコールエーテル類などの液体中に溶解または分散させたスラリーを塗布、乾燥した後、圧延するなどの方法により被着させて、正極層3を形成することにより得られる。
リチウム系活物質としては、従来から用いられているリチウム単体またはリチウム合金が挙げられる。リチウム合金としては、例えば、Li−Si合金、Li−Sn合金、Li−Al合金、Li−Ga合金、Li−Mg合金、またはLi−In合金が用いられる。
正極活物質としては、リチウム電池の正極活物質として使用可能なものであればよい。具体的には、例えば、(CF)n、(C2F)n、MnO2、TiS2、MoS2、FeS2、LixaCoO2、LixaNiO2、LixaMnO2、LixaCoyNi1-y2、LixaCoy1-yz、LixaNi1-yyz、LixbMn24、またはLixbMn2-yy4が挙げられる。ここで、上記式中の元素Mは、Na、Mg、Sc、Y、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Cr、Pb、Sb、およびBからなる群より選択される少なくとも一種であり、xa=0〜1.2、xb=0〜2.0、y=0〜0.9、およびz=2.0〜2.3を満たす。上記のxaおよびxbは、充放電開始前の値であり、充放電により増減する。また、上記以外に、正極活物質として、例えば、バナジウム酸化物もしくはそのリチウム化合物、ニオブ酸化物もしくはそのリチウム化合物、有機導電性物質を用いた共役系ポリマー、シェブレル相化合物、またはオリビン系化合物が用いられる。これらを単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
導電材としては、例えば、天然黒鉛や人造黒鉛などのグラファイト類、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、もしくはサーマルブラックなどのカーボンブラック類、炭素繊維や金属繊維などの導電性繊維類、アルミニウム粉などの金属粉末類、酸化亜鉛やチタン酸カリウムなどの導電性ウィスカー類、酸化チタンなどの導電性金属酸化物、またはフェニレン誘導体などの有機導電性材料が挙げられる。
結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アラミド樹脂、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリアクリルニトリル、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ヘキシル、ポリメタクリル酸、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸ヘキシル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエーテル、ポリエーテルサルフォン、ヘキサフルオロポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、またはカルボキシメチルセルロースが挙げられる。また、正極表面から深部に至るまでイオンが容易に到達することができるため、結着剤としては、エチレングリコールエーテル類を含むドライポリマー電解質を用いるのが好ましい。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
シール材6には、電池分野で常用される材料を使用すればよい。例えば、シール材6には、合成樹脂材料が用いられる。
本発明において用いられるドライポリマー電解質は一次電池および二次電池のいずれにも使用可能である。本発明の全固体型ポリマー電池の形態としては、扁平型、コイン型、円筒型、角型、またはラミネート型などが挙げられるが、その形態は特に限定されない。また、積層型、捲回型、またはバイポーラ型の電池でもよい。
以下に、本発明の実施例を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。なお、以下の実施例における評価用セルおよび全固体型ポリマー電池の組立ては、すべて、室温でかつ−50℃以下に露点管理された雰囲気で実施した。
《実施例1》
図1に示す評価用セル(両極がリチウム電極からなる対称セル)を以下の手順で作製した。セルの作製は、窒素3.5体積%およびアルゴン96.5体積%の雰囲気のグローブボックス中にて行った。
アセトニトリル100gに、粘度平均分子量100,000のポリエチレンオキサイド(Sigma−Aldrich製)10gおよびジメトキシエタン(DME)10gを溶解させてポリエチレンオキサイドのアセトニトリル溶液を得た。そして、このアセトニトリル溶液にLiN(CF3SO22を、リチウムイオン濃度[Li]とポリマー中のエチレンオキサイド部のエーテル酸素濃度[EO]とのモル比率[Li]/[EO]が0.05となるように添加した。このようにして、ドライポリマー電解質のアセトニトリル溶液を得た。
得られたドライポリマー電解質のアセトニトリル溶液を、リチウム箔42(直径10mm、厚み0.3mm)をあらかじめ圧着させたステンレス鋼製の封口板31にキャストした。そして、室温で48時間真空乾燥し、溶媒成分であるアセトニトリルとDMEを除去し、電解質層41を得た。
得られたドライポリマー電解質を熱抽出GC−MS測定した。その結果、ドライポリマー電解質からDMEが検出された。微量のグライム溶媒(DME)は、ドライポリマー電解質中においてリチウムイオンと錯体を形成して、ドライポリマー電解質の導電性を高め、電池の保存後の高率放電特性を向上させる点で好ましい。
電解質層41の上に、別のリチウム箔42´(直径10mm、厚み0.3mm)を圧着させて、封口板31上に電極複合体を得た。一方、ステンレス製のケース32の内底面に、皿バネ35およびスペーサー34を配した。なお、皿バネ35およびスペーサー34は、リチウム箔(電極)の厚み変化への対応および電極複合体とケース32との隙間を埋める目的で設けられた。その後、このケース32の開口端縁部を、封口板31の周縁部にガスケット33を介してかしめることにより、電極複合体をケース内に密封させた。このようにリチウム電極を用いてリチウム対称セル30を作製した。
リチウム対称セルを60℃の恒温槽で3日間エージングした後、リチウム対称セルを分解し、リチウム箔を取り出し、リチウム箔のドライポリマー電解質の接触面を観察した。その観察結果を図2に示す。図2に示すように、リチウム表面に褐色の変色部が認められた。リチウム対称セル組立ての前には、この変色部は認められなかった。そこで、この変色部をXRD(X−ray diffraction、X線回折)およびXPS(X−ray Photoelectron Spectroscopy、X線光電子分光法)で解析した。
XRD測定には、X線光電子分光装置(商品名:全自動多目的X線回折装置 X'Pert PRO、スペクトリス社製)を使用した。測定条件は、電圧:45kV、電流:40mA、走査モード:Continuous、走査範囲:7〜90℃、ステップ幅0.02℃、走査速度:100s/step、スリット幅(DS/SS/RS):0.5°/0.5°/0.1mm、雰囲気:ヘリウムとした。
XPS分析には、X線光電子分光装置(商品名:XPS−7000、理学電機工業(株)製)を使用した。測定条件は、X線源:Mg−Kα、電圧:10kV、電流:10mA、X線スポットサイズ:約9mm、真空度:10-7Paとした。帯電補正は、ハイドロカーボンの1s電子の結合エネルギーまたはイオンエッチング(5000nmまでのイオンエッチング、加速電圧:500V、角度:90度、イオン電流密度:32μA/cm2、エッチングレート:1nm/分)に用いたアルゴンの2p電子の結合エネルギーを基準に行った。
XRD測定の結果を図3に示す。図3に示すように、Liに由来する回折ピークは認められたが、それ以外の回折ピークは認められなかった。また、XPSで測定したNの1sスペクトルを図4に示す。なお、図4中の各スペクトルは、下から順に、深さ0(最表面)、2、5、10、20、50、100、200、300、および500nmの場合を示す。図4に示すように、NとLiの結合に基づくピークが認められ、Nの1sスペクトルは、結合エネルギー390.0〜396.0eVの範囲において、393.5〜394.5eVのみに極大のピークを有するがことがわかった。
以上の結果から、負極界面部にできた褐色の変色部は非晶質のリチウム窒化物であることがわかった。すなわち、リチウム箔42とドライポリマー電解質層41との間、およびリチウム箔42’とドライポリマー電解質41との間に、それぞれ非晶質のリチウム窒化物層47および47’が形成されていることが確かめられた。
比較として、結晶質の粉末状の試薬Li3NをXPS分析した結果、上記の非晶質のリチウム窒化物の場合とは異なり、結晶質リチウム窒化物では、結合エネルギー390.0〜396.0eVの範囲において、393.5〜394eVおよび391.5〜392.5eVにそれぞれ極大のピークを示した。
《実施例2》
本実施例では、窒素およびアルゴンの体積比率を変化させることにより、雰囲気中の窒素含有量を0.1〜10体積%の間で変化させた以外、実施例1と同様の方法によりリチウム対称セルを作製した。
そして、実施例1と同様の方法により、組立て前のリチウム表面の観察、エージング後のリチウム表面の観察、XRD測定、およびXPS分析を行った。その結果を表1に示す。
表1に示すように、実施例1と同様の結果が得られ、エージング後の負極界面部には非晶質のリチウム窒化物層が認められた。
《比較例1》
雰囲気中の窒素含有量を0〜0.08体積%の間で変化させた以外、実施例1と同様の方法によりリチウム対称セルを作製した。そして、実施例1と同様の方法により、組立て前のリチウム表面の観察、エージング後のリチウム表面の観察、XRD測定、およびXPS分析を行った。その結果を表2に示す。
エージング後に、リチウム対称セルを分解し、リチウム箔を取り出して、ドライポリマー電解質との接触面を観察したが、リチウム箔表面に変色部は認められなかった。
リチウム表面をXRD測定およびXPS分析した。XRDの結果から、Liに由来する回折ピークは認められたが、それ以外の回折ピークは認められなかった。また、窒素含有量0%のXPSでリチウムの表面分析を行った結果、図5に示すように、Nの1sに基づくスペクトルにピークは認められなかった。なお、図5中の各スペクトルは、下から順に、深さ0(最表面)、2、5、10、20、50、100、200、300、および500nmの場合を示す。
窒素含有量0〜0.08体積%では、負極界面部にリチウム窒化物層は形成されなかった。
《比較例2》
雰囲気中の窒素含有量を15〜100体積%の間で変化させた以外、実施例1と同様の方法によりリチウム対称セルを作製した。そして、実施例1と同様の方法により、組立て前のリチウム表面の観察、エージング後のリチウム表面の観察、XRD測定、およびXPS分析を行った。その結果を表3に示す。
雰囲気中の窒素含有量が15体積%以上である場合、セル組立て前にリチウム表面に褐色の変色部が認められた。その変色部をXRD測定した結果、Li3Nに基づく結晶性の回折ピークが認められた。このことから、雰囲気中の窒素含有量が15体積%以上である場合、結晶性のLi3Nが生成することがわかった。なお、窒素含有量100体積%の純窒素雰囲気でリチウム対称セルを作製した場合に認められた変色部をXRD測定した結果を図6に示す。
その変色部をXPS分析した結果、結晶質の粉末状の試薬Li3NをXPS分析した結果と同様に、Nの1sスペクトルの結合エネルギー390〜396eVの範囲において、393.5〜394eVおよび391.5〜392.5eVにそれぞれ極大ピークを示すことが確かめられた。なお、窒素含有量100体積%の純窒素雰囲気でリチウム対称セルを作製した場合に認められた変色部をXPS分析した結果を図7に示す。なお、図7中の各スペクトルは、下から順に、深さ0(最表面)、2、5、10、20、50、100、200、300、および500nmの場合を示す。
エージングした後に、リチウム対称セルを分解し、リチウム箔を取り出して、電解質層との接触面を観察した結果、組立て前のリチウム箔を分析した場合と同様の結果が得られた。
以上のことから、雰囲気中の窒素含有量が15〜100体積%の場合、負極界面部に結晶性のLi3N層が生成することが確かめられた。
実施例1および2、ならびに比較例1および2の結果から、雰囲気中の窒素含有量が0.1〜10体積%であると、抵抗の小さい非晶質のリチウム窒化物が生成することがわかった。雰囲気中の窒素含有量が10体積%を超えると、結晶質のリチウム窒化物が負極界面部に生成し、雰囲気中の窒素含有量が0.1体積%未満であると、負極界面部にリチウム窒化物層が生成しにくいことがわかった。
実施例1および2において、エージング後にリチウム箔表面にリチウム窒化物層が生成した理由は以下の2つが考えられる。1つは、窒素含有雰囲気で電解質層を作製した際、電解質層内に窒素が溶存し、電解質層内の窒素が電解質層と接触するリチウム系活物質と反応して生成したと考えられる。もう1つは、雰囲気中の窒素がリチウム系活物質に直接反応して生成したことが考えられる。
《実施例3》
純窒素雰囲気において基材となるPETフィルム上に、実施例1と同じドライポリマー電解質の溶液をキャストし、その後溶媒を室温で48時間真空乾燥し、溶媒成分であるアセトニトリルとDMEを除去した。このようにして、電解質層を作製した。その後、作製したドライポリマー電解質を純アルゴン雰囲気に移動させて、実施例1と同様の方法によりリチウム対称セルを組立てた。
そして、リチウム対称セルを60℃の恒温槽で3日間エージングした後に、リチウム対称セルを分解し、リチウム箔を取り出して電解質層との接触面を観察した結果、褐色の変色部が認められた。リチウム対称セル組立ての前には、このような変色部は認められなかった。
また、この変色部についてXRD測定およびXPS分析した。その結果、実施例1と同様の結果が得られたことから、負極界面部には非晶質のリチウム窒化物層が生成していることがわかった。
エージングした後にリチウム箔表面にリチウム窒化物層が生成した理由は、電解質層を純窒素雰囲気にて作製した際、電解質層に窒素が溶存し、その後、この窒素が電解質層と接触するリチウム系活物質と反応して生成したと考えられる。
ソーラトロン社製の1255WB型電気化学測定システムを用いて、上記で作製した各リチウム対称セルについて交流インピーダンス測定を行った。測定した結果、周波数0.01Hz〜1MHzの範囲でのNyquistプロットにおいて円弧が確認された。そして、この円弧の高周波側の実軸切片を電解質抵抗として考え、低周波側の実軸切片を電解質抵抗と界面抵抗との合計として考え、これらの切片の値から界面抵抗値を算出した。
実施例1、3、および4(窒素含有量3.5体積%)、ならびに比較例1および2(窒素含有量100体積%)のエージング前のリチウム対称セルを60℃で保存し、30℃での界面抵抗の経時変化を測定した。これらの測定結果を図8に示す。
実施例1、3、および4のリチウム対称セルでは、初期において界面抵抗がわずかに増大したが、すぐに界面抵抗の増大は認められなくなり、安定した値が得られた。これは負極界面部に非晶質のリチウム窒化物層が形成され、この層がドライポリマー電解質の分解を抑制する保護被膜として機能したためと考えられる。
一方、比較例1および2のリチウム対称セルでは、界面抵抗が大きく増大した。比較例1のリチウム対称セルでは、保護膜となるリチウム窒化物層が十分に存在しないため、負極界面部に絶縁性の被膜が生成し、界面抵抗が大きくなったと考えられる。また、比較例2のリチウム対称セルでは、リチウム窒化物層が結晶質であったため、負極界面部でのリチウムイオンの移動が難しくなり、また負極界面部の接合が不十分となったため、界面抵抗が大きくなったと考えられる。
実施例1のリチウム対称セルは、実施例3のリチウム対称セルと比べて低い界面抵抗が得られた。これは、実施例1では、リチウム窒化物層を確認できなかったが、窒素含有雰囲気でリチウムを取り扱っていたため、組立て前のリチウム箔表面には、検出できないレベルであるがリチウム窒化物が生成したと考えられる。そして、リチウム対称セルの組立て時において、この層の存在により電解質層とリチウム箔との接触が抑制され、界面抵抗が減少したと推測される。
《実施例4》
以下の手順により、図9と同じ扁平型の全固体型ポリマー電池を作製した。本実施例では、電解質層の作製および電解質層を用いた全固体型ポリマー電池の組立ては、窒素3.5体積%およびアルゴン96.5体積%の雰囲気であるグローブボックス中にて行った。
(1)中間積層体の作製
リチウム箔(直径10mm、厚さ100μm)からなる負極層2を、銅箔(直径14mm、厚み10μm)からなる負極集電層4上に圧着して円板状の負極積層体11を得た。このとき、リチウム箔と銅箔とは、同じ位置に中心を有するように配された。したがって、負極積層体11において負極層2の周縁部は、負極集電層4が露出した。
実施例1と同じドライポリマー電解質の溶液を、負極積層体11の負極層2上にキャストした。そして、室温で48時間真空乾燥し、溶媒成分であるアセトニトリルおよびDMEを除去して、負極積層体11における負極層2上にドライポリマー電解質層1を形成した。このようにして、負極積層体11および電解質層1の中間積層体を得た。このとき、電解質層1の厚みは100μmであった。また、負極層2と電解質層1とは、中心が同じ位置であり同径であった。したがって、負極積層体11のドライポリマー電解質層1を形成した側の表面の周縁部には、ドライポリマー電解質層1は形成されず、負極集電層4が露出した。
(2)正極積層体の作製
正極活物質として400℃で熱処理した電解二酸化マンガン、導電材としてアセチレンブラック、結着剤として粘度平均分子量100,000のポリエチレンオキサイド、およびLi塩であるLiN(CF3SO22に、アセトニトリル、DME、およびNMPを加えて、混合し、ペースト状の正極合剤を得た。このとき、二酸化マンガン:アセチレンブラック:ドライポリマー電解質の重量比は、70:20:10とした。なお、ドライポリマー電解質は、固形分の質量で計算した。
得られたペースト状の正極合剤をアルミニウム箔(厚み15μm)からなる正極集電層5の片面に塗布し、85℃で48時間乾燥した後、圧延して正極集電層5上に正極層3を形成し、フィルム状電極を得た。得られたフィルム状電極を直径14mmの円形に切り抜いた後、正極層3が直径10mmとなるように剥離処理し、正極層3の周縁部において正極集電層5が露出した正極積層体を得た。このとき、正極層3の厚みは20μmであった。
(3)全固体型ポリマー電池の組立て
そして、上記で得られた中間積層体と、正極積層体とを、ドライポリマー電解質層1と正極層3とが対向するように重ね合わせて電極複合体を得た。さらに窓枠状の絶縁樹脂フィルムからなるシール材6を、電極複合体の周縁部(正極集電層5の周縁部と、負極集電層4の周縁部との間)に配した後、シール材6を溶着させて電極複合体を密封し、60℃の恒温槽で3日間エージングした。このようにして、図9に示す扁平型の全固体型ポリマー電池を作製した。
なお、全固体型ポリマー電池を分解し、リチウム箔(負極層)を取り出して、電解質層との接触面を観察した。その結果、リチウム箔表面に褐色に変色した部分が確認できた。この変色部は実施例1の結果からリチウム窒化物層と考えられる。この変色部は全固体型ポリマー電池組立ての際には認められていなかった。
次に、電池を60℃で30日間保存した後、環境温度:30℃、電流密度:25μA/cm2、および終止電圧:1.8Vの条件で放電させ、電池容量を測定した。その結果、正極活物質1gあたりの放電容量は255mAh/gであった。二酸化マンガンの理論反応を一電子反応と仮定すると、理論容量は308mAh/gとなる。このことから、上記の放電試験において、正極活物質の理論容量の80%以上の電池容量が得られたことがわかった。
《実施例5》
電解質層作製時および全固体型ポリマー電池の組立て時における雰囲気中の窒素含有量を0.1〜10%の間で変化させて、実施例4と同様の方法により全固体型ポリマー電池を作製した。
保存試験として、電池を60℃で30日間保存した後、電池を解体し、リチウム箔のドライポリマー電解質層との接触面を観察した。また、放電試験として、電池を60℃で30日間保存した後、環境温度:30℃、電流密度:25μA/cm2、および終止電圧:1.8Vの条件で放電させ、電池容量を測定した。その結果を表4に示す。
いずれの条件で作製した場合も、放電容量は約255mA/gであり、理論容量の80%以上の電池が得られた。
《比較例3》
電解質層作製時および全固体型ポリマー電池の組立て時における雰囲気中の窒素含有量を0〜0.08体積%の範囲で変えて、実施例4と同様の方法により全固体型ポリマー電池を作製した。
60℃で3日間エージングした後の全固体型ポリマー電池を分解し、リチウム箔を取り出し、電解質層との接触面を観察した結果、リチウム箔表面に変色部は認められなかった。
次に、実施例5と同様の条件で保存試験および放電試験を行った。その結果を表5に示す。
いずれの条件で作製した場合でも、電池の放電容量は約150mAh/gであり、理論容量の50%以下であった。これは、負極界面部に保護膜となるリチウム窒化物層が存在しないため、保存試験時に負極界面部に絶縁性の被膜が生成し、界面抵抗が増大したためと考えられる。
《比較例4》
電解質層作製および全固体型ポリマー電池の組立てを、窒素含有量100体積%の純窒素雰囲気にて行った以外、実施例4と同様の方法により全固体型ポリマー電池を作製した。このとき、組立て前のリチウム箔表面に褐色の変色部が認められた。
60℃で3日間エージングした後の全固体型ポリマー電池を分解し、リチウム箔を取り出し、電解質層との接触面を観察した結果、リチウム箔表面に変色部が認められた。
次に、実施例5と同様の条件で保存試験および放電試験を行った。その結果、電池の放電容量は約100mAh/gであり、理論容量の35%以下であることがわかった。これは、負極界面部に結晶質のリチウム窒化物層が存在することにより、負極界面部でのリチウムの移動が難しくなり、また負極界面部の接合が不十分となり、放電容量が低下したためと考えられる。
《実施例6》
中間積層体の作製を純窒素雰囲気にて行い、正極積層体の作製および全固体型電池の組立てを純アルゴン雰囲気にて行った以外、実施例4と同様の条件で全固体型ポリマー電池を作製した。
60℃で3日間エージングした後、全固体型ポリマー電池を分解し、リチウム箔を取り出し、電解質層との接触面を観察した結果、リチウム箔表面に変色部が認められた。
次に、実施例5と同様の条件で放電試験した結果、電池の放電容量は247mAh/gであり、理論容量の80%以上であることがわかった。
本発明の全固体型電池は、薄型化が可能であり、保存後の高率放電特性および信頼性に優れ、携帯情報端末、携帯電子機器、および医療用機器などの薄型で高信頼性が要求されるデバイスの電源として好適に用いられる。
本発明の実施例1の評価用リチウム対称セルの概略縦断面図である。 本発明の実施例1のリチウム対称セルにおけるリチウム箔表面の写真である。 本発明の実施例1のリチウム対称セルにおけるリチウム箔表面のXRDチャートである。 本発明の実施例1のリチウム対称セルにおけるリチウム箔表面のXPSチャートである。 従来の比較例1のリチウム対称セルにおけるリチウム箔表面のXPSチャートである。 従来の比較例2のリチウム対称セルにおけるリチウム箔表面のXRDチャートである。 従来の比較例2のリチウム対称セルにおけるリチウム箔表面のXPSチャートである。 本発明の実施例1および3ならびに従来の比較例1および2のリチウム対称セルにおける60℃保存期間と負極界面抵抗との関係を示す図である。 本発明の一実施の形態の全固体型ポリマー電池の概略縦断面図である。
符号の説明
1、41 ドライポリマー電解質層
2 負極層
3 正極層
4 負極集電層
5 正極集電層
6 シール材
7、47、47´ リチウム窒化物層
11 負極積層体
12 正極積層体
21 全固体型ポリマー電池
30 リチウム対称セル
31 封口板
32 ケース
33 ガスケット
34 スペーサー
35 皿バネ
42、42´ リチウム箔

Claims (4)

  1. 正極層、リチウムを含む負極層、および前記正極層と前記負極層との間に配されたドライポリマー電解質層を備えた全固体型ポリマー電池であって、
    前記負極層と前記電解質層との間に非晶質のリチウム窒化物層が設けられていることを特徴とする全固体型ポリマー電池。
  2. 前記リチウム窒化物層の表面をXPS分析した際に得られるNの1sスペクトルが、結合エネルギー390.0〜396.0eVの範囲において、393.5〜394.5eVのみに極大ピークを有する請求項1に記載の全固体型ポリマー電池。
  3. (1)正極集電層の片面に正極層を配置し、正極積層体を得る工程、
    (2)負極集電層の片面にリチウムを含む負極層を配置し、負極積層体を得る工程、
    (3)前記負極積層体における前記負極層上に、ドライポリマー電解質の溶液を塗布した後、乾燥させて溶媒を除去し、前記負極層上にドライポリマー電解質層を形成し、中間積層体を得る工程、
    (4)前記正極層と前記電解質層が対向するように、前記正極積層体と前記中間積層体とを重ね合わせ、電極複合体を得る工程、および
    (5)前記電極複合体を密封する工程を含み、
    前記工程(2)〜(5)を、窒素含有量0.1〜10体積%の雰囲気下で実施することにより、前記電解質層と前記負極層との間に非晶質のリチウム窒化物層を形成することを特徴とする全固体型ポリマー電池の製造方法。
  4. (A)基材上にドライポリマー電解質の溶液を塗布した後、乾燥させて溶媒を除去し、基材上にドライポリマー電解質層を形成する工程、
    (B)正極集電層の片面に正極層を配置し、正極積層体を得る工程、
    (C)負極集電層の片面にリチウムを含む負極層を配置し、負極積層体を得る工程、
    (D)前記基材からドライポリマー電解質層を剥離し、前記負極積層体における前記負極層上にドライポリマー電解質層を配置して中間積層体を得る工程、
    (E)前記正極層と前記電解質層が対向するように、前記正極積層体と前記中間積層体とを重ね合わせ、電極複合体を得る工程、および
    (F)前記電極複合体を密封する工程を含み、
    前記工程(A)を純窒素雰囲気下で実施し、前記工程(C)〜(F)を窒素含有量10体積%以下の雰囲気下で実施することにより、前記電解質層と前記負極層との間に非晶質のリチウム窒化物層を形成することを特徴とする全固体型ポリマー電池の製造方法。
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