JP5570041B2 - しぼ調積層不織布の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、表面にしぼを持つしぼ調積層不織布の製造方法に関し、特に伸縮性ネットの伸縮性を利用してしぼを発現させることを特徴とするしぼ調積層不織布の製造方法に関するものである。
従来より、しぼ調不織布の製造方法としては、構成繊維として潜在捲縮性繊維を用いた方法が知られている。たとえば、潜在捲縮性繊維と非捲縮性繊維とを混合してなる不織布に、加熱等の手段を施して潜在捲縮性繊維に捲縮を発現させ、非捲縮性繊維にたるみを生じさせて、不織布表面にしぼを現出させることが行われている。また、潜在捲縮性繊維よりなる不織布に、部分的に樹脂を付与し、樹脂付与部位の潜在捲縮性繊維に捲縮が生じないようにした後、加熱等の手段を施して、樹脂が付与されていない部位の潜在捲縮性繊維に捲縮を発現させ、捲縮が発現しない樹脂付与部位をたるませて、不織布表面にしぼを現出させることが行われている(特許文献1)。
これらのいずれの方法も、潜在捲縮性繊維を使用しなければならず、潜在捲縮性を持たない非捲縮性繊維のみを使用して、しぼ調不織布を得ることはできなかった。したがって、たとえば木綿繊維のような非捲縮性繊維のみで、しぼ調不織布を得ることはできなかった。
特開平7−3596号公報(第4頁の実施例)
そこで、本発明の課題は、不織布の構成繊維の種類によらずに、いかなる繊維であっても、しぼ調不織布を得ることができる方法を提供することにある。
かかる課題を解決するため、本発明は、不織布中に伸縮性ネットを挿入又は積層して、この伸縮性ネットの伸縮性を利用して、不織布表面にしぼを現出させたものである。すなわち、本発明は、少なくとも幅方向に伸縮性を有する伸縮性ネットの片面又は両面に、木綿繊維よりなる短繊維が集積されてなる短繊維ウェブを積層した後、該短繊維ウェブ側から高圧液体流を施して、該短繊維相互間及び該短繊維と該伸縮性ネットを交絡させた後、該伸縮性ネットを幅方向に拡幅して、該短繊維の交絡を一部解除した後、該伸縮性ネットの伸縮性を利用して元の幅に戻すことを特徴とするしぼ調積層不織布の製造方法に関するものである。
少なくとも幅方向に伸縮性を有する伸縮性ネットとしては、従来公知のものであれば、どのようなものでも用いられる。たとえば、押出成形で製造された包装用伸縮性ネットや、伸縮糸を粗目に製編織した伸縮性ネットが用いられる。特に、本発明においては、図1に示すような、縦方向に伸縮性のない非伸縮性モノフィラメントと、横方向に伸縮性のあるモノフィラメントとを格子状に配列させ、交点で接着したものが用いられる。なお、縦方向に配列させたモノフィラメントのことを、以下、「縦モノフィラメント」といい、横方向に配列させたモノフィラメントのことを、以下、「横モノフィラメント」という。また、縦方向とは機械方向のことであり、横方向とは幅方向のことである。縦方向に非伸縮性モノフィラメントを配列させるのは、不織布の製造工程中において、縦方向(機械方向)に搬送のため外力が負荷されるので、この外力によって伸縮性ネットが伸長しないようにするためである。したがって、縦方向に伸長せず横方向には伸長する一方向性長繊維ウェブを伸縮性ネットに貼合すれば、縦モノフィラメントも横モノフィラメントの両者共に、伸縮性のものを使用してもよい。これは、一方向性長繊維ウェブによって、縦方向に伸縮性ネットが伸長しにくくなるからである。一方向性長繊維ウェブとしては、たとえば、JX日鉱日石ANCI社製からミライフ(登録商標)Tグレードなる名前で市販されているものを用いることができる。
縦モノフィラメントと横モノフィラメントを格子状に配列した伸縮性ネットの目の大きさは、3〜7mm×3〜7mm程度であるのが好ましい。格子の目を通して、短繊維を伸縮性ネットに交絡させるため、ある程度の大きさの目が開いている方が好ましい。また、しぼはこの目の箇所で多く現出するので、目が粗いと粗いしぼになり、目が細かいと細かいしぼになる。
縦モノフィラメントと横モノフィラメントを格子状に配列した伸縮性ネットの交点は、接着剤による接着等の任意の手段で行われる。伸縮性を有する横モノフィラメントとして、スチレン系エラストマー等の熱可塑性弾性樹脂を素材としたものを用いた場合には、この熱可塑性を利用して、交点を熱融着してもよい。モノフィラメントの径は、0.1〜2mm程度である。モノフィラメントの径が0.1mm未満であると、モノフィラメントが切断しやすくなる。また、モノフィラメントの径が2mmを超えると、剛性が高くなり、得られる積層不織布の柔らかさやドレープ性が低下する傾向となる。本発明において使用する伸縮性ネットの好適例は、コンウェッドネット社製の「リバウンドネット」(商品名)である。
伸縮性ネットの片面又は両面に短繊維ウェブが積層される。短繊維ウェブは、木綿繊維よりなる短繊維が集積されてなるものである。本発明を有効に利用するには、潜在捲縮性繊維を製造できない木綿繊維を単独で集積させた短繊維ウェブを用いるのが好ましいが、短繊維としてポリエステル短繊維を混綿して短繊維ウェブとしてもよい。短繊維は、一般に方向性を持たずに無作為に集積されるが、概ね縦方向に配列させた状態で集積してもよい。短繊維ウェブの目付は任意であるが、40〜60g/m2程度であるのが好ましい。短繊維ウェブの目付が40g/m2未満であると、短繊維量が少なすぎて、拡幅処理してしぼを現出させたとき孔が開いてしまう恐れがある。短繊維ウェブの目付が60g/m2を超えると、伸縮性ネットの伸縮性を阻害し、拡幅処理が不十分となり、顕著なしぼが現出しにくくなる傾向が生じる。なお、短繊維ウェブの目付は、それが伸縮性ネットの両面に積層されたときは、両面での合計重量である。
短繊維ウェブを伸縮性ネットに積層した後、粗目ネット等に担持させた状態で、短繊維ウェブ側から高圧液体流が施される。したがって、伸縮性ネットの両面に短繊維ウェブを積層した場合には、両面から高圧液体流が施される。この高圧液体流処理によって、短繊維相互間が交絡されると共に、短繊維は伸縮性ネットにも交絡され、短繊維ウェブと伸縮性ネットとが一体化した積層不織布が得られる。高圧液体流としては一般に高圧水流が用いられる。高圧液体流の噴出圧力は任意であるが、一般的に3〜15MPaの範囲内である。
高圧液体流処理を施した後、積層不織布を乾燥する。その後、この積層不織布を幅方向に拡幅する。拡幅は、積層不織布の幅方向に外力を負荷する手段であれば、任意の手段で行うことができる。一般的には、ピンテンターを用いて行うのが好ましい。幅方向の拡幅率は、30〜100%であるのが好ましい。なお、拡幅率とは、{[(拡幅後の幅)−(拡幅前の幅)]/(拡幅前の幅)}×100なる式で算出されるものである。幅方向の拡幅は、幅方向の破断伸度を超えないことは言うまでもない。一般的に、拡幅率は幅方向の破断伸度に対して、40〜80%であるのが好ましい。したがって、幅方向の破断伸度が120%であるとすると、拡幅率は120×0.4%=48%から、120×0.8%=96%であるのが好ましい。
この拡幅により、短繊維ウェブ中の短繊維同士の交絡が一部解除され、また短繊維と伸縮性ネットとの交絡も一部解除され、短繊維ウェブの幅が元の長さよりも長くなる。そして、幅方向に負荷した外力を取り除くと、この外力によって伸長している伸縮性ネットが元の長さに収縮する。したがって、元の長さよりも長くなった短繊維ウェブと、元の長さに収縮した伸縮性ネットとの間で、幅方向における長さが異なり、短繊維ウェブの方が長くなっている。この長くなった短繊維ウェブが、元の長さに戻った伸縮性ネットの長さに収まることにより、短繊維ウェブにたるみが生じて、しぼが現出するのである。このしぼは、主として伸縮性ネットの目において現出する。
以上のようにして得られたしぼ調積層不織布は、しぼの存在によって良好な風合を示す。しかも、短繊維ウェブは予め幅方向に拡幅されており、かつ伸縮性ネットが挿入又は積層されていることにより、幅方向に良好な伸縮性を示す。したがって、良好な風合と良好な伸縮性が要求される種々の用途で用いることができる。たとえば、幅方向が長手方向になるように裁断して、包帯、サポーター又はギブスの固定用基布等に用いることができる。また、使い捨ておむつのサイドギャザー、肌着又はスポーツウェアーを構成する素材として用いることもできる。さらに、包装袋や包装容器の素材として用いることもできる。なお、しぼ調積層不織布を身体に適用する用途に使用する場合には、短繊維ウェブを構成する短繊維として、吸汗性や吸液性に優れている木綿繊維を採用するのが好ましい。
本発明に係るしぼ調積層不織布の製造方法は、短繊維ウェブに挿入又は積層された伸縮性ネットの伸長力及び収縮力を利用して、短繊維ウェブにたるみを生じさせ、しぼを現出するものであるため、短繊維ウェブを構成する繊維として、いかなる繊維を用いても、しぼを現出させうるという効果を奏する。
以下、実施例に基づいて本発明を説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。本発明は、短繊維ウェブと伸縮性ネットとを高圧液体流によって交絡処理した後、伸縮性ネットの伸長力を利用して交絡を一部解除し、伸縮性ネットの収縮力を利用してしぼを現出させる点に特徴を有するものであると理解されるべきである。
実施例1
縦モノフィラメントが径約0.3mmのポリエステルモノフィラメントで、横モノフィラメントが径約0.8mmのスチレン系エラストマーモノフィラメントよりなり、縦モノフィラメントと横モノフィラメントが格子状に配列してなる伸縮性ネット(コンウェッド社製、商品名「リバウンドネット 810345−006」)を準備した。この伸縮性ネットは、縦モノフィラメントの横方向における密度は8本/25mmであり、横モノフィラメントの縦方向における密度は4本/25mmであり、交点はスチレン系エラストマーモノフィラメントの熱可塑性を利用して熱融着されてなるものである。したがって、伸縮性ネットに形成されている各目の大きさは、概ね縦6mm×横2mmの大きさになっている。
一方、繊度2.2デシテックスで繊維長44mmのポリエステル系サイドバイサイド型複合短繊維(ユニチカ社製、品番「T81」)50質量%と、平均繊維長25mmの木綿繊維50質量%を均一に混合し、ランダムカード機で開繊及び集積してなる、目付25g/m2の短繊維ウェブを準備した。そして、この短繊維ウェブを伸縮性ネットの両面に積層し、♯25メッシュの金網製コンベアー上に担持して、高圧水流を付与した。高圧水流は、両面共に、10MPaの噴出圧力で処理した。その後、120℃で1分間乾燥して積層不織布を得た。
この積層不織布の両長手端部をピンテンターで把持して、幅方向に拡幅率75%で拡幅させた後、ピンテンターの把持を解除して、元の幅に戻した。この結果、積層不織布表面には、図2で示すように多数のしぼが現出し、風合の良好なしぼ調積層不織布が得られた。なお、拡幅前の積層不織布は、その幅方向の破断伸度が150%であり、拡幅率は破断伸度に対して50%であった。
実施例2
平均繊維長25mmの木綿繊維100質量%で短繊維ウェブを得た他は、実施例1と同一の方法でしぼ調積層不織布を得た。このしぼ調積層不織布は、実施例1で得られたものと同様の性能を持つものであるが、実施例1のものに比べて吸液性に優れているものであった。
実施例3
実施例1で用いた伸縮性ネットの片面に、延伸ポリエステル長繊維が縦方向に配列している、目付5g/m2の長繊維ウェブ(JX日鉱日石ANCI社製、商品名「ミライフ」)を積層した後、143℃に加熱された一対の熱カレンダーを通して加熱及び加圧し、スチレン系エラストマーモノフィラメントの熱可塑性を利用して、伸縮性ネットと長繊維ウェブとを貼合し貼合シートを得た。この貼合シートを、実施例1で用いた伸縮性ネットに代えて用いた他は、実施例1と同一の方法でしぼ調積層不織布を得た。このしぼ調積層不織布は、実施例1で得られたものと同様の性能を持つものであるが、実施例1のものに比べて均一なしぼが現出していた。
本発明で用いる伸縮性ネットの一例を示す平面図である。 実施例1で得られたしぼ調積層不織布の平面図である。

Claims (8)

  1. 少なくとも幅方向に伸縮性を有する伸縮性ネットの片面又は両面に、木綿繊維よりなる短繊維が集積されてなる短繊維ウェブを積層した後、該短繊維ウェブ側から高圧液体流を施して、該短繊維相互間及び該短繊維と該伸縮性ネットを交絡させた後、該伸縮性ネットを幅方向に拡幅して、該短繊維の交絡を一部解除した後、該伸縮性ネットの伸縮性を利用して元の幅に戻すことを特徴とするしぼ調積層不織布の製造方法。
  2. 伸縮性ネットが、伸縮性を有する縦モノフィラメントと伸縮性を有する横モノフィラメントとを格子状に配列させたものである請求項1記載のしぼ調積層不織布の製造方法。
  3. 伸縮性ネットが、非伸縮性の縦モノフィラメントと伸縮性を有する横モノフィラメントとを格子状に配列されたものである請求項1記載のしぼ調積層不織布の製造方法。
  4. 伸縮性を有する横モノフィラメントが熱可塑性弾性樹脂よりなり、縦モノフィラメントと該横モノフィラメントの交点が該横モノフィラメントの熱可塑性によって融着せしめられている請求項2又は3記載のしぼ調積層不織布の製造方法。
  5. 縦モノフィラメント及び横モノフィラメントの径が0.1〜2mmである請求項2乃至4のいずれか一項に記載のしぼ調積層不織布の製造方法。
  6. 短繊維として、さらにポリエステル短繊維を混綿した請求項1記載のしぼ調積層不織布の製造方法。
  7. 短繊維として、木綿繊維のみを用いた請求項1記載のしぼ調積層不織布の製造方法。
  8. 幅方向に30〜100%の拡幅率で拡幅した請求項1記載のしぼ調積層不織布の製造方法。
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