JP5569348B2 - 可変圧縮比機構を備える内燃機関 - Google Patents

可変圧縮比機構を備える内燃機関 Download PDF

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Description

本発明は、可変圧縮比機構を備える内燃機関に関する。
クランクケースに対してシリンダブロックを相対移動させる可変圧縮比機構を備える内燃機関が公知であり、このような可変圧縮比機構を備える内燃機関において、各機関負荷に対してそれぞれの目標機械圧縮比((上死点燃焼室容積+行程容積)/上死点燃焼室容積)が定められている。
ところで、可燃混合気を点火プラグ近傍に形成する成層燃焼は、気筒内に均質混合気を形成する均質燃焼とは異なり、点火時期を大幅に遅角して、例えば膨張行程中期での点火も可能であるために、機関排気系の触媒装置を暖機する際に、排気ガス温度を高めるのに成層燃焼において点火時期遅角を実施することが提案されている(特許文献1参照)。
成層燃焼を実施するためには、一般的には、気筒内へ直接的に燃料を噴射する燃料噴射弁から圧縮行程においてピストン頂面のキャビティ内へ燃料が噴射される。こうして噴射された燃料は、キャビティの底面に斜めに衝突し、自身慣性力を利用して、キャビティの底面上を進行して、キャビティの点火プラグ側側面に沿って偏向され、気筒上部略中心に位置する点火プラグ近傍へ向かう。噴射燃料は、気筒内を飛行中において吸気との間の摩擦熱を受けると共にキャビティ内を進行中にキャビティから受熱して、点火プラグ近傍に到達したときには、気化して可燃混合気となる。
特開平11−324765 特開昭63−159642 特開2005−256777
可変圧縮比機構により機械圧縮比が変更されている途中に成層燃焼が実施されると、圧縮行程において、ピストンのシリンダブロックに対する相対上昇速度が増加したり減少したりするために、シリンダブロックに固定されたシリンダヘッドに取り付けられた燃料噴射弁から噴射される燃料のピストンキャビティへの相対的な衝突速度が増加したり減少したりする。
それにより、キャビティ上を進行する噴射燃料の自身慣性力が大きくなれば、噴射燃料は意図するより早く点火プラグ近傍に到達して、点火時期においては点火プラグ近傍から過剰に分散する。また、キャビティ上を進行する噴射燃料の自身慣性力が小さくなれば、噴射燃料は意図するより遅く点火プラグ近傍に到達して、点火時期においては点火プラグ近傍に過剰に集合する。その結果として、点火時期において点火プラグ近傍に形成される混合気の空燃比がリーン化したりリッチ化したりして着火性を悪化させる。
従って、本発明の目的は、可変圧縮比機構を備える内燃機関において、可変圧縮比機構による機械圧縮比の変更途中に成層燃焼を実施する際の着火性の悪化を抑制することである。
本発明による請求項1に記載の可変圧縮比機構を備える内燃機関は、気筒上部に位置する点火プラグ近傍に可燃混合気を形成するために気筒内へ直接的に燃料を噴射する燃料噴射弁により圧縮行程においてピストン頂面に形成されたキャビティ内へ燃料を噴射することによって噴射燃料を前記キャビティにより偏向させて点火プラグ近傍へ向かわせる成層燃焼を可変圧縮比機構による機械圧縮比の変更途中に実施する場合の燃料噴射開始時期は、前記成層燃焼を同じ機関回転数及び同じ燃料噴射量において前記可変圧縮比機構による機械圧縮比の変更途中ではなく実施する場合の燃料噴射開始時期から変更されることを特徴とする。
本発明による請求項2に記載の可変圧縮比機構を備える内燃機関は、気筒上部に位置する点火プラグ近傍に可燃混合気を形成するために気筒内へ直接的に燃料を噴射する燃料噴射弁により圧縮行程においてピストン頂面に形成されたキャビティ内へ燃料を噴射することによって噴射燃料を前記キャビティにより偏向させて点火プラグ近傍へ向かわせる成層燃焼を可変圧縮比機構による機械圧縮比の変更途中に実施する場合には、気筒内に均質混合気を形成する均質燃焼を前記可変圧縮比機構による機械圧縮比の変更途中に実施する場合に比較して、前記可変圧縮比機構による機械圧縮比の変更速度を低下させることを特徴とする。
本発明による請求項1に記載の可変圧縮比機構を備える内燃機関によれば、気筒上部に位置する点火プラグ近傍に可燃混合気を形成するために気筒内へ直接的に燃料を噴射する燃料噴射弁により圧縮行程においてピストン頂面に形成されたキャビティ内へ燃料を噴射することによって噴射燃料をキャビティにより偏向させて点火プラグ近傍へ向かわせる成層燃焼を可変圧縮比機構による機械圧縮比の変更途中に実施する場合の燃料噴射開始時期は、成層燃焼を同じ機関回転数及び同じ燃料噴射量において可変圧縮比機構による機械圧縮比の変更途中ではなく実施する場合の燃料噴射開始時期から変更されるようになっており、それにより、可変圧縮比機構による機械圧縮比の変更途中の成層燃焼において、噴射燃料のピストンキャビティへの相対的な衝突速度が増加したり減少したりしても、噴射燃料を意図する時期近傍に点火プラグ近傍に到達させることができ、点火時期において点火プラグ近傍に形成される混合気の空燃比がリーン化したりリッチ化したりして着火性が悪化することを抑制することができる。
本発明による請求項2に記載の可変圧縮比機構を備える内燃機関によれば、気筒上部に位置する点火プラグ近傍に可燃混合気を形成するために気筒内へ直接的に燃料を噴射する燃料噴射弁により圧縮行程においてピストン頂面に形成されたキャビティ内へ燃料を噴射することによって噴射燃料をキャビティにより偏向させて点火プラグ近傍へ向かわせる成層燃焼を可変圧縮比機構により機械圧縮比を変更途中に実施する場合には、気筒内に均質混合気を形成する均質燃焼を可変圧縮比機構により機械圧縮比を変更途中に実施する場合に比較して、可変圧縮比機構により機械圧縮比の変更速度を低下させるようになっており、それにより、可変圧縮比機構による機械圧縮比の変更途中の成層燃焼において、噴射燃料のピストンキャビティへの衝突速度が増加したり減少したりすること抑制して、噴射燃料を意図する時期近傍に点火プラグ近傍に到達させることができ、点火時期において点火プラグ近傍に形成される混合気の空燃比がリーン化したりリッチ化したりして着火性が悪化することを抑制することができる。
内燃機関の全体図である。 可変圧縮比機構の分解斜視図である。 図解的に表した内燃機関の側面断面図である。 可変バルブタイミング機構を示す図である。 吸気弁および排気弁のリフト量を示す図である。 機械圧縮比、実圧縮比および膨張比を説明するための図である。 理論熱効率と膨張比との関係を示す図である。 通常のサイクルおよび超高膨張比サイクルを説明するための図である。 機関負荷に応じた機械圧縮比等の変化を示す図である。 内燃機関により実施される成層燃焼を説明するための図である。 機械圧縮比の変更途中に成層燃焼を実施する場合の燃料噴射開始時期を制御するために第一フローチャートである。 第一フローチャートに基づく、機械圧縮比毎の変更途中に成層燃焼を実施する場合の機械圧縮比、燃焼切換フラグ、燃料噴射開始時期、及び点火時期の変化を示すタイムチャートである。 機械圧縮比の変更途中に成層燃焼を実施する場合の可変圧縮比機構のアクチュエータの作動速度を制御するための第二フローチャートである。 第二フローチャートに基づく、機械圧縮比毎の変更途中に成層燃焼を実施する場合の機械圧縮比、燃焼切換フラグ、及び点火時期の変化を示すタイムチャートである。
図1は本発明による可変圧縮比機構を備える内燃機関の側面断面図を示す。図1を参照すると、1はクランクケース、2はシリンダブロック、3はシリンダヘッド、4はピストン、5は燃焼室、6は燃焼室5の頂面中央部に配置された点火プラグ、7は吸気弁、8は吸気ポート、9は排気弁、10は排気ポートを夫々示す。吸気ポート8は吸気枝管11を介してサージタンク12に連結されている。シリンダブロック3の一対の吸気ポート8の間には、気筒内へ燃料を噴射するための燃料噴射弁(図示せず)が配置されている。
サージタンク12は吸気ダクト14を介してエアクリーナ15に連結され、吸気ダクト14内にはアクチュエータ16によって駆動されるスロットル弁17と例えば熱線を用いた吸入空気量検出器18とが配置される。一方、排気ポート10は排気マニホルド19を介して例えば三元触媒を内蔵した触媒装置20に連結され、排気マニホルド19内には空燃比センサ21が配置される。
一方、図1に示される実施例ではクランクケース1とシリンダブロック2との連結部にクランクケース1とシリンダブロック2のシリンダ軸線方向の相対位置を変化させることによりピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積を変更可能な可変圧縮比機構Aが設けられており、更に実際の圧縮作用の開始時期を変更可能な実圧縮作用開始時期変更機構Bが設けられている。なお、図1に示される実施例ではこの実圧縮作用開始時期変更機構Bは吸気弁7の閉弁時期を制御可能な可変バルブタイミング機構からなる。
図1に示されるようにクランクケース1とシリンダブロック2にはクランクケース1とシリンダブロック2間の相対位置関係を検出するための相対位置センサ22が取付けられており、この相対位置センサ22からはクランクケース1とシリンダブロック2との間隔の変化を示す出力信号が出力される。また、可変バルブタイミング機構Bには吸気弁7の閉弁時期を示す出力信号を発生するバルブタイミングセンサ23が取付けられており、スロットル弁駆動用のアクチュエータ16にはスロットル弁開度を示す出力信号を発生するスロットル開度センサ24が取付けられている。
電子制御ユニット30はデジタルコンピュータからなり、双方向性バス31によって互いに接続されたROM(リードオンリメモリ)32、RAM(ランダムアクセスメモリ)33、CPU(マイクロプロセッサ)34、入力ポート35および出力ポート36を具備する。吸入空気量検出器18、空燃比センサ21、相対位置センサ22、バルブタイミングセンサ23およびスロットル開度センサ24の出力信号は夫々対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。また、アクセルペダル40にはアクセルペダル40の踏込み量Lに比例した出力電圧を発生する負荷センサ41が接続され、負荷センサ41の出力電圧は対応するAD変換器37を介して入力ポート35に入力される。更に入力ポート35にはクランクシャフトが例えば30°回転する毎に出力パルスを発生するクランク角センサ42が接続される。一方、出力ポート36は対応する駆動回路38を介して点火プラグ6、燃料噴射弁、スロットル弁駆動用アクチュエータ16、可変圧縮比機構Aおよび可変バルブタイミング機構Bに接続される。
図2は図1に示す可変圧縮比機構Aの分解斜視図を示しており、図3は図解的に表した内燃機関の側面断面図を示している。図2を参照すると、シリンダブロック2の両側壁の下方には互いに間隔を隔てた複数個の突出部50が形成されており、各突出部50内には夫々断面円形のカム挿入孔51が形成されている。一方、クランクケース1の上壁面上には互いに間隔を隔てて夫々対応する突出部50の間に嵌合せしめられる複数個の突出部52が形成されており、これらの各突出部52内にも夫々断面円形のカム挿入孔53が形成されている。
図2に示されるように一対のカムシャフト54,55が設けられており、各カムシャフト54,55上には一つおきに各カム挿入孔53内に回転可能に挿入される円形カム58が固定されている。これらの円形カム58は各カムシャフト54,55の回転軸線と共軸をなす。一方、各円形カム58の両側には図3に示すように各カムシャフト54,55の回転軸線に対して偏心配置された偏心軸57が延びており、この偏心軸57上に別の円形カム56が偏心して回転可能に取付けられている。図2に示されるようにこれら円形カム56は各円形カム58の両側に配置されており、これら円形カム56は対応する各カム挿入孔51内に回転可能に挿入されている。また、図2に示されるようにカムシャフト55にはカムシャフト55の回転角度を表す出力信号を発生するカム回転角度センサ25が取付けられている。
図3(A)に示すような状態から各カムシャフト54,55上に固定された円形カム58を図3(A)において矢印で示される如く互いに反対方向に回転させると偏心軸57が互いに離れる方向に移動するために円形カム56がカム挿入孔51内において円形カム58とは反対方向に回転し、図3(B)に示されるように偏心軸57の位置が高い位置から中間高さ位置となる。次いで更に円形カム58を矢印で示される方向に回転させると図3(C)に示されるように偏心軸57は最も低い位置となる。
なお、図3(A)、図3(B)、図3(C)には夫々の状態における円形カム58の中心aと偏心軸57の中心bと円形カム56の中心cとの位置関係が示されている。
図3(A)から図3(C)とを比較するとわかるようにクランクケース1とシリンダブロック2の相対位置は円形カム58の中心aと円形カム56の中心cとの距離によって定まり、円形カム58の中心aと円形カム56の中心cとの距離が大きくなるほどシリンダブロック2はクランクケース1から離れる。即ち、可変圧縮比機構Aは回転するカムを用いたクランク機構によりクランクケース1とシリンダブロック2間の相対位置を変化させていることになる。シリンダブロック2がクランクケース1から離れるとピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積は増大し、従って各カムシャフト54,55を回転させることによってピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積を変更することができる。
図2に示されるように各カムシャフト54,55を夫々反対方向に回転させるために駆動モータ59の回転軸には夫々螺旋方向が逆向きの一対のウォーム61,62が取付けられており、これらウォーム61,62と噛合するウォームホイール63,64が夫々各カムシャフト54,55の端部に固定されている。この実施例では駆動モータ59を駆動することによってピストン4が圧縮上死点に位置するときの燃焼室5の容積を広い範囲に亘って変更することができる。
一方、図4は図1において吸気弁7を駆動するためのカムシャフト70の端部に取付けられた可変バルブタイミング機構Bを示している。図4を参照すると、この可変バルブタイミング機構Bは機関のクランク軸によりタイミングベルトを介して矢印方向に回転せしめられるタイミングプーリ71と、タイミングプーリ71と一緒に回転する円筒状ハウジング72と、吸気弁駆動用カムシャフト70と一緒に回転しかつ円筒状ハウジング72に対して相対回転可能な回転軸73と、円筒状ハウジング72の内周面から回転軸73の外周面まで延びる複数個の仕切壁74と、各仕切壁74の間で回転軸73の外周面から円筒状ハウジング72の内周面まで延びるベーン75とを具備しており、各ベーン75の両側には夫々進角用油圧室76と遅角用油圧室77とが形成されている。
各油圧室76,77への作動油の供給制御は作動油供給制御弁78によって行われる。この作動油供給制御弁78は各油圧室76,77に夫々連結された油圧ポート79,80と、油圧ポンプ81から吐出された作動油の供給ポート82と、一対のドレインポート83,84と、各ポート79,80,82,83,84間の連通遮断制御を行うスプール弁85とを具備している。
吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相を進角すべきときは図4においてスプール弁85が右方に移動せしめられ、供給ポート82から供給された作動油が油圧ポート79を介して進角用油圧室76に供給されると共に遅角用油圧室77内の作動油がドレインポート84から排出される。このとき回転軸73は円筒状ハウジング72に対して矢印方向に相対回転せしめられる。
これに対し、吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相を遅角すべきときは図4においてスプール弁85が左方に移動せしめられ、供給ポート82から供給された作動油が油圧ポート80を介して遅角用油圧室77に供給されると共に進角用油圧室76内の作動油がドレインポート83から排出される。このとき回転軸73は円筒状ハウジング72に対して矢印と反対方向に相対回転せしめられる。
回転軸73が円筒状ハウジング72に対して相対回転せしめられているときにスプール弁85が図4に示される中立位置に戻されると回転軸73の相対回転動作は停止せしめられ、回転軸73はそのときの相対回転位置に保持される。従って可変バルブタイミング機構Bによって吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相を所望の量だけ進角させることができ、遅角させることができることになる。
図5において実線は可変バルブタイミング機構Bによって吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相が最も進角されているときを示しており、破線は吸気弁駆動用カムシャフト70のカムの位相が最も遅角されているときを示している。従って吸気弁7の開弁期間は図5において実線で示す範囲と破線で示す範囲との間で任意に設定することができ、従って吸気弁7の閉弁時期も図5において矢印Cで示す範囲内の任意のクランク角に設定することができる。
図1および図4に示される可変バルブタイミング機構Bは一例を示すものであって、例えば吸気弁の開弁時期を一定に維持したまま吸気弁の閉弁時期のみを変えることのできる可変バルブタイミング機構等、種々の形式の可変バルブタイミング機構を用いることができる。
次に図6を参照しつつ本願において使用されている用語の意味について説明する。なお、図6の(A),(B),(C)には説明のために燃焼室容積が50mlでピストンの行程容積が500mlであるエンジンが示されており、これら図6の(A),(B),(C)において燃焼室容積とはピストンが圧縮上死点に位置するときの燃焼室の容積を表している。
図6(A)は機械圧縮比について説明している。機械圧縮比は圧縮行程時のピストンの行程容積と燃焼室容積のみから機械的に定まる値であってこの機械圧縮比は(燃焼室容積+行程容積)/燃焼室容積で表される。図6(A)に示される例ではこの機械圧縮比は(50ml+500ml)/50ml=11となる。
図6(B)は実圧縮比について説明している。この実圧縮比は実際に圧縮作用が開始されたときからピストンが上死点に達するまでの実際のピストン行程容積と燃焼室容積から定まる値であってこの実圧縮比は(燃焼室容積+実際の行程容積)/燃焼室容積で表される。即ち、図6(B)に示されるように圧縮行程においてピストンが上昇を開始しても吸気弁が開弁している間は圧縮作用は行われず、吸気弁が閉弁したときから実際の圧縮作用が開始される。従って実圧縮比は実際の行程容積を用いて上記の如く表される。図6(B)に示される例では実圧縮比は(50ml+450ml)/50ml=10となる。
図6(C)は膨張比について説明している。膨張比は膨張行程時のピストンの行程容積と燃焼室容積から定まる値であってこの膨張比は(燃焼室容積+行程容積)/燃焼室容積で表される。図6(C)に示される例ではこの膨張比は(50ml+500ml)/50ml=11となる。
次に図7および図8を参照しつつ本発明において用いられている超膨張比サイクルについて説明する。なお、図7は理論熱効率と膨張比との関係を示しており、図8は本発明において負荷に応じ使い分けられている通常のサイクルと超高膨張比サイクルとの比較を示している。
図8(A)は吸気弁が下死点近傍で閉弁し、ほぼ吸気下死点付近からピストンによる圧縮作用が開始される場合の通常のサイクルを示している。この図8(A)に示す例でも図6の(A),(B),(C)に示す例と同様に燃焼室容積が50mlとされ、ピストンの行程容積が500mlとされている。図8(A)からわかるように通常のサイクルでは機械圧縮比は(50ml+500ml)/50ml=11であり、実圧縮比もほぼ11であり、膨張比も(50ml+500ml)/50ml=11となる。即ち、通常の内燃機関では機械圧縮比と実圧縮比と膨張比とがほぼ等しくなる。
図7における実線は実圧縮比と膨張比とがほぼ等しい場合の、即ち通常のサイクルにおける理論熱効率の変化を示している。この場合には膨張比が大きくなるほど、即ち実圧縮比が高くなるほど理論熱効率が高くなることがわかる。従って通常のサイクルにおいて理論熱効率を高めるには実圧縮比を高くすればよいことになる。しかしながら機関高負荷運転時におけるノッキングの発生の制約により実圧縮比は最大でも12程度までしか高くすることができず、斯くして通常のサイクルにおいては理論熱効率を十分に高くすることはできない。
一方、このような状況下で機械圧縮比と実圧縮比とを厳密に区分しつつ理論熱効率を高めることが検討され、その結果理論熱効率は膨張比が支配し、理論熱効率に対して実圧縮比はほとんど影響を与えないことが見い出されたのである。即ち、実圧縮比を高くすると爆発力は高まるが圧縮するために大きなエネルギーが必要となり、斯くして実圧縮比を高めても理論熱効率はほとんど高くならない。
これに対し、膨張比を大きくすると膨張行程時にピストンに対し押下げ力が作用する期間が長くなり、斯くしてピストンがクランクシャフトに回転力を与えている期間が長くなる。従って膨張比は大きくすれば大きくするほど理論熱効率が高くなる。図7の破線ε=10は実圧縮比を10に固定した状態で膨張比を高くしていった場合の理論熱効率を示している。このように実圧縮比εを低い値に維持した状態で膨張比を高くしたときの理論熱効率の上昇量と、図7の実線で示す如く実圧縮比も膨張比と共に増大せしめられる場合の理論熱効率の上昇量とは大きな差がないことがわかる。
このように実圧縮比が低い値に維持されているとノッキングが発生することがなく、従って実圧縮比を低い値に維持した状態で膨張比を高くするとノッキングの発生を阻止しつつ理論熱効率を大巾に高めることができる。図8(B)は可変圧縮比機構Aおよび可変バルブタイミング機構Bを用いて、実圧縮比を低い値に維持しつつ膨張比を高めるようにした場合の一例を示している。
図8(B)を参照すると、この例では可変圧縮比機構Aにより燃焼室容積が50mlから20mlまで減少せしめられる。一方、可変バルブタイミング機構Bによって実際のピストン行程容積が500mlから200mlになるまで吸気弁の閉弁時期が遅らされる。その結果、この例では実圧縮比は(20ml+200ml)/20ml=11となり、膨張比は(20ml+500ml)/20ml=26となる。図8(A)に示される通常のサイクルでは前述したように実圧縮比がほぼ11で膨張比が11であり、この場合に比べると図8(B)に示される場合には膨張比のみが26まで高められていることがわかる。これが超高膨張比サイクルと称される所以である。
一般的に言って内燃機関では機関負荷が低いほど熱効率が悪くなり、従って機関運転時における熱効率を向上させるためには、即ち燃費を向上させるには機関負荷が低いときの熱効率を向上させることが必要となる。一方、図8(B)に示される超高膨張比サイクルでは圧縮行程時の実際のピストン行程容積が小さくされるために燃焼室5内に吸入しうる吸入空気量は少なくなり、従ってこの超高膨張比サイクルは機関負荷が比較的低いときにしか採用できないことになる。従って本発明では機関負荷が比較的低いときには図8(B)に示す超高膨張比サイクルとし、機関高負荷運転時には図8(A)に示す通常のサイクルとするようにしている。
次に図9を参照しつつ運転制御全般について概略的に説明する。図9には或る機関回転数における機関負荷に応じた吸入空気量、吸気弁閉弁時期、機械圧縮比、膨張比、実圧縮比およびスロットル弁17の開度の各変化が示されている。なお、図9は、触媒装置20内の三元触媒によって排気ガス中の未燃HC,COおよびNOXを同時に低減しうるように燃焼室5内における平均空燃比が空燃比センサ21の出力信号に基いて理論空燃比にフィードバック制御されている場合を示している。
さて、前述したように機関高負荷運転時には図8(A)に示される通常のサイクルが実行される。従って図9に示されるようにこのときには機械圧縮比は低くされるために膨張比は低く、図9において実線で示されるように吸気弁7の閉弁時期は図5において実線で示される如く早められている。また、このときには吸入空気量は多く、このときスロットル弁17の開度は全開に保持されているのでポンピング損失は零となっている。
一方、図9において実線で示されるように機関負荷が低くなるとそれに伴って吸入空気量を減少すべく吸気弁7の閉弁時期が遅くされる。またこのときには実圧縮比がほぼ一定に保持されるように図9に示される如く機関負荷が低くなるにつれて機械圧縮比が増大され、従って機関負荷が低くなるにつれて膨張比も増大される。なお、このときにもスロットル弁17は全開状態に保持されており、従って燃焼室5内に供給される吸入空気量はスロットル弁17によらずに吸気弁7の閉弁時期を変えることによって制御されている。
このように機関高負荷運転状態から機関負荷が低くなるときには実圧縮比がほぼ一定のもとで吸入空気量が減少するにつれて機械圧縮比が増大せしめられる。即ち、吸入空気量の減少に比例してピストン4が圧縮上死点に達したときの燃焼室5の容積が減少せしめられる。従ってピストン4が圧縮上死点に達したときの燃焼室5の容積は吸入空気量に比例して変化していることになる。なお、このとき図9に示される例では燃焼室5内の空燃比は理論空燃比となっているのでピストン4が圧縮上死点に達したときの燃焼室5の容積は燃料量に比例して変化していることになる。
機関負荷が更に低くなると機械圧縮比は更に増大せしめられ、機関負荷がやや低負荷寄りの中負荷L1まで低下すると機械圧縮比は燃焼室5の構造上限界となる限界機械圧縮比(上限機械圧縮比)に達する。機械圧縮比が限界機械圧縮比に達すると、機械圧縮比が限界機械圧縮比に達したときの機関負荷L1よりも負荷の低い領域では機械圧縮比が限界機械圧縮比に保持される。従って低負荷側の機関中負荷運転時および機関低負荷運転時には即ち、機関低負荷運転側では機械圧縮比は最大となり、膨張比も最大となる。別の言い方をすると機関低負荷運転側では最大の膨張比が得られるように機械圧縮比が最大にされる。
一方、図9に示される実施例では機関負荷がL1まで低下すると吸気弁7の閉弁時期が燃焼室5内に供給される吸入空気量を制御しうる限界閉弁時期となる。吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に達すると吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に達したときの機関負荷L1よりも負荷の低い領域では吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に保持される。
吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に保持されるともはや吸気弁7の閉弁時期の変化によっては吸入空気量を制御することができない。図9に示される実施例ではこのとき、即ち吸気弁7の閉弁時期が限界閉弁時期に達したときの機関負荷L1よりも負荷の低い領域ではスロットル弁17によって燃焼室5内に供給される吸入空気量が制御され、機関負荷が低くなるほどスロットル弁17の開度は小さくされる。
一方、図9において破線で示すように機関負荷が低くなるにつれて吸気弁7の閉弁時期を早めることによってもスロットル弁17によらずに吸入空気量を制御することができる。従って、図9において実線で示される場合と破線で示される場合とをいずれも包含しうるように表現すると、本発明による実施例では吸気弁7の閉弁時期は、機関負荷が低くなるにつれて、燃焼室内に供給される吸入空気量を制御しうる限界閉弁時期L1まで吸気下死点BDCから離れる方向に移動せしめられることになる。このように吸入空気量は吸気弁7の閉弁時期を図9において実線で示すように変化させても制御することができるし、破線に示すように変化させても制御することができる。
前述したように図8(B)に示す超高膨張比サイクルでは膨張比が26とされる。この膨張比は高いほど好ましいが図7からわかるように実用上使用可能な下限実圧縮比ε=5に対しても20以上であればかなり高い理論熱効率を得ることができる。従って本実施例では膨張比が20以上となるように可変圧縮比機構Aが形成されている。
本内燃機関は、吸気行程において燃料噴射弁により気筒内へ燃料を噴射することにより、圧縮行程末期の点火時期において気筒内に均質混合気を形成して着火燃焼させる均質燃焼を実施する。また、例えば、排気系の触媒装置20を暖機するために排気ガス温度を高めるときには、圧縮行程において燃料噴射弁により気筒内へ燃料を噴射して膨張行程の点火時期において点火プラグ近傍に可燃混合気を形成して着火燃焼させる成層燃焼を実施する。
図10は、本内燃機関において実施される成層燃焼を説明するための図である。ピストン4の頂面には吸気ポート8側に偏在してキャビティ4aが形成されており、成層燃焼を実施するために、シリンダブロック3の一対の吸気ポート8の間に配置された燃料噴射弁13は、圧縮行程後半においてキャビティ4a内へ燃料Fを噴射する。噴射燃料Fは、キャビティ4aの底面4b斜めに衝突し、ピストン4の中央側に位置するキャビティ4aの点火プラグ側側面4cへ向けて自身慣性力により底面4b上を進行し、その後、点火プラグ側側面4cに沿って偏向され、気筒上部略中心に位置する点火プラグ6近傍へ向かう。噴射燃料Fは、気筒内を飛行中において吸気との間の摩擦熱を受けると共にキャビティ4a内を進行中にキャビティ4aから受熱して、点火プラグ6近傍に到達したときには、気化して混合気となる。
点火時期において、点火プラグ6により点火プラグ6近傍の可燃混合気を着火させることにより、可燃混合気は良好に燃焼して気筒内全体としては理論空燃比よりリーンな空燃比の成層燃焼が実現される。このような成層燃焼は、例えば、膨張行程中期においても点火プラグ6近傍に着火性に優れた可燃混合気が形成されていれば、可燃混合気を良好に着火燃焼させることができ、大幅な点火時期の遅角が可能となるために、排気系の触媒装置20を暖機するために排気ガス温度を高めるのに有利である。
燃料噴射弁13は、例えば、スリット状の噴孔を有して、比較的厚さの薄い略扇形状に燃料を噴射するものであり、図10には噴射燃料Fの厚さ方向の断面が図示されている。このように噴射される燃料Fは、比較的大きな貫徹力を有しており、気筒内を飛行中に吸気との間の比較的大きな摩擦熱を受けると共に、キャビティ4aの底面4b上を進行する際に幅方向に広がるために底面4aから良好に受熱し、次いで、平面視において湾曲するキャビティ4aの点火プラグ側側面を進行する際に受熱しながら徐々に中央部へ集合して、最終的に点火プラグ6近傍へ向かう。
点火プラグ6近傍に到達した燃料は、前述のように十分に受熱して気化し、僅かに分散すると着火性に優れた可燃混合気となる。それにより、成層燃焼においては、点火時期に可燃混合気が点火プラグ6近傍に形成されるように、燃料噴射開始時期が設定される。例えば、燃料噴射終了時の燃料が点火時期において気化してキャビティ4aの外側に位置するように、燃料噴射終了時期から点火時期までの時間を一定とするためには、燃料噴射開始時期は、機関回転数が高いほど、また、燃料噴射量が多いほど、進角しなければならない。
可変圧縮比機構Aにより機械圧縮比が変更されている途中に成層燃焼が実施されることがあり、この場合には、圧縮行程において、ピストン4のシリンダブロック2に対する相対上昇速度が増加したり減少したりするために、シリンダブロック2に固定されたシリンダヘッド3に取り付けられた燃料噴射弁13から噴射される燃料のピストンキャビティ4aへの相対的な衝突速度が増加したり減少したりする。
それにより、衝突速度が増加してキャビティ4aの底面4b上を進行する噴射燃料Fの自身慣性力が大きくなれば、噴射燃料は意図するより早く点火プラグ6近傍に到達して、点火時期においては点火プラグ近傍から過剰に分散してしまう。また、衝突速度が減少してキャビティ4aの底面4b上を進行する噴射燃料Fの自身慣性力が小さくなれば、噴射燃料は意図するより遅く点火プラグ近傍に到達して、点火時期においては点火プラグ近傍に過剰に集合する。それにより、何もしなければ、点火時期において点火プラグ近傍に形成される混合気の空燃比がリーン化したりリッチ化したりして着火性が悪化し、良好な成層燃焼を実現することが困難となる。
本内燃機関は、良好な成層燃焼を実現するために、機械圧縮比の変更途中において成層燃焼を実施する際には、電子制御ユニット30により図11に示す第一フローチャートに従って燃料噴射弁13の燃料噴射開始時期ITを制御するようになっている。
先ず、ステップ101において、可変圧縮比機構Aにより機械圧縮比Eが変更途中であるか否かが判断される。この判断が否定されるときにはそのまま終了する。一方、機械圧縮比Eが変更途中であるときには、ステップ101の判断が肯定され、ステップ102において、成層燃焼の実施要求が有るか否かが判断される。この判断が否定されるときにはそのまま終了する。成層燃焼の実施要求が有るときには、ステップ102の判断が肯定され、ステップ103において、現在の機関回転数及び現在の燃料噴射量に基づき設定された基準燃料噴射開始時期ITをΔITだけ変更して新たな燃料噴射開始時期ITとする。
ここで、ΔITは、ステップ101において判断した機械圧縮比Eの変更が機械圧縮比を高める場合には正値となり、ステップ103において基準燃料噴射開始時期ITは進角される。一方、ΔITは、ステップ101において判断した機械圧縮比Eの変更が機械圧縮比を低くする場合には負値となり、ステップ103において燃料噴射開始時期ITは遅角される。ΔITの絶対値は、可変圧縮比機構Aの機械圧縮比の変更速度が一定である場合には、一定値として良いが、可変圧縮比機構Aの機械圧縮比の変更速度が変化する場合には、変更速度が速いほど大きくすることが好ましい。
図12は、第一フローチャートに基づく、機械圧縮比E、燃焼切換フラグF、燃料噴射開始時期IT、及び、点火時期FTの変化を示すタイムチャートである。負荷センサ41により要求負荷の減少が検出されて、時刻t0において、可変圧縮比機構Aにより機械圧縮比Eを高める変更が開始され、時刻t2において、可変圧縮比機構Aによる機械圧縮比Eを高める変更が完了する。時刻t0とt2との間が機械圧縮比Eの変更途中であり、この間において、例えば、排気系の触媒装置20の暖機のために、時刻t1において成層燃焼を実施する要求があると、燃焼切換フラグFは0から1とされて均質燃焼を中止して成層燃焼が実施され、点火時期FTも、時刻t1において、均質燃焼時の圧縮行程末期から成層燃焼時の膨張行程中期へと切り換えられる。
その際に、点線で示すように、燃料噴射開始時期を均質燃焼時の吸気行程の燃料噴射開始時期IT1から現在の機関回転数及び現在の燃料噴射量に基づき定められた成層燃焼時の圧縮行程の基準燃料噴射開始時期IT2(機械圧縮比の変更途中においては機関回転数がほぼ一定であって燃料噴射量も一定である場合)へ単に変化させると、前述したように、噴射燃料Fのピストンキャビティ4aへの相対的な衝突速度が速まるために、噴射燃料Fは点火プラグ6近傍に意図するより早く到達して点火時期においては過剰に分散し、点火時期において点火プラグ6近傍に形成される混合気がリーン化して着火性が悪化する。
本内燃機関では、第一フローチャートによって、機械圧縮比Eの変更途中において実施される成層燃焼の燃料噴射開始時期IT2’は、同じ機関回転数及び同じ燃料噴射量において機械圧縮比の変更途中ではなく成層燃焼を実施する場合の基準燃料噴射開始時期IT2に比較してΔITにより進角されている。それにより、噴射燃料Fを意図する時期近傍に点火プラグ6近傍に到達させることができ、点火時期において点火プラグ6近傍に形成される混合気のリーン化を抑制し、良好な成層燃焼を実現することが可能となる。
一方、機械圧縮比Eを低くする変更途中に成層燃焼を実施する場合の燃料噴射開始時期を、同じ機関回転数及び同じ燃料噴射量において機械圧縮比の変更途中ではなく成層燃焼を実施する場合の基準燃料噴射開始時期とすると、噴射燃料Fのピストンキャビティ4aへの相対的な衝突速度が遅くなるために、噴射燃料Fは点火プラグ6近傍に意図するより遅く到達して点火時期においては過剰に集合し、点火時期において点火プラグ6近傍に形成される混合気がリッチ化して着火性が悪化する。それにより、機械圧縮比Eを低くする変更途中において実施される成層燃焼の燃料噴射開始時期は、同じ機関回転数及び同じ燃料噴射量において機械圧縮比の変更途中ではなく成層燃焼を実施する場合の燃料噴射開始時期に比較してΔITにより遅角され、噴射燃料Fを意図する時期近傍に点火プラグ6近傍に到達させることにより、点火時期において点火プラグ6近傍に形成される混合気のリッチ化を抑制し、良好な成層燃焼を実現することが可能となる。
また、良好な成層燃焼を実現するために、機械圧縮比の変更途中において成層燃焼を実施する際には、電子制御ユニット30により図13に示す第二フローチャートに従って可変圧縮比機構Aによる機械圧縮比Eの変更速度Sを制御するようにしても良い。
先ず、ステップ201において、可変圧縮比機構Aにより機械圧縮比Eが変更途中であるか否かが判断される。この判断が否定されるときにはそのまま終了する。一方、機械圧縮比Eが変更途中であるときには、ステップ201の判断が肯定され、ステップ202において、成層燃焼の実施要求が有るか否かが判断される。この判断が否定されるときにはそのまま終了する。成層燃焼の実施要求が有るときには、ステップ202の判断が肯定され、ステップ203において、機械圧縮比Eの変更途中において均質燃焼が実施される場合の機械圧縮比の変更速度SをΔSだけ低下させるようになっている。具体的には、機械圧縮比Eの変更途中において成層燃焼が実施される場合には、可変圧縮比機構Aの駆動モータ59の回転速度を、機械圧縮比Eの変更途中において均質燃焼が実施される場合に比較して所望量だけ低下させる。
図14は、第二フローチャートに基づく、機械圧縮比E、燃焼切換フラグF、燃料噴射開始時期IT、及び、点火時期FTの変化を示すタイムチャートである。負荷センサ41により要求負荷の減少が検出されて、時刻t0において、可変圧縮比機構Aにより機械圧縮比Eを高める変更が開始され、均質燃焼が継続して実施される場合には、点線で示すように、時刻t2において、可変圧縮比機構Aによる機械圧縮比Eを高める変更が完了する。時刻t0とt2との間が機械圧縮比Eの変更途中であり、この間において、例えば、排気系の触媒装置20の暖機のために、時刻t1において成層燃焼を実施する要求があると、燃焼切換フラグFは0から1とされて均質燃焼を中止して成層燃焼が実施され、点火時期FTも、時刻t1において、均質燃焼時の圧縮行程末期から成層燃焼時の膨張行程中期へと切り換えられる。
その際に、燃料噴射開始時期を均質燃焼時の吸気行程の燃料噴射開始時期IT1から現在の機関回転数及び現在の燃料噴射量に基づき定められた成層燃焼時の圧縮行程の基準燃料噴射開始時期IT2へ変化させただけでは、前述したように、機械圧縮比の変更途中ではなく基準燃料噴射開始時期での成層燃焼を実施する場合に比較して、噴射燃料Fのピストンキャビティ4aへの相対的な衝突速度が速まるために、噴射燃料Fは点火プラグ6近傍に意図するより早く到達して点火時期においては過剰に分散し、点火時期において点火プラグ6近傍に形成される混合気がリーン化して着火性が悪化する。
本内燃機関では、機械圧縮比Eの変更要求に対して機械圧縮比Eの変更速度は速い方が好ましいが、第二フローチャートによって、機械圧縮比Eの変更途中において成層燃焼を実施する場合には、機械圧縮比を変更途中に均質燃焼を実施する場合に比較して、可変圧縮比機構により機械圧縮比Eの変更速度を低下させるようになっている。それにより、時刻t2より遅い時刻t3において、可変圧縮比機構Aによる機械圧縮比Eを高める変更が完了することとなるが、噴射燃料Fのピストンキャビティ4aへの相対的な衝突速度が速まることを抑制することにより、噴射燃料Fを意図する時期近傍に点火プラグ6近傍に到達させることができ、点火時期において点火プラグ6近傍に形成される混合気のリーン化を抑制して良好な成層燃焼を実現することが可能となる。
一方、機械圧縮比Eを低くする変更途中に成層燃焼を実施する場合には、機械圧縮比Eの変更速度を、機械圧縮比の変更途中に均質燃焼を実施する場合の機械圧縮比Eの変更速度のままとすると、噴射燃料Fのピストンキャビティ4aへの相対的な衝突速度が遅くなるために、噴射燃料Fは点火プラグ6近傍に意図するより遅く到達して点火時期においては過剰に集合し、点火時期において点火プラグ6近傍に形成される混合気がリッチ化して着火性が悪化する。それにより、機械圧縮比Eを低くする変更途中において成層燃焼を実施する場合にも、機械圧縮比を変更途中に均質燃焼を実施する場合に比較して、機械圧縮比Eの変更速度を低下させ、噴射燃料Fのピストンキャビティ4aへの相対的な衝突速度が遅くなることを抑制することにより、噴射燃料Fを意図する時期近傍に点火プラグ6近傍に到達させることができ、点火時期において点火プラグ6近傍に形成される混合気のリッチ化を抑制して良好な成層燃焼を実現することが可能となる。
1 クランクケース
2 シリンダブロック
3 シリンダヘッド
4 ピストン
4a キャビティ
13 燃料噴射弁
30 電子制御ユニット
A 可変圧縮比機構

Claims (2)

  1. 気筒上部に位置する点火プラグ近傍に可燃混合気を形成するために気筒内へ直接的に燃料を噴射する燃料噴射弁により圧縮行程においてピストン頂面に形成されたキャビティ内へ燃料を噴射することによって噴射燃料を前記キャビティにより偏向させて点火プラグ近傍へ向かわせる成層燃焼を可変圧縮比機構による機械圧縮比の増大途中に実施する場合の燃料噴射開始時期は、前記成層燃焼を同じ機関回転数及び同じ燃料噴射量において前記可変圧縮比機構による機械圧縮比の変更途中ではなく実施する場合の燃料噴射開始時期よりも進角し、成層燃焼を可変圧縮比機構による機械圧縮比の低下途中に実施する場合の燃料噴射開始時期は、前記成層燃焼を同じ機関回転数及び同じ燃料噴射量において前記可変圧縮比機構による機械圧縮比の変更途中でなく実施する場合の燃料噴射開始時期よりも遅角することを特徴とする可変圧縮比機構を備える内燃機関。
  2. 気筒上部に位置する点火プラグ近傍に可燃混合気を形成するために気筒内へ直接的に燃料を噴射する燃料噴射弁により圧縮行程においてピストン頂面に形成されたキャビティ内へ燃料を噴射することによって噴射燃料を前記キャビティにより偏向させて点火プラグ近傍へ向かわせる成層燃焼を可変圧縮比機構による機械圧縮比の変更途中に実施する場合には、気筒内に均質混合気を形成する均質燃焼を前記可変圧縮比機構による機械圧縮比の変更途中に実施する場合に比較して、前記可変圧縮比機構による機械圧縮比の変更速度を低下させることを特徴とする可変圧縮比機構を備える内燃機関。
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