JP5569281B2 - プラズモン励起センサを用いるアッセイ方法及びプラズモン励起センサを有するキット - Google Patents

プラズモン励起センサを用いるアッセイ方法及びプラズモン励起センサを有するキット Download PDF

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    • G01N21/648Specially adapted constructive features of fluorimeters using evanescent coupling or surface plasmon coupling for the excitation of fluorescence

Description

本発明は、アナライトを高感度に検出するアッセイ方法及びプラズモン励起センサを有するキットに関する。より詳細には、表面(局在も含む)プラズモン励起増強蛍光分光法(SPFS;Surface Plasmon−field enhanced Fluorescence Spectroscopy)の原理に基づいたプラズモン励起センサを用いたアッセイ方法及び当該プラズモン励起センサを有するキットに関する。
表面プラズモン励起増強蛍光分光法(SPFS)とは、照射したレーザー光が金属膜表面で全反射減衰(ATR)する条件において、金属膜表面に粗密波(表面プラズモン)を発生させることによって、照射したレーザー光が有するフォトン量を数十倍〜数百倍に増やし(表面プラズモンの電場増強効果)、これにより金属膜近傍の蛍光色素を効率良く励起させることができ、以上より極微量および/または極低濃度のアナライトを検出することができる方法である。このため、バイオアッセイの高感度化を図るために、近年SPFSの原理に基づいたプラズモン励起センサ及びそれを用いたアッセイ方法の研究・開発が種々行われている。
上述のように近年、このような表面プラズモン励起増強蛍光分光法(SPFS)の原理に基づいた表面プラズモン増強蛍光測定方法の開発が進められており、例えば特許文献1にその技術開示がなされている。
SPFSでは、一般に流路を設けて基板に一次抗体を固定化し、アナライトを捕捉させた後、蛍光標識した二次抗体を用いてサンドイッチイムノアッセイを行い抗体補捉量を算出するが、金属膜で生じた電場増強効果が金属膜表面から200nm程度の範囲にまで及ぶことから、アナライトを介して金属膜表面に固定された蛍光色素(特異吸着分)のみならず、流路中の励起光照射領域に存在する金属膜表面にアナライトを介して固定されていない蛍光色素(非特異吸着分)も励起され蛍光発光を生じている。この非特異吸着分である蛍光発光も検出蛍光シグナルとして検出されてしまうため、金属膜表面に固定されたアナライトと蛍光色素との結合反応終了後、蛍光量の測定に先立ち非特異吸着分の蛍光色素を洗浄する必要がある。SPFSではこの洗浄を行うことが一般的であり、例えば特許文献2及び3には、このような洗浄を行う工程の技術が開示されている。
しかしながら、このような洗浄を行うと、非特異吸着分は洗浄できるが、特異吸着分の一部も洗い流されるケースが多く、そのためにS/Nが劣化してしまうという問題がある。また、洗浄を行うと、迅速なアッセイ方法を実現することが難しいという問題もある。つまり、蛍光量の測定に先立ち洗浄を行うことから、洗浄の後でなければ蛍光量の測定ができずアナライトと蛍光色素との結合反応中にリアルタイムでの測定をすることはできなかった。
このように、蛍光量の測定に先立ちアナライトと蛍光色素との結合反応後に洗浄を行うことは、特異吸着分の蛍光色素の減少による検出蛍光シグナルの低下につながるとともに、この特異吸着分の蛍光色素の減少量によって検出蛍光シグナルのばらつきをも生じさせている。さらに、洗浄後でなければ蛍光量の測定ができないので、アナライトと蛍光色素との結合反応中にリアルタイムでの測定ができず、洗浄する工程があるので蛍光量の測定までに時間が掛かるという問題もある。
特開2006−208069号公報 特開2009−128012号公報 特開2010−48756号公報
本発明は、上記問題に鑑みなされたものであり、プラズモン励起センサを利用したアッセイ方法において、高い感度および精度を有しながら、結合反応中にリアルタイムな測定を可能にしたアッセイ法及びプラズモン励起センサを有するキットを提供することを目的とする。
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
1.金属部材、第一のリガンド及び蛍光色素前駆体と発色反応を起こす蛍光色素前駆体顕色剤を備えるプラズモン励起センサを用いるアッセイ方法であって、以下の工程(a)〜(c)を有することを特徴とするアッセイ方法。
工程(a):該プラズモン励起センサにアナライト溶液を接触させて、該プラズモン励起センサに該アナライト溶液中のアナライトを固定する工程、
工程(b):該アナライトを固定したプラズモン励起センサに、第二のリガンドと複数の蛍光色素前駆体とにより修飾された微粒子である蛍光色素前駆体リガンド複合体を接触させ、該第二のリガンドを介して該第一のリガンドに該複数の蛍光色素前駆体を固定して該蛍光色素前駆体顕色剤と反応させることにより、蛍光色素を得る工程、
工程(c):該金属部材に励起光を照射することで該蛍光色素を励起し、励起された該蛍光色素から発光された蛍光量を測定する工程。
2.前記金属部材の表面にSAMが形成されていることを特徴とする前記1に記載のアッセイ方法。
3.前記SAMの表面にデキストランが固定されていることを特徴とする前記2に記載のアッセイ方法。
4.前記蛍光色素前駆体顕色剤は、前記金属部材に固定されていることを特徴とする前記1に記載のアッセイ方法。
5.前記蛍光色素前駆体顕色剤は、前記SAMに固定されていることを特徴とする前記2に記載のアッセイ方法。
6.前記蛍光色素前駆体顕色剤は、前記デキストランに固定されていることを特徴とする前記3に記載のアッセイ方法。
7.前記蛍光色素前駆体顕色剤は、前記第一のリガンドに固定されていることを特徴とする前記1〜3のいずれか一項に記載のアッセイ方法。
8.前記金属部材は、金属膜であることを特徴とする前記1〜7のいずれか一項に記載のアッセイ方法。
9.前記金属部材は、金属粒子であることを特徴とする前記1〜7のいずれか一項に記載のアッセイ方法。
10.プラズモン励起センサは基板を備え、前記金属粒子は該基板に分散されていることを特徴とする前記9に記載のアッセイ方法。
.前記アナライト溶液は、血液、血清、血漿、尿、鼻孔液及び唾液から選ばれる少なくとも1種の体液であることを特徴とする前記1〜1のいずれか一項に記載のアッセイ方法。
.金属部材、第一のリガンドおよび蛍光色素前駆体と発色反応を起こす蛍光色素前駆体顕色剤を含むプラズモン励起センサと、第二のリガンドおよび複数の蛍光色素前駆体により修飾された微粒子である蛍光色素前駆体リガンド複合体と、を備えたことを特徴とする、キット
.前記金属部材の表面にSAMが形成されていることを特徴とする前記1に記載のキット
.前記SAMの表面にデキストランが固定されていることを特徴とする前記1に記載のキット
.前記蛍光色素前駆体顕色剤は、前記金属部材に固定されていることを特徴とする前記1に記載のキット。
.前記蛍光色素前駆体顕色剤は、前記SAMに固定されていることを特徴とする前記1に記載のキット
.前記蛍光色素前駆体顕色剤は、前記デキストランに固定されていることを特徴とする前記1に記載のキット。
.前記蛍光色素前駆体顕色剤は、前記第一のリガンドに固定されていることを特徴とする前記1〜1のいずれか一項に記載のキット
19.前記金属部材は、金属膜であることを特徴とする前記1〜1のいずれか一項に記載のキット
.前記金属部材は、金属粒子であることを特徴とする前記1〜1のいずれか一項に記載のキット
.プラズモン励起センサは基板を備え、前記金属粒子は該基板に分散されていることを特徴とする前記2に記載のキット
本発明は、プラズモン励起を利用するアッセイ方法において、高い感度および精度を有しながら、結合反応中にリアルタイムな測定を可能にしたアッセイ法及びプラズモン励起センサを有するキットを提供することができる。
本発明に係るプラズモン励起センサおよびアッセイ法を示す模式図である。
図中、a)はプラズモン励起センサ10の模式図で、b)は、蛍光色素前駆体リガンド複合体20を添加し、一部がアナライト31を介して第一のリガンド12に固定されている模式図である。c)は、蛍光色素前駆体リガンド複合体20の蛍光色素前駆体24が、蛍光色素前駆体顕色剤13と反応し、蛍光色素22となった状態を示す模式図である。
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。
本発明者らは、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、SPFSを用いたアッセイ方法において、蛍光色素前駆体と蛍光色素前駆体顕色剤(以下、単に顕色剤とも言う)との発色反応を用いることで上記問題を解決することができた。
つまり、本発明は、金属部材、第一のリガンド及び顕色剤を備えるプラズモン励起センサに、第二のリガンドに固定された蛍光色素前駆体を作用させることで、蛍光色素前駆体は近傍にある顕色剤と発色反応を起こし蛍光を発生させ、その蛍光量を測定することを特徴とする。
顕色剤と発色反応を起こさなかった流路中の未反応の蛍光色素前駆体は、蛍光を発生しないので、表面プラズモンでの電場増強効果を得ることがなく、蛍光量の測定に影響がでず測定に先立ち洗浄する必要がなくなる。結果、従来の蛍光色素を用いたSPFSを用いるアッセイ方法に比べてS/Nが向上し、かつ高い感度および精度を有しながらの迅速処理が可能となることを見出し、本発明に至った次第である。
〔プラズモン励起センサ〕
本発明に係るプラズモン励起センサは、少なくとも、金属部材と、第一のリガンドと、蛍光色素前駆体と発色反応を起こす蛍光色素前駆体顕色剤とを備えている。
以下、本発明のプラズモン励起センサの一例について、図1を参照しながら具体的に説明する。
例えば、本発明に係るプラズモン励起センサ11は、透明基板111上に金属膜112を備え、該金属膜112上に第一のリガンド12と蛍光色素前駆体顕色剤13とを有する。
《基板》
本発明に係るアッセイ方法において、プラズモン励起センサ11の構造を支持する基板を用いる場合は透明基板111が好ましく用いられる。本発明において、基板として透明基板111を用いるのは、後述する金属膜112への光照射をこの基板を通じて行うからである。
本発明の図1で用いられる透明基板111は、後述する金属膜112を透明基板111の表面に形成することから、少なくとも金属膜形成用平面を有している。このような透明基板111の一例として、透明平面基板が挙げられる。また、本発明の図1で用いられる透明基板111は、金属膜形成用平面に加えて、プリズム部、サンプル保持部などの他の構成要素をさらに含んでいてもよい。また、透明基板111は金属膜形成用平面、プリズム部及びサンプル保持部を含む一体化構造体ブロックであってもよい。
本発明の図1で用いられる透明基板111について、本発明の目的が達せられる限り、材質に特に制限はない。透明基板111の材質として、例えば、ガラス製、またはポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、シクロオレフィンポリマー(COP)などの光学樹脂製であってもよい。
また、透明基板111は、d線(588nm)における屈折率〔n〕が1.40〜2.20であることが好ましい。
(1)透明平面基板
本発明で透明基板111の一例として用いられる透明平面基板は、通常、ガラス製、またはポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、シクロオレフィンポリマー(COP)などの光学樹脂製の透明平面基板である。
透明基板111としてガラス製の透明平面基板を用いる場合、市販品として、SCHOTT AG社製のBK7(屈折率〔n〕1.52)およびLaSFN9(屈折率〔n〕1.85)、(株)住田光学ガラス製のK−PSFn3(屈折率〔n〕1.84)、K−LaSFn17(屈折率〔n〕1.88)およびK−LaSFn22(屈折率〔n〕1.90)、並びに(株)オハラ製のS−LAL10(屈折率〔n〕1.72)などが、光学的特性と洗浄性との観点から好ましい。
プリズム部を備える透明基板111として用いられる透明平面基板については、大きさ(縦×横)は特に限定されないが、厚さは好ましくは0.01〜10mm、より好ましくは0.5〜5mmである。
透明基板111として用いられる透明平面基板は、その表面に金属膜112を形成する前に、その表面を酸および/またはプラズマにより洗浄処理することが好ましい。
酸による洗浄処理としては、例えば、0.001〜1Nの塩酸中に、1〜3時間浸漬する方法が挙げられる。
プラズマによる洗浄処理としては、例えば、プラズマドライクリーナー(ヤマト科学(株)製のPDC200)中に、0.1〜30分間浸漬させる方法が挙げられる。
(2)一体化構造体ブロック
本発明で透明基板111として用いられる一体化構造体ブロックは、金属膜形成用平面、プリズム部およびサンプル保持部を含む。この一体化構造体ブロックは、金属膜形成用平面とプリズム部とが一体化された構造を有しており、この金属膜形成用平面は、プリズム部における光反射面に位置する。また、一体化構造体ブロックは、この金属膜形成用平面を囲うように連続的に形成された側面構造を有しており、この側面構造と金属膜形成用平面とからなる凹部がサンプル保持部を構成している。すなわち、金属膜形成用平面はサンプル保持部の底面を構成し、側面構造はサンプル保持部の側面を構成する。本発明で透明基板111として一体化構造体ブロックを用いる利点としては、プラズモン励起センサの交換が容易となることから、アナライト検出のハイスループット化が可能となる点、および、金属膜形成用平面とプリズム部とが一体化された構造により金属膜形成用平面とプリズム部との界面における入射光の反射を抑制できる点にある。
この一体化構造体ブロックは、通常、ガラス製または樹脂製のブロックであるが、特に、価格、成形性(成形による光学特性低下の少なさ)などの理由から、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、シクロオレフィンポリマー(COP)などの光学樹脂製のブロックが、一体化構造体ブロックの用途に好適に用いられる。透明基板111として用いられる一体化構造体ブロックは、例えば、原料樹脂を射出成形することにより形成することができるし、日本ゼオン株式会社製 ZEONEX(登録商標) 330R(屈折率1.50)などの市販品を使用することもできる。なお、本発明で用いられる一体化構造体ブロックでは、金属膜形成用平面とプリズム部とが一体化されていることから大きさは特に限定されない。
なお、透明基板111として一体化構造体ブロックを用いる場合においても、その表面に金属膜112を形成する前に、その表面を酸および/またはプラズマにより洗浄処理することが好ましい。酸による洗浄処理およびプラズマによる洗浄処理の条件は、上述した透明基板111として透明平面基板を用いる場合と同様である。
《金属部材》
本発明における金属部材は、光源からの照射光により表面または局在プラズモン励起を生じさせる役割を有する。金属部材としては、例えば金属膜または金属微粒子を用いることができる。
本発明の図1で説明するアッセイ方法では、透明基板111の一方の表面に金属膜112を備えている。この金属膜112は、光源からの照射光により表面プラズモン励起を生じさせる役割を有する。本発明においては、金属膜112で生じる表面プラズモンにより、後述する蛍光色素を励起させて蛍光を発生させる。
透明基板111の一方の表面に形成される金属膜112としては、金、銀、アルミニウム、銅、および白金から選ばれる少なくとも1種の金属からなることが好ましく、化学的安定性及び光学特性の面からより好ましくは、金からなることである。これらの金属種については、その合金の形態であってもよく、また複数の金属を積層したものであってもよい。このような金属種は、酸化に対して安定であり、かつ表面プラズモンによる励起が大きくなることから好適である。
なお、透明基板111としてガラス製の透明平面基板を用いる場合には、ガラス製の透明平面基板と上記金属膜112とをより強固に接着するため、あらかじめクロム、ニッケルクロム合金またはチタンの薄膜を当該透明基板上に形成することが好ましい。
透明基板111上に金属膜112および/またはクロムの薄膜等を形成する方法としては、例えば、スパッタリング法、蒸着法(抵抗加熱蒸着法、電子線蒸着法等)、電解メッキ、無電解メッキ法などが挙げられる。薄膜形成条件の調整が容易なことから、スパッタリング法または蒸着法によりクロムの薄膜等および/または金属膜112を形成することが好ましい。
金属膜112の厚さとしては、金の場合5〜500nm、銀の場合5〜500nm、アルミニウムの場合5〜500nm、銅の場合5〜500nm、白金の場合5〜500nm、およびそれらの合金の場合5〜500nmが好ましい。また、クロム、ニッケルクロム合金またはチタンの薄膜の厚さとしては、1〜20nmが好ましい。
電場増強効果の観点から、より好ましい厚さは、金の場合20〜70nm、銀の場合20〜70nm、アルミニウムの場合10〜50nm、銅の場合20〜70nm、白金の場合20〜70nm、およびそれらの合金の場合10〜70nmがより好ましくクロム、ニッケルクロム合金またはチタンの薄膜の厚さとしては、1〜3nmがより好ましい。
金属膜112の厚さが上記範囲内であると、表面プラズモンが発生し易いので好適である。また、このような厚さを有する金属膜112であれば、大きさ(縦×横)は特に限定されない。
金属粒子を用いる場合は、局在プラズモン励起を生じさせることが可能であり、金属の種類は、プラズモン励起を生じる粒子を調製できる限り特に限定されるものではないが、金、銀、同、アルミニウム、白金、亜鉛、またはこれら2種以上の合金が好ましい。また、金属粒子の粒径は、局在プラズモン励起が生じる範囲であれば特に限定されるものではないが、10〜100nmが好ましく、平均粒径がそのような範囲にある金属粒子の集団を利用することが好適である。
例えば、金属粒子は、後述する流路中に分散された態様で用いることができるが、好ましくは当該金属粒子は、上述した基板に分散された態様で用いることである。
《誘電体からなるスペーサ層》
本発明の図1で説明するアッセイ方法では、この金属膜112による蛍光色素22の金属消光を防止することを目的として、誘電体からなるスペーサ層を形成することが望ましい。このスペーサ層は、金属膜112上であり、金属膜112の上記透明基板11と接していないもう一方の表面に形成される。
このスペーサ層の形成に用いられる誘電体としては、光学的に透明な各種無機物、天然または合成ポリマーを用いることもできる。その中で、化学的安定性、製造安定性および光学的透明性に優れていることから、二酸化ケイ素(SiO)または二酸化チタン(TiO)を含むことが好ましい。
誘電体からなるスペーサ層の厚さは、通常10nm〜1mmであり、共鳴角安定性の観点からは、好ましくは30nm以下、より好ましくは10〜20nmである。一方、電場増強の観点から、好ましくは200nm〜1mmであり、さらに電場増強の効果の安定性から、400nm〜1,600nmがより好ましい。本発明のアッセイ方法では、電場をより効果的に増強させる目的から、スペーサ層の厚さが10〜100nmであることが望ましい。
誘電体からなるスペーサ層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、電子線蒸着法、熱蒸着法、ポリシラザン等の材料を用いた化学反応による形成方法、またはスピンコータによる塗布などが挙げられる。
《SAM》
自己組織化単分子膜(Self Assembled Monolayer:SAM)113は、金属膜112、あるいは必要により金属膜112上に形成された前記スペーサ層上に形成される。本発明のアッセイ方法では、後述するアナライト及び蛍光色素前駆体を後述する第一のリガンド12および第二のリガンド21を介して金属膜112(あるいは、その上に形成したスペーサ層)に固定した状態で、蛍光量の測定を行うが、このとき、第一のリガンド12を、SAM113を介して金属膜112に固定する。すなわち、SAM113は、第一のリガンド12を金属膜112に固定する際の土台としての役割を有する。
本発明において、誘電体からなるスペーサ層を有する場合では、SAM113がシランカップリング剤からなることが好ましく、このようなシランカップリング剤として、アミノ基またはカルボキシル基を有するシランカップリング剤であれば、特に限定せずに従来公知のものを用いることができる。また金属膜112に直接SAM113を形成する場合は、通常末端がチオール基の分子を用いる。このSAM113が含む単分子としては、通常、炭素原子数4〜20程度のカルボキシアルカンチオール(例えば、(株)同仁化学研究所、シグマ アルドリッチ ジャパン(株)などから入手可能)、特に好ましくは10−カルボキシ−1−デカンチオールが用いられる。炭素原子数4〜20のカルボキシアルカンチオールは、それを用いて形成されたSAM13の光学的な影響が少ない、すなわち透明性が高く、屈折率が低く、膜厚が薄いなどの性質を有していることから好適である。
また、後述するようにSAM113上にコーティング層を形成する場合には、SAM113が含む単分子として、炭素原子数4〜20程度のアミノアルカンチオール、例えば10−アミノ−1−デカンチオールを用いてもよい。このようにアミノ基を有する単分子をSAM113に使用すると、該SAM113上に形成するコーティング層を構成する分子としてカルボキシル基を有する親水性高分子を用いることができる。
SAM113の形成方法としては、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。具体例として、金属膜112がその表面に形成された透明基板111を、10−カルボキシ−1−デカンチオール((株)同仁化学研究所製)あるいは10−アミノ−1−デカンチオールを含むエタノール溶液に浸漬する方法などが挙げられる。このように、10−カルボキシ−1−デカンチオールあるいは10−アミノ−1−デカンチオールが有するチオール基が、金属と結合し固定化され、金属膜の表面上で自己組織化し、SAM113を形成する。
《コーティング層》
本発明においては、第一のリガンド12を前記SAM113の形成後に得られるプラズモン励起センサに固定化しやすくすると共に、アナライトのプラズモン励起センサへの非特異的吸着を抑制することを目的として、上記SAM113上にカルボキシメチルデキストラン(CMD)、ポリエチレングリコールなどの親水性高分子からなるコーティング層を形成させてもよい。
このコーティング層は、活性エステル化法などの従来公知の方法を用いて親水性高分子をSAM113に結合させることによって形成することができる。
《蛍光色素前駆体顕色剤》
本発明に係るアッセイ方法では、蛍光色素前駆体顕色剤を透明基板上に備える金属膜上に有する。当該顕色剤は、後述する蛍光色素前駆体と発色反応するものである。
顕色剤は、後述する第一のリガンド12に直接固定された蛍光色素前駆体顕色剤リガンド複合体として当該金属膜上に形成されても良いし、第一のリガンド12と並列して当該金属膜上に形成されても良い。複合体の態様としては、後述する蛍光色素前駆体リガンド複合体20の態様と同様であり、顕色剤13と第一のリガンド12とにより修飾された微粒子であることが好ましい。
顕色剤としては、単独または2種以上混合して使用することができる。顕色剤の具体例を示すと、以下に示すようなフェノール性物質、有機または無機酸性物質あるいはそれらエステルや塩などが挙げられるが、勿論これらに限られるものではない。
没食子酸、サリチル酸、4−アミノサリチル酸、3−イソプロピルサリチル酸、3−シクロヘキシルサリチル酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸、3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸、4,4’−イソプロピリデンジフェノール、1,1’−イノプロピリデンビス(2−クロロフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジブロモフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジクロロフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2−メチルフェノール)、4,4’−イソプロピリデンビス(2,6−ジメチルフェノール)、4,4−イソプロピリデンビス(2−tert−ブチルフェノール)、4,4’−sec−ブチリデンジフェノール、4,4’−シクロヘキシリデンビスフェノール、4,4’−シクロヘキシリデンビス(2−メチルフェノール)、4−tert−ブチルフェノール、4−フェニルフェノール、4−ヒドロキシジフェノキシド、α−ナフトール、β−ナフトール、3,5−キシレノール、チモール、メチル−4−ヒドロキシベンゾエート、4−ヒドロキシアセトフェノン、ノボラック型フェノール樹脂、2,2’−チオビス(4,6−ジクロロフェノール)、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ピロガロール、フロログリシン、フロログリシンカルボン酸、4−tert−オクチルカテコール、2,2’−メチルンビス(4−クロロフェノール)、2,2’−メチルンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2,−ジヒドロキシジフェニル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、p−ヒドロキシ安息香酸プロピル、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、p−ヒドロキシ安息香酸ベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−p−クロロベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−o−クロロベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−p−メチルベンジル、p−ヒドロキシ安息香酸−n−オクチル、安息香酸、サリチル酸亜鉛、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸、2−ヒドロキシ−6−ナフトエ酸亜鉛、4−ヒドロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−クロロジフェニルスルホン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、2−ヒドロキシ−p−トルイル酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸亜鉛、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸スズ、酒石酸、シュウ酸、マレイン酸、クエン酸、コハク酸、ステアリン酸、4−ヒドロキシフタル酸、ホウ酸、チオ尿素誘導体、4−ヒドロキシチオフェノール誘導体、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸エチル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−プロピル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸m−ブチル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸フェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸ベンジル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸フェネチル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸メチル、ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)酢酸n−プロピル、1,7−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)3,5−ジオキサヘプタン、1,5−ビス(4−ヒドロキシフェニルチオ)3−オキサヘプタン、4−ヒドロキシフタル酸ジメチル、4−ヒドロキシ−4’−メトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−エトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソプロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−プロポキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−ブトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−イソブトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4−ブトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−tert−ブトキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−ベンジロキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−フェノキシジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−(m−メチルベンジロキシ)ジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−(p−メチルベンジロキシ)ジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−(O−メチルベンジロキシ)ジフェニルスルホン、4−ヒドロキシ−4’−(p−クロロベンジロキシ)ジフェニルスルホンなど。
《蛍光色素前駆体》
本発明に係るアッセイ方法では、上述した蛍光色素前駆体顕色剤により発色反応を示す蛍光色素前駆体が用いられる。
蛍光色素前駆体は、後述する第二のリガンドに直接固定された蛍光色素前駆体分子リガンド複合体の形で用いることができる。
蛍光色素前駆体としては、ロイコ染料が挙げられ、ロイコ染料は単独または2種以上混合して使用することができるが、それ自体は無色あるいは淡色の色素前駆体である。
本発明の蛍光色素前駆体は、顕色剤との発色反応により蛍光色素となる。
蛍光色素前駆体の具体例を示すと、以下に示すようなトリフェニルメタンフタリド系、トリアリルメタン系、フルオラン系、フェノチジアン系、チオフルオラン系、キサンテン系、インドフタリル系、スピロピラン系、アザフタリド系、クロメノピラゾール系、メチン系、ローダミンアニリノラクタム系、ローダミンラクタム系、キナゾリン系、ジアザキサンテン系、ビスラクトン系等のロイコ化合物が好ましく用いられる。特に好ましくはフルオラン系およびフタリド系のロイコ染料であり、このような化合物の例としては、例えば以下に示すようなものが挙げられるが、勿論これらに限られるものではない。
2−アニリノ−3−メチル−6−ジエチルアミノフルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(ジ−n−ブチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(Nn−プロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソプロピル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−イソブチル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−sec−ブチル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−iso−アミル−N−エチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−n−プロピル−N−イソプロピルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−N−p−トルイジノ)フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−メチル−N−p−トルイジノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−7,8−ベンゾフルオラン、1,3−ジメチル−6−ジエチルアミノフルオラン、1,3−ジメチル−6−ジ−n−ブチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−メチルフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−クロロフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−クロロフルオラン、10−ジエチルアミノ−2−エチルベンゾ[1,4]チアジノ[3,2−b]フルオラン、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−4−アザフタリド、3−[2,2−ビス(1−エチル−2−メチル−3−インドリル)ビニル]−3−(4−ジエチルアミノフェニル)フタリド、3−[1,1−ビス(4−ジエチルアミノフェニル)エチレン−2−イル]−6−ジメチルアミノフタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−カルボキシフタリドなど。
《プラズモン励起センサチップの製造方法》
本発明に係るプラズモン励起センサチップ10は、透明基板111の上に金属膜112を形成することにより得られる。ここで、金属膜112上にSAM113を形成し、SAM113を有するプラズモン励起センサチップ10としても良い。
〔プラズモン励起センサ〕
本発明に係るプラズモン励起センサは、金属部材と、第一のリガンドと、蛍光色素前駆体顕色剤を備えることを特徴としている。
本発明のプラズモン励起センサの実施態様の例として図1に示すプラズモン励起センサ11では、前記プラズモン励起センサチップ10の、金属膜上に第一のリガンド12及び蛍光色素前駆体顕色剤13を有することを特徴とする。
《リガンド》
本発明の図1に係るプラズモン励起センサ11では、上述したプラズモン励起センサチップ10のうち、金属膜を形成した側の表面に少なくともリガンドを結合させる。このリガンドは、プラズモン励起センサ11に、アナライト溶液中のアナライト31を固定させる目的で用いられるものである。
本発明において、「リガンド」とは、アナライト溶液中に含有されるアナライトを特異的に認識し(または、認識され)結合し得る分子または分子断片をいう。このような「分子」または「分子断片」としては、例えば、核酸(一本鎖であっても二本鎖であってもよいDNA、RNA、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、PNA(ペプチド核酸)等、またはヌクレオシド、ヌクレオチドおよびそれらの修飾分子)、タンパク質(ポリペプチド、オリゴペプチドを含む)、アミノ酸(修飾アミノ酸も含む)、糖質(オリゴ糖、多糖類、糖鎖等)、脂質、またはこれらの修飾分子、複合体などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
「タンパク質」としては、例えば、抗体などが挙げられ、具体的には、抗αフェトプロテイン(AFP)モノクローナル抗体((株)日本医学臨床検査研究所などから入手可能)、癌胎児性抗原(CEA)モノクローナル抗体、抗CA19−9モノクローナル抗体、抗PSAモノクローナル抗体などが挙げられる。
なお、本発明において、「抗体」という用語は、ポリクローナル抗体またはモノクローナル抗体、遺伝子組換えにより得られる抗体、および抗体断片を包含する。
本発明においてリガンドとして抗体が用いられる場合、蛍光色素前駆体24をアナライト31と結合させる目的で、後述するアッセイ法における工程(b)においてもリガンドが用いられることがある。そのため、本発明においては、プラズモン励起センサ11に予め固定されるリガンドを「第一のリガンド」と称し、後述する工程(b)で用いられるリガンドを「第二のリガンド」と称することがある。
《リガンド固定態様》
本発明のプラズモン励起センサ11において、プラズモン励起センサチップ10への、第一のリガンド12の結合態様は特に限定されるものではない。
典型的な結合態様として、第一のリガンド12自体をSAM113又は金属膜112の表面に結合させる態様が挙げられる。例えば、上記SAM113又は金属膜112が上記リガンド固定用結合基をすでに有している場合、常法により、第一のリガンド12をSAM113又は金属膜112の表面に直接結合させることができる。一方、上記金属膜112が上記無機誘電体のみから形成されている場合など、上記金属膜112が上記リガンド固定用結合基を有していない場合には、適当なリガンド固定用結合基を有するシランカップリング剤を作用させることにより、上記金属膜112にリガンド固定用結合基を導入し、その後、このリガンド固定用結合基を介して常法により第一のリガンド12を上記金属膜112の表面に固定させてもよい。ここで導入されるリガンド固定用結合基は、アミノ基、チオール基、カルボキシル基などの官能基である。
リガンド固定用結合基を有するシランカップリング剤を作用させる場合は、必要により適宜シランカップリング剤の反応位置や濃度を調整することが好ましい。
〔アッセイ方法〕
本発明に係るアッセイ方法は、金属部材、第一のリガンド及び蛍光色素前駆体顕色剤を備えるプラズモン励起センサを用いるアッセイ方法であって、以下の工程(a)〜(c)を有することを特徴とする。
工程(a):該プラズモン励起センサにアナライト溶液を接触させて、該プラズモン励起センサに該アナライト溶液中のアナライトを固定する工程、
工程(b):該アナライトを固定したプラズモン励起センサに第二のリガンドと蛍光色素前駆体とを有する蛍光色素前駆体リガンド複合体を接触させ、該第二のリガンドを介して該第一のリガンドに該蛍光色素前駆体を固定して該蛍光色素前駆体顕色剤と反応させることにより、蛍光色素を得る工程、
工程(c):該金属部材に励起光を照射することで該蛍光色素を励起し、励起された該蛍光色素から発光された蛍光量を測定する工程。
<工程(a)>
本発明のアッセイ方法において、工程(a)は、上述したプラズモン励起センサにアナライト溶液を接触させて、該プラズモン励起センサに該アナライト溶液中のアナライトを固定する工程である。
本発明のアッセイ方法で測定対象とされるアナライト31がアナライト溶液中に含まれていると、図1に示すように、このアナライト31が第一のリガンド12を介してプラズモン励起センサ12に固定される。
アナライト溶液
本発明において、「アナライト溶液」とは、本発明のアッセイ法による測定対象となる種々のアナライトを含む試料をいう。
アナライト溶液としては、アナライトを含む溶液であれば何れでもよいが、例えば、検体が挙げられる。検体としては、例えば、血液(血清・血漿)、尿、鼻孔液、唾液、便、体腔液(髄液、腹水、胸水等)などが挙げられ、所望の溶媒、緩衝液等に適宜希釈して用いてもよい。これら検体のうち、血液、尿、鼻孔液および唾液が好ましい。これらは1種単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
アナライト
本発明において「アナライト」は、SAM113または金属膜112の表面に固定化された第1のリガンド12を特異的に認識され(または、認識し)結合し得る分子または分子断片を意味する。このような「分子」または「分子断片」として、例えば、核酸(一本鎖であっても二本鎖であってもよいDNA、RNA、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、PNA(ペプチド核酸)等、またはヌクレオシド、ヌクレオチドおよびそれらの修飾分子)、タンパク質(ポリペプチド、オリゴペプチドを含む)、アミノ酸(修飾アミノ酸も含む)、糖質(オリゴ糖、多糖類、糖鎖等)、脂質、またはこれらの修飾分子、複合体などが挙げられ、具体的には、AFP(αフェトプロテイン)、癌胎児性抗原等の腫瘍マーカー、シグナル伝達物質、ホルモンなどであってもよく、特に限定されるものではない。
接触
本発明において、「接触」とは、プラズモン励起センサの少なくとも第一のリガンド12が固定化されている面の流路を送液中に浸漬している状態で、この送液中に含まれる対象物(アナライト)をこのプラズモン励起センサと接触させることを指す。この「接触」によって、第一のリガンド12とアナライト31とが結合したアナライト−リガンド複合体が形成される。工程(a)では、上記アナライト溶液とプラズモン励起センサとの「接触」は、流路中に循環する送液にアナライト溶液が含まれ、プラズモン励起センサの第一のリガンドが固定化されている面のみが該送液中に浸漬されている状態で、プラズモン励起センサとアラナイト溶液とを接触させる態様が好ましい。
上記「流路」とは、微量な薬液の送達を効率的に行うことができ、反応促進を行うために送液速度を変化させたり、循環させたりすることができる直方体または管状のものである。ここで、この流路の形状として、プラズモン励起センサを設置する個所近傍は直方体構造を有することが好ましく、薬液を送達する個所近傍は管状を有することが好ましい。
当該流路の材料としては、プラズモン励起センサを有するプラズモン励起センサ部ではメチルメタクリレート、スチレン等を原料として含有するホモポリマーまたは共重合体;ポリエチレン等のポリオレフィンなどの光透過性の材質からなり、薬液送達部ではシリコーンゴム、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリマーを用いる。
ただし、プラズモン励起センサ部については、蛍光測定時に流路が一定の形状に保たれ、且つプラズモン励起により発生した蛍光の検出が妨げられない限り、必ずしもその流路構造の全てを光透過性の材質のみから構成する必要はない。すなわち、プラズモン励起センサ部の流路のうち、プラズモン励起により発生した蛍光を透過させて検出部に導くために必要な部分、具体的には蛍光の集光に必要な透光窓を含む部分については、光透過性の材質で構成する必要があるが、その他の部分については、その一部または全部を光透過性の材質以外の化学的に安定な材質で構成してもよい。プラズモン励起センサ部の流路が直方体構造を有する場合、SAM113または金属膜112が表面に存在するプラズモン励起センサ11の面を底面としたときに、例えば、この底面と対向する位置にある天井面を光透過性の材質で構成し、側面を光透過性の材質以外の化学的に安定な材質で構成してもよい。
ここで、前記その他の部分、例えば側面は、蛍光測定時に一定の形状が保たれる限り、必ずしも剛体である必要はなく、シール性を確保するために適度な弾性を有していてもよい。例えば、プラズモン励起センサ部の流路について、天井面をポリメチルメタクリレート(PMMA)で構成し、側面をシリコーンゴムで構成してもよい。
プラズモン励起センサ部においては、アナライト溶液との接触効率を高め、拡散距離を短くする観点から、プラズモン励起センサ部の流路の断面として、縦×横がそれぞれ独立に100nm〜1mm程度が好ましい。
流路において、薬物送達部からプラズモン励起センサ部に送液を導入する送液導入口、及びその送液をプラズモン励起センサ部から排出する送液排出口の位置は、いずれも、蛍光測定の妨げとならない限り特に限定されない。例えば、プラズモン励起センサ部の流路が直方体構造を有する場合、前記送液導入口及び送液排出口とも天井面に設けるのが流路の作製上簡便であるが、この送液導入口と送液排出口とのうちいずれか一方、あるいはその両方を側面に設けてもよい。
流路にプラズモン励起センサを固定する方法は、流路が一定の形状に保たれ、且つ蛍光測定が妨げられない限り特に限定されない。
このような固定方法の例としては、小規模ロット(実験室レベル)では、まず、プラズモン励起センサ11のSAM113または金属膜112が形成されている表面上に、一定の厚さを有するシリコーンゴム製シートまたはOリングを載せることによって流路の側面構造を形成し、次いで、その上に送液導入口及び送液排出口を設けてある光透過性の天板(例えば、PMMA基板)を配置することによって流路の天井面を形成し、その後、これらを圧着して適当な留め具により固定する方法などが挙げられる。このとき、側面構造を構成する材料として、その中央部に任意の形状および大きさを有する穴を開けてある、適当な厚さを有するシリコーンゴム製シートを用いると、この穴の内周がプラズモン励起センサ部の流路の側面構造となることから、所要の形状および大きさを有する流路を容易に形成することができるので好ましい。例えば、まず、該プラズモン励起センサのSAM113または金属膜112が形成されている表面に、流路高さ0.5mmを有する穴あきポリジメチルシロキサン(PDMS)製シートを該プラズモン励起センサのSAM113または金属膜112が形成されている部位を囲むようにして配置し、次いで、このポリジメチルシロキサン(PDMS)製シートの上に、予め送液導入口及び送液排出口を設けてあるPMMA基板を配置し、その後、該PMMA基板と該ポリジメチルシロキサン(PDMS)製シートと該プラズモン励起センサとを圧着し、ビス等の留め具により固定する方法が好ましい。また、プラズモン励起センサに、シリコーンゴム製シートまたはOリングと光透過性の天板とを圧着し、固定するにあたっては、必要に応じて、シリコーンゴムまたはステンレスなどの材質でできた適当なスペーサを併用してもよい。
また、工業的に製造される大ロット(工場レベル)では、流路にプラズモン励起センサを固定する方法としては、プラスチックの一体成形品に直接金基板を形成するか或いは別途作製した金基板を固定し、金表面にSAMおよびリガンド固定化を行った後、流路の天板に相当するプラスチックの一体成形品により蓋をすることで製造できる。必要に応じてプリズムを流路に一体化することもできる。
なお、透明基板111として一体化構造体ブロックを用いる場合、サンプル保持部として側面構造がすでに形成されていることから、一体化構造体ブロックの上に送液導入口及び送液排出口を設けてある光透過性の天板(例えば、PMMA基板)を配置することによって流路の天井面を形成し、その後、これらを圧着して適当な留め具により固定することにより流路にプラズモン励起センサを固定することができる。
「送液」としては、アナライト溶液を希釈した溶媒または緩衝液と同じものが好ましく、例えば、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、トリス緩衝生理食塩水(TBS)などが挙げられるが、特に限定されるものではない。
送液を循環させる温度および時間としては、アナライト溶液の種類などにより異なり、特に限定されるものではないが、通常20〜40℃で1〜60分間、好ましくは37℃で5〜15分間、送液を循環させることである。
送液中のアナライト溶液の中に含有されるアナライトの初期濃度は、100μg/ml〜0.0001pg/mlであることが好ましい。
送液の総量、すなわち流路の容積としては、通常0.0001〜20ml、好ましくは0.01〜1mlである。
送液の流速は、通常1〜30,000μl/min、好ましくは5〜10,000μl/minである。
<工程(b)>
本発明のアッセイ方法において、工程(b)は、上述の工程(a)で得られたアナライトを固定したプラズモン励起センサに、第二のリガンド21と蛍光色素前駆体24とを有する蛍光色素前駆体リガンド複合体20を接触させ、該第二のリガンド21を介して該第一のリガンド12に該蛍光色素前駆体24を固定して該蛍光色素前駆体顕色剤と反応させることにより、蛍光色素を得る工程である。図1を参照すると、蛍光色素前駆体リガンド複合体20がアナライト31を介してプラズモン励起センサ11と結合している。蛍光色素前駆体は蛍光色素前駆体顕色剤と発色反応を示し、蛍光色素へとなる。これにより、後述する工程(c)においてアナライト−リガンド複合体の生成量を蛍光の発光量の形で定量することが可能となる。
《蛍光色素前駆体リガンド複合体》
本発明で用いられる蛍光色素前駆体リガンド複合体23は、第二のリガンド21と蛍光色素前駆体24とからなる。
第二のリガンド
本発明のアッセイ方法において、第二のリガンド21は、アナライト31に蛍光色素前駆体24による標識化を行う目的で用いられるリガンドであり、前記第一のリガンド12と同じでもよいし、異なっていてもよい。ただし、第一のリガンド12として用いる1次抗体がポリクローナル抗体である場合、第二のリガンド21として用いる2次抗体は、モノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよいが、該1次抗体がモノクローナル抗体である場合、2次抗体は、該1次抗体が認識しないエピトープを認識するモノクローナル抗体であるか、またはポリクローナル抗体であることが望ましい。
複合体の態様
本発明において、蛍光色素前駆体リガンド複合体20は、第二のリガンド21と蛍光色素前駆体24とからなるものであれば、その結合態様については特に限定されるものではない。ただ、プラズモン励起センサ11上に固定されたアナライト31に可能な限り多くの蛍光色素前駆体24を結合させることにより高感度測定を可能とする観点からは、蛍光色素前駆体リガンド複合体20が、蛍光色素前駆体24と第二のリガンド21とにより修飾された微粒子であることが望ましい。
このような修飾された微粒子の材料となる微粒子(以下、「基礎微粒子」)は、上記送液中で沈殿することなく懸濁可能な微粒子である。このような基礎微粒子として、例えば、ラテックス粒子などの疎水性微粒子及びリポソームなどの親水性微粒子が挙げられる。
このうち、本発明で用いられるラテックス粒子としては、水に懸濁可能且つ水に不溶性の粒状重合体物質であり、従来公知の方法により得ることができるものである。本発明においては、このラテックス粒子は、30nm以上100nm以下の粒径を有することが好ましい。粒径が大きいほど、蛍光色素前駆体22を多く固定することができ、発光シグナルが増大する利点があるものの、粒径が大きくなりすぎると、送液の中で抵抗を受けやすくなるおそれがある。
本発明で用いられるラテックス粒子は、予め蛍光色素前駆体22を組み込んだ状態で得ることができる。例えば、特許第4277479号公報に開示されている方法のように、重合性エチレン性不飽和二重結合を有するビニルモノマーのラジカル重合によって得られたポリマーと蛍光色素前駆体22とを有機溶剤中に溶解(或いは分散)し、水中で乳化後有機溶剤を除去する方法により、蛍光色素前駆体22を含有するラテックス粒子として製造することができる。ここで用いられる重合性エチレン性不飽和二重結合を有するビニルモノマーとして、酢酸ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソノニル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクタデシル、2−フェノキシエチルアクリレート、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸オクタデシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸フェニル、スチレン、α−メチルスチレン、アクリロニトリル等、アセトアセトキシエチルメタクリレート、メタクリル酸グリシジルの大豆油脂肪酸変性品(ブレンマーG−FA:日本油脂社製)等が挙げられる。ここで、アミノ基、カルボキシル基等の適当な官能基を有するモノマーを上記重合性エチレン性不飽和二重結合を有するビニルモノマーに混合して用いることにより、ラテックス粒子に、第二のリガンド21の固定化に用いられる官能基を導入することができる。
一方、本発明で用いられるリポソームとしては、ある体積の水または水溶液を包囲する両親媒性二重層からなる外殻を有し、且つ、通常50nm以上100μm以下の粒径を有している。ここで用いられる両親媒性二重層は、通常、リン脂質などの混合脂質成分からなるものである。
このようなリポソームを製造する方法は特に限定されないものの、リポソーム表面に効率的な修飾が可能となる点からは、例えば、膜乳化法、撹拌乳化法、液滴法、接触法孔膜等を用いた2段階乳化法を用いることができ、膜乳化法を用いた2段階乳化法にあっては、マイクロチャネル乳化法およびシラス多孔質ガラス膜(以下、「SPG膜」)を用いた乳化法が好適に用いられる。典型的な手順としては、
(i)一次乳化工程において、水と混和しにくい適当な有機溶媒(O)に、混合脂質成分を含む第1の水相(W1)を分散させることによりW1/Oエマルションを形成させ、
(ii)引き続く二次乳化工程において、このW1/Oエマルションを、第2の混合脂質成分存在下適当な乳化方法を用いて第2の水相(W2)に分散させることによりW1/O/W2エマルションを形成させ、
(iii)その後、W1/O/W2エマルションに含まれる有機溶媒(O)を除去することにより、リポソームを形成することができる。例えば、膜乳化法が用いられる場合には、二次乳化工程で例えば所要の孔径を有するマイクロチャネルまたはSPG膜を用いることにより、W1/Oエマルションを第2の水相(W2)に分散させることができる。
リポソームの製造に用いられる混合脂質成分の配合組成は特に限定されるものではないが、一般的にはリン脂質(動植物由来のレシチン;ホスファチジルコリン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルグリセロール、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジン酸またはそれらの脂肪酸エステルであるグリセロリン脂質;スフィンゴリン脂質;これらの誘導体等)と、脂質膜の安定化に寄与するステロール類(コレステロール、フィトステロール、エルゴステロール、これらの誘導体等)とを中心に構成され、さらに糖脂質、グリコール、脂肪族アミン、長鎖脂肪酸(オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸等)、その他各種の機能性を賦与する化合物が配合されていてもよい。本発明では、上記リン脂質としてジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)等の中性リン脂質が慣用される。混合脂質成分の配合比は、脂質膜の安定性やリポソームの生体内での挙動などの性状を考慮しながら、用途に応じて適切に調整すればよい。
また、第2の混合脂質成分は、一次乳化工程で用いられる混合脂質成分と同様の成分を用いることができ、一次乳化工程で用いられる混合脂質成分と同一の組成であっても、異なる組成であってもよい。ここで、本発明では、この第2の混合脂質成分に、アミノ基、カルボキシル基等の適当な官能基を有する脂質成分を含ませることにより、第二のリガンド21及び蛍光色素前駆体24を固定可能な官能基をリポソーム表面に導入することが好ましい。このような適当な官能基を有する脂質成分として、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)等が挙げられ、また、DSPE−PEG−COOHのようにPEG基等のリンカー部分を介して官能基が導入されているものであってもよい。
なお、二次乳化工程において、第2の水相(W2)が、タンパク質、多糖類および非イオン性界面活性剤などの分散剤を含んでいてもよい。
このようにして得られたラテックス粒子およびリポソームなどの基礎微粒子に対しては、従来公知のカップリング法を用いて、第二のリガンド21及び蛍光色素前駆体24を固定化させることができる。例えば、活性エステル法、アミンカップリング、ヨードアセトアミドとチオール基との反応に基づくカップリング法、および、ビオチン−ストレプトアビジン結合などの親和性を利用した方法などの常法を用いて固定化することができる。なお、蛍光色素前駆体24を含有するラテックス粒子などのように、基礎微粒子を製造する際に蛍光色素前駆体24が導入されている微粒子に対しては、第二のリガンド21のみを同様の方法により固定化させてもよい。
このように作製された蛍光色素前駆体リガンド複合体20の送液中の濃度は、0.001〜10,000μg/mlが好ましく、1〜1,000μg/mlがより好ましい。
当該蛍光色素前駆体リガンド複合体20は、第一のリガンドに固定された後、近傍の蛍光色素前駆体顕色剤と発色反応を起こし、蛍光色素リガンド複合体23となる。
<工程(c)>
本発明のアッセイ方法において、工程(c)は、該金属部材に励起光を照射して該蛍光色素を励起し、励起された該蛍光色素から発光された蛍光量を測定する工程である。
工程(c)は、通常、蛍光色素リガンド複合体23に結合した蛍光色素22からの蛍光発光を検出することにより行われる。具体的には、工程(b)により得られたプラズモン励起センサについて、金属部材に励起光を照射し、当該蛍光色素22からの発光された蛍光量を測定することにより行われる。
本発明の図1で説明するアッセイ方法においては、透明基板111、もしくは第一のリガンド12に固定化された蛍光色素前駆体顕色剤13の近傍にある蛍光色素前駆体24のみ発色反応を起こし蛍光色素22へと変化するため、蛍光色素前駆体顕色剤13の近傍にない蛍光色素前駆体24は、蛍光色素22へと変化することはなく、蛍光発光を生じることはない。
一方、第一のリガンド12に固定されなかった未反応の蛍光色素前駆体リガンド複合体20は蛍光発光しないので、流路中に浮遊していても良く、SPFSに基づくアッセイ方法では一般的に行われている洗浄により工程(c)の測定前に未反応の蛍光色素前駆体リガンド複合体20を流路中から除去する必要がない。このことから、本発明のアッセイ方法では、工程(b)と工程(c)とを同時に行いリアルタイムに蛍光量の測定を行うことが可能である。
リアルタイムに蛍光量の測定が可能であるということは、反応開始からの蛍光発光量の増加速度から反応終了時における蛍光発光量を推測することが可能であることを意味し、短時間測定を行う上で有利な点である。また、本発明のSPFSに基づくアッセイ方法では、従来、未反応の蛍光色素などを除去するために行う必要のあった工程(b)と工程(c)の間の蛍光量の測定に先立つ洗浄する工程も不要であるということから、短時間測定が可能となる利点がある。
光学系
本発明で用いる励起光は、前記金属部材にプラズモン励起を生じさせることができるものであれば、特に制限がない。
励起光として例えば、レーザー光を挙げることができるが、レーザー光では、光学フィルタを通して、透明基板に入射する直前のエネルギーおよびフォトン量を調節することが望ましい。
本発明の図1で説明するアッセイ方法では、レーザー光の照射により、全反射減衰条件(ATR)において、金属膜112の表面に表面プラズモンが発生する。表面プラズモンの電場増強効果により、照射したフォトン量の数十〜数百倍に増えたフォトンにより蛍光色素前駆体から蛍光色素へと変化した当該蛍光色素が励起され蛍光を生じさせる。なお、該電場増強効果によるフォトン増加量は、透明基板111の屈折率、金属膜112の金属種および膜厚に依存するが、通常、金属種が金では約10〜20倍の増加量となる。
「レーザー光」としては、例えば、波長200〜900nm、0.001〜1,000mWのLD(laser diode)レーザー、波長230〜800nm(金属膜112に用いる金属種によって共鳴波長が決まる。)、0.01〜100mWの半導体レーザーなどが挙げられる。
「プリズム」は、各種フィルタを介したレーザー光が、プラズモン励起センサに効率よく入射することを目的としており、屈折率が透明基板111と同じであることが好ましい。本発明は、全反射条件を設定できる各種プリズムを適宜選択することができることから、角度、形状に特に制限はなく、例えば、60度分散プリズムなどであってもよい。このようなプリズムの市販品としては、上述した「ガラス製の透明平面基板」の市販品と同様のものが挙げられる。なお、プリズムは、一体化構造体ブロックのプリズム部として上記透明基板111に組み込まれていてもよい。
「光学フィルタ」としては、例えば、減光(ND)フィルタ、ダイアフラムレンズなどが挙げられる。「減光(ND)フィルタ」(または、中性濃度フィルタ)は、入射レーザー光量を調節することを目的とするものである。特に、ダイナミックレンジの狭い検出器を使用するときには精度の高い測定を実施する上で用いることが好ましい。
「偏光フィルタ」は、レーザー光を、表面プラズモンを効率よく発生させるP偏光とするために用いられるものである。
「カットフィルタ」は、外光(装置外の照明光)、励起光(励起光の透過成分)、迷光(各所での励起光の散乱成分)、プラズモンの散乱光(励起光を起源とし、プラズモン励起センサ表面上の構造体または付着物などの影響で発生する散乱光)、酵素蛍光基質の自家蛍光、などの各種ノイズ光を除去するフィルタであって、例えば、干渉フィルタ、色フィルタなどが挙げられる。
「集光レンズ」は、検出器に蛍光シグナルを効率よく集光することを目的とするものであり、任意の集光系でよい。簡易な集光系として、顕微鏡などで使用されている、市販の対物レンズ(例えば、(株)ニコン製またはオリンパス(株)製等)を転用してもよい。対物レンズの倍率としては、10〜100倍が好ましい。
「化学発光検出部」としては、SPFSの検出に通常用いられる検出系を用いることができ、超高感度の観点からは光電子増倍管(浜松ホトニクス(株)製のフォトマルチプライヤー)が好ましい。また、これらに比べると感度は下がるが、画像として見ることができ、かつノイズ光の除去が容易なことから、多点計測が可能なCCDイメージセンサも好適である。本発明に係るアッセイ法では、検出される化学発光の波長が通常入射光の波長よりも短く、緑色付近の波長領域になるような検出波長を選択することも可能であることから、CCDイメージセンサなどの多種多様な受光系を用いた検出を行うことが容易となる利点がある。
また、本発明の図1で説明するアッセイ方法では、SPFSに基づくアッセイ方法と同様、化学発光検出部に対してプラズモン励起センサ11の反対側に光源が位置し、且つ全反射条件で測定が行われる。
駆動装置
本発明において、上記光学系は「駆動装置」の形で統合されていてもよい。本発明の駆動装置は、上記プラズモン励起センサを用いて、本発明を実施するためのものである。
「駆動装置」としては、少なくとも光源、各種光学フィルタ、プリズム、カットフィルタ、集光レンズおよび化学発光検出部を含むものとする。なお、アナライト溶液、洗浄液などを取り扱う際に、プラズモン励起センサと組み合った送液系を有することが好ましい。送液系としては、本発明の目的が達せられる限り、その種類を問わない。例えば、液ポンプと連結したマイクロ流路デバイスなどでもよい。
また、表面プラズモン共鳴(SPR)検出部、すなわちSPR専用の受光センサとしてのフォトダイオード、SPRおよびSPFSの最適角度を調製するための角度可変部(サーボモータで全反射減衰(ATR)条件を求めるためにフォトダイオードと光源とを同期して、30〜85°の角度変更を可能とする。分解能は0.01°以上が好ましい。)、化学発光検出部に入力された情報を処理するためのコンピュータなども含んでもよい。
光源、光学フィルタ、カットフィルタ、集光レンズおよび化学発光検出部の好ましい態様は上述したものと同様である。
「送液ポンプ」としては、例えば、送液が微量な場合に好適なマイクロポンプ、送り精度が高く脈動が少なく好ましいが循環することができないシリンジポンプ、簡易で取り扱い性に優れるが微量送液が困難な場合があるチューブポンプなどが挙げられる。
本発明のアッセイ方法においては、工程(c)で得られた測定結果からアナライト溶液中に含まれるアナライト31の量を算出する工程(d)を更に追加してもよい。
より具体的には、既知濃度の標的抗原もしくは標的抗体での測定を実施することで検量線を作製し、作製された検量線に基づいて被測定アナライト溶液中の標的抗原量もしくは標的抗体量を測定シグナルから算出する工程である。
アッセイS/N
さらに、工程(d)においては、上記工程(a)の前に測定した“ブランク発光シグナル”、上記工程(d)で得られた“アッセイ発光シグナル”、および何も修飾していない金属基板を流路に固定し、超純水を流しながらSPFSを測定して得られたシグナルを“初期ノイズ”としたとき、下記式(1a)で表されるアッセイS/Nを算出することができる:
アッセイS/N=|Ia/Io|/In (1a)
(上記式(1a)において、Iaはアッセイ発光シグナル、Ioはブランク発光シグナル、Inは初期ノイズである)。
ただし、アッセイS/Nを算出するにあたっては、実用上、上記式(1a)に代えて、アナライト溶液中に含まれるアナライト31の濃度が0の場合における“アッセイノイズシグナル”を基準として、下記式(1b)にしたがって算出してもよい:
アッセイS/N=|Ia|/|Ian| (1b)
(上記式(1b)において、Ianはアッセイノイズシグナル、Iaは上記式(1a)の場合と同様にアッセイ発光シグナルである)。
〔キット〕
本発明に係るキットは、本発明のアッセイ方法に用いられることを特徴とするものであって、本発明のアッセイ方法を実施するにあたり、第一のリガンド12と蛍光色素前駆体リガンド複合体20とアナライト溶液とを除き必要とされるすべてのもの、例えば、1次抗体、抗原などのリガンド(すなわち、アナライト溶液中に含まれるアナライト31は、抗原とは限らず、抗体であってもよい。)とアナライト溶液と2次抗体とを除き必要とされるすべてのものを含むことが好ましい。
例えば、本発明に係わるキットと、アラナイト溶液として検体である血液または血清と、特定の腫瘍マーカーに対する抗体とを用いることによって、特定の腫瘍マーカーの含有量を、高感度かつ高精度で検出することができる。この結果から、触診などによって検出することができない前臨床期の非浸潤癌(上皮内癌)の存在も高精度で予測することができる。
具体的には、上記プラズモン励起センサチップ10;アナライトを溶解または希釈するための溶解液または希釈液;プラズモン励起センサチップ10とアナライトとの反応の際に用いる溶液;および、洗浄試薬を含み、さらに、本発明のアッセイ法を実施するために必要とされる各種器材または資材や上記「駆動装置」を含めることもできる。
さらに、キット要素として、検量線作製用の標準物質、説明書、多数アナライトの同時処理ができるマイクロタイタープレートなどの必要な器材一式などを含んでもよい。
<蛍光色素前駆体(3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−カルボキシフタリド)合成>
油浴を付した100mlの3頭フラスコをシールして乾燥窒素気流下でジメチルアニリン24.6gと無水塩化アルミニウム5gを加えて攪拌した。さらに、トリメリット酸無水物20gを加えて170℃に保ち、6時間加熱撹拌した。冷却後、塩酸を加え、内容物が全て溶けるまで加温溶解した。50mlの1M/l水酸化ナトリウムを滴下ロートで滴下して析出した個体を分取しメタノールから再結晶を行い19.6gの目的物を得た。NMRおよび質量分析法で目的物であることを確認した。
<標識二次抗体1:「Alexa Fluor 647」標識抗AFPモノクローナル抗体の調製>
抗αフェトプロテイン(AFP)モノクローナル抗体(6D2、2.5mg/ml、ミクリ免疫研究所(株)製)を、市販のAlexa Fluor647ラベリングキット(Molecular Probes社製)により調製し、Alexa Fluor 647標識抗AFPモノクローナル抗体溶液を得た。
得られた抗体溶液はタンパク質、蛍光色素濃度を吸光度測定器により定量後、4℃で保存した。
<標識二次抗体2:「ロイコ色素」標識抗AFPモノクローナル抗体の調製>
3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−カルボキシフタリドをロイコ体として用い、ロイコ体2mgを25mM MES(2−モルホリノエタンスルホン酸)バッファー(pH6.0)1mlに溶解後、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC:(株)同人化学研究所製)50mM、N−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS:Thermo Scientific社製)50mMによりカルボキシル基を活性化させた。活性ロイコ体4ulを、1.4mg/ml抗αフェトプロテイン(AFP)モノクローナル抗体(6D2、ミクリ免疫研究所(株)製)、100ulに添加し(10当量)、室温で1時間反応させてロイコ色素を抗体に反応させた。反応後、遠心式限外ろ過(Millipore社製)により精製することで、ロイコ色素標識抗AFPモノクローナル抗体溶液を得た。得られた抗体溶液はタンパク質、蛍光色素濃度を吸光度測定器により定量後、4℃で保存した。
<標識一次抗体:「顕色剤」標識抗AFPモノクローナル抗体の調製>
1.4mg/ml抗αフェトプロテイン(AFP)モノクローナル抗体(1D5、ミクリ免疫研究所(株)製)、25mM MESバッファー(pH6.0)1mlに、EDC50mM、NHS50mMを加えてカルボキシル基を活性化させた。4−アミノサリチル酸を顕色剤として用い、抗体溶液100ulに対して、5mMの顕色剤を4ul添加し(10当量)、室温で1時間反応させて顕色剤を抗体に結合させた。反応後、遠心式限外ろ過により精製することで、顕色剤標識抗AFPモノクローナル抗体溶液を得た。得られた抗体溶液はタンパク質濃度を吸光度測定器により定量後、4℃で保存した。
以下の実施例および比較例で用いた標識抗体は、すべて同様の方法により調製されたものである。
実施例1
(工程1:金属膜の形成)
厚さ1mmのガラス製の透明平面基板「S−LAL 10」((株)オハラ製。屈折率〔n〕=1.72)を、プラズマドライクリーナーでプラズマ洗浄した。プラズマ洗浄された基板表面に金属膜をスパッタリング法により形成した。金属膜の厚さは44〜52nmであった。
(工程2:カルボキシメチルデキストランの結合)
前記工程1により得られた透明基板を、10−アミノ−1−デカンチオールを1mM含むエタノール溶液に12時間以上浸漬し、金属膜の基板側ではない片面にSAM(Self Assembled Monolayer;自己組織化単分子膜)を形成した。この基板を、前記エタノール溶液から取り出し、エタノールおよびイソプロパノールでそれぞれ洗浄した後、エアガンを用いて乾燥させた。得られたSAM形成基板をカルボキシメチルデキストラン(名糖産業(株)製、分子量500万、置換度1.08)1mg/ml水溶液に浸漬した。更に、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC:(株)同人化学研究所製)、N−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS:Thermo Scientific社製)をそれぞれ0.5mMになるように加え1.5時間室温で反応させ、アミノ基末端のSAMとデキストランのカルボキシル基とのアミドカップリングを行うことによりカルボキシメチルデキストランが固定化されたプラズモン励起センサ前駆基板を得た。反応終了後、1N/lの水酸化ナトリウムを基板表面に滴下し、室温で30分反応させることにより、活性化したカルボキシル基をカルボン酸に変換した。
(工程3:一次抗体固定化)
1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC:(株)同人化学研究所製)、N−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS:Thermo Scientific社製)それぞれ100mMを含む25mM MES(2−モルホリノエタンスルホン酸)バッファー、10mM NaCl(pH6.0)混合液を、カルボキシメチルデキストランを固定した基板に滴下し、20分室温で反応させ、センサチップに組み込まれた前駆基板の表面に固定されたカルボキシメチルデキストランを活性エステル化した。
続いて4−アミノサリチル酸(顕色剤)0.01mM(25mM MESバッファー、10mM NaCl(pH6.0))を滴下し室温で30分反応させ、4−アミノサリチル酸をカルボキシメチルデキストランに固定した。反応終了後、1N/lの水酸化ナトリウムを基板表面に滴下し、室温で30分反応させることにより、活性化したカルボキシル基をカルボン酸に変換した。
その後、抗αフェトプロテイン(AFP)モノクローナル抗体(1D5、1.8mg/ml、ミクリ免疫研究所(株)製)(第一のリガンド)を、当該抗体が50μg/mlとなるよう25mM MES(2−モルホリノエタンスルホン酸)バッファー、10mM NaCl(pH6.0)にて希釈して得られた溶液を、前記基板に滴下し、室温で30分反応させ、当該第一のリガンドを前記カルボキシメチルデキストランに連結した。
最後に、1%BSA−TBSバッファー(pH7.4)溶液を基板に滴下し、40分間室温で反応させることによってブロッキング処理をし、表面プラズモン励起センサを得た。
(工程4:センサチップの構築)
工程3で得られたプラズモン励起センサ基板のうちの抗体が結合された側の面に、測定領域を形成するための、流路長7mm、幅2mmの厚さ2mmのポリメチルメタクリレート(PMMA)製流路を載せた。このPMMA製流路には、送液導入用の穴(送液導入口)および送液排出用の穴(送液排出口)が形成されている。これらセンサ基板、およびPMMA製流路の積層物を外周部で圧着してビスで固定し、センサチップとした。
センサチップの送液導入口および送液排出口に、シリコーンゴム製のチューブおよびペリスタポンプを連結した(以下、特に記載しない限り、各種流体の送液および循環をすべてこのようなチューブおよびペリスタポンプを用いて行った)。
(工程5:シグナルの測定)
前記工程1〜4により製造された表面プラズモン励起センサに、まず、AFP(2.0mg/ml溶液、Acris Antibodies GmbH社)が0.1ng/mlとなるようPBSバッファー(pH7.4)で希釈した溶液を、5000μl/minにて25分間フローさせた。
つづいて、前述のようにして調製した標識二次抗体2:「蛍光色素前駆体」標識抗AFPモノクローナル抗体(蛍光色素前駆体リガンド複合体)が2.5μg/mlとなるよう1%BSA−PBSバッファー(pH7.4)で希釈した溶液を、5000μl/minにて5分間フローさせ、第二のリガンドが固定された表面プラズモン励起サンサを得た。
第二のリガンドが固定された表面プラズモン励起センサの裏側からプリズムを経由してレーザー光(640nm、40μW)を照射し、センサ表面から発せられる蛍光量をCCDで測定した。この測定値を「アッセイ発光シグナル」とした。
一方、実施例1の前記工程1〜4より同様に製造された別の表面プラズモン励起センサについて、上記工程5の最初のステップでAFP(2.0mg/ml溶液、Acris Antibodies GmbH社)が0.1ng/mlとなるようPBSバッファー(pH7.4)で希釈した溶液のかわりに、AFPを全く含まない(0ng/ml)1%BSA−PBSバッファー(pH7.4)をフローさせた以外は上記と同じ手順で蛍光量を測定し、その測定値を「アッセイノイズシグナル」とした。
実施例2
実施例1において、工程3を下記のように変更した以外は実施例1と同様にして表面プラズモン励起センサを製造し、アッセイ発光シグナルおよびアッセイノイズシグナルを測定した。
(工程3:一次抗体固定化)
1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC:(株)同人化学研究所製)、N−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS:Thermo Scientific社製)それぞれ100mMを含む25mM MES(2−モルホリノエタンスルホン酸)バッファー、10mM NaCl(pH6.0)混合液を、デキストランを固定した基板に滴下し、20分室温で反応させ、センサチップに組み込まれた前駆基板の表面に固定されたカルボキシメチルデキストランを活性エステル化した。
続いて、標識一次抗体:「顕色剤」標識抗AFPモノクローナル抗体(顕色剤リガンド複合体)を、当該抗体が50μg/mlとなるよう25mM MES(2−モルホリノエタンスルホン酸)バッファー、10mM NaCl(pH6.0)にて希釈して得られた溶液を、前記基板に滴下し、室温で30分反応させ、当該抗体を前記カルボキシメチルデキストランに連結した。
最後に、1%BSA−TBSバッファー(pH7.4)溶液を基板に滴下し、40分間室温で反応させることによってブロッキング処理をし、表面プラズモン励起センサを得た。
[比較例1]
実施例1において、工程3〜5を下記のように変更した以外は実施例1と同様にして表面プラズモン励起センサを製造し、アッセイ発光シグナルおよびアッセイノイズシグナルを測定した。
(工程3:一次抗体固定化)
1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC:(株)同人化学研究所製)、N−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS:Thermo Scientific社製)それぞれ100mMを含む25mM MES(2−モルホリノエタンスルホン酸)バッファー、10mM NaCl(pH6.0)混合液を、カルボキシメチルデキストランを固定した基板に滴下し、20分室温で反応させ、センサチップに組み込まれた前駆基板の表面に固定されたカルボキシメチルデキストランを活性エステル化した。
続いて、抗αフェトプロテイン(AFP)モノクローナル抗体(1D5、1.8mg/ml、ミクリ免疫研究所(株)製)(第一のリガンド)を、当該抗体が50μg/mlとなるよう25mM MES(2−モルホリノエタンスルホン酸)バッファー、10mM NaCl(pH6.0)にて希釈して得られた溶液を、前記基板に滴下し、室温で30分反応させ、当該第一のリガンドを前記カルボキシメチルデキストランに連結した。
最後に、1%BSA−TBSバッファー(pH7.4)溶液を基板に滴下し、40分間室温で反応させることによってブロッキング処理をし、表面プラズモン励起センサを得た。
(工程4:センサチップの構築)
工程3で得られたプラズモン励起センサ基板のうちの抗体が結合された側の面に、測定領域を形成するための、流路長7mm、幅2mmの厚さ2mmのポリメチルメタクリレート(PMMA)製流路を載せた。このPMMA製流路には、送液導入用の穴(送液導入口)および送液排出用の穴(送液排出口)が形成されている。これらセンサ基板、およびPMMA製流路の積層物を外周部で圧着してビスで固定し、センサチップとした。
センサチップの送液導入口および送液排出口に、シリコーンゴム製のチューブおよびペリスタポンプを連結した(以下、特に記載しない限り、各種流体の送液および循環をすべてこのようなチューブおよびペリスタポンプを用いて行った)。
(工程5:シグナルの測定)
前記工程1〜4により製造された表面プラズモン励起センサに、まず、AFP(2.0mg/ml溶液、Acris Antibodies GmbH社)が0.1ng/mlとなるようPBSバッファー(pH7.4)で希釈した溶液を、5000μl/minにて25分間フローさせた。洗浄工程として、0.05%Tween20を含んだTBS溶液(pH7.4)を5000μl/minにて2分間フローさせた。
つづいて、前述のようにして調製した標識二次抗体1:「Alexa Fluor 647」標識抗AFPモノクローナル抗体(第二のリガンド)が2.5μg/mlとなるよう1%BSA−PBSバッファー(pH7.4)で希釈した溶液を、5000μl/minにて5分間フローさせた。洗浄工程として、0.05%Tween20を含んだTBS溶液(pH7.4)を5000μl/minにて2分間フローさせ、第二のリガンドが固定された表面プラズモン励起サンサを得た。
第二のリガンドが固定された表面プラズモン励起センサの裏側からプリズムを経由してレーザー光(640nm、40μW)を照射し、センサ表面から発せられる蛍光量をCCDで測定した。この測定値を「アッセイ発光シグナル」とした。
一方、比較例1の前記工程1〜4より同様に製造された別の表面プラズモン励起センサについて、上記工程5の最初のステップでAFP(2.0mg/ml溶液、Acris Antibodies GmbH社)が0.1ng/mlとなるようPBSバッファー(pH7.4)で希釈した溶液のかわりに、AFPを全く含まない(0ng/ml)1%BSA−PBSバッファー(pH7.4)をフローさせた以外は上記と同じ手順で蛍光量を測定し、その測定値を「アッセイノイズシグナル」とした。
[比較例2]
工程5を下記のようにした以外は比較例1と同様にして表面プラズモン励起センサを製造し、アッセイ発光シグナルおよびアッセイノイズシグナルを測定した。本比較例2ではサンドイッチアッセイの後に洗浄を行わずに短時間処理を試みたものである。
(工程5:シグナルの測定)
前記工程1〜4により製造された表面プラズモン励起センサに、まず、AFP(2.0mg/ml溶液、Acris Antibodies GmbH社)が0.1ng/mlとなるようPBSバッファー(pH7.4)で希釈した溶液を、5000μl/minにて25分間フローさせた。
つづいて、前述のようにして調製した標識二次抗体1:「Alexa Fluor 647」標識抗AFPモノクローナル抗体(第二のリガンド)が2.5μg/mlとなるよう1%BSA−PBSバッファー(pH7.4)で希釈した溶液を、5000μl/minにて5分間フローさせた。
その後、第二のリガンドが固定された表面プラズモン励起センサの裏側からプリズムを経由してレーザー光(640nm、40μW)を照射し、センサ表面から発せられる蛍光量をCCDで測定した。この測定値を「アッセイ発光シグナル」とした。
一方、前記工程1〜4により製造された別の表面プラズモン励起センサについて、上記最初のステップでAFPを全く含まない(0ng/ml)1%BSA−PBSバッファー(pH7.4)をフローさせた以外は上記と同じ手順で蛍光量を測定し、その測定値を「アッセイノイズシグナル」とした。
以上の実施例および比較例それぞれについて、アッセイシグナルおよびブランクシグナルから下記式によりS/Nを算出した。
S/N=|(アッセイ発光シグナル)|/|(アッセイノイズシグナル)|
Figure 0005569281
表1の結果から明らかなように、従来の通常サンドイッチイムノアッセイを行った比較例1及び比較例2のアッセイ中(3分経過)のアッセイ発光シグナルは高いが、アッセイノイズシグナルも高いことから、これは流路中の標識抗体の蛍光(非特異吸着分)も検出されているためであり、結果S/Nは取れず有意な検出精度は得られない。比較例1のようにアッセイ終了後、洗浄工程を行わなければ有意な検出精度は得られない。一方、本発明の実施例1及び実施例2では、アッセイノイズシグナルから分かるように、アッセイ中に蛍光色素前駆体と顕色剤は物理的に十分引き離されているため流路中の標識抗体の蛍光(非特異吸着分)が検出されることはほとんどない。AFPの補足量に応じたシグナルが得られており、S/Nも高いことが分かる。また、S/Nの弁別が取れているので、アッセイ終了後(5分間)まで反応を行わなくても、例えば、実施例1及び実施例2では、アッセイは3分間であっても有意なS/Nを得る事が出来、高い感度および精度を有しながら、短時間でAFP量が計測できることが分かる。
実施例1及び2において、金属膜から金属粒子に変更した以外は同様にして本発明のアッセイ方法を実施したが、表1の実施例1及び2に示すようにほぼ同様の結果を得ることができた。
10 プラズモン励起センサチップ
11 プラズモン励起センサ
111 透明基板
112 金属膜
113 SAM
12 第一のリガンド
13 蛍光色素前駆体顕色剤
20 蛍光色素前駆体リガンド複合体
21 第二のリガンド
22 蛍光色素
23 蛍光色素リガンド複合体
24 蛍光色素前駆体
31 アナライト

Claims (21)

  1. 金属部材、第一のリガンド及び蛍光色素前駆体と発色反応を起こす蛍光色素前駆体顕色剤を備えるプラズモン励起センサを用いるアッセイ方法であって、以下の工程(a)〜(c)を有することを特徴とするアッセイ方法。
    工程(a):該プラズモン励起センサにアナライト溶液を接触させて、該プラズモン励起センサに該アナライト溶液中のアナライトを固定する工程、
    工程(b):該アナライトを固定したプラズモン励起センサに、第二のリガンドと複数の蛍光色素前駆体とにより修飾された微粒子である蛍光色素前駆体リガンド複合体を接触させ、該第二のリガンドを介して該第一のリガンドに該複数の蛍光色素前駆体を固定して該蛍光色素前駆体顕色剤と反応させることにより、蛍光色素を得る工程、
    工程(c):該金属部材に励起光を照射することで該蛍光色素を励起し、励起された該蛍光色素から発光された蛍光量を測定する工程。
  2. 前記金属部材の表面にSAMが形成されていることを特徴とする請求項1に記載のアッセイ方法。
  3. 前記SAMの表面にデキストランが固定されていることを特徴とする請求項2に記載のアッセイ方法。
  4. 前記蛍光色素前駆体顕色剤は、前記金属部材に固定されていることを特徴とする請求項1に記載のアッセイ方法。
  5. 前記蛍光色素前駆体顕色剤は、前記SAMに固定されていることを特徴とする請求項2に記載のアッセイ方法。
  6. 前記蛍光色素前駆体顕色剤は、前記デキストランに固定されていることを特徴とする請求項3に記載のアッセイ方法。
  7. 前記蛍光色素前駆体顕色剤は、前記第一のリガンドに固定されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のアッセイ方法。
  8. 前記金属部材は、金属膜であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のアッセイ方法。
  9. 前記金属部材は、金属粒子であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のアッセイ方法。
  10. プラズモン励起センサは基板を備え、前記金属粒子は該基板に分散されていることを特徴とする請求項9に記載のアッセイ方法。
  11. 前記アナライト溶液は、血液、血清、血漿、尿、鼻孔液及び唾液から選ばれる少なくとも1種の体液であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載のアッセイ方法。
  12. 金属部材、第一のリガンドおよび蛍光色素前駆体と発色反応を起こす蛍光色素前駆体顕色剤を含むプラズモン励起センサと、
    第二のリガンドおよび複数の蛍光色素前駆体により修飾された微粒子である蛍光色素前駆体リガンド複合体と、
    を備えたことを特徴とする、キット
  13. 前記金属部材の表面にSAMが形成されていることを特徴とする請求項1に記載のキット
  14. 前記SAMの表面にデキストランが固定されていることを特徴とする請求項1に記載のキット
  15. 前記蛍光色素前駆体顕色剤は、前記金属部材に固定されていることを特徴とする請求項1に記載のキット
  16. 前記蛍光色素前駆体顕色剤は、前記SAMに固定されていることを特徴とする請求項1に記載のキット
  17. 前記蛍光色素前駆体顕色剤は、前記デキストランに固定されていることを特徴とする請求項1に記載のキット
  18. 前記蛍光色素前駆体顕色剤は、前記第一のリガンドに固定されていることを特徴とする請求項1〜1のいずれか一項に記載のキット
  19. 前記金属部材は、金属膜であることを特徴とする請求項1〜1のいずれか一項に記載のキット
  20. 前記金属部材は、金属粒子であることを特徴とする請求項1〜1のいずれか一項に記載のキット
  21. プラズモン励起センサは基板を備え、前記金属粒子は該基板に分散されていることを特徴とする請求項2に記載のキット
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