JP5565125B2 - Spfs(表面プラズモン励起増強蛍光分光法)またはそれを利用した測定方法ならびにそれらの測定方法用の表面プラズモン共鳴センサ - Google Patents
Spfs(表面プラズモン励起増強蛍光分光法)またはそれを利用した測定方法ならびにそれらの測定方法用の表面プラズモン共鳴センサ Download PDFInfo
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めるための手段を提供することを目的とする。
少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜上に形成された固定化リガンドを含む層とにより構成された測定領域(A)に、まず試料を送液し、次いで標識リガンド溶液を送液し、これを流下させた後、標識リガンドの蛍光色素の励起光を所定の入射角で金属薄膜裏面に照射し、金属薄膜を透過した非伝播光であるエバネッセント波(Ee)により当該蛍光色素から発せられた蛍光シグナルを含むシグナル(Sa)を光検出器で測定する工程を含む、SPFS(表面プラズモン励起増強蛍光分光法)またはそれを利用した測定方法であって、
上記シグナル(Sa)に含まれる、伝播光であるプラズモン散乱光中の励起光波長成分(Et)に起因する、少なくとも上記エバネッセント波(Ee)および上記プラズモン散乱光中の励起光波長成分(Et)の両方が到達する距離にあるアナライトに結合した標識リガンドが発する蛍光(F2)を含み、さらに上記エバネッセント波(Ee)が到達せず上記プラズモン散乱光中の励起光波長成分(Et)のみが到達する距離にあるアナライトに結合した標識リガンドが発する蛍光(F3)を含んでいてもよい蛍光シグナルを補正するためのステップ(T1)を含み、
上記補正のためのステップ(T1)が、
少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜と光検出器との間に、エバネッセント波(E e )が到達せずプラズモン散乱光中の励起光波長成分(E t )のみが到達するよう当該金属薄膜からの距離をあけて配置された蛍光色素層とにより構成されたプラズモン散乱リファレンス領域(P)において、前記測定領域(A)におけるシグナル(S a )の測定と同条件でシグナル(S p )を測定すること、
少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜と光検出器との間に、厚みの少なくとも一部がエバネッセント波(E e )およびプラズモン散乱光中の励起光波長成分(E t )の両方が到達する距離にあるようにして配置された蛍光色素層とにより構成されたプラズモン散乱リファレンス領域(Q)において、前記測定領域(A)におけるシグナル(S a )の測定と同条件でシグナル(S q )を測定すること、
上記シグナル(S p )の測定値より、入射光のうちプラズモン散乱光になるものの割合を示す散乱係数(k1)を求めること、
上記シグナル(S q )の測定値および上記散乱係数(k1)より、入射光のうちエバネッセント波になるものの割合を示すプラズモン係数(k2)を求めること、ならびに
上記散乱係数(k1)およびプラズモン係数(k2)に基づいて前記シグナル(S a )から補正されたシグナル(S a ′)を求めることを含むことを特徴とする、上記測定方法。
さらに、前記シグナル(Sa)に含まれる、プラズモン散乱光中の蛍光波長成分(Ft)に起因する蛍光シグナルの補正のためのステップ(T2)を含むことを特徴とする、前記[1]に記載のSPFSまたはそれを利用した測定方法。
さらに、前記シグナル(Sa)に含まれる、プラズモン散乱光中の蛍光波長成分(Ft)に起因する蛍光シグナルの補正のためのステップ(T2)を含み、
上記補正のためのステップ(T2)が、
前記測定領域(A)と同様の構成を有するアッセイリファレンス領域(R)に、アナライトも標識リガンドも含まない液体を送液し、流路をこれで満たした状態で測定すること以外は前記測定領域(A)におけるシグナル(Sa)の測定と同条件でシグナル(Sr1)を測定すること、
上記アッセイリファレンス領域(R)に、前記測定領域(A)で用いたものと同じ標識リガンド溶液を送液し、流路をこれで満たした状態で測定すること以外は前記測定領域(A)におけるシグナル(Sa)の測定と同条件で、シグナル(Sr2)を測定すること、
前記シグナル(Sp)の測定値から上記シグナル(Sr1)の測定値を引いた値より散乱係数(k1)を求めること、
前記シグナル(Sq)の測定値から上記シグナル(Sr2)の測定値を引いた値および上記散乱係数(k1)よりプラズモン係数(k2)を求めること、ならびに
上記散乱係数(k1)およびプラズモン係数(k2)に基づいて前記シグナル(Sa)から補正されたシグナル(Sa′)を求めることを含むことを特徴とする、前記[1]に記載のSPFSまたはそれを利用した測定方法。
前記シグナル(Sa′)が、下記式で表されることを特徴とする、前記[1]または[3]に記載のSPFSまたはそれを利用した測定方法。
[5]
少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜上に形成された固定化リガンドを含む層とにより構成された測定領域(A)、
少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜と光検出器の間に、エバネッセント波(Ee)が到達せずプラズモン散乱光中の励起光波長成分(Et)のみが到達するよう当該金属薄膜からの距離をあけて配置された蛍光色素層とにより構成されたプラズモン散乱リファレンス領域(P)、および
少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜と光検出器の間に、厚みの少なくとも一部がエバネッセント波(Ee)およびプラズモン散
乱光中の励起光波長成分(Et)の両方が到達する距離にあるように配置された蛍光色素層とにより構成されたプラズモン散乱リファレンス領域(Q)
を備えることを特徴とする、SPFSまたはそれを利用した測定方法用の表面プラズモン共鳴センサ。
さらに、前記測定領域(A)と同一の構成を有するアッセイリファレンス領域(R)を備えることを特徴とする、前記[5]に記載のSPFSまたはそれを利用した測定方法用の表面プラズモン共鳴センサ。
前記プラズモン散乱リファレンス領域(P)および増強電場リファレンス領域(Q)の蛍光色素層が、上記領域のセンサ表面と光検出器の間にセンサ表面に対向するよう設置された部材を、蛍光色素を含有する光透過性材料で形成するか、またはそのように設置された蛍光色素を含有しない光透過性材料で形成された部材に蛍光色素を含有する薄層を積層することにより配置されていることを特徴とする、前記[5]または[6]に記載の表面プラズモン共鳴センサ。
前記増強電場リファレンス領域(Q)の蛍光色素層が、金属薄膜上に積層された蛍光色素を含有する薄層であって、当該蛍光色素層の厚みすべてがエバネッセント波(Ee)およびプラズモン散乱光中の励起光波長成分(Et)の両方が到達する距離にあることを特徴とする、前記[7]または[8]に記載のSPFSまたはそれを利用した測定方法用の表面プラズモン共鳴センサ。
あるプラズモン散乱光中の励起光波長成分(Et)に起因する蛍光シグナルを補正するた
めのステップ(T1)を含み、さらに、前記シグナル(Sa)に含まれる、プラズモン散
乱光中の蛍光波長成分(Ft)に起因する蛍光シグナルの補正のためのステップ(T2)
を含んでもよいものである。以下、このような測定方法およびそれに用いられる表面プラ
ズモン共鳴センサについて、本発明の典型的な実施形態である第1実施形態および第2実施形態に則し、また図面を参照しながら説明する。ただし、本発明の方法は、以下で説明する測定領域(A)、プラズモン散乱レファレンス領域(P)、増強電場リファレンス領域(R)などに相当する領域を設けた表面プラズモン共鳴センサ(センサ基板、センサチップ)を用いて、上記ステップ(T)を含むように構成されたものであれば、第1実施形態および第2実施形態に限定されることなく、他の態様により実施することもできる。また、本発明はSPFSのみならず、SPFS−LPFSなどのSPFSを利用した他の測定方法においても適用されるものであり、その場合は表面プラズモン共鳴センサの構造や測定手順等を、適用される測定系に応じて適切に変更すればよい。
図1は、本発明の第1の実施形態を表す模式図である。この第1実施形態の表面プラズモン共鳴センサには、測定領域(A)と、プラズモン散乱リファレンス領域(P)と、さらに増強電場リファレンス領域(Q)とが設置される。この第1実施形態は、シグナル(Sa)に含まれうる蛍光のうち、主に、センサ表面に捕捉されたアナライト22に結合し
た標識リガンド21がプラズモン散乱光中の励起光波長成分(伝播光)(Et)により発
する蛍光(F2)による影響を排除する場合の方法として適している(シグナル(Sa)における蛍光(F3)、ならびにシグナル(Sa)、(Sp)および(Sq)における蛍光(F4)は十分に小さいものとして扱う)。
第1実施形態の測定領域(A)は、少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜上に形成された固定化リガンドを含む層とにより構成される。アナライト22を捕捉するための固定化リガンド20は、金属薄膜10の直上に形成してもよいし、金属薄膜10上にSAM、スペーサ層等(いずれも図示せず)を形成してからその上に形成してもよい。また、標識リガンド21がセンサ表面等に非特異的に結合しないよう、通常は固定化リガンド20からなる層が設けられた後にブロッキング処理がなされる。
グナルを含むシグナル(Sa)を光検出器で測定する。
溶液を送液したときに非特異的に結合した標識リガンド21が残留しうる。
した標識リガンド21が増強されたエバネッセント波(非伝播光)(Ee)により発する
蛍光(F1)、センサ表面に捕捉されたアナライト22に結合した標識リガンド21がプ
ラズモン散乱光中の励起光波長成分(伝播光)(Et)により発する蛍光(F2)、流路側
壁および天板30に非特異的に結合した標識リガンド21がプラズモン散乱光中の励起光波長成分(Et)により発する蛍光(F3)、およびプラズモン散乱光中の標識抗体が発するものと同じ蛍光波長成分(伝播光)(Ft)である蛍光(F4)それぞれによるシグナルが含まれうる。
ト波(Ee)によっては励起されず蛍光を発しない。一方、上記エバネッセント波(Ee)が到達する距離にある標識リガンド21は、エバネッセント波(Ee)と伝播光(Ft)の両方によって励起されて蛍光を発する。
も可能であるが、本発明では流路側壁および天板30へのブロッキング処理の有無にかかわらず、ノイズとなる可能性のある上記蛍光(F3)の影響を補正することができる。
第1実施形態のプラズモン散乱リファレンス領域(P)は、少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜と光検出器の間に、非伝播光であるエバネッセント波(Ee)が到達せず、伝播光であるプラズモン散乱光中の励起光波長成分(Et)のみが到達するよう当該金属薄膜からの距離をあけて配置された蛍光色素層とにより構成される。一方、通常は金属薄膜10上にアナライトを捕捉するための固定化リガンド20を含む層が設けられない。それ以外は、領域(P)は領域(A)と同様の構成を有する。領域(P)の金属薄膜は領域(A)の金属薄膜と同じ 工程で形成されたものである。
通常はアナライトも標識リガンドも含まない液体で流路を満たした状態で、標識リガンドの蛍光色素の励起光を所定の入射角で金属薄膜裏面に照射し、シグナル(Sp)を測定す
る。このシグナル(Sp)には、プラズモン散乱光中の標識リガンドが発するものと同じ
蛍光波長成分(Ft)である蛍光(F4)、および蛍光色素層31がプラズモン散乱光の励起光波長成分(Et)により発する蛍光(F6)によるシグナルが含まれうる。
第1実施形態の増強電場リファレンス領域(Q)は、少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜と光検出器の間に配置された、次に述べるような蛍光色素層32とにより構成される。一方、通常は金属薄膜10上にアナライトを捕捉するための固定化リガンド20を含む設けられない。それ以外は、領域(Q)は領域(A)と同様の構成を有する。領域(P)の金属薄膜は領域(A)の金属薄膜と同じ工程で形成されたものである。
けるシグナル(Sp)の測定)と同様の条件で、すなわち、通常はアナライトも標識リガ
ンドも含まない液体で流路を満たした状態で、標識リガンドの蛍光色素の励起光を所定の入射角で金属薄膜裏面に照射し、シグナル(Sq)を測定する。このシグナル(Sq)には、プラズモン散乱光中の標識リガンドが発するものと同じ蛍光波長成分(Ft)である蛍
光(F4)、蛍光色素層32のL1の厚みの部分が増強されたエバネッセント波(非伝播
光)(Ee)により発する蛍光(F7)、および蛍光色素層32のL1+L2(=L)の厚みの部分がプラズモン散乱光(伝播光)の励起光波長成分(Et)により発する蛍光(F8)が含まれうる。
(1)散乱係数(k1)の算出
入射光のうちプラズモン散乱光になるものの割合を示す「散乱係数(k1)」は、シグナル(Sp)の測定値より、次のようにして求めることができる。
。
[式1]
Sp≒F6
=E×d1×k1×r×α×L×φ×z×f
E:入射光子数(金属薄膜裏面に照射した励起光の光子数)
d1:伝播光(プラズモン散乱光等)についての電場増強度
k1:散乱係数(入射光のうちプラズモン散乱光になるものの割合)
r:受光効率(金属薄膜から発せられた光のうち蛍光色素層に受光されるものの割合)
α:吸収係数
L:蛍光色素層の厚さ
φ:蛍光色素の量子収率
z:集光効率
f:フィルタ透過率
プラズモン散乱光は、プラズモン共鳴により電場増強されない(電場増強度d1=1)伝播光であり、E×d1×k1が蛍光F6に関する「励起光子数」となる。E[photon/sec]は光源から照射される励起光によって決定される、すなわち、励起光の出力[J/sec]を、光子1つあたりのエネルギーhν=hc/λ[J](h=プランク定数、ν=振動数
、c=光速度定数、λ=波長)で除することにより求められる値である。rは、金属薄膜と蛍光色素層との距離などによって決定される。αは、蛍光色素層の蛍光色素のモル濃度(C)および蛍光色素層のモル吸光係数(ε)に比例し、たとえばC×εにさらに所定の定数(2.3)をかけた値とみなすことができる。φは蛍光色素層に用いる蛍光色素の種類によって決定される。zおよびfは測定装置によって変動する値であり、光源から光検出器へ直接励起光を入射するなどして、別途測定しておくことが可能である。そして、下記式1’に各変数の値およびシグナル(Sp)の測定値を代入することにより、散乱係数
k1を算出することができる。
[式1’]
k1≒Sp/(E×d1×r×α×L×φ×z×f)
なお、シグナル(Sp)の測定値は単位a.u.を用いて表されることもあるが、光検出器
で受光した光子数(photon/sec)ないしカウント数(counts)との間で換算可能である。換算率は光検出器によって調整されるが、たとえば後記実施例で用いた光検出器(測定装置)では、1a.u.=38 photon/sec、1 count=7.8 photon/secとして換算される。
入射光のうちエバネッセント波になるものの割合を示す「プラズモン係数(k2)」は、シグナル(Sq)の測定値および前述した散乱係数(k1)より、次のようにして求め
ることができる。
。
[式2]
Sq≒F7+F8
=[E×d2×k2×r×α×L1×φ×z×f]
+[E×d1×k1×r×α×(L1+L2)×φ×z×f]
d2:非伝播光(エバネッセント波)についての電場増強度
k2:プラズモン係数(入射光のうちエバネッセント波になるものの割合)
L1:蛍光色素層31のうち、非伝播光であるプラズモン共鳴により増強されたエバネッセント波と、伝播光であるプラズモン散乱光の両方が到達する部分の厚み
L2:蛍光色素層31のうち、伝播光であるプラズモン散乱光のみが到達し、非伝播光であるプラズモン共鳴により増強されたエバネッセント波が到達しない部分の厚み
式2におけるE,d1,r,α,φ,z,fの定義は式9と同じである。
薄膜の厚さや反応層および必要に応じてその下に積層されている誘電体部材(スペーサ層)の屈折率から求めることが可能である。
入することにより、プラズモン係数k2を算出することができる。
[式2’]
k2≒[Sq−[E×d1×k1×r×α×(L1+L2)×φ×z×f]]
/[E×d2×r×α×L1×φ×z×f]
(3)補正されたシグナル(Sa′)の算出
シグナル(Sa)は、前述した散乱係数(k1)およびプラズモン係数(k2)に基づ
いて、次のようにして補正することができる。
。
[式3]
Sa≒F1+F2
≒E×[(k2×d2)+(k1×d1)]×Cx×ε×φ×z×f
Cx:センサ表面に補足された蛍光色素の物質量(モル数)
なお、領域(A)のセンサ表面に補足されたCxモルの蛍光色素はすべて、エバネッセント波が到達する距離の範囲内にあるものとする。
は領域(Q)におけるシグナル(Sq)の測定から式2により求められる。
(Et)により発する蛍光(F2)の影響を排除したシグナル、すなわち、プラズモン散乱光が発生せず、入射光すべてがプラズモン共鳴により増強されたエバネッセント波に変換されたと仮定したときに得られるシグナルをいい、そのような補正されたシグナル(Sa
′)を、下記式で表すことができるものとみなす。
[式4]
Sa′=Sa×(k1+k2)/k2
各サンプルについてこのような式により補正されたシグナル(Sa′)を用いることに
より、センサごとに程度の異なるプラズモン散乱光に起因するノイズの影響を排除した上で、各サンプルに含まれるアナライトの定量やサンプル間の公正な対比を行うことが可能となる。
−k1の値をk2として用いることもできなくはないが、実用上は、領域(Q)におけるシグナル(Sq)の測定結果を用いてプラズモン係数k2を求めることが望ましい。通常
、領域(Q)は、シグナル(Sq)がシグナル(Sa)よりもかなり大きい絶対的な一定の強度を確保できるように設計されるが、もしもシグナル(Sq)が通常想定される範囲よ
りも低い場合、測定条件(入射角度、入射光量、金属薄膜の膜厚など)に何らかの問題がある可能性があると判断する、という利用の仕方もできるためである。シグナル(Sq)
が通常想定される範囲内であれば、シグナル(Sa)が小さくても、それは測定系の異常
に起因するものではなく、センサ表面に補足された蛍光色素の物質量を反映したものだといえるため、シグナル(Sa)の信頼性を高めることができる。
図2は、本発明の第2の実施形態を表す模式図である。この第2実施形態の表面プラズモン共鳴センサには、第1実施形態と同様の前記測定領域(A)、前記プラズモン散乱リファレンス領域(P)および増強電場リファレンス領域(Q)に加えて、さらにアッセイリファレンス領域(R)が設置される。この第2実施形態は、より高精度の測定とするために、第1実施形態では扱わなかった蛍光(F3)および(F4)の影響をも排除する場合の方法として適している。所望により、蛍光(F3)または(F4)のどちらか一方の影響を排除するように調整することも可能である。
第2実施形態の測定領域(A)は、前記第1実施形態の領域(A)と同様であるため、ここでの説明は省略する。
第2実施形態のプラズモン散乱リファレンス領域(P)は、前記第1実施形態の領域(P)と同様であるため、ここでの説明は省略する。
第2実施形態の増強電場リファレンス領域(Q)は、前記第1実施形態の領域(Q)と同様であるため、ここでの説明は省略する。
第2実施形態のアッセイリファレンス領域(R)は、領域(A)と同様の構成を有する。すなわち、金属薄膜10上にはアナライト22を捕捉するための固定化リガンド20が設けられ、センサ表面は通常ブロッキング処理される。
シグナル(Sr1)を測定する。上記シグナル(Sr1)には、プラズモン散乱光中の標識抗体が発するものと同じ蛍光波長成分(伝播光)(Ft)である蛍光(F4)によるシグナルのみが含まれうる。
励起光等について)で、シグナル(Sr2)を測定する。このとき、領域(R)の流路側壁および天板30には、標識リガンド溶液を送液したときに非特異的に結合した標識リガンド21が残留しうる。したがって、上記シグナル(Sr2)には、流路側壁および天板30に非特異的に結合した標識リガンド21がプラズモン散乱光の励起光波長成分(Et)に
より発する蛍光(F3)、およびプラズモン散乱光中の蛍光波長成分(Ft)である蛍光(F4)それぞれによるシグナルが含まれうる。
定するステップを省略することも可能である。
(1)F3およびF4の算出
領域(R)で測定されたシグナル(Sr1)をF4とみなし、シグナル(Sr2)をF3+F4とみなす。なお、Sr1−Sr2をF3とみなすことができる。
領域(P)で測定されたシグナル(Sp)を、下記式で表すことができるものとみなす
。
[式5]
Sp=F4+F6
=Sr1+F6
式5中、F6に関する部分の説明は、第1実施形態の式1と同様である。したがって、
式1において、Spの代わりにSp−Sr1を用い、それ以外は同様に計算するようにすれば、より精密に散乱係数k1を算出することができる。
領域(Q)で測定されたシグナル(Sq)を、下記式で表すことができるものとみなす
。
[式6]
Sq=F4+F7+F8
=Sr1+F7+F8
式6中、F7およびF8に関する部分の説明は、第1実施形態の式2と同様である。したがって、式2において、Sqの代わりにSq−Sr1を用い、またk1として上記式5に基づくより精密な値を用い、それ以外は同様に計算するようにすれば、より精密にプラズモン係数k2を算出することができる。
領域(A)で測定されたシグナル(Sa)を、下記式で表すことができるものとみなす
。
[式7]
Sa=F1+F2+F3+F4
=F1+F2+Sr2
式7中、F1およびF2に関する部分の説明は、第1実施形態の式4と同様である。したがって、式4において、Saの代わりにSa−Sr2を用い、またk1およびk2としてそれぞれ上記式5および6に基づくより精密な値を用い、それ以外は同様に計算するようにすれば、より精密に補正されたシグナル(Sa")を算出することができる。
本発明の方法との対比のため、従来の方法によってS/N比を測定する態様を以下に示す。図3は、そのような従来法が適用される表面プラズモン共鳴センサの形態の一例を表す模式図である。当該表面プラズモン共鳴センサには、ともに本発明について上述した測定領域(A)と同様の構成を有する、測定領域(A)およびアッセイリファレンス領域(B)が併設される。
する。このシグナル(Sa)には、前述のような蛍光(F1)、(F2)、(F3)および(F4)によるシグナルが含まれうる。
補足されることにより発生する蛍光(F1)および(F2)によるシグナルは含まれず、蛍光(F3)および(F4)によるシグナルが含まれうる。
れたシグナル(Sb)の値で除して得られた値(Sa/Sb)をS/N比とする。そして、
アナライトの濃度が既知の標準試料から作成された検量線に基づいて、上記S/N比からサンプルのアナライトの濃度を決定する。
このような方法は、シグナル(Sa)に含まれる蛍光のうち、シグナル(Sb)にも含まれる、流路側壁・天板に非特異的に結合した標識抗体がプラズモン散乱光の励起光波長成
分により発する蛍光(F3)およびプラズモン散乱光中の蛍光波長成分である蛍光(F4)をノイズとして排除しうるが、センサ表面に捕捉されたアナライトに結合した標識抗体が増強されたエバネッセント波により発する蛍光(F1)およびプラズモン散乱光の励起光
波長成分により発する蛍光(F2)の両方をシグナルとして捉えてしまう。すなわち、シ
グナル(Sa)の測定値をそのままアナライトの定量に用いるような方法よりは精度が改
善されているが、センサごとに変動しうるプラズモン散乱光に起因する蛍光(F2)の影
響を十分に排除できないといえる。さらに、前述したような、領域(Q)で測定されるシグナル(Sq)に基づく測定系の異常の判断ということも行えない。
前述のようなプラズモン散乱リファレンス領域(P)および増強電場リファレンス領域(Q)には、蛍光色素を含有する層すなわち蛍光色素層が配置される。この蛍光色素層は、センサ表面と光検出器の間に、センサ表面(床面)と略平行に設置されたものであれば、その態様は特に限定されるものではないが、たとえば、以下に挙げるような態様をとり得る。
「蛍光色素」は、所定の励起光を照射する、または電界効果を利用して励起することによって蛍光を発光する物質の総称である。本発明における、蛍光色素層31・32に含まれる蛍光色素、および標識リガンド21に結合してアナライトを蛍光標識するための蛍光色素としては、公知のSPFS等または蛍光標識法等で用いられている、公知の各種の蛍光色素を用いることができる。蛍光色素層31・32の蛍光色素と標識リガンド21の蛍光色素は、同一であっても、励起波長は同じで発光波長が異なるものであってもよい。
リーの蛍光色素(アプライドバイオシステムズジャパン(株)製)、ヘキサクロロフルオレセイン・ファミリーの蛍光色素(アプライドバイオシステムズジャパン(株)製)、クマリン・ファミリーの蛍光色素(インビトロジェン(株)製)、ローダミン・ファミリーの蛍光色素(GEヘルスケア バイオサイエンス(株)製)、シアニン・ファミリーの蛍光色素、インドカルボシアニン・ファミリーの蛍光色素、オキサジン・ファミリーの蛍光色素、チアジン・ファミリーの蛍光色素、スクアライン・ファミリーの蛍光色素、キレート化ランタニド・ファミリーの蛍光色素、BODIPY(登録商標)・ファミリーの蛍光色素(インビトロジェン(株)製)、ナフタレンスルホン酸・ファミリーの蛍光色素、ピレン・ファミリーの蛍光色素、トリフェニルメタン・ファミリーの蛍光色素、Alexa Fluor(登録商標)色素シリーズ(インビトロジェン(株)製)などが挙げられる。これらファミリーに含まれる代表的な蛍光色素の吸収波長(nm)および発光波長(nm)を表1に示す。
表面プラズモン共鳴センサは、少なくとも誘電体部材(プリズムまたは透明平面基板)と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜上に形成された固定化リガンドを含む層(反応層)とにより構成される、SPFS等によるシグナルを測定するため
の構造いう。便宜上、表面プラズモン共鳴センサの金属薄膜、反応層等が積層される方向を「上」または「表」、その反対の方向を「下」または「裏」と称することがある。
センサチップ(センサ基板)に用いられる透明平面基板は、ガラス製や、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)などのプラスチック製のもの、好ましくはd線(588nm)における屈折率〔nd〕が1.40〜2.20の範囲にある材
質のものを用いることができる。厚さは、たとえば0.01〜10mmの範囲で調整することができる。また、金属薄膜を形成する前に、当面平面基板の表面は酸またはプラズマによる洗浄処理がなされていることが好ましい。
表面プラズモン共鳴センサの金属薄膜は、酸化に対して安定であり、かつ表面プラズモンによる電場増強効果が大きい、金、銀、アルミニウム、銅、および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属からなる(合金の形態であってもよい)ことが好ましく、特に金からなることが好ましい。透明平面基板としてガラス製平面基板を用いる場合には、ガラスと上記金属薄膜とをより強固に接着するため、あらかじめクロム、ニッケルクロム合金またはチタンの薄膜を形成することが好ましい。
薄膜および金属薄膜を形成することが好ましい。
表面プラズモン共鳴センサには、必要に応じて、金属薄膜による蛍光色素の金属消光を防止するため、金属薄膜と反応層(またはSAM)の間に誘電体からなるスペーサ層を形成してもよい。
表面プラズモン共鳴センサには、必要に応じて、金属薄膜(またはスペーサー層)と反応層の間にSAM(Self-Assembled Monolayer:自己組織化単分子膜)を形成してもよい。
本発明の表面プラズモン共鳴センサ(特にセンサチップの態様をとるもの)は、従来の表面プラズモン共鳴センサと同様、公知のSPFS等用の測定装置に装着して使用することができる。この測定装置は、基本的に光源、プリズム、光検出器などを備え、通常はさらに集光レンズ、カットフィルタなどを備える。各種の流体を所定の流速、タイミング等で所定の領域に送液するための手段(送液ポンプなど)や、各種の操作や情報処理を制御
するコンピュータなどが上記測定装置に一体化されていてもよい。
線に基づいて最終的に各サンプルのアナライトの濃度を決定してその情報も記憶するといった情報処理手段を備えていてもよい。さらに、検出すべき蛍光と異なる波長成分を有するノイズ光、たとえばプラズモン散乱光のうちのそのような波長成分、外光(装置外の照明光)、励起光(励起光の透過成分)、迷光(各所での励起光の散乱成分)、各種部材が発する自家蛍光などを除去するためのカットフィルタを備えていることが好ましい。
・検体/試料溶液
アナライトを含むまたは含んでいる可能性のある、SPFS等に供される物質を「検体」と称す。たとえば、ヒト、ヒト以外のほ乳類(モデル動物、ペット等)、その他の動物から採取される血液(血清・血漿)、尿、鼻孔液、唾液、便、体腔液(髄液、腹水、胸水等)などが検体として挙げられる。分析の際、検体は必要に応じて、純水、生理食塩水、緩衝液、試薬溶液などの各種の溶媒と混合して用いてもよい。このような検体の混合液または検体そのもの、あるいは所定の目的のために調製したアナライトを含有する溶液など、SPFS等によるシグナルを測定するために表面プラズモン共鳴センサの所定の領域に送液される流体(溶液、懸濁液、ゾル、その他流動性を有する物質を含む。)をいずれも「試料」と総称する。
SPFS等により定量ないし検出すべき対象となる物質を「アナライト」と称する。センサ表面に捕捉することのできる物体であれば特に限定されることなくアナライトとなり得るが、代表的なアナライトとしては、たとえば腫瘍マーカーとなるような、タンパク質(ポリペプチド、オリゴペプチド等を含む)またはその複合体が挙げられる。また、リガンドに認識される部位(エピトープ等)を表面に有する細胞やウイルス等もアナライトとなり得る。さらに、核酸(一本鎖または二本鎖の、DNA、RNA、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、PNA(ペプチド核酸)等を含む)、糖質(オリゴ糖、多糖類、糖鎖等を含む)、脂質などのその他の分子も、必要に応じてビオチン化等の処理をした上で、アナライトとすることも可能である。
アナライトと特異的に結合し得る分子を「リガンド」と称する。特に、センサ表面に固定化された、アナライトをセンサ表面に捕捉するためのリガンドを「固定化リガンド」(リガンドが抗体であれば「固定化抗体」)、アナライトを標識するために液中に存在する、蛍光色素と結合したリガンドを「標識リガンド」(リガンドが抗体であれば「標識抗体」)と称する。なお、固定化リガンドと標識リガンドのリガンド部分は、同じでもよいし、異なっていてもよい。ただし、固定化リガンドがポリクローナル抗体である場合、標識
リガンドはモノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよいが、固定化リガンドがモノクローナル抗体である場合、標識リガンドはその固定化リガンドが認識しないエピトープを認識するモノクローナル抗体であるか、またはポリクローナル抗体であることが望ましい。
抗αフェトプロテイン(AFP)モノクローナル抗体(1D5、2.5mg/mL、(
株)日本医学臨床検査研究所製)を、市販のビオチン化キット((株)同仁化学研究所製)
を用いてビオチン化した。手順は、該キットに添付のプロトコールに従った。
」ストレプトアビジンコンジュゲート(Molecular Probes社製)の溶液とを混合し、4℃で60分間攪拌して反応させた。
抗体溶液を得た。得られた抗体溶液はタンパク定量後、4℃で保存した。
厚さ1mmのガラス製の透明平面基板「S-LAL 10」((株)オハラ製、屈折率〔nd〕=
1.72)を、プラズマドライクリーナー「PDC200」(ヤマト科学(株)製)でプラズマ洗浄した。プラズマ洗浄された基板の片面に、まずクロム薄膜をスパッタリング法により形成し、さらにその表面に金薄膜をスパッタリング法により形成した。このクロム薄膜の厚さは1〜3nm、金薄膜の厚さは44〜52nmであった。
上記のようにして作製された基板A,B,C,Dそれぞれについて、下記工程[1]によりセンサチップの構成とした後、下記工程[2]により測定領域(A)を、下記工程[3]によりプラズモン散乱リファレンス領域(P)を、下記工程[4]により増強電場リファレンス領域(Q)を作製し、それぞれセンサチップA,B,C,Dとした。
基板の金属薄膜およびSAMが形成された側の面に、測定領域(A)、プラズモン散乱リファレンス領域(P)および増強電場リファレンス領域(Q)を形成するための、それぞれ流路長10mm、幅5mmの3個の穴があいた、厚さ0.5mmのポリジメチルシロキサン(PDMS)製シートを載せた。さらに、このPDMS製シートの周囲にシリコーンゴム製スペーサを配置した(このシリコーンゴム製スペーサは送液に触れない状態にある。)。このPDMS製シートおよびシリコーンゴム製スペーサの上に、上記領域(A)、(P)および(Q)それぞれの内側に位置するよう、送液導入用の穴(送液導入口)および送液排出用の穴(送液排出口)が形成されたポリメチルメタクリレート(PMMA)製天板を載せた。これらセンサ基板、PDMS製シート、およびPMMA製天板の積層物を外周部で圧着してビスで固定し、センサチップとした。
センサチップの領域(A)の送液導入口および送液排出口に、シリコーンゴム製のチューブおよびペリスタポンプを連結した(以下に記載する各種流体の送液および循環はすべて、同様のチューブおよびペリスタポンプを用いて行った)。
に固定化した。その後、1重量%の牛血清アルブミン(BSA)および1Mのアミノエタノールを含むPBSを30分間循環送液させ、ブロッキング処理とした。
以下の手順により、センサチップの天板の領域(P)が位置する部分の上面に、厚さ3μmの蛍光色素層を形成した。
リレート30g、N,N′−アゾビスイソバレロニトリル0.1gを各々溶解した混合液を2時間かけて滴下し、同温度にて10時間反応させて樹脂R−1の酢酸エチル溶液を得た。この樹脂溶液R−1を1ml計量し、更に蛍光色素Cy5(蛍光色素)モノNHS体を同モルのラウリルアミンと反応させたアミド体(F−1)を20mM/ml含む酢酸エチル溶
液を1ml加え撹拌した。調製した溶液を、天板としてのポリメチルメタクリレート(PMMA)基板の一方の面の、上記所定の部位に、前記蛍光剤塗布液を乾燥膜厚が3μmになるようにスピンコーターで塗布し、乾燥温度100℃で5分間の乾燥を行い、蛍光色素層を形成した。
以下の手順により、領域(Q)のSAMの表面に、厚さ100nmの蛍光色素層を形成した。
液を1ml加え撹拌した。調製した溶液を、センサ基板のSAMが形成された面に、前記蛍光剤塗布液を乾燥膜厚が100nmになるようにスピンコーターで塗布し、乾燥温度100℃で5分間の乾燥を行い、蛍光色素層を形成した。
上記のようにして作製されたセンサチップA,B,C,Dそれぞれについて、下記工程[5]により測定領域(A)におけるシグナル(Sa)の測定を、下記工程[6]により
測定領域(P)におけるシグナル(Sp)の測定を、下記工程[7]により領域(Q)に
おけるシグナル(Sq)の測定を行った。
測定領域(A)に、まず、AFP(2.0mg/mL溶液、Acris Antibodies GmbH社
)が10ng/mLとなるようPBSバッファー(pH7.4)で希釈した溶液を、10μL/minにて20分間フローさせた。つづいて、前述のようにして調製した標識抗体:「Alexa Fluor 647」標識抗AFPモノクローナル抗体が2.5μg/mLとなるよう
1%BSA−PBSバッファー(pH7.4)で希釈した溶液を、10μL/minにて20分間フローさせた。洗浄工程として、0.005%Tween20を含んだTBS溶液(pH7.4)を10μL/minにて10分間フローさせた。その後、PBSバッファー(pH7.4)で流路を満たした状態にして、表面プラズモン共鳴センサの裏側からプリズムを経由してレーザ光(635nm、40μW)を照射し、センサ表面から発せられる蛍光量をCCDで測定した。この測定値をシグナル(Sa)とした。
領域(P)にPBSバッファー(pH7.4)を送液し、流路をこのバッファーで満たした状態にして、表面プラズモン共鳴センサの裏側からプリズムを経由してレーザ光(635nm、40μW)を照射し、センサ表面から発せられる蛍光量をCCDで測定した。この測定値をシグナル(Sp)とした。
領域(Q)にPBSバッファー(pH7.4)を送液し、流路をこのバッファーで満たした状態にして、表面プラズモン共鳴センサの裏側からプリズムを経由してレーザ光(6
35nm、40μW)を照射し、センサ表面から発せられる蛍光量をCCDで測定した。この測定値をシグナル(Sp)とした。
センサチップA,B,C,Dそれぞれについて、下記のようにして補正されたシグナル(Sa′)を算出した。
係数k1を算出した。次いで、前記[式2’]に基づき、このk1を用い、領域(Q)で測定されたシグナル(Sq)の測定値からプラズモン係数k2を算出した。そして、前記
[式4]に基づき、これらのk1およびk2を用い、領域(A)で測定されたシグナル(Sa)の測定値から、補正されたシグナル(Sa′)を算出した。
乱の影響を補正した、より精度の高いアナライトの定量が可能になることが示された。
2:プラズモン散乱リファレンス領域(P)
3:増強電場リファレンス領域(Q)
4:アッセイリファレンス領域(R)
5:アッセイリファレンス領域(B)
10:金属薄膜
20:固定化リガンド(反応層)
21:標識リガンド
22:アナライト
30:天板
31:蛍光色素層(蛍光色素を含有する光透過性材料で形成された天板)
32:蛍光色素層
Claims (9)
- 少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜上に形成された固定化リガンドを含む層とにより構成された測定領域(A)に、まず試料を送液し、次いで標識リガンド溶液を送液し、これを流下させた後、標識リガンドの蛍光色素の励起光を所定の入射角で金属薄膜裏面に照射し、金属薄膜を透過した非伝播光であるエバネッセント波(Ee)により当該蛍光色素から発せられた蛍光シグナルを含むシグナル(Sa)を光検出器で測定する工程を含む、SPFS(表面プラズモン励起増強蛍光分光法)またはそれを利用した測定方法であって、
上記シグナル(Sa)に含まれる、伝播光であるプラズモン散乱光中の励起光波長成分(Et)に起因する、少なくとも上記エバネッセント波(Ee)および上記プラズモン散乱光中の励起光波長成分(Et)の両方が到達する距離にあるアナライトに結合した標識リガンドが発する蛍光(F2)を含み、さらに上記エバネッセント波(Ee)が到達せず上記プラズモン散乱光中の励起光波長成分(Et)のみが到達する距離にあるアナライトに結合した標識リガンドが発する蛍光(F3)を含んでいてもよい蛍光シグナルを補正するためのステップ(T1)を含み、
上記補正のためのステップ(T1)が、
少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜と光検出器との間に、エバネッセント波(E e )が到達せずプラズモン散乱光中の励起光波長成分(E t )のみが到達するよう当該金属薄膜からの距離をあけて配置された蛍光色素層とにより構成されたプラズモン散乱リファレンス領域(P)において、前記測定領域(A)におけるシグナル(S a )の測定と同条件でシグナル(S p )を測定すること、
少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜と光検出器との間に、厚みの少なくとも一部がエバネッセント波(E e )およびプラズモン散乱光中の励起光波長成分(E t )の両方が到達する距離にあるようにして配置された蛍光色素層とにより構成されたプラズモン散乱リファレンス領域(Q)において、前記測定領域(A)におけるシグナル(S a )の測定と同条件でシグナル(S q )を測定すること、
上記シグナル(S p )の測定値より、入射光のうちプラズモン散乱光になるものの割合を示す散乱係数(k1)を求めること、
上記シグナル(S q )の測定値および上記散乱係数(k1)より、入射光のうちエバネッセント波になるものの割合を示すプラズモン係数(k2)を求めること、ならびに
上記散乱係数(k1)およびプラズモン係数(k2)に基づいて前記シグナル(S a )から補正されたシグナル(S a ′)を求めることを含むことを特徴とする、上記測定方法。 - さらに、前記シグナル(Sa)に含まれる、プラズモン散乱光中の蛍光波長成分(Ft)に起因する蛍光シグナルの補正のためのステップ(T2)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のSPFSまたはそれを利用した測定方法。
- さらに、前記シグナル(Sa)に含まれる、プラズモン散乱光中の蛍光波長成分(Ft)に起因する蛍光シグナルの補正のためのステップ(T2)を含み、
上記補正のためのステップ(T2)が、
前記測定領域(A)と同様の構成を有するアッセイリファレンス領域(R)に、アナライトも標識リガンドも含まない液体を送液し、流路をこれで満たした状態で測定すること以外は前記測定領域(A)におけるシグナル(Sa)の測定と同条件でシグナル(Sr1)を測定すること、
上記アッセイリファレンス領域(R)に、前記測定領域(A)で用いたものと同じ標識リガンド溶液を送液し、流路をこれで満たした状態で測定すること以外は前記測定領域(A)におけるシグナル(Sa)の測定と同条件で、シグナル(Sr2)を測定すること、
前記シグナル(Sp)の測定値から上記シグナル(Sr1)の測定値を引いた値より散乱係数(k1)を求めること、
前記シグナル(Sq)の測定値から上記シグナル(Sr2)の測定値を引いた値および上記散乱係数(k1)よりプラズモン係数(k2)を求めること、ならびに
上記散乱係数(k1)およびプラズモン係数(k2)に基づいて前記シグナル(Sa)から補正されたシグナル(Sa′)を求めることを含むことを特徴とする、請求項1に記載のSPFSまたはそれを利用した測定方法。 - 前記シグナル(Sa′)が、下記式で表されることを特徴とする、請求項1または3に記載のSPFSまたはそれを利用した測定方法。
Sa′=Sa×(k1+k2)/k2 - 少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜上に形成された固定化リガンドを含む層とにより構成された測定領域(A)、
少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜と光検出器の間に、エバネッセント波(Ee)が到達せずプラズモン散乱光中の励起光波長成分(Et)のみが到達するよう当該金属薄膜からの距離をあけて配置された蛍光色素層とにより構成されたプラズモン散乱リファレンス領域(P)、および
少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜と光検出器の間に、厚みの少なくとも一部がエバネッセント波(Ee)およびプラズモン散乱光中の励起光波長成分(Et)の両方が到達する距離にあるように配置された蛍光色素層とにより構成されたプラズモン散乱リファレンス領域(Q)
を備えることを特徴とする、SPFSまたはそれを利用した測定方法用の表面プラズモン共鳴センサ。 - さらに、前記測定領域(A)と同一の構成を有するアッセイリファレンス領域(R)を備えることを特徴とする、請求項5に記載のSPFSまたはそれを利用した測定方法用の表面プラズモン共鳴センサ。
- 前記プラズモン散乱リファレンス領域(P)および増強電場リファレンス領域(Q)の蛍光色素層が、上記領域のセンサ表面と光検出器の間にセンサ表面に対向するよう設置された部材を、蛍光色素を含有する光透過性材料で形成するか、またはそのように設置された蛍光色素を含有しない光透過性材料で形成された部材に蛍光色素を含有する薄層を積層することにより配置されていることを特徴とする、請求項5または6に記載のSPFSまたはそれを利用した測定方法用の表面 プラズモン共鳴センサ。
- 前記プラズモン散乱リファレンス領域(P)の蛍光色素層が、蛍光色素を含有しない光透過性材料で形成された流路天板に積層された蛍光色素を含有する薄層であることを特徴とする、請求項7に記載のSPFSまたはそれを利用した測定方法用の表面プラズモン共鳴センサ。
- 前記増強電場リファレンス領域(Q)の蛍光色素層が、金属薄膜上に積層された蛍光色素を含有する薄層であって、当該蛍光色素層の厚みすべてがエバネッセント波(Ee)およびプラズモン散乱光中の励起光波長成分(Et)の両方が到達する距離にあることを特徴とする、請求項7または8に記載のSPFSまたはそれを利用した測定方法用の表面プラズモン共鳴センサ。
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