JP5565125B2 - Spfs(表面プラズモン励起増強蛍光分光法)またはそれを利用した測定方法ならびにそれらの測定方法用の表面プラズモン共鳴センサ - Google Patents

Spfs(表面プラズモン励起増強蛍光分光法)またはそれを利用した測定方法ならびにそれらの測定方法用の表面プラズモン共鳴センサ Download PDF

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本発明は、医療、バイオテクノロジー等の分野で利用されるSPFS(Surface Plasmon-field enhanced Fluorescence Spectroscopy:表面プラズモン励起増強蛍光分光法)またはそれを利用するSPFS−LPFS(Localized surface Plasmon-field enhanced Fluorescence Spectroscopy:局在表面プラズモン励起増強蛍光分光法)などの測定系に関し、より具体的には、それらの測定系に用いられる手法および表面プラズモン共鳴センサの構造に関する。
SPFSは、誘電体部材上に形成された金属薄膜に全反射減衰(ATR)が生じる角度で励起光を照射したときに、金属薄膜を透過したエバネッセント波が表面プラズモンとの共鳴により数十倍〜数百倍に増強されることを利用して、金属薄膜近傍に捕捉されたアナライト(分析対象物)を標識する蛍光色素を効率的に励起させ、その蛍光シグナルを測定する方法である。このようなSPFSは、一般的な蛍光標識法などに比べて極めて感度が高いため、サンプル中にアナライトがごく微量しか存在しない場合であってもそれを定量することができる。SPFSの基本的な態様は、たとえば特許文献1および2に開示されている。
また、LPFSは、上記SPFSと組み合わせて利用することのできる方法であって、コロイド液を流すなどして金属コロイド粒子を蛍光色素近傍に位置させると、この金属コロイド粒子にもプラズモンが発生して局所的な電場増強効果が得られることを利用し、さらに効率良く蛍光色素を励起させてその蛍光シグナルを測定する方法である。
SPFSおよびそれを利用するSPFS−LPFSなどの測定方法(以下「SPFS等」と総称する。)などによれば、たとえば、血液中の極微量の腫瘍マーカーを定量することにより、触診などによって検出することができない前臨床期の非浸潤癌(上皮内癌)の存在も高精度で予測することができるようになるため、医療、バイオテクノロジー等の分野における活用が期待される。
このようなSPFS等において、蛍光シグナルに含まれる何らかのノイズを排除してより測定精度を高めるための手法、たとえばノイズの強度を反映する指標を用いることにより測定されたシグナル強度を補正してより正確なシグナル強度を求めるような手法は報告されていない。
特許第3294605号公報 特開2006−218169号公報
SPFS等を臨床検査システムで実用化し、たとえば1時間程度で問診、採血、検査、およびその結果に基づく診断が行えるようにすることを考慮した場合、測定データの精度保証は極めて重要であり、かつ短時間の測定でそれを実現することが望まれる。
本発明は、SPFS等の測定系において用いることのできる、従来よりも測定精度を高
めるための手段を提供することを目的とする。
本発明者は、SPFS等において金属薄膜に励起光を照射したときに、表面プラズモン共鳴に由来する増強されたエバネッセント波(非伝播光)のみが発生するわけではなく、おそらくセンサ表面の金属薄膜の態様(たとえば微細な凹凸、膜厚、金属種)に起因する複数種の伝播光(本発明において「プラズモン散乱光」と称する。)も発生することを見出した。
プラズモン散乱光の主成分は金属薄膜に入射した励起光と同一の波長成分であり、そのような波長成分も蛍光色素を励起しうるため、蛍光色素が生ずる蛍光の一部は(増強されたエバネッセント波由来の励起光波長成分ではなく)プラズモン散乱光の励起光波長成分に由来しうる。また、プラズモン散乱光の一部は、アナライトを標識する蛍光色素が発する蛍光と同一の波長成分であるため、光検出器で測定された蛍光の一部はプラズモン散乱光の蛍光波長成分に由来しうる。しかも、プラズモン散乱光の要因となる金属薄膜の微細な凹凸などはセンサ(製造ロット)ごとに相違するため、上記のようなプラズモン散乱光による影響の程度は一定ではない。
つまり、従来はアナライトを標識した蛍光色素から非伝播光により発生した蛍光として測定されていたシグナルには、実はセンサごとに程度の異なる上記のようなノイズが含まれていた可能性がある。特に、プラズモン散乱光の一部の蛍光波長成分は、サンプル中にアナライトが存在しない場合にも蛍光シグナルとして検出されるものであり、ブランクシグナルを高める原因として問題である。極めて高感度なSPFS等においてはそのようなノイズが測定結果に重大な影響を及ぼすおそれがあり、測定の精度や信頼性を高めるためには極力そのようなノイズの影響を排除することが望ましい。
そこで本発明者は、上記の問題を解消すべくさらに研究を進めた結果、プラスモン散乱光(伝播光)の励起光波長成分によって蛍光を発する蛍光色素を含有する層(単に「蛍光色素層」と記載することもある。)を備えた領域を表面プラズモン共鳴センサに設け、この領域でSPFS等により測定されるシグナルを利用することにより、プラズモン散乱光に由来するノイズの影響を排除した上で、検体中のアナライトの定量を行うことができるようになることを見出した。
すなわち、本発明は、次のようなSPFS(表面プラズモン励起増強蛍光分光法)またはそれを利用した測定方法を提供する。
[1]
少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜上に形成された固定化リガンドを含む層とにより構成された測定領域(A)に、まず試料を送液し、次いで標識リガンド溶液を送液し、これを流下させた後、標識リガンドの蛍光色素の励起光を所定の入射角で金属薄膜裏面に照射し、金属薄膜を透過した非伝播光であるエバネッセント波(Ee)により当該蛍光色素から発せられた蛍光シグナルを含むシグナル(Sa)を光検出器で測定する工程を含む、SPFS(表面プラズモン励起増強蛍光分光法)またはそれを利用した測定方法であって、
上記シグナル(Sa)に含まれる、伝播光であるプラズモン散乱光中の励起光波長成分(Et)に起因する、少なくとも上記エバネッセント波(Ee)および上記プラズモン散乱光中の励起光波長成分(Et)の両方が到達する距離にあるアナライトに結合した標識リガンドが発する蛍光(F2)を含み、さらに上記エバネッセント波(Ee)が到達せず上記プラズモン散乱光中の励起光波長成分(Et)のみが到達する距離にあるアナライトに結合した標識リガンドが発する蛍光(F3)を含んでいてもよい蛍光シグナルを補正するためのステップ(T1)を含
上記補正のためのステップ(T1)が、
少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜と光検出器との間に、エバネッセント波(E e )が到達せずプラズモン散乱光中の励起光波長成分(E t )のみが到達するよう当該金属薄膜からの距離をあけて配置された蛍光色素層とにより構成されたプラズモン散乱リファレンス領域(P)において、前記測定領域(A)におけるシグナル(S a )の測定と同条件でシグナル(S p )を測定すること、
少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜と光検出器との間に、厚みの少なくとも一部がエバネッセント波(E e )およびプラズモン散乱光中の励起光波長成分(E t )の両方が到達する距離にあるようにして配置された蛍光色素層とにより構成されたプラズモン散乱リファレンス領域(Q)において、前記測定領域(A)におけるシグナル(S a )の測定と同条件でシグナル(S q )を測定すること、
上記シグナル(S p )の測定値より、入射光のうちプラズモン散乱光になるものの割合を示す散乱係数(k1)を求めること、
上記シグナル(S q )の測定値および上記散乱係数(k1)より、入射光のうちエバネッセント波になるものの割合を示すプラズモン係数(k2)を求めること、ならびに
上記散乱係数(k1)およびプラズモン係数(k2)に基づいて前記シグナル(S a )から補正されたシグナル(S a ′)を求めることを含むことを特徴とする、上記測定方法。

さらに、前記シグナル(Sa)に含まれる、プラズモン散乱光中の蛍光波長成分(Ft)に起因する蛍光シグナルの補正のためのステップ(T2)を含むことを特徴とする、前記[1]記載のSPFSまたはそれを利用した測定方法。

さらに、前記シグナル(Sa)に含まれる、プラズモン散乱光中の蛍光波長成分(Ft)に起因する蛍光シグナルの補正のためのステップ(T2)を含み、
上記補正のためのステップ(T2)が、
前記測定領域(A)と同様の構成を有するアッセイリファレンス領域(R)に、アナライトも標識リガンドも含まない液体を送液し、流路をこれで満たした状態で測定すること以外は前記測定領域(A)におけるシグナル(Sa)の測定と同条件でシグナル(Sr1)を測定すること、
上記アッセイリファレンス領域(R)に、前記測定領域(A)で用いたものと同じ標識リガンド溶液を送液し、流路をこれで満たした状態で測定すること以外は前記測定領域(A)におけるシグナル(Sa)の測定と同条件で、シグナル(Sr2)を測定すること、
前記シグナル(Sp)の測定値から上記シグナル(Sr1)の測定値を引いた値より散乱係数(k1)を求めること、
前記シグナル(Sq)の測定値から上記シグナル(Sr2)の測定値を引いた値および上記散乱係数(k1)よりプラズモン係数(k2)を求めること、ならびに
上記散乱係数(k1)およびプラズモン係数(k2)に基づいて前記シグナル(Sa)から補正されたシグナル(Sa′)を求めることを含むことを特徴とする、前記[]に記載のSPFSまたはそれを利用した測定方法。

前記シグナル(Sa′)が、下記式で表されることを特徴とする、前記[]または[]に記載のSPFSまたはそれを利用した測定方法。
a′=Sa×(k1+k2)/k2

少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜上に形成された固定化リガンドを含む層とにより構成された測定領域(A)、
少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜と光検出器の間に、エバネッセント波(Ee)が到達せずプラズモン散乱光中の励起光波長成分(Et)のみが到達するよう当該金属薄膜からの距離をあけて配置された蛍光色素層とにより構成されたプラズモン散乱リファレンス領域(P)、および
少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜と光検出器の間に、厚みの少なくとも一部がエバネッセント波(Ee)およびプラズモン散
乱光中の励起光波長成分(Et)の両方が到達する距離にあるように配置された蛍光色素層とにより構成されたプラズモン散乱リファレンス領域(Q)
を備えることを特徴とする、SPFSまたはそれを利用した測定方法用の表面プラズモン共鳴センサ。

さらに、前記測定領域(A)と同一の構成を有するアッセイリファレンス領域(R)を備えることを特徴とする、前記[]に記載のSPFSまたはそれを利用した測定方法用の表面プラズモン共鳴センサ。

前記プラズモン散乱リファレンス領域(P)および増強電場リファレンス領域(Q)の蛍光色素層が、上記領域のセンサ表面と光検出器の間にセンサ表面に対向するよう設置された部材を、蛍光色素を含有する光透過性材料で形成するか、またはそのように設置された蛍光色素を含有しない光透過性材料で形成された部材に蛍光色素を含有する薄層を積層することにより配置されていることを特徴とする、前記[]または[]に記載の表面プラズモン共鳴センサ。
] 前記プラズモン散乱リファレンス領域(P)の蛍光色素層が、蛍光色素を含有しない光透過性材料で形成された流路天板に積層された蛍光色素を含有する薄層であることを特徴とする、前記[]に記載のSPFSまたはそれを利用した測定方法用の表面プラズモン共鳴センサ。

前記増強電場リファレンス領域(Q)の蛍光色素層が、金属薄膜上に積層された蛍光色素を含有する薄層であって、当該蛍光色素層の厚みすべてがエバネッセント波(Ee)およびプラズモン散乱光中の励起光波長成分(Et)の両方が到達する距離にあることを特徴とする、前記[]または[]に記載のSPFSまたはそれを利用した測定方法用の表面プラズモン共鳴センサ。
本発明によりプラズモン散乱光に由来するノイズの影響を排除することができるようになるため、SPFS等の測定精度や信頼性を従来よりも一層高めることができるため、実用化に大きく貢献する。
本発明の実施態様の一例(第1実施形態)を表す模式図である。 本発明の実施態様の別の例(第2実施形態)を表す模式図である。 従来の実施態様の例を表す模式図である。
本発明に係る測定方法は、以下に述べるようなシグナル(Sa)に含まれる、伝播光で
あるプラズモン散乱光中の励起光波長成分(Et)に起因する蛍光シグナルを補正するた
めのステップ(T1)を含み、さらに、前記シグナル(Sa)に含まれる、プラズモン散
乱光中の蛍光波長成分(Ft)に起因する蛍光シグナルの補正のためのステップ(T2)
を含んでもよいものである。以下、このような測定方法およびそれに用いられる表面プラ
ズモン共鳴センサについて、本発明の典型的な実施形態である第1実施形態および第2実施形態に則し、また図面を参照しながら説明する。ただし、本発明の方法は、以下で説明する測定領域(A)、プラズモン散乱レファレンス領域(P)、増強電場リファレンス領域(R)などに相当する領域を設けた表面プラズモン共鳴センサ(センサ基板、センサチップ)を用いて、上記ステップ(T)を含むように構成されたものであれば、第1実施形態および第2実施形態に限定されることなく、他の態様により実施することもできる。また、本発明はSPFSのみならず、SPFS−LPFSなどのSPFSを利用した他の測定方法においても適用されるものであり、その場合は表面プラズモン共鳴センサの構造や測定手順等を、適用される測定系に応じて適切に変更すればよい。
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態を表す模式図である。この第1実施形態の表面プラズモン共鳴センサには、測定領域(A)と、プラズモン散乱リファレンス領域(P)と、さらに増強電場リファレンス領域(Q)とが設置される。この第1実施形態は、シグナル(Sa)に含まれうる蛍光のうち、主に、センサ表面に捕捉されたアナライト22に結合し
た標識リガンド21がプラズモン散乱光中の励起光波長成分(伝播光)(Et)により発
する蛍光(F2)による影響を排除する場合の方法として適している(シグナル(Sa)における蛍光(F3)、ならびにシグナル(Sa)、(Sp)および(Sq)における蛍光(F4)は十分に小さいものとして扱う)。
なお、これら3つの領域で行われる以下に説明するようなシグナルの測定は、同時並行的に進行させると分析時間の短縮化が図れるため好都合であるが、所定のタイミングで順次進行させるようにしてもよい。
・測定領域(A)
第1実施形態の測定領域(A)は、少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜上に形成された固定化リガンドを含む層とにより構成される。アナライト22を捕捉するための固定化リガンド20は、金属薄膜10の直上に形成してもよいし、金属薄膜10上にSAM、スペーサ層等(いずれも図示せず)を形成してからその上に形成してもよい。また、標識リガンド21がセンサ表面等に非特異的に結合しないよう、通常は固定化リガンド20からなる層が設けられた後にブロッキング処理がなされる。
領域(A)は、通常のSPFSと同様の手順でシグナルを測定する。すなわち、領域(A)に、まず試料を送液し、次いで標識リガンド溶液を送液し、これを流下させた後、標識リガンドの蛍光色素の励起光を所定の入射角で金属薄膜裏面に照射し、金属薄膜を透過した非伝播光であるエバネッセント波(Ee)により当該蛍光色素から発せられた蛍光シ
グナルを含むシグナル(Sa)を光検出器で測定する。
この測定の際、通常は、アナライトも標識リガンドも含まない液体(たとえば試料液や測定液を調製するために用いられる溶媒ないし緩衝液単独)が新たに送液され、流路はこの液体で満たされた状態にされる。また、標識リガンド溶液を流下させた後、流路に洗浄液を送液循環させる洗浄工程が設けられることもある。しかしながらそれでも、シグナル(Sa)が測定される時点で、領域(A)の流路側壁および天板30には、標識リガンド
溶液を送液したときに非特異的に結合した標識リガンド21が残留しうる。
したがって上記シグナル(Sa)には、センサ表面に捕捉されたアナライト22に結合
した標識リガンド21が増強されたエバネッセント波(非伝播光)(Ee)により発する
蛍光(F1)、センサ表面に捕捉されたアナライト22に結合した標識リガンド21がプ
ラズモン散乱光中の励起光波長成分(伝播光)(Et)により発する蛍光(F2)、流路側
壁および天板30に非特異的に結合した標識リガンド21がプラズモン散乱光中の励起光波長成分(Et)により発する蛍光(F3)、およびプラズモン散乱光中の標識抗体が発するものと同じ蛍光波長成分(伝播光)(Ft)である蛍光(F4)それぞれによるシグナルが含まれうる。
なお、エバネッセント波(非伝播光)は金属薄膜10表面からせいぜい数百ナノメートル(一波長程度)しか到達しないため、センサ表面に固定化された標識リガンド21であってもその距離よりも遠い位置にあるもの(そのようなものが生じないように固定化リガンド(反応層)およびその他の層の厚みを調整しておくことが望ましい)、ならびにセンサ表面からその距離よりも遠い位置にある流路側壁または天板30に非特異的に結合した標識リガンド21は、伝播光(Ft)のみによって励起されて蛍光を発し、エバネッセン
ト波(Ee)によっては励起されず蛍光を発しない。一方、上記エバネッセント波(Ee)が到達する距離にある標識リガンド21は、エバネッセント波(Ee)と伝播光(Ft)の両方によって励起されて蛍光を発する。
また、センサ表面をブロッキング処理しておくことにより、標識リガンド21がセンサ表面に非特異的に結合して非伝播光(Ee)または伝播光(Et)によりノイズとなる蛍光を発することを抑制できる。さらに、流路側壁および天板30もブロッキング処理をしておけば、そこに非特異的に結合する標識抗体から発せられる蛍光(F3)も抑制すること
も可能であるが、本発明では流路側壁および天板30へのブロッキング処理の有無にかかわらず、ノイズとなる可能性のある上記蛍光(F3)の影響を補正することができる。
・プラズモン散乱リファレンス領域(P)
第1実施形態のプラズモン散乱リファレンス領域(P)は、少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜と光検出器の間に、非伝播光であるエバネッセント波(Ee)が到達せず、伝播光であるプラズモン散乱光中の励起光波長成分(Et)のみが到達するよう当該金属薄膜からの距離をあけて配置された蛍光色素層とにより構成される。一方、通常は金属薄膜10上にアナライトを捕捉するための固定化リガンド20を含む層が設けられない。それ以外は、領域(P)は領域(A)と同様の構成を有する。領域(P)の金属薄膜は領域(A)の金属薄膜と同じ 工程で形成されたものである。
領域(P)では、領域(A)におけるシグナル(Sa)の測定と同条件で、すなわち、
通常はアナライトも標識リガンドも含まない液体で流路を満たした状態で、標識リガンドの蛍光色素の励起光を所定の入射角で金属薄膜裏面に照射し、シグナル(Sp)を測定す
る。このシグナル(Sp)には、プラズモン散乱光中の標識リガンドが発するものと同じ
蛍光波長成分(Ft)である蛍光(F4)、および蛍光色素層31がプラズモン散乱光の励起光波長成分(Et)により発する蛍光(F6)によるシグナルが含まれうる。
・増強電場リファレンス領域(Q)
第1実施形態の増強電場リファレンス領域(Q)は、少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜と光検出器の間に配置された、次に述べるような蛍光色素層32とにより構成される。一方、通常は金属薄膜10上にアナライトを捕捉するための固定化リガンド20を含む設けられない。それ以外は、領域(Q)は領域(A)と同様の構成を有する。領域(P)の金属薄膜は領域(A)の金属薄膜と同じ工程で形成されたものである。
領域(Q)の蛍光色素層32は、領域(P)の蛍光色素層31と異なり、厚みの少なくとも一部(L1)は、金属薄膜10の表面からエバネッセント波(Ee)およびプラズモン散乱光中の励起光波長成分(Et)の両方が到達する距離にあり、残りの厚みの部分(L2)は、金属薄膜10の表面からエバネッセント波(Ee)が到達せず、プラズモン散乱光中の励起光波長成分(Et)のみが到達する距離にあるようにする。蛍光色素層32の厚みすべてが上記L1に該当し、L2に該当する厚みの部分がないような態様であってもよい。そのためには、領域(Q)の蛍光色素層32を金属薄膜上に積層させるようにすることが好適である。たとえば、蛍光色素層32を金属薄膜の直上に積層させてもよい。また、領域(A)には、金属消光を防止するための誘電体からなるスペーサ層が金属薄膜上に形成されていてもよいが、領域(Q)にもそれと同様のスペーサ層を形成し、蛍光色素層32をそのスペーサ層上に積層させるようにしてもよい。
領域(Q)では、領域(A)におけるシグナル(Sa)の測定(および領域(P)にお
けるシグナル(Sp)の測定)と同様の条件で、すなわち、通常はアナライトも標識リガ
ンドも含まない液体で流路を満たした状態で、標識リガンドの蛍光色素の励起光を所定の入射角で金属薄膜裏面に照射し、シグナル(Sq)を測定する。このシグナル(Sq)には、プラズモン散乱光中の標識リガンドが発するものと同じ蛍光波長成分(Ft)である蛍
光(F4)、蛍光色素層32のL1の厚みの部分が増強されたエバネッセント波(非伝播
光)(Ee)により発する蛍光(F7)、および蛍光色素層32のL1+L2(=L)の厚みの部分がプラズモン散乱光(伝播光)の励起光波長成分(Et)により発する蛍光(F8)が含まれうる。
・シグナル(Sa)の補正
(1)散乱係数(k1)の算出
入射光のうちプラズモン散乱光になるものの割合を示す「散乱係数(k1)」は、シグナル(Sp)の測定値より、次のようにして求めることができる。
領域(P)で測定されたシグナル(Sp)を、下記式で表すことができるものとみなす

[式1]
p≒F6
=E×d1×k1×r×α×L×φ×z×f
E:入射光子数(金属薄膜裏面に照射した励起光の光子数)
d1:伝播光(プラズモン散乱光等)についての電場増強度
k1:散乱係数(入射光のうちプラズモン散乱光になるものの割合)
r:受光効率(金属薄膜から発せられた光のうち蛍光色素層に受光されるものの割合)
α:吸収係数
L:蛍光色素層の厚さ
φ:蛍光色素の量子収率
z:集光効率
f:フィルタ透過率
プラズモン散乱光は、プラズモン共鳴により電場増強されない(電場増強度d1=1)伝播光であり、E×d1×k1が蛍光F6に関する「励起光子数」となる。E[photon/sec]は光源から照射される励起光によって決定される、すなわち、励起光の出力[J/sec]を、光子1つあたりのエネルギーhν=hc/λ[J](h=プランク定数、ν=振動数
、c=光速度定数、λ=波長)で除することにより求められる値である。rは、金属薄膜と蛍光色素層との距離などによって決定される。αは、蛍光色素層の蛍光色素のモル濃度(C)および蛍光色素層のモル吸光係数(ε)に比例し、たとえばC×εにさらに所定の定数(2.3)をかけた値とみなすことができる。φは蛍光色素層に用いる蛍光色素の種類によって決定される。zおよびfは測定装置によって変動する値であり、光源から光検出器へ直接励起光を入射するなどして、別途測定しておくことが可能である。そして、下記式1’に各変数の値およびシグナル(Sp)の測定値を代入することにより、散乱係数
k1を算出することができる。
[式1’]
k1≒Sp/(E×d1×r×α×L×φ×z×f)
なお、シグナル(Sp)の測定値は単位a.u.を用いて表されることもあるが、光検出器
で受光した光子数(photon/sec)ないしカウント数(counts)との間で換算可能である。換算率は光検出器によって調整されるが、たとえば後記実施例で用いた光検出器(測定装置)では、1a.u.=38 photon/sec、1 count=7.8 photon/secとして換算される。
(2)プラズモン係数(k2)の算出
入射光のうちエバネッセント波になるものの割合を示す「プラズモン係数(k2)」は、シグナル(Sq)の測定値および前述した散乱係数(k1)より、次のようにして求め
ることができる。
領域(Q)で測定されたシグナル(Sq)を、下記式で表すことができるものとみなす

[式2]
q≒F7+F8
=[E×d2×k2×r×α×L1×φ×z×f]
+[E×d1×k1×r×α×(L1+L2)×φ×z×f]
d2:非伝播光(エバネッセント波)についての電場増強度
k2:プラズモン係数(入射光のうちエバネッセント波になるものの割合)
L1:蛍光色素層31のうち、非伝播光であるプラズモン共鳴により増強されたエバネッセント波と、伝播光であるプラズモン散乱光の両方が到達する部分の厚み
L2:蛍光色素層31のうち、伝播光であるプラズモン散乱光のみが到達し、非伝播光であるプラズモン共鳴により増強されたエバネッセント波が到達しない部分の厚み
式2におけるE,d1,r,α,φ,z,fの定義は式9と同じである。
エバネッセント波は、プラズモン共鳴により電場増強される(電場増強度d2>1)非伝播光であり、E×d2×k2が蛍光F7に関する「励起光子数」となる。d2は、金属
薄膜の厚さや反応層および必要に応じてその下に積層されている誘電体部材(スペーサ層)の屈折率から求めることが可能である。
典型的な態様においては(後記実施例参照)、L2が0、すなわちL1=Lとなるような厚みでもって、蛍光色素層(および当該蛍光色素層と金属薄膜との中間に形成されるその他の層)が形成される。このような態様によらない場合、L1を別途測定結果に基づいて決定し、L2を、蛍光色素層31の厚さLから上記L1を引いた値とする(L2=L−L1)ことも可能である。また、蛍光色素層が金属薄膜の上面に直接積層される場合あるいはそれらの距離が十分に近い場合(たとえばL1=Lとなるような距離の場合)には、蛍光色素層から発せられたプラズモン散乱光は全て蛍光色素層に受光されるとみなし、r=1とする(式2にrを用いないようにする)ことができる。
領域(P)の蛍光色素層31と同様の素材で領域(Q)の蛍光色素層32を形成するようにすれば、式2中のαおよびφの値は、式1中のそれらと共通化することができる。また、シグナル(Sp)および(Sq)を同一条件、同一装置で測定すれば、式2中のE、zおよびfの値も、式1中のそれらと共通化することができる。そして、下記式2’に各変数および式1から算出された散乱係数k1の値、ならびにシグナル(Sq)の測定値を代
入することにより、プラズモン係数k2を算出することができる。
[式2’]
k2≒[Sq−[E×d1×k1×r×α×(L1+L2)×φ×z×f]]
/[E×d2×r×α×L1×φ×z×f]
(3)補正されたシグナル(Sa′)の算出
シグナル(Sa)は、前述した散乱係数(k1)およびプラズモン係数(k2)に基づ
いて、次のようにして補正することができる。
領域(A)で測定されたシグナル(Sa)を、下記式で表すことができるものとみなす

[式3]
a≒F1+F2
≒E×[(k2×d2)+(k1×d1)]×Cx×ε×φ×z×f
Cx:センサ表面に補足された蛍光色素の物質量(モル数)
なお、領域(A)のセンサ表面に補足されたCxモルの蛍光色素はすべて、エバネッセント波が到達する距離の範囲内にあるものとする。
式3におけるE,k2,d2,k1,d1,ε,φ,z,fの定義は式1または式2と同じである。E,d2,d1,ε,φ,z,fは式1または2と共通化することが可能であり、k1は領域(P)におけるシグナル(Sp)の測定から式1により求められ、k2
は領域(Q)におけるシグナル(Sq)の測定から式2により求められる。
補正されたシグナル(Sa′)とは、プラズモン散乱光中の励起光波長成分(伝播光)
(Et)により発する蛍光(F2)の影響を排除したシグナル、すなわち、プラズモン散乱光が発生せず、入射光すべてがプラズモン共鳴により増強されたエバネッセント波に変換されたと仮定したときに得られるシグナルをいい、そのような補正されたシグナル(Sa
′)を、下記式で表すことができるものとみなす。
[式4]
a′=Sa×(k1+k2)/k2
各サンプルについてこのような式により補正されたシグナル(Sa′)を用いることに
より、センサごとに程度の異なるプラズモン散乱光に起因するノイズの影響を排除した上で、各サンプルに含まれるアナライトの定量やサンプル間の公正な対比を行うことが可能となる。
なお、散乱係数(k1)とプラズモン係数(k2)の和は、理論的には1になる。したがって、領域(P)におけるシグナル(Sp)の測定から散乱係数k1を求めたのち、1
−k1の値をk2として用いることもできなくはないが、実用上は、領域(Q)におけるシグナル(Sq)の測定結果を用いてプラズモン係数k2を求めることが望ましい。通常
、領域(Q)は、シグナル(Sq)がシグナル(Sa)よりもかなり大きい絶対的な一定の強度を確保できるように設計されるが、もしもシグナル(Sq)が通常想定される範囲よ
りも低い場合、測定条件(入射角度、入射光量、金属薄膜の膜厚など)に何らかの問題がある可能性があると判断する、という利用の仕方もできるためである。シグナル(Sq
が通常想定される範囲内であれば、シグナル(Sa)が小さくても、それは測定系の異常
に起因するものではなく、センサ表面に補足された蛍光色素の物質量を反映したものだといえるため、シグナル(Sa)の信頼性を高めることができる。
[第2実施形態]
図2は、本発明の第2の実施形態を表す模式図である。この第2実施形態の表面プラズモン共鳴センサには、第1実施形態と同様の前記測定領域(A)、前記プラズモン散乱リファレンス領域(P)および増強電場リファレンス領域(Q)に加えて、さらにアッセイリファレンス領域(R)が設置される。この第2実施形態は、より高精度の測定とするために、第1実施形態では扱わなかった蛍光(F3)および(F4)の影響をも排除する場合の方法として適している。所望により、蛍光(F3)または(F4)のどちらか一方の影響を排除するように調整することも可能である。
・測定領域(A)
第2実施形態の測定領域(A)は、前記第1実施形態の領域(A)と同様であるため、ここでの説明は省略する。
・プラズモン散乱リファレンス領域(P)
第2実施形態のプラズモン散乱リファレンス領域(P)は、前記第1実施形態の領域(P)と同様であるため、ここでの説明は省略する。
・増強電場リファレンス領域(Q)
第2実施形態の増強電場リファレンス領域(Q)は、前記第1実施形態の領域(Q)と同様であるため、ここでの説明は省略する。
・アッセイリファレンス領域(R)
第2実施形態のアッセイリファレンス領域(R)は、領域(A)と同様の構成を有する。すなわち、金属薄膜10上にはアナライト22を捕捉するための固定化リガンド20が設けられ、センサ表面は通常ブロッキング処理される。
領域(R)では、まず、アナライトも標識リガンドも含まない液体(たとえば試料液や測定液を調製するために用いられる溶媒ないし緩衝液単独)を送液し、流路をこれで満たした状態で測定すること以外は領域(A)におけるシグナル(Sa)の測定と同条件で、
シグナル(Sr1)を測定する。上記シグナル(Sr1)には、プラズモン散乱光中の標識抗体が発するものと同じ蛍光波長成分(伝播光)(Ft)である蛍光(F4)によるシグナルのみが含まれうる。
次いで、領域(A)で用いたものと同じ標識リガンド溶液を同条件で送液し、これを流下させた後、領域(A)におけるシグナル(Sa)の測定と同条件(流路を満たす液体、
励起光等について)で、シグナル(Sr2)を測定する。このとき、領域(R)の流路側壁および天板30には、標識リガンド溶液を送液したときに非特異的に結合した標識リガンド21が残留しうる。したがって、上記シグナル(Sr2)には、流路側壁および天板30に非特異的に結合した標識リガンド21がプラズモン散乱光の励起光波長成分(Et)に
より発する蛍光(F3)、およびプラズモン散乱光中の蛍光波長成分(Ft)である蛍光(F4)それぞれによるシグナルが含まれうる。
なお、蛍光(F3)の影響を考慮する必要がない場合には、上記シグナル(Sr2)を測
定するステップを省略することも可能である。
・シグナル(Sa)の補正
(1)F3およびF4の算出
領域(R)で測定されたシグナル(Sr1)をF4とみなし、シグナル(Sr2)をF3+F4とみなす。なお、Sr1−Sr2をF3とみなすことができる。
(2)プラズモン散乱係数の算出
領域(P)で測定されたシグナル(Sp)を、下記式で表すことができるものとみなす

[式5]
p=F4+F6
=Sr1+F6
式5中、F6に関する部分の説明は、第1実施形態の式1と同様である。したがって、
式1において、Spの代わりにSp−Sr1を用い、それ以外は同様に計算するようにすれば、より精密に散乱係数k1を算出することができる。
(3)プラズモン係数の算出
領域(Q)で測定されたシグナル(Sq)を、下記式で表すことができるものとみなす

[式6]
q=F4+F7+F8
=Sr1+F7+F8
式6中、F7およびF8に関する部分の説明は、第1実施形態の式2と同様である。したがって、式2において、Sqの代わりにSq−Sr1を用い、またk1として上記式5に基づくより精密な値を用い、それ以外は同様に計算するようにすれば、より精密にプラズモン係数k2を算出することができる。
(4)補正されたシグナル(Sa")の算出
領域(A)で測定されたシグナル(Sa)を、下記式で表すことができるものとみなす

[式7]
a=F1+F2+F3+F4
=F1+F2+Sr2
式7中、F1およびF2に関する部分の説明は、第1実施形態の式4と同様である。したがって、式4において、Saの代わりにSa−Sr2を用い、またk1およびk2としてそれぞれ上記式5および6に基づくより精密な値を用い、それ以外は同様に計算するようにすれば、より精密に補正されたシグナル(Sa")を算出することができる。
[従来の形態]
本発明の方法との対比のため、従来の方法によってS/N比を測定する態様を以下に示す。図3は、そのような従来法が適用される表面プラズモン共鳴センサの形態の一例を表す模式図である。当該表面プラズモン共鳴センサには、ともに本発明について上述した測定領域(A)と同様の構成を有する、測定領域(A)およびアッセイリファレンス領域(B)が併設される。
領域(A)では、本発明の測定領域(A)におけるシグナルの測定と同様、まず試料を送液し、次いで標識リガンド溶液を送液し、これを流下させた後、標識リガンドの蛍光色素の励起光を所定の入射角で金属薄膜裏面に照射し、光検出器でシグナル(Sa)を測定
する。このシグナル(Sa)には、前述のような蛍光(F1)、(F2)、(F3)および(F4)によるシグナルが含まれうる。
一方、領域(B)では、試料を送液することなく、標識リガンド溶液を送液し、あとは領域(A)と同様、これを流下させた後、標識リガンドの蛍光色素の励起光を所定の入射角で金属薄膜裏面に照射し、光検出器でシグナル(Sb)を測定する。このシグナル(Sb)には、シグナル(Sa)に関する4つの蛍光のうち、試料中のアナライトがリガンドに
補足されることにより発生する蛍光(F1)および(F2)によるシグナルは含まれず、蛍光(F3)および(F4)によるシグナルが含まれうる。
従来の方法では、領域(A)で測定されたシグナル(Sa)の値を領域(B)で測定さ
れたシグナル(Sb)の値で除して得られた値(Sa/Sb)をS/N比とする。そして、
アナライトの濃度が既知の標準試料から作成された検量線に基づいて、上記S/N比からサンプルのアナライトの濃度を決定する。
[式1] S/N=Sa/Sb
このような方法は、シグナル(Sa)に含まれる蛍光のうち、シグナル(Sb)にも含まれる、流路側壁・天板に非特異的に結合した標識抗体がプラズモン散乱光の励起光波長成
分により発する蛍光(F3)およびプラズモン散乱光中の蛍光波長成分である蛍光(F4)をノイズとして排除しうるが、センサ表面に捕捉されたアナライトに結合した標識抗体が増強されたエバネッセント波により発する蛍光(F1)およびプラズモン散乱光の励起光
波長成分により発する蛍光(F2)の両方をシグナルとして捉えてしまう。すなわち、シ
グナル(Sa)の測定値をそのままアナライトの定量に用いるような方法よりは精度が改
善されているが、センサごとに変動しうるプラズモン散乱光に起因する蛍光(F2)の影
響を十分に排除できないといえる。さらに、前述したような、領域(Q)で測定されるシグナル(Sq)に基づく測定系の異常の判断ということも行えない。
(蛍光色素層)
前述のようなプラズモン散乱リファレンス領域(P)および増強電場リファレンス領域(Q)には、蛍光色素を含有する層すなわち蛍光色素層が配置される。この蛍光色素層は、センサ表面と光検出器の間に、センサ表面(床面)と略平行に設置されたものであれば、その態様は特に限定されるものではないが、たとえば、以下に挙げるような態様をとり得る。
(1)センサ表面と光検出器の間にセンサ表面(床面)に対向するよう設置された部材を、蛍光色素を含有する光透過性材料で形成する。
蛍光色素を含有する光透過性材料の調製方法は特に限定されるものではないが、たとえば、通常の天板等を形成するために用いられる光透過性樹脂(ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリビニルブチラールなど)と蛍光色素とを溶媒中(ケトン類、芳香族類、エステル類、含ハロゲン系炭化水素類など)で混合することにより調製することができる。なお、上で挙げた樹脂はタンパク質等が非特異的に吸着しにくいという利点も有する。
(2)センサ表面またはそれと光検出器の間にセンサ表面(床面)に対向するよう設置された部材に蛍光色素を含有する薄層を積層する。
たとえば、上記部材がヒドロキシ基を有する誘電体(ポリマー、または酸化チタン、二酸化ケイ素など)である場合、シランカップリング剤を上記部材に反応させ、必要であればカルボキシメチルデキストラン等の蛍光色素を担持できる分子を介して、蛍光色素をアミンカップリング法等の公知の手法に従って結合させる方法や、上記部材に蛍光色素を蒸着させる方法により、蛍光色素を含有する(蛍光色素からなる)薄層を積層させることができる。
また、あらかじめ蛍光色素を蒸着させたり配合したりした材料で薄層(たとえば樹脂、ゼラチン等を用いたプレート、シートないしフィルム)を調製しておき、これを上記部材と積層するような方法でもよい。これらの方法では、上記部材の内側(流体と接触する側)、外側(流体と接触しない側)のいずれに積層させてもよいが、外側にすれば蛍光色素が流体中に溶出するおそれがない。
プラズモン散乱リファレンス領域領域(P)に設けられる蛍光色素層31の典型的な態様としては、チップ基板とともにセンサチップを構成する「流路天板」を「センサ表面と光検出器の間にセンサ表面(床面)に対向するよう設置された部材」として用いること、特に、蛍光色素を含有しない光透過性材料で形成した流路天板に積層された蛍光色素を含有する薄層である態様が挙げられる。なお、そのような部材はチップ基板と一体化されている必要はなく、チップ基板とは分離した部材であってもよい。また、センサチップの天板であれば、少なくとも領域(P)の上部に位置する部分について、上記のような態様が適用されていればよい。
一方、増強電場リファレンス領域(Q)に設けられる蛍光色素層32の典型的な態様としては、金属薄膜上に、蛍光色素を含有する光透過性材料で形成された部材、または蛍光色素を含有する薄層を積層したものが挙げられる。ここで、金属薄膜上に積層された蛍光色素層32は、金属薄膜の直上に積層されていてもよいし、金属薄膜上に形成されたスペーサ層ないしSAMの上に積層されていてもよい。このような蛍光色素層32であれば、たとえば厚み全部がエバネッセント波が到達する距離の範囲となるようにすることも比較的容易に行える。
蛍光色素層の厚さ、樹脂等への蛍光色素の配合量などは、上述したような測定方法が行える範囲で適切に調整すればよい。
なお、蛍光色素層を調製する際には、蛍光色素の経時安定剤を向上させるために酸化防止剤を併用してもよい。酸化防止剤としては、例えば、ペンタエリスリチルテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)]プロピオネート、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2’−ジオキシ−3,3’−ジ−t−ブチル−5,5’−ジメチルジフェニルメタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンなどが挙げられる。
(蛍光色素)
「蛍光色素」は、所定の励起光を照射する、または電界効果を利用して励起することによって蛍光を発光する物質の総称である。本発明における、蛍光色素層31・32に含まれる蛍光色素、および標識リガンド21に結合してアナライトを蛍光標識するための蛍光色素としては、公知のSPFS等または蛍光標識法等で用いられている、公知の各種の蛍光色素を用いることができる。蛍光色素層31・32の蛍光色素と標識リガンド21の蛍光色素は、同一であっても、励起波長は同じで発光波長が異なるものであってもよい。
本発明で用いることのできる蛍光色素としては、たとえば、フルオレセイン・ファミリーの蛍光色素(Integrated DNA Technologies社製)、ポリハロフルオレセイン・ファミ
リーの蛍光色素(アプライドバイオシステムズジャパン(株)製)、ヘキサクロロフルオレセイン・ファミリーの蛍光色素(アプライドバイオシステムズジャパン(株)製)、クマリン・ファミリーの蛍光色素(インビトロジェン(株)製)、ローダミン・ファミリーの蛍光色素(GEヘルスケア バイオサイエンス(株)製)、シアニン・ファミリーの蛍光色素、インドカルボシアニン・ファミリーの蛍光色素、オキサジン・ファミリーの蛍光色素、チアジン・ファミリーの蛍光色素、スクアライン・ファミリーの蛍光色素、キレート化ランタニド・ファミリーの蛍光色素、BODIPY(登録商標)・ファミリーの蛍光色素(インビトロジェン(株)製)、ナフタレンスルホン酸・ファミリーの蛍光色素、ピレン・ファミリーの蛍光色素、トリフェニルメタン・ファミリーの蛍光色素、Alexa Fluor(登録商標)色素シリーズ(インビトロジェン(株)製)などが挙げられる。これらファミリーに含まれる代表的な蛍光色素の吸収波長(nm)および発光波長(nm)を表1に示す。
Figure 0005565125
また、上記のような有機蛍光色素以外に、Eu、Tb等の希土類錯体系の蛍光色素を用いることもできる。希土類錯体は、一般的に励起波長(310〜340nm程度)と発光波長(Eu錯体で615nm付近、Tb錯体で545nm付近)との波長差が大きく、蛍光寿命が数百マイクロ秒以上と長い特徴がある。市販されている希土類錯体系の蛍光色素の一例としては、ATBTA−Eu3+が挙げられる。
さらに、青色蛍光タンパク質(BFP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、赤色蛍光タンパク質(DsRed)またはAllophycocyanin(APC;LyoFlogen(登録商標))などに代表される蛍光タンパク質、ラテックスやシリカなどの蛍光微粒子なども、蛍光色素に含まれる。
なお、SPFS−LPFS測定系においては、LPFSに関与する金属コロイドによる吸光の少ない波長領域に最大蛍光波長を有する蛍光色素を、標識リガンドに用いることが望ましい。たとえば金コロイドを用いる場合には、金コロイドによる吸光による影響を最小限に抑えるため、最大蛍光波長が600nm以上である蛍光色素、たとえばCy5、Alexa Fluor(登録商標)647などの近赤外領域に最大蛍光波長を有する蛍光色素を用いることが望ましい。このような近赤外領域に最大蛍光波長を有する蛍光色素を用いることは、血液中の血球成分由来の鉄による吸光の影響を最小限に抑えることができる点で、検体として血液を用いる場合においても有用である。一方、銀コロイドを用いる場合には、最大蛍光波長が400nm以上である蛍光色素を用いることが望ましい。
− 表面プラズモン共鳴センサ −
表面プラズモン共鳴センサは、少なくとも誘電体部材(プリズムまたは透明平面基板)と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜上に形成された固定化リガンドを含む層(反応層)とにより構成される、SPFS等によるシグナルを測定するため
の構造いう。便宜上、表面プラズモン共鳴センサの金属薄膜、反応層等が積層される方向を「上」または「表」、その反対の方向を「下」または「裏」と称することがある。
金属薄膜等は、プリズムの水平面に直接形成されていてもよいが、多数のサンプルを分析するための利便性などを考慮すると、プリズムの水平面上に着脱可能な透明平面基板の一方の表面に形成されていることが望ましい。そのような金属薄膜等が形成された透明平面基板を「センサ基板」と称する。また、反応層は金属薄膜の表面に直接形成されていてもよいが、必要に応じて、金属薄膜上に誘電体からなるスペーサ層および/またはSAMを形成し、その上に形成するようにしてもよい。
センサ基板は、SPFS等の測定に用いられる各種の流体(試料液、標識リガンド溶液、測定液など)を貯留したり各領域を連通して送液が行えるようにしたりするための「流路」を形成する部材(流路の側壁を形成するシート、天板等)と組み合わせて用いられる。これらはしばしば一体化され、チップ状の構造体(「センサチップ」と称する。)の態様をとる。また、表面プラズモン共鳴センサないしセンサチップには、流体を導入または排出するための開口が設けられ、ポンプや、たとえば柔軟な部材(シリコーンゴム等)で形成された断面が略円形のチューブなどを用いて、外部と流体を行き来させる。送液の条件(流速、時間、温度、検体や標識リガンドの濃度等)は、適宜調整することができる。
表面プラズモン共鳴センサないしセンサチップは、小規模ロット(実験室レベル)では、たとえば、あらかじめ金属薄膜等が形成された表面プラズモン共鳴センサないしセンサ基板を作製しておき、その金属薄膜等が形成されている側の表面上に、一定の厚さ(流路の高さ)を有する、中央部に任意の形状および大きさを有する穴が開けられたシリコーンゴム製シートまたはOリングを載せて流路の側面構造を形成し、次いでその上に送液導入口及び送液排出口を設けてある光透過性の天板を載せて流路の天井面を形成した後、これらを圧着してビス等の留め具により固定することによって作製することができる。また、工業的に製造される大ロット(工場レベル)では、たとえば、透明平面基板の所定の領域に金属薄膜、反応層等を形成してセンサ基板とし、一方でプラスチックの成形加工やフォトリソグラフィ等により微細な凹凸を形成して天板・側壁部材とし、これらを組み合わせることによりセンサチップを作製することができる。
(透明平面基板)
センサチップ(センサ基板)に用いられる透明平面基板は、ガラス製や、ポリカーボネート(PC)、シクロオレフィンポリマー(COP)などのプラスチック製のもの、好ましくはd線(588nm)における屈折率〔nd〕が1.40〜2.20の範囲にある材
質のものを用いることができる。厚さは、たとえば0.01〜10mmの範囲で調整することができる。また、金属薄膜を形成する前に、当面平面基板の表面は酸またはプラズマによる洗浄処理がなされていることが好ましい。
(金属薄膜)
表面プラズモン共鳴センサの金属薄膜は、酸化に対して安定であり、かつ表面プラズモンによる電場増強効果が大きい、金、銀、アルミニウム、銅、および白金からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属からなる(合金の形態であってもよい)ことが好ましく、特に金からなることが好ましい。透明平面基板としてガラス製平面基板を用いる場合には、ガラスと上記金属薄膜とをより強固に接着するため、あらかじめクロム、ニッケルクロム合金またはチタンの薄膜を形成することが好ましい。
透明平面基板上に金属薄膜を形成する方法としては、例えば、スパッタリング法、蒸着法(抵抗加熱蒸着法、電子線蒸着法等)、電解メッキ、無電解メッキ法などが挙げられる。薄膜形成条件の調整が容易なことから、スパッタリング法または蒸着法によりクロムの
薄膜および金属薄膜を形成することが好ましい。
表面プラズモンが発生し易いよう、金、銀、アルミニウム、銅、白金、またはそれらの合金からなる金属薄膜の厚さはそれぞれ5〜500nmが好ましく、クロム薄膜の厚さは1〜20nmが好ましい。電場増強効果の観点からは、金:20〜70nm、銀:20〜70nm、アルミニウム:10〜50nm、銅:20〜70nm、白金:20〜70nm、およびそれらの合金:10〜70nmがより好ましく、クロム薄膜の厚さは1〜3nmがより好ましい。
(スペーサ層)
表面プラズモン共鳴センサには、必要に応じて、金属薄膜による蛍光色素の金属消光を防止するため、金属薄膜と反応層(またはSAM)の間に誘電体からなるスペーサ層を形成してもよい。
誘電体としては、光学的に透明な各種無機物や、天然または合成ポリマーを用いることができる。なかでも、化学的安定性、製造安定性および光学的透明性に優れていることから、二酸化ケイ素(SiO2)または二酸化チタン(TiO2)を用いることが好ましい。
スペーサ層の厚さは、通常10nm〜1mmであり、共鳴角安定性の観点からは、好ましくは30nm以下、より好ましくは10〜20nmである。一方、電場増強効果の観点から、好ましくは200nm〜1mmであり、さらに電場増強効果の安定性から、400nm〜1,600nmがより好ましい。また、SPFS−LPFS測定系においては、センサ表面(金属薄膜)と金属コロイド粒子との間に生じる電場をより効果的に増強させるため、スペーサ層の厚さは10〜100nmであることが望ましい。
誘電体からなるスペーサ層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、電子線蒸着法、熱蒸着法、ポリシラザン等の材料を用いた化学反応による形成方法、またはスピンコータによる塗布などが挙げられる。
(SAM)
表面プラズモン共鳴センサには、必要に応じて、金属薄膜(またはスペーサー層)と反応層の間にSAM(Self-Assembled Monolayer:自己組織化単分子膜)を形成してもよい。
SAMを構成する分子としては、分子の一方の末端に金属薄膜等と結合可能な官能基(シラノール基、チオール基等)を、もう一方の末端に反応層を構成する分子と結合可能な反応性官能基(アミノ基、カルボキシル基、グリシジル基等)を有する化合物が用いられる。このような化合物はシランカップリング剤やSAM形成試薬として容易に入手できる。たとえば、炭素原子数4〜20程度のカルボキシアルカンチオール(10−カルボキシ−1−デカンチオールなど)は、光学的な影響が少ない、つまり透明性が高く、屈折率が低く、膜厚が薄いSAMを形成することができるため好適である。SAM構成分子の溶液(エタノール溶液等)を金属薄膜等に接触させ、当該分子の一方の官能基を金属薄膜等に結合させることにより、SAMを形成することができる。
− 測定装置 −
本発明の表面プラズモン共鳴センサ(特にセンサチップの態様をとるもの)は、従来の表面プラズモン共鳴センサと同様、公知のSPFS等用の測定装置に装着して使用することができる。この測定装置は、基本的に光源、プリズム、光検出器などを備え、通常はさらに集光レンズ、カットフィルタなどを備える。各種の流体を所定の流速、タイミング等で所定の領域に送液するための手段(送液ポンプなど)や、各種の操作や情報処理を制御
するコンピュータなどが上記測定装置に一体化されていてもよい。
特に、本発明の測定方法が、測定領域(A)、プラズモン散乱リファレンス領域(P)、増強電場リファレンス領域(Q)、第2実施態様であればさらにアッセイリファレンス領域(R)を全て備えた一枚のセンサチップを用いて行われる場合、上記測定装置は、それら複数の領域に同時にレーザー光を照射するための手段(同一の光源から発せられたレーザー光を二等分以上に分割することのできるビームスプリッタなど)をさらに備えることが望ましい。また、光検出器で測定されたシグナル(Sa)、(Sp)、(Sq)、(Sr)等を記憶し、前述のような計算式により補正されたシグナル(Sa′)を算出し、検量
線に基づいて最終的に各サンプルのアナライトの濃度を決定してその情報も記憶するといった情報処理手段を備えていてもよい。さらに、検出すべき蛍光と異なる波長成分を有するノイズ光、たとえばプラズモン散乱光のうちのそのような波長成分、外光(装置外の照明光)、励起光(励起光の透過成分)、迷光(各所での励起光の散乱成分)、各種部材が発する自家蛍光などを除去するためのカットフィルタを備えていることが好ましい。
− 測定方法 −
・検体/試料溶液
アナライトを含むまたは含んでいる可能性のある、SPFS等に供される物質を「検体」と称す。たとえば、ヒト、ヒト以外のほ乳類(モデル動物、ペット等)、その他の動物から採取される血液(血清・血漿)、尿、鼻孔液、唾液、便、体腔液(髄液、腹水、胸水等)などが検体として挙げられる。分析の際、検体は必要に応じて、純水、生理食塩水、緩衝液、試薬溶液などの各種の溶媒と混合して用いてもよい。このような検体の混合液または検体そのもの、あるいは所定の目的のために調製したアナライトを含有する溶液など、SPFS等によるシグナルを測定するために表面プラズモン共鳴センサの所定の領域に送液される流体(溶液、懸濁液、ゾル、その他流動性を有する物質を含む。)をいずれも「試料」と総称する。
なお、「標識リガンド溶液」を調製する際にも上記溶媒を用いると好都合である。また、SPFS等においてシグナルを測定する際、流路は通常、アナライトも標識リガンドも含まない液体で満たされた状態にされるが、そのような液体としては、試料液の調製に用いられる上記溶媒を単独で用いると好都合である。
・アナライト
SPFS等により定量ないし検出すべき対象となる物質を「アナライト」と称する。センサ表面に捕捉することのできる物体であれば特に限定されることなくアナライトとなり得るが、代表的なアナライトとしては、たとえば腫瘍マーカーとなるような、タンパク質(ポリペプチド、オリゴペプチド等を含む)またはその複合体が挙げられる。また、リガンドに認識される部位(エピトープ等)を表面に有する細胞やウイルス等もアナライトとなり得る。さらに、核酸(一本鎖または二本鎖の、DNA、RNA、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、PNA(ペプチド核酸)等を含む)、糖質(オリゴ糖、多糖類、糖鎖等を含む)、脂質などのその他の分子も、必要に応じてビオチン化等の処理をした上で、アナライトとすることも可能である。
・リガンド
アナライトと特異的に結合し得る分子を「リガンド」と称する。特に、センサ表面に固定化された、アナライトをセンサ表面に捕捉するためのリガンドを「固定化リガンド」(リガンドが抗体であれば「固定化抗体」)、アナライトを標識するために液中に存在する、蛍光色素と結合したリガンドを「標識リガンド」(リガンドが抗体であれば「標識抗体」)と称する。なお、固定化リガンドと標識リガンドのリガンド部分は、同じでもよいし、異なっていてもよい。ただし、固定化リガンドがポリクローナル抗体である場合、標識
リガンドはモノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であってもよいが、固定化リガンドがモノクローナル抗体である場合、標識リガンドはその固定化リガンドが認識しないエピトープを認識するモノクローナル抗体であるか、またはポリクローナル抗体であることが望ましい。
リガンドは捕捉しようとするアナライトに応じて適切なものを選択すればよく、アナライトの所定の部位と特異的に結合しうる抗体、受容体、その他の特定の分子(たとえばビオチン化したアナライトを捕捉するためのアビジン)などをリガンドとすることができる。
固定化リガンドをセンサ表面に設ける方法は特に限定されるものではないが、典型的には、固定化リガンドが有する官能基とSAM形成分子(シランカップリング剤等)が有する官能基とを、アミンカップリング法、チオールカップリング法、間接的捕捉法(キャプチャー法)等、公知の手法に従って結合させることにより、SAM形成分子を介して金属薄膜(またはスペーサ層)に固定化リガンドを連結するような方法が用いられる。たとえば、アミンカップリング法では、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩(EDC)などの水溶性カルボジイミド(WSC)とN−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)とを反応させてSAMのカルボキシル基を活性化(NHSを導入)した後、アミノ基を有するリガンドを反応させ、NHSを介してリガンドをSAMに結合させる。
なお、アナライトの非特異的吸着を防止するため、上記固定化リガンドをセンサ表面に固定化した後に、牛血清アルブミン(BSA)等のブロッキング剤によりセンサ表面、流路の側壁・天板等を処理することが好ましい。
一方、標識リガンドは、一般的な免疫染色法でも用いられているリガンドと蛍光色素との複合体(コンジュゲート)と同様にして作製することができる。たとえば、リガンドとアビジン(ストレプトアビジン等を含む)との複合体、および蛍光色素とビオチンとの複合体をそれぞれ作製し、これらを反応させることにより、アビジン/ビオチンを介してリガンドに蛍光色素が結合した複合体(1のアビジンに対し最大4のビオチンが結合しうる)が得られる。上述のようなビオチンとアビジンの反応以外にも、蛍光標識法で用いられている一次抗体−二次抗体の反応様式や、カルボキシル基とアミノ基、イソチオシアネートとアミノ基、スルホニルハライドとアミノ基、ヨードアセトアミドおよびチオール基などの反応を用いてもよい。
<標識抗体:「Alexa Fluor 647」標識抗AFPモノクローナル抗体の調製>
抗αフェトプロテイン(AFP)モノクローナル抗体(1D5、2.5mg/mL、(
株)日本医学臨床検査研究所製)を、市販のビオチン化キット((株)同仁化学研究所製)
を用いてビオチン化した。手順は、該キットに添付のプロトコールに従った。
次に、得られたビオチン化抗AFPモノクローナル抗体の溶液と、「Alexa Fluor 647
」ストレプトアビジンコンジュゲート(Molecular Probes社製)の溶液とを混合し、4℃で60分間攪拌して反応させた。
最後に、未反応抗体および未反応酵素を除去するため、分子量カットフィルタ(日本ミリポア(株)製)を用いて反応物を精製し、Alexa Fluor 647標識抗AFPモノクローナル
抗体溶液を得た。得られた抗体溶液はタンパク定量後、4℃で保存した。
<基板の作製>
厚さ1mmのガラス製の透明平面基板「S-LAL 10」((株)オハラ製、屈折率〔nd〕=
1.72)を、プラズマドライクリーナー「PDC200」(ヤマト科学(株)製)でプラズマ洗浄した。プラズマ洗浄された基板の片面に、まずクロム薄膜をスパッタリング法により形成し、さらにその表面に金薄膜をスパッタリング法により形成した。このクロム薄膜の厚さは1〜3nm、金薄膜の厚さは44〜52nmであった。
次いで、上記工程により得られた基板を25mg/mLに調整した10−カルボキシ−1−デカンチオールのエタノール溶液10mLに24時間浸漬し、金薄膜の表面にSAMを形成した。この基板をエタノール溶液から取り出し、エタノールおよびイソプロパノールで順次洗浄した後、エアガンを用いて乾燥させた。
以上の工程を4反復行うことにより、金属薄膜、スペーサ層およびSAMが形成された(反応層は未形成の)基板A,B,C,Dを作製した。
<センサチップの作製>
上記のようにして作製された基板A,B,C,Dそれぞれについて、下記工程[1]によりセンサチップの構成とした後、下記工程[2]により測定領域(A)を、下記工程[3]によりプラズモン散乱リファレンス領域(P)を、下記工程[4]により増強電場リファレンス領域(Q)を作製し、それぞれセンサチップA,B,C,Dとした。
[1]センサチップの構成
基板の金属薄膜およびSAMが形成された側の面に、測定領域(A)、プラズモン散乱リファレンス領域(P)および増強電場リファレンス領域(Q)を形成するための、それぞれ流路長10mm、幅5mmの3個の穴があいた、厚さ0.5mmのポリジメチルシロキサン(PDMS)製シートを載せた。さらに、このPDMS製シートの周囲にシリコーンゴム製スペーサを配置した(このシリコーンゴム製スペーサは送液に触れない状態にある。)。このPDMS製シートおよびシリコーンゴム製スペーサの上に、上記領域(A)、(P)および(Q)それぞれの内側に位置するよう、送液導入用の穴(送液導入口)および送液排出用の穴(送液排出口)が形成されたポリメチルメタクリレート(PMMA)製天板を載せた。これらセンサ基板、PDMS製シート、およびPMMA製天板の積層物を外周部で圧着してビスで固定し、センサチップとした。
[2]領域(A)の作製
センサチップの領域(A)の送液導入口および送液排出口に、シリコーンゴム製のチューブおよびペリスタポンプを連結した(以下に記載する各種流体の送液および循環はすべて、同様のチューブおよびペリスタポンプを用いて行った)。
50mMのN−ヒドロキシコハク酸イミド(NHS)および100mMの水溶性カルボジイミド(WSC)を含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)5mLを送液して20分間循環させた後、抗AFPモノクローナル抗体(1D5、2.5mg/mL、(株)日本医学臨床検査研究所製)溶液2.5mLを送液して30分間循環することで、当該抗体をSAM
に固定化した。その後、1重量%の牛血清アルブミン(BSA)および1Mのアミノエタノールを含むPBSを30分間循環送液させ、ブロッキング処理とした。
[3]領域(P)の作製
以下の手順により、センサチップの天板の領域(P)が位置する部分の上面に、厚さ3μmの蛍光色素層を形成した。
丸底フラスコに湯浴を付し、酢酸エチル100gを加熱還流し、さらにステアリルメタクリレート20g、メチルメタクリレート50g及び2−アセトアセトキシエチルメタク
リレート30g、N,N′−アゾビスイソバレロニトリル0.1gを各々溶解した混合液を2時間かけて滴下し、同温度にて10時間反応させて樹脂R−1の酢酸エチル溶液を得た。この樹脂溶液R−1を1ml計量し、更に蛍光色素Cy5(蛍光色素)モノNHS体を同モルのラウリルアミンと反応させたアミド体(F−1)を20mM/ml含む酢酸エチル溶
液を1ml加え撹拌した。調製した溶液を、天板としてのポリメチルメタクリレート(PMMA)基板の一方の面の、上記所定の部位に、前記蛍光剤塗布液を乾燥膜厚が3μmになるようにスピンコーターで塗布し、乾燥温度100℃で5分間の乾燥を行い、蛍光色素層を形成した。
[4]領域(Q)の作製
以下の手順により、領域(Q)のSAMの表面に、厚さ100nmの蛍光色素層を形成した。
丸底フラスコに湯浴を付し、酢酸エチル100gを加熱還流し、さらにステアリルメタクリレート20g、メチルメタクリレート50g及び2−アセトアセトキシエチルメタクリレート30g、N,N′−アゾビスイソバレロニトリル0.1gを各々溶解した混合液を2時間かけて滴下し、同温度にて10時間反応させて樹脂R−1の酢酸エチル溶液を得た。この樹脂溶液R−1を1ml計量し、更に蛍光色素Cy5(蛍光色素)モノNHS体を同モルのラウリルアミンと反応させたアミド体(F−1)を20mM/ml含む酢酸エチル溶
液を1ml加え撹拌した。調製した溶液を、センサ基板のSAMが形成された面に、前記蛍光剤塗布液を乾燥膜厚が100nmになるようにスピンコーターで塗布し、乾燥温度100℃で5分間の乾燥を行い、蛍光色素層を形成した。
<シグナルの測定>
上記のようにして作製されたセンサチップA,B,C,Dそれぞれについて、下記工程[5]により測定領域(A)におけるシグナル(Sa)の測定を、下記工程[6]により
測定領域(P)におけるシグナル(Sp)の測定を、下記工程[7]により領域(Q)に
おけるシグナル(Sq)の測定を行った。
[5]シグナル(Sa)の測定
測定領域(A)に、まず、AFP(2.0mg/mL溶液、Acris Antibodies GmbH社
)が10ng/mLとなるようPBSバッファー(pH7.4)で希釈した溶液を、10μL/minにて20分間フローさせた。つづいて、前述のようにして調製した標識抗体:「Alexa Fluor 647」標識抗AFPモノクローナル抗体が2.5μg/mLとなるよう
1%BSA−PBSバッファー(pH7.4)で希釈した溶液を、10μL/minにて20分間フローさせた。洗浄工程として、0.005%Tween20を含んだTBS溶液(pH7.4)を10μL/minにて10分間フローさせた。その後、PBSバッファー(pH7.4)で流路を満たした状態にして、表面プラズモン共鳴センサの裏側からプリズムを経由してレーザ光(635nm、40μW)を照射し、センサ表面から発せられる蛍光量をCCDで測定した。この測定値をシグナル(Sa)とした。
[6]シグナル(Sp)の測定
領域(P)にPBSバッファー(pH7.4)を送液し、流路をこのバッファーで満たした状態にして、表面プラズモン共鳴センサの裏側からプリズムを経由してレーザ光(635nm、40μW)を照射し、センサ表面から発せられる蛍光量をCCDで測定した。この測定値をシグナル(Sp)とした。
[7]シグナル(Sq)の測定
領域(Q)にPBSバッファー(pH7.4)を送液し、流路をこのバッファーで満たした状態にして、表面プラズモン共鳴センサの裏側からプリズムを経由してレーザ光(6
35nm、40μW)を照射し、センサ表面から発せられる蛍光量をCCDで測定した。この測定値をシグナル(Sp)とした。
<k1およびk2ならびに補正されたシグナル(Sa′)の算出>
センサチップA,B,C,Dそれぞれについて、下記のようにして補正されたシグナル(Sa′)を算出した。
前記[式1’]に基づき、領域(P)で測定されたシグナル(Sp)の測定値から散乱
係数k1を算出した。次いで、前記[式2’]に基づき、このk1を用い、領域(Q)で測定されたシグナル(Sq)の測定値からプラズモン係数k2を算出した。そして、前記
[式4]に基づき、これらのk1およびk2を用い、領域(A)で測定されたシグナル(Sa)の測定値から、補正されたシグナル(Sa′)を算出した。
結果は表2−1〜2−4および表3に示す通りである。センサチップB,C,Dの、補正されたシグナル(Sa′)についての「基板A一致率」は、シグナル(Sa)の測定値についての「基板A一致率」よりも改善している。このような結果から、本発明により求められる補正されたシグナル(Sa′)の値を利用すれば、基板ごとに異なるプラズモン散
乱の影響を補正した、より精度の高いアナライトの定量が可能になることが示された。
Figure 0005565125
Figure 0005565125
Figure 0005565125
Figure 0005565125
Figure 0005565125
1:測定領域(A)
2:プラズモン散乱リファレンス領域(P)
3:増強電場リファレンス領域(Q)
4:アッセイリファレンス領域(R)
5:アッセイリファレンス領域(B)
10:金属薄膜
20:固定化リガンド(反応層)
21:標識リガンド
22:アナライト
30:天板
31:蛍光色素層(蛍光色素を含有する光透過性材料で形成された天板)
32:蛍光色素層

Claims (9)

  1. 少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜上に形成された固定化リガンドを含む層とにより構成された測定領域(A)に、まず試料を送液し、次いで標識リガンド溶液を送液し、これを流下させた後、標識リガンドの蛍光色素の励起光を所定の入射角で金属薄膜裏面に照射し、金属薄膜を透過した非伝播光であるエバネッセント波(Ee)により当該蛍光色素から発せられた蛍光シグナルを含むシグナル(Sa)を光検出器で測定する工程を含む、SPFS(表面プラズモン励起増強蛍光分光法)またはそれを利用した測定方法であって、
    上記シグナル(Sa)に含まれる、伝播光であるプラズモン散乱光中の励起光波長成分(Et)に起因する、少なくとも上記エバネッセント波(Ee)および上記プラズモン散乱光中の励起光波長成分(Et)の両方が到達する距離にあるアナライトに結合した標識リガンドが発する蛍光(F2)を含み、さらに上記エバネッセント波(Ee)が到達せず上記プラズモン散乱光中の励起光波長成分(Et)のみが到達する距離にあるアナライトに結合した標識リガンドが発する蛍光(F3)を含んでいてもよい蛍光シグナルを補正するためのステップ(T1)を含
    上記補正のためのステップ(T1)が、
    少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜と光検出器との間に、エバネッセント波(E e )が到達せずプラズモン散乱光中の励起光波長成分(E t )のみが到達するよう当該金属薄膜からの距離をあけて配置された蛍光色素層とにより構成されたプラズモン散乱リファレンス領域(P)において、前記測定領域(A)におけるシグナル(S a )の測定と同条件でシグナル(S p )を測定すること、
    少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜と光検出器との間に、厚みの少なくとも一部がエバネッセント波(E e )およびプラズモン散乱光中の励起光波長成分(E t )の両方が到達する距離にあるようにして配置された蛍光色素層とにより構成されたプラズモン散乱リファレンス領域(Q)において、前記測定領域(A)におけるシグナル(S a )の測定と同条件でシグナル(S q )を測定すること、
    上記シグナル(S p )の測定値より、入射光のうちプラズモン散乱光になるものの割合を示す散乱係数(k1)を求めること、
    上記シグナル(S q )の測定値および上記散乱係数(k1)より、入射光のうちエバネッセント波になるものの割合を示すプラズモン係数(k2)を求めること、ならびに
    上記散乱係数(k1)およびプラズモン係数(k2)に基づいて前記シグナル(S a )から補正されたシグナル(S a ′)を求めることを含むことを特徴とする、上記測定方法。
  2. さらに、前記シグナル(Sa)に含まれる、プラズモン散乱光中の蛍光波長成分(Ft)に起因する蛍光シグナルの補正のためのステップ(T2)を含むことを特徴とする、請求項1記載のSPFSまたはそれを利用した測定方法。
  3. さらに、前記シグナル(Sa)に含まれる、プラズモン散乱光中の蛍光波長成分(Ft)に起因する蛍光シグナルの補正のためのステップ(T2)を含み、
    上記補正のためのステップ(T2)が、
    前記測定領域(A)と同様の構成を有するアッセイリファレンス領域(R)に、アナライトも標識リガンドも含まない液体を送液し、流路をこれで満たした状態で測定すること以外は前記測定領域(A)におけるシグナル(Sa)の測定と同条件でシグナル(Sr1)を測定すること、
    上記アッセイリファレンス領域(R)に、前記測定領域(A)で用いたものと同じ標識リガンド溶液を送液し、流路をこれで満たした状態で測定すること以外は前記測定領域(A)におけるシグナル(Sa)の測定と同条件で、シグナル(Sr2)を測定すること、
    前記シグナル(Sp)の測定値から上記シグナル(Sr1)の測定値を引いた値より散乱係数(k1)を求めること、
    前記シグナル(Sq)の測定値から上記シグナル(Sr2)の測定値を引いた値および上記散乱係数(k1)よりプラズモン係数(k2)を求めること、ならびに
    上記散乱係数(k1)およびプラズモン係数(k2)に基づいて前記シグナル(Sa)から補正されたシグナル(Sa′)を求めることを含むことを特徴とする、請求項に記載のSPFSまたはそれを利用した測定方法。
  4. 前記シグナル(Sa′)が、下記式で表されることを特徴とする、請求項またはに記載のSPFSまたはそれを利用した測定方法。
    a′=Sa×(k1+k2)/k2
  5. 少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜上に形成された固定化リガンドを含む層とにより構成された測定領域(A)、
    少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜と光検出器の間に、エバネッセント波(Ee)が到達せずプラズモン散乱光中の励起光波長成分(Et)のみが到達するよう当該金属薄膜からの距離をあけて配置された蛍光色素層とにより構成されたプラズモン散乱リファレンス領域(P)、および
    少なくとも誘電体部材と、当該誘電体部材上に形成された金属薄膜と、当該金属薄膜と光検出器の間に、厚みの少なくとも一部がエバネッセント波(Ee)およびプラズモン散乱光中の励起光波長成分(Et)の両方が到達する距離にあるように配置された蛍光色素層とにより構成されたプラズモン散乱リファレンス領域(Q)
    を備えることを特徴とする、SPFSまたはそれを利用した測定方法用の表面プラズモン共鳴センサ。
  6. さらに、前記測定領域(A)と同一の構成を有するアッセイリファレンス領域(R)を備えることを特徴とする、請求項に記載のSPFSまたはそれを利用した測定方法用の表面プラズモン共鳴センサ。
  7. 前記プラズモン散乱リファレンス領域(P)および増強電場リファレンス領域(Q)の蛍光色素層が、上記領域のセンサ表面と光検出器の間にセンサ表面に対向するよう設置された部材を、蛍光色素を含有する光透過性材料で形成するか、またはそのように設置された蛍光色素を含有しない光透過性材料で形成された部材に蛍光色素を含有する薄層を積層することにより配置されていることを特徴とする、請求項またはに記載のSPFSまたはそれを利用した測定方法用の表面 プラズモン共鳴センサ。
  8. 前記プラズモン散乱リファレンス領域(P)の蛍光色素層が、蛍光色素を含有しない光透過性材料で形成された流路天板に積層された蛍光色素を含有する薄層であることを特徴とする、請求項に記載のSPFSまたはそれを利用した測定方法用の表面プラズモン共鳴センサ。
  9. 前記増強電場リファレンス領域(Q)の蛍光色素層が、金属薄膜上に積層された蛍光色素を含有する薄層であって、当該蛍光色素層の厚みすべてがエバネッセント波(Ee)およびプラズモン散乱光中の励起光波長成分(Et)の両方が到達する距離にあることを特徴とする、請求項またはに記載のSPFSまたはそれを利用した測定方法用の表面プラズモン共鳴センサ。
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