JP5568862B2 - インクジェット記録用インク、インクカートリッジ、記録方法及び記録物 - Google Patents

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Description

本発明は、普通紙における画質向上とインクジェットプリンターでの吐出安定性を両立させることができ、更にカラーブリードを抑制できるインクジェット記録用インク、該インクを用いたインクカートリッジ、インクジェット記録方法及び記録物に関するものである。
インクジェット記録では、普通紙における彩度(発色性)改善のため、インクの浸透性を向上させる試みがなされている。浸透性の向上には表面張力を低下させることが有効であり、フッ素系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤などを配合している。しかし、シリコーン系界面活性剤は熱による分解が進み易く、インクとした時の保存安定性に問題を有する。一方、フッ素系界面活性剤は熱に対する安定性は高いが、インクに配合される水溶性有機溶剤や樹脂成分などとの相溶性が悪いという問題や、泡立ち易いためインクジェットヘッドのノズル孔内部に気泡が発生し易く、吐出不良を誘発するなどの問題を有する。
例えば、特許文献1には、本発明で用いる界面活性剤A〔構造式(1)〕に相当するフッ素系界面活性剤を用いることが記載されているが、この場合、フッ素系界面活性剤にしては泡立ちは少ないものの、インク保存性が悪く、しかもインクジェットヘッドのノズル面に固着しやすいという問題があった。
そこで本発明者らは、界面活性剤Aと界面活性剤Bを併用した解決策を発明し出願した(特願2008−280327)。しかし、先願発明では、カラーブリードが起こりやすいという問題があることが分かった。
本発明は、吐出信頼性が高く、カラーブリードの発生がなく、普通紙においても優れた発色性を得ることができるインクジェット記録用インク、更にはフッ素系シランカップリング剤を含む撥インク層、又はシリコーン樹脂を含む撥インク層を有するインクジェットヘッドに対しても問題なく適用可能なインクジェット記録用インク、該インクを用いたインクカートリッジ、インクジェット記録方法及び記録物の提供を目的とする。
上記課題は、次の1)〜7)の発明によって解決される。
1) 少なくとも着色剤、界面活性剤A、界面活性剤B、界面活性剤C、水溶性有機溶剤及び水を含有し、前記界面活性剤Aが下記構造式(1)又は構造式(2)で表され、前記界面活性剤Bが下記構造式(3)で表され、前記界面活性剤Cがポリエーテル変性シリコーン化合物であることを特徴とするインクジェット記録用インク。
Figure 0005568862
(上記式中、Rは、水素であり、Rfは、−CF、又は−CFCFであり、mは10〜30の自然数、n、pはn+p=4〜10の自然数である。)
Figure 0005568862
(上記式中、Mはアルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム、又はアルカノールアミンであり、Rfは、−CF、又は−CFCFであり、qは4〜10の自然数である。)
Figure 0005568862
(上記式中、R、Rは、それぞれ水素又は炭素数が10以下のアルキル基であり、r、s、t、uは、それぞれ12以下の自然数である。)
2) 前記着色剤として、有機顔料又はカーボンブラックを下記構造式(4)で表されるノニオン系分散剤により分散したものを用いたことを特徴とする1)記載のインクジェット記録用インク。
Figure 0005568862
(上記式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアラルキル基、又はアリル基であり、lは0〜7の整数であり、kは20〜80の整数である。)
3) 前記着色剤として、有機顔料又はカーボンブラックの表面に親水基を反応させた自己分散型顔料を用いたことを特徴とする1)記載のインクジェット記録用インク。
4) 更に樹脂エマルジョンを含有することを特徴とする1)〜3)の何れかに記載のインクジェット記録用インク。
5) 1)〜4)の何れかに記載のインクジェット記録用インクを収容したインクカートリッジ。
6) フッ素系シランカップリング剤を含む撥インク層、又はシリコーン樹脂を含む撥インク層を有するインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置を用い、1)〜4)の何れかに記載のインクジェット記録用インクを吐出させることを特徴とするインクジェット記録方法。
7) 1)〜4)の何れかに記載のインクジェット記録用インクを用いて記録が行われた記録物。
以下、上記本発明について詳しく説明する。
<浸透剤>
浸透剤をインクに添加すると、表面張力が低下し、紙などの記録媒体にインク滴が着弾した後の記録媒体中への浸透が速くなるため、フェザリングやカラーブリードを軽減することができる。本発明では浸透剤として、前記構造式(1)又は構造式(2)で表されるフッ素系界面活性剤A、前記構造式(3)で表されるノニオン系界面活性剤B、及びポリエーテル変性シリコーン化合物からなる界面活性剤Cを用いる。
フッ素系界面活性剤は、浸透性や泡立ち防止に優れるが、インク保存性やヘッド固着に問題がある。特にフッ素系シランカップリング剤を含む撥インク層、又はシリコーン樹脂を含む撥インク層を有するインクジェットヘッドに付着し易い傾向が見られる。
一方、ノニオン系界面活性剤は、インク保存性には優れているが、浸透性、泡立ち防止、ヘッド固着に問題がある。
しかし、前記先願発明で開示したように、界面活性剤Aと界面活性剤Bを組み合わせると、驚くべきことに、それぞれの長所が生かされて、浸透性、泡立ち防止、インク保存性が良くなるばかりでなく、両者の問題点であるヘッド固着も改善される。
ところが、その後の検討により、先願発明ではカラーブリードが起こりやすいことが判明したため、更に検討した結果、界面活性剤Aと界面活性剤Bの表面張力の差が大きすぎてバランスが悪いことが原因ではないかと推測された。そこで、表面張力が両者の中間に位置する界面活性剤Cを加えたところ、界面活性剤Aと界面活性剤Bの組み合わせによる先願発明の効果を維持したまま、先願発明の場合(比較例1参照)に比べてカラーブリードを抑制できることが確認され、本発明に至ったものである。
界面活性剤Aは、フッ素系界面活性剤の中でも特に泡立ちが少なく、信頼性と発色向上に有効なものである。市販品としては、構造式(1)としてポリフォックスPF−151N、構造式(2)としてポリフォックスPF−136A、PF−156A(何れもオムノバ社製)などが挙げられる。
構造式(1)のRは上記市販品では水素であり、保存安定性の点からも水素が好ましいが、アルキル基やアシル基でもよいと考えられる。Rfは、上記市販品では−CFCFであるが、後述する構造式(2)の上記市販品のRfが−CF又は−CFCFであることからみて、−CFでも同等の効果を奏すると考えられる。m、n、pは、上記市販品ではm=21、n=〜4、p=〜4であるが、mは親水性を担うブロックの数であり、nとpは親油性を担うブロックの数であるから、親水性と親油性のバランスが保たれる範囲、例えば、m=10〜30、n+p=4〜10程度の範囲ならば使用可能であると考えられる。
また、構造式(2)のMは上記市販品ではアンモニウムであるが、スルホン酸塩を形成できるものであればよく、例えばアルカリ金属、ホスホニウム、アルカノールアミン等でもよいと考えられる。qは上記市販品では6であるが、qは親油性を担うブロックの数であるから、親水性と親油性のバランスが保たれる範囲、例えば、q=4〜10程度の範囲ならば使用可能であると考えられる。
界面活性剤Aの好ましい表面張力の範囲は20〜35mN/mである。またインク中への添加量は、0.05〜5重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量%である。
界面活性剤Bは、ノニオン系界面活性剤の中でも特に保存安定性が良好である。市販品としては、ソフタノールEP5035、ソフタノールEP9050、ソフタノールEP7025、ソフタノールEP7045(日本触媒社製)、EMALEXDAPE−0205、EMALEXDAPE−0207、EMALEXDAPE−0210、EMALEXDAPE−0212(日本エマルジョン社製)などが挙げられる。
構造式(3)のRとRは、上記市販品では水素と炭素数9のアルキル基、又はRとRの炭素数和が11〜13のアルキル基となっているが、それぞれ水素又は炭素数10以下程度のアルキル基であれば、化合物の特性に大きな影響を与えず、使用可能であると考えられる。また、r、s、t、uは、上記市販品では、r=5〜9、s=2.5〜5、t=2、u=7〜12であるが、r、uはエチレンオキサイドのブロックの数、s、tはプロピレンオキサイドのブロックの数であり、エチレンオキサイドよりもプロピレンオキサイドの方が親水性が低いから、この点を考慮しつつ、それぞれ12以下程度の中から、親水性と親油性のバランスが保たれる範囲のものを選択して使用することが可能であると考えられる。
界面活性剤Bのインク中への添加量は、0.05〜5重量%が好ましく、より好ましくは0.1〜3重量%である。
界面活性剤Cは、ややインクの保存安定性が悪くなる傾向はあるが、カラーブリードの発生を抑えるのに有効であり、極めて高品位な画像を得ることができる。
市販品としては、信越シリコーン社製:KF−6004、KF−353、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製:L−7604、SF−3771などが挙げられる。
なお、ポリエーテル変性シリコーン化合物は離型剤として広く用いられているものであり、離型性を有しているため、インクに添加するとヘッド固着を抑制する効果もある。
更に、本発明のインクでは、上記界面活性剤A、界面活性剤B、界面活性剤Cの組み合わせによる効果を損なわない範囲であれば、アニオン系界面活性剤、アセチレングリコール系界面活性剤などの他の界面活性剤を併用してもよい。
また、浸透性向上のため、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール等の炭素数8〜11のポリオールを併用してもよい。
<着色剤>
着色剤としては、染料や顔料を用いる。
顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ペリレン系、イソインドレノン系、アニリンブラック、アゾメチン系、ローダミンBレーキ顔料等の有機顔料や、カーボンブラック、酸化鉄、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、紺青、カドミウムレッド、クロムイエロー、金属粉等の無機顔料が挙げられる。
ブラック顔料の具体例としては、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、銅酸化物、鉄酸化物(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられる。
イエロー顔料の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー1(ファストイエローG)、2、3、12(ジスアゾイエローAAA)、13、14、16、17、20、23、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、73、74、75、81、83(ジスアゾイエローHR)、86、93、95、97、98、100、101、104、108、109、110、114、117、120、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185等が挙げられる。
マゼンタ顔料の具体例としては、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、7、9、12、17、22(ブリリアントファーストスカーレット)、23、31、38、48:1〔パーマネントレッド2B(Ba)〕、48:2〔パーマネントレッド2B(Ca)〕、48:3〔パーマネントレッド2B(Sr)〕、48:4〔パーマネントレッド2B(Mn)〕、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81(ローダミン6Gレーキ)、83、88、92、97、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(ジメチルキナクリドン)、123、146、149、166、168、170、172、175、176、178、179、180、184、185、190、192、193、202、209、215、216、217、219、220、223、226、227、228、238、240、254、255、272等が挙げられる。
シアン顔料の具体例としては、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15(銅フタロシアニンブルーR)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルーG)、15:4、15:6(フタロシアニンブルーE)、16、17:1、22、56、60、63、64、バットブルー4、バットブルー60等が挙げられる。
また、中間色顔料の具体例としては、レッド、グリーン、ブルー用としてC.I.ピグメントレッド177、194、224、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、71、C.I.ピグメントバイオレット3、19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントグリーン7、36等が挙げられる。
上記顔料のうち、ブラック顔料としては特にカーボンブラックが好ましく、ファーネス法やチャネル法で製造されたカーボンブラックで、1次粒子が15〜40nm、BET吸着法による比表面積が50〜300m/g、DBP吸油量が40〜150ml/100g、揮発分が0.5〜10%、pH2〜9のものが使用され、特にpH6以下の酸性カーボンブラックが高濃度で好ましい。
カラー顔料としては、特にピグメントイエロー13、17、55、74、93、97、98、110、128、139、147、150、151、154、155、180、185、ピグメントレッド122、202、209、ピグメントバイオレット19、ピグメントブルー15:3、15:4が好ましい。
顔料の平均粒径は特に限定されないが20〜200nmが好ましく、30〜150nmがより好ましく、50〜100nmが更に好ましい。顔料の平均粒径が200nmを超えると印写画像の彩度が低下するのみならず、インク保存時の増粘凝集や印写時のノズルの詰まりが生じやすくなる。また20nm未満では耐光性が低下するのみならず保存安定性も悪化する傾向がある。
なお、本発明における顔料の平均粒径は、日機装社製マイクロトラックUPA−150を用い、測定サンプル中の顔料濃度が0.01重量%になるように純水で希釈したサンプルを用い、粒子屈折率1.51、粒子密度1.4g/cm、溶媒パラメーターとして純水のパラメーターを用い、23℃で測定した50%平均粒径(D50)のことである。
インク中の顔料濃度は、2〜15重量%が好ましく、3〜12重量%がより好ましく、4〜10重量%が更に好ましい。顔料濃度が2重量%未満では、着色力が不十分なため画像の鮮やかさに劣る傾向があり、15重量%を超えるとインクの保存安定性が低下するのみならず、画像がくすむ傾向がある。
顔料インクでは一般に分散剤を用いる。通常、ノニオン系又はアニオン系の界面活性剤系分散剤を、顔料種別あるいはインク処方に応じて適宜選択して用いる。
ノニオン系界面活性剤としてはポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン−α−ナフチルエーテル、ポリオキシエチレン−β−ナフチルエーテル、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルナフチルエーテル、ポリオキシエチレンモノスチリルナフチルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルナフチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体等が挙げられる。また、これらの界面活性剤のポリオキシエチレンの一部をポリオキシプロピレンに置き換えた界面活性剤やポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の芳香環を有する化合物をホルマリン等で縮合させた界面活性剤も使用できる。
ノニオン系界面活性剤のHLBは12〜19.5のものが好ましく、13〜19のものがより好ましい。HLBが12未満では界面活性剤の分散媒へのなじみが悪いため分散安定性が悪化する傾向があり、HLBが19.5を超えると界面活性剤が顔料に吸着しにくくなるため、やはり分散安定性が悪化する傾向がある。
アニオン系界面活性剤としてはポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンモノスチリルフェニルエーテルカルボン酸塩、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルカルボン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、メラニンスルホン酸塩ホルマリン縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、スルホコハク酸アルキル二塩、ポリオキシエチレンアルキルスルホコハク酸二塩、アルキルスルホ酢酸塩、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、アルキルスルホン酸塩、N−アシルアミノ酸塩、アシル化ペプチド、石鹸などが挙げられる。これらのうち、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテルの硫酸塩又はリン酸塩が特に好ましい。
顔料インクの保存安定性向上のためには、前記構造式(4)で表されるノニオン系分散剤が特に好ましい。構造式(4)のR、l、kは、実施例ではR=C1225、l=1、k=42のものを用いたが、Rとしては炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアラルキル基、アリル基でもよく、lは0〜7の整数であり、kは20〜80程度の範囲であれば使用可能であると考えている。
界面活性剤系分散剤の添加量は顔料の10〜50重量%程度が好ましい。添加量が顔料の10重量%未満では、顔料分散体及びインクの保存安定性が低下したり、分散に極端に時間がかかったりするし、50重量%を超えると、インクの粘度が高くなりすぎてしまうため、吐出安定性が低下する傾向がある。
染料としては、カラーインデックスにおいて酸性染料、直接性染料、塩基性染料、反応性染料、食用染料に分類される染料のうち、耐水性や耐光性に優れたものが用いられる。これらの染料は複数種を混合して用いても良いし、必要に応じて顔料などの他の着色剤と混合して用いても良い。但し、他の着色剤は本発明の効果が阻害されない範囲で添加する必要がある。
染料の具体例としては、下記(a)〜(d)に示すようなものが挙げられる。
(a)酸性染料及び食用染料
・C.I.アシッド・イエロー 17,23,42,44,79,142
・C.I.アシッド・レッド 1,8,13,14,18,26,27,35,37,
42,52,82,87,89,92,97,106,111,114,115,
134,186,249,254,289
・C.I.アシッド・ブルー 9,29,45,92,249
・C.I.アシッド・ブラック 1,2,7,24,26,94
・C.I.フード・イエロー 3,4
・C.I.フード・レッド 7,9,14
・C.I.フード・ブラック 1,2
(b)直接染料
・C.I.ダイレクト・イエロー 1,12,24,26,33,44,50,86,
120,132,142,144
・C.I.ダイレクト・レッド 1,4,9,13,17,20,28,31,39,
80,81,83,89,225,227
・C.I.ダイレクト・オレンジ 26,29,62,102
・C.I.ダイレクト・ブルー 1,2,6,15,22,25,71,76,79,
86,87,90,98,163,165,199,202
・C.I.ダイレクト・ブラック 19,22,32,38,51,56,71,
74,75,77,154,168,171
(c)塩基性染料
・C.I.ベーシック・イエロー 1,2,11,13,14,15,19,21,
23,24,25,28,29,32,36,40,41,45,49,51,
53,63,64,65,67,70,73,77,87,91
・C.I.ベーシック・レッド 2,12,13,14,15,18,22,23,
24,27,29,35,36,38,39,46,49,51,52,54,
59,68,69,70,73,78,82,102,104,109,112
・C.I.ベーシック・ブルー 1,3,5,7,9,21,22,26,35,
41,45,47,54,62,65,66,67,69,75,77,78,
89,92,93,105,117,120,122,124,129,137,
141,147,155
・C.I.ベーシック・ブラック 2,8
(d)反応性染料
・C.I.リアクティブ・ブラック 3,4,7,11,12,17
・C.I.リアクティブ・イエロー 1,5,11,13,14,20,21,22,
25,40,47,51,55,65,67
・C.I.リアクティブ・レッド 1,14,17,25,26,32,37,44,
46,55,60,66,74,79,96,97
・C.I.リアクティブ・ブルー 1,2,7,14,15,23,32,35,
38,41,63,80,95
<水溶性有機溶剤(湿潤剤)>
本発明のインクは水を液媒体として使用するが、インクの乾燥を防止するため(湿潤剤として)、及び分散安定性を向上するためなどの目的で、水溶性有機溶剤を含有させる。水溶性有機溶剤の例としては、以下のようなものが挙げられる。これらの水溶性有機溶剤は複数混合して使用してもよい。
グリセリン、ジエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ヘキシレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセロール、1,2,6−ヘキサントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,3−ブタントリオール、ペトリオール等の多価アルコール類;
エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;
エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類;
2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミイダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物;
ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド類;
モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類;
ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノール等の含硫黄化合物類;
プロピレンカーボネート、炭酸エチレン等
上記水溶性有機溶剤に加えて他の湿潤剤を用いてもよく、そのような湿潤剤としては、尿素化合物や糖を含有するものが好ましい。糖類の例としては、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類及び四糖類を含む)及び多糖類が挙げられ、好ましくはグルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオースなどが挙げられる。ここで、多糖類とは広義の糖を意味し、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。
また、これらの糖類の誘導体としては、前記した糖類の還元糖(例えば、糖アルコール〔一般式HOCH(CHOH)nCHOH(n=2〜5の整数)〕、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ酸などが挙げられる。特に糖アルコールが好ましく、具体例としては、D−ソルビトール、ソルビタン、マルチトール、エリスリトール、ラクチトール、キシリトールなどが挙げられる。
特に、本発明においては、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、プロピレングリコール、1、5−ペンタンジオール、ジプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、テトラメチロールプロパン、3−メチル−1,3−ブタンジオール、D−ソルビトール、キシリトールを用いると、保存安定性、及び吐出安定性に優れたインクを作成することができる。
顔料インクの場合、顔料と湿潤剤の比は、ヘッドからのインクの吐出安定性に大きな影響がある。顔料固形分比率が高いのに湿潤剤の配合量が少ないと、ノズルのインクメニスカス付近の水分蒸発が進み吐出不良をもたらす。
湿潤剤の配合量はインク全体の10〜50重量%程度とする。インク中の湿潤剤総重量に対する着色剤と樹脂エマルジョンの総重量の比は0.5〜12.5が好ましく、より好ましくは1.0〜6.0、最も好ましくは2.0〜5.0の範囲である。この範囲にあるインクは、乾燥性や保存試験や信頼性試験が非常に良好である。
本発明のインクには、主に画像耐擦化性向上及び着色剤に顔料を用いた場合の保存安定性向上の目的で樹脂エマルジョンを添加することが好ましい。画像耐擦化性の向上には、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂、アクリルシリコン樹脂、フッ素樹脂のエマルジョンが好ましく、保存安定性の向上にはポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、スチレン−アクリル樹脂のエマルジョンが好ましい。しかし、画像耐擦化性向上と保存安定性向上を同時に達成できる樹脂エマルジョンは少ないため、2種類の樹脂エマルジョンを併用しても良い。これらの樹脂エマルジョンは市販のものを必要に応じて適宜選択して用いることができる。
次に代表的な樹脂エマルジョンについて例示する。
(1)ウレタン樹脂エマルジョン
ウレタン樹脂エマルジョンのウレタン樹脂は、ポリイソシアネートと、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール等を重合させたものである。
ポリイソシアネートとしては、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート化合物、イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4′−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等の脂環式ジイソシアネート化合物、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等の芳香脂肪族ジイソシアネート化合物、トルイレンジイソシアネート、フェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート化合物、これらジイソシアネートの変性物(カルボジイミド、ウレトジオン、ウレトイミン含有変成物など)等が挙げられる。
ポリエーテルポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ポリヘキサメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。
ポリエステルポリオールとしては、ポリエチレンアジペート、ポリブチレンアジペート、ポリネオペンチルアジペート、ポリ−3−メチルペンチルアジペート、ポリエチレン/ブチレンアジペート、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペート等が挙げられる。
ポリラクトンポリオールとしては、ポリカプロラクトンジオール、ポリオメガヒドロキシカプロン酸ポリオール等が挙げられる。
ポリカーボネートポリオールとしては、プロパンジオール−(1,3)、ブタンジオール−(1,4)、ヘキサンジオール−(1,6)、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールのようなジオールとホスゲンと、ジフェニルカーボネートのようなジアリールカーボネート又はエチレンカーボネートやプロピレンカーボネートのような環状カーボネートとの反応から得られる生成物のような、公知のものが含まれる。
(2)アクリル系樹脂エマルジョン
アクリル系樹脂エマルジョンのアクリル系樹脂は、アクリル系単量体を単独で重合させるか、又は他の単量体と共重合させることにより得られる。
アクリル系単量体としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸−n−ペンチル、アクリル酸イソペンチル、アクリル酸ネオペンチル、アクリル酸−3−(メチル)ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸ノニル、アクリル酸デシル、アクリル酸ウンデシル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸−n−ペンチル、メタクリル酸イソペンチル、メタクリル酸ネオペンチル、メタクリル酸−3−(メチル)ブチル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ノニル、メタクリル酸デシル、メタクリル酸ウンデシル、メタクリル酸ドデシル、アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、メタクリルアミド、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられる。
他の単量体としては、スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−クロルスチレン、ジビニルベンゼン等のビニル系芳香族炭化水素、イタコン酸、マレイン酸等の不飽和カルボン酸、N−置換マレイミド、無水マレイン酸、ビニルケトン、酢酸ビニル、塩化ビニリデン等が挙げられる。
上記の樹脂エマルジョンは、樹脂にイオン性基を導入することによって一層優れた水分散性を発現する。このようなイオン性基としては、スルホン酸基、カルボン酸基、硫酸基、リン酸基、ホスホン酸基及びホスフィン酸基、又はこれらのアルカリ金属塩基、アルカリ土類金属塩基、アンモニウム塩基、第1級〜第3級アミン基等が挙げられる。中でもカルボン酸アルカリ金属塩基、カルボン酸アンモニウム塩基、スルホン酸アルカリ金属塩基及びスルホン酸アンモニウム塩基が好ましく、特にスルホン酸アルカリ金属塩基及びスルホン酸アンモニウム塩基が水分散安定性の点で好ましい。イオン性基の導入は、樹脂合成時にイオン性基を有する単量体を添加することにより行われる。塩として好ましいのは、Li、K又はNa塩である。
本発明のインクには、上記したものの他に、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤、キレート試薬などの従来公知の添加剤を加えることができる。
pH調整剤は、インクをアルカリ性に保つことにより分散状態を安定化し、吐出を安定化する目的で添加する。しかし、pH11以上ではインクジェットのヘッドやインク供給ユニットを溶かし出す量が大きく、ヘッドやユニットの材質によっては、長期間使用した際に、インクの変質や、漏洩、吐出不良等の問題が発生しやすい。顔料の場合には、顔料を分散剤とともに水に混練分散する際にpH調整剤を加える方が、混練分散後、湿潤剤、浸透剤等の添加剤とともに加えるよりも望ましい。これは、pH調整剤によっては添加により分散を破壊する場合もあるためである。
pH調整剤としては、アルコールアミン類、アルカリ金属水酸化物、アンモニウム水酸化物、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属炭酸塩を一種類以上含むものが好ましい。
アルコールアミン類としては、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール等が、アルカリ金属水酸化物としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が、アンモニウム水酸化物としては、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物等が、ホスホニウム水酸化物としては、第4級ホスホニウム水酸化物が、アルカリ金属炭酸塩としては、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等が挙げられる。
防腐防黴剤としては、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム等が挙げられる。
防錆剤としては、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト等が挙げられる。
キレート試薬としては、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウム等が挙げられる。
本発明のインクは、インクジェット記録方式による各種記録装置、例えば、インクジェット記録用プリンタ、ファクシミリ装置、複写装置、プリンタ/ファックス/コピア複合機などに好適に使用することができる。また、特にフッ素系シランカップリング剤を含む撥インク層、又はシリコーン樹脂を含む撥インク層を有するインクジェットヘッドを備えた記録装置に対してもヘッド固着を生じないという優れた特性を有する。
次に、インクジェット記録装置の一例について、図1、図2により説明する。
図1示したインクジェット記録装置は、記録用紙142に対してインク滴を吐出する4個のインクジェットヘッド134と、4個のインクジェットヘッド134をキャリッジ走査方向(主走査方向)に移動可能に搭載したキャリッジ133と、記録用紙142をベルト(用紙)搬送方向(副操作方向)に搬送する無端状の搬送ベルト141と、搬送ベルトが掛け渡された駆動ローラー157及び従動ローラー158とを備えている。
さらに、図示しないが、各インクジェットヘッド134に、それぞれ色の異なる(例えば、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラック)インクジェット用インク(以下、単に「インク」ともいう。)を導入するインクカートリッジ、キャリッジ133をキャリッジ走査方向に移動するキャリッジ駆動部、駆動ローラー157を回転させて搬送ベルト151を走行させるベルト駆動部、各インクジェットヘッド134を吐出駆動させるヘッドドライバ、キャリッジ133の走査領域の一方の端部に設けられ、各インクジェットヘッド134に対してメンテナンスを行うメンテナンス装置等を備えている。メンテナンス装置は、キャップ、ワイパーブレード、空吐出受け、ワイパークリーナー等から構成されている。
そして、インクジェット記録装置は、4個のインクジェットヘッド134を、キャリッジ133を介してキャリッジ走査方向に移動させながら、各色のインクを記録用紙142に吐出させると共に、記録用紙142をベルト搬送方向に搬送することで、記録用紙142に対して画像を形成(印刷)するようになっている。
図2に示すように、各インクジェットヘッドは、ピエゾ型のものであり、インク供給口(不図示)と、共通液室1bとなる彫り込みを形成したフレーム10と、流体抵抗部2aと、彫り込み形成された加圧液室2bと、ノズル3aに連通する連通口2cを形成した流路板20と、多数のノズル3aが形成されたノズル板30と、ベース40に固定され、上記のヘッドドライバから駆動波形が印加される積層圧電素子50と、積層圧電素子50と接合する凸部6a、ダイヤフラム部6b及びインク流入口6cを有する振動板60と、積層圧電素子50と振動板60とを接着する接着層70とを備えている。なお、各インクジェットヘッドは、ピエゾ型に限らず、サーマル型、静電型等でもよい。
ノズル板30は、金属材料、例えば、電鋳工法によるNiメッキ膜等で形成されたものである。このノズル板30のインク吐出面側表面(液滴吐出面側表面)に、本発明に係る撥インク層3b(撥液層)が形成されている。
前記インクジェットヘッドのノズルプレート面には、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)/Ni共析メッキ、フッ素樹脂の電着塗装、蒸発性のあるフッ素樹脂(例えばフッ化ピッチなど)の蒸着、シリコーン樹脂、フッ素系樹脂の塗布などにより、撥インク層を設ける。低表面張力の高浸透性インクに対しても十分な撥インク性を保持するためには、フッ素系シランカップリング剤を含む撥インク層、又はシリコーン樹脂を含む撥インク層を設けることが好ましい。
フッ素系シランカップリング剤を含む撥インク層を設ける際には、フッ素系シランカップリング剤との結合点となる水酸基を多く存在させて密着性を向上させるため、ノズル基板と撥インク層の間に無機酸化物層を設ける場合もある。無機酸化物層の材料としては、SiO、TiOなどが挙げられ、膜厚は10〜2000Åが好ましく、更に好ましくは100〜1000Åである。
フッ素系シランカップリング剤は特に限定されるものではないが、特公平3−43065号、特開平6−210857号、特開平10−32984号、特開2000−94567号、特開2002−145645号、特開2003−341070号、特開2007−106024号、特開2007−125849号公報等に開示されたものが挙げられる。特に好ましい例としては、変性パーフルオロポリオキセタン(ダイキン工業社製:オプツールDSX)が挙げられる。この場合、膜厚は1〜200Åが好ましく、更に好ましくは10〜100Åである。
フッ素系シランカップリング剤による撥インク層の形成方法としては、スピンコート、ロールコート、ディッピング等の塗布法、印刷法、真空蒸着法等が挙げられる。
フッ素系シランカップリング剤による撥インク層は、下地層と化学結合が形成されているので機械的な耐久性は高いが、インク接液のように結合が切れるような化学的なハザードに対しては十分な耐久性がない。しかし、本発明のインクを用いるとインク接液性が大幅に改善される。
また、シリコーン樹脂は、SiとOからできたシロキサン結合を基本骨格とした樹脂であり、オイル、レジン、エラストマー等の種々の形態で市販されている。本発明で重要な撥インク性以外にも耐熱性、離型性、消泡性、粘着性等種々の特性を備えている。シリコーン樹脂には常温硬化型、加熱硬化型、紫外線硬化型等があり、作製方法や使用用途に応じて選択できる。
シリコーン樹脂を含む撥インク層をノズル面上に形成する方法としては、液状のシリコーン樹脂材料を真空蒸着する方法、シリコーンオイルをプラズマ重合することにより形成する方法、スピンコート、ディッピング、スプレーコート等の塗布により形成する方法、電着法等が挙げられる。撥インク層を形成する際には、電着法を除き、ノズル孔及びノズル板裏面をフォトレジスト、水溶性樹脂等でマスキングし、撥インク層形成後、レジストを剥離除去すれば、ノズル板表面のみにシリコーン樹脂を含む撥インク層を形成することができる。この場合、アルカリ性の強い剥離液を使用すると撥インク層にダメージを与えるので、注意が必要である。
シリコーン樹脂を含む撥インク層の膜厚は、0.1〜5.0μmが好ましく、0.1〜1.0μmがより好ましい。膜厚が0.1μm未満では、ワイピングに対する耐久性が悪化し、長期間使用時に撥インク性が低下してしまうことがあり、5.0μmを超えると、必要以上の膜厚の撥インク層となり、無駄な製造コストがかかることになる。
本発明のインクセットを構成する各インクは、容器に収容してインクカートリッジとして用いることができ、更に必要に応じて適宜選択したその他の部材を付設してもよい。
容器としては、特に制限はなく、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク袋などを有するものなどが好適に挙げられる。
上記インクカートリッジについて、図3及び図4を参照して説明する。ここで、図3は、本発明のインクカートリッジのインク袋241の一例を示す概略図であり、図4は図3のインク袋241をカートリッジケース244内に収容したインクカートリッジ200を示す概略図である。
図3に示すように、インク注入口242からインクをインク袋241内に充填し、該インク袋中に残った空気を排気した後、該インク注入口242を融着により閉じる。使用時には、ゴム部材からなるインク排出口243に装置本体の針を刺して装置に供給する。インク袋241は、透気性のないアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成する。そして、図4に示すように、通常、プラスチック製のカートリッジケース244内に収容し、インクカートリッジ200として各種インクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いる。
本発明のインクカートリッジは、後述する本発明のインクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いることが特に好ましい。
本発明によれば、吐出信頼性が高く、カラーブリードの発生が極めて少なく、普通紙においても優れた発色性を得ることができるインクジェット記録用インク、更にはフッ素系シランカップリング剤を含む撥インク層、又はシリコーン樹脂を含む撥インク層を有するインクジェットヘッドに対しても問題なく適用可能なインクジェット記録用インク、該インクを用いたインクカートリッジ、インクジェット記録方法及び記録物を提供できる。
インクジェット記録装置の機構部の要部の平面概略図である。 インクジェットヘッドの要部拡大図である。 本発明のインクカートリッジのインク袋の一例を示す概略図である。 図1のインク袋をカートリッジケース内に収容したインクカートリッジを示す概略図である。
以下、実施例及び比較例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。なお、配合量の「部」は全て「重量部」である。
以下に示すようにして、各顔料分散体を調製した。
<顔料分散体y2>
・C.I.ピグメントイエロー155 15.0部
(クラリアント・ジャパン社製:TONER YELLOW 3GP)
・下記構造式(5)で表される分散剤 5.0部
Figure 0005568862
・イオン交換水 80.0部
上記分散剤を水に加えて溶解し、続いて顔料を混合・攪拌して充分に湿潤したところで、φ0.5mmジルコニアビーズを充填した混練装置:ダイノーミルKDL A型(WAB社製)を用いて、2000rpmで60分間混練を行なった。次いで、ミルベースを取り出し、1μmのフィルターで濾過して、イエロー顔料分散体y2を得た。
<顔料分散体m2>
顔料を、C.I.ピグメントレッド122(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:Jet Magenta DMQ)に変えた点以外は、顔料分散体y2と同様の方法で、顔料濃度15%のマゼンタ顔料分散体m2を得た。
<顔料分散体c2>
顔料を、C.I.ピグメントブルー15:3(BASFジャパン社製:HELIOGEN Blue D7079)に変えた点以外は、顔料分散体y2と同様の方法で、顔料濃度15%のシアン顔料分散体c2を得た。
<顔料分散体k2>
顔料を、カーボンブラック(デグサ社製:NiPex150)に変え、分散剤をアルキルナフタレンスルフォン酸ナトリウム(花王社製:ペレックスNB−L)に変えた点以外は、顔料分散体y2と同様の方法で、顔料濃度15%のブラック顔料分散体k2を得た。
<顔料分散体y3>
−ポリマーの合成−
(ポリマー原料1)
・スチレン… 11.2部
・アクリル酸… 2.8部
・ラウリルメタクリレート… 12.0部
・ポリエチレングリコールメタクリレート… 4.0部
・スチレンマクロマー(東亜合成社製:AS−6)… 4.0部
・メルカプトエタノール… 0.4部
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管及び滴下ロートを備えた1Lフラスコ内を十分に窒素ガスで置換した後、上記原料1を仕込み、65℃に昇温した。
(ポリマー原料2)
・スチレン… 100.8部
・アクリル酸… 25.2部
・ラウリルメタクリレート… 108.0部
・ポリエチレングリコールメタクリレート… 36.0部
・ヒドロキシエチルメタクリレート… 60.0部
・スチレンマクロマー(東亜合成社製:AS−6)… 36.0部
・メルカプトエタノール… 3.6部
・アゾビスジメチルバレロニトリル… 2.4部
・メチルエチルケトン… 18.0部
次いで、上記原料2の混合溶液を2.5時間かけて昇温したフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8部と、メチルエチルケトン18.0部の混合溶液を0.5時間かけてフラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8部を添加し、更に1時間熟成した。
反応終了後、フラスコ内に、メチルエチルケトン364.0部を添加し、濃度が50%のポリマー溶液800部を得た。
このポリマー溶液を含む下記の材料を用いて分散体を作成した。即ち、顔料とポリマー溶液を十分に攪拌した後、3本ロールミル(ノリタケカンパニー社製:NR−84A)を用いて20回混練した。得られたペーストをイオン交換水200部に投入し、十分に攪拌した後、エバポレーターを用いてメチルエチルケトンと水を留去し、顔料濃度15%のイエロー分散体y3を得た。
(分散体材料)
・C.I.ピグメントイエロー74(クラリアント・ジャパン社製:
HANSA Yellow 5GX01)… 26.0部
・ポリマー溶液… 28.0部
・1mol/L水酸化カリウム水溶液… 13.6部
・メチルエチルケトン… 20.0部
・イオン交換水… 30.0部
<顔料分散体m3>
顔料を、C.I.ピグメントレッド122(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:Jet Magenta DMQ)に変えた点以外は、顔料分散体y3と同様の方法で、顔料濃度15%のマゼンタ顔料分散体m3を得た。
<顔料分散体c3>
顔料を、C.I.ピグメントブルー15:3(BASFジャパン社製:HELIOGENBlue D7079)に変えた点以外は、顔料分散体y3と同様の方法で、顔料濃度15%のシアン顔料分散体c3を得た。
<顔料分散体k3>
顔料を、カーボンブラック(デグサ社製:NiPex150)に変えた点以外は、顔料分散体y3と同様の方法で、顔料濃度15%のブラック顔料分散体k3を得た。
<顔料分散体y4>
C.I.ピグメントイエロー74(クラリアント・ジャパン社製:HANSA Yellow 5GX01)300部を水1000部に良く混合した後、次亜塩素酸ソーダ(有効塩素濃度12モル%)450部を滴下して、100〜105℃で8時間撹拌した。
次いで、この液に更に次亜塩素酸ソーダ(有効塩素濃度12モル%)100部を加え、φ0.5mmジルコニアビーズを充填したダイノーミル KDL A型(WAB社製)を用いて、2000rpmで2時間分散した。
次いで、得られたスラリーを水で10倍に希釈し、水酸化リチウムでpHを調整した後、電導度0.2mS/cmまで限外濾過膜で脱塩濃縮した。
更に、遠心処理により粗大粒子を除き、1μmのナイロンフィルターで濾過して、顔料濃度15%のイエロー顔料分散体y4を得た。
<顔料分散体m4>
顔料を、C.I.ピグメントバイオレット19(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:CINQUASIA PACIFIC Red2020)に変えた点以外は、顔料分散体y4と同様の方法で、顔料濃度15%のマゼンタ顔料分散体m4を得た。
<顔料分散体c4>
顔料を、C.I.ピグメントブルー15:3(BASFジャパン社製:HELIOGENBlue D7079)に変えた点以外は、顔料分散体y4と同様の方法で、顔料濃度15%のシアン顔料分散体c4を得た。
<顔料分散体k4>
顔料を、酸性カーボンブラック(キャボット社製:モナーク1300)に変えた点以外は、顔料分散体y4と同様の方法で、顔料濃度15%のブラック顔料分散体k4を得た。
実施例1
<インクY1>
・C.I.ダイレクトイエロー142… 3.0部
(ダイワ化成社製:DaiwaIJ Yellow 307HLR)
・界面活性剤A:構造式(2) Rf:−CF、M:アンモニウム、q=6、
固形分30%(オムノバ社製:ポリフォックスPF−136A)… 0.1部
・界面活性剤B:構造式(3) R:炭素数9、R:水素、t=2、u=7、
(日本エマルジョン社製:EMALEXDAPE−0207)… 1.0部
・界面活性剤C:ポリエーテル変性シリコーンオイル… 0.01部
(信越シリコーン社製:KF−6004)
・グリセリン… 8.0部
・プロピレングリコール… 16.0部
・アクリルシリコン樹脂エマルジョン(昭和高分子社製:AP4710)… 1.0部
・2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール… 2.0部
・水酸化リチウム… 0.1部
・防腐防黴剤(アベシア社製:プロキセルLV)… 0.1部
・イオン交換水… 68.69部
上記の材料をイオン交換水に溶解し、0.2μmのフィルターでろ過して、インクジェット記録用インクY1を得た。
<インクM1>
インクY1の染料を、C.I.アシッドレッド52(ダイワ化成社製:DaiwaIJ Red 207H)に変えた点以外は、同様の処方と方法で、インクジェット記録用インクM1を得た。
<インクC1>
インクY1の染料を、ダイレクトブルー199(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製:IRGASPERESE JET CYANRL)に変えた点以外は、同様の処方と方法で、インクジェット記録用インクC1を得た。
<インクK1>
インクY1の染料を、ダイレクトブラック168(クラリアント・ジャパン社製:Direct Black HEFLiquid)20部に変え、イオン交換水を51.69部に変えた点以外は、同様の処方と方法で、インクジェット記録用インクK1を得た。
得られた4色インクのセットを、プリンター(リコー社製:IPSiO G707)用のインクカートリッジに充填した。
実施例2
<インクY2>
・顔料分散体y2… 30.0部
・界面活性剤A:構造式(1) R:H、Rf:−CFCF、m=20、
n+p=4〜8、固形分50%(オムノバ社製:ポリフォックスPF−151N)
…0.2部
・界面活性剤B:構造式(3) RとRの炭素数和=11〜13、r=5、
s=3.5(日本触媒社製:ソフタノールEP5035)… 0.9部
・界面活性剤C:ポリエーテル変性シリコーンオイル… 0.75部
(信越シリコーン社製:KF−353)
・グリセリン… 12.0部
・1,3−ブタンジオール 18.0部
・ウレタン樹脂エマルジョン(固形分35%、三井武田ケミカル社製:W−5661)
… 6.0部
・スチレン−アクリル樹脂エマルジョン(固形分48%、BASFジャパン社製:
ジョンクリル7100)… 2.0部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール… 2.0部
・2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール… 0.2部
・防腐防黴剤(アベシア社製:プロキセルLV)… 0.1部
・イオン交換水… 27.85部
顔料分散体y2以外の上記材料をイオン交換水に溶解し、ビヒクルを作成して充分に攪拌した後、顔料分散体y2と混合し、1μmのフィルターでろ過して、インクジェット記録用インクY2を得た。
<インクM2>
インクY2の顔料分散体y2(30.0部)を、顔料分散体m2(50.0部)に変え、イオン交換水を7.85部に変えた点以外は、同様の処方と方法で、インクジェット記録用インクM2を得た。
<インクC2>
インクY2の顔料分散体y2を、顔料分散体c2に変えた点以外は、同様の処方と方法で、インクジェット記録用インクC2を得た。
<インクK2>
インクY2の顔料分散体y2(30.0部)を、顔料分散体k2(50.0部)に変え、イオン交換水を7.85部に変えた点以外は、同様の処方と方法で、インクジェット記録用インクK2を得た。
得られた4色インクのセットを、プリンター(リコー社製:IPSiO G707)用のインクカートリッジに充填した。
実施例3
<インクY3>
・顔料分散体y3… 30.0部
・界面活性剤A:構造式(2) Rf:−CFCF、M:アンモニウム、q=6、
固形分30%(オムノバ社製:ポリフォックスPF−156A)… 0.6部
・界面活性剤B:構造式(3) RとRの炭素数和=11〜13、r=7、
s=2.5(日本触媒社製:ソフタノールEP7025)… 0.3部
・界面活性剤C:ポリエーテル変性シリコーンオイル… 0.6部
(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製:L−7604)
・グリセリン… 16.0部
・3−メチル−1,3−ブタンジオール… 16.0部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール… 2.0部
・フッ素系樹脂エマルジョン(固形分50%、旭硝子社製:ルミフロンFE4500)
… 5.0部
・2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール… 0.2部
・防腐防黴剤(アベシア社製:プロキセルLV)… 0.1部
・イオン交換水… 29.2部
顔料分散体y3以外の上記材料をイオン交換水に溶解し、ビヒクルを作成して充分に攪拌した後、顔料分散体y3と混合し、1μmのフィルターでろ過して、インクジェット記録用インクY3を得た。
<インクM3>
インクY3の顔料分散体y3(30.0部)を、顔料分散体m3(50.0部)に変え、イオン交換水を9.2部に変えた点以外は、同様の処方と方法で、インクジェット記録用インクM3を得た。
<インクC3>
インクY3の顔料分散体y3を、顔料分散体c3に変えた点以外は、同様の処方と方法で、インクジェット記録用インクC3を得た。
<インクK3>
インクY3の顔料分散体y3(30.0部)を、顔料分散体k3(50.0部)に変え、イオン交換水を9.2部に変えた点以外は、同様の処方と方法で、インクジェット記録用インクK3を得た。
得られた4色インクのセットを、プリンター(リコー社製:IPSiO G707)用のインクカートリッジに充填した。
実施例4
<インクY4>
・顔料分散体y4… 30.0部
・界面活性剤A:構造式(1) R:H、Rf:−CFCF、m=20、
n+p=4〜8、固形分50%(オムノバ社製:ポリフォックスPF−151N)
… 0.12部
・界面活性剤B:構造式(3) RとRの炭素数和=11〜13、r=9、
s=5(日本触媒社製:ソフタノールEP9050)… 0.90部
・界面活性剤C:ポリエーテル変性シリコーンオイル… 1.2部
(東レ・ダウコーニング・シリコーン社製:SF−3771)
・グリセリン… 10.0部
・1,6ヘキサンジオール… 20.0部
・スチレン−アクリル樹脂エマルジョン(固形分48%、BASFジャパン社製:
ジョンクリル7100)… 2.0部
・2−エチル−1,3−ヘキサンジオール… 2.0部
・トリエタノールアミン 0.2部
・防腐防黴剤(アベシア社製:プロキセルLV)… 0.1部
・イオン交換水… 33.48部
顔料分散体y4以外の上記材料をイオン交換水に溶解し、ビヒクルを作成して充分に攪拌した後、顔料分散体y4と混合し、1μmのフィルターでろ過して、インクジェット記録用インクY4を得た。
<インクM4>
インクY4の顔料分散体y4(30.0部)を、顔料分散体m4(50.0部)に変え、イオン交換水を13.48部に変えた点以外は、同様の処方と方法で、インクジェット記録用インクM4を得た。
<インクC4>
インクY4の分散体を顔料分散体c4に変えた点以外は、同様の処方と方法で、インクジェット記録用インクC4を得た。
<インクK4>
インクY4の顔料分散体y4(30.0部)を、顔料分散体k4(50.0部)に変え、イオン交換水を13.48部に変えた点以外は、同様の処方と方法で、インクジェット記録用インクK4を得た。
得られた4色インクのセットを、プリンター(リコー社製:IPSiO G707)用のインクカートリッジに充填した。
実施例5
界面活性剤の種類と組成比が異なる4色のインク(Y2、M3、C2、K4)を組合わせた4色インクのセットを、プリンター(リコー社製:IPSiO G707)用のインクカートリッジに充填した。
比較例1
実施例4のインクY4、M4、C4、K4において、界面活性剤C(SF−3771)を添加しなかった点以外は、実施例2と同様の処方と方法で、インクジェット記録用インクY5、M5、C5、K5をそれぞれ得た。
得られた4色インクのセットを、プリンター(リコー社製:IPSiO G707)用のインクカートリッジに充填した。
比較例2
実施例2のインクY2、M2、C2、K2において、界面活性剤A(ポリフォックスPF−151N)を添加しなかった点以外は、実施例2と同様の処方と方法で、インクジェット記録用インクY6、M6、C6、K6をそれぞれ得た。
得られた4色インクのセットを、プリンター(リコー社製:IPSiO G707)用のインクカートリッジに充填した。
比較例3
実施例2のインクY2、M2、C2、K2における界面活性剤A(ポリフォックスPF−151N)を、C1211NaOS(ネオス社製:FT−110)に変えた点以外は、実施例2と同様の処方と方法で、インクジェット記録用インクY7、M7、C7、K7をそれぞれ得た。
得られた4色インクのセットを、プリンター(リコー社製:IPSiO G707)用のインクカートリッジに充填した。
比較例4
実施例3のインクY3、M3、C3、K3において、界面活性剤B(ソフタノールEP7025)を添加しなかった点以外は、実施例3と同様の処方と方法で、インクジェット記録用インクY8、M8、C8、K8をそれぞれ得た。
得られた4色インクのセットを、プリンター(リコー社製:IPSiO G707)用のインクカートリッジに充填した。
比較例5
実施例3のインクY3、M3、C3、K3における界面活性剤B(ソフタノールEP7025)を、C1327(OCHCH−OHで表される界面活性剤に変えた点以外は、実施例3と同様の処方と方法で、インクジェット記録用インクY9、M9、C9、K9をそれぞれ得た。
得られた4色インクのセットを、プリンター(リコー社製:IPSiO G707)用のインクカートリッジに充填した。
比較例6
実施例4のインクY4、M4、C4、K4における界面活性剤C(SF−3771)をポリオキシエチレン・アセチレニック・グリコール〔川研ファインケミカル社製:アセチレノールE100、固形分100%、下記構造式(6)参照)〕に変えた点以外は、実施例2と同様の処方と方法で、インクジェット記録用インクY10、M10、C10、K10をそれぞれ得た。
得られた4色インクのセットを、プリンター(リコー社製:IPSiO G707)用のインクカートリッジに充填した。
Figure 0005568862
上記実施例及び比較例の各インクの粘度、起泡性、消泡性を次のようにして測定した。結果を表1、表2に示す。
(1)粘度
各インクジェット記録用インクの作成直後(初期)、及び50℃で1ヶ月放置後(経時)の粘度を、東機産業社製RC−500を用いて25℃で測定した。
初期の粘度に対する経時の粘度の変化率(%)も示した。変化率は、±10%以内であれば保存安定性は良好であり、それ以上変化するものは保存安定性が不良であると判断される。
(2)泡試験
作成後、50℃で1ヶ月間保存した各インクを、25℃の環境下で100mlのメスシリンダーに10ml入れ、次いで、一定圧力の空気を注入し、インクと気泡の体積合計が100mlになった時点で空気の注入を停止した。
空気の注入開始から注入停止までの時間(起泡時間)、及び空気の注入を停止した時点からインクと気泡の体積合計が20mlに減少するまでの時間(消泡時間)を測定し、以下の基準で起泡性、消泡性を評価した。起泡性、消泡性共にAのみが許容範囲である。
〔起泡性評価基準〕
A:起泡時間が30秒以上
B:起泡時間が10秒以上、30秒未満
C:起泡時間が10秒未満
〔消泡性評価基準〕
A:消泡時間が30秒未満
B:消泡時間が30秒以上、300秒未満
C:消泡時間が300秒以上
Figure 0005568862
Figure 0005568862
プリンターヘッドのノズルプレートを次の(α)(β)のようにして作製した。
(α)ポリイミドフィルム(デュポン社製:カプトン 粒子添加無し)上に、スパッタリング法で膜厚約10ÅのSiO層を形成した後、真空蒸着法で膜厚約50Åの変性パーフルオロポリオキセタン(ダイキン工業社製:オプツールDSX)の撥インク層を形成し、ポリイミドフィルム側からエキシマレーザーでノズル孔加工を行ってノズルプレートを作製した。
(β)Ni電鋳ノズル表面上に、シリコーンレジン(東レダウコーニングシリコーン社製:SR2411)をディスペンサで塗布し、膜厚1.2μmのシリコーン層を形成した。この際、ノズル孔及びノズル板裏面を水溶性樹脂でマスキングし、シリコーン層塗布形成後、剥離除去した。次いで、そのまま常温で2日間放置し硬化させ、撥インク層を形成したノズルプレートとした。
上記(α)(β)の方法で作製したノズルプレートを、前述した図1〜図2の構造のプリンター(リコー社製:IPSiO G707)にセットし、実施例及び比較例で作製した各インクジェット記録用インクをインクカートリッジに充填してセットし、以下の方法で普通紙における彩度、カラーブリード、吐出安定性及びノズル面固着評価を行った。
結果を纏めて表3、表4に示すが、(α)の欄は(α)のノズルプレートを用いた場合、(β)の欄は(β)のノズルプレートを用いた場合である。
(1)彩度
下記の記録評価用紙(普通紙)を使用し、マゼンタ、シアン、イエローのカラーインクのみを用いて(ブラックインクは評価対象外)、ワンパスでべた画像を印字し、乾燥後、反射型カラー分光測色濃度計(X−Rite社製)を用いて、L*a*b*の値を測定した。
標準色(Japan color ver.2)の彩度の値(イエロー:91.34、マゼンタ:74.55、シアン:62.82)に対する測定した彩度の値(試験用紙3種の平均値)の比率を算出し、下記の評価基準により評価した。
<記録評価用紙>
・マイペーパー(NBSリコー社製)
・マルチエース(富士ゼロックスオフィスサプライ社製)
・PB紙(キヤノン社製)
<評価基準>
A:0.9以上
B:0.8以上0.9未満
C:0.8未満
(2)カラーブリード
マゼンタ、シアン、イエローのカラーインクのベタ画像部中にブラックインクの文字を印字する印刷パターンを用い、上記ノズルプレート(α)(β)をセットしたプリンタを用いてマイペーパー(NBSリコー製)に印字を行った。印字条件は100%duty、記録密度は300dpi、ワンパス印字とした。
カラーインクとブラックインク間のカラーブリード(にじみ)を目視し、下記の基準で評価した。ランクAのみが許容範囲である。
〔評価基準〕
A:カラーブリードの発生がなく、黒文字が鮮明に認識できる。
B:カラーブリードが若干発生し、黒文字が少しにじむ。
C:カラーブリードが発生し、黒文字の認識が困難である。
(3)吐出安定性
上記ノズルプレートをセットしたプリンターを用いて10分間連続印字を行い、ヘッド面にインクが付着した状態で保湿キャップをし、プリンターを50℃60%RH環境下で1ヶ月間放置した後、クリーニングを実施して放置前と同等に復帰させた。そして、以下の条件で間欠印写試験を行ない吐出安定性を評価した。
即ち、以下の印刷パターンチャートを20枚連続で印字した後、20分間印字を実施しない休止状態にし、これを50回繰り返し、累計で1000枚印写した後、もう1枚同じチャートを印写した時の5%チャートベタ部の筋、白抜け、噴射乱れの有無を目視で評価した。なお、印刷パターンは、紙面全面積中、各色印字面積が5%であるチャートにおいて、各インクを100%dutyで印字した。印字条件は、記録密度は360dpi、ワンパス印字とした。評価基準を次に示すが、ランクAのみが許容範囲である。
〔評価基準〕
A:ベタ部にスジ、白抜け、噴射乱れが無い。
B:ベタ部にスジ、白抜け、噴射乱れが若干認められる。
C:ベタ部全域にわたってスジ、白抜け、噴射乱れが認められる。
(4)ノズル面固着
プリンターを恒温恒湿槽に入れ、槽内の環境を温度32℃、湿度30%に設定し、以下の印刷パターンチャートを20枚連続で印字した後、20分間印字を実施しない休止状態にし、これを50回繰り返し、累計で1,000枚印写した後、ノズルプレートを顕微鏡で観察し、固着の有無を判断した。
なお、印刷パターンは、紙面全面積中、各色印字面積が5%であるチャートにおいて、各インクを100%dutyで印字した。印字条件は、記録密度は300dpi、ワンパス印字とした。評価基準を以下に示すが、ランクAのみが許容範囲である。
〔評価基準〕
A:ノズル近傍に固着なし。
B:ノズル近傍に固着あり。
C:ノズルプレート全面に固着あり。
Figure 0005568862
Figure 0005568862
上記表1、表2から判るように、実施例では保存後の粘度の変化率、起泡性、消泡性が全てAランクである。これに対し、界面活性剤Aを含まない比較例2、及び界面活性剤Aに代えて他の界面活性剤を用いた比較例3では、起泡性、消泡性がB、Cランクになってしまうし、界面活性剤Bを含まない比較例4、及び界面活性剤Bに代えて他の界面活性剤を用いた比較例5では、保存後の粘度の変化率が10%を越え、保存安定性が悪くなってしまう。
また、上記表3、表4から判るように、実施例では彩度、カラーブリード、吐出安定性、固着評価が全てAランクである。これに対し、界面活性剤Cを含まない比較例1では、カラーブリードがCランクになってしまうし、比較例2〜4では、吐出安定性がCランクになってしまう。更に、界面活性剤Cに代えて他の界面活性剤を用いた比較例6を含めた比較例1〜6では、ほとんどの項目にBランクが含まれており、実施例よりも劣ることが明らかである。
1b 共通液室
2a 流体抵抗部
2b 加圧液室
2c 連通口
3a ノズル
5f 駆動部
5g 支持部(非駆動部)
6a 凸部
6b ダイヤフラム部
6c インク流入口
10 フレーム
20 流路板
30 ノズルプレート
40 ベース
50 積層圧電素子
60 振動板
70 接着層
131 ガイドロッド
133 キャリッジ
134 記録ヘッド
141 用紙積載部(圧板)
142 用紙
157 搬送ローラー
158 テンションローラー
200 インクカートリッジ
241 インク袋
242 インク注入口
243 インク排出口
244 カートリッジケース
特開2007−084807号公報

Claims (7)

  1. 少なくとも着色剤、界面活性剤A、界面活性剤B、界面活性剤C、水溶性有機溶剤及び水を含有し、前記界面活性剤Aが下記構造式(1)又は構造式(2)で表され、前記界面活性剤Bが下記構造式(3)で表され、前記界面活性剤Cがポリエーテル変性シリコーン化合物であることを特徴とするインクジェット記録用インク。
    Figure 0005568862
    (上記式中、Rは、水素であり、Rfは、−CF、又は−CFCFであり、mは10〜30の自然数、n、pはn+p=4〜10の自然数である。)
    Figure 0005568862
    (上記式中、Mはアルカリ金属、アンモニウム、ホスホニウム、又はアルカノールアミンであり、Rfは、−CF、又は−CFCFであり、qは4〜10の自然数である。)
    Figure 0005568862
    (上記式中、R、Rは、それぞれ水素又は炭素数が10以下のアルキル基であり、r、s、t、uは、それぞれ12以下の自然数である。)
  2. 前記着色剤として、有機顔料又はカーボンブラックを下記構造式(4)で表されるノニオン系分散剤により分散したものを用いたことを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録用インク。
    Figure 0005568862
    (上記式中、Rは炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアラルキル基、又はアリル基であり、lは0〜7の整数であり、kは20〜80の整数である。)
  3. 前記着色剤として、有機顔料又はカーボンブラックの表面に親水基を反応させた自己分散型顔料を用いたことを特徴とする請求項1記載のインクジェット記録用インク。
  4. 更に樹脂エマルジョンを含有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のインクジェット記録用インク。
  5. 請求項1〜4の何れかに記載のインクジェット記録用インクを収容したインクカートリッジ。
  6. フッ素系シランカップリング剤を含む撥インク層、又はシリコーン樹脂を含む撥インク層を有するインクジェットヘッドを備えたインクジェット記録装置を用い、請求項1〜4の何れかに記載のインクジェット記録用インクを吐出させることを特徴とするインクジェット記録方法。
  7. 請求項1〜4の何れかに記載のインクジェット記録用インクを用いて記録が行われた記録物。
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