JP2017043082A - インクジェット記録方法、インクジェット記録装置 - Google Patents

インクジェット記録方法、インクジェット記録装置 Download PDF

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公則 増田
Kiminori Masuda
公則 増田
尚子 森
Naoko Mori
尚子 森
理美 荒木
Satomi Araki
理美 荒木
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Abstract

【課題】ノズル板表面に形成された撥水膜が劣化しても、静的表面張力が低いインクを安定して吐出させることができ、かつ、良好な画像を得ることができるインクジェット記録方法を提供する。【解決手段】インクの液滴を吐出するノズルを有するノズル板、前記ノズルが連通する液室、及び前記液室内に圧力を発生させる圧力発生手段を有する記録ヘッドの該圧力発生手段に対して、1又は2以上の駆動パルスを印加することで、インクの液滴を吐出するインクジェット記録方法であって、以下の(1)及び(2)の要件を満たすことを特徴とするインクジェット記録方法。(1)前記インクの25℃での静的表面張力が、18.0mN/m以上27.0mN/m以下である。(2)少なくとも1つの駆動パルスは、前記インクを引き込む電圧変化部分の変化時間が、前記液室の共振周期の1/3以上である。【選択図】図3

Description

本発明は、インクジェット記録方法、インクジェット記録装置に関する。
インクジェット記録方式は、非常に微細なノズルからインク液滴を吐出し、前記インク液滴を記録媒体上に付着させて、文字や画像を形成する記録方式である。この方式は、他の記録方式に比べてフルカラー化が容易であり、簡易な構成の装置であっても高解像度の画像が得られる利点があるため、近年広く用いられている。
このようなインクジェット記録方式に用いられるインクには、様々な特性が要求される。特に、インクをヘッドから吐出する際の吐出安定性は画像品質を左右し、重要なものとなっている。
前記インクジェット記録方式では、インクに圧力の変動をかけることで、インク液滴の吐出を行う。
インクが充填されたヘッドのノズル内部には、メニスカスが形成されており、通常(静止状態)においては、メニスカスは、ノズルエッジを基点として、液室側にブリッジを形成する。しかし、吐出時の圧力変動でノズル内のインクに正圧がかかると、メニスカスが崩れてインクが吐出口から外に溢れ出ることがある。また、吐出したインク滴の尻尾がちぎれたり、被印刷物に当たって飛散して生じた、微小なインクミストが、ノズル板表面に付着することもある。このようにして、吐出口から溢れ出たインク、及びノズル板表面に付着したインクミストは、ノズル板表面でインク溜まりを形成し、これが吐出時のインク液滴に接触すると、メニスカスが不均一になったり、インク液滴を引っ張ったりするため、吐出方向が曲がってしまう場合がある。更に、顔料を着色剤としたインクの場合、顔料という固形分が溶媒内に分散している状態であるため、ノズル板表面に付着したインクが乾燥すると、固形分がノズル板表面に固着し、最終的にはノズルを詰まらせてしまう問題があった。
このように、前記インクジェット記録方式においては、ノズル周辺を清浄に保つことが、安定した吐出性の確保のために重要となる。このため、インクによるノズル板表面の汚れを防ぐために、ノズル板表面に撥水膜を形成してインクをはじきやすくしたり、定期的にノズル板表面をワイピングしてノズル板表面のインクを取り除くメンテナンス作業が、一般に行われている。
しかし、このような撥水膜は、ワイピングなどの影響により、ノズル板表面から少しずつ剥がれてしまうことが知られている。
撥水膜が剥がれた場所では、インクが付着しやすくなり、吐出が乱れ、印刷物にノズル曲がりやスジが発生して画像品質が低下してしまう問題があった。また、インクの性質によっては、ノズル板表面に対するインクの剥がれやすさが低く、ワイピングによっても十分にインクを除去できない問題があった。特に静的表面張力が低いインクをヘッドから吐出させた場合、撥水膜が剥がれた場所では、印刷物にノズル曲がりやスジが発生し、画像品質が低下してしまうという問題がある。
そこで、特許文献1では、安定して吐出させることができ、かつ、良好な画像を得ることができるインクジェット記録方法として、(1)25℃において、最大泡圧法による表面寿命が15msの時の動的表面張力が静的表面張力よりも10mN/m以上高く、同じく表面寿命が1500msの時の動的表面張力が静的表面張力よりも5mN/m以上高い水性インクを用い、(2)前記信号が、1印字周期内に引き込みパルスを有し、該引き込みパルスにより、前記ノズルにおける前記水性インクのメニスカスが、2段階で前記ノズル内に引き込まれる、インクジェット記録方法が提案されている。
しかしながら、従来の提案では、静的表面張力が低いインクを用いた場合、ノズル板表面に形成された撥水膜が劣化すると、特に大滴の場合にインクを安定して吐出させることが確保できないという問題があった。
本発明は、静的表面張力が低いインクを安定して吐出させることができ、かつ、良好な画像を得ることができるインクジェット記録方法を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。
すなわち、本発明のインクジェット記録方法は、インクの液滴を吐出するノズルを有するノズル板、前記ノズルが連通する液室、及び前記液室内に圧力を発生させる圧力発生手段を有する記録ヘッドの該圧力発生手段に対して、1又は2以上の駆動パルスを印加することで、インクの液滴を吐出するインクジェット記録方法であって、以下の(1)及び(2)の要件を満たすことを特徴とするインクジェット記録方法である。
(1)前記インクの25℃での静的表面張力が、18.0mN/m以上27.0mN/
m以下である。
(2)少なくとも1つの駆動パルスは、前記インクを引き込む電圧変化部分の変化時間が、前記液室の共振周期の1/3以上である。
本発明によると、従来における前記諸問題を解決することができ、静的表面張力が低いインクを安定して吐出させることができ、かつ、良好な画像を得ることができるインクジェット記録方法を提供することができる。
ノズル板表面の撥水膜が劣化した状態を示すSEM画像である。 通常のメニスカスの状態を示す概略図である。 液滴吐出直後に発生するメニスカス溢れを表す模式図である。 液滴曲がりが発生した状態を示す模式図である。 従来の吐出におけるメニスカス溢れの状態を表す模式図である。 図5Aに示す状態における駆動パルスを表すグラフである。 従来の吐出において溢れたインクが劣化した撥水膜上に残留した状態を表す模式図である。 図6Aに示す状態における駆動パルスを表すグラフである。 従来の吐出において液滴曲がりが生じた状態を表す模式図である。 図7Aに示す状態における駆動パルスを表すグラフである。 メニスカス溢れが発生した状態を表す模式図である。 図8Aに示す状態における駆動パルスを表すグラフである。 ノズル内のインク202と、劣化した撥水膜200上のインク202とを共にノズル内に引き込む状態を表す模式図である。 図9Aに示す状態における駆動パルスを表すグラフである。 メニスカスをノズル内に引き込む状態を表す模式図である。 図10Aに示す状態における駆動パルスを表すグラフである。 インク202を吐出した状態を表す模式図である。 図11Aに示す状態における駆動パルスを表すグラフである。 本発明のインクジェット記録装置の一例の全体構成を説明するための側面図である。 本発明のインクジェット記録装置の一例の全体構成を説明するための要部平面図である。 本発明のインクジェット記録装置の記録ヘッドを構成する液体吐出ヘッドの一例を示す液室長手方向の断面図である。 本発明のインクジェット記録装置の記録ヘッドを構成する液体吐出ヘッドの一例を示す液室短手方向の断面図である。 本発明のインクジェット記録装置の制御部の一例の概要を示すブロック説明図である。 本発明のインクジェット記録装置の印刷制御部及びヘッドドライバの一例を示すブロック説明図である。 2段階でメニスカスを引き込む駆動信号を持つ吐出波形を表すグラフである。 1段階でメニスカスを引き込む駆動信号を持つ吐出波形を表すグラフである。 1印字単位周期を説明するための図面である。 インク収容容器の一例を示す概略図である。 図21のインク収容容器のケースも含めた概略図である。
(インクジェット記録方法及びインクジェット記録装置)
本発明のインクジェット記録方法は、インクの液滴を吐出するノズルを有するノズル板、前記ノズルが連通する液室、及び前記液室内に圧力を発生させる圧力発生手段を有する記録ヘッドの該圧力発生手段に対して、1又は2以上の駆動パルスを印加することで、インクの液滴を吐出するインクジェット記録方法であって、以下の(1)及び(2)の要件を満たすことを特徴とするインクジェット記録方法である。
(1)前記インクの25℃での静的表面張力が、18.0mN/m以上27.0mN/
m以下である。
(2)少なくとも1つの駆動パルスは、前記インクを引き込む電圧変化部分の変化時間が、前記液室の共振周期の1/3以上である。
本発明のインクジェット記録装置は、インクの液滴を吐出するノズルを有するノズル板、前記ノズルが連通する液室、及び前記液室内に圧力を発生させる圧力発生手段を有する記録ヘッドと、前記圧力発生手段に印加される駆動パルスを1又は2以上含む駆動波形を生成する駆動波形生成部とを有し、前記前記圧力発生手段により発生した圧力によりインクの液滴を吐出するインクジェット記録装置であって、以下の(1)及び(2)の要件を満たすことを特徴とするインクジェット記録装置である。
(1)前記インクの25℃での静的表面張力が、18.0mN/m以上27.0mN/
m以下である。
(2)少なくとも1つの駆動パルスは、前記インクを引き込む電圧変化部分の変化時間が、前記液室の共振周期の1/3以上である。
前記記録ヘッド(以下液体吐出ヘッド、ヘッドともいう)は、流路板と、この流路板の下面に接合した振動板と、流路板の上面に接合したノズル板とを接合して積層し、これらによって液滴(インク液滴)を吐出する開口部を有するノズル(ノズル開口)が形成される。そして、液滴(インク液滴)を吐出するノズルはノズル連通路及び圧力発生室である液室、液室に流体抵抗部(供給路)を通じてインクを供給するための共通液室に連通するインク供給口などと繋がっている。
つまり、前記液体吐出ヘッドは、ノズル板と、インク液滴を吐出するノズル開口に連通された液室と、該液室に圧力変動を生じさせる圧力発生手段を具備する。
ノズル板には各液室に対応してノズル(ノズル開口)が形成されている。このノズル板は、例えば、金属部材等のノズル形成部材からなり、該ノズル形成部材のインク吐出側表面に撥水層(撥水膜)を形成したものが好ましい。即ち、ノズル(ノズル開口)のインク吐出側表面が撥水処理されていることが好ましい。
本発明のインクジェット記録方法において、後述する印刷制御部によりインク液滴の大きさに応じた吐出パルスが発生される。吐出パルスは1以上の駆動パルスを時系列で含む駆動波形から駆動パルスを選択して構成される。
なお、前記「駆動パルス」とは駆動波形を構成する要素としてのパルスを示す用語として、「吐出パルス」とは圧力発生手段を具備した液体吐出ヘッドに印加されてインク液滴を吐出させるパルスを示す用語として用いる。
前記駆動パルスとしては、基準電位から所定のホールド電位まで立ち下がって液室を膨張させる波形要素(膨張波形要素)と、立ち下がった電位(ホールド電位)を保持する波形要素(保持要素)と、ホールド電位から立ち上がって液室を収縮させる波形要素(収縮波形要素)とで構成される。
インク液滴の大きさに応じて、1以上の駆動パルスを時系列で含む駆動波形から駆動パルスを選択して吐出パルスが発生される。例えば、大滴、中滴、小滴の3種類のサイズの液滴を吐出させる駆動波形を選択することができる。
図1にノズルのSEM(Scanning Electron Microscope)画像を示した。図1に示されるように、メンテナンスによる物理的負荷によって、液室とは反対側のノズル板表面のノズル撥水膜が少しずつ劣化していく。
前記インクが充填されたヘッドのノズルには本来メニスカスが形成されており、通常(静止状態)の場合、メニスカスはノズルエッジを基点として液室側にブリッジを形成しており、ノズル撥水膜の劣化の影響は少ない状態にある(図2参照)。図2において、符号200は劣化した撥水膜を示し、符号201は、撥水膜を示し、符号202は、インクを示す。図3〜図11においても同様である。また、図5B〜図11Bのグラフにおいて、駆動パルス(吐出パルス)のうち、太線で示す部分が、波形要素を意味する。また、図5B〜図11Bにおいて、横軸の単位は時間であり、縦軸の単位は電圧である。
しかし、図3及び図4のように、インク202の液滴を吐出した後に、メニスカス溢れ〔液滴を吐出するとノズルからの流出に伴って発生した共通液室からのインクの流入がすぐには止まらないため、勢い余ってノズルにおけるインクのメニスカス溢れを発生させる現象。特に、1印字単位周期内にサイズの大きな液滴を吐出する波形(単位時間の射出量が大きい波形)があるほど、メニスカス溢れは大きくなる現象〕や、高周波駆動直後のメニスカス溢れ(高周波駆動によって多量のインクがノズルから流出するのに伴って発生した共通液室からのインクの流入が、すぐには止まらず、勢い余ってノズルのメニスカス溢れを発生させる現象。液室の固有振動周期Tcとは異なるリフィル周期Rfを有する現象)といった、インクがノズル外側にせり出すような状態が発生したとき、劣化したノズル撥水膜によって、メニスカスが非対称な形状を形成する(図3参照)。そして、メニスカスが非対称な状態から液滴が吐出されると、液滴曲がりが発生する(図4参照)。
ここで、図5A、B〜図7A、Bに示すように、従来の吐出パルスでは、メニスカス溢れが発生した状態からの吐出の際、劣化した撥水膜上に溢れたインクの引き戻しが不十分であるため、液滴射出直前状態でもインク溢れが残留し、液滴曲がりが発生してしまう。
なお、図5B、図6B、及び図7Bは、それぞれ、図5A、図6A、及び図7Aに示す状態における駆動パルスを表す。
更に詳細に説明する。メニスカス溢れが発生した状態(図5A参照)においてパルスによりメニスカスをノズル内に引き込むと、図6Aに示すように、劣化した撥水膜200上にインク202が一部残留してしまう。そして、劣化した撥水膜200上にインク202が残留した状態で、インク202をノズルから吐出するための吐出パルスによりインク202をノズルから吐出させると、劣化した撥水膜200上に残留したインク202と、吐出されたインク202とが合体して、図7Aに示すように、液滴曲がりが発生する。
一方、本発明においては、例えば、図8A、図8Bから図11A、図11Bに示すように、メニスカスをゆっくりと引き込むため、劣化した撥水膜200上にインク202が残留しない。そのため、液滴曲がりを防止することができる。
液滴曲がりを防止することができる理由について詳細に説明する。メニスカス溢れが発生した状態(図8A参照)においてパルスによりメニスカスをノズル内に引き込む際に、液室の共振周期の1/3以上の周期(時間)を有する、相対的に変化の遅い波形要素(図9Bの立下りの電圧変化部分)によりメニスカスをノズル内に引き込む。つまり、液室の共振周期の1/3以上の長さの電圧変化時間(推移時間ともいう)の膨張波形要素(インクを引き込む電圧変化部分)を圧力発生手段に印加して、液室を膨張させることで、ノズルから溢れているインクをノズル内に引き込む。
これにより、劣化した撥水膜200上に残留していたインク202は、引き込み時間が長く、ゆっくりとした移動となるため、劣化した撥水膜200上にインク202が残留することなく、メニスカスをノズル内に引き込むことができる(図10A参照)。そして、その状態から立ち上がりの波形要素(液室を収縮させる波形要素)(図11B参照)によりインク202を吐出すると、液滴曲がりを防止することができる(図11A参照)。
なお、本明細書において、「パルス」とは、短時間に急峻な変化をする信号でもある。
また、図6Bおよび図9Bのパルスのそれぞれが、引込パルスである。
本発明に用いるインクは、25℃での静的表面張力が18.0mN/m以上27.0mN/m以下といった低い値を持つ。このようなインクは、記録媒体に着弾後の濡れ広がりがよく、素早く記録媒体に浸透するため、発色がよく、高画質が得られる傾向があるが、インクがノズル板表面にも濡れ広がりやすくなり、連続吐出安定性を確保することが難しい。特に、撥水膜が剥がれた部分では、撥水膜上よりもインクの接触角が小さくなるため、ノズル板表面からインクが剥がれ難い。これは、インクがノズル板表面に溢れ出た場合に、その溢れ出た液滴が、その後の吐出液滴に引っ張られても剥がれにくく、これによってノズル開口部におけるインクのメニスカスが不均一となり、吐出安定性に不利であることを意味している。
そのため、前記インクは、ノズル開口部から遠くまで濡れ広がっていたインクがノズル板表面に残留してしまう。このため、この残留インクが徐々に堆積していき、最終的に吐出にまで影響を与えてしまう。
本発明によると、液室の共振周期の1/3以上の電圧変化時間の膨張波形要素(インクを引き込む電圧変化部分)を印加することにより、ゆっくりとメニスカスをノズル内に引き込むために、このようにノズル開口部から遠くまで濡れ広がってしまって、短い時間の膨張波形要素で回収できない残留インクをも、長い引込時間の間にメニスカス内に引き込むことができる。このため、溢れ出たインクがほぼ回収されて、吐出に対する影響をほとんど無くす事ができる。このため、良好な画像が得られる。
ゆっくりとメニスカスをノズル内に引き込むことは、複数回に分けてメニスカスを引き込む場合に比べて、大滴での制振に有利である。大滴の場合、1印字周期内のパルス数が多く、残留振動が強くなる傾向がある。これを抑えるために、ゆっくりメニスカスをノズル内に引き込むことが非常に効果的に作用する。
本発明によると、膨張波形要素(インクを引き込む電圧変化部分)は、ヘッド内の液室の共振周期の1/3以上の電圧変化時間となるように設定されていると、メニスカスの安定形成と吐出安定性とを両立させることができる。
好ましくはヘッド内の液室の共振周期の1/3〜1/1であり、特に好ましくはヘッド内の液室の共振周期の1/1である。
膨張波形要素(インクを引き込む電圧変化部分)の電圧変化時間を上記のように設定することが好ましい理由は、ヘッド内の液室の音響的共振周期の1/4と等しかった場合、直前の吐出パルスの残留振動と膨張波形要素の圧力波の位相が逆位相となってしまい、圧力波同士の重畳が抑えられ、次の吐出パルスにおいて必要な吐出速度を出すことができなくなってしまうためである。膨張波形要素の電圧変化時間がヘッド内の液室の音響的共振周期の1/4より長くなるにつれて上記の状態が改善され、1/3以上であれば、本発明の効果が得られる。
前記膨張波形要素により、ノズル吐出口近傍に位置するインクがノズル内に引き込まれ、所定位置にメニスカスが形成される。
前記「ノズル吐出口近傍」とは、ノズル開口の周縁部を意味する。
前記所定位置にメニスカスを形成する時における「所定位置」とは、メニスカスが形成される正規位置を意味し、ノズル板の開口部を断面で見たとき、ノズル板の基準面より凹部となった状態の位置でメニスカスを形成する状態を意味する。本発明において、メニスカス溢れが生じている場合は、所定の位置にメニスカスを形成しているとは言わない。
本発明によると、静的表面張力が低いインクを安定して吐出させることができ、かつ、良好な画像を得ることができるインクジェット記録方法を提供することができる。特にこの効果は、ノズル板上の撥水膜が劣化した場合に顕著となる。
本発明によると、1印字単位周期内に1又は2以上の駆動パルスを圧力発生手段に印加して、ノズルから1又は2以上のインク滴を吐出させ、1滴目を形成する駆動パルスは、膨張波形要素(インクを引き込む電圧変化部分)の電圧変化時間が、液室の共振周期の1/3以上であることが好ましい。
ここで、前記「1印字単位周期」とは、例えば、各アクチュエータが媒体に各ドットを形成するための時間間隔である。
前記「1印字単位周期」には、吐出パルス(駆動パルス)が含まれる。
前記「1印字単位周期」については特開2001−146011号公報、特開平10−81012号公報、特開2011−062821号公報などに詳細に記載されている。
例えば、前記特開平10−81012号公報には、記録媒体に1つのドットを形成するための1印字単位周期中に、インクジェットヘッドの各ノズルから複数のインク滴を吐出し、複数のインク滴によって1つのドットを形成するインクジェット式記録装置が記載されている。
前記インクジェット記録装置は、インクを収容する液室と液室に連通するノズルを有するノズル板と、圧電素子の圧電効果によって前記ノズルからインク滴を吐出させるように液室内のインクに圧力を付与するアクチュエータ(圧力発生手段)とを有するインクジェットヘッドと、駆動パルスを含む駆動波形を生成する駆動波形生成部と、駆動波形から駆動パルスを選択して吐出パルスを生成し、アクチュエータに印加するヘッドドライバと、このインクジェットヘッドと記録媒体とを相対移動させる相対移動手段とを備えている。
そして、図20に示すように、前記相対移動手段によりインクジェットヘッドと記録媒体とが相対移動されているときに、アクチュエータに対して前記1印字単位周期中に1又は2以上の複数の駆動パルス(吐出パルス)を供給し、ノズルから1又は2以上のインク滴を吐出させる。
このようにして吐出された複数のインク滴は、記録媒体上に一つのインクドットを形成する。
このようなドットが記録媒体上に複数個整列することにより、前記記録媒体に所定の画像が形成される。
そして、前記1印字単位周期中に吐出するインク滴の数を調整することにより、ドットの濃淡や大きさが調整され、いわゆる多階調印刷が可能となる。
本発明においては、前記1印字単位周期に含まれる液滴を空中で一体化させた後、記録媒体に付着させる構成、前記1印字単位周期に含まれる液滴を吐出順に記録媒体上に付着させる構成、及び単一の液滴のみを付着させる構成のいずれも可能である。記録媒体上にインクが着弾した際に、インクの形状が円形に近い、記録媒体上にインクが着弾する位置にずれが生じないなどの理由で、前記1印字単位周期に含まれる液滴を空中で一体化させた後、記録媒体に付着される構成が好ましい。
この時、1滴目を形成する吐出パルス(駆動パルス)の膨張波形要素(ノズルにおけるインクを引き込む電圧変化部分)を前述の長い電圧変化時間とすることにより、ノズル板面上に堆積していた残留インクを回収して1滴目のメニスカス形成を均一なものにできるとともに、直後に形成される2滴目以降(同一の1印字単位周期内)のメニスカス形成への影響も無くす事ができる。前記長い変化時間の膨張波形要素を印加するのは、1滴目を形成する吐出パルスのみで十分効果が得られる。2滴目以降の吐出パルスにも特定の膨張波形要素を入れる事も可能であるが、ゆっくりと時間をかけてメニスカスを引き込むという特徴上、波形の速度を稼ぐことができず、あまり実用的とは言えない。
<インク>
前記インクは、25℃における静的表面張力が、18.0mN/m以上27.0mN/m以下である。
前記静的表面張力が18.0mN/m以上27.0mN/m以下であることは、記録媒体上への滲み及び吐出安定性の点で有利である。
前記静的表面張力は、例えば、全自動表面張力計(CBVP−Z、協和界面科学株式会社製)を用いて、白金プレート法によって測定できる。
インクの静的表面張力を上記の範囲内とする方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インクの界面活性剤及び浸透剤の添加量、界面活性剤種類等により調整することができる。
前記インクは、例えば、水と、着色剤と、界面活性剤と、水溶性有機溶剤とを少なくとも含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
<<着色剤>>
前記着色剤としては、染料、顔料などを用いることができるが、インク記録物の耐水性及び耐光性の点から顔料が好ましい。前記顔料としては、例えば、有機顔料、無機顔料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記有機顔料としては、例えば、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ジオキサジン系、インジゴ系、チオインジゴ系、ペリレン系、イソインドレノン系、アニリンブラック、アゾメチン系、ローダミンBレーキ顔料などが挙げられる。
前記無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化鉄、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、紺青、カドミウムレッド、クロムイエロー、金属粉などが挙げられる。
ブラック顔料の具体例としては、例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラック(C.I.ピグメントブラック7)類、銅酸化物、鉄酸化物(C.I.ピグメントブラック11)、酸化チタン等の金属類、アニリンブラック(C.I.ピグメントブラック1)等の有機顔料が挙げられる。
イエロー顔料の具体例としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー1(ファーストイエローG)、2、3、12(ジスアゾイエローAAA)、13、14、16、17、20、23、24、34、35、37、42(黄色酸化鉄)、53、55、73、74、75、81、83(ジスアゾイエローHR)、86、93、95、97、98、100、101、104、108、109、110、114、117、120、125、128、129、137、138、139、147、148、150、151、153、154、155、166、168、180、185などが挙げられる。
マゼンタ顔料の具体例としては、例えば、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントレッド1、2、3、5、7、9、12、17、22(ブリリアントファーストスカーレット)、23、31、38、48:1〔パーマネントレッド2B(Ba)〕、48:2〔パーマネントレッド2B(Ca)〕、48:3〔パーマネントレッド2B(Sr)〕、48:4〔パーマネントレッド2B(Mn)〕、49:1、52:2、53:1、57:1(ブリリアントカーミン6B)、60:1、63:1、63:2、64:1、81(ローダミン6Gレーキ)、83、88、92、97、101(べんがら)、104、105、106、108(カドミウムレッド)、112、114、122(ジメチルキナクリドン)、123、146、149、166、168、170、172、175、176、178、179、180、184、185、190、192、193、202、209、215、216、217、219、220、223、226、227、228、238、240、254、255、272などが挙げられる。
シアン顔料の具体例としては、例えば、C.I.ピグメントブルー1、2、3、15(銅フタロシアニンブルーR)、15:1、15:2、15:3(フタロシアニンブルーG)、15:4、15:6(フタロシアニンブルーE)、16、17:1、22、56、60、63、64、バットブルー4、バットブルー60などが挙げられる。
また、中間色顔料の具体例としては、レッド、グリーン、ブルー用としてC.I.ピグメントレッド177、194、224、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、71、C.I.ピグメントバイオレット3、19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントグリーン7、36などが挙げられる。
本発明で用いるインクには、印字濃度及び印字耐久性向上のため、疎水性染料又は顔料を含有するポリマー微粒子を前記着色剤として用いることができる。前記ポリマー微粒子は分散体として用いるが、顔料、特に有機顔料又はカーボンブラックを含有するポリマー微粒子の分散体がより好ましい。前記顔料を含有するポリマー微粒子の分散体に用いられるポリマーとしては、例えば、ビニル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、ポリウレタン系ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、ビニル系ポリマーが好ましい。
前記ビニル系ポリマーとしては、(a)アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル及びスチレン系モノマーからなる群より選ばれた1種以上のビニル系モノマーと、(b)塩生成基を有する重合性不飽和モノマーと、(c)前記ビニル系モノマー及び塩生成基を有する重合性不飽和モノマーと共重合可能な成分とを含有するモノマー組成物を共重合させて得られたポリマーが好ましい。
前記(a)のビニル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−n−アミル、アクリル酸−n−ヘキシル、アクリル酸−n−オクチル、アクリル酸ドデシル等のアクリル酸エステル;メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−n−アミル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸エステル;スチレン、ビニルトルエン、2−メチルスチレン等のスチレン系モノマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記(b)の塩生成基を有する重合性不飽和モノマーとしては、例えば、塩生成基を有するカチオン性モノマー、塩生成基を有するアニオン性モノマーなどが挙げられる。
前記塩生成基を有するカチオン性モノマーとしては、例えば、3級アミン含有不飽和モノマー、アンモニウム塩含有不飽和モノマーなどが挙げられる。その好ましい例としては、例えば、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N−(N’,N’−ジメチルアミノエチル)アクリルアミド、ビニルピリジン、2−メチル−5−ビニルピリジン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレートなどが挙げられる。
前記塩生成基を有するアニオン性モノマーとしては、例えば、不飽和カルボン酸モノマー、不飽和スルホン酸モノマー、不飽和リン酸モノマーなどが挙げられる。その好ましい例としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸などが挙げられる。
前記(c)のビニル系モノマー及び塩生成基を有する重合性不飽和モノマーと共重合可能な成分としては、例えば、アクリルアミド系モノマー、メタクリルアミド系モノマー、水酸基含有モノマー、片末端に重合性官能基を有するマクロマーなどが挙げられる。
前記片末端に重合性官能基を有するマクロマーとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリコーンマクロマー、スチレン系マクロマー、ポリエステル系マクロマー、ポリウレタン系マクロマー、ポリアルキルエーテルマクロマー、一般式:CH2=C(R5)COO(R6O)7(ただし、前記一般式中、R5は水素原子又は低級アルキル基、R6はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1以上30以下の2価の炭化水素基、R7は水素原子又はヘテロ原子を有していてもよい炭素数1以上30以下の1価の炭化水素基、pは1以上60以下の整数を示す)で表されるマクロマーなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記一般式における前記低級アルキル基としては、例えば、炭素数1以上4以下のアルキル基などが挙げられる。
前記水酸基含有モノマーとしては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレートなどが挙げられる。
前記一般式:CH2=C(R5)COO(R6O)p7で表されるマクロマーとしては、ポリエチレングリコール(2以上30以下)(メタ)アクリレート及びメトキシポリエチレングリコール(1以上30以下)(メタ)アクリレートが好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート又はメタクリレートを示す。
前記共重合可能な成分の中では、マクロマーが好ましく、シリコーンマクロマー、スチレン系マクロマー及びポリアルキルエーテルマクロマーがより好ましい。
前記モノマー組成物における前記ビニル系モノマーの含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリマーエマルジョンの分散安定性の向上の観点から、1質量%以上75質量%以下が好ましく、5質量%以上60質量%以下がより好ましく、10質量%以上50質量%以下が特に好ましい。
前記モノマー組成物における前記塩生成基を有する重合性不飽和モノマーの含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリマーエマルジョンの分散安定性の向上の観点から、2質量%以上40質量%以下が好ましく、5質量%以上20質量%以下がより好ましい。
前記モノマー組成物における前記ビニル系モノマー及び前記塩生成基を有する重合性不飽和モノマーと共重合可能なモノマーの含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、ポリマーエマルジョンの分散安定性の向上の観点から、5質量%以上90質量%以下が好ましく、10質量%以上85質量%以下がより好ましく、20質量%以上60質量%以下が特に好ましい。
前記ポリマー微粒子の含有量は、インクの処方全量に対して10質量%以上40質量%以下が好ましい。
前記ポリマー微粒子の平均粒径は、分散安定性の観点から、20nm以上200nm以下が好ましい。
前記平均粒径は、例えば、日機装社製マイクロトラックUPA−150を用い、測定サンプル中の顔料濃度が0.01質量%になるように純水で希釈したサンプルを用い、粒子屈折率1.51、粒子密度1.4g/cm3、溶剤パラメーターとして純水のパラメーターを用い、23℃で測定した50%平均粒径(D50)のことである。
<<界面活性剤>>
前記界面活性剤としては、前記着色剤の種類、前記水溶性有機溶剤などとの組み合わせによって前記着色剤の分散安定性を損なわず、表面張力が低く、浸透性、レベリング性の高いものが好ましい。
前記界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤から選択される少なくとも1種が好適である。これらの中でも、シリコーン系界面活性剤及びフッ素系界面活性剤が特に好ましい。これらの界面活性剤は、複数混合して用いてもよい。
前記フッ素系界面活性剤としては、フッ素置換した炭素数が2以上16以下のものが好ましく、フッ素置換した炭素数が4以上16以下のものがより好ましい。フッ素置換した炭素数が2以上16以下の範囲であると、フッ素の効果が得られ、かつインク保存性が良好である。
前記フッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが挙げられる。これらの中でも、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物は起泡性が少なく、特に好ましい。
更に好ましいのは、下記一般式(I)で表されるフッ素系界面活性剤である。
ただし、前記一般式(I)中、nは2以上6以下の整数、aは15以上50以下の整数であり、Y’は−Cb2b+1(ただし、bは11以上19以下の整数)又は−CH2CH(OH)CH2−Cd2d+1(ただし、dは2以上6以下の整数)を表す。
前記フッ素系界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし市販品を使用してもよい。前記市販品としては、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する均染性が著しく向上する点から、例えば、DuPont社製のFS−300、ネオス社製のFT−110、FT−250、FT−251、FT−400S、FT−150、FT−400SW、及びオムノバ社製のポリフォックスPF−151Nなどが挙げられる。
前記フッ素系界面活性剤の好適な具体例としては、以下に示すものが挙げられる。
(1)アニオン系フッ素系界面活性剤
前記式中、Rfは、下記式で表されるフッ素含有疎水基の混合物を表す。Aは、−SO3X、−COOX、又は−PO3X(ただし、Xは対アニオンであり、具体的には、水素原子、Li、Na、K、NH4、NH3CH2CH2OH、NH2(CH2CH2OH)2、又はNH(CH2CH2OH)3が挙げられる)を表す。
前記式中、Rf’は、下記式で表されるフッ素含有基を表す。Xは、前記と同じ意味を表す。nは1又は2の整数、mは2−nを表す。
前記式中、nは3以上10以下の整数を表す。
前記式中、Rf’及びXは、前記と同じ意味を表す。
前記式中、Rf’及びXは、前記と同じ意味を表す。
(2)ノニオン系フッ素系界面活性剤
前記式中、Rfは、前記と同じ意味を表す。nは5以上20以下の整数を表す。
前記式中、Rf’は、前記と同じ意味を表す。nは1以上40以下の整数を表す。
前記式中、mは0以上10以下の整数を表し、nは0以上40以下の整数を表す。
(3)両性フッ素系界面活性剤
前記式中、Rfは、前記と同じ意味を表す。
(4)オリゴマー型フッ素系界面活性剤
前記式中、Rf”は、下記式で表されるフッ素含有基を表す。nは1以上10以下の整数を表す。Xは、前記と同じ意味を表す。
前記式中、nは1以上4以下の整数を表す。
前記シリコーン系界面活性剤としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高pHでも分解しないものが好ましい。例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤が水系界面活性剤として良好な性質を示すので特に好ましい。
前記界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし市販品を使用してもよい。前記市販品としては、例えば、ビックケミー社、信越シリコーン社、東レ・ダウコーニング・シリコーン社などから容易に入手できる。
前記ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルポリシロキサンのSi部側鎖に導入した、下記一般式で表される化合物、などが挙げられる。
ただし、前記一般式中、m、n、a、及びbは整数を表す。R及びR’はそれぞれアルキレン基及びアルキル基を表す。
前記ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし市販品を使用してもよい。前記市販品としては、例えば、KF−618、KF−642、KF−643(いずれも、信越化学工業株式会社製)、BYK−345、BYK−347、BYK−348、BYK−349(いずれも、ビックケミー・ジャパン株式会社製)などが挙げられる。
前記アニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩などが挙げられる。
前記アニオン系界面活性剤としては、適宜合成したものを使用してもよいし市販品を使用してもよい。前記市販品としては、例えば、ポリオキシエチレン(3)トリデシルエーテル酢酸ナトリウム(ECTD−3NEX、日光ケミカルズ株式会社製)などが挙げられる。
前記ノニオン系界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミドなどが挙げられる。
前記界面活性剤の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記インク全量に対して、0.01質量%以上3.0質量%以下が好ましく、0.03質量%以上2.0質量%以下がより好ましい。前記含有量を0.01質量%以上3.0質量%以下とすることで、界面活性剤を添加した効果が得られ、適度な記録媒体への浸透性が得られ、画像濃度の低下や裏抜けが生じないという利点がある。
<<水溶性有機溶剤>>
前記水溶性有機溶剤は、インクの乾燥防止及び分散安定性を向上させることを目的として添加される。
前記水溶性有機溶剤としては、例えば、多価アルコール類、多価アルコールアルキルエーテル類、多価アルコールアリールエーテル類、含窒素複素環化合物、アミド類、アミン類、含硫黄化合物類、プロピレンカーボネート、炭酸エチレンなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,2,3−ブタントリオール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール、ペトリオールなどが挙げられる。
前記多価アルコールアルキルエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどが挙げられる。
前記多価アルコールアリールエーテル類としては、例えば、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールモノベンジルエーテルなどが挙げられる。
前記含窒素複素環化合物としては、例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−ヒドロキシエチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチルイミイダゾリジノン、ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクトンなどが挙げられる。
前記アミド類としては、例えば、ホルムアミド、N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。
前記アミン類としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミンなどが挙げられる。
前記含硫黄化合物類としては、例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン、チオジエタノールなどが挙げられる。
前記水溶性有機溶剤に加えて他の湿潤剤を用いてもよく、そのような湿潤剤としては、尿素化合物、糖を含有するものが好ましい。前記糖類としては、例えば、単糖類、二糖類、オリゴ糖類(三糖類及び四糖類を含む)、多糖類が挙げられ、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、マルトトリオースなどが挙げられる。ここで、前記多糖類とは広義の糖を意味し、α−シクロデキストリン、セルロースなど自然界に広く存在する物質を含む意味に用いることとする。
また、これらの糖類の誘導体としては、前記糖類の還元糖(例えば、糖アルコール〔一般式:HOCH2(CHOH)CH2OH(n=2以上5以下の整数)〕、酸化糖(例えば、アルドン酸、ウロン酸など)、アミノ酸、チオ酸などが挙げられる。これらの中でも、糖アルコールが好ましい。
前記糖アルコールとしては、例えば、D−ソルビトール、ソルビタン、マルチトール、エリスリトール、ラクチトール、キシリトールなどが挙げられる。
前記水溶性有機溶剤としては、保存安定性、及び吐出安定性に優れたインクを作製する点から、グリセリン、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、ジプロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、トリメチロールプロパン、テトラメチロールプロパン、D−ソルビトール、キシリトールが好ましく、グリセリン、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−ブタンジオール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、1,6−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−ピロリドンがより好ましい。
顔料インクの場合、前記顔料と前記水溶性有機溶剤の質量比は、ヘッドからのインクの吐出安定性に大きく影響する。顔料固形分比率が高いのに水溶性有機溶剤の配合量が少ないと、ノズルのインクメニスカス付近の水分蒸発が進み吐出不良をもたらすことがある。
前記水溶性有機溶剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記インク全量に対して、10質量%以上50質量%以下が好ましい。
<<水>>
前記水としては、例えばイオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水を用いることができる。
前記水の含有量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選定することができる。
<<その他成分>>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、抑泡剤(消泡剤)、pH調整剤、防腐防黴剤、防錆剤、キレート試薬、浸透剤、などが挙げられる。
前記抑泡剤(消泡剤)は、インクの起泡を防ぐため、又は発生した気泡を破泡させるために添加する。前記抑泡剤(消泡剤)としては、下記一般式で表されるものが挙げられる。
前記一般式中、R1及びR2は、それぞれ独立に炭素数3以上6以下のアルキル基であり、R3及びR4は、それぞれ独立に炭素数1以上2以下のアルキル基であり、mは1以上6以下の整数である。
前記一般式で表される化合物の中でも、2,4,7,9−テトラメチルデカン−4,7−ジオールは、抑泡性に優れた効果を示すため好ましい。
また、前記消泡剤としては、シリコーン消泡剤が好ましい。前記シリコーン消泡剤としては、例えば、オイル型シリコーン消泡剤、コンパウンド型シリコーン消泡剤、自己乳化型シリコーン消泡剤、エマルジョン型シリコーン消泡剤、変性シリコーン消泡剤、などが挙げられる。
前記消泡剤としては、市販品を使用してもよく、該市販品としては、信越化学工業株式会社製のシリコーン消泡剤(KS508、KS531、KM72、KM72F、KM85、KM98等)、東レ・ダウ・コーニング株式会社製のシリコーン消泡剤(Q2−3183A、SH5500、SH5510、SM5571、SM5571 EMULSION等)、日本ユニカー株式会社製のシリコーン消泡剤(SAG30等)、旭電化工業株式会社製の消泡剤(アデカネートシリーズ等)、などが挙げられる。
前記pH調整剤は、インクをアルカリ性に保つことにより分散状態を安定化し、吐出を安定化する目的で添加する。しかし、pH11以上ではインクジェットのヘッドやインク供給ユニットを溶かし出す量が大きく、ヘッドやユニットの材質によっては、長期間使用した際に、インクの変質や、漏洩、吐出不良等の問題が発生しやすい。顔料の場合には、顔料を分散剤とともに水に混練分散する際にpH調整剤を加える方が、混練分散後、湿潤剤、浸透剤等の添加剤とともに加えるよりも望ましい。これは、pH調整剤によっては添加により分散を破壊する場合もあるためである。
前記pH調整剤としては、アルコールアミン類、アルカリ金属水酸化物、アンモニウム水酸化物、ホスホニウム水酸化物、アルカリ金属炭酸塩を一種類以上含むものが好ましい。
前記アルコールアミン類としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオールなどが挙げられる。
前記アルカリ金属水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどが挙げられる。
前記アンモニウム水酸化物としては、例えば、水酸化アンモニウム、第4級アンモニウム水酸化物などが挙げられる。
前記ホスホニウム水酸化物としては、例えば、第4級ホスホニウム水酸化物などが挙げられる。
前記アルカリ金属炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどが挙げられる。
前記防腐防黴剤としては、例えば、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2−ピリジンチオール−1−オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウムなどが挙げられる。
前記防錆剤としては、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライトなどが挙げられる。
前記キレート試薬としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、ウラミル二酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
前記浸透剤としては、例えば、炭素数7以上11以下のジオール化合物などが挙げられる。前記炭素数7以上11以下のジオール化合物としては、例えば、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオールなどが挙げられる。
前記浸透剤の含有量は、保存安定性の点から、前記インク全量に対して、1質量%以上5質量%が好ましい。
本発明で用いるインクの粘度、pHは、特に制限はなく、使用目的に応じて適宜選択することができる。
粘度は、25℃で、3〜20mPa・sの範囲にあることが望ましく、特に6〜12mPa・sの範囲にあることが好ましい。これにより、吐出安定性や画像品質をより優れたものにすることができる。また、pHは7〜10であることが好ましい。
インクの粘度は、各種溶剤や活性剤などの量や種類、水の量のバランスで調整することができる。粘度を下げる方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、インクの溶剤の添加量を減らすこと、水の添加量を増やすことなどが挙げられる。
<カラー化>
本発明で用いる各インクの色は特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、ブラック、イエロー、マゼンタ、シアンなどが挙げられる。これらのインクを2種以上併用したインクセットを使用して記録を行うことにより、多色画像を形成することができ、全色併用したインクセットを使用して記録を行えば、フルカラー画像を形成することができる。
<インクセット>
本発明のインクジェット記録方法に用いるインクとしては、前記単色のインク以外にも、下記(1)〜(3)の要件を満たすインクセットを用いることが好ましい。
(1)ブラックを含む2色以上のインクからなるインクセットを使用。
(2)各インクの25℃での静的表面張力が、全て18.0mN/m以上27.0mN/m以下。
(3)ブラックインクと他の色のインクの25℃での静的表面張力の差[(ブラックインクの静的表面張力)−(他の色のインクの静的表面張力)]が、全て0mN/m以上4mN/m以下。
この場合、25℃での静的表面張力が18.0mN/m以上27.0mN/m以下の低い値を持つインクは、記録媒体への着弾後の濡れ広がりがよく、素早く記録媒体に浸透するため、発色が良く、高画質が得られる傾向があるが、インクが液体吐出ヘッドのノズル板表面にも濡れ広がりやすくなり連続吐出安定性を確保することが難しい。
前記のようにノズル開口部から遠くまで濡れ広がってしまったインクでも、1印字単位周期内に液室の共振周期の1/3以上の電圧変化時間の膨張波形要素(インクを引き込む電圧変化部分)を印加することにより、ゆっくりとメニスカスをノズル内に引き込むために、このようにノズル開口部から遠くまで濡れ広がってしまって、短い時間の膨張波形要素で回収できない残留インクをも、長い引込時間の間にメニスカス内に引き込むことができる。このため、溢れ出たインクがほぼ回収されて、吐出に対する影響をほとんど無くす事ができる。このため、良好な画像が得られる。
前記インクセットにおける各インクの記録媒体に対する浸透プロセスには静的表面張力が関わってくる。このため、複数色のインクを用いてカラー画像を作る場合、インク毎にこれらの値が異なっていると、異なる色のインクが接触している部分での浸透状況の違いが発生し、画像品質の低下につながってしまう。
特に、ブラックインクは視認性に優れているため、細線や点などでも輪郭が明確に視認でき、画像の乱れも目立ちやすい。例えば、浸透性の高い、つまり、静的表面張力の低いブラックインクのドットと、浸透性の低い、つまり、静的表面張力の高い他の色インクのドットが隣接した場合、静的表面張力の高い他の色インク側にブラックインクが引っ張られるため、ブラックインクが他の色インク側に混入し、輪郭部が不鮮明となるブリード現象が発生する。この現象は、特に浸透性の悪い記録媒体上で発生しやすく、また、浸透時間が長く取れない高速印刷時にも発生しやすい。
これを防ぐには、ブラックインクの静的表面張力を高くし、他の色インクの静的表面張力を低くすればよいが、その差が大きすぎると、他の色インクがブラックインク側に混入し、黒文字が細ってしまったり、境界部にブリードが発生するなど、画像品質の低下につながってしまう。
静的表面張力差が小さければ、ブリードが起こらないか、起きてもわずかであり、明度の低いブラックインクへの混入による画像品質への影響は少ないことに着目し、本発明では、25℃におけるブラックインクの静的表面張力が他の色のインクの静的表面張力よりも0mN/m以上4mN/m以下高くなるように設定することでブリード問題を回避することができる。
前記インクセットを用いた本発明のインクジェット記録方法によれば、液滴吐出ヘッドを構成するノズルが形成されたノズル板が表面を清浄に保つためのメンテナンス作業に伴う物理的負荷によって撥水膜が少しずつ劣化したとしても、静的表面張力が低い(25℃での静的表面張力が18.0mN/m以上27.0mN/m以下)、ブラックを含む2色以上のインクからなるインクセットを安定して吐出させることができ((吐出安定性:ベタ部に筋、白抜け、噴射乱れがない)、かつ、良好な画像(ベタ印刷部の均一性、ブラックインク−カラーインク間のブリードがない)を得ることができる。
前記インクセットの各インクは、水、水溶性有機溶剤、着色剤及び界面活性剤を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有することが好ましい。
前記インクセットの各インクにおける前記水、前記水溶性有機溶剤、前記着色剤、前記界面活性剤、及び前記その他の成分としては、前記インクと同様なものを用いることができる。
前述のように、本発明のインクジェット記録方法において用いられるインクとしては、ブラックを含む2色以上のインクからなるインクセットを使用し、各インクの静的表面張力が全て18.0〜27.0mN/m(25℃)であり、ブラックインクと他の色のインクの静的表面張力の差、すなわち、(ブラックインクの静的表面張力)−(他の色のインクの静的表面張力)が25℃において、0mN/m以上4mN/m以下である要件を満たすことが好ましい。静的表面張力が高すぎると、インクのメディアへの浸透が遅くなり、ビーディングや裏移りが発生する。逆に低すぎると、浸透性が高くなりすぎてしまい、インクの裏抜けが起きてしまう。
これらの条件を満たすため、各成分の添加量は適宜調整できるが、例えば、静的表面張力を下げる方法としては、以下の方法がある。
・界面活性剤、浸透剤の添加量を増やす。
・界面活性剤をより表面張力の低下能が強いものに変える。
・ノズルプレート上の撥水膜の撥水性を下げる。
<インク収容容器>
本発明で用いられるインク収容容器は、本発明のインクジェット記録方法で用いられているインク又はインクセットの各インクを容器中に収容してなるものである。つまり、前記インク収容容器は、各インクを容器内に収容したものであり、必要に応じて適宜選択したその他の部材等を有する。
容器としては特に制限はなく、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、プラスチック製容器、アルミニウムラミネートフィルム等で形成されたインク収容部等を有するものが挙げられる。
具体例としては、図21及び図22に示す構造のものが挙げられる。図21はインク収容容器の一例を示す図であり、図22は図21のインク収容容器のケース(外装)を含めた図である。
インクはインク注入口242からインク収容部241内に充填し、排気した後、該インク注入口242を融着により閉じる。使用時には、ゴム部材からなるインク排出口243に装置本体の針を刺して装置にインクを供給する。インク収容部241は、透気性の無いアルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。このインク収容部241は、図22に示すように、通常プラスチック製のケース244内に収容され、インク収容容器240として、各種インクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いられるようになっている。
このインク収容容器は、前記インク又はインクセットの各インクを収容し、各種インクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いることができ、また、後述するインクジェット記録装置に着脱可能に装着して用いるのが特に好ましい。
次に、本発明のインクジェット記録方法、及びインクジェット記録装置について、図面を用いて説明する。
本発明のインクジェット記録装置の一例について図12及び図13を参照して説明する。図12は、インクジェット記録装置の全体構成を説明するための側面図であり、図13は、要部平面図である。
このインクジェット記録装置は、シリアル型インクジェット記録装置であり、装置本体1の左右の側板21A、21Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド31、32でキャリッジ33を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して図13で矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
このキャリッジ33には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド34a、34b(区別しないときは「記録ヘッド34」という。)を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
記録ヘッド34は、それぞれ2つのノズル列を有し、記録ヘッド34aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、記録ヘッド34bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。なお、記録ヘッド34としては、1つのノズル板表面に複数のノズルを並べた各色のノズル列を備えるものなどを用いることもできる。
また、キャリッジ33には、記録ヘッド34のノズル列に対応して各色のインクを供給するための第2インク供給部としてのサブタンクであるサブタンク35a、35b(区別しないときは「サブタンク35」という。)を搭載している。このサブタンク35には、インク収容容器装填部4に着脱自在に装着される各色のインク収容容器(メインタンク)10y、10m、10c、10kから、供給ポンプユニット24によって各色の供給チューブ36を介して、各色の記録液が補充供給される。
一方、給紙トレイ2の用紙積載部(圧板)41上に積載した用紙42を給紙するための給紙部として、用紙積載部41から用紙42を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)43、及び給紙コロ43に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド44を備え、この分離パッド44は給紙コロ43側に付勢されている。
そして、この給紙部から給紙された用紙42を記録ヘッド34の下方側に送り込むために、用紙42を案内するガイド部材45と、カウンタローラ46と、搬送ガイド47と、先端加圧コロ49を有する押さえ部材48とを備えるとともに、給送された用紙42を静電吸着して記録ヘッド34に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト51を備えている。
この搬送ベルト51は、無端状ベルトであり、搬送ローラ52とテンションローラ53との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト51の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ56を備えている。この帯電ローラ56は、搬送ベルト51の表層に接触し、搬送ベルト51の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト51は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ52が回転駆動されることによって図13のベルト搬送方向に周回移動する。
更に、記録ヘッド34で記録された用紙42を排紙するための排紙部として、搬送ベルト51から用紙42を分離するための分離爪61と、排紙ローラ62及び排紙コロである拍車63とを備え、排紙ローラ62の下方に排紙トレイ3を備えている。
また、装置本体1の背面部には両面ユニット71が着脱可能に装着されている。この両面ユニット71は搬送ベルト51の逆方向回転で戻される用紙42を取り込んで反転させて再度カウンタローラ46と搬送ベルト51との間に給紙する。また、この両面ユニット71の上面は手差しトレイ72としている。
更に、キャリッジ33の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド34のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構81を配置している。この維持回復機構81には、記録ヘッド34の各ノズル板表面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)82a、82b(区別しないときは「キャップ82」という。)と、ノズル板表面をワイピングするためのワイパ部材(ワイパブレード)83と、増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け84と、キャリッジ33をロックするキャリッジロック87などとを備えている。また、このヘッドの維持回復機構81の下方側には維持回復動作によって生じる廃液を収容するための廃液タンク100が装置本体に対して交換可能に装着される。
また、キャリッジ33の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘した記録液を排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け88を配置し、この空吐出受け88には記録ヘッド34のノズル列方向に沿った開口部89などを備えている。
このように構成したインクジェット記録装置においては、給紙トレイ2から用紙42が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙42はガイド45で案内され、搬送ベルト51とカウンタローラ46との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド47で案内されて先端加圧コロ49で搬送ベルト51に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
このとき、帯電ローラ56に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように電圧が印加され、搬送ベルト51が交番する帯電電圧パターンで帯電され、この帯電した搬送ベルト51上に用紙42が給送されると、用紙42が搬送ベルト51に吸着され、搬送ベルト51の周回移動によって用紙42が副走査方向に搬送される。
そこで、キャリッジ33を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド34を駆動することにより、停止している用紙42にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙42を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙42の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙42を排紙トレイ3に排紙する。
そして、記録ヘッド34のノズルの維持回復を行うときには、キャリッジ33をホーム位置である維持回復機構81に対向する位置に移動して、キャップ部材82によるキャッピングを行ってノズルからの吸引を行うノズル吸引、画像形成に寄与しない液滴を吐出する空吐出動作などの維持回復動作を行うことにより、安定した液滴吐出による画像形成を行うことができる。
次に、記録ヘッド34を構成している液体吐出ヘッドの一例について図14及び図15を参照して説明する。なお、図14は同ヘッドの液室長手方向に沿う断面図、図15は同ヘッドの液室短手方向(ノズルの並び方向)の断面図である。
この液体吐出ヘッドは、流路板101と、この流路板101の下面に接合した振動板102と、流路板101の上面に接合したノズル板103とを接合して積層し、これらによって液滴(インク滴)を吐出するノズル104が連通する流路であるノズル連通路105及び圧力発生室である液室106、液室106に流体抵抗部(供給路)107を通じてインクを供給するための共通液室108に連通するインク供給口109などを形成している。
また、振動板102を変形させて液室106内のインクを加圧するための圧力発生手段(アクチュエータ手段)である電気機械変換素子としての2個(図14では1列のみ図示)の積層型の圧電部材121と、この圧電部材121を接合固定するベース基板122とを備えている。この圧電部材121には、分割しないスリット加工で溝を形成することで複数の圧電素子柱121A、121Bを形成している。この例では、圧電素子柱121Aは駆動波形を印加する駆動圧電素子柱とし、圧電素子柱121Bは駆動波形を印加しない非駆動圧電素子柱としている。また、圧電部材121の駆動圧電素子柱121Aには駆動回路(駆動IC)を搭載したFPCケーブル126を接続している。
そして、振動板102の周縁部をフレーム部材130に接合し、このフレーム部材130には、圧電部材121及びベース基板122などで構成されるアクチュエータユニットを収納する貫通部131及び共通液室108となる凹部、この共通液室108に外部からインクを供給するための液体供給口であるインク供給穴132を形成している。
ここで、流路板101は、例えば、結晶面方位(110)の単結晶シリコン基板を水酸化カリウム水溶液(KOH)などのアルカリ性エッチング液を用いて異方性エッチングすることで、ノズル連通路105、液室106となる凹部や穴部を形成したものであるが、単結晶シリコン基板に限られるものではなく、その他のステンレス基板、感光性樹脂などを用いることもできる。
振動板102は、ニッケルの金属プレートから形成したもので、例えば、エレクトロフォーミング法(電鋳法)で作製しているが、その他、金属板や金属と樹脂板との接合部材などを用いることもできる。この振動板102に圧電部材121の圧電素子柱121A、121Bを接着剤接合し、更にフレーム部材130を接着剤接合している。
ノズル板103は各液室106に対応して直径10μm以上30μm以下のノズル104を形成し、流路板101に接着剤接合している。このノズル板103は、金属部材からなるノズル形成部材の表面に所要の層を介してインク吐出側の最表面に撥水膜を形成したものであることが好ましい。
圧電部材121は、圧電材料151と内部電極152とを交互に積層した積層型圧電素子(ここではPZT)である。この圧電部材121の交互に異なる端面に引き出された各内部電極152には個別電極153及び共通電極154が接続されている。なお、この実施形態では、圧電部材121の圧電方向としてd33方向の変位を用いて液室106内インクを加圧する構成としているが、圧電部材121の圧電方向としてd31方向の変位を用いて液室106内インクを加圧する構成とすることもできる。
このように構成した液体吐出ヘッドにおいては、例えば、圧電部材121に印加する電圧を基準電位Veから下げることによって駆動圧電素子柱121Aが収縮し、振動板102が下降して液室106の体積が膨張することで、液室106内にインクが流入し、その後駆動圧電素子柱121Aに印加する電圧を上げて駆動圧電素子柱121Aを積層方向に伸長させ、振動板102をノズル104方向に変形させて液室106の体積を収縮させることにより、液室106内のインクが加圧され、ノズル104からインク滴が吐出(噴射)される。
そして、駆動圧電素子柱121Aに印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板102が初期位置に復元し、液室106が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室108から液室106内にインクが充填される。そこで、ノズル104のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
なお、このヘッドの駆動方法については前記の例(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行うこともできる。
インクジェット記録において、ノズルの形状や形成精度、ノズル板の表面特性が、インク滴の吐出性に大きく影響を与えることが知られている。ノズル板表面のノズル付近にインクが付着していると、インク滴の吐出方向が曲ったり、飛翔速度が不安定になるなどの不具合が生じる。このようなインク付着による不具合を防ぐために、ノズル板表面(インクが吐出される側の面)に撥水膜を形成して撥水性を付与し、インク滴の吐出安定性を図ることが行われている。
しかし、吸引などのメンテナンス動作で撥水膜に付着したインクを払拭することにより、撥水膜が徐々に剥がれ、ノズル板の撥水性が劣化してしまう。このような不具合に対処するため、撥水膜とノズル板との密着性を向上させるなどの試みがなされているが、撥水膜の劣化を防ぐことは容易でない。
本発明に用いられる記録ヘッドは、ノズルを設けたノズル板を有し、前記ノズル板は、インクが吐出される側の表面に設けられた撥水膜を有することが好ましい。前記ノズル板の表面に撥水膜を設ける前に、前記撥水膜の下地層として無機酸化物による下地層を設けてもよい。
前記撥水膜としては、一般的な公知の撥水膜でよく、パーフルオロアルキル鎖を有するポリマーを含むことが好ましい。前記撥水膜の形成方法としては、以下の方法が好ましく適用される。
(1)ゾルゲル法:前記ノズル板のインク吐出側表面に、少なくとも1個のパーフルオロアルキル基と少なくとも1個のアルコキシシリル基を有するポリマー及びオリゴマーの少なくともいずれか(A)と、下記一般式(II)で表されるシラン化合物(B)とを溶剤に溶解した撥水処理剤溶液を塗布した後、反応させて撥水膜を形成し、固着する。
Si(Y)(OR)3 ・・・一般式(II)
[ただし、前記一般式(II)中、Rは、水素原子又はアルキル基を表し、Yは、置換基を有していてもよいアルキル基あるいは置換基を有していてもよいアリール基、又は前記一般式(II)におけるOR基(前記と同義)を表す。それぞれのRは同じでも異なっていてもよい。]
(2)蒸着法:前記インク滴の吐出側表面にSiO2膜を形成し、その上に、少なくとも1個のパーフルオロアルキル基と少なくとも1個のアルコキシシリル基を有するポリマー及びオリゴマーの少なくともいずれか(A)を蒸着源とする蒸着と、前記一般式(II)で表されるシラン化合物(B)を蒸着源とする蒸着とを、真空槽中の異なるゾーンで個別に繰り返し、蒸着された前記(A)と前記(B)を反応させて撥水膜を形成し、固着する。
次に、インクジェット記録装置の制御部の概要について図16を参照して説明する。なお、同図は同制御部のブロック説明図である。
この制御部500は、この装置全体の制御を司る本発明に係る空吐出動作の制御を行う手段を兼ねるCPU501と、CPU501が実行するプログラム、その他の固定データを格納するROM502と、画像データ等を一時格納するRAM503と、装置の電源が遮断されている間もデータを保持するための書き換え可能な不揮発性メモリ504と、画像データに対する各種信号処理、並び替え等を行う画像処理やその他装置全体を制御するための入出力信号を処理するASIC505とを備えている。
また、記録ヘッド34を駆動制御するためのデータ転送手段、信号発生手段を含む印刷制御部508と、キャリッジ33側に設けた記録ヘッド34を駆動するためのヘッドドライバ(ドライバIC)509と、キャリッジ33を移動走査する主走査モータ554、搬送ベルト51を周回移動させる副走査モータ555、維持回復機構81のキャップ82やワイパ部材83の移動などを行う維持回復モータ556を駆動するためのモータ制御部510と、帯電ローラ56にACバイアスを供給するACバイアス供給部511などを備えている。
また、この制御部500には、この装置に必要な情報の入力及び表示を行うための操作パネル514が接続されている。
この制御部500は、ホスト側とのデータ、信号の送受を行うためのI/F506を持っていて、パーソナルコンピュータ等の情報処理装置、イメージスキャナなどの画像読み取り装置、デジタルカメラなどの撮像装置などのホスト600側から、ケーブル或いはネットワークを介してI/F506で受信する。
そして、制御部500のCPU501は、I/F506に含まれる受信バッファ内の印刷データを読み出して解析し、ASIC505にて必要な画像処理、データの並び替え処理等を行い、この画像データを印刷制御部508からヘッドドライバ509に転送する。なお、画像出力するためのドットパターンデータの生成はホスト600側のプリンタドライバ601で行っている。
印刷制御部508は、上述した画像データをシリアルデータで転送するとともに、この画像データの転送及び転送の確定などに必要な転送クロックやラッチ信号、制御信号などをヘッドドライバ509に出力する以外にも、ROMに格納されている駆動パルスのパターンデータをD/A変換するD/A変換器及び電圧増幅器、電流増幅器等で構成される駆動信号生成部を含み、本発明に用いる特定の信号をヘッドドライバ509に対して出力する。
ヘッドドライバ509は、シリアルに入力される記録ヘッド34の1行分に相当する画像データに基づいて印刷制御部508から与えられる駆動波形を構成する駆動パルスを選択して引込パルス及び吐出パルスを生成し、記録ヘッド34の液滴を吐出させるエネルギーを発生する圧力発生手段としての圧電素子に対して印加することで記録ヘッド34を駆動する。このとき、駆動波形を構成する駆動パルスの一部又は全部及び駆動パルスを形成する波形用要素の全部又は一部を選択することによって、例えば、大滴、中滴、小滴など、大きさの異なるドットを打ち分けることができる。
I/O部513は、装置に装着されている各種のセンサ群515からの情報を取得し、プリンターの制御に必要な情報を抽出し、印刷制御部508やモータ制御部510、ACバイアス供給部511の制御に使用する。センサ群515は、用紙の位置を検出するための光学センサや、機内の温度を監視するためのサーミスタ、帯電ベルトの電圧を監視するセンサ、カバーの開閉を検出するためのインターロックスイッチなどがあり、I/O部513は様々のセンサ情報を処理することができる。
次に、印刷制御部508及びヘッドドライバ509の一例について図17を参照して説明する。
印刷制御部508は、画像形成時に1印刷周期内に、膨張波形要素(ノズルにおけるインクを引き込む電圧変化部分)の電圧変化時間が、前記液室の共振周期の1/3以上である駆動パルスを有する駆動波形を生成して出力する駆動波形生成部701と、印刷画像に応じた2ビットの画像データ(階調信号0、1)と、クロック信号、ラッチ信号(LAT)、滴制御信号M0〜M3を出力するデータ転送部702と、空吐出用の駆動波形を生成して出力する空吐出駆動波形生成部703とを備えている。
なお、滴制御信号は、ヘッドドライバ509のスイッチ手段であるアナログスイッチ715の開閉を滴毎に指示する2ビットの信号であり、共通駆動波形の印刷周期に合わせて選択すべき駆動パルス又は波形要素でHレベル(ON)に状態遷移し、非選択時にはLレベル(OFF)に状態遷移する。
ヘッドドライバ509は、データ転送部702からの転送クロック(シフトクロック)及びシリアル画像データ(階調データ:2ビット/1チャンネル(1ノズル)を入力するシフトレジスタ711と、シフトレジスタ711の各レジスト値をラッチ信号によってラッチするためのラッチ回路712と、階調データと制御信号M0〜M3をデコードして結果を出力するデコーダ713と、デコーダ713のロジックレベル電圧信号をアナログスイッチ715が動作可能なレベルへとレベル変換するレベルシフタ714と、レベルシフタ714を介して与えられるデコーダ713の出力でオン/オフ(開閉)されるアナログスイッチ715と、を備えている。
(インク記録物)
本発明のインクジェット記録方法によって、記録媒体上に画像が形成されインク記録物となる。
前記記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、普通紙、光沢紙、コート紙、特殊紙、布、フィルム、OHPシート、汎用印刷紙などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記インク記録物は、各種の印字乃至画像の記録された資料等として各種用途に好適に使用することができる。
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は下記実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下において、「部」は、特に明示しない限り「質量部」を表す。「%」は、特に明示しない限り「質量%」を表す。
(顔料分散体の製造例1)
−シアン分散体の作製−
機械式攪拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管及び滴下ロートを備えた1Lフラスコ内を十分に窒素ガスで置換した後、スチレン11.2g、アクリル酸2.8g、ラウリルメタクリレート12.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート4.0g、スチレンマクロマー(東亜合成株式会社製、商品名:AS−6)4.0g及びメルカプトエタノール0.4gを仕込み、65℃に昇温した。次に、スチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールメタクリレート36.0g、ヒドロキシエチルメタクリレート60.0g、スチレンマクロマー(東亜合成株式会社製、商品名:AS−6)36.0g、メルカプトエタノール3.6g、アゾビスジメチルバレロニトリル2.4g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を2.5時間かけてフラスコ内に滴下した。
滴下終了後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8g及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を0.5時間かけてフラスコ内に滴下した。65℃で1時間熟成した後、アゾビスジメチルバレロニトリル0.8gを添加し、更に1時間熟成した。反応終了後、フラスコ内に、メチルエチルケトン364gを添加し、濃度が50質量%のポリマー溶液800gを得た。
次に、前記ポリマー溶液の一部を乾燥し、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(標準:ポリスチレン、溶媒:テトラヒドロフラン)で測定したところ、重量平均分子量は15,000であった。
前記ポリマー溶液28g、ピグメントブルー15:3(大日精化工業株式会社製、クロモファインブルーA−220JC)26g、1mol/L水酸化カリウム水溶液13.6g、メチルエチルケトン20g及びイオン交換水30gを十分に攪拌した。
その後、3本ロールミル(株式会社ノリタケカンパニー製、商品名:NR−84A)を用いて20回混練した。得られたペーストをイオン交換水200gに投入し、十分に攪拌した後、エバポレーターを用いてメチルエチルケトン及び水を留去し、固形分量が20.0質量%の青色のポリマー微粒子分散体160gを得た。
得られたポリマー微粒子をマイクロトラックUPA(日機装株式会社製)で測定したところ、平均粒子径(D50%)は98nmであった。
(顔料分散体の製造例2)
−マゼンタ分散体の作製−
前記顔料分散体の製造例1において、銅フタロシアニン顔料であるピグメントブルー15:3をピグメントレッド122(大日精化工業株式会社製、クロモファインマゼンタ6886)に変更した以外は、前記顔料分散体の製造例1と同様にして、赤紫色のポリマー微粒子分散体を得た。
得られたポリマー微粒子をマイクロトラックUPA(日機装株式会社製)で測定したところ、平均粒子径(D50%)は124nmであった。
(顔料分散体の製造例3)
−イエロー分散体の作製−
前記顔料分散体の製造例1において、銅フタロシアニン顔料であるピグメントブルー15:3をピグメントイエロー74(大日精化工業株式会社製、ファーストイエロー531)に変更した以外は、前記顔料分散体の製造例1と同様にして、黄色のポリマー微粒子分散体を得た。
得られたポリマー微粒子をマイクロトラックUPA(日機装株式会社製)で測定したところ、平均粒子径(D50%)は78nmであった。
(顔料分散体の製造例4)
−ブラック分散体の作製−
前記顔料分散体の製造例1において、銅フタロシアニン顔料であるピグメントブルー15:3をカーボンブラック(デグサ社製、FW100)に変更した以外は、前記分散体の製造例1と同様にして、黒色のポリマー微粒子分散体を得た。
得られたポリマー微粒子をマイクロトラックUPA(日機装株式会社製)で測定したところ、平均粒子径(D50%)は110nmであった。
(インク調製例1〜20)
前記顔料分散体の製造例1〜4で製造した各顔料分散体を用いて、下記表1〜表3に示す処方で、常法によりインクの調製例1〜20の各インクを作製し、pHが9になるように水酸化ナトリウム10%水溶液にて調整した。
具体的には、水溶性有機溶剤と、界面活性剤と、防黴剤と、抑泡剤と、消泡剤と、浸透剤と、イオン交換水とをこの順に材料を調合して30分間撹拌した後、前記顔料分散体の製造例1〜4で得られた顔料分散体を添加して30分間撹拌し、次いで、孔径0.8μmのメンブレンフィルターで濾過して、インク調製例1〜20の各インクを得た。なお、表1〜表3中の数値の単位は「質量%」である。
表1〜表3中における略語の意味は下記の通りである。
・界面活性剤A:フッ素系界面活性剤(ユニダインDSN−403N(パーフルオロアルキルポリエチレンオキシド付加反応物とポリエチレングリコールの混合物)、ダイキン工業社製)
・界面活性剤B:下記一般式(I)において、n=4、a=21、b=12のもの(FS−300、DuPont社製)
ただし、前記一般式(I)中、Y’は、−Cb2b+1を表す。
・界面活性剤C:ポリエーテル変性シリコーン系界面活性剤(BYK−349、ビックケミー・ジャパン株式会社製、成分100質量%)
・界面活性剤D:ポリオキシエチレン(3)トリデシルエーテル酢酸ナトリウム(ECTD−3NEX、日光ケミカルズ株式会社製)
・KM−72F:自己乳化型シリコーン消泡剤(信越シリコーン株式会社製、成分100質量%)
・プロキセルLV:防黴剤(アビシア社製)
<インクの物性>
前記インク調製例1〜20の各インクについて、以下のようにして、粘度、及び静的表面張力を測定した。結果を表4に示した。
各インクの静的表面張力が18.0mN/m以上27.0mN/m以下である場合には「○」、静的表面張力が18.0mN/m未満、及び27.0mN/m超の場合には「×」として評価した結果を併せて示す。
−粘度−
25℃における各インクの粘度(mPa・s)を、R型粘度計(RC−500、東機産業株式会社製)を用いて、10rpm以上100rpm以下の適切な回転速度で測定した。
−静的表面張力−
25℃における各インクの静的表面張力(mN/m)を、全自動表面張力計(CBVP−Z、協和界面科学株式会社製)を用いて、白金プレート法によって測定した。
(実施例1〜24及び比較例1〜36)
インク調製例1〜20で得られた各インクを用いた記録方法の評価について、以下に説明する。
<プリンター評価前準備>
温度25℃±0.5℃、50±5%RHに調整された環境下で、インクジェットプリンター(株式会社リコー製、IPSio GXe3300)を用い、各インクの粘度において、最も安定してインクが吐出する波形を選択し、全ての印字評価で用いた。
用いたインクジェットプリンターは、インク液滴を吐出するノズルを有するノズル板、前記ノズルが連通する液室、及び該液室内に圧力を発生させる圧力発生手段である圧力発生素子を具備した記録ヘッドと、1以上の駆動パルスを時系列で含む駆動波形と、ヘッドドライバとを有し、前記ヘッドドライバは、1以上の駆動パルスを時系列で含む駆動波形から駆動パルスを選択してインク液滴の大きさに応じた吐出パルスを発生し、前記圧力発生素子に吐出パルスを印加してノズル開口からインク液滴を吐出させ記録媒体に画像を形成する。
ノズル板は、インク吐出側表面に撥水膜を有するものを用いた。
本発明のインクジェット記録方法により、ノズル開口からインク液滴を吐出させ記録媒体に画像を形成する場合には、1印字単位周期内に存在する1つ又は複数の駆動パルスを含む駆動波形によって、ノズルから1つ又は複数のインク滴が吐出するように制御される。一般的に、形成する画像の違いによってインク液1滴の大きさが制御される。小滴を形成する時は、駆動パルスは1つ、中滴、大滴を形成する時は複数の駆動パルスを含む。
この時、1印字単位周期内での1滴目を形成する吐出パルス(駆動パルス)は図18のようにヘッド内の液室の共振周期の1/1の時間(電圧変化時間)の膨張波形要素(図の立下り電圧変化部分)でメニスカスを引き込む吐出波形を「波形1」、同様に1/3の時間(電圧変化時間)の膨張波形要素(図の立下り電圧変化部分)でメニスカスを引き込む吐出波形を「波形2」、図19のように共振周期の1/4の短い時間(電圧変化時間)でメニスカスを引き込む吐出波形を「波形3」とした。「波形1」を用いる時、インク調製例1〜12の吐出結果を実施例1〜12、インク調製例13〜20の吐出結果を比較例1〜8とした。同様に、「波形2」を用いる時、インク調製例1〜12の吐出結果を実施例13〜24、インク調製例13〜20の吐出結果を比較例9〜16とした。「波形3」を用いる時、インク調製例1〜12の吐出結果を比較例17〜28、インク調製例13〜20の吐出結果を比較例29〜36とした。
また、評価前に、ノズル板表面にインクを付着させ、それをワイパーブレードでワイピングする工程を4,000回繰り返し、意図的にノズル板表面の撥水膜が劣化した状態を作った。
<吐出安定性>
前記インクジェットプリンター(株式会社リコー製、IPSio GXe3300)を用いて、マイペーパー(株式会社NBSリコー製)上に印字を行った。印刷パターンは、各色印字面積が紙面全面積中5%であるチャートとし、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各インクを100%dutyで印字した。印字条件は、記録密度600dpiで、ワンパス印字とし、波形1〜3の、三波形での印字サンプルを作成した。この時、間欠印写を行った。前記チャートを20枚連続で印写後、20分間吐出を実施しない休止状態にし、これを50回繰り返して、累計1,000枚印写後、もう一度同チャートを印写したときの5%チャートベタ部の筋、白抜け、噴射乱れの有無を目視で観察し、評価した。この時の評価基準は以下の通りとし、Aを合格とし、B及びCを不合格とした。
〔評価基準〕
A:ベタ部に認められる筋、白抜け、噴射乱れがない。
B:ベタ部に若干の筋、白抜け、噴射乱れが2箇所以内で認められる。
C:ベタ部全域にわたって、筋、白抜け、噴射乱れが認められる。
<ベタ印字部の均一性(ベタ部均一性)>
前記インクジェットプリンター(株式会社リコー製、IPSio GXe3300)を用いて、リコービジネスコートグロス100(株式会社リコー製)上に印字を行った。印刷パターンは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各インクを100%dutyで印字した。この時、波形1〜3の、三波形での印字サンプルを作成した。
得られたサンプルのベタ部均一性を目視で観察し、評価した。この時の評価基準は以下の通りとし、Aを合格とし、B及びCを不合格とした。
〔評価基準〕
A:ベタ部に、斑がほとんど認められない。
B:ベタ部に、若干の斑が認められる。
C:ベタ部全域に、斑が認められる。
これらの評価結果を、表5〜表7に示した。また、各インクの静的表面張力が18.0mN/m以上27.0mN/m以下である場合には「○」、静的表面張力が18.0mN/m未満、及び27.0mN/m超の場合には「×」とした。
(1)吐出安定性評価:実施例1〜24によれば、液室の共振周期の1/3以上の時間(電圧変化時間)の膨張波形要素(立下り電圧変化部分)を持つ駆動パルス(吐出パルス)を用いることにより、静的表面張力が低いインクでも、良好な吐出安定性が得られることが分かった。
(2)吐出安定性評価:実施例1〜24と、比較例17〜28との比較によれば、静的表面張力が低いインクは、液室の共振周期の1/3以上の時間(電圧変化時間)の膨張波形要素(立下り電圧変化部分)を持つ駆動パルス(吐出パルス)を用いることで、初めて良好な吐出安定性が得られることが分かった。
(3)ベタ部均一性評価:実施例1〜12と、比較例1〜8とを対比すると、静的表面張力の値が条件を満たしていない場合、ベタ部均一性に劣ることが分かった。これは、静的表面張力の値が条件を満たす場合、インクが紙面に着弾後、低い静的表面張力によって浸透が速やかに進み、ビーディングが起きにくいためである。静的表面張力の値が低すぎる場合、吐出安定性が悪化してしまい、それに影響されてベタ部均一性も悪化してしまう。
(インク調製例21〜42)
前記顔料分散体の製造例1〜4で製造した各顔料分散体を用いて、下記表8〜表10に示す処方で、インク調製例1と同様にインク調製例21〜42の各インクを作製し、pHが9になるように水酸化ナトリウム10%水溶液にて調整した。
表8〜10中の数値の単位は「質量%」であり、略語の意味も表1と同様である。
<インクの物性>
前記インク調製例21〜42の各インクについて、インク調製例1と同様にして、粘度、静的表面張力を測定した。結果を表11に示した。
前記インク調製例21〜インク調製例42で得たインクを用いて、下記表12に示す組み合わせのインクセット1〜7を作製した。
(実施例25〜32及び比較例37〜49)
作製したインクセット1〜7を用いた記録方法の評価について、以下に説明する。
実施例1と同様のインクジェットプリンターを用いて、以下のようにした以外は、実施例1と同様の記録方法により評価を行った。
1印字単位周期内での1滴目を形成する吐出パルスの前に、図18のようにヘッド内の液室の共振周期の1/1の時間(電圧変化時間)の膨張波形要素(立下り電圧変化部分)でメニスカスを引き込む吐出波形を「波形1」、同様に1/3の時間(電圧変化時間)の膨張波形要素(立下り電圧変化部分)でメニスカスを引き込む吐出波形を「波形2」、図19のように共振周期の1/4の短い時間(電圧変化時間)の膨張波形要素(立下り電圧変化部分)でメニスカスを引き込む吐出波形を「波形3」とした。「波形1」を用いる時、インクセット1〜4の吐出結果を実施例25〜28、インクセット5〜7の吐出結果を比較例37〜39とした。同様に、「波形2」を用いる時、インクセット1〜4の吐出結果を実施例29〜32、インクセット5〜7の吐出結果を比較例40〜42とした。「波形3」を用いる時、インクセット1〜4の吐出結果を比較例43〜46、インクセット5〜7の吐出結果を比較例47〜49とした。また、評価前に、実施例1と同様に、ノズル板表面にインクを付着させ、それをワイパーブレードでワイピングする工程を4,000回繰り返し、意図的にノズル板表面の撥水膜が劣化した状態を作った。
<吐出安定性>
前記インクジェットプリンター(株式会社リコー製、IPSio GXe3300)を用いて、マイペーパー(株式会社NBSリコー製)上に印字を行った。印刷パターンは、各色印字面積が紙面全面積中5%であるチャートとし、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各インクを100%dutyで印字した。印字条件は、記録密度600dpiで、ワンパス印字とし、波形1〜3の、三波形での印字サンプルを作成した。この時、間欠印写を行った。前記チャートを20枚連続で印写後、20分間吐出を実施しない休止状態にし、これを50回繰り返して、累計1,000枚印写後、もう一度同チャートを印写したときの5%チャートベタ部の筋、白抜け、噴射乱れの有無を目視で観察し、評価した。この時の評価基準は以下の通りとし、Aを合格とし、B及びCを不合格とした。
〔評価基準〕
A:ベタ部に認められる筋、白抜け、噴射乱れがない
B:ベタ部に若干の筋、白抜け、噴射乱れが2箇所以内で認められる
C:ベタ部全域にわたって、筋、白抜け、噴射乱れが認められる
<ベタ印字部の均一性(ベタ部均一性)>
前記インクジェットプリンター(株式会社リコー製、IPSio GXe3300)を用いて、リコービジネスコートグロス100(株式会社リコー製)上に印字を行った。印刷パターンは、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各インクを100%dutyで印字した。この時、波形1〜3の、三波形での印字サンプルを作成した。
得られたサンプルのベタ部均一性を目視で観察し、評価した。この時の評価基準は以下の通りとし、Aを合格とし、B及びCを不合格とした。
〔評価基準〕
A:ベタ部に、斑がほとんど認められない。
B:ベタ部に、若干の斑が認められる。
C:ベタ部全域に、斑が認められる。
<ブラックインク−カラーインク間のブリード評価>
この評価については、「波形1」でのみ行った。
前記インクジェットプリンター(株式会社リコー製、IPSio GXe3300)を用いて、マイペーパー(NBSリコー株式会社製)上に印字を行った。印刷パターンは、各カラーインクを100%dutyで印字した。印字条件は、記録密度600dpiでワンパス印字とした。この時、サンプルは「波形1」のみで作製した。
各カラーインクベタ画像部中にブラックインクの文字を印字し、カラーインク−ブラックインク間のブリード(にじみ)を、目視により下記の基準で評価した。Aを合格とし、B及びCを不合格とした。
〔評価基準〕
A:ブリードの発生がなく、黒文字が鮮明に認識でき、にじみは認められない。
B:ブリードが若干発生し、黒文字が少しにじむ。
C:ブリードが発生し、黒文字の認識が困難である。
これらの評価結果を、表13〜表16に示した。また、各インクの静的表面張力が18.0mN/m以上27.0mN/m以下である場合には「○」、静的表面張力が18.0mN/m未満、及び27.0mN/m超の場合には「×」とした。
さらに、ブラックインクの静的表面張力と他の色のインクの静的表面張力の差[(ブラックインクの静的表面張力)−(他の色のインクの静的表面張力)]が0mN/m以上4mN/m以下である場合には「○」、差[(ブラックインクの静的表面張力)−(他の色のインクの静的表面張力)]が0mN/m未満、4mN/mを超える場合には「×」とした。
(1)吐出安定性評価:実施例25〜32によれば、ヘッド内の加圧液室の音響的共振周期の1/3よりも長い時間(電圧変化時間、推移時間)の膨張波形要素(立下り電圧変化部分)を持つ駆動パルスを用いることにより、静的表面張力が低いインクでも、良好な吐出安定性が得られることが分かった。
(2)吐出安定性評価:実施例25〜32と、比較例43〜46との比較によれば、静的表面張力が低く、かつ後退接触角が小さいインクは、ヘッド内の加圧液室の音響的共振周期の1/3よりも長い時間(電圧変化時間、推移時間)の膨張波形要素(立下り電圧変化部分)を持つ駆動パルスを用いることで、初めて良好な吐出安定性が得られることが分かった。
(3)ベタ部均一性評価:実施例25〜28と、比較例37〜39とを対比すると、静的表面張力の値が条件を満たしていない場合、ベタ部均一性に劣ることが分かった。これは、静的表面張力の値が条件を満たす場合、インクが紙面に着弾後、低い静的表面張力によって浸透が速やかに進み、ビーディングが起きにくいためである。静的表面張力の値が低すぎる場合、吐出安定性が悪化してしまい、それに影響されてベタ部均一性も悪化してしまう。
(4)ブラックインク−カラーインク間のブリード評価:実施例25〜28と比較例37〜39とを対比すると、静的表面張力の差の条件[(ブラックインクの静的表面張力)−(他の色のインクの静的表面張力):0mN/m以上4mN/m以下]を満たしていないと、ブリードやにじみが発生することが分かる。これは、紙面へのインクの浸透時に、ブラックインクとカラーインク間での静的表面張力のバランスが悪く、ブラックの文字が細ったり、にじんだりするためである。
本発明の他の態様を以下に記載する。
(態様A)
本願発明の一態様は、インクの液滴を吐出するノズルを有するノズル板103、前記ノズルが連通する液室106、及び液室106内に圧力を発生させる圧力発生手段を有する記録ヘッドと、前記圧力発生手段121に印加される信号(1又は2以上の駆動パルス(吐出パルス)を含む駆動波形)を発生する信号発生手段(駆動波形生成部701、ヘッドドライバ509)とを有するインクジェット記録装置によって行われ、前記信号にしたがって前記圧力発生手段により発生した圧力によりインクの液滴を吐出するインクジェット記録方法であって、以下の(1)及び(2)の要件を満たすことを特徴としている。
(1)前記インクの25℃での静的表面張力が、18.0mN/m以上27.0mN/
m以下である。
(2)前記信号が、1印字単位周期内に少なくとも1つの引込パルスを有し、
前記引込パルスの周期は、前記液室の共振周期の1/3以上である。
(態様B)
本願発明の一態様は、前記態様Aにおいて、前記信号が、1印字単位周期内に1つ又は複数の駆動パルスを含む駆動信号を供給し、
ノズルから1つ又は複数のインク滴を吐出させる信号であり、1滴目を形成する吐出パル
スの前に、前記液室106の共振周期の1/3以上の周期の引込パルスを有することを特徴とする。
(態様C)
本願発明の一態様は、インクの液滴を吐出するノズルを有するノズル板103、前記ノズルが連通する液室106、及び前記液室内に圧力を発生させる圧力発生手段121を有する記録ヘッドと、前記圧力発生手段に印加される信号(1又は2以上の駆動パルス(吐出パルス)を含む駆動波形)を発生する信号発生手段(駆動波形生成部701、ヘッドドライバ509)とを有し、前記信号にしたがって前記圧力発生手段により発生した圧力によりインクの液滴を吐出するインクジェット記録装置であって、以下の(1)及び(2)の要件を満たすことを特徴とする。
(1)前記インクの25℃での静的表面張力が、18.0mN/m以上27.0mN/
m以下である。
(2)前記信号が、1印字単位周期内に少なくとも1つの引込パルスを有し、
前記引込パルスの周期は、前記液室の共振周期の1/3以上である。
(態様D)
本願発明の一態様は、前記態様Cにおいて、前記信号が、1印字単位周期内に1又は2以上の駆動パルスを含む駆動信号を供給し、ノズルから1又は2以上のインク滴を吐出させる信号であり、1滴目を形成する吐出パルスの前に、前記液室の共振周期の1/3以上の周期の引込パルスを有することを特徴とする。
(図2〜図11Bにおいて)
200 劣化した撥水膜
201 撥水膜
202 インク
(図12〜図17において)
1 装置本体
2 給紙トレイ
3 排紙トレイ
4 収容容器装填部
10 インク収容容器
10y インク収容容器(メインタンク)
10m インク収容容器(メインタンク)
10c インク収容容器(メインタンク)
10k インク収容容器(メインタンク)
21A 側板
21B 側板
24 供給ポンプユニット
31 ガイドロッド
32 ガイドロッド
33 キャリッジ
34、34a、34b 記録ヘッド(液体吐出ヘッド)
35 サブタンク
35a サブタンク
35b サブタンク
36 供給チューブ
41 用紙積載部(圧板)
42 用紙
43 半月コロ(給紙コロ)
44 分離パッド
45 ガイド部材
46 カウンタローラ
47 搬送ガイド
48 押さえ部材
49 先端加圧コロ
51 搬送ベルト
52 搬送ローラ
53 テンションローラ
56 帯電ローラ
61 分離爪
62 排紙ローラ
63 拍車
71 両面ユニット
72 手差しトレイ
81 維持回復機構
82a キャップ部材
82b キャップ部材
83 ワイパ部材(ワイパブレード)
84 空吐出受け
87 キャリッジロック
88 空吐出受け
89 開口部
100 廃液タンク
101 流路板
102 振動板
103 ノズル板
104 ノズル
105 ノズル連通路
106 液室
107 流体抵抗部(供給路)
108 共通液室
109 インク供給口
121 圧電部材
121A 圧電素子柱
121B 圧電素子柱
122 ベース基板
126 FPCケーブル
130 フレーム部材
131 貫通部
132 インク供給穴
151 圧電材料
152 内部電極
153 個別電極
154 共通電極
500 制御部
501 CPU
502 ROM
503 RAM
504 書き換え可能な不揮発性メモリ
505 ASIC
506 I/F
508 印刷制御部
509 ヘッドドライバ(ドライバIC)
510 モータ制御部
511 ACバイアス供給部
513 I/O部
514 操作パネル
515 センサ群
554 主走査モータ
555 副走査モータ
556 維持回復モータ
600 ホスト
601 プリンタドライバ
701 駆動波形生成部
702 データ転送部
703 空吐出駆動波形生成部
711 シフトレジスタ
712 ラッチ回路
713 デコーダ
714 レベルシフタ
715 アナログスイッチ
(図21〜図22において)
240 インク収容容器
241 インク収容部
242 インク注入口
243 インク排出口
244 ケース
特開2014−195986号公報

Claims (12)

  1. インクの液滴を吐出するノズルを有するノズル板、前記ノズルが連通する液室、及び前記液室内に圧力を発生させる圧力発生手段を有する記録ヘッドの該圧力発生手段に対して、1又は2以上の駆動パルスを印加することで、インクの液滴を吐出するインクジェット記録方法であって、以下の(1)及び(2)の要件を満たすことを特徴とするインクジェット記録方法。
    (1)前記インクの25℃での静的表面張力が、18.0mN/m以上27.0mN/
    m以下である。
    (2)少なくとも1つの駆動パルスは、前記インクを引き込む電圧変化部分の変化時間が、前記液室の共振周期の1/3以上である。
  2. 前記インクが、ブラックインクを含む2色以上のインクからなるインクセットであり、
    前記インクセットの各インクの25℃での静的表面張力が、全て18.0mN/m以上27.0mN/m以下であり、
    前記ブラックインクと他の色のインクとの25℃での静的表面張力の差(ブラックインクの静的表面張力−他の色のインクの静的表面張力)が、全て0mN/m以上4mN/m以下であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録方法。
  3. 1印字単位周期内に1又は2以上の前記駆動パルスを前記圧力発生手段に印加して、前記ノズルから1又は2以上のインク滴を吐出させる請求項1又は2に記載のインクジェット記録方法であって、
    1滴目を形成する駆動パルスは、前記インクを引き込む電圧変化部分の変化時間が、前記液室の共振周期の1/3以上であることを特徴とするインクジェット記録方法。
  4. 前記ノズル板が、インク吐出側表面に撥水膜を有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
  5. 前記インクが、水と、着色剤と、界面活性剤と、水溶性有機溶剤とを含有することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
  6. 前記インクの25℃における粘度が、3mPa・s以上20mPa・s以下であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のインクジェット記録方法。
  7. インクの液滴を吐出するノズルを有するノズル板、前記ノズルが連通する液室、及び前記液室内に圧力を発生させる圧力発生手段を有する記録ヘッドと、前記圧力発生手段に印加される駆動パルスを1又は2以上含む駆動波形を生成する駆動波形生成部とを有し、前記前記圧力発生手段により発生した圧力によりインクの液滴を吐出するインクジェット記録装置であって、以下の(1)及び(2)の要件を満たすことを特徴とするインクジェット記録装置。
    (1)前記インクの25℃での静的表面張力が、18.0mN/m以上27.0mN/m以下である。
    (2)少なくとも1つの駆動パルスは、前記インクを引き込む電圧変化部分の変化時間が、前記液室の共振周期の1/3以上である。
  8. 前記インクが、ブラックインクを含む2色以上のインクからなるインクセットであり、
    前記インクセットの各インクの25℃での静的表面張力が、全て18.0mN/m以上27.0mN/m以下であり、
    前記ブラックインクと他の色のインクとの25℃での静的表面張力の差(ブラックインクの静的表面張力−他の色のインクの静的表面張力)が、全て0mN/m以上4mN/m以下であることを特徴とする請求項7に記載のインクジェット記録装置。
  9. 1印字単位周期内に1又は2以上の前記駆動パルスを前記圧力発生手段に印加して、前記ノズルから1又は2以上のインク滴を吐出させる請求項7又は8に記載のインクジェット記録装置であって、
    1滴目を形成する駆動パルスは、前記インクを引き込む電圧変化部分の変化時間が、前記液室の共振周期の1/3以上であることを特徴とするインクジェット記録装置。
  10. 前記ノズル板が、インク吐出側表面に撥水膜を有することを特徴とする請求項7から9のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
  11. 前記インクが、水と、着色剤と、界面活性剤と、水溶性有機溶剤とを含有することを特徴とする請求項7から10のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
  12. 前記インクの25℃における粘度が、3mPa・s以上20mPa・s以下であることを特徴とする請求項7から11のいずれかに記載のインクジェット記録装置。
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